(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】道路境界検出装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/60 20170101AFI20220802BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220802BHJP
G06T 7/593 20170101ALI20220802BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G06T7/60 200J
G06T7/00 650A
G06T7/593
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2018109347
(22)【出願日】2018-06-07
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 咲子
(72)【発明者】
【氏名】大石 智之
(72)【発明者】
【氏名】木下 修
【審査官】藤原 敬利
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-006885(JP,A)
【文献】特開2016-162323(JP,A)
【文献】特開2017-037472(JP,A)
【文献】特開2011-248638(JP,A)
【文献】特開2012-033149(JP,A)
【文献】特開2015-184891(JP,A)
【文献】特開2007-264714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00-21/13
B60R 21/34-21/38
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G06T 1/00- 1/40
G06T 3/00- 9/40
G06V 10/00-20/90
G08G 1/00-99/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路境界を検出する道路境界検出装置(230)であって、
ステレオカメラ(412)で撮影された左右の画像を基準画像及び比較画像として用いて、前記基準画像に存在する物体までの距離を表す距離画像を生成する距離画像生成部(231)と、
前記距離画像内で隣接する画素の間の距離の差が予め定めた距離閾値以上となる画素から、複数の境界候補点(CP)を抽出する境界候補点抽出部(23
2)と、
前記複数の境界候補点から複数の
直線状の道路境界候補を推定する推定処理を実行する道路境界候補推定部(23
3)と、
前記複数の道路境界候補の中から道路境界を選択する選択処理を実行する境界選択部(23
4)と、
を備え、
前記境界選択部は、
各道路境界候補に関して、予め定められた複数の特徴量を算出する特徴量算出部(241)と、
各特徴量と境界線尤度との予め定められた関係を用いて、前記複数の特徴量に対応する複数の境界線尤度を算出する尤度算出部(242)と、
各道路境界候補に関して、前記複数の境界線尤度を統合して統合尤度を算出する統合尤度算出部(243)と、
前記複数の道路境界候補の中で前記統合尤度が最も大きな道路境界候補を前記道路境界として選択する選択実行部(244)と、
を備え
、
各道路境界候補に関する前記複数の特徴量は、
前記基準画像の基準点から当該道路境界候補までの距離である第1特徴量と、
前記基準画像内における当該道路境界候補の傾きである第2特徴量と、
当該道路境界候補を構成する境界候補点の数である第3特徴量と、
当該道路境界候補の線分長である第4特徴量と、
を含み、
前記第1特徴量と前記第2特徴量と前記第4特徴量のそれぞれに対応する境界線尤度は、当該特徴量の増大に伴って当該境界線尤度が一旦上昇した後に下降する曲線となり、
前記第3特徴量に対応する境界線尤度は、前記第3特徴量が増大するほど増大する、
道路境界検出装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の道路境界検出装置であって、更に、
前記選択実行部によって前記道路境界が選択された後に、当該道路境界からの距離が許容範囲内にある複数の境界候補点を再抽出し、当該複数の境界候補点を用いて、前記道路境界候補推定部による前記推定処理と、前記境界選択部による前記選択処理とを再実行させる境界選択再実行部(235)を備える、道路境界検出装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の道路境界検出装置であって、更に、
前記基準画像の消失点を検出する消失点検出部(253)を備え、
前記道路境界候補推定部は、各道路境界候補について、当該道路境界候補の延長線と前記消失点との距離が閾値以上の場合に、当該道路境界候補を前記複数の道路境界候補から除外する、道路境界検出装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の道路境界検出装置であって、更に、
前記基準画像内の道路区画線を検出する道路区画線検出部(251)を備え、
前記境界候補点抽出部は、各境界候補点について、当該境界候補点が前記道路区画線上に存在する場合に、当該境界候補点を前記複数の境界候補点から除外する、道路境界検出装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の道路境界検出装置であって、更に、
前記基準画像内の移動体を検出する移動体検出部(252)を備え、
前記境界候補点抽出部は、各境界候補点について、当該境界候補点が前記移動体上に存在する場合に、当該境界候補点を前記複数の境界候補点から除外する、道路境界検出装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の道路境界検出装置であって、更に、
前記境界選択部によって過去に選択された道路境界を構成する複数の境界候補点を、複数の過去境界候補点として記憶する候補点記憶部(261)と、
前記複数の過去境界候補点から、現在の前記基準画像内における当該複数の過去境界候補点の位置を推定する現在位置推定部(262)と、
を備え、
前記道路境界候補推定部は、前記境界候補点抽出部で抽出された前記複数の境界候補点に加えて、前記推定された位置での前記複数の過去境界候補点を使用して、前記複数の道路境界候補を推定する、道路境界検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路境界を検出する道路境界検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、縁石などの路側物を検出する路側物検出装置が開示されている。この路側物検出装置では、自車両の近傍領域における撮影対象の高さを検出し、その高さの変化から道路モデルを推定し、道路モデルを遠方まで外挿して仮想線を設定し、その仮想線を中心とした一定範囲においてエッジを探索し、探索されたエッジから路側物を検出する。この従来技術では、遠方において測距精度が低下することを考慮して、近傍領域における高さの変化を利用して路側物の境界を検出している。路側物の境界は、道路境界としても利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本願の発明者は、従来技術では道路境界における高さの変化が小さいとき(例えば歩道と路面がほぼ同じ高さのとき)に、道路境界を正しく検出できない場合があるという問題があることを見出した。そこで、上述した従来技術とは異なる方法で道路境界を検出する技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態によれば、道路境界を検出する道路境界検出装置(230,230a,230b,230c)が提供される。この道路境界検出装置は、ステレオカメラ(412)で撮影された左右の画像を基準画像及び比較画像として用いて、前記基準画像に存在する物体までの距離を表す距離画像を生成する距離画像生成部(231)と;前記距離画像内で隣接する画素の間の距離の差が予め定めた距離閾値以上となる画素から、複数の境界候補点(CP)を抽出する境界候補点抽出部(232)と;前記複数の境界候補点から複数の道路境界候補を推定する推定処理を実行する道路境界候補推定部(233)と;前記複数の道路境界候補の中から道路境界を選択する選択処理を実行する境界選択部(234)と;を備える。前記境界選択部は、各道路境界候補に関して、予め定められた複数の特徴量を算出する特徴量算出部(241)と;各特徴量と境界線尤度との予め定められた関係を用いて、前記複数の特徴量に対応する複数の境界線尤度を算出する尤度算出部(242)と;各道路境界候補に関して、前記複数の境界線尤度を統合して統合尤度を算出する統合尤度算出部(243)と;前記複数の道路境界候補の中で前記統合尤度が最も大きな道路境界候補を前記道路境界として選択する選択実行部(244)と;を備える。各道路境界候補に関する前記複数の特徴量は、前記基準画像の基準点から当該道路境界候補までの距離である第1特徴量と、前記基準画像内における当該道路境界候補の傾きである第2特徴量と、当該道路境界候補を構成する境界候補点の数である第3特徴量と、当該道路境界候補の線分長である第4特徴量と、を含む。前記第1特徴量と前記第2特徴量と前記第4特徴量のそれぞれに対応する境界線尤度は、当該特徴量の増大に伴って当該境界線尤度が一旦上昇した後に下降する曲線となり、前記第3特徴量に対応する境界線尤度は、前記第3特徴量が増大するほど増大する。
【0006】
この道路境界検出装置によれば、複数の境界候補点から得られる複数の道路境界候補のなかで、特徴量から算出される統合尤度が最も大きなものを道路境界として選択するので、道路境界を精度良く推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態としての自動運転制御システムの構成を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態における道路境界検出部の機能ブロック図。
【
図3】第1実施形態における道路境界検出処理のフローチャート。
【
図4】ステレオカメラの画像から視差画像を生成する処理の説明図。
【
図5】視差画像から高さ変化画素を求める処理の説明図。
【
図6】高さ変化画素から境界候補点を抽出する処理の説明図。
【
図7】境界候補点から推定される道路境界候補を示す図。
【
図10】境界候補点数と境界線尤度の関係を示すグラフ。
【
図11】第1実施形態における道路境界検出処理の一例を示す説明図。
【
図12】第2実施形態における道路境界検出部の機能ブロック図。
【
図13】第2実施形態における道路境界検出処理のフローチャート。
【
図14A】第2実施形態における道路境界検出処理の一例を示す説明図。
【
図14B】第2実施形態における道路境界検出処理の一例を示す説明図。
【
図15】第3実施形態における道路境界検出部の機能ブロック図。
【
図16】第3実施形態における道路境界検出処理のフローチャート。
【
図17】道路区画線上に検出された境界候補点の説明図。
【
図18】移動体上に検出された境界候補点の説明図。
【
図19】道路境界候補から消失点までの距離の説明図。
【
図20】第4実施形態における道路境界検出部の機能ブロック図。
【
図21】第4実施形態における道路境界検出処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A. 第1実施形態:
図1に示すように、第1実施形態の車両50は、自動運転制御システム100を備える。自動運転制御システム100は、自動運転ECU200(Electronic Control Unit)と、車両制御部300と、前方検出装置410と、後方検出装置420と、支援情報取得部500と、を備える。なお、本明細書において、車両50を「自車両50」とも呼ぶ。
【0009】
自動運転ECU200は、CPUとメモリとを含む回路である。自動運転ECU200は、不揮発性記憶媒体に格納されたコンピュータプログラムを実行することによって、自動運転制御部210と、状況認知部220と、の機能をそれぞれ実現する。なお、自動運転ECU200の機能の一部をハードウェア回路で実現するようにしてもよい。
【0010】
状況認知部220は、前方検出装置410と、後方検出装置420と、支援情報取得部500と、一般センサ類340から提供される各種の情報や検出値を利用して、自車両50及び他車両60の走行状況や、周囲の環境を認知する。第1実施形態において、状況認知部220は、ステレオカメラ412で撮影された2つの画像から道路境界線を検出する道路境界検出部230を有する。この道路境界検出部230は、道路境界検出装置に相当する。道路境界検出部230の機能については後述する。
【0011】
車両制御部300は、車両50の運転のための各種の制御を実行する部分であり、自動運転と手動運転のいずれの場合にも利用される。車両制御部300は、駆動部制御装置310と、ブレーキ制御装置320と、操舵角制御装置330と、一般センサ類340とを含む。駆動部制御装置310は、車両50の車輪を駆動する駆動部(図示せず)を制御する機能を有する。車輪の駆動部としては、内燃機関と電動モータのうちの1つ以上の原動機を使用可能である。ブレーキ制御装置320は、車両50のブレーキ制御を実行する。ブレーキ制御装置320は、例えば電子制御ブレーキシステム(ECB)として構成される。操舵角制御装置330は、車両50の車輪の操舵角を制御する。「操舵角」とは、車両50の2つの前輪の平均操舵角を意味する。操舵角制御装置330は、例えば電動パワーステアリングシステム(EPS)として構成される。一般センサ類340は、車速センサ342と操舵角センサ344とヨーレートセンサ346を含んでおり、車両50の運転に必要とされる一般的なセンサ類である。一般センサ類340は、自動運転と手動運転のいずれの場合にも利用されるセンサを含んでいる。
【0012】
前方検出装置410は、車載センサを使用して、自車両50の前方に存在する物体や道路設備(車線、交差点、信号機等)等の各種の対象物に関する情報を取得する。本実施形態において、前方検出装置410は、ステレオカメラ412と、レーダー414とを含んでいる。ステレオカメラ412は、対象物の色(例えば白線の走路区画線と黄線の走路区画線)を区別するために、カラーカメラであることが好ましい。レーダー414としては、光を放射するLIDAR(Light Detection and Ranging)や、電波を放射するレーダー(例えばミリ波レーダー)など、電磁波を放射する各種のレーダーを使用可能である。後方検出装置420は、自車両50の後方に存在する物体や道路設備等の各種の対象物に関する情報を取得する。後方検出装置420も、前方検出装置410と同様な車載センサを含むように構成可能である。
【0013】
支援情報取得部500は、自動運転のための各種の支援情報を取得する。支援情報取得部500は、GNSS受信機510と、ナビゲーション装置520と、無線通信装置530とを含んでいる。GNSS受信機510は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する人工衛星から受信した航法信号に基づいて、自車両50の現在位置(経度・緯度)を測位する。ナビゲーション装置520は、目的地とGNSS受信機510で検出される自車位置とに基づいて、自動運転における予定ルートを決定する機能を有する。予定ルートの決定や修正のために、GNSS受信機510に加えて、ジャイロ等の他のセンサを利用してもよい。無線通信装置530は、高度道路交通システム70(Intelligent Transport System)との無線通信によって自車両50の状況や周囲の状況に関する状況情報を交換することが可能であり、また、他車両60との車車間通信や、道路設備に設置された路側無線機との路車間通信を行って状況情報を交換することも可能である。支援情報取得部500は、このような無線通信を介して得られる状況情報を利用して、自車の走行状況に関する情報の一部を取得するようにしてもよい。支援情報取得部500によって取得された各種の支援情報は、自動運転ECU200に送信される。
【0014】
本明細書において「自動運転」とは、ドライバ(運転者)が運転操作を行うことなく、駆動部制御とブレーキ制御と操舵角制御のすべてを自動で実行する運転を意味する。従って、自動運転では、駆動部の動作状態と、ブレーキ機構の動作状態と、車輪の操舵角が、自動的に決定される。「手動運転」とは、駆動部制御のための操作(アクセルペダルの踏込)と、ブレーキ制御のための操作(ブレーキベダルの踏込)と、操舵角制御のための操作(ステアリングホイールの回転)を、ドライバが実行する運転を意味する。
【0015】
自動運転制御部210は、状況認知部220で認知される各種の状況を使用して、自車両50の自動運転の制御を実行する。具体的には、自動運転制御部210は、駆動部(エンジンやモータ)の駆動力を示す駆動力指令値を駆動部制御装置310に送信し、ブレーキ機構の動作状態を示すブレーキ指令値をブレーキ制御装置320に送信し、車輪の操舵角を示す操舵角指令値を操舵角制御装置330に送信する。各制御装置310,320,330は、与えられた指令値に従ってそれぞれの制御対象機構の制御を実行する。なお、自動運転制御部210の各種の機能は、例えばディープラーニングなどの機械学習を利用した人工知能により実現可能である。
【0016】
自動運転制御システム100は、自動運転ECU200を含む多数の電子機器を有している。これらの複数の電子機器は、CAN(Controller Area Network)などの車載ネットワークを介して互いに接続されている。
【0017】
図2に示すように、道路境界検出部230は、距離画像生成部231と、境界候補点抽出部232と、道路境界候補推定部233と、境界選択部234とを含んでいる。距離画像生成部231は、ステレオカメラ412で撮影された左右の画像を基準画像及び比較画像として用いて、視差画像を生成する。視差画像は、基準画像に存在する物体までの距離を表す画像なので、「距離画像」とも呼ぶ。境界候補点抽出部232は、距離画像を用いて、道路境界上にあると推定される複数の境界候補点を抽出する。道路境界候補推定部233は、複数の境界候補点を用いて複数の道路境界候補を推定する。境界選択部234は、複数の道路境界候補の中から道路境界を選択する選択処理を実行する。
【0018】
境界選択部234は、特徴量算出部241と、尤度算出部242と、統合尤度算出部243と、選択実行部244と、を有する。特徴量算出部241は、各道路境界候補に関して、予め定められた複数の特徴量を算出する。尤度算出部242は、各特徴量と境界線尤度との予め定められた関係を用いて、複数の特徴量に対応する複数の境界線尤度を算出する。統合尤度算出部243は、各道路境界候補に関して、複数の境界線尤度を統合して統合尤度を算出する。選択実行部244は、複数の道路境界候補の中で統合尤度が最も大きな道路境界候補を道路境界として選択する。
【0019】
図3に示すように、道路境界検出処理では、まず、ステップS110において、道路境界検出部230が、ステレオカメラ412によって撮影された左画像と右画像を取得する。本実施形態では、右画像を基準画像として使用し、左画像を比較画像として使用する。
【0020】
図4に示すように、
図3のステップS120では、距離画像生成部231が、基準画像と比較画像から、距離画像としての視差画像を作成する。視差画像の作成処理としては、例えばSAD(Sum of Absolute Difference)やSSD(Sum of Squared Difference)を類似度の指標として用いたブロックマッチング等の既知の方法を使用可能である。視差画像において、遠い物体ほど視差が小さく、近い物体ほど視差が大きい。従って、視差画像は、基準画像に存在する物体までの距離を表す画像として使用できる。なお、視差Dと距離Zとの間には次式の関係が成立する。
Z=k/D …(1)
ここで、kはカメラの特性に応じて決まる係数である。
【0021】
(1)式に従って求めた距離Zを画素値とした距離画像(狭義の距離画像)を視差画像の代わりに用いることも可能である。本実施形態では、視差画像を距離画像(広義の距離画像)として使用する。また、以下の説明では、「視差」と「距離」を同義語として使用する。
図4から理解できるように、視差画像では、路面から段差のある部分において距離の差が現れる。
【0022】
図5に示すように、
図3のステップS130では、境界候補点抽出部232が、距離画像内を予め定めた走査方向に沿って順次走査し、走査方向に隣接する画素の間の距離の差を計算する。ステップS140では、境界候補点抽出部232が、距離の差が予め定めた距離閾値以上となる画素を「高さ変化画素」に設定する。なお、「高さ変化画素」という語句を使用した理由は、
図5から理解できるように、隣接する画素同士の距離の差が大きい場合には、それらの画素で表される地点の高さが異なるからである。本実施形態では、走査方向を画像の横方向に設定しているが、他の走査方向(例えば画像の上下方向)に設定してもよい。但し、自車両50が走行している道路の境界は画像内の消失線の方向を向いているので、走査方向を画像の横方向に設定した方が、高さ変化画素をより正確に検出できるという利点がある。なお、距離の差を求める際に、1つの走査方向を決めずに、各画素に隣接する複数の隣接画素との間の距離の差を求めて、そのうちの最大値をその画素に関する「距離の差」として使用してもよい。
【0023】
図6に示すように、
図3のステップS150では、境界候補点抽出部232が、高さ変化画像から複数の境界候補点CPを抽出する。
図6の上部の図では、高さ変化画素を黒で塗りつぶした画素として示している。この例から分かるように、画像内では複数の高さ変化画素が隣接してクラスタを構成する。そこで、境界候補点抽出部232は、予め定められた抽出規則に従って、各クラスタから境界候補点CPを抽出する。例えば、
図6の例では、各クラスタにおいて、画像内の最も下にある画素のうちで、画像の左右方向の中心に最も近い1つの画素を境界候補点CPとして抽出している。但し、抽出規則としては、これ以外の他の規則を使用してもよい。例えば、各クラスタの中心に最も近い1つの画素を境界候補点CPとして抽出してもよい。また、各クラスタから複数の画素を境界候補点CPとして抽出してもよい。
【0024】
図7に示すように、
図3のステップS160では、道路境界候補推定部233が、複数の境界候補点CPから複数の道路境界候補RBL1~RBL3を推定する。この推定処理としては、ハフ変換や、RANSAC(Random Sampling Consensus)、LMedS(最小メジアン法)のような各種の推定処理を使用可能である。本実施形態では、ハフ変換を使用する。
【0025】
図7の例では、基準画像RMG内に以下の要素が符号付きで示されている。
・建物BL
・境界候補点CP
・縁石ES
・道路境界候補RBL1~RBL3
・道路面RS
・・自車の走行車線RL1
・・対向車線RL2
・歩道WK
・道路区画線(白線)WL
・・車両通行帯最外側線WL1
・・車道中央線WL2
【0026】
一般に、道路境界は、基準画像RMGの左側と右側に存在する。
図7の例では、左側の縁石ESと道路面RSとの境界が左側の道路境界であり、右側の縁石ESと道路面RSとの境界が右側の道路境界である。本実施形態では、左側の道路境界を検出する場合の処理について説明するが、右側の道路境界の検出にも同様の処理を適用可能である。左側の道路境界を検出する場合には、基準画像RMGの左半分に存在する境界候補点CPを用いて道路境界の検出が実行される。
【0027】
図7に示す3つの道路境界候補RBL1~RBL3のうち、道路境界として検出したい線は、縁石ESと道路面RSの境界にある道路境界候補RBL1である。しかし、建物BLの壁のように歩道WKとの境界が明瞭な物体が存在する場合には、その境界に多数の境界候補点CPが抽出されるので、それらの境界候補点CPから推定された道路境界候補RBL2を道路境界として誤認識してしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、以下に詳述するように、道路境界候補RBL1~RBL3のそれぞれに関して複数の特徴量を算出し、各特徴量に対応する境界線尤度を算出し、それらを統合した統合した統合尤度を用いて道路境界を決定する。この結果、歩道境界等を道路境界と誤検出する可能性を低減できる。
【0028】
図8に示すように、
図3のステップS170では、特徴量算出部241が、道路境界候補RBL1~RBL3のそれぞれに関して、予め定められた複数の特徴量を算出する。特徴量としては、例えば以下の6つの特徴量(1)~(6)のうちの2つ以上を使用可能である。
(1)境界候補点数Ncp
(2)道路境界候補の線分長さLL
(3)道路境界候補の傾きθ
(4)画像基準点MRPからの道路境界候補の距離DL
(5)道路境界候補の道路面RSからの高さの平均又は分散
(6)道路境界候補の基準画像RMGにおける輝度の平均又は分散
図8では、2番目の道路境界候補RBL2に関して、上記の4つの特徴量(1)~(4)が示されている。
【0029】
第1の特徴点である「境界候補点数Ncp」は、道路境界候補RBL2を構成する境界候補点CPの数である。道路境界候補の推定処理にハフ変換を使用した場合には、境界候補点数Ncpは、ハフ変換において道路境界候補RBL2の直線に投票された投票数に等しい。ハフ変換以外の直線推定処理を使用した場合には、道路境界候補RBL2からの距離が所定の許容誤差以下である境界候補点CPの数を、境界候補点数Ncpとして使用できる。なお、いずれの直線推定処理を使用した場合にも、道路境界候補RBL2からの距離が所定の許容誤差以下である境界候補点CPを、その道路境界候補RBL2を構成する境界候補点CPとして保持しておくことが好ましい。なお、ここでの「距離」という語句は、画像上における距離を意味する。
【0030】
第2の特徴点である「道路境界候補RBL2の線分長さLL」は、道路境界候補RBL2を構成する複数の境界候補点CPのうち、その道路境界候補RBL2の両端に存在する境界候補点CPの間の距離を意味する。この距離も、画像上の距離である。
【0031】
第3の特徴点である「道路境界候補RBL2の傾きθ」は、基準画像RMGの下端の辺と、道路境界候補RBL2とが成す角度である。
図8には、基準画像RMGの画像座標系としてX軸とY軸が示されており、基準画像RMGの下端の辺はX軸に平行な直線である。
【0032】
第4の特徴点である「画像基準点MRPからの道路境界候補RBL2の距離DL」は、画像基準点MRPから道路境界候補RBL2に下ろした垂線の長さである。
図8の例では、画像基準点MRPが下辺の中央に設定されているが、画像基準点MRPは基準画像RMG内の任意の位置に設定可能である。
【0033】
第5の特徴点である「道路境界候補の道路面RSからの高さの平均又は分散」は、例えば
図9に示す処理を利用して道路面RSを求めることによって算出できる。この処理では、まず、視差画像から視差ヒストグラム画像を生成する。ここで、
図9の上部に示すように、視差画像の横軸をU,縦軸をVとする。視差ヒストグラム画像は、視差値Dと視差画像のV座標値とを2つの座標軸とした画像であり、視差画像においてV座標値毎に視差値Dの出現度数を算出し、その出現度数を座標(D,V)における画素の画素値とした画像である。
図9の例では、視差ヒストグラム画像において、そのV座標値毎に出現度数がピークとなっている画素を求め、それらのピーク画素から推定された直線であるピーク度数直線PLが描かれている。このピーク度数直線PLは、以下の式で表される。
V=a・D+b …(2)
ここで、a,bは係数、Vは視差画像におけるV座標値、Dは視差値である。
【0034】
図9の上部に示した視差画像から理解できるように、視差画像において、V座標値毎に視差値Dの出現度数を求めると、出現度数がピークとなる視差値Dは道路面RSに相当する位置の視差である。従って、ピーク度数直線PL上の視差値Dを有する画素は、視差画像において道路面RSに相当する画素であると判定することができる。具体的には、まず、視差画像におけるV座標値を上記(2)式に代入することによって、そのV座標値におけるピーク度数の視差値Dpを求め、その視差値Dpに許容誤差δを考慮した許容範囲(Dp±δ)を求める。そして、V座標値が同一の走査線上の画素のうちで、その画素値Dが許容範囲(Dp±δ)内にある画素は道路面RS上の画素であると判定し、この許容範囲(Dp±δ)外にある画素は道路面RS上に無い画素であると判定することができる。道路境界候補RBL2の道路面RSからの高さは、この道路面RSと道路境界候補RBL2上の各点の高さの差である。このとき、高さの差を求める道路境界候補RBL2上の点としては、道路境界候補RBL2上のすべての点を使用してもよく、或いは、道路境界候補RBL2を構成する境界候補点CPのみを使用してもよい。
【0035】
第6の特徴点である「道路境界候補の基準画像RMGにおける輝度の平均又は分散」の「輝度」は、画素値と同義語である。この場合にも、輝度を求める道路境界候補RBL2上の点として、道路境界候補RBL2上のすべての点を使用してもよく、或いは、道路境界候補RBL2を構成する境界候補点CPのみを使用してもよい。
【0036】
以下では、上述した4つの特徴量(1)~(4)を使用した場合の例を説明する。
【0037】
図10に示すように、
図3のステップS180では、尤度算出部242が、各特徴量と境界線尤度Liとの予め定められた関係を用いて、各特徴量に対応する境界線尤度Liを算出する。境界線尤度Liは、道路境界候補のもっともらしさを示す値である。以下では、境界線尤度Liを単に「尤度Li」と呼ぶ。
【0038】
図10に示すように、境界候補点数Ncpが増加するほど尤度Liは増大する。図示は省略するが、道路境界候補の線分長さLLが増大すると、尤度Liは一旦上昇した後に下降する凸状又は山状の曲線となる。この理由は、正しい道路境界は、
図7に示した第1の道路境界候補RBL1のように、基準画像RMG内の手前の一端部(例えば左端部)から中央に向かう直線なので、道路境界候補が短すぎても長すぎても正しい道路境界でない可能性が高いからである。道路境界候補の傾きθと尤度Liの関係、及び、画像基準点MRPからの道路境界候補の距離DLと尤度Liの関係も、同様の理由により、凸状又は山状の曲線となる。これらの関係は一例であり、これら以外の関係を設定してもよい。
【0039】
なお、上述した特徴量(5)は、「境界候補点CPの道路面RSからの高さ」が大きくなるほど尤度が上昇した後に、尤度がほぼ一定となる形状となる。また、上記特徴量(6)は、凸状又は山状の曲線となる。
【0040】
図3のステップS190では、統合尤度算出部243が、各道路境界候補RBL1~RBL3に関して、複数の境界線尤度Liを統合して統合尤度Ltを算出する。各道路境界候補の統合尤度Ltは、その道路境界候補の複数の特徴量の尤度Liを変数とする予め定められた関数f(Li)を用いて算出することができる。統合尤度Ltを求める関数f(Li)としては、個々の尤度Liが大きくなるほど統合尤度Ltが大きくなるような任意の関数を使用可能である。例えば、関数f(Li)として、以下の式の右辺で与えられるような各種の関数のいずれか1つを使用可能である。
Lt=ΠLi/{ΠLi+Π(1-Li)} …(3a)
Lt=ΣLi/N …(3b)
Lt=(ΠLi)
1/N …(3c)
Lt={ΣLi
2/N}
1/2 …(3d)
ここで、N(2≦N)は尤度Liの個数、Πは乗算の演算子,Σは加算の演算子、である。(3b)式は相加平均であり、(3c)式は相乗平均、(3d)式は二乗平均平方根(Root Mean Square)である。
【0041】
N=2の場合には、上記(3a)~(3d)は以下の(4a)~(4d)式となる。
Lt=(L1・L2)/{L1・L2+(1-L1)(1-L2)} …(4a)
Lt=(L1+L2)/2 …(4b)
Lt=(L1・L2)1/2 …(4c)
Lt={(L1
2+L2
2)/2}1/2 …(4d)
【0042】
図3のステップS200では、選択実行部244が、複数の道路境界候補RBL1~RBL3の中で統合尤度Ltが最も大きな道路境界候補を道路境界として選択する。
【0043】
図11に示す例では、3つの道路境界候補RBL1~RBL3に対する統合尤度Lt1,Lt2,Lt3がそれぞれ示されている。Lt1=0.7,Lt2=0.5,Lt3=0.2なので、統合尤度Ltが最も大きな第1の道路境界候補RBL1が道路境界として選択されている。
【0044】
以上のように、第1実施形態では、複数の境界候補点CPから得られる複数の道路境界候補RBL1~RBL3のなかで、特徴量から算出される統合尤度Ltが最も大きなものを道路境界として選択するので、道路境界を精度良く推定できる。
【0045】
B. 第2実施形態:
図12に示すように、第2実施形態の道路境界検出部230aは、
図2に示した第1実施形態の道路境界検出部230に境界選択再実行部235を追加したものであり、他の構成は第1実施形態と同じである。境界選択再実行部235は、選択実行部244によって道路境界が一度選択された後に、(a)その道路境界からの距離が許容範囲内にある複数の境界候補点CPを再抽出し、(b)再抽出された複数の境界候補点CPを用いて道路境界候補推定部233による推定処理を実行させ、(c)境界選択部234による選択処理を実行させる。
【0046】
図13に示すように、第2実施形態の道路境界検出処理は、
図3に示した第1実施形態の処理のステップS200の後にステップS210,S220を追加したものであり、他の処理は第1実施形態と同じである。
【0047】
図14Aには、第2実施形態において
図13のステップS110~S200を一度実行した場合の例を示している。この例では、4つの道路境界候補RBL1~RBL4が推定され、それらの統合尤度Lt1~Lt4が算出されて、統合尤度Ltが最大となる道路境界候補RBL4が選択されている。
【0048】
図14Bに示すように、ステップS210では、
図14Aで選択された道路境界候補RBL4からの距離が許容範囲内にある複数の境界候補点CPが再抽出される。その後、ステップS160が再度実行されて、複数の道路境界候補が再推定される。
図14Bの例では、2つの道路境界候補RBL11,RBL12が推定されている。その次に、ステップS160~200が再度実行され、これらの道路境界候補RBL11,RBL12の中から統合尤度Ltが最も大きな道路境界候補RBL11が最終的な道路境界として選択されている。
【0049】
以上のように、第2実施形態では、境界選択再実行部235が、選択実行部244によって道路境界が一度選択された後に、その道路境界からの距離が許容範囲内にある複数の境界候補点CPを再抽出し、再抽出された複数の境界候補点CPを用いて、道路境界候補推定部233による推定処理と、境界選択部234による選択処理とを再実行させる。一度選択された道路境界から所定範囲内にある境界候補点CPはノイズである可能性が非常に低いので、それらの境界候補点CPを用いることによって、より確からしい道路境界を推定できる。
【0050】
C. 第3実施形態:
図15に示すように、第3実施形態の道路境界検出部230bは、
図13に示した第2実施形態の道路境界検出部230aに、道路区画線検出部251と、移動体検出部252と、消失点検出部253とを追加したものであり、他の構成は第2実施形態と同じである。道路区画線検出部251は、基準画像内の道路区画線を検出する。移動体検出部252は、基準画像内の移動体を検出する。消失点検出部253は、基準画像RMGの消失点を検出する。なお、道路区画線検出部251と移動体検出部252と消失点検出部253とをすべて設ける必要はなく、そのうちの一部を省略してもよい。また、第3実施形態において、境界選択再実行部235を省略してもよい。
【0051】
図16に示すように、第3実施形態の道路境界検出処理は、
図13に示した第2実施形態の処理にステップS310,S320,320を追加したものであり、他の処理は第2実施形態と同じである。
【0052】
図17に示すように、ステップS310において、道路区画線検出部251は基準画像RMG内の道路区画線WLを検出する。
図17の例では道路区画線WLとして、2本の車両通行帯最外側線WL1と、車道中央線WL2とが検出されている。なお、道路区画線WLは通常は白線である。検出された道路区画線WLの情報は、道路区画線検出部251から境界候補点抽出部232に通知され、ステップS150における境界候補点CPの抽出の際に利用される。すなわち、境界候補点抽出部232は、距離画像から抽出した各境界候補点CPが道路区画線WL上に存在するか否かを調べ、道路区画線WL上に存在する場合にはその境界候補点CPを除外する。
図17の例では、3つの境界候補点CPwが道路区画線WL上に存在するので、これらの境界候補点CPwが除外される。白線などの道路境界線WL上にある境界候補点CPwはノイズである可能性が高いので、それらの境界候補点CPwを除外することによって、道路境界をより精度良く推定できる。
【0053】
図18に示すように、ステップS320において、移動体検出部252は、基準画像RMG内の移動体MBを検出する。本明細書において、「移動体」とは、移動し得る物体を意味しており、四輪車や二輪車を含む車両と、人とを含んでいる。検出された移動体MBの情報は、移動体検出部252から境界候補点抽出部232に通知され、ステップS150における境界候補点CPの抽出の際に利用される。すなわち、境界候補点抽出部232は、距離画像から抽出した各境界候補点CPが移動体MB上に存在するか否かを調べ、移動体MB上に存在する場合にはその境界候補点CPを除外する。
図18の例では、3つの境界候補点CPmが移動体MB上に存在するので、これらの境界候補点CPmが除外される。車両や人などの移動体MB上にある境界候補点CPmはノイズである可能性が高いので、それらの境界候補点CPmを除外することによって、道路境界をより精度良く推定できる。
【0054】
図19に示すように、ステップS330において、消失点検出部253は、基準画像RMGの消失点VPを検出する。消失点VPは、道路区画線WL等のように、現実には平行な線同士が基準画像RMGにおいて交わる点である。検出された消失点VPの情報は、消失点検出部253から道路境界候補推定部233に通知され、ステップS160における道路境界候補の推定の際に利用される。すなわち、道路境界候補推定部233は、各道路境界候補RBL1~RBL3について、その道路境界候補の延長線と消失点VPとの距離を求める。
図19の例では、道路境界候補RBL3と消失点VPとの距離D3が示されている。この距離D3が予め定められた閾値以上の場合には、その道路境界候補RBL3を除外する。一般に、道路境界は消失点VPに向かっていると仮定できるので、消失点VPからの距離が閾値以上である場合は道路境界である確度は極めて低い。従って、そのような道路境界候補を除外すれば、道路境界をより精度良く推定できる。
【0055】
以上のように、第3実施形態では、基準画像RMG内の道路区画線や移動体を利用して境界候補点CPのノイズを除去し、また、消失点VPを利用して道路境界候補のノイズを除去するので、道路境界をより精度良く推定することが可能である。なお、前述したように、道路区画線検出部251と移動体検出部252と消失点検出部253のうちの一部を省略してもよく、これに併せてステップS310,S320,S330のうちの一部も省略してよい。
【0056】
D. 第4実施形態:
図20に示すように、第4実施形態の道路境界検出部230cは、
図2に示した第1実施形態の道路境界検出部230に候補点記憶部261と現在位置推定部262とを追加したものであり、他の構成は第1実施形態と同じである。候補点記憶部261は、境界選択部234によって過去に選択された道路境界を構成する複数の境界候補点CPを、複数の過去境界候補点CPrとして記憶する。現在位置推定部262は、複数の過去境界候補点CPrから、現在の基準画像RMG内における複数の過去境界候補点CPrの位置を推定する。
【0057】
図21に示すように、第4実施形態の道路境界検出処理は、
図3に示した第1実施形態の処理にステップ410,S420を追加したものであり、他の処理は第1実施形態と同じである。
【0058】
ステップS410では、候補点記憶部261は、境界選択部234によって選択された道路境界を構成する複数の境界候補点CPを、複数の過去境界候補点CPrとして記憶する。複数の過去境界候補点CPrは、次回以降の道路境界検出処理において利用される。
【0059】
ステップS420では、現在位置推定部262が、複数の過去境界候補点CPrから、現在の基準画像RMG内における複数の過去境界候補点CPrの位置を推定する。この推定は、過去と現在における基準画像RMGの撮影時刻の差分と、その間の車両50の車速の履歴と、ヨーレートの履歴とを用いて行うことが可能である。推定後の複数の過去境界候補点CPr*は、現在位置推定部262から道路境界候補推定部233に通知され、ステップS160における道路境界候補の推定の際に利用される。すなわち、道路境界候補推定部233は、境界候補点抽出部232で抽出された複数の境界候補点CPに加えて、現在位置推定部262によって推定された位置での複数の過去境界候補点CPr*を使用して、複数の道路境界候補を推定する。このように、過去境界候補点CPrを利用して複数の道路境界候補を推定すれば、境界線候補を推定する際の情報量を増やせるので、道路境界をより精度良く推定できる。
【0060】
なお、第4実施形態で追加された構成や処理は、第2実施形態や第3実施形態にも適用可能である。
【0061】
本発明は上述した実施形態やその変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
230,230a,230b,230c…道路境界検出部、231…距離画像生成部、232…境界候補点抽出部、233…道路境界候補推定部、234…境界選択部、235…境界選択再実行部、241…特徴量算出部、242…尤度算出部、243…統合尤度算出部、244…選択実行部、251…道路区画線検出部、252…移動体検出部、253…消失点検出部、261…候補点記憶部、262…現在位置推定部