(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】保持シール材、保持シール材の製造方法及び排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
F01N3/28 311P
(21)【出願番号】P 2018102514
(22)【出願日】2018-05-29
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 将行
(72)【発明者】
【氏名】内村 玲夫
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-83154(JP,A)
【文献】特表2013-505390(JP,A)
【文献】特開2015-110905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面および当該第1の表面に対向する第2の表面を有する第1のマットと、
前記第1のマットの前記第2の表面上に積層された第2のマットと、
を少なくとも備える保持シール材であって、
複数の切れ目が、前記第1の表面から前記第2の表面に向けて設けられ、
前記複数の切れ目が、
前記第1の表面から前記第2の表面に向けて、前記第1のマットの厚みの途中位置まで到達するように設けられた第1の切れ目と、
前記第1のマットを貫通するとともに、前記第2のマットの厚みの途中位置まで到達するように設けられた第2の切れ目と、を含む、
保持シール材。
【請求項2】
請求項1に記載の保持シール材であって、
前記切れ目が、当該保持シール材の主面内において凸部を描くように形成され、
前記凸部の少なくとも一部が、前記第1の切れ目によって形成される、
保持シール材。
【請求項3】
ケーシングと、
前記ケーシングに収容された排ガス処理体と、
前記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、前記排ガス処理体及び前記ケーシングの間に配設された保持シール材と、を備える排ガス浄化装置であって、
前記保持シール材は、請求項1または2に記載の保持シール材であり、 前記第2のマットが内側に配置されるように前記排ガス処理体の周囲に巻き付けられている、
排ガス浄化装置。
【請求項4】
第1のシートと第2のシートを積層して固定し、
垂直方向に突出した板状の打抜刃を有する打抜板を、前記第1のシートの側から押し当て、前記第1のシートから打抜かれた第1のマット及び前記第2のシートから打抜かれた第2のマットの積層体である保持シール材を製造する保持シール材の製造方法であって、
前記打抜刃は、第1の打抜刃と、当該第1の打抜刃より高さの小さい第2の打抜刃と、当該第1の打抜刃より高さが小さく当該第2の打抜刃より高さの大きい第3の打抜刃を含み、
前記第1の打抜刃が、前記第1のシート及び前記第2のシートを貫通して保持シール材の外形を打抜き、
前記第2の打抜刃が、前記第1のシートの表面から当該第1のシートの厚みの途中位置まで到達する第1の切れ目を形成し、
前記第3の打抜刃が、前記第1のシートを貫通するとともに、前記第2のシートの厚みの途中位置まで到達する第2の切れ目を形成する、
保持シール材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持シール材、保持シール材の製造方法及び排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
保持シール材は、自動車からの排気ガスや、石炭や重油などを燃焼させたときの排気ガスを浄化する触媒担体または排気フィルタ担体を、排気管に保持するまたは排気ガスをシールするために用いられる。保持シール材は例えばマットの形状を有する。
【0003】
保持シール材が適用される箇所においては、近年では保持シール材の厚さを厚くして保温性能を高めようとする設計手法も採られている。こうした保持シール材において、保持力の要因たる無機繊維の反発力を確保するには、保持シール材の単位面積当たりの重量を大きくする必要がある。
【0004】
上記に対応するための技術の一つとして、例えば特許文献1は、保持シール材を構成するマットを複数枚組み合わせすることにより、重量を大きくした保持シール材を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の保持シール材において、複数枚のマットは、ミシン加工による結束部によって互いに固定されている。しかし、このような構成においては、複数枚のマット同士が結束部によって固定されているため、マットは互いに長手方向に移動することができない。従って、マットの位置がずれている場合に、マット間の相対的な位置の微調整を行うことが困難であり、排ガス処理体の周囲に巻き付ける際における作業性、すなわち巻き付け性が低下する可能性がある。
【0007】
そこで本発明では、複数枚のマットが積層された保持シール材であっても、優れた巻き付け性を確保する保持シール材、保持シール材の製造方法及び排ガス浄化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保持シール材は、第1の表面および当該第1の表面に対向する第2の表面を有する第1のマットと、前記第1のマットの前記第2の表面上に積層された第2のマットと、を少なくとも備える保持シール材であって、複数の切れ目が、前記第1の表面から前記第2の表面に向けて設けられ、前記複数の切れ目が、前記第1の表面から前記第2の表面に向けて、前記第1のマットの厚みの途中位置まで到達するように設けられた第1の切れ目と、前記第1のマットを貫通するとともに、前記第2のマットの厚みの途中位置まで到達するように設けられた第2の切れ目と、を含む。
【0009】
本発明の保持シール材の一態様として例えば、前記切れ目が、当該保持シール材の主面内において凸部を描くように形成され、前記凸部の少なくとも一部が、前記第1の切れ目によって形成される。
【0010】
本発明の排ガス浄化装置は、ケーシングと、前記ケーシングに収容された排ガス処理体と、前記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、前記排ガス処理体及び前記ケーシングの間に配設された保持シール材と、を備え、前記保持シール材は、前記第2のマットが内側に配置されるように前記排ガス処理体の周囲に巻き付けられている。
【0011】
本発明の保持シール材の製造方法は、第1のシートと第2のシートを積層して固定し、垂直方向に突出した板状の打抜刃を有する打抜板を、前記第1のシートの側から押し当て、前記第1のシートから打抜かれた第1のマット及び前記第2のシートから打抜かれた第2のマットの積層体である保持シール材を製造する保持シール材の製造方法であって、前記打抜刃は、第1の打抜刃と、当該第1の打抜刃より高さの小さい第2の打抜刃と、当該第1の打抜刃より高さが小さく当該第2の打抜刃より高さの大きい第3の打抜刃を含み、 前記第1の打抜刃が、前記第1のシート及び前記第2のシートを貫通して保持シール材の外形を打抜き、前記第2の打抜刃が、前記第1のシートの表面から当該第1のシートの厚みの途中位置まで到達する第1の切れ目を形成し、前記第3の打抜刃が、前記第1のシートを貫通するとともに、前記第2のシートの厚みの途中位置まで到達する第2の切れ目を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の保持シール材は、第1のマット及び第2のマットに切れ目を設けてあるため、保持シール材を排ガス処理体に巻き付ける際、切れ目が拡大して優れた巻き付け性及び良好な作業性を確保することができる。また、本発明の排ガス浄化装置に保持シール材を隙間なく巻き付けることができ、排ガス浄化装置の生産性を確保しながら排ガスの漏れを防止することができる。そして、本発明の保持シール材の製造方法により、品質の安定した所望の保持シール材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る保持シール材を模式的に示す斜視図。
【
図2】本発明に係る保持シール材を排ガス浄化装置に巻き付けた状態の一例を示す斜視図。
【
図3】本発明に係る保持シール材に設けられた切れ目の第1の実施形態の一例を示し、(a)部分断面図、(b)排ガス処理体に巻き付けた断面図。
【
図4】本発明に係る保持シール材に設けられた切れ目の第2の実施形態の一例を示し、(a)部分断面図、(b)排ガス処理体に巻き付けた断面図。
【
図5】本発明に係る保持シール材に設けられた切れ目の第3の実施形態の一例を示し、(a)斜視図、(b)(a)のA-A断面図、(c)(a)のB-B断面図。
【
図6】本発明に係る保持シール材に設けられた切れ目の第3の実施形態の配置状態を示す斜視図、(a)実施例1、(b)実施例2、(c)実施例3。
【
図7】本発明に係る保持シール材の製造方法の一例を示し、(a)シートの接合状態を示す模式図、(b)接着剤による接合部の断面図、(c)ステッチによる接合部の断面図。
【
図8】本発明に係る保持シール材の製造に用いられる打抜板の一例を示し、(a)斜視図、(b)(a)のA部で囲まれた打抜刃の透視図、(c)打抜刃の高さの相違を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る保持シール材を模式的に示す斜視図である。
図1に基づいて保持シール材を詳述する。
【0015】
本実施形態に係る保持シール材10は、所定の長手方向Xの長さ、幅方向Yの幅及び厚さを有し、平面視略矩形状の第1のマット20と第2のマット30と、第1のマット20及び第2のマット30を接合する接合部40と、を備える。そして、保持シール材10は、第1のマット20と第2のマット30との積層体構造である。
【0016】
第1のマット20は、第1の表面21と当該第1の表面21に対向する第2の表面22を有している。第1のマット20には、第1の表面21から第2の表面22に向けて、少なくとも一つの切れ目23が、少なくとも第1のマット20の厚みの途中位置まで到達するように設けられている。本実施形態では、切れ目23は2箇所設けられているが、切れ目23の形状、位置、数等には限定されない。
【0017】
保持シール材10は、長手方向側の端部のうち、一方の端部には、突出部11が形成されており、他方の端部には、窪み部12が形成されている。突出部11及び窪み部12は、後述する排ガス浄化装置100を組み立てるために排ガス処理体130に保持シール材10を巻き付けた際に、突出部11と窪み部12が互いに嵌合するような形状となっている。
【0018】
本実施形態に係る保持シール材10では、保持シール材10を構成するマット20、30は、無機繊維からなる素地マットに対してニードリング処理を施して得られるニードルマットであることが望ましい。ニードリング処理とは、ニードル等の繊維交絡手段を素地マットに対して抜き差しすることをいう。第1のマット20及び第2のマット30では、比較的平均繊維長の長い無機繊維がニードリング処理により3次元的に交絡している。第1のマット20及び第2のマット30は、長手方向に垂直な幅方向でニードリング処理されている。なお、交絡構造を呈するために、無機繊維はある程度の平均繊維長を有しており、例えば、無機繊維の平均繊維長は、50μm~100mmであることが望ましい。
【0019】
本実施形態に係る保持シール材10では、保持シール材10の嵩高さを抑えたり、排ガス浄化装置100の組み立て前の作業性を高めたりするために、保持シール材10を構成するマットに、さらに有機バインダ等のバインダが含まれていてもよい。
【0020】
図1に示す保持シール材10では、厚さ1.5~15mmの2枚のマットが積層されている例を示しているが、本発明に係る保持シール材10において、積層するマットの数は特に限定されず、3枚以上であってもよい。
【0021】
(排ガス浄化装置)
図2は、本発明に係る排ガス浄化装置100の一例を模式的に示す斜視図である。
図2に基づいて排ガス浄化装置と保持シール材について詳述する。
【0022】
排ガス浄化装置100は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状の排ガス処理体130と、排ガス処理体130を収容するケーシング120と、排ガス処理体130とケーシング120との間に配設され、排ガス処理体130を保持する保持シール材10とから構成されている。
【0023】
ケーシング120の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と排ガス浄化装置100を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続される。排ガス処理体130として、各々のセルにおけるいずれか一方が封止材によって目封じされたハニカムフィルタを用いることができる。
【0024】
本実施形態では、排ガス処理体130の周囲に第2のマット30の内面が巻き付けられ、第2のマット30が内側に配置される。第2のマット30の外側に巻き付けられる第1のマット20には、切れ目23が設けてあるため、巻き付けの際、切れ目23が巻き付け方向に広がり、内外周の長さの差(内外周長差)を埋めることができ、排ガス処理体130の外周を隙間なく巻き付けることができ、排ガスの漏れの抑制と作業性を良好とすることができる。また、排ガス浄化装置100においては、保持シール材10は、突出部11と窪み部12が嵌合して嵌合部13を形成しているため、保持シール材10において隙間が生じることをより防止でき、排ガス漏れを抑制することができる。そして、排ガス浄化装置100の生産性を確保しながら排ガスの漏れを防止することができる。
【0025】
図3から
図6に基づいて、切れ目23の実施形態について詳述する。
【0026】
図3は、切れ目23の第1の実施形態を示す概念図である。
図3(a)に示されるように、第1の実施形態の切れ目23は、第1のマット20の厚みの途中位置まで到達するように設けられている。排ガス処理体130に保持シール材10を巻き付けた時に、切れ目23が広がる(
図3(b)参照)。
【0027】
本実施形態の保持シール材10において、巻き付け前は第1のマット20および第2のマット30が一体となっているが、巻き付けの時に、第1のマット20において切れ目23が到達していない切り残し部分が裂け、第1のマット20が巻き付け方向に広がる。この結果、保持シール材10の排ガス処理体130への巻き付け作業が容易になる。
【0028】
また、排ガス処理体130の巻き付け断面は略円形状であるため、排ガス処理体130の外周に直接接する第2のマット30に比較して、第2のマット30より外側に配置される第1のマット20の方が長さを必要とするが、切れ目23が巻き付け方向に広がり、第1のマット20と第2のマット30との内外周長差を埋めることが可能となる。
【0029】
図4は、切れ目23の第2の実施形態を示す概念図である。
図4(a)に示されるように、第2の実施形態の切れ目23は、第1のマット20を貫通するとともに第2のマット30の厚みの途中まで到達するよう設けられている。第1の実施形態と同様に、排ガス処理体130に保持シール材10を巻き付けた時に、切れ目23が広がる(
図4(b)参照)。切れ目23が巻き付け方向に広がり、第1のマット20と第2のマット30との内外周長差を埋めることが可能となる。
【0030】
第1の実施形態では、保持シール材10の搬送時、垂れ下がりなどの取り扱い性が改善され、第2の実施形態では、巻き付け性が向上する。即ち、第1の実施形態では、第2の実施形態に比較して取扱性が良好となり、第2の実施形態では、第1の実施形態に比較して巻き付け性が向上する特徴を有する。
【0031】
本実施形態の切れ目23は、第1のマット20と第2のマット30とが接合部40で固定される本実施形態の保持シール材10において、2つのマット20、30での巻き付けで生じる内外周長差を補完する有効な構成である。
【0032】
図5は、切れ目23の第3の実施形態を示す概念図である。第3の実施形態の切れ目23は、第1のマット20の厚みの途中位置まで到達するように設けられている第1の実施形態と同じ第1の切れ目23a(
図5(b)参照)と、第1のマット20を貫通するとともに第2のマット30の厚みの途中まで到達するよう設けられている第2の実施形態と同じ第2の切れ目23b(
図5(c)参照)との2種類が併用されている。
【0033】
切れ目23の形状は凸部50を描く様に形成されている。凸部50は、凸部50の基辺となる第1の辺51と、第1の辺51と直交し側面を形成する第2の辺52と、第2の辺52同士を繋げる第3の辺53を有する。即ち、第1の実施形態と第2の実施形態の併用である。各辺51、52、53に対して、第1の切れ目23aと第2の切れ目23bとを適時配置させることが可能である。また、凸部50は逆から見れば凹部でもあり、凸部50は凹部も含むと解釈して良い。
【0034】
本実施形態の保持シール材10において、排ガス処理体130への巻き付けの時に、第1のマット20において第1の切れ目23aが到達していない切り残し部分が裂け、第1のマット20が巻き付け方向に広がる。この結果、保持シール材10の排ガス処理体130への巻き付け作業が容易になる。また、排ガス処理体130の巻き付け断面は略円形状であるため、排ガス処理体130の外周に直接接する第2のマット30に比較して、第2のマット30より外側に配置される第1のマット20の方が長さを必要とするが、第1の切れ目23aが第2の切れ目23bに比べて巻き付け方向に広がり、第1のマット20と第2のマット30との内外周長差を埋めることが可能となる。
【0035】
尚、第1のマット20の厚みに対する切れ目23の長さの割合は、60%~99%の範囲に設定することが好ましく、70%~99%の範囲がより好ましく、80%~99%の範囲がさらに好ましい。第2のマット30の厚みに対する切れ目23の第2のマット30中の長さの割合は、1%~60%の範囲に設定することが好ましく、20%~60%の範囲がより好ましく、40%~60%の範囲がさらに好ましい。
【0036】
図6は、
図5の第3の実施形態の各実施例を示す概念図であり、(a)は実施例1、(b)は実施例2、(c)は実施例3である。説明を分かりやすくするために、第1の切れ目23aを実線で示し、第2の切れ目23bを破線で示す。
【0037】
実施例1は、第1の辺51と第2の辺52に第2の切れ目23bが配置され、第3の辺53に第1の切れ目23aが配置されている。実施例2は、第1の辺51に第2の切れ目23bが配置され、第2の辺52と第3の辺53に第1の切れ目23aが配置されている。実施例3は、第1の辺51と第3の辺に第2の切れ目23bが配置され、第2の辺52に第1の切れ目23aが配置されている。
【0038】
第1の切れ目23aと第2の切れ目23bとを併用し、それぞれの範囲を定めることにより、機能、用途に合わせて使い分けることが可能となる。即ち、実施例1は巻き付け性の良好さを重視した保持シール材10であり、比較的排ガス処理体130の径が小さい場合に適している。また、実施例2は、形状維持の取扱性を重視した保持シール材10であり、比較的排ガス処理体130の径が大きい場合に適している。実施例3は、実施例1と実施例2の中間に位置し、両者のバランスを取っている。
【0039】
これにより、第1の実施形態の第1の切れ目23aの形状維持の良好な取扱性と第2の実施形態の第2の切れ目23bの巻き付けの良好な作業性を併せ持つことが可能な保持シール材10を提供できる。
【0040】
(製造方法)
本実施形態の保持シール材10の製造方法について、
図7及び
図8に基づいて説明する。
【0041】
無機質繊維の第1のシート60と第2のシート61とを接合し、上下のシート60、61が完全に動かないように固定する。接合固定される接合部40は、接着剤40a(
図7(b)参照)、ステッチ40b(
図7(c)参照)、両面テープ等であり、接合部40の固定手段は限定しない。
【0042】
接合されたシート60、61は、
図8(a)に示される垂直方向に突出した板状の打抜刃70を有する打抜板71により裁断加工され、複数の保持シール材10に打抜かれる。第1のマット20は、第1のシート60から打抜かれ、第2のマット30は、第2のシート61から打抜かれる。
【0043】
打抜刃70は第1の打抜刃70aと第1の打抜刃70aより高さの小さい第2の打抜刃70bを有している(
図8(c)参照)。
図8において、第1の打抜刃70aは破線で示され、第2の打抜刃70bは実線で示されている。
【0044】
第1の打抜刃70aは、第1のシート60及び第2のシート61を貫通して保持シール材10の外形を打抜く。また、第2の打抜刃70bは刃の高さが第1の打抜刃70aより小さい。また、第2の打抜刃70bの高さを調整することにより、第1のシート60の表面から当該第1のシート60の厚みの途中位置まで到達する第1の切れ目23aを形成することができる(
図3の実施形態)。また、第2の打抜刃70bの高さを調整することにより、第1のシート60の表面から当該第1のシート60を貫通するとともに、第2のシート61の厚みの途中位置まで到達する第2の切れ目23bを形成することもできる(
図4の実施形態)。
【0045】
図5、
図6の実施形態の保持シール材10を製造するためには、
図8(c)の様な第3の打抜刃70cを打抜板71に設ければよい。第3の打抜刃70cは、第1の打抜刃70aより高さが小さく第2の打抜刃70bより高さが大きい。これにより、第2の打抜刃70bが、第1のシート60の表面から第1のシート60の厚みの途中位置まで到達する第1の切れ目23aを形成し、第3の打抜刃70cが、第1のシート60を貫通するとともに、第2のシート61の厚みの途中位置まで到達する第2の切れ目23bを形成する、
【0046】
第1のシート60と第2のシート61の打抜き加工は、打抜刃70が立設された打抜板71が用いられる。当該打抜板71はプレス機に設置され、加工板上に載置された第1のシート60と第2のシート61の積層体が打抜板71によって打抜き加工され、打抜き加工されたシート60、61(すなわちマット)は、その状態で作業台へ搬送され、保持シール材10が製品として回収される。
【0047】
本実施形態の打抜板71に設けられる打抜刃70において、第1の打抜刃70aは、全周と、各列と、所定間隔の行毎に配置され、第2の打抜刃70bは、行方向において第1の打抜刃70aの間に複数枚配置されている。第1の打抜刃70aにより、保持シール材10毎に分割され、第2の打抜刃701bにより、切れ目23が形成される。そして、第2の打抜刃70bの高さを変えることにより第1の切れ目23aと第2の切れ目23bを選択することができる。また、第2の打抜刃70bに加えて第3の打抜刃70cを採用することにより、第1の切れ目23aと第2の切れ目23bを同時に形成することができる。
【0048】
打抜刃70は、帯状の打抜刃を所定の形状に屈曲させて固定したり、複数の打抜刃を連続して固定したりすることにより、所定の形状をなすように設けられている。打抜刃70の材質は、例えば各種金属材料、セラミックス材料等が挙げられる。本実施形態では、所定の形状に屈曲する際の加工性が良好であるという観点から、炭素鋼を採用している。また、打抜刃70の刃先の形状は、例えば両刃及び片刃が挙げられる。本実施形態では、無機質繊維シート60、61を打ち抜く際の抵抗を低減するという観点から、刃先の形状が両刃である打抜刃70を採用している。なお、打抜刃70の厚さは、特に限定されないが、0.5~1.5mm程度の範囲であり、本実施形態では厚さ1mmの打抜刃70を採用している。
【0049】
尚、打抜き加工の詳細は、本出願人の特開2012-26074号公報を参照されたい。
【0050】
本実施形態では、第1のマット20と第2のマット30が独立して長手方向に移動可能ではなく、巻き付け維持や曲げ時に第1のマット20または第1のマット20及び第2のマット30に設けられた切れ目23が拡大して巻付性を向上させている。また、切れ目23の深さを調整することにより、巻き付け性や形状維持の取扱性に配慮できる優れた保持シール材10である。
【0051】
また、第1のマット20と第2のマット30の全長を実質的に同じとすることにより、保持シール材10を容易に設計、製造することができる。
【0052】
本実施形態の切れ目23について、第1の切れ目23aと第2の切れ目23bの2種類を説明したが、切れ目23の種類を増やすことも可能である。
【0053】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の保持シール材、保持シール材の製造方法及び排ガス浄化装置は、保持シール材の優れた巻き付け性を要望する分野に適合可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 保持シール材
11 突出部
12 窪み部
13 嵌合部
20 第1のマット
21 第1の表面
22 第2の表面
23 切れ目
23a 第1の切れ目
23b 第2の切れ目
30 第2のマット
40 接合部
50 凸部
60 第1のシート
61 第2のシート
70 打抜刃
70a 第1の打抜刃
70b 第2の打抜刃
71 打抜板
100 排ガス浄化装置
120 ケーシング
130 排ガス処理体