(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】圧電スピーカー
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20220802BHJP
H04R 7/04 20060101ALI20220802BHJP
H04R 7/22 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
H04R17/00
H04R7/04
H04R7/22
(21)【出願番号】P 2018191932
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】阿部 善幸
(72)【発明者】
【氏名】河盛 淳
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/029768(WO,A1)
【文献】特開昭56-169500(JP,A)
【文献】実開昭62-001498(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、圧電素子と、振動板と、エッジと、スペーサとを備える圧電スピーカーであって、
前記フレームは、所定領域を囲んでおり、
前記フレームは、上下方向において上面及び下面を有しており、
前記圧電素子は、前記フレームの前記下面に固定されており、
前記圧電素子は、前記上下方向において前記所定領域の下方に位置しており、
前記エッジは、前記フレームの前記上面に固定されていると共に、前記振動板の外周端を振動自在に支持しており、
前記振動板は、前記上下方向において前記所定領域の上方に位置しており、
前記スペーサは、前記所定領域内に配置されており、
前記スペーサは、前記上下方向において、前記圧電素子と前記振動板とに固定されており、
前記振動板のヤング率をG1とし、前記エッジのヤング率をG2とするとき、1.5≦G1/G2≦5を満たす
圧電スピーカー。
【請求項2】
請求項1記載の圧電スピーカーであって、
前記圧電スピーカーを前記上下方向に沿って見た場合、前記振動板の前記外周端は、前記所定領域内に位置している
圧電スピーカー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の圧電スピーカーであって、
100MPa≦G1≦4GPaを満たす
圧電スピーカー。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の圧電スピーカーであって、
前記振動板の重量をWとするとき、0.04g≦W≦0.1gを満たす
圧電スピーカー。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の圧電スピーカーであって、
前記圧電スピーカーは、第1ダンパーを更に備えており、
前記第1ダンパーは、前記フレームと前記圧電素子との間、前記スペーサと前記圧電素子との間、及び前記スペーサと前記振動板との間の少なくとも一箇所に配置されている
圧電スピーカー。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の圧電スピーカーであって、
前記圧電スピーカーは、第2ダンパーを更に備えており、
前記振動板は、主振動部と、支持体とを備えており、
前記支持体は、前記エッジと一体形成されており、
前記第2ダンパーは、前記上下方向において前記支持体と前記主振動部との間に配置されている
圧電スピーカー。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の圧電スピーカーであって、
前記エッジは、弧状の断面を有している
圧電スピーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を備える圧電スピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の圧電スピーカーとしては、特許文献1に開示されたものがある。詳しくは、
図5を参照して、特許文献1の圧電スピーカー900は、フレーム910と、圧電素子920と、振動板930と、ダンパー940と、スペーサ950と、固定材960とを備えている。圧電素子920のX方向における両端922は、フレーム910に支持されている。振動板930は、ダンパー940の+Z面に貼り付けられている。スペーサ950は、Z方向において圧電素子920とダンパー940とを連結している。固定材960は、ダンパー940の外周部942の-Z面と、フレーム910の+Z面とを、接着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧電スピーカー900においては、振動板930は、ダンパー940及び固定材960を介してフレーム910に固定されている。これにより、振動板930のZ方向への変位は一定の制限があり、圧電スピーカー900から発生可能な音圧には限界がある。
【0005】
一方、圧電スピーカーにおいて、より大きな音圧を発生させたいとの要望がある。
【0006】
そこで、本発明は、より大きな音圧を発生可能な圧電スピーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、振動板930のZ方向への変位をより大きくするため、従来の圧電スピーカーに採用されていなかったエッジで、振動板930を支持する構造を発案した。
【0008】
しかしながら、この発案を具現化した圧電スピーカーを試作したところ、振動板が分割振動して適切にZ方向に大きく変位しないという、新たな問題が生じた。
【0009】
ここで、本発明の発明者らは、この問題について鋭意研究した結果、振動板のヤング率及びエッジのヤング率を適切な範囲に調整することにより、分割振動を抑制しながら振動板を適切にZ方向に大きく変位させることができることを見出した。
【0010】
本発明は、かかる知見に基づくものであり、具体的には上述した課題を解決するための手段として以下に掲げる圧電スピーカーを提供する。
【0011】
即ち、本発明は、第1の圧電スピーカーとして、
フレームと、圧電素子と、振動板と、エッジと、スペーサとを備える圧電スピーカーであって、
前記フレームは、所定領域を囲んでおり、
前記フレームは、上下方向において上面及び下面を有しており、
前記圧電素子は、前記フレームの前記下面に固定されており、
前記圧電素子は、前記上下方向において前記所定領域の下方に位置しており、
前記エッジは、前記フレームの前記上面に固定されていると共に、前記振動板の外周端を振動自在に支持しており、
前記振動板は、前記上下方向において前記所定領域の上方に位置しており、
前記スペーサは、前記所定領域内に配置されており、
前記スペーサは、前記上下方向において、前記圧電素子と前記振動板とに固定されており、
前記振動板のヤング率をG1とし、前記エッジのヤング率をG2とするとき、1.5≦G1/G2≦5を満たす
圧電スピーカーを提供する。
【0012】
また、本発明は、第2の圧電スピーカーとして、第1の圧電スピーカーであって、
前記圧電スピーカーを前記上下方向に沿って見た場合、前記振動板の前記外周端は、前記所定領域内に位置している
圧電スピーカーを提供する。
【0013】
また、本発明は、第3の圧電スピーカーとして、第1又は第2の圧電スピーカーであって、
100MPa≦G1≦4GPaを満たす
圧電スピーカーを提供する。
【0014】
また、本発明は、第4の圧電スピーカーとして、第1から第3までのいずれかの圧電スピーカーであって、
前記振動板の重量をWとするとき、0.04g≦W≦0.1gを満たす
圧電スピーカーを提供する。
【0015】
また、本発明は、第5の圧電スピーカーとして、第1から第4までのいずれかの圧電スピーカーであって、
前記圧電スピーカーは、第1ダンパーを更に備えており、
前記第1ダンパーは、前記フレームと前記圧電素子との間、前記スペーサと前記圧電素子との間、及び前記スペーサと前記振動板との間の少なくとも一箇所に配置されている
圧電スピーカーを提供する。
【0016】
また、本発明は、第6の圧電スピーカーとして、第1から第5までのいずれかの圧電スピーカーであって、
前記圧電スピーカーは、第2ダンパーを更に備えており、
前記振動板は、主振動部と、支持体とを備えており、
前記支持体は、前記エッジと一体形成されており、
前記第2ダンパーは、前記上下方向において前記支持体と前記主振動部との間に配置されている
圧電スピーカーを提供する。
【0017】
また、本発明は、第7の圧電スピーカーとして、第1から第6までのいずれかの圧電スピーカーであって、
前記エッジは、弧状の断面を有している
圧電スピーカーを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の圧電スピーカーにおいて、エッジは、フレームの上面に固定されていると共に、振動板の外周端を振動自在に支持しており、また、振動板のヤング率をG1とし、エッジのヤング率をG2とするとき、1.5≦G1/G2≦5を満たしている。これにより、本発明の圧電スピーカーは、より大きな音圧を発生可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態による圧電スピーカーを示す断面図である。
【
図2】
図1の圧電スピーカーのうちのA線で囲まれた部分を示す拡大図である。
【
図4】
図1の圧電スピーカーの振動板の振動の測定結果を示す画像である。ここで、振動板以外の構成要素については省略されている。
【
図5】特許文献1の圧電スピーカーを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示されるように、本発明の実施の形態による圧電スピーカー100は、フレーム200と、圧電素子300と、振動板400と、エッジ500と、接着層600と、スペーサ700とを備えている。また、本実施の形態の圧電スピーカー100は、内部に所定領域250を有している。
【0021】
図1を参照して、本実施の形態のフレーム200は、金属製である。より詳しくは、フレーム200は、SUS製である。本実施の形態のフレーム200は、所定領域250を囲んでいる。より詳しくは、フレーム200は、上下方向と直交する平面内において、所定領域250を囲んでいる。フレーム200は、上下方向において上面210及び下面220を有している。本実施の形態において、上下方向はZ方向であり、上下方向と直交する平面はXY平面である。ここで、上方を+Z方向とし、下方を-Z方向とする。
【0022】
図1を参照して、本実施の形態の圧電素子300は、上下方向に電圧を印加することにより伸縮運動する圧電セラミックスを圧電素子要素として積層した、積層型圧電素子である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、圧電素子300は、バイモルフ型やユニモルフ型の圧電素子であってもよい。なお、
図1において、圧電素子300に電圧を印加するためのリード線や端子は図示していない。
【0023】
図1に示されるように、本実施の形態の圧電素子300は、上下方向と直交する平板形状を有している。圧電素子300は、上下方向において上面304及び下面306を有している。圧電素子300は、フレーム200の下面220に固定されている。圧電素子300は、上下方向において所定領域250の下方に位置している。即ち、圧電素子300の上面304は、上下方向において所定領域250の下方に位置している。
【0024】
図1を参照して、本実施の形態の振動板400は、樹脂製である。より詳しくは、振動板400は、PET樹脂製である。振動板400は、上下方向と直交する平板形状を有している。
図3に示されるように、振動板400は、上下方向と直交する直交方向において、外周端402を有している。振動板400の外周端402は、上下方向と直交する第1水平方向と平行な2つの辺と、上下方向及び第1水平方向の双方と直交する第2水平方向と平行な2つの辺とを有する、略矩形の形状を有している。本実施の形態において、第1水平方向はX方向であり、第2水平方向はY方向である。
【0025】
図1に示されるように、本実施の形態の振動板400は、上下方向において上面414及び下面436を有している。振動板400は、上下方向において所定領域250の上方に位置している。即ち、振動板400の下面436は、上下方向において所定領域250の上方に位置している。
図3に示されるように、圧電スピーカー100を上下方向に沿って見た場合、振動板400の外周端402は、所定領域250内に位置している。
【0026】
振動板400のヤング率をG1とすると、G1は、100MPa≦G1≦4GPaを満たしている。G1が100MPa未満である場合、振動板400が圧電素子300にスペーサ700を介して押圧された時に、振動板400全体として移動せずにスペーサ700で直接的に押圧される部分のみが移動し、大きな音圧を発生させることができず、好ましくない。即ち、G1が100MPa未満である場合、振動板400が圧電素子300にスペーサ700を介して押圧された時に、スペーサ700で直接的に押圧される部分はスペーサ700の動きに追従して移動する一方、直接的に押圧されない部分はスペーサ700の動きに追従しないため、大きな音圧を発生させることができず、好ましくない。また、G1が4GPaを超える場合、振動板400の屈曲運動が支配的となり、好ましくない。
【0027】
また、振動板400の重量をWとするとき、Wは、0.04g≦W≦0.1gを満たす。Wが0,1gを超える場合、振動板400の駆動に必要な圧電素子300が、形状の大型化や積層数の増加により高価なものとなるため、好ましくない。
【0028】
図1に示されるように、本実施の形態の振動板400は、主振動部410と、支持体430とを備えている。
【0029】
図1に示されるように、本実施の形態の主振動部410は、上下方向と直交する平板形状を有している。主振動部410は、直交方向において、外周端412を有している。外周端412は、直交方向において、外側に露出している。主振動部410は、上下方向において上面414及び下面416を有している。上面414は、外部に露出している。
【0030】
図1に示されるように、本実施の形態の支持体430は、上下方向と直交する平板形状を有している。支持体430は、直交方向において、外周端432を有している。支持体430は、上下方向において上面434及び下面436を有している。支持体430は、上下方向において所定領域250の上方に位置している。即ち、支持体430の下面436は、上下方向において所定領域250の上方に位置している。
【0031】
図2を参照して、本実施の形態のエッジ500は、樹脂製である。より詳しくは、エッジ500は、ポリエチレンナフタレート製である。
図2に示されるように、エッジ500は、弧状の断面を有している。エッジ500は、内端512と、外端524とを有している。エッジ500のヤング率をG2とするとき、G1及びG2は、1.5≦G1/G2≦5を満たしている。ここで、G1/G2が1.5未満の場合、振動板400の屈曲運動が支配的となるため、好ましくない。また、G1/G2が5より大きい場合、振動板400に対してエッジ500が柔らかすぎるため、振動板400が圧電素子300にスペーサ700を介して押圧された時に、振動板400全体として上下運動せず、また振動板400に上下方向を軸とする回転方向の動きが加わるため、好ましくない。
【0032】
図2に示されるように、本実施の形態のエッジ500は、湾曲部510と、平板部520とを有している。
【0033】
図3に示されるように、本実施の形態の湾曲部510は、上下方向に沿って見た場合、略矩形の外周を有している。
図2に示されるように、湾曲部510は、上下方向及び直交方向で構成される平面において、弧状の断面を有している。湾曲部510は、内端512と、外端514とを有している。内端512は、湾曲部510の直交方向内端を規定している。外端514は、湾曲部510の直交方向外端を規定している。
【0034】
図1に示されるように、本実施の形態の平板部520は、上下方向と直交する平板形状を有している。
図3に示されるように、平板部520は、上下方向に沿って見た場合、矩形の外周を有している。平板部520は、内端522と、外端524とを有している。内端522は、平板部520の直交方向内端を規定している。外端524は、平板部520の直交方向外端を規定している。平板部520は、直交方向において湾曲部510の外側に位置している。平板部520は、直交方向において湾曲部510と連結されている。詳しくは、平板部520の内端522は、直交方向において湾曲部510の外端514と連結されている。
【0035】
図1及び
図2に示されるように、本実施の形態のエッジ500は、フレーム200の上面210に固定されていると共に、振動板400の外周端402を振動自在に支持している。
【0036】
図1に示されるように、エッジ500は、接着層600を介してフレーム200の上面210に固定されている。より詳しくは、エッジ500の平板部520は、接着層600を介してフレーム200の上面210に固定されている。エッジ500の湾曲部510は、フレーム200の上面210に固定されていない。
【0037】
図2に示されるように、エッジ500の湾曲部510の内端512は、振動板400の支持体430の外周端432を振動自在に支持している。エッジ500の湾曲部510の内端512は、直交方向において、振動板400の支持体430の外周端432と連結されている。即ち、支持体430は、エッジ500と一体形成されている。
【0038】
図1及び
図2から理解されるように、湾曲部510は、上下方向において所定領域250の上方に位置している。平板部520は、上下方向において所定領域250の上方に位置している。
【0039】
図1に示されるように、本実施の形態の接着層600は、上下方向においてフレーム200とエッジ500との間に位置している。より詳しくは、接着層600は、上下方向において、フレーム200の上面210とエッジ500の平板部520とを接着している。エッジ500の湾曲部510は、接着層600に接着されていない。
【0040】
図1を参照して、本実施の形態のスペーサ700は、樹脂製である。より詳しくは、スペーサ700は、ポリカーボネート製である。本実施の形態の圧電スピーカー100において、スペーサ700は一つである。スペーサ700は、上下方向と直交する平面において、正方形の断面を有している。
【0041】
図1及び
図3を参照して、スペーサ700は、直交方向において圧電スピーカー100の中央に位置している。スペーサ700は、第1水平方向において圧電スピーカー100の中央に位置している。スペーサ700は、第2水平方向において圧電スピーカー100の中央に位置している。
【0042】
図1及び
図3を参照して、スペーサ700は、直交方向において振動板400の中央に位置している。スペーサ700は、第1水平方向において振動板400の中央に位置している。スペーサ700は、第2水平方向において振動板400の中央に位置している。
【0043】
図1を参照して、スペーサ700は、直交方向において圧電素子300の中央に位置している。スペーサ700は、第1水平方向において圧電素子300の中央に位置している。スペーサ700は、第2水平方向において圧電素子300の中央に位置している。
【0044】
図1に示されるように、本実施の形態のスペーサ700は、所定領域250内に配置されている。スペーサ700は、上下方向において、圧電素子300と振動板400とに固定されている。スペーサ700は、上下方向において上面704及び下面706を有している。
【0045】
図1に示されるように、本実施の形態の圧電スピーカー100は、第1ダンパー752,754,756を更に備えている。第1ダンパー752,754,756は、樹脂製である。より詳しくは、第1ダンパー752,754,756は、PET樹脂からなる基材の上下両面にアクリル粘着剤を塗布した両面テープである。
【0046】
図1に示されるように、第1ダンパー752は、フレーム200と圧電素子300との間に設けられている。即ち、第1ダンパー752は、上下方向において、フレーム200の下面220と圧電素子300の上面304との間に設けられている。第1ダンパー752は、フレーム200の下面220及び圧電素子300の上面304に接着されている。圧電素子300は、第1ダンパー752を介してフレーム200の下面220に連結されている。
【0047】
図1に示されるように、第1ダンパー754は、振動板400とスペーサ700との間に設けられている。即ち、第1ダンパー754は、上下方向において、振動板400の下面436とスペーサ700の上面704との間に設けられている。より詳しくは、第1ダンパー754は、上下方向において、振動板400の支持体430の下面436とスペーサ700の上面704との間に設けられている。第1ダンパー754は、振動板400の支持体430の下面436及びスペーサ700の上面704に接着されている。スペーサ700は、第1ダンパー754を介して振動板400の下面436に連結されている。
【0048】
図1に示されるように、第1ダンパー756は、スペーサ700と圧電素子300との間に設けられている。即ち、第1ダンパー756は、上下方向において、スペーサ700の下面706と圧電素子300の上面304との間に設けられている。第1ダンパー756は、スペーサ700の下面706及び圧電素子300の上面304に接着されている。スペーサ700は、第1ダンパー756を介して圧電素子300の上面304に連結されている。
【0049】
本実施の形態の圧電スピーカー100は、第1ダンパー752,754,756を備えていることにより、共振周波数付近のみの損失抵抗を上げる一方、非共振周波数における損失抵抗を抑制し、非共振周波数における音圧を上げることができる。即ち、本実施の形態の圧電スピーカー100は、第1ダンパー752,754,756を備えていることにより、音圧周波数特性の平坦化が図られている。なお、本発明はこれに限定されず、第1ダンパー752,754,756は、フレーム200と圧電素子300との間、スペーサ700と圧電素子300との間、及びスペーサ700と振動板400との間の少なくとも一箇所に配置されていればよい。また、圧電スピーカー100は、第1ダンパー752,754,756を備えていなくてもよい。
【0050】
図1に示されるように、本実施の形態の圧電スピーカー100は、第2ダンパー770を更に備えている。第2ダンパー770は、樹脂製である。より詳しくは、第2ダンパー770は、PET樹脂からなる基材の上下両面にアクリル粘着剤を塗布した両面テープである。
【0051】
図1に示されるように、第2ダンパー770は、上下方向において、主振動部410と支持体430との間に配置されている。第2ダンパー770は、直交方向において外周端772を有している。即ち、振動板400の外周端402は、主振動部410の外周端412と、第2ダンパー770の外周端772と、支持体430の外周端432とで構成されている。第2ダンパー770は、上下方向において上面774及び下面776を有している。
【0052】
図1に示されるように、本実施の形態の第2ダンパー770は、上下方向において主振動部410に接着されている。より詳しくは、第2ダンパー770の上面774は、上下方向において、主振動部410の下面416に接着されている。
【0053】
図1に示されるように、本実施の形態の第2ダンパー770は、上下方向において支持体430に接着されている。より詳しくは、第2ダンパー770の下面776は、上下方向において、支持体430の上面434に接着されている。
【0054】
図1に示されるように、本実施の形態の振動板400は、主振動部410と、第2ダンパー770と、支持体430とで構成されている。より詳しくは、本実施の形態の振動板400においては、主振動部410と、第2ダンパー770と、支持体430とが、上下方向において、この順に上から積層されている。
【0055】
本実施の形態の圧電スピーカー100は、第2ダンパー770を更に備えていることにより、共振周波数付近のみの損失抵抗を更に上げる一方、非共振周波数における損失抵抗を更に抑制し、非共振周波数における音圧を更に上げることができる。即ち、本実施の形態の圧電スピーカー100は、第2ダンパー770を更に備えていることにより、音圧周波数特性の平坦化がより図られている。なお、本発明はこれに限定されず、圧電スピーカー100は、第2ダンパー770を備えていなくてもよい。
【0056】
圧電素子300に電圧を印加した際の、圧電スピーカー100の各部位の動作を、以下に詳述する。
【0057】
図1を参照して、圧電素子300に電圧を印加すると、圧電素子300は、一次モードにおいては、直交方向における中心部分のみが上下方向に移動するように湾曲振動する。即ち、圧電素子300に電圧を印加すると、圧電素子300は、直交方向における中心部分を腹とし、直交方向両端を節とする、湾曲振動を行う。これにより、第1ダンパー756、スペーサ700及び第1ダンパー754は上下方向に振動し、これに伴って振動板400は上下方向に振動する。
【0058】
上述のように、本実施の形態のエッジ500は、フレーム200の上面210に固定されていると共に、振動板400の外周端402を振動自在に支持している。これにより、振動板400の上下方向への振動は、エッジ500によって妨げられることはなく、また、圧電素子300から振動板400へ伝達される振動力のベクトルが常に上下方向に維持され、振動板400の直交方向への揺れ動きが抑制されている。
【0059】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を参照しながら更に詳細に説明する。
【0060】
図1を参照して、実施例の圧電スピーカー100は、フレーム200と、圧電素子300と、振動板400と、エッジ500と、スペーサ700と、第1ダンパー752,754,756と、第2ダンパー770とを備えている。ここで、フレーム200は、SUS製であり、サイズが縦13.8mm×横16.6mm×厚さ0.3mmとなっている。また、圧電素子300は、一層の厚さが25μmの圧電素子要素を28層積層して形成された積層型圧電素子であり、サイズが縦4.0mm×横16.0mm×厚さ0.7mmとなっている。振動板400は、PET樹脂製であり、ヤング率G1が4GPa、比重が0.7g/cm
3、サイズが縦10mm×横13mm×厚さ0.5mmとなっている。エッジ500は、ポリエチレンナフタレート製であり、ヤング率G2が1GPa、比重が1.1g/cm
3、厚さが38μm、曲率半径Rが0.5mmとなっている。スペーサ700は、ポリカーボネート製であり、サイズが縦2mm×横2mm×厚さ0.2mmとなっている。更に、第1ダンパー752,754,756及び第2ダンパー770は、PET樹脂からなる基材の上下両面にアクリル粘着剤を塗布した、厚さ0.1mmの両面テープである。なお、この実施例において、縦方向はY方向であり、横方向はX方向であり、厚さ方向はZ方向である。また、縦方向は第2水平方向であり、横方向は第1水平方向であり、厚さ方向は上下方向でもある。
【0061】
図1を参照して、実施例の圧電スピーカー100の振動板400において、主振動部410は、第2ダンパー770に接着されており、第2ダンパー770は、支持体430に接着されている。また、実施例の圧電スピーカー100において、支持体430は、第1ダンパー754に接着されており、第1ダンパー754は、スペーサ700に接着されており、スペーサ700は、第1ダンパー756に接着されており、第1ダンパー756は、圧電素子300に接着されている。更に、実施例の圧電スピーカー100において、エッジ500の平板部520は、接着層600を介してフレーム200の上面210に固定されており、フレーム200の下面220は、第1ダンパー752に接着されており、第1ダンパー752は、圧電素子300の横方向端部付近に接着されている。
【0062】
実施例の圧電スピーカー100から発生される音圧を測定したところ、上記の特許文献1に係る圧電スピーカーよりも10dB大きい音圧を発生可能であることが確認された。また、実施例の圧電スピーカー100は、同体積の電磁スピーカーと比較して、2倍の音圧を発生可能であることが確認された。
【0063】
図4に、実施例の圧電スピーカー100の振動板400の振動の測定結果の画像を示す。この測定結果の画像において、振動板400の部分的な変位量の大小が、濃淡で表現されている。この測定結果から、振動板400が局所的に振動することなく、振動板400全体として上下方向に振動していることが確認された。即ち、実施例の圧電スピーカー100においては、振動板400の振動が、上下方向と直交する平面内で概略均一となっていることが分かった。
【0064】
以上、本発明について実施の形態を掲げて具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形、変更が可能である。
【0065】
本実施の形態の圧電スピーカー100の振動板400は、主振動部410と、支持体430とを備えていたが、本発明はこれに限定されない。即ち、振動板400は、支持体430を有さなくてもよく、主振動部410の外周端412がエッジ500によって直接支持されていてもよい。この場合、主振動部410とエッジ500とを二色成形により成形してもよい。
【符号の説明】
【0066】
100 圧電スピーカー
200 フレーム
210 上面
220 下面
250 所定領域
300 圧電素子
304 上面
306 下面
400 振動板
402 外周端
410 主振動部
412 外周端
414 上面
416 下面
430 支持体
432 外周端
434 上面
436 下面
500 エッジ
510 湾曲部
512 内端
514 外端
520 平板部
522 内端
524 外端
600 接着層
700 スペーサ
704 上面
706 下面
752 第1ダンパー
754 第1ダンパー
756 第1ダンパー
770 第2ダンパー
772 外周端
774 上面
776 下面
G1 ヤング率
G2 ヤング率
W 重量