(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】ボルテージレギュレータ
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
G05F1/56 310K
G05F1/56 310F
G05F1/56 310L
(21)【出願番号】P 2018165406
(22)【出願日】2018-09-04
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂口 薫
(72)【発明者】
【氏名】小倉 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】吉村 宗高
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大樹
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-174116(JP,A)
【文献】特開2005-346430(JP,A)
【文献】特開2017-175073(JP,A)
【文献】特開2009-74850(JP,A)
【文献】特開2003-143836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力トランジスタに接続されて所定の出力電圧を出力する出力電圧端子と、前記出力電圧を検知するための電圧調整端子と、
前記電圧調整端子で検知された前記出力電圧及び基準電圧の各々を比較して
前記出力トランジスタの制御端子を制御することで前記出力電圧を制御する誤差増幅器と、
前記誤差増幅器を用いた前記出力電圧の制御ループにおける位相を調整する位相補償容量との各々を備えたボルテージレギュレータであって、
前記位相補償容量を有効あるいは無効とするスイッチと、
前記電圧調整端子より試験信号を入力させ、前記位相補償容量を有効あるいは無効の場合のそれぞれにおける前記出力電圧の位相の変化を計測することで当該位相補償容量のテストを行なうテストモードにおいて、前記スイッチを有効あるいは無効のいずれかに制御するテスト回路と、
前記ボルテージレギュレータが通常に前記出力電圧を出力する通常モードに比較して、前記位相補償容量の試験を行なうテストモードにおける前記誤差増幅器のバイアス電流を低下させる定電流源と
を備えることを特徴とするボルテージレギュレータ。
【請求項2】
前記テストモードではない通常モードの際、前記スイッチを前記位相補償容量を有効とした状態に固定し、前記定電流源を通常モードにおける前記バイアス電流に固定する状態制限回路をさらに備える
ことを特徴とする請求項
1に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項3】
前記位相補償容量が前記出力電圧端子と前記誤差増幅器の出力端子との間に設けられており、前記誤差増幅器から出力される出力電圧の位相を遅延させる
ことを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項4】
前記位相補償容量が前記電圧調整端子と前記誤差増幅器の前記基準電圧と比較する電圧が入力される入力端子との間に設けられており、前記誤差増幅器に入力される出力電圧の位相を早める
ことを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載のボルテージレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルテージレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にボルテージレギュレータは、入力電圧(電源電圧)VINを受けて出力端子に一定の出力電圧VOUTを発生する。この際、ボルテージレギュレータは、負荷の変動に応じて電流を供給し、出力電圧VOUTを常に一定に保つ動作を行なう。
通常、ボルテージレギュレータには、形成されるゼロ点の周波数を調整することにより、応答性を向上させ、かつ、少ない出力容量でも発振などの誤動作を起こさずに安定動作させる位相補償回路が設けられている。
【0003】
この位相補償回路が設計に対応して形成されていなければ、上述した安定動作するという効果が得られないため、製造工程において位相補償回路のテストを行なう必要がある。
しかし、ボルテージレギュレータは、製造工程で実施されるテストにおいて、回路内部にある位相補償回路におけるコンデンサなどが問題なく形成されているか否か、すなわち酸化膜異常、コンタクト接続不良などの素子単体の不良の有無を直接に観察してテストを行なうことが困難である。
【0004】
例えば、位相補償回路の各素子をテストするためのテスト用パッド端子を設ける場合、このテスト用パッドによってチップ面積が増加したり、テスト用パッドによる寄生容量成分のため、位相補償回路における位相補償容量(コンデンサ)の容量値が変化し、位相補償回路の性能が損なわれる、という課題があった。
そこで、位相補償回路における位相補償容量の接続不良や、この位相補償容量の容量値が設計仕様の範囲にあるか否かなどの判定を間接的に行なうテスト方法がある。このテスト方法においては、位相補償容量に蓄積される電荷の放電時間あるいは放電電流を計測することにより、位相補償容量の接続不良及び容量値の判定を行なっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図5は、特許文献1のボルテージレギュレータの回路図を示している。位相補償回路110は、位相補償容量111及び抵抗112の各々を備えている。
また、このボルテージレギュレータには、位相補償回路110における位相補償容量111のテストを行なうテスト回路120が備えられている。テスト回路120は、pチャネル型MOSトランジスタ121及びnチャネル型MOSトランジスタ122の各々と、定電流源123とが備えられている。
【0006】
位相補償容量111のテストを行う際、第1段階として、pチャネル型MOSトランジスタ121をオンとし、nチャネル型MOSトランジスタ122をオフのままとして、位相補償容量111に電荷を十分に蓄積させる。
そして、第2段階として、pチャネル型MOSトランジスタ121及びnチャネル型MOSトランジスタ122の各々をオフとして、ボルテージレギュレータの消費電流ICS1を測定する。
【0007】
第3段階として、pチャネル型MOSトランジスタ121をオフのままとし、nチャネル型MOSトランジスタ122の各々をオンとして、定電流源123を介して、位相補償容量111に蓄積された電荷を放電させる。
このとき、ボルテージレギュレータの消費電流ICS2は、上記消費電流ICS1に対して位相補償容量111の電荷を放電する放電電流が加わり、消費電流ICS1より大きな電流となっている。そして、位相補償容量111の放電を開始してから、消費電流ICS2の測定を行ない、消費電流ICS2が消費電流ICS1と同等となるまでの時間Tを計測することにより、位相補償容量111の接続不良の判定及び容量値の推定を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1によるテスト方法においては、位相補償容量111の容量値が微少な場合、位相補償容量111に蓄積される電荷も少なく、電荷の放電の際に流れる放電電流の電流値も微少となる。
また、位相補償容量111の容量値が微少でなくとも、ボルテージレギュレータの他の回路における消費電流が非常に大きい場合、位相補償容量111の放電電流が相対的に微少な電流となる。
【0010】
上述した放電電流が消費電流ICS1に比較して微少である場合、ボルテージレギュレータ消費電流の測定における誤差範囲に含まれてしまう。
これにより、消費電流ICS1及びICS2の違いを十分に検出できず、すなわち放電電流を検出することができず、上述した時間Tを正確にあるいは全く測定できない可能性がある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ボルテージレギュレータの定常状態の消費電流に比較して微少な放電電流となる容量値の位相補償容量に対しても、接続不良や、容量値の推定を行なうことが可能なボルテージレギュレータを提供することを目的とする。
【0012】
本発明のボルテージレギュレータは、出力トランジスタに接続されて所定の出力電圧を出力する出力電圧端子と、前記出力電圧を検知するための電圧調整端子と、前記電圧調整端子で検知された前記出力電圧及び基準電圧の各々を比較して前記出力トランジスタの制御端子を制御することで前記出力電圧を制御する誤差増幅器と、前記誤差増幅器を用いた前記出力電圧の制御ループにおける位相を調整する位相補償容量との各々を備えたボルテージレギュレータであって、前記位相補償容量を有効あるいは無効とするスイッチと、前記電圧調整端子より試験信号を入力させ、前記位相補償容量を有効あるいは無効の場合のそれぞれにおける前記出力電圧の位相の変化を計測することで当該位相補償容量のテストを行なうテストモードにおいて、前記スイッチを有効あるいは無効のいずれかに制御するテスト回路と、前記ボルテージレギュレータが通常に前記出力電圧を出力する通常モードに比較して、前記位相補償容量の試験を行なうテストモードにおける前記誤差増幅器のバイアス電流を低下させる定電流源と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、ボルテージレギュレータの定常状態の消費電流に比較して微少な放電電流となる容量値の位相補償容量に対しても、接続不良や、容量値の推定を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態によるボルテージレギュレータの構成例を示す回路図である。
【
図2】位相補償容量C1のテストを行なった際における、試験パルスとこの試験パルスに対応した出力電圧VOUTの変化の位相との対応を示す波形を示す図である。
【
図3】
図1のボルテージレギュレータ1における位相補償回路13の変形例を示す回路図である。
【
図4】出力トランジスタ14の前段に1個の増幅回路を追加した出力段の変形例を示す回路図である。
【
図5】特許文献1のボルテージレギュレータの回路図
である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるボルテージレギュレータの構成例を示す回路図である。
図1において、ボルテージレギュレータ1は、基準電源11、誤差増幅器12、位相補償回路13、出力トランジスタ14、帰還位相補償回路15、抵抗16、17、可変定電流源18、テスト回路19及び状態制限回路20の各々を備えている。
また、位相補償回路13は、抵抗R1、スイッチSW1及び位相補償容量C1の各々を備えている。帰還位相補償回路15は、スイッチSW2及び位相補償容量C2の各々を備えている。
【0016】
基準電源11は、基準電圧Vrefを生成し、この基準電圧Vrefを誤差増幅器12の反転入力端子(-)に対して出力する。
誤差増幅器12は、接続点P2から非反転入力端子(+)に供給される帰還電圧Vfbと、反転入力端子(-)に供給される基準電圧Vrefとの差分の電圧を増幅し、出力端子から増幅電圧Vcmpを出力する。
【0017】
抵抗R1は、一端が誤差増幅器12の出力端子と接続点P1に接続され、他端がスイッチSW1の一端と接続されている。
スイッチSW1は、2端子のスイッチであり、他端が位相補償容量C1の一端と接続されている。
位相補償容量C1は、誤差増幅器12の出力端子から出力される信号波形の位相を遅延させる位相補償を行なうコンデンサであり、他端が出力電圧端子TVOUTと接続されている。
また、本実施形態においては、接続点P1から抵抗R1、スイッチSW1、位相補償容量C1の順番で接続する構成としているが、それぞれが直列に接続されていれば順番をどのように構成してもよい。
【0018】
出力トランジスタ14は、pチャネル型MOSトランジスタであり、ソースが入力電圧(電源電圧)VINの配線に接続され、ゲートが接続点P1に接続され、ドレインが出力電圧端子TVOUTに接続されている。
【0019】
スイッチSW2は、2端子のスイッチであり、一端が電圧調整端子TVADJに接続され、他端が位相補償容量C2の一端に接続されている。
位相補償容量C2は、電圧調整端子TVADJから供給される調整電圧VADJが抵抗16及び17で分圧された帰還電圧Vfbの波形の位相を進める位相補償を行なうコンデンサであり、他端が接続点P2に接続されている。
また、本実施形態においては、電圧調整端子TVADJからスイッチSW2、位相補償容量C2の順番で接続する構成としているが、それぞれが直列に接続されていれば順番をどのように構成してもよい。
【0020】
抵抗16は、一端が電圧調整端子TVADJに接続され、他端が接続点P2に接続されている。
抵抗17は、一端が接続点P2に接続され、他端が入力電圧(接地電圧)VSSの配線に接続されている。
ここで、抵抗16及び17の各々は、分圧回路を構成しており、電圧調整端子TVADJから入力される調整電圧VADJを抵抗比で分圧し、分圧された電圧を接続点P2から帰還電圧Vfbとして出力する。
【0021】
可変定電流源18は、誤差増幅器12の駆動に用いるバイアス電流I1を調整する電流源であり、誤差増幅器12の負側電源端子と入力電圧VSSの配線との間に介挿されている。
また、この可変定電流源18は、入力電圧VINの配線と誤差増幅器12の正側電源端子との間に介挿される構成としてもよい。
【0022】
テスト回路19は、位相補償容量C1及びC2の試験を行なうテストモードにおいて、スイッチSW1、SW2のオン/オフ制御、及び可変定電流源18のバイアス電流I1の制御を行なう。
ここで、テスト回路19は、テスト信号として、例えばテスト信号SG1、SG2及びSG3の各々が供給される。テスト信号SG1がLレベルの場合に通常モードであり、一方、テスト信号SG1がHレベルの場合にテストモードとなる。
【0023】
テスト回路19は、テスト信号SG1がLレベルの場合、可変定電流源18に対して、通常モードにおけるバイアス電流I1を流すことを指示する制御信号SIB(例えばLレベル)を出力する。
一方、テスト回路19は、テスト信号SG1がHレベルの場合、可変定電流源18に対して、通常モードに比較して少ない電流量のバイアス電流I1を流すことを指示する制御信号SIB(例えばHレベル)を出力する。
また、テスト回路19は、テスト信号SG1がLレベルの場合、スイッチSW1及びSW2の各々をオン状態とする制御信号S1A、S2Aそれぞれ(例えば、Hレベル)を出力する。
【0024】
また、テスト信号SG2及びSG3の各々は、テスト信号SG1がHレベルのテストモードの際に、入力が有効となる信号である。
テスト回路19は、テスト信号SG2がLレベルの場合に、オフ状態とすることを指示する制御信号S1A(例えば、Lレベル)を、スイッチSW1に対して出力し、スイッチSW1をオフ状態とする。
一方、テスト信号SG2がHレベルの場合に、オン状態とすることを指示する制御信号S1A(例えば、Hレベル)を、スイッチSW1に対して出力し、スイッチSW1をオン状態とする。
【0025】
同様に、テスト回路19は、テスト信号SG3がLレベルの場合に、オフ状態とすることを指示する制御信号S2A(例えば、Lレベル)を、スイッチSW2に対して出力し、スイッチSW2をオフ状態とする。
一方、テスト信号SG3がHレベルの場合に、オン状態とすることを指示する制御信号S2A(例えば、Hレベル)を、スイッチSW2に対して出力し、スイッチSW2をオン状態とする。
【0026】
以下に、ボルテージレギュレータ1における通常モードについての説明を行なう。
通常モードの場合、出力電圧端子TVOUT及び電圧調整端子TVADJの各々が接続され、スイッチSW1及びSW2の各々はオン状態である。ボルテージレギュレータ1は、所定の出力電圧を出力電圧端子TVOUTから出力する動作を行なう。これにより、出力電圧VOUTが抵抗R16及びR17の抵抗比により分圧され、接続点P1から帰還電圧Vfbとして誤差増幅器12の正側入力端子(+)に供給される。
そして、誤差増幅器12は、帰還電圧Vfbと基準電圧Vrefとの各々を比較し、帰還電圧Vfb、基準電圧Vrefそれぞれの差分に対応した増幅電圧Vcmpを出力する。
【0027】
このときの位相補償において、スイッチSW1はオン状態のため、出力電圧端子TVOUTに出力される出力電圧VOUTが位相補償容量C1に供給される。
そして、出力電圧VOUTの波形が位相補償容量C1により微分され、この微分により生成された微分波形信号がスイッチSW1及び抵抗R1を介して接続点P1へ供給される。
上記増幅電圧Vcmpの電圧波形に対し、微分波形信号の位相が反転しているため、接続点P1における増幅電圧Vcmpによる電圧変化を妨げることになり、出力トランジスタ14にゲートに供給される増幅電圧Vcmpの位相を遅延させる。
【0028】
また、位相補償において、スイッチSW2はオン状態のため、電圧調整端子TVADJに対して、出力電圧端子TVOUTから出力電圧VOUTが供給される。
そして、出力電圧VOUTの波形が位相補償容量C2により微分され、この微分により生成された微分波形信号がスイッチSW2を介して、接続点P2へ供給される。
この接続点P2においては、抵抗16及び17の抵抗比により、帰還電圧Vfbが生成される。この帰還電圧Vfbの電圧波形に対し、微分波形信号の位相が同相のため、接続点P2における帰還電圧Vfbによる電圧変化を早くすることになり、誤差増幅器12の正側入力端子(+)に供給される帰還電圧Vfbの位相を進める。
【0029】
次に、ボルテージレギュレータ1における位相補償容量のテストモードについての説明を行なう。このとき、出力電圧端子TVOUTと電圧調整端子TVADJは、接続されない。位相補償容量のテストは、ボルテージレギュレータ1の製造過程で行なわれる良否判定の試験の一つである。
位相補償容量C1及びC2のテストは、位相補償容量C1、C2の各々を個別に接続の有無及び容量値の判定を行なう必要があるため、それぞれ独立して行なう。
以下のテストモードの説明を、便宜的に、位相補償容量C1のテストを行なった後に、位相補償容量C2のテストを行なう順番で行うが、いずれを先にテストしてもよい。
【0030】
位相補償容量C1のテストを行なう場合、テスト信号SG1がHレベルに、テスト信号SG3がLレベルに固定される。すなわち、位相補償容量C1のテストを行なう場合、テスト信号SG3をLレベルとすることで、テスト回路19は、制御信号S2AをLレベルとしてスイッチSW2をオフ状態とし、位相補償容量C2を位相補償の動作において無効とする。
【0031】
また、テスト信号SG2をLレベルとすることで、テスト回路19は、制御信号S1AをLレベルとしてスイッチSW1をオフ状態とし、位相補償容量C1を位相補償の動作において無効とする。
この状態で、電圧調整端子TVADJに対して試験パルスを供給する。この試験パルスは、抵抗16及び17で分圧されて帰還電圧Vfbとなった際、基準電圧Vrefを交差する電圧レベルで変化するパルスである。
そして、試験パルスの位相と、この試験パルスに対応して変化する出力電圧VOUTとの位相とを計測し、試験パルスの位相と出力電圧VOUTとの位相差Pdiff1Aを求める。
【0032】
次に、テスト信号SG2をHレベルとすることで、テスト回路19は、制御信号S1AをHレベルとしてスイッチSW1をオン状態とし、位相補償容量C1を位相補償の動作において有効とする。
この状態で、電圧調整端子TVADJに対して、上述した位相補償容量C1を位相補償の動作において無効とした場合と同様の試験パルスを供給する。
そして、試験パルスの位相と、この試験パルスに対応して変化する出力電圧VOUTとの位相とを計測し、試験パルスの位相と出力電圧VOUTとの位相差Pdiff2Aを求める。
【0033】
上述した位相補償容量C1を位相補償に対して有効/無効とした場合の位相の差分、すなわち、位相差Pdiff2A及びPdiff1Aの差分の大きさにより、位相補償容量C1の製造工程における接続の有無、あるいは容量値を推定することができる。
また、可変定電流源18によりバイアス電流を通常モードに比較して、テストモードにおいては減少させている。このため、誤差増幅器12が出力する電流が減少することにより、通常モードに比較して増幅電圧Vcmpの電圧変化の傾きが緩やかになる。通常モードのバイアス電流I1の場合に比較して、位相差Pdiff2A及びPdiff1Aの差分の大きさ(絶対値)を拡大することができ、位相補償容量C1の製造工程における接続の有無、あるいは容量値の推定を容易に高い精度で行なうことができる。
【0034】
次に、位相補償容量C2のテストを行なう場合、テスト信号SG1がHレベルに、テスト信号SG2がLレベルに固定される。すなわち、位相補償容量C2のテストを行なう場合、テスト信号SG2をLレベルとすることで、テスト回路19は、制御信号S1AをLレベルとしてスイッチSW1をオフ状態とし、位相補償容量C1を位相補償の動作において無効とする。
【0035】
また、テスト信号SG3をLレベルとすることで、テスト回路19は、制御信号S2AをLレベルとしてスイッチSW2をオフ状態とし、位相補償容量C2を位相補償の動作において無効とする。
この状態で、位相補償容量C1のテストの場合と同様の試験パルスを、電圧調整端子TVADJに対して供給する。
そして、試験パルスの位相と、この試験パルスに対応して変化する出力電圧VOUTとの位相とを計測し、試験パルスの位相と出力電圧VOUTとの位相差Pdiff1Bを求める。
【0036】
次に、テスト信号SG3をHレベルとすることで、テスト回路19は、制御信号S2AをHレベルとしてスイッチSW2をオン状態とし、位相補償容量C2を位相補償の動作において有効とする。
この状態で、電圧調整端子TVADJに対して、上述した位相補償容量C2を位相補償の動作において無効とした場合と同様の試験パルスを供給する。
そして、試験パルスの位相と、この試験パルスに対応して変化する出力電圧VOUTとの位相とを計測し、試験パルスの位相と出力電圧VOUTとの位相差Pdiff2Bを求める。
【0037】
上述した位相補償容量C1を位相補償に対して有効/無効とした場合の位相の差分、すなわち、位相差Pdiff2B及びPdiff1Bの差分の大きさにより、位相補償容量C1の製造工程における接続の有無、あるいは容量値を推定することができる。
また、可変定電流源18によりバイアス電流を通常モードモードに比較して、テストモードにおいては減少させている。このため、誤差増幅器12が出力する電流が減少することにより、通常モードに比較して増幅電圧Vcmpの電圧変化の傾きが緩やかになる。これにより、通常モードのバイアス電流I1の場合に比較して、位相差Pdiff2B及びPdiff1Bの差分の大きさ(絶対値)を拡大させることができ、位相補償容量C2の製造工程における接続の有無、あるいは容量値を推定を容易に高い精度で行なうことができる。
【0038】
また、上述した実施形態においては、位相補償容量C1及びC2の各々の製造工程における接続の有無、あるいは容量値の推定を容易に高い精度で行なうため、可変定電流源18を設けている。
しかしながら、位相補償容量C1及びC2の容量値の推定に精度を必要としない場合や、製造工程における接続の有無のみの試験を行う場合など、可変定電流源18の代わりに誤差増幅器12の動作電流のみを流す定電流源としてもよい。
【0039】
また、上述した実施形態においては、ボルテージレギュレータ1を位相補償容量C1及びC2の各々が設けられている構成として説明したが、位相補償容量C1あるいはC2のいずれか一方のみが設けられている他の構成としてもよい。
この構成の場合、テスト回路19におけるテスト信号は、テスト信号SG1及びSG2の各々となり、テスト信号SG1の動作については、上記実施形態の説明と同様である。
【0040】
ここで、位相補償容量C1のみが設けられている場合、テスト回路19は、テスト信号SG1がHレベルで供給された場合、制御信号S1AをLレベルでスイッチSW1へ供給し、スイッチSW1をオフ状態とする。
一方、テスト回路19は、テスト信号SG2がHレベルで供給された場合、制御信号S1AをHレベルでスイッチSW1へ供給し、スイッチSW1をオン状態とする。
位相差Pdiff2A及びPdiff1Aの差分による位相補償容量C1の接続の判定及び容量値の推定ついては上述した説明と同様である。
【0041】
また、位相補償容量C2のみが設けられている場合、テスト回路19は、テスト信号SG1がHレベルで供給された場合、テスト信号SG2をLレベルでスイッチSW2へ供給し、スイッチSW2をオフ状態とする。
一方、テスト回路19は、テスト信号SG2がHレベルで供給された場合、制御信号S2AをHレベルでスイッチSW2へ供給し、スイッチSW2をオン状態とする。
位相差Pdiff2B及びPdiff1Bの差分による位相補償容量C2の接続の判定及び容量値の推定ついては上述した説明と同様である。
【0042】
また、上述した実施形態においては、テスト回路19の動作をテストモードに移行することなく、通常モードに固定する状態制限回路20が設けられている。状態制限回路20は、例えば内部にメモリなどの記憶素子が設けられており、出荷時などにテスト回路19が通常モードに固定され、どのようなテスト信号(SG1、SG2及びSG3)が入力された場合においても、通常モードの動作に制限する。
しかしながら、出荷時において、テスト端子TTESTがパッケージの端子として外部に出ない場合においては、状態制限回路20を設けない構成としてもよい。
【0043】
図2は、位相補償容量C1のテストを行なった際における、試験パルスとこの試験パルスに対応した出力電圧VOUTの変化の位相との対応を示す波形を示す図である。
ここで、
図2(a)は、電圧調整端子TVADJに入力する試験パルスの波形を示しており、縦軸が電圧を示し、横軸が時間を示している。
また、
図2(b)は、誤差増幅器12の正側入力端子(+)に供給される、上記試験パルスの電圧が抵抗16及び17により分圧された帰還電圧Vfbの変化波形を示しており、縦軸が電圧を示し、横軸が時間を示している。
また、
図2(c)は、接続点P1における増幅電圧Vcmpの変化波形を示しており、縦軸が電圧を示し、横軸が時間を示している。
また、
図2(d)は、出力電圧端子TVOUTから出力される出力電圧VOUTの変化波形を示しており、縦軸が電圧を示し、横軸が時間を示している。
【0044】
すでに述べたように、位相補償容量C1のテストを行なう場合、位相補償容量C1を位相補償に対して有効及び無効の各々の状態毎に、電圧調整端子TVADJに対して試験パルスを供給する。そして、供給した試験パルスの位相と、この試験パルスに対応した出力電圧VOUTの変化の位相とを比較する。
図2(c)及び
図2(d)の各々において、実線で示されている増幅電圧Vcmpの変化波形、出力電圧VOUTの変化波形のそれぞれが、テスト回路19に供給されるテスト信号SG1がLレベル、すなわち通常モードにおける場合を示している(位相補償容量C1及びC2の各々が位相補償に対して有効)。
【0045】
また、
図2(c)及び
図2(d)の各々において、一点鎖線で示されている増幅電圧Vcmpの変化波形、出力電圧VOUTの変化波形のそれぞれが、テスト回路19に供給されるテスト信号SG1がHレベルであり、かつテスト信号SG2及びSG3がLレベル、すなわちテストモードにおいてスイッチSW1及びSW2がオフ状態における場合を示している(位相補償容量C1及びC2の各々が位相補償に対して無効)。
【0046】
また、
図2(c)及び
図2(d)の各々において、二点鎖線で示されている増幅電圧Vcmpの変化波形、出力電圧VOUTの変化波形のそれぞれが、テスト回路19に供給されるテスト信号SG1がHレベルであり、かつテスト信号SG2がHレベル及びテスト信号SG3がLレベル、すなわちテストモードにおいてスイッチSW1がオン状態及びスイッチSW2がオフ状態における場合を示している(位相補償容量C1が位相補償に対して有効、位相補償容量C2が位相補償に対して無効)。
【0047】
時刻t1:
図2(a)に示す様に、電圧調整端子TVADJに対して、外部装置から供給される試験パルスが立ち上がる(LレベルからHレベルへ遷移)。ここで、
図2(b)における帰還電圧Vfbが基準電圧Vref未満の電圧から、基準電圧Vrefを超える電圧に変化する。また、
図2(c)に示す様に、通常モードにおける実線の増幅電圧Vcmpの電圧上昇の速度に対して、バイアス電流が低減されるために、テストモードにおける一点鎖線及び二点鎖線の増幅電圧Vcmpの電圧上昇の速度は低下する。
【0048】
時刻t2:
図2(d)に示す様に、試験パルスの立ち上がりに対応して、実線の出力電圧VOUTの電圧波形がHレベルからLレベルに変化する。この際の試験パルスと出力電圧VOUTの電圧波形との位相差Pdiff1は、時間tf1である。
時刻t3:
図2(d)に示す様に、試験パルスの立ち上がりに対応して、一点鎖線の出力電圧VOUTの電圧波形がHレベルからLレベルに変化する。この際の試験パルスと出力電圧VOUTの電圧波形との位相差Pdiff1Aは、時間tf2である。
時刻t4:
図2(d)に示す様に、試験パルスの立ち上がりに対応して、二点鎖線の出力電圧VOUTの電圧波形がHレベルからLレベルに変化する。この際の試験パルスと出力電圧VOUTの電圧波形との位相差Pdiff2Aは、時間tf3である。
【0049】
図2(d)に示す位相差Pdiff2Aと位相差Pdiff1Aとの差分、すなわち時間tf3と時間tf2の差分の大きさにより、位相補償容量C1の接続の判定及び容量値の推定が行なわれる。ここで、時間tf3と時間tf2の差分による接続の判定及び容量値の推定は、実際の試験を行い、通常モードで正常動作をしたボルテージレギュレータ1の時間tf3と時間tf2の差分を、統計的に処理して設定された許容範囲に基づいて行なわれる。
また、時刻t5、t6、t7及びt8の各々においても、上述した時刻t1、t2、t3、t4それぞれと同様である。
【0050】
図3は、
図1のボルテージレギュレータ1における位相補償回路13の変形例を示す回路図である。
図3において、
図1の位相補償回路13における抵抗R1に換えて、所定のゲインを有する増幅器A1が設けられている。位相補償容量C1及びスイッチSW1の各々は、
図1の位相補償回路13と同様の構成である。
出力電圧端子TVOUTから接続点P1へ信号の伝搬方向に対して、位相補償容量C1の後段に増幅器A1が配置されれば、スイッチSW1を直列接続におけるいずれの位置に配置する構成としてもよい。
【0051】
図3の位相補償回路の動作において、スイッチSW1がオン状態(位相補償容量C1が位相補償に有効な状態)である場合、出力トランジスタ14が出力する出力電圧VOUTの電圧波形がスイッチSW1を介して位相補償容量C1に供給されると、その出力電圧VOUTの電圧波形の微分波形が増幅器A1へ供給される。増幅器A1は、その微分波形を所定のゲインで増幅して、接続点P1へ出力する。これにより、誤差増幅器12から出力される増幅電圧Vcmpの変化と位相が逆の微分波形が接続点P1に供給され、増幅電圧Vcmpの変化を抑制する位相補償が行なわれる。
【0052】
図4は、出力トランジスタ14の前段に1個の増幅回路を追加した出力段の変形例を示す回路図である。
図4において、pチャネル型MOSトランジスタであるトランジスタ21と、バイアス電流I2を流す定電流源22とが増幅回路として設けられている。
トランジスタ21は、ソースが入力電圧VINの配線に接続され、ゲートが接続点P1に接続され、ドレインが接続点P3(出力トランジスタ14のゲート)に接続されている。
定電流源22は、一端がトランジスタ21のドレインに接続され、他端が電源VSSの配線に接続されている。
トランジスタ21及び定電流源22の各々は、誤差増幅器12から出力される増幅電圧Vcmpをさらに増幅する増幅回路を構成している。
【0053】
また、
図4の増幅回路を用いる場合、出力電圧VOUTの位相と増幅電圧Vcmpとの電圧波形が同相となるため、誤差増幅器12の動作を出力電圧Voutの位相に対応させる必要がある。このため、誤差増幅器12において、基準電圧Vrefが正側入力端子(+)に供給され、帰還電圧Vfbが負側入力端子(-)に供給される接続とする。
この構成以外の、テストモードにおける動作については、
図1における説明と同様である。
【0054】
上述したように、本実施形態によれば、ボルテージレギュレータの定常状態の消費電流に比較して微少な放電電流となる容量値の位相補償容量に対しても、位相補償容量を有効及び無効にした状態における、試験パルスに対する出力電圧VOUTの位相差それぞれを比較することにより、位相補償容量の計測を行なっているため、位相補償容量を直接測定する端子を設ける必要が無く、容易かる簡易に位相補償容量の接続不良や、容量値が異常値であるか否かの推定を行なうことが可能となる。
【0055】
また、本実施形態によれば、可変定電流源18により、通常モードに比較してテストモードにおける誤差増幅器12のバイアス電流を低減させ、誤差増幅器12の出力電流を少なくしているため、テストモードにおける増幅電圧Vcmpの電圧変化を緩やかにすることができ、試験パルスに対する出力電圧VOUTの位相差を拡大することができ、位相補償容量の容量が微少であっても位相差の比較の精度を向上させることが可能となる。
【0056】
また、本実施形態においては、位相補償容量C1のテストを行なう場合、テスト信号SG1をHレベルかつテスト信号SG3をLレベルとし、位相補償容量C2のテストを行なう場合、テスト信号SG1をHレベルかつテスト信号SG2をLレベルとする信号レベルの組合せの設定で説明した。しかしながら、上述した信号レベルの組合せに限定されず、位相補償容量C1、C2のいずれをテストの対象とするかが区別できれば、どのような信号レベルの組合せとして設定してもよい。例えば、信号レベルの組合せは、位相補償容量C1のテストを行なう場合、テスト信号SG1をHレベルかつテスト信号SG3をHレベルとし、位相補償容量C2のテストを行なう場合、テスト信号SG1をHレベルかつテスト信号SG2をHレベルと設定してもよい。
【0057】
また、本実施形態においては、位相補償容量C1及び位相補償容量C2のテストを行なう際、電圧調整端子TVADJに対して試験パルスを試験信号として供給する説明を行なった。しかしながら、試験信号の伝搬遅延を検出するので、信号レベルの立ち上がり波形あるいは立ち下がり波形のいずれかが有れば検出可能であるため、立ち上がり及び立ち下がりの双方を有する試験パルスではなく、立ち上がりあるいは立ち下がりのいずれかの波形を有する信号を試験信号として供給し、試験信号の伝搬遅延を検出するテストを行なってもよい。
【0058】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…ボルテージレギュレータ
11…基準電源
12…誤差増幅器
13…位相補償回路
14…出力トランジスタ
15…帰還位相補償回路
16,17,R1…抵抗
18…可変定電流源
19…テスト回路
20…状態制限回路
21…トランジスタ
22…定電流源
C1,C2…位相補償容量