(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】デフロスタ
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20220802BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B60H1/34 651C
B60H1/00 102L
B60H1/00 102R
(21)【出願番号】P 2018086052
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】308016242
【氏名又は名称】豊和化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】榊原 啓介
(72)【発明者】
【氏名】奥野 勝章
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-129744(JP,A)
【文献】特開2016-078683(JP,A)
【文献】特開2017-056832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を導入する開口と、
車両の幅方向である車両幅方向における一方側に設けられ、基端部を前記開口に接続され、先端部に形成された第1吹出口部から前記空気をフロントウインドウに吹き出す第1ダクト部と、
前記車両幅方向における他方側に設けられ、基端部を前記開口に接続され、先端部に形成された第2吹出口部から前記空気を前記フロントウインドウに吹き出す第2ダクト部と、
を備え、
前記車両幅方向における前記開口の中心の位置である開口中心位置が、前記車両幅方向における前記車両の中心を通る車両中心線に対し、前記第2ダクト部側にずれた位置であり、
前記第1ダクト部は、
前記車両幅方向において前記第2ダクト部側に形成された第1内側面を有し、
前記第2ダクト部は、
前記車両幅方向において前記第1ダクト部側に形成され、前記車両幅方向において前記第1内側面と対向する位置に配置される第2内側面を有し、
前記第1内側面は、
前記車両中心線の前記一方側から前記車両中心線に近づく方向へ湾曲して形成され、
前記第2内側面は、
前記車両中心線の前記他方側から前記車両中心線に近づく方向へ湾曲して形成さ
れ、
前記第1ダクト部は、
前記空気が流れる通風路を前記開口に比べて絞った第1絞り部と、
前記空気の送風方向において前記第1絞り部の位置よりも下流側の位置で、且つ前記車両幅方向において外側となる位置に設けられ、前記第1絞り部から排出された前記空気を前記車両幅方向の外側へと案内する第1リブと、
を有する、デフロスタ。
【請求項2】
空気を導入する開口と、
車両の幅方向である車両幅方向における一方側に設けられ、基端部を前記開口に接続され、先端部に形成された第1吹出口部から前記空気をフロントウインドウに吹き出す第1ダクト部と、
前記車両幅方向における他方側に設けられ、基端部を前記開口に接続され、先端部に形成された第2吹出口部から前記空気を前記フロントウインドウに吹き出す第2ダクト部と、
を備え、
前記車両幅方向における前記開口の中心の位置である開口中心位置が、前記車両幅方向における前記車両の中心を通る車両中心線に対し、前記第2ダクト部側にずれた位置であり、
前記第1ダクト部は、
前記車両幅方向において前記第2ダクト部側に形成された第1内側面を有し、
前記第2ダクト部は、
前記車両幅方向において前記第1ダクト部側に形成され、前記車両幅方向において前記第1内側面と対向する位置に配置される第2内側面を有し、
前記第1内側面は、
前記車両中心線の前記一方側から前記車両中心線に近づく方向へ湾曲して形成され、
前記第2内側面は、
前記車両中心線の前記他方側から前記車両中心線に近づく方向へ湾曲して形成さ
れ、
前記第2ダクト部は、
前記空気が流れる通風路を前記開口に比べて絞った第2絞り部と、
前記空気の送風方向において前記第2絞り部の下流側の開口の位置に設けられ、前記空気の送風方向において前記第2絞り部から下流に流れる前記空気を前記車両幅方向の両側へ案内する複数の第2リブと、
を有する、デフロスタ。
【請求項3】
空気を導入する開口と、
車両の幅方向である車両幅方向における一方側に設けられ、基端部を前記開口に接続され、先端部に形成された第1吹出口部から前記空気をフロントウインドウに吹き出す第1ダクト部と、
前記車両幅方向における他方側に設けられ、基端部を前記開口に接続され、先端部に形成された第2吹出口部から前記空気を前記フロントウインドウに吹き出す第2ダクト部と、
を備え、
前記車両幅方向における前記開口の中心の位置である開口中心位置が、前記車両幅方向における前記車両の中心を通る車両中心線に対し、前記第2ダクト部側にずれた位置であり、
前記第1ダクト部は、
前記車両幅方向において前記第2ダクト部側に形成された第1内側面を有し、
前記第2ダクト部は、
前記車両幅方向において前記第1ダクト部側に形成され、前記車両幅方向において前記第1内側面と対向する位置に配置される第2内側面を有し、
前記第1内側面は、
前記車両中心線の前記一方側から前記車両中心線に近づく方向へ湾曲して形成され、
前記第2内側面は、
前記車両中心線の前記他方側から前記車両中心線に近づく方向へ湾曲して形成さ
れ、
前記第1ダクト部及び前記第2ダクト部の各々は、
前記車両の前後方向における前方側へ屈曲する第1角部と、前記空気の送風方向において前記第1角部の下流側に設けられ前記フロントウインドウ側へ屈曲する第2角部と、を有し、
前記第1吹出口部及び前記第2吹出口部の各々は、
前記車両の前後方向である車両前後方向における後方側の内壁に形成された湾曲面を有し、
前記第1吹出口部及び前記第2吹出口部の各々の前記湾曲面は、
前記空気の送風方向において、前記第1ダクト部及び前記第2ダクト部の各々の前記第2角部の下流側に設けられ、
前記湾曲面は、
前記フロントウインドウの上部に向かって湾曲して形成され、
前記空気の送風方向に沿った前記湾曲面の長さは、
前記空気の送風方向に沿った前記第1角部と前記第2角部の間の距離であって、前記車両前後方向における後方側の内壁に設けられる前記第1角部と前記第2角部の間の距離に比べて短い、デフロスタ。
【請求項4】
前記第1内側面と前記第2内側面とは、
分岐部で接続され、
前記空気の送風方向において、前記分岐部よりも上流側の前記第1ダクト部の通風路の大きさが、前記分岐部よりも上流側の前記第2ダクト部の通風路の大きさに比べて大きい、請求項1
乃至請求項3の何れか1項に記載のデフロスタ。
【請求項5】
前記第1内側面は、
前記第2内側面と接続される分岐部から前記車両中心線を交差する方向に形成される基端側面部と、
前記基端側面部の先端から前記車両中心線に近づく方向へ湾曲して形成される先端側面部と、
を有する、請求項1
乃至請求項4の何れか1項に記載のデフロスタ。
【請求項6】
前記第1吹出口部及び前記第2吹出口部の各々は、
前記車両の前後方向である車両前後方向における前方側の壁部を曲げて形成された屈曲部を有し、
前記屈曲部は、
前記車両前後方向の前方から後方に向かって屈曲して形成される、請求項1乃至請求
項5の何れか1項に記載のデフロスタ。
【請求項7】
前記第1吹出口部及び前記第2吹出口部の各々は、
前記フロントウインドウの下部に近接する位置に配置される、請求項1乃至請求
項6の何れか1項に記載のデフロスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気を車両のフロントウインドウに吹き付けるデフロスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のインストルメントパネルに設けられ、空調装置から供給される空調空気をフロントウインドウに吹き付けるデフロスタがある(例えば、特許文献1など)。特許文献1に開示されるデフロスタは、車両の幅方向における中心を通る車両中心線から左右方向のそれぞれに湾曲する2つのダクト部を有する。各ダクト部には、フロントウインドウの下部に空調空気を導く第1ガイド面と、フロントウインドウの上部に空調空気を導く第2ガイド面とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したデフロスタでは、車両中心線に対して対象な構造となっている。しかしながら、インストルメントパネルに内蔵する装置の大きさや位置などに応じて、デフロスタの配置や形状が制限される。この場合、デフロスタは、車両中心線に対して非対称な構造となり、例えば、空調装置から空気を導入する開口の中心位置が車両中心線からずれた構造となり、空調性能が低下する虞がある。
【0005】
本開示は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、空気を導入する開口の中心位置が車両中心線からずれた位置にある構造であっても、空調性能を向上できるデフロスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、空気を導入する開口と、車両の幅方向である車両幅方向における一方側に設けられ、基端部を前記開口に接続され、先端部に形成された第1吹出口部から前記空気をフロントウインドウに吹き出す第1ダクト部と、前記車両幅方向における他方側に設けられ、基端部を前記開口に接続され、先端部に形成された第2吹出口部から前記空気を前記フロントウインドウに吹き出す第2ダクト部と、を備え、前記車両幅方向における前記開口の中心の位置である開口中心位置が、前記車両幅方向における前記車両の中心を通る車両中心線に対し、前記第2ダクト部側にずれた位置であり、前記第1ダクト部は、前記車両幅方向において前記第2ダクト部側に形成された第1内側面を有し、前記第2ダクト部は、前記車両幅方向において前記第1ダクト部側に形成され、前記車両幅方向において前記第1内側面と対向する位置に配置される第2内側面を有し、前記第1内側面は、前記車両中心線の前記一方側から前記車両中心線に近づく方向へ湾曲して形成され、前記第2内側面は、前記車両中心線の前記他方側から前記車両中心線に近づく方向へ湾曲して形成され、前記第1ダクト部は、前記空気が流れる通風路を前記開口に比べて絞った第1絞り部と、前記空気の送風方向において前記第1絞り部の位置よりも下流側の位置で、且つ前記車両幅方向において外側となる位置に設けられ、前記第1絞り部から排出された前記空気を前記車両幅方向の外側へと案内する第1リブと、を有する、デフロスタを開示する。
また、本開示は、空気を導入する開口と、車両の幅方向である車両幅方向における一方側に設けられ、基端部を前記開口に接続され、先端部に形成された第1吹出口部から前記空気をフロントウインドウに吹き出す第1ダクト部と、前記車両幅方向における他方側に設けられ、基端部を前記開口に接続され、先端部に形成された第2吹出口部から前記空気を前記フロントウインドウに吹き出す第2ダクト部と、を備え、前記車両幅方向における前記開口の中心の位置である開口中心位置が、前記車両幅方向における前記車両の中心を通る車両中心線に対し、前記第2ダクト部側にずれた位置であり、前記第1ダクト部は、前記車両幅方向において前記第2ダクト部側に形成された第1内側面を有し、前記第2ダクト部は、前記車両幅方向において前記第1ダクト部側に形成され、前記車両幅方向において前記第1内側面と対向する位置に配置される第2内側面を有し、前記第1内側面は、前記車両中心線の前記一方側から前記車両中心線に近づく方向へ湾曲して形成され、前記第2内側面は、前記車両中心線の前記他方側から前記車両中心線に近づく方向へ湾曲して形成され、前記第2ダクト部は、前記空気が流れる通風路を前記開口に比べて絞った第2絞り部と、前記空気の送風方向において前記第2絞り部の下流側の開口の位置に設けられ、前記空気の送風方向において前記第2絞り部から下流に流れる前記空気を前記車両幅方向の両側へ案内する複数の第2リブと、を有する、デフロスタを開示する。
また、本開示は、空気を導入する開口と、車両の幅方向である車両幅方向における一方側に設けられ、基端部を前記開口に接続され、先端部に形成された第1吹出口部から前記空気をフロントウインドウに吹き出す第1ダクト部と、前記車両幅方向における他方側に設けられ、基端部を前記開口に接続され、先端部に形成された第2吹出口部から前記空気を前記フロントウインドウに吹き出す第2ダクト部と、を備え、前記車両幅方向における前記開口の中心の位置である開口中心位置が、前記車両幅方向における前記車両の中心を通る車両中心線に対し、前記第2ダクト部側にずれた位置であり、前記第1ダクト部は、前記車両幅方向において前記第2ダクト部側に形成された第1内側面を有し、前記第2ダクト部は、前記車両幅方向において前記第1ダクト部側に形成され、前記車両幅方向において前記第1内側面と対向する位置に配置される第2内側面を有し、前記第1内側面は、前記車両中心線の前記一方側から前記車両中心線に近づく方向へ湾曲して形成され、前記第2内側面は、前記車両中心線の前記他方側から前記車両中心線に近づく方向へ湾曲して形成され、前記第1ダクト部及び前記第2ダクト部の各々は、前記車両の前後方向における前方側へ屈曲する第1角部と、前記空気の送風方向において前記第1角部の下流側に設けられ前記フロントウインドウ側へ屈曲する第2角部と、を有し、前記第1吹出口部及び前記第2吹出口部の各々は、前記車両の前後方向である車両前後方向における後方側の内壁に形成された湾曲面を有し、前記第1吹出口部及び前記第2吹出口部の各々の前記湾曲面は、前記空気の送風方向において、前記第1ダクト部及び前記第2ダクト部の各々の前記第2角部の下流側に設けられ、前記湾曲面は、前記フロントウインドウの上部に向かって湾曲して形成され、前記空気の送風方向に沿った前記湾曲面の長さは、前記空気の送風方向に沿った前記第1角部と前記第2角部の間の距離であって、前記車両前後方向における後方側の内壁に設けられる前記第1角部と前記第2角部の間の距離に比べて短い、デフロスタを開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示のデフロスタによれば、第1及び第2ダクト部内を流れる空気の一部は、コアンダ効果によって、車両幅方向の内側に設けられた第1及び第2内側面に引き寄せられるように流れる。これにより、開口中心位置が車両中心線からずれた位置の構造であっても、フロントウインドウの中央上部まで広く空気を送風し、空調性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るデフロスタをインストルメントパネルに取り付けた状態を示す図である。
【
図2】車両後方から見たフロントウインドウとデフロスタの位置関係を示す図である。
【
図3】デフロスタを左側の後方上部から見た斜視図である。
【
図5】左側の後方上部から見たデフロスタを透過的に示す斜視図である。
【
図6】右側の後方上部から見たデフロスタを透過的に示す斜視図である。
【
図8】第1及び第2内側面の辺部のみが見える位置、且つ後方側から透過的にデフロスタを見た図である。
【
図11】基端側面部が見える位置から見たデフロスタを透過的に示す斜視図である。
【
図12】
図11に示すA-A線で切断した断面を示す断面図である。
【
図13】
図11に示すB-B線で切断した断面を示す断面図である。
【
図15】デフロスタから空調空気を吹き出した時のフロントウインドウの風速分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のデフロスタを具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、実施形態に係るデフロスタをインストルメントパネルに取り付けた状態を示している。
図1に示すように、本実施形態のデフロスタ10は、車両11の車室前方に配置されるインストルメントパネル13に設けられている。以下の説明では、
図1に示すように、車両11の前後方向、左右方向、上下方向を用いて説明する。車両11の左右方向は、本願の車両幅方向の一例である。車両11の前後方向は、本願の車両前後方向の一例である。
【0010】
図1に示すように、デフロスタ10は、インストルメントパネル13の上面の前端部に、第1吹出口部21の吹き出し口22と、第2吹出口部31の吹き出し口32とが設けられている。2つの吹き出し口22,32は、左右方向、即ち車両幅方向に沿って並んで配置されている。吹き出し口22は、車両幅方向の中心を通る車両中心線CLの右側に配置されている。吹き出し口32は、車両中心線CLの左側に配置されている。2つの吹き出し口22,32は、フロントウインドウ15の下部15Aに近接する位置に配置されている。
【0011】
図1に示す車両11は、例えば、右側にハンドル14が設けられている。なお、本開示の車両11は、右側にハンドル14を設けた車両に限らず、左側にハンドル14を設けた構成でも良い。また、車両11は、ハンドル14を有しない、例えば、自動運転車両でも良い。本実施形態では、吹き出し口22が、ハンドル14側、即ち、運転席側に配置されている。
【0012】
デフロスタ10は、例えば、インストルメントパネル13内に設けられた空調装置17で調節された空調空気をフロントウインドウ15に吹き出す装置である。デフロスタ10は、空調装置17で調整された空調空気をフロントウインドウ15に吹き付けて、例えば、フロントウインドウ15の曇りを晴らす、あるいは、車室内の空調状態を変更する。なお、デフロスタ10は、空調装置17で調整された空調空気を吹き出す装置に限らず、外気を車室内に吹き出す装置でも良い。従って、本開示における空気は、空調装置17等で調整された空調空気に限らず、調整されていない外気等を含む概念である。
【0013】
空調装置17は、例えば、HVAC(Heating Ventilating,and Air Conditioning)であり、車両11の暖房、冷房、換気等を行う装置である。空調装置17は、例えば、アダプタ等を介してデフロスタ10の開口3(
図5参照)に接続され、空調空気をデフロスタ10の開口3に供給する。空調装置17は、外気、車内の空気、温風、冷風等の混合比率を調整した空調空気を生成する。
【0014】
次に、デフロスタ10の構成について説明する。
図2は、車両後方から見たフロントウインドウ15とデフロスタ10の位置関係を示している。
図3は、デフロスタ10を左側の後方上部から見た斜視図である。
図4は、デフロスタ10を前方から見た図である。
図5は、左側の後方上部から見たデフロスタ10を透過的に示す斜視図である。
図6は、右側の後方上部から見たデフロスタ10を透過的に示す斜視図である。
図7は、デフロスタ10を下方から見た図である。なお、
図2、
図5、及び
図6は、デフロスタ10の内部を透過的に示しており、デフロスタ10の内部に配置された部材(例えば、第1リブ24)や形状(例えば、第1絞り部23)を実線で示している。また、
図3の外観図と、
図5の内部を透過的に示した図とを比較することで、内部の部材や形状を識別することができる。
【0015】
図2~
図7に示すように、デフロスタ10は、開口3、第1ダクト部5、第2ダクト部7を備えている。開口3は、デフロスタ10の下方に設けられ、例えば、車両幅方向に長い長方形状をなす穴である。開口3は、例えば、アダプタ(図示略)を介して空調装置17と接続され、デフロスタ10内に空調空気を導入する。
【0016】
デフロスタ10は、開口3の形成された開口部9から上方に向かって、第1ダクト部5及び第2ダクト部7の2つのダクトに分岐している。第1ダクト部5は、車両幅方向における一方側(例えば、右側)に設けられ、基端部を開口3(開口部9)に接続されている。第2ダクト部7は、車両幅方向における他方側(例えば、左側)に設けられ、基端部を開口3(開口部9)に接続されている。本実施形態のデフロスタ10は、車両中心線CLに対して第2ダクト部7側、即ち、助手席側に寄った位置に配置されている(
図2参照)。なお、デフロスタ10は、車両中心線CLに対して第1ダクト部5側、即ち、運転席側に寄った位置に配置される構成でも良い。
【0017】
第1ダクト部5は、先端部に形成された第1吹出口部21の吹き出し口22から空調空気をフロントウインドウ15に吹き出す。また、第2ダクト部7は、先端部に形成された第2吹出口部31の吹き出し口32から空調空気をフロントウインドウ15に吹き出す。吹き出し口22,32の各々は、車両幅方向に長い略長方形状をなし、短辺方向に延びる格子22A,32Aによって区画されている。空調空気は、この格子22A,32Aによって区画された隙間から吹き出される。
【0018】
第1ダクト部5は、開口部9と接続される基端部から延び、第1絞り部23において空調空気が流れる通風路を絞られる。第1絞り部23は、開口3に比べて通風路を絞っており、通風路を流れる空調空気を加速させる。第1ダクト部5は、空調空気を送風する送風方向において、第1絞り部23の位置よりも下流側において通風路を広げた構成となっている。第1ダクト部5は、第1絞り部23よりも下流側において、車両幅方向における右側へと広がっており、広がった内部には複数の第1リブ24が設けられている。複数の第1リブ24は、車両幅方向において外側となる右側の位置に設けられている。本実施形態の複数の第1リブ24は、例えば、5つ設けられ、車両幅方向に沿って所定の間隔ごとに並んで配置されている。複数の第1リブ24の各々は、第1ダクト部5の前方側に設けられた前方側面28と、後方側に設けられた後方側面29とに接続された板状をなし、通風路を複数の通風路に区画している。複数の第1リブ24の各々は、空調空気の送風方向に対して所定の角度をもって配置され、第1絞り部23から下流へ排出された空調空気を車両幅方向の外側(右側)へと案内する。複数の第1リブ24は、例えば、最も左側の第1リブ24から右側へ順番に、より右側へ傾いた状態で配置されている。従って、最も右側の第1リブ24は、他の第1リブ24に比べて右側へと傾いている。なお、第1リブ24の数は、5つに限らず、1つ、又は2以上の複数個でも良い。第1リブ24の左側には、補助リブ25が配置されている。補助リブ25は、例えば、第1ダクト部5の左側に形成された第1内側面26の先端側面部26Bに近接した位置に配置され、先端側面部26Bと平行な方向に沿って形成されている。補助リブ25は、例えば、空調空気を先端側面部26Bに沿って流れるように機能するリブである。
【0019】
第1ダクト部5は、車両幅方向に長い筒形状をなし、車両幅方向の内側(左側)に形成された第1内側面26と、外側(右側)に形成された第1外側面27とを有する。第1外側面27は、開口部9の外側面から連続して形成され、第1絞り部23で通風路を絞った後、右側に広がるように湾曲して形成されている。第1外側面27は、第1絞り部23よりも下流側において右側に大きく湾曲し、通風路を急激に拡張している。開口部9から第1絞り部23において、第1外側面27の内側には、他の部分に比べて肉厚に形成された肉厚部30が形成されている。
【0020】
また、第2ダクト部7は、開口部9と接続される基端部から延び、第2絞り部33において空調空気が流れる通風路を絞られる。第2絞り部33は、開口3に比べて通風路を絞っており、通風路を流れる空調空気を加速させる。第2ダクト部7は、空調空気を送風する送風方向において、第2絞り部33の位置よりも下流側において通風路を広げた構成となっている。第2ダクト部7は、第2絞り部33よりも下流側において、車両幅方向における左側へと広がっている。第2絞り部33の下流側の開口、即ち、第2絞り部33から通風路を拡張させる部分には、複数の第2リブ34が設けられている。本実施形態の複数の第2リブ34は、例えば、3つ設けられ、車両幅方向に沿って所定の間隔ごとに並んで配置されている。複数の第2リブ34の各々は、第2ダクト部7の前方側に設けられた前方側面38と、後方側に設けられた後方側面39とに接続された板状をなし、通風路を複数の通風路に区画している(
図12参照)。複数の第2リブ34の各々は、空調空気の送風方向に対して所定の角度もって配置されている。第2絞り部33から下流側に流れる空調空気は、第2リブ34の各々によって車両幅方向に広がるように案内される。複数の第2リブ34は、例えば、最も右側の第2リブ34から左側へ順番に、より左側へ傾いた状態で配置されている。従って、最も左側の第2リブ34は、他の第2リブ34に比べて左側へ傾いている。なお、第2リブ34の数は、3つに限らず、1つ、又は2以上の複数個でも良い。
【0021】
第2ダクト部7は、車両幅方向に長い筒形状をなし、車両幅方向の内側(右側)に形成された第2内側面36と、外側(左側)に形成された第2外側面37とを有する。第2外側面37は、開口部9の外側面から連続して形成され、第2絞り部33で通風路を絞った後、左側に広がるように湾曲して形成されている。第2外側面37は、第2絞り部33よりも下流側において左側に大きく湾曲し、通風路を急激に拡張している。開口部9から第2絞り部33において、第2外側面37の内側には、他の部分に比べて肉厚に形成された肉厚部40が形成されている。
【0022】
第1ダクト部5の第1内側面26と、第2ダクト部7の第2内側面36とは、上流側の分岐部41において互いに接続されている。換言すれば、第1及び第2内側面26,36の各々は、分岐部41から下流側に向かって二股に分岐している。第1内側面26及び第2内側面36は、略V字状に分岐している。第1内側面26は、車両幅方向において第2内側面36と対向する位置に配置されている。そして、第1及び第2内側面26,36の各々は、車両中心線CL側へ湾曲して形成されている。
【0023】
第1内側面26は、基端側面部26Aと、先端側面部26Bを有する。
図8は、第1ダクト部5の第1内側面26と、第2ダクト部7の第2内側面36の辺部のみが見える位置、且つ後方側から透過的にデフロスタ10を見た図である。
図9は、デフロスタ10を左側から見た側面図である。
図10は、デフロスタ10を右側から見た側面図である。
図11は、基端側面部26Aが見える位置から見たデフロスタ10の斜視図である。
図12は、
図11に示すA-A線で切断した断面を示す断面図である。
図13は、
図11に示すB-B線で切断した断面を示す断面図である。なお、
図12及び
図13には、デフロスタ10を取り付けた場合のインストルメントパネル13とフロントウインドウ15の位置を示している。
【0024】
図8~
図13に示すように、基端側面部26Aは、分岐部41から車両中心線CLを交差する方向(
図8における右斜め上方)に延びている。基端側面部26Aは、例えば、車両中心線CLと交差する方向に延びる平面状をなしている。基端側面部26Aは、上流側から下流側に行くに従って、徐々に幅が狭くなっている。より具体的には、前方側面28から後方側面29に向かう方向における基端側面部26Aの幅が、上流側から下流側に行くに従って徐々に狭くなっている。第1ダクト部5は、開口3から第1絞り部23の先端に行くに従って、前方側面28と後方側面29との間の距離が徐々に狭くなっている。
【0025】
先端側面部26Bは、基端側面部26Aの下流側の先端から車両中心線CL側へ湾曲して形成されている。先端側面部26Bは、基端側面部26Aに対して所定の角度をなす方向へと湾曲している。基端側面部26Aと先端側面部26Bとの接続部分の曲率半径、即ち、接続位置P2の近傍の曲線を近似する円の半径は、例えば、30mmである。また、先端側面部26Bと後方側面29との接続部分である辺N1を、接続位置P2を中心に車両中心線CLと接する位置まで半時計回りに回転させた場合に、辺N1と、回転後の直線N2とがなす角度θ1は、例えば、10度である。また、基端側面部26Aと後方側面29との接続部分である辺N3と、辺N1とのなす角度θ2は、例えば、45度である。
【0026】
また、第1ダクト部5は、基端側面部26Aや第1絞り部23よりも下流側の位置、即ち、先端側面部26Bを設けた位置において、上方へ屈曲した後、前方側へと屈曲した形状をなしている。上記したように、第1ダクト部5は、第1絞り部23よりも下流側において、右方向へと拡張し、通風路を広げている。一方、第1ダクト部5は、第1絞り部23よりも下流側の位置において、前方側面28と後方側面29との間の距離を略一定としながら上方へ屈曲した後、前方へ屈曲している。従って、第1ダクト部5は、前後方向の幅を略一定として屈曲しながら、車両幅方向へ拡張している。
【0027】
また、第2内側面36は、第1ダクト部5の基端側面部26A及び先端側面部26Bと、車両幅方向において対向する位置に設けられている。第2内側面36は、分岐部41から車両中心線CL側へ湾曲している。第2内側面36は、車両中心線CL側へ延びる平面状をなしている。第2内側面36は、基端側面部26Aと対向する位置において、上流側から下流側に行くに従って、徐々に幅が狭くなっている(
図6参照)。換言すれば、第2ダクト部7は、開口3から第2絞り部33の先端に行くに従って前方側面38と後方側面39との間の距離が徐々に狭くなっている。
【0028】
第2内側面36の曲率半径は、例えば、300mmである。従って、本実施形態の第2内側面36の曲率半径は、第1ダクト部5の第1内側面26の曲率半径に比べて大きくなっている。換言すれば、デフロスタ10を助手席側にずらした場合に、運転席側の第1ダクト部5を、助手席側の第2ダクト部7に比べて車両中心線CL側へより急な角度で湾曲させた構造となっている。これにより、所謂、コアンダ効果によって、第1内側面26の内壁に沿った空調空気を、フロントウインドウ15の上方へと案内することが可能となる。なお、上記した第1内側面26及び第2内側面36の角度や曲率半径は、一例である。
【0029】
第2ダクト部7は、第1ダクト部5と同様に、第2絞り部33よりも下流側の位置において、上方へ屈曲した後、前方側へと屈曲した形状をなしている(
図14の角部53,55参照)。上記したように、第2ダクト部7は、第2絞り部33よりも下流側において、左方向へと拡張し、通風路を広げている。一方、第2ダクト部7は、第2絞り部33よりも下流側の位置において、前方側面38と後方側面39との間の距離を略一定としながら上方へ屈曲した後、前方へ屈曲している。
【0030】
また、
図8に示すように、車両幅方向における開口3の中心の位置である開口中心位置P3は、車両幅方向における中心を通る車両中心線CLに対し、第2ダクト部7側にずれた位置となっている。開口中心位置P3と、開口3における第1ダクト部5側の内壁との距離45は、開口中心位置P3と開口3における第2ダクト部7側の内壁との距離45と等しくなっている。
【0031】
開口中心位置P3を通り車両中心線CLに平行な直線47は、例えば、分岐部41よりも右側となっている。直線47と車両中心線CLとの距離48は、例えば、45mmである。分岐部41よりも上流側(開口部9との接続部分)の第1ダクト部5の通風路の大きさは、分岐部41よりも上流側の第2ダクト部7の通風路の大きさに比べて大きくなっている。例えば、分岐部41と第1外側面27(肉厚部30)の内壁との距離49は、90mmである。また、例えば、分岐部41と第2外側面37(肉厚部40)の内壁との距離51は、65mmである。従って、本実施形態のデフロスタ10において、第1ダクト部5の開口部9側の通風路の大きさと、第2ダクト部7の開口部9側の通風路の大ききの比率は、約3:2(=90:65)となっている。これにより、第1ダクト部5へより多くの空調空気を送り込むことが可能となる。
【0032】
次に、第1及び第2吹出口部21,31の通風路の構成について説明する。
図14は、
図13の第2吹出口部31の拡大図を示している。なお、第1吹出口部21の通風路の構成は、第2吹出口部31の通風路の構成と同様となっているため、その説明を適宜省略する。上記したように、第2ダクト部7は、第1ダクト部5と同様に、第2絞り部33よりも下流側の位置に形成された角部53において上方へ屈曲している。また、第2ダクト部7は、角部53よりも下流側の位置に形成された角部55において前方側へ屈曲している。第2ダクト部7は、角部53よりも下流側の位置において、前方側面38と後方側面39との間の距離57を略一定としながら屈曲している。
【0033】
第2吹出口部31は、前後方向において、前方側面38と後方側面39とを対向させて配置している。吹き出し口32付近において、後方側の後方側面39の内壁には、湾曲面61が形成されている。第2ダクト部7は、第2吹出口部31において、上方へ屈曲している。より具体的には、第2ダクト部7は、角部55から前方へ屈曲した後、さらに角部59において吹き出し口32側(上方)へ屈曲している。湾曲面61は、角部59よりも下流側の後方側面39に形成されている。湾曲面61は、車両幅方向において、後方側面39の内壁の全体に亘って形成されている。従って、湾曲面61は、略長方形状の吹き出し口32における長辺と略平行な方向へ延設されている。なお、湾曲面61は、吹き出し口32の長辺と略平行な方向において、後方側面39の一部や、後方側面39の複数箇所に形成された構成でも良い。
【0034】
湾曲面61は、フロントウインドウ15の上部に向かって湾曲して形成されている。例えば、湾曲面61は、上流側から下流側へ行くに従って後方側、即ち、フロントウインドウ15から離れる方向へ湾曲している。湾曲面61は、コアンダ効果によって上流側から流れてくる空調空気を引き付けて、フロントウインドウ15の中央上方へ空調空気を案内する。
【0035】
また、角部59から下流側において、前方側の前方側面38は、壁部を上方へ折り曲げて形成した屈曲部63を有する。屈曲部63は、前後方向の前方から後方に向かって、即ち、フロントウインドウ15から離れる方向へ屈曲して形成されている。屈曲部63と、前方側面38において角部59より前方側の部分とがなす内角は鋭角(例えば、70度)である。屈曲部63の内壁は、所定の角度をなす平面となっている。屈曲部63は、車両幅方向において、前方側面38の全体に亘って形成されている。従って、屈曲部63は、略長方形状の吹き出し口32における長辺と略平行な方向へ延設されている。なお、屈曲部63は、吹き出し口32の長辺と略平行な方向において、前方側面38の一部や、前方側面38の複数箇所に形成された構成でも良い。
【0036】
屈曲部63の基端(角部59)から先端(吹き出し口32)までの距離は、例えば、屈曲部63の基端からインストルメントパネル13までの距離によって制限される。より具体的には、
図14に示すように、吹き出し口32を設けた第2吹出口部31の先端部は、インストルメントパネル13に形成されたパネル開口13Aに下方から接触した状態で配置されている。吹き出し口32の上面は、インストルメントパネル13の下面に沿った方向となっている。吹き出し口32から吹き出される空調空気は、パネル開口13Aを介して吹き出される。屈曲部63の角部59から吹き出し口32までの距離は、例えば、角部59からパネル開口13Aの下面に沿った平面までの距離によって制限される。この場合、屈曲部63を後方側へと傾斜して形成することで、屈曲部63の長さをより長く確保することが可能となる。換言すれば、一旦前方へ突出させた前方側面38をより後方へ屈曲させて屈曲部63を形成することで、屈曲部63の長さを長くすることが可能となる。屈曲部63の内壁に沿った空調空気は、フロントウインドウ15へと吹き出される。本実施形態のデフロスタ10では、湾曲面61を設けることで、空調空気がコアンダ効果によって湾曲面61に引き寄せられるように流れ、屈曲部63から離間するように案内される。これにより、屈曲部63に沿って流れる空調空気が、後方側の空調空気によって進路を阻害されるのを抑制する。その結果、フロントウインドウ15の曇りを晴らすことが可能となる。
【0037】
また、第1及び第2吹出口部21,31の各々は、フロントウインドウ15の下部15Aに近接する位置に配置されている。詳述すると、屈曲部63は、フロントウインドウ15に近接した位置となっている。例えば、屈曲部63の先端と湾曲面61との前後方向に沿った距離67は、屈曲部63の先端とインストルメントパネル13との前後方向に沿った距離69に比べて若干だけ短くっている。また、湾曲面61の表面と、前方側面38側の角部55との距離、即ち、角部55から角部59の間において前方側面38と後方側面39とが上下方向で対向している距離71は、距離67に比べて若干だけ長くなっている。
【0038】
以上、上記した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態のデフロスタ10は、空調空気を導入する開口3と、車両11の幅方向である車両幅方向における右側(一方側の一例)に設けられ、基端部を開口3に接続され、先端部に形成された第1吹出口部21から空調空気をフロントウインドウ15に吹き出す第1ダクト部5と、車両幅方向における左側(他方側の一例)に設けられ、基端部を開口3に接続され、先端部に形成された第2吹出口部31から空調空気をフロントウインドウ15に吹き出す第2ダクト部7と、を備える。車両幅方向における開口3の中心の位置である開口中心位置P3が、車両幅方向における車両11の中心を通る車両中心線CLに対し、第2ダクト部7側にずれた位置である。第1ダクト部5は、車両幅方向において第2ダクト部7側に形成された第1内側面26を有する。第2ダクト部7は、車両幅方向において第1ダクト部5側に形成され、車両幅方向において第1内側面26と対向する位置に配置される第2内側面36を有する。第1内側面26は、車両中心線CLの一方側(右側)から車両中心線CLに近づく方向へ湾曲して形成される。第2内側面36は、車両中心線CLの他方側(左側)から車両中心線CLに近づく方向へ湾曲して形成される。
【0039】
これによれば、第1及び第2内側面26,36の各々は、車両中心線CLの両側から車両中心線CLへ近づく方向へ湾曲する。第1ダクト部5内を流れる空調空気の一部は、コアンダ効果によって、車両幅方向の内側に設けられた第1内側面26に引き寄せられるように流れる(
図8の矢印参照)。同様に、第2ダクト部7内を流れる空気の一部は、車両幅方向の内側に設けられた第2内側面36に引き寄せられるように流れる(
図8の矢印参照)。ここで、開口中心位置P3が車両中心線CLからずれた場合、フロントウインドウ15の中央上部で風速が低下し、フロントウインドウ15の上部まで空調空気が十分に送風されない虞がある。その結果、空調性能が低下する。これに対し、本実施形態のデフロスタ10では、第1及び第2内側面26,36を車両中心線CL側へ湾曲させることによって、フロントウインドウ15の中央上部まで広く空気を送風し、空調性能を向上させることが可能となる。即ち、開口中心位置P3が車両中心線CLからずれた位置の構造であっても、空調性能を向上させることが可能となる。
【0040】
図15は、デフロスタ10から空調空気を吹き出した時のフロントウインドウ15の風速分布をシミュレーションした結果を示している。
図15における細かいドットで示す領域81は、風速の早い領域、即ち、十分な風速を得られ空調空気を送風できている領域である。
図15における左に傾いた斜線のハッチングで示す領域82は、領域81よりも風速が遅い領域である。また、
図15における右に傾いた斜線のハッチングで示す領域83は、領域82よりも風速が遅い領域である。
図15に示すように、シミュレーションした結果では、フロントウインドウ15における車両幅方向の端部だけでなく、中央部の上方まで十分に空調空気が送風されていることが分かる。従って、開口中心位置P3を車両中心線CLからずれた位置(例えば、助手席側の位置)に配置した構造としながら、第1及び第2内側面26,36を車両中心線CL側へ湾曲させることで、フロントウインドウ15の全体に亘って十分な風速を得ることができ、フロントウインドウ15の曇りを晴らす晴れ性の向上等を図ることができる。
【0041】
(2)また、第1内側面26と第2内側面36とは、分岐部41で接続される。空調空気の送風方向において、分岐部41よりも上流側の第1ダクト部5の通風路の大きさ(
図8の距離49)が、分岐部41よりも上流側の第2ダクト部7の通風路の大きさ(
図8の距離51)に比べて大きくなっている。
【0042】
開口中心位置P3を第2ダクト部7側にずらした場合、第1ダクト部5は、第2ダクト部7に比べてより広い領域(フロントウインドウ15の領域)へ空調空気を送風することを要求される。そこで、第1ダクト部5の上流側の通風路を第2ダクト部7の通風路に比べて大きくし、第1ダクト部5へより多くの空調空気を送り込むことで、第1ダクト部5内の風量を確保して空調性能をより確実に向上することが可能となる。例えば、開口中心位置P3を助手席側へずらした場合、運転席側のフロントウインドウ15の晴れ性を向上できる。その結果、運転手の視界をより迅速に確保することが可能となる。
【0043】
(3)また、第1内側面26は、第2内側面36と接続される分岐部41から車両中心線CLを交差する方向に形成される基端側面部26Aと、基端側面部26Aの先端から車両中心線CLに近づく方向へ湾曲して形成される先端側面部26Bと、を有する。
【0044】
これによれば、第1ダクト部5内を流れる空調空気を、基端側面部26Aに沿って車両中心線CLを超えた位置まで案内できる。そして、基端側面部26Aによって案内した空調空気を、先端側面部26Bによって車両中心線CL側へ送風し、フロントウインドウ15の上方へと送風することが可能となる。
【0045】
(4)また、第1ダクト部5は、空調空気が流れる通風路を開口3に比べて絞った第1絞り部23と、空調空気の送風方向において第1絞り部23の位置よりも下流側の位置で、且つ車両幅方向において外側となる位置に設けられ、第1絞り部23から排出された空調空気を車両幅方向の外側へと案内する第1リブ24と、を有する。
【0046】
これによれば、第1絞り部23によって通風路を絞ることで、開口3から導入された空調空気の風速を加速させることが可能となる。また、第1リブ24によって、第1絞り部23で風速を速めた空調空気を、車両幅方向のより外側へと送風することが可能となる。これにより、フロントウインドウ15における右側の端部まで空調空気を送風して空調性能を向上できる。
【0047】
(5)また、第2ダクト部7は、空調空気が流れる通風路を開口3に比べて絞った第2絞り部33と、空調空気の送風方向において第2絞り部33から下流に流れる空調空気を案内する第2リブ34と、を有する。
【0048】
これによれば、第2絞り部33で風速を速めた空調空気を、第2リブ34によって各方向へ案内し拡散等させることが可能となる。これにより、第2ダクト部7側の空調性能を向上できる。
【0049】
(6)また、第1吹出口部21及び第2吹出口部31の各々は、車両11の前後方向である前後方向(車両前後方向の一例)における後方側の内壁に形成された湾曲面61を有する(
図14参照)。湾曲面61は、フロントウインドウ15の上部に向かって湾曲して形成される。
【0050】
これによれば、第1及び第2吹出口部21,31の吹き出し口22,32に向かって流れる空調空気は、コアンダ効果によって、湾曲面61に引き寄せられるように流れ、フロントウインドウ15の上部に向かって吹き出される。これにより、フロントウインドウ15の中央上部まで広く空調空気を送風し、空調性能を向上させることが可能となる。
【0051】
(7)また、第1吹出口部21及び第2吹出口部31の各々は、車両11の前後方向である前後方向における前方側の壁部を曲げて形成された屈曲部63を有する(
図14参照)。屈曲部63は、前後方向の前方から後方に向かって屈曲して形成される。
【0052】
屈曲部63を後方側へと傾斜して形成することで、屈曲部63の長さをより長く確保することが可能となる。換言すれば、屈曲部63の基端から先端までの長さ、即ち、屈曲部63に沿って空調空気を流す距離をより長くすることが可能となる。これにより、第1及び第2吹出口部21,31から吹き出される前の空調空気を、屈曲部63に沿って流し、例えば、フロントウインドウ15のより上方へと吹き出すことが可能となる。
【0053】
(8)また、第1吹出口部21及び第2吹出口部31の各々は、フロントウインドウ15の下部15Aに近接する位置に配置される。これによれば、第1及び第2吹出口部21,31の各々を、フロントウインドウ15の下部15Aにより近い位置に配置することで、インストルメントパネル13内に設けられた装置等を回避して第1及び第2ダクト部5,7を配設でき、フロントウインドウ15の下部15Aから上方へ空気を吹き出すことができる。ここでいう、装置等とは、例えば、ヘッドアップディスプレイ(HUD)などのインストルメントパネル13内に収納される装置である。
【0054】
尚、本願は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本願の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、分岐部41よりも上流側の第1ダクト部5の通風路の距離49(
図8参照)と、分岐部41よりも上流側の第2ダクト部7の通風路の距離51とは、同一でも良い。
また、分岐部41は、開口3に近接する位置でも良い。
また、第1ダクト部5は、第1絞り部23を備えなくとも良い。
また、第2ダクト部7は、第2絞り部33を備えなくとも良い。
また、第1吹出口部21及び第2吹出口部31は、湾曲面61を備えなくとも良い。
また、第1吹出口部21及び第2吹出口部31は、屈曲部63を備えなくとも良い。
また、第1吹出口部21及び第2吹出口部31は、フロントウインドウ15の下部15Aに近接せず、フロントウインドウ15の下部15Aから一定の距離だけ離れた位置に配置される構成でも良い。
また、上記実施形態のデフロスタ10の構成や形状等は、一例である。例えば、デフロスタ10は、第1ダクト部5や第2ダクト部7以外のダクトを備えても良い。デフロスタ10は、例えば、第1外側面27の右側に設けられたサイドダクトや、第2外側面37の左側に設けられたサイドダクトを備えても良い。
【符号の説明】
【0055】
3 開口、5 第1ダクト部、7 第2ダクト部、10 デフロスタ、11 車両、15 フロントウインドウ、21 第1吹出口部、24 第1リブ、22 吹き出し口、26 第1内側面、26A 基端側面部、26B 先端側面部、31 第2吹出口部、32 吹き出し口、33 第2絞り部、34 第2リブ、36 第2内側面、41 分岐部、61 湾曲面、63 屈曲部、P3 開口中心位置、CL 車両中心線。