(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】端子構造
(51)【国際特許分類】
H01R 4/48 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
H01R4/48 B
(21)【出願番号】P 2018195649
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】池部 晃一
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-238774(JP,A)
【文献】特開2010-086797(JP,A)
【文献】特開2014-194860(JP,A)
【文献】特開2009-283458(JP,A)
【文献】実開昭56-104075(JP,U)
【文献】実開昭53-082284(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/48
H01R 4/18
H01R 4/50
H01R 4/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単芯線が電線被覆で覆われた単芯電線が挿入される端子がハウジングに収納される端子構造であって、
前記単芯電線は、
前記電線被覆の先端側が剥がされた箇所に露出した前記単芯線の表面に沿って凹形状の凹部が設けられ、
前記端子は、
内側に凸形状の凸部が設けられ、内径の大きさが前記単芯線を挿入可能に構成されている円筒形状のバレル、
を有し、
前記単芯線が前記バレルに挿入された場合、前記凹部と前記凸部とを接触させる、
ことを特徴とする端子構造。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記端子が収納された場合、前記凹部と前記凸部との接触状態を保たせる、
ことを特徴とする請求項1に記載の端子構造。
【請求項3】
前記バレルは、
当該バレルの内壁面全周に沿って、前記凸部が環状に設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の端子構造。
【請求項4】
前記バレルは、
当該バレルの内壁面に沿って、一定間隔で前記凸部が複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の端子構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等におけるワイヤーハーネス等の配線では、銅又はアルミニウム合金等の導体を芯線として、複数の芯線を撚り合わせたものに電線被覆を施した電線が用いられる(例えば、特許文献1参照)。このような電線においては、導体の端末に圧着によって端子が取り付けられ、端子同士を結合させて、電気的接触を確立することがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の従来技術のような複数の芯線からなる多芯電線では導体断面積が大きくなるにしたがって、使用する芯線の数が多くなることから、製造コストの上昇につながる。よって、屈曲性を必要としない部位に使用する電線には、製造コスト削減の観点から、多芯電線の代わりに単芯電線が使用されることがある。単芯電線においても多芯電線のように、端子を単芯電線に圧着させることにより、端子に設けられているバレル片の先端が単芯電線に刺さって食い込ませ、端子に単芯電線を固定させている。
【0005】
しかし、単芯電線のうち0.05sq等のように非常に細い電線は、多芯電線のように端子を単芯電線に圧着させても、端子の板厚に対して、単芯電線の単芯線の導体部分の径が小さすぎる場合がある。この場合、端子に設けられているバレル片の先端が単芯電線に刺さりにくくなるため、端子を単芯電線に圧着させるのが難しい。この結果、単芯電線と端子との接触状態が不確実になるため、単芯電線と端子とを導通させることができない虞がある。
【0006】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、圧着が困難な単芯電線であっても、単芯電線と端子とを導通させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面である端子構造は、単芯線が電線被覆で覆われた単芯電線が挿入される端子がハウジングに収納される端子構造であって、前記単芯電線は、前記電線被覆の先端側が剥がされた箇所に露出した前記単芯線の表面に沿って凹形状の凹部が設けられ、前記端子は、内側に凸形状の凸部が設けられ、内径の大きさが前記単芯線を挿入可能に構成されている円筒形状のバレル、を有し、前記単芯線が前記バレルに挿入された場合、前記凹部と前記凸部とを接触させる、ものである。
【0008】
また、本開示の一側面である端子構造において、前記ハウジングは、前記端子が収納された場合、前記凹部と前記凸部との接触状態を保たせる、ことが好ましい。
【0009】
また、本開示の一側面である端子構造において、前記バレルは、当該バレルの内壁面全周に沿って、前記凸部が環状に設けられている、ことが好ましい。
【0010】
また、本開示の一側面である端子構造において、前記バレルは、当該バレルの内壁面に沿って、一定間隔で前記凸部が複数設けられている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一側面によれば、圧着が困難な単芯電線であっても、単芯電線と端子とを導通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示を適用した実施形態1に係る端子構造の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】本開示を適用した実施形態1に係る単芯線11がバレル21に挿入された状態の一例を示す図である。
【
図3】本開示を適用した実施形態1に係る単芯線11とバレル21との接続構造の詳細例を示す図である。
【
図4】本開示を適用した実施形態2に係る単芯線11とバレル21との接続構造の詳細例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本開示の実施形態を説明するが、本開示は以下の実施形態に限られるものではない。
【0014】
実施形態1.
図1は、本開示を適用した実施形態1に係る端子構造の一例を示す分解斜視図である。
図1に示すように、端子構造は、単芯電線1と、端子2と、ハウジング3とを備え、単芯電線1が挿入される端子2がハウジング3に収納されるものである。単芯電線1は、単芯線11と、電線被覆12とを備えている。単芯線11は、例えば、アルミニウム合金、銅又は銅合金等の導体である。電線被覆12は、単芯線11を覆う絶縁材である。
図1の一例では、単芯電線1の先端側は、電線被覆12が所定長だけ剥がされた箇所に単芯線11が露出している。単芯線11が露出した箇所には単芯線11の表面に沿って凹形状の凹部11aが設けられている。凹部11aは、例えば、冷間鍛造により形成される。
【0015】
端子2は、例えば、一般的な雌型端子であって、単芯線11と電気的及び機械的に接続するためのバレル21と、対応する雄型端子と接続するための箱形の電気接触部23と、バレル21と電気接触部23とを支持する底板部22とを備えている。端子2は、アルミニウム合金、銅又は銅合金等の板材をプレス加工した後に折り曲げ加工等して、所定の形状に形成される。バレル21は、バレル片21Rと、バレル片21Lとを備え、バレル片21R及びバレル片21Lにより、内径の大きさが単芯線11を挿入可能に構成されている。
【0016】
具体的には、バレル片21R及びバレル片21Rのそれぞれは、底板部22の縁から立設したものが内側に向けて屈曲されることで、略半円筒形状を構成している。この結果、バレル片21R及びバレル片21Lのそれぞれの先端側が所定の間隙で対向して設けられることで、バレル溝21gが形成される。また、バレル21は、内側に凸形状の凸部21aが設けられている。また、電気接触部23の端面側には開口部23aが設けられている。開口部23aには電気接触片23bが設けられ、電気接触片23bの弾性を利用することで、対応する雄型端子と接触可能である。
【0017】
ハウジング3は、合成樹脂材等の絶縁材からなり、前後方向に貫通して形成された貫通部3a内に端子2が収容されるようになっている。また、ハウジング3は、端子2が収納された場合、凹部11aと凸部21aとの接触状態を保たせる。なお、ハウジング3の一方の縁側にはフランジ3bが設けられているが、フランジ3bはなくてもよい。
【0018】
図2は、本開示を適用した実施形態1に係る単芯線11がバレル21に挿入された状態の一例を示す図である。
図2(A)は、単芯線11がバレル21に挿入された状態の開口部23a側からの正面図である。
図2(B)は、単芯線11がバレル21に挿入された状態の端子2及び単芯電線1の斜視図である。
図2(A)及び(B)に示すように、端子2は、単芯線11がバレル21に挿入された場合、
図1に示す凹部11aと凸部21aとを接触させる。なお、単芯線11とバレル21との具体的な接続構造については
図3を用いて後述する。
【0019】
図3は、本開示を適用した実施形態1に係る単芯線11とバレル21との接続構造の詳細例を示す図である。
図3(A)は、
図2(A)のC-C矢視線に沿った断面図である。
図3(B)は、
図3(A)のD-D矢視線に沿った断面図である。
図3(A)に示すように、凸部21aは、アルミニウム合金、銅又は銅合金等の板材をプレス加工する際に、成形加工によりバレル21に形成されたものである。
図3(B)に示すように、凸部21aは、バレル21の内壁面全周に沿って、環状に設けられている。
【0020】
次に、端子構造の組立工程について説明する。まず、単芯電線1が検尺されてから切断され、単芯電線1の先端側の電線被覆12が所定長だけ剥がされる。次に、電線被覆12が剥がされた箇所に露出した単芯線11に冷間鍛造で凹部11aが形成される。次に、アルミニウム合金、銅又は銅合金等の板材をプレス加工することで、端子2の外形及び凸部21aが形成される。この段階では、凸部21aは、端子2の一部に長手方向に所定長の半円筒形状を突出させることにより形成されればよい。次に、端子2を折り曲げ加工等することにより、バレル21及び電気接触部23が形成される。このとき、バレル21に内壁面全周に沿って、凸部21aが環状に設けられる。次に、アルミニウム合金、銅又は銅合金等の板材をプレス加工及び折り曲げ加工等することによりハウジング3が形成される。なお、単芯電線1、端子2及びハウジング3の形成は上記のように逐次的に行ってもよいが、並列的に行ってもよく、順不同である。次に、単芯線11がバレル21に挿入される。次に、バレル21に単芯線11が挿入された端子2がハウジング3に収納される。このようにして、端子構造が組み立てられる。
【0021】
以上の説明から、本実施形態において、単芯線11が端子2のバレル21に挿入された場合、単芯線11によるバレル21を押し広げる力と、単芯線11による押し広げる力を元に戻そうとするバレル21の力とにより単芯線11がバレル21に保持される。よって、凹部11aと凸部21aとが確実に接触する。したがって、圧着が困難な単芯電線1であっても、単芯電線1と端子2とを導通させることができる。なお、圧着の工程を省略してサブハーネスを作る直前に単芯電線1と端子2とを接続させることができるので、組立コストを低減させることもできる。
【0022】
また、本実施形態において、端子2がハウジング3に収納された場合、凹部11aと凸部21aとの接触状態が保たれる。よって、ハウジング3の内壁によりバレル21の開きが抑制される。したがって、端子2による単芯電線1の保持力を向上させることができる。
【0023】
また、本実施形態において、バレル21の内壁面全周に沿って、凸部21aが環状に設けられている。よって、凸部21aは、凹部11aの全周に接触することができる。よって、単芯電線1が引っ張られたとしても、凸部21aの表面全体により単芯線11が保持されるため、単芯電線1は端子2により強固に保持される。したがって、単芯電線1と端子2との導通状態を確実に確保することができる。
【0024】
実施形態2.
実施形態2において、実施形態1と同様の構成及び機能については同一の符号を付記し、その説明については省略する。
図4は、本開示を適用した実施形態2に係る単芯線11とバレル21との接続構造の詳細例を示す図である。実施形態2は、バレル21の内側の構造が実施形態1と異なる。よって、バレル21の内側の構造の構成及び機能について説明する。
【0025】
図4(A)は、
図2(A)のC-C矢視線に沿った断面図である。
図4(B)は、
図4(A)のD-D矢視線に沿った断面図である。
図4(A)に示すように、凸部21bは、アルミニウム合金、銅又は銅合金等の板材をプレス加工する際に、成形加工によりバレル21に形成されたものである。
図4(B)に示すように、凸部21bは、バレル21の内壁面に沿って、一定間隔で複数設けられている。
【0026】
次に、端子構造の組立工程について説明する。まず、単芯電線1が検尺されてから切断され、単芯電線1の先端側の電線被覆12が所定長だけ剥がされる。次に、電線被覆12が剥がされた箇所に露出した単芯線11に冷間鍛造で凹部11aが形成される。次に、アルミニウム合金、銅又は銅合金等の板材をプレス加工することで、端子2の外形及び凸部21bが形成される。この段階では、凸部21bは、端子2の一部に長手方向に所定長の半長球形状を一定間隔で複数突出させることにより形成されればよい。次に、端子2を折り曲げ加工等することにより、バレル21及び電気接触部23が形成される。このとき、バレル21に内壁面に沿って、凸部21aが一定間隔で複数設けられる。次に、アルミニウム合金、銅又は銅合金等の板材をプレス加工及び折り曲げ加工等することによりハウジング3が形成される。なお、単芯電線1、端子2及びハウジング3の形成は上記のように逐次的に行ってもよいが、並列的に行ってもよく、順不同である。次に、単芯線11がバレル21に挿入される。次に、バレル21に単芯線11が挿入された端子2がハウジング3に収納される。このようにして、端子構造が組み立てられる。
【0027】
以上の説明から、本実施形態において、バレル21の内壁面に沿って、一定間隔で凸部21bが複数設けられている。よって、単芯線11は、一定間隔で凸部21bと接触状態になるため、単芯線11をバレル21に挿入するときには、容易に挿入することができ、且つ単芯線11がバレル21に挿入されたときには、単芯電線1と端子2との導通状態を確実に確保することができる。したがって、作業工程を容易にしつつ、電気接続性及び機械接続性を向上させることができる。
【0028】
以上、本開示を適用した端子構造を実施形態に基づいて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0029】
例えば、本実施形態においては、環状に設けられた凸部21a及び一定間隔で設けられた凸部21bの一例について説明したが、特にこれに限定されない。例えば、凹部11aに不図示のコロを設け、バレル21の内壁面のうちコロと対向する位置にコロを摺動自在にするザグリ穴をバレル21に設けてもよい。
【0030】
また、例えば、本実施形態においては、単芯線11の断面形状を円形とした一例について説明したが、特にこれに限定されない。例えば、単芯線11の断面形状は四角形であってもよい。つまり、単芯電線1として機能する形状であれば、単芯線11の断面形状は各種の形状を採用することができる。
【0031】
また、例えば、本実施形態においては、端子2が雌型端子である一例について説明したが、特にこれに限定されない。例えば、端子2は雄型端子が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 単芯電線、11 単芯線、11a 凹部、12 電線被覆
2 端子、21 バレル
21R,21L バレル片、21g バレル溝、21a,21b 凸部
22 底板部、23 電気接触部、23a 開口部、23b 電気接触片
3 ハウジング、3a 貫通部、3b フランジ