(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】ヒューズクリップおよびコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01H 85/20 20060101AFI20220802BHJP
H01H 85/045 20060101ALI20220802BHJP
H01H 85/157 20060101ALI20220802BHJP
H01H 85/50 20060101ALI20220802BHJP
H01R 13/629 20060101ALI20220802BHJP
H01R 13/688 20110101ALI20220802BHJP
【FI】
H01H85/20 D
H01H85/045 D
H01H85/157
H01H85/50
H01R13/629
H01R13/688
(21)【出願番号】P 2018120330
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】山根 友和
(72)【発明者】
【氏名】幸松 聖児
(72)【発明者】
【氏名】本野 誠
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-007143(JP,U)
【文献】実開昭63-137438(JP,U)
【文献】特開昭61-093531(JP,A)
【文献】特開2014-011124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
69/02
85/00-87/00
H01R 13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部を有するヒューズを径方向の外側から支持する一対の第一ばねと、
前記第一ばねのそれぞれに前記胴部の軸線方向に並んで設けられる、前記ヒューズを径方向の外側から弾性支持する一対の第二ばねと、備え、
前記第一ばねは、前記胴部の中心を通る水平方向の線分と前記胴部の外周面との交点または前記交点よりも上の位置で前記胴部を弾性支持し、
前記第二ばねは、前記第一ばねよりも上の位置で前記胴部を弾性支
持し、
前記第一ばね、および、前記第二ばねは、前記胴部を線接触により支持する、
ことを特徴とするヒューズクリップ。
【請求項2】
前記第一ばねは前記胴部を弾性支持する弾性力が前記第二ばねよりも大きい、
請求項1に記載のヒューズクリップ。
【請求項3】
並んで設けられる前記第一ばねと前記第二ばねが共通して接続される共通ばねが設けられ、
前記第一ばねよりも前記第二ばねの方が前記共通ばねからの背が高い、
請求項1または請求項2に記載のヒューズクリップ。
【請求項4】
前記第二ばねが前記第一ばねよりも先行して前記胴部に接触すると、前記第二ばねが前記径方向の外側に向けて撓むのに連動して、前記共通ばねが前記径方向の外側に向けて撓み、
前記共通ばねが前記径方向の外側に向けて撓むのに連動して、前記第一ばねが前記径方向の外側に向けて撓んで、前記胴部の支持に備える、
請求項3に記載のヒューズクリップ。
【請求項5】
前記胴部を鉛直方向の上向きに支持する第三ばねをさらに備える、
請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載のヒューズクリップ。
【請求項6】
ヒューズクリップを収容する第一ハウジングと、
前記第一ハウジングと嵌合され、前記第一ハウジングとともに前記ヒューズクリップを収容する第二ハウジングと、
前記第一ハウジングに支持され、嵌合位置に向けて操作することによって前記第一ハウジングと前記第二ハウジングを嵌合させるレバーと、
前記第二ハウジングに固定され、前記ヒューズを弾性支持する、請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載のヒューズクリップと、を備える、
ことを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューズを所定の位置に固定するのに用いられるヒューズクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状の胴部を備えるヒューズを所定の位置に固定するのにヒューズクリップが用いられる。特許文献1は、高い加工精度を必要としない無極性のヒューズクリップ(7)を開示する。このヒューズクリップ(7)は、ヒューズ保持片(8)の両側に、基端部(10A)が保持片(8)に一体的に形成されると共にその上方部が保持片(8)から分離された補助保持片(10)を備える。
特許文献1のヒューズクリップ(7)によれば、管ヒューズ(5)が挿入されると、管ヒューズ(5)の金属キャップはヒューズ保持片(8)に支持される。また、補助保持片(10)は絶縁管(3)の外面と接触してこれを補助的に支持すると共に管ヒューズ(5)の軸方向への脱落ないし抜けを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-7143号公報
【文献】特開2014-146451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動を受ける環境下で重量の大きい管ヒューズを使用すると、管ヒューズに大きな振動が生ずる。これにより、極端な場合には、管ヒューズがヒューズクリップから抜け出てしまう。このような振動環境下における用途としては、例えば特許文献2に開示される電気自動車に搭載されるサービスプラグ装置が掲げられる。サービスプラグ装置は、バッテリユニットのメンテナンス時の安全性を確保するための電源遮断を目的として設けられる。
【0005】
特許文献1のヒューズクリップは、ヒューズ保持片に加えて補助保持片を備えており、管ヒューズを強い弾性力で強固に支持することができる。この強固な支持は、振動に対して有効ではある一方、管ヒューズをヒューズクリップに挿抜するときの操作力の増大を招く。そうすると、管ヒューズの挿抜作業をする作業員の負荷が大きくなる。
【0006】
本発明は、振動環境下において重い管ヒューズを支持したとしても、ヒューズが抜け出るのを防止できるのに加えて、ヒューズの挿抜の際の作業負担を抑えることのできるヒューズクリップを提供することを目的とする。また、本発明はこのようなヒューズクリップを備えるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のヒューズクリップは、一対の第一ばねと一対の第二ばねを備える。一対の第一ばねは円筒状の胴部を有するヒューズを径方向の外側から支持する。一対の第二ばねは、第一ばねのそれぞれに胴部の軸線方向に並んで設けられ、ヒューズを径方向の外側から弾性支持する。
本発明のヒューズクリップにおいて、第一ばねは、胴部の中心を通る水平方向の線分と胴部の外周面における交点または交点よりも上の位置で胴部を弾性支持し、第二ばねは、第一ばねよりも上の位置で胴部を弾性支持する。
また、本発明のヒューズクリップにおいて、第一ばねは胴部を弾性支持する弾性力が第二ばねよりも大きい。
【0008】
本発明のヒューズクリップにおいて、好ましくは、第一ばねは胴部を弾性支持する弾性力が第二ばねよりも大きい。
【0009】
本発明のヒューズクリップにおいて、好ましくは、並んで設けられる第一ばねと第二ばねが共通して接続される共通ばねが設けられ、第一ばねよりも第二ばねの方が共通ばねからの背が高い。
【0010】
また、本発明のヒューズクリップにおいて、好ましくは、第二ばねが第一ばねよりも先行して胴部に接触すると、第二ばねが径方向の外側に向けて撓むのに連動して、共通ばねが径方向の外側に向けて撓む。さらに、共通ばねが径方向の外側に向けて撓むのに連動して、第一ばねが径方向の外側に向けて撓んで、胴部の支持に備える。
【0011】
また、本発明のヒューズクリップにおいて、好ましくは、第一ばね、および、第二ばねは、胴部を線接触により支持する。
【0012】
また、本発明のヒューズクリップにおいて、好ましくは、胴部を鉛直方向の上向きに支持する第三ばねをさらに備える。
【0013】
本発明は、ヒューズクリップを収容する第一ハウジングと、第一ハウジングと嵌合され、第一ハウジングとともにヒューズクリップを収容する第二ハウジングと、第一ハウジングに支持され、嵌合位置に向けて操作することによって第一ハウジングと第二ハウジングを嵌合させるレバーと、第二ハウジングに固定され、ヒューズを弾性支持するヒューズクリップと、を備えるコネクタを提供する。このヒューズクリップとして、以上で説明したものを適用できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のヒューズクリップによれば、第一ばねは、胴部の中心を通る水平方向の線分と胴部の外周面における交点よりも上の位置で胴部を弾性支持する。これにより、当該交点よりも下の位置で支持するのに比べて、ヒューズが上方に抜け出る向きへの振動を軽減できる。加えて、本発明によれば、第一ばねよりも上の位置で第二ばねが胴部を弾性支持することにより、ヒューズの挿抜の際に第一ばねと第二ばねがヒューズと接触を開始するのに時間差が生じる。これにより、本発明によれば、ヒューズの挿抜の際の作業負担を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るコネクタの斜視図であり、(a)は嵌合前の状態を示し、(b)はレバーを倒した嵌合の途中の状態を示し、(c)は嵌合後の状態を示す。
【
図2】
図1のコネクタを示す二つのアセンブリをそれぞれ示す分解斜視図であり、(a)はレバーアセンブリを示し、(b)はキャップアセンブリを示す。
【
図3】
図2のレバーアセンブリを示す分解斜視図である。
【
図4】
図2のキャップアセンブリを示す分解斜視図である。
【
図5】
図2のキャップアセンブリを示し、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【
図6】
図2のキャップアセンブリを構成するヒューズクリップを示し、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るコネクタの部分縦断面図であり、(a)は嵌合前を示し、(b)は嵌合後を示す。
【
図8】本実施形態のヒューズクリップがヒューズを支持する様子を示し、(a)は単体のヒューズを支持し、(b)はクリップスプリングと電気的に接続されたヒューズを支持している。
【
図9】本実施形態のヒューズクリップがヒューズを支持する経過を示している。
【
図10】ヒューズクリップによりヒューズを支持する好ましい範囲を示すである。
【
図11】本実施形態のヒューズクリップの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係るコネクタ1は、ヒューズクリップ70が振動環境下で重い筒状のヒューズ40を支持したとしても、ヒューズ40がヒューズクリップ70から抜け出るのを防止する構成を備えている。コネクタ1は、ヒューズクリップ70が備える一対の第一ばね74,74と一対の第二ばね35,35がヒューズ40の支持を担う。これにより、ヒューズ40をヒューズクリップ70に対してヒューズ40を挿抜するときの作業負担を抑えることができる。以下、コネクタ1の構成を説明する。
【0017】
[コネクタ1]
コネクタ1は、
図1(a),(b),(c)および
図2(a),(b)に示すように、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ50を備えている。レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ50を
図1(a)に示す嵌合前の状態に組み付けてから、レバーアセンブリ10のレバー30を
図1(b)に示す中間位置まで倒す。さらに、
図1(c)に示すようにレバー30を水平移動させることにより、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ50の嵌合が完了する。逆に
図1(b)の位置からレバー30を
図1(a)の位置まで起こすと、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ50の嵌合が解除される。
嵌合解除の状態では、
図7(a)に示すように、ヒューズ40はヒューズクリップ70に載せられているだけである。しかし、嵌合が完了すると、
図7(b)に示すように、ヒューズ40はヒューズクリップ70に弾性力をもって支持される。
【0018】
[レバーアセンブリ10]
レバーアセンブリ10は、
図2(a)および
図3に示すように、アウターハウジング20と、アウターハウジング20に回転可能に支持されるレバー30と、を備える。また、レバーアセンブリ10は、アウターハウジング20の開口23を覆うヒューズカバー29と、アウターハウジング20に収容される筒状のヒューズ40と、を備える。なお、アウターハウジング20が本発明の第一ハウジングに対応する。
【0019】
アウターハウジング20は、内部にヒューズ40を収容するのに加えて、レバー30を回転可能に支持する。
アウターハウジング20は、
図3に示すように、高さ方向Zの両側(
図3の上側および下側)が開口し、この上下の開口23,24の間にヒューズ40を収容する空間であるヒューズ収容室21を備えている。なお、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ50が嵌合されると、ヒューズ収容室21はキャップアセンブリ50のヒューズ収容室61と重複する。したがって、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ50の嵌合状態において、ヒューズ40は、内外で重複するヒューズ収容室21とヒューズ収容室61に収容されることになる。
なお、本実施形態において、高さ方向Zが鉛直方向と一致し、幅方向Yが水平方向に一致するように、コネクタ1が配置される。
【0020】
アウターハウジング20は、幅方向Yの両側に、レバー30の側体31,31のそれぞれが回転可能に支持される一対の回転軸25,25を備えている。
また、アウターハウジング20は、幅方向Yの一方の側に、回転軸25よりも離れた位置に、係止突起27を備えている。係止突起27は、レバー30が嵌合位置にいるときに、側体31の係止孔37に挿入されることで、レバー30を係止する。
【0021】
アウターハウジング20は、電気絶縁性の樹脂材料を射出成形することにより一体的に形成される。レバー30、ヒューズカバー29およびキャップアセンブリ50のキャップハウジング60も同様である。
【0022】
次に、レバー30は、
図1(a)に示される嵌合解除位置と
図1(b)に示される中間位置との間を、回転軸25を中心にして正転および逆転が可能に、アウターハウジング20に取り付けられている。
レバー30は、
図1(a)および
図3に示すように、一端がアウターハウジング20に回転可能に支持され、平行に延びる一対の側体31,31と、側体31,31の他端を互いに連結する連結体35と、を備える。
側体31,31のそれぞれには、アウターハウジング20の回転軸25,25が挿入される軸受孔33,33が設けられている。軸受孔33,33は、レバー30を中間位置から嵌合完了位置まで水平移動させるために、長孔から構成される。
【0023】
また、一方の側体31には、嵌合状態において係止突起27が挿入される、係止孔37が形成されている。係止突起27が係止孔37に挿入されることで、レバー30は
図1(b)の中間位置から
図1(a)の嵌合解除位置に向けて回転するのが規制される。
さらに、側体31,31のそれぞれには、キャップハウジング60に設けられるカム突起63が挿入されるカム溝39が形成されている。レバー30を嵌合解除位置から中間位置を経由して嵌合位置へ操作し、または、レバー30を嵌合位置から中間位置を経由して嵌合解除位置へ操作する。そうすると、カム溝39の内部をカム突起63が相対的に変位して、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ50は嵌合される。
【0024】
次に、ヒューズカバー29は、アウターハウジング20の上部の開口23を覆う。
また、ヒューズカバー29は、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ50の嵌合の過程において、レバー30の回転に追従してヒューズ40を下向きに押す。これにより、ヒューズ40はヒューズクリップ70に挿入される。
【0025】
次に、ヒューズ40は、過大な電流が流れると、可溶体41(
図7参照)が溶断されることにより端子47,47に接続される電気回路を保護する。
ヒューズ40は、
図3および
図7(a)に示すように、可溶体41と、可溶体41を収容する金属製の収容管43と、収容管43の内部において可溶体41の周囲を取り囲む絶縁体45と、を備える。収容管43は円筒状の胴部を構成する。また、ヒューズ40は、可溶体41の両端に接続される端子47,47と、端子47,47のそれぞれに接続されるヒューズバスバー48,48と、を備えている。ヒューズバスバー48,48は、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ50の嵌合状態において、後述するクリップスプリング65,66(
図4参照)に支持される。さらに、ヒューズ40は、収容管43の両端部を除いて、収容管43を覆う絶縁被覆49と、を備えている。
【0026】
[キャップアセンブリ50]
キャップアセンブリ50は、
図2(b)、
図4、
図5に示すように、キャップハウジング60と、キャップハウジング60に収容されるヒューズ40と電気的に接続される一対のクリップスプリング65,66と、を備える。また、キャップアセンブリ50は、キャップハウジング60の内部においてヒューズ40を支持する一対のヒューズクリップ70を備える。
【0027】
キャップハウジング60は、
図4および
図5に示すように、高さ方向Zの一方の側(
図4の上側)が開口するヒューズ収容室61を備え、高さ方向Zの他方の側(
図4の下側)は底床62で仕切られている。前述したように、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ50が嵌合されると、重複するアウターハウジング20のヒューズ収容室21とヒューズ収容室61にヒューズ40が収容される。
キャップハウジング60は、幅方向Yの両側に、レバー30のカム溝39に挿入されるカム突起63,63が形成されている。
なお、キャップハウジング60が本発明の第二ハウジングに対応する。
【0028】
クリップスプリング65,66は、それぞれが、ヒューズ40のヒューズバスバー48と電気的に接続される支持ばね67,68と、支持ばね67,68を支持する支持体69と、を備えている。支持ばね67,68は、それぞれは、背の高いばね片67A,68Aと背の低いばね片67B,68Bの組み合わせで構成される。支持ばね67,68において、一対のばね片67A,67A、一対のばね片67B,67Bは幅方向に対向して設けられている。同様に、一対の68A,68A、一対のばね片67B,67Bは幅方向に対向して設けられている。
【0029】
クリップスプリング65,66の支持体69は、
図5(a),(b)に示すように、キャップハウジング60の底面に固定される。また、クリップスプリング65,66の支持ばね67,68は、底床62を貫通してヒューズ収容室61の内部に突出する。クリップスプリング65,66は、ヒューズ収容室61の内部において、
図8(b)に示すように、支持ばね67により一方のヒューズバスバー48を支持し、支持ばね68は他方のヒューズバスバー48を支持する。
【0030】
ヒューズクリップ70は、
図5(b)、
図7(a),(b)に示すように、キャップハウジング60の底床62に固定された状態で、ヒューズ40を弾性支持する。
ヒューズクリップ70は、
図4および
図6に示すように、ヒューズ40を幅方向Yから支持する一対の支持ばね71,71と、支持ばね71,71を片持ち状に支持する支持体72と、を備える。
【0031】
それぞれの支持ばね71は、
図6(a),(b)に示すように、支持体72から立ち上がる共通ばね73と、共通ばね73に連なる第一ばね74と、共通ばね73に連なる第二ばね75と、を備える。ヒューズクリップ70は、例えばステンレス鋼からなる板材を切断および曲げ加工することにより、支持ばね71と支持体72が一体に成形されている。
【0032】
第一ばね74と第二ばね75は、微小間隔を隔てて長手方向X、つまりヒューズ40の軸線方向に並んで設けられている。第一ばね74,74同士および第二ばね75,75どうしは互いに対向する位置に設けられている。
第一ばね74は、径方向の外側からヒューズ40に押圧されて荷重(Fm)を加えることによりヒューズ40を弾性支持する。第二ばね75も、径方向の外側からヒューズ40に押し付けられて荷重(Fs)を加えることによりヒューズ40を弾性支持する。第二ばね75は、支持ばね72で支持されるヒューズ40が上方に抜け出ないように第一ばね74による支持を補助する。
この荷重Fm,Fsは、それぞれ第一ばね74および第二ばね75がヒューズ40を支持しているときにヒューズ40に加わる荷重である。
【0033】
第一ばね74と第二ばね75のそれぞれの機能に応じて、第一ばね74による荷重(Fm)は、第二ばね75による荷重(Fs)よりも大きく設定される。荷重Fmを荷重Fsよりも大きくするには、第一ばね74の幅を第二ばね75の幅よりも大きくすればよい。
一例として、第一ばね74による荷重(Fm)と第二ばね75による荷重(Fs)は、以下の範囲に設定される。
1.5×荷重Fs≦Fm≦2.5×荷重Fs
【0034】
第二ばね75は、第一ばね74よりも共通ばね73からの高さ方向Zの寸法が大きく背が高い。加えて、第一ばね74および第二ばね75は、それぞれがヒューズ40に突き当たる部分がヒューズ40に向けて突出する接点74A,75Aを備えている。ところが、接点75Aの方が接点74Aよりも支持体72の幅方向Yの中心に向けて突出している。これにより、ヒューズ40を一対の支持ばね71,71の間に上方からヒューズ40を挿入する際に、第一ばね74よりも第二ばね75が先行してヒューズ40に突き当たる。この点について詳しくは後述する。
【0035】
接点74A,75Aは、
図7および
図8に示すように、ヒューズ40との接触、支持の形態がヒューズ40の軸線方向において線接触といえる。つまり、第一ばね74および第二ばね75は、この接点74A,75A以外の領域においてヒューズ40を支持していない。
【0036】
次に、支持体72は、支持体72の一部を切り起こして形成される第三ばね76を備えている。第三ばね76は、高さ方向Z、つまり鉛直方向の上向きにヒューズ40を支持する。
【0037】
ヒューズクリップ70は、
図4および
図5(a)に示すように、複数のねじSおよびナットNを用いてキャップハウジング60の底床62に固定される。本実施形態は、二つのヒューズクリップ70で一つのヒューズ40を支持する。そして、
図8に示すように、第一ばね74、第二ばね75はヒューズ40の金属製の収容管43であって絶縁被覆49が覆われていない両端側を支持する。
【0038】
[ヒューズクリップ70によるヒューズ40の支持過程]
レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ50を嵌合することにより、ヒューズ40はヒューズクリップ70に支持される。この過程を、
図9を参照して説明する。
ヒューズ40は、一対の支持ばね71,71の間に上方から挿入される。このとき、
図9(a)に示すように、ヒューズ40は背の高い第二ばね75,75が第一ばね74,74に先行して接する。
そのままヒューズ40を下向きに押し込むと、
図9(b)に示すように、間隔が広がるように第二ばね75,75は外側に向けて撓む。第二ばね75,75による荷重(Fs)は第一ばね74,74による荷重(Fm)に比べて低く抑えられているので、ヒューズ40を押し込む力は小さくてすむ。
【0039】
第二ばね75,75は共通ばね73に連なっているので、共通ばね73も外側に向けて撓む。これにより共通ばね73に連なっている第一ばね74,74も外側に撓み、対向する第一ばね74と第一ばね74の間隔が広がる。
さらにヒューズ40を下向きに押し込むと、ヒューズ40は第一ばね74,74にも接触して荷重を受ける。しかし、第一ばね74と第一ばね74の間隔が広げられているので、その分だけヒューズ40を押し込む力が軽減される。
【0040】
図7(b)および
図9(c)に示すように、ヒューズ40を第三ばね76に接するまで押し込めば、ヒューズ40の支持作業は完了する。こうして、ヒューズ40は、第一ばね74,74および第二ばね75,75によって幅方向Yの両側から弾性支持されるとともに、第三ばね76によって高さ方向Zの上向きに弾性支持される。
【0041】
[ヒューズ40の支持構造]
次に、
図10を参照して、第一ばね74,74、第二ばね75,75および第三ばね76がヒューズ40を支持する位置について説明する。この支持位置は、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ50の嵌合が完了したときの位置を意味する。なお、コネクタ1は、振動を受ける環境下におかれるので、ヒューズ40は長手方向X、幅方向Yおよび高さ方向Zに微小な変位を繰り返す。
【0042】
図10において、白抜きの矢印は第一ばね74,74がヒューズ40を支持する位置を示し、黒色の矢印は第二ばね75,75がヒューズ40を支持する位置を示している。第一ばね74,74は、下側の白抜き矢印と上側の白抜き矢印の範囲でヒューズ40を支持できる。第二ばね75,75は、下側の黒色矢印と上側の黒色矢印の範囲でヒューズ40を支持できる。また、ハッチングが施されている矢印は、第三ばね76がヒューズ40を支持する位置を示している。さらに、
図10において、ヒューズ40の中心には符号Oを付している。
【0043】
はじめに、第一ばね74,74の支持位置について説明する。
第一ばね74,74は、ヒューズ40の中心Oを通り幅方向Yに平行な線分Lとヒューズ40の外周面との交点またはこの交点よりも上の位置で接する。つまり、第一ばね74,74は、中心O以上の位置でヒューズ40を支持する。これは、以下の理由による。
【0044】
振動環境下において、ヒューズ40は高さ方向Zの上向きへの変位および下向きへの変位を繰り返す。ヒューズ40が上向きに変位するときには、
図10(b)に示すように、ヒューズ40の中心Oには上向きの力F1が加わる。
第一ばね74,74が中心Oよりも上方の位置で支持していれば、ヒューズ40には第一ばね74,74の支持により下向きの力が加わる。つまり、ヒューズ40の外周面が円弧面からなるので、第一ばね74からヒューズ40が受ける荷重Fmは、
図10(b)に示すように、水平成分FmHと鉛直成分FmVの合力となる。つまり、荷重Fmは下向きの成分を有する。
【0045】
以上の通りであり、第一ばね74,74が、中心Oよりも上方の位置でヒューズ40を支持すれば、振動による上向きの力F1とは逆の下向きの鉛直成分FmVが生じる。これにより、ヒューズ40は第一ばね74,74から抜け出しにくい。
なお、第一ばね74,74による支持位置が中心Oから上方に離れるほど、荷重Fmの下向きの成分が大きくなり、ヒューズ40は抜け出しにくくなる。また、第一ばね74,74による支持位置が中心Oと一致すれば、荷重Fmは水平成分のみからなる。
【0046】
仮に第一ばね74,74が、中心Oよりも下方の位置でヒューズ40を支持したとすると、第一ばね74からヒューズ40が受ける荷重Fmは、
図10(c)に示すように上向きの成分FmHを有する。したがって、第一ばね74,74による支持位置が中心Oより下方であれば、振動による上向きの力F1に加えて支持による荷重Fmの上向きの成分が生じる。これにより、ヒューズ40は第一ばね74,74から抜け出しやすい。
【0047】
以上の理由から、本実施形態において、第一ばね74,74によるヒューズ40の支持位置を、中心O以上の位置とする。
この支持位置が中心Oから上方に離れるにつれて、ヒューズ40を抜き取るときに必要な力が大きくなる。つまり、支持位置が中心Oから上方に離れていると、ヒューズ40を抜き取る過程で第一ばね74,74の間隔を広げる動作が生じる。この動作には、第一ばね74,74の弾性力を超える力が必要である。したがって、振動環境下でヒューズ40を支持することができる限り、必要以上に支持位置が中心Oから上方に離れることを避けることが好ましい。
また、ヒューズ40が幅方向Yに振動することをも考慮する。そうすると、第一ばね74,74によるヒューズ40の支持位置は、ヒューズ40の重心でもある中心Oを通り幅方向Yに平行な線分Lと当該外周面の交点に近いことが好ましい。
【0048】
第一ばね74による支持位置は、例えば、ヒューズ40の直径(D)とヒューズ40を支持するときの第一ばね74,74の間隔(L)と、の比で特定できる。この比を減衰率α1と称するものとすれば、減衰率α1(%)は以下の式で特定できる。そして、本実施形態において、α1は0~3.0%の範囲とすることが好ましく、α1は1.0~2.0%の範囲とすることがより好ましい。
α1=(D-L)/D×100(%)
後述する第二ばね75による支持位置も同様に減衰率α2(%)で特定され、α2は5.0~15.0%の範囲とすることが好ましく、α2は7.0~12.0%の範囲とすることがより好ましい。
【0049】
次に、第二ばね75,75の支持位置について説明する。
第二ばね75,75は、第一ばね74,74よりも上方の位置でその外周面に接してヒューズ40を支持する。これは、第二ばね75,75が、ヒューズ40が上向きに変位してヒューズクリップ70から抜け出るのを避けるためのものであることに基づく。つまり、第一ばね74,74の支持位置との関係により、第二ばね75,75は常に中心Oよりも上方の位置でヒューズ40を支持する。この支持位置は、
図10(b)を参照して説明したように、ヒューズ40に下向きの力の成分を与えるので、ヒューズ40の抜け止めとして機能する。
【0050】
第二ばね75,75による支持位置は、第一ばね74,74よりも上方の位置である限り任意である。しかし、中心Oから上方に離れすぎると、第一ばね74,74と同様に、ヒューズ40を抜き取るときに要する力が大きくなる。したがって、第一ばね74,74について示したのと同様の範囲に設けることが好ましい。
【0051】
次に、第三ばね76の支持位置について説明する。
第三ばね76は、ヒューズ40を高さ方向Zの上向きに支持する。この機能を発揮しうる限り、第三ばね76による支持位置は任意である。最も好ましくは、
図10(a)に示すように、第三ばね76は、ヒューズ40の中心Oを通り高さ方向Zと平行な線分とヒューズ40の外周面との交点を支持する。ただし、
図10(a)に示す白抜き矢印のように、幅方向Yの所定の範囲において当該交点からずれて支持することもできる。
【0052】
[効 果]
次に、本実施形態におけるヒューズクリップ70が奏する効果を説明する。
ヒューズクリップ70は、第一ばね74,74に加えて第二ばね75,75によりヒューズ40を幅方向Yに支持する。したがって、第一ばね74,74による荷重Fmおよび第二ばね75,75による荷重Fsを合わせた荷重でヒューズ40を支持することができる。
第一ばね74,74は、中心Oより上の位置でヒューズ40を支持するので、高さ方向Zに振動を受けたとしても、ヒューズ40が上方に抜け出しにくい。しかも、第二ばね75,75は第一ばね74,74よりも上の位置でヒューズ40を支持するので、ヒューズ40が上方により抜け出しにくい。
【0053】
また、ヒューズクリップ70は、第二ばね75,75が第一ばね74,74よりも背が高い。これにより、ヒューズ40を挿入するときに、第二ばね75,75が先行してヒューズ40に接触して、その後に時間差をあけて第一ばね74,74がヒューズ40に接触する。したがって、ヒューズ40を挿入するときに、荷重Fmおよび荷重Fsを合わせた荷重を一度に受けて、しかもその荷重を挿入の全過程で受けるのに比べて、ヒューズ40を挿入する当初の作業負担を抑えることができる。ヒューズ40を抜去するときについては、当初は荷重Fmおよび荷重Fsを合わせた荷重を一度に受けるが、途中からは第一ばね74,74による荷重Fmがなくなるので作業負担を抑えることができる。
【0054】
特に、本実施形態は、ヒューズクリップ70の第一ばね74,74と第二ばね75,75は、共通ばね73に接続されている。これにより、ヒューズ40をヒューズクリップ70に挿入するときに必要な力を軽減できる。つまり、第二ばね75,75がヒューズ40に先行して接して第二ばね75,75どうしの間隔が広くなるように撓むのに連動して共通ばね73も撓む。さらに、共通ばね73が撓むのに連動して第一ばね74,74も間隔が広くなるように撓む。これにより、第一ばね74,74の間にヒューズ40が挿入されるときに必要な力を軽減できる。特に、本実施形態は、第二ばね75,75の弾性力を第一ばね74,74に比べて小さくしたので、第一ばね74,74の間隔を広くするのに必要な力を軽減できる。
【0055】
ここで、特許文献1のヒューズクリップにおいては、ヒューズ支持片(8)および補助支持片(10)が円弧面を備え、この円弧面で管ヒューズ(5)と面接触する。この面接触による管ヒューズ(5)の支持は、強固な支持を実現できる点では優れる。管ヒューズ(5)の挿抜のときには、ヒューズ支持片(8)および補助支持片(10)を外側に向けて撓ませる必要がある。ところが、円弧面からなるばねは、偏平なばねに比べて外側に向けたわみに対して剛性が高い。したがって、円弧面で面接触するばね片は、ヒューズ40の挿抜のときの作業負担が大きい。
以上に対して、本実施形態のヒューズクリップ70においては、接点74A,75Aにおける線接触であり、この接点74A,75Aを除く部分は偏平に近い形状にできる。したがって、本実施形態によれば、ヒューズ40の挿抜のときの作業負担を抑えることができる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、以上の実施形態においては、独立して作製された二つのヒューズクリップ70で一つのヒューズ40を支持するが、二つのヒューズクリップ70を一体として作製して、ヒューズ40を支持することもできる。
【0057】
また、共通ばね73、第一ばね74,74、第二ばね75,75および第三ばね76の寸法などの仕様は、それぞれの機能を発揮しうる限り任意である。例えば、ヒューズ40の寸法、振動条件などに応じて仕様を調整することができる。
例えば、共通ばね73の高さ方向Zの寸法が大きいほど支持ばね71としての弾性力が大きくなる。これはヒューズ40の支持という観点では好ましいが、ヒューズクリップ70へのヒューズ40の挿入力が大きくなってしまう。そこで、挿入力を軽減するために、
図11(a)に示すように、共通ばね73の当該寸法を短くすればよい。
【0058】
また、ヒューズクリップ70は、第一ばね74と第一ばね74が対向し、第二ばね75と第二ばね75が対向するように、第一ばね74,74と第二ばね75,75が配列されている。しかしこれは一例であり、
図11(b)に示すように、第一ばね74と第二ばね75が対向するように、第一ばね74,74と第二ばね75,75が配列されていてもよい。
【0059】
さらに、以上の実施形態においては、第一ばね74によりヒューズ40を弾性支持する弾性力を第二ばね75よりも大きくしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第一ばね74によりヒューズ40を弾性支持する弾性力が第二ばね75と同等、または第二ばね75より小さくても、上述した本発明の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 コネクタ
10 レバーアセンブリ
20 アウターハウジング(第一ハウジング)
21 ヒューズ収容室
23,24 開口
25 回転軸
27 係止突起
29 ヒューズカバー
30 レバー
31 側体
33 軸受孔
35 連結体
37 係止孔
39 カム溝
40 ヒューズ
41 可溶体
43 収容管
45 絶縁体
47 端子
48 ヒューズバスバー
49 絶縁被覆
50 キャップアセンブリ
60 キャップハウジング(第二ハウジング)
61 ヒューズ収容室
62 底床
63 カム突起
65,66 クリップスプリング
67,68 ばね片
67A,68B ばね片
67B,68B ばね片
69 支持体
70 ヒューズクリップ
72 支持体
74 第一ばね
75 第二ばね
74A,75A 接点
76 第三ばね