IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アキレス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-透明不燃シート 図1
  • 特許-透明不燃シート 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】透明不燃シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/28 20060101AFI20220802BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B32B5/28 Z
B32B27/30 A
B32B27/30 101
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018204775
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020069710
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 美穂
(72)【発明者】
【氏名】望月 敦史
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-209943(JP,A)
【文献】特開2016-198901(JP,A)
【文献】特開平10-46485(JP,A)
【文献】特開平6-320674(JP,A)
【文献】特開2014-201007(JP,A)
【文献】特開2017-172085(JP,A)
【文献】特開2019-38632(JP,A)
【文献】特開2015-197010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0305886(US,A1)
【文献】米国特許第6024823(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04B 1/94
E04B 2/56
E04F 13/08
E04H 15/00-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維布帛にスチレン系熱可塑性エラストマーが含浸されてなる中間層と、前記中間層の両面にアクリル系樹脂層を介して塩化ビニル樹脂層を積層させてなり、
前記アクリル系樹脂層には、アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子が含有されてなり、
シートの全光線透過率が80%以上であり、且つヘーズが30%以下であることを特徴とする透明不燃シート。
【請求項2】
塩化ビニル樹脂層に、アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子を含むアクリル系樹脂層を形成し、前記アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子が前記アクリル系樹脂層表面から露出した状態とし、
中間層の両面に前記塩化ビニル樹脂層を前記アクリル系樹脂層が中間層と接触するように積層して熱ラミネート方式で一体化することを特徴とする請求項1に記載の透明不燃シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はガラス繊維布帛と熱可塑性樹脂とを用いた透明不燃シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
不燃シートとは、建築基準法及び建築基準法施工令で定められた不燃性を有する材料であり、発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、且つ加熱開始20分間の最高発熱速度が200kW/mを超えて10秒以上継続せず、燃焼後に貫通穴がないことが要件となっている。
【0003】
このような不燃シートとしては、ガラス繊維材料或いはガラス繊維布帛と樹脂の複合シートなどが知られており、建築材料として使用することができる。
例えば、建物の天井に設置され火災時の煙の流動や拡散を防止する防煙垂壁や工場内で作業エリアを仕切る間仕切りカーテン、さらには光源の光度をそのまま空間内に伝えるための膜天井及び照明膜カバーとして使用されており、いずれも光透過性の高い材料の要求が高まっている。
【0004】
ガラス繊維布帛と複合化する樹脂としては、主に熱硬化性樹脂や塩化ビニル樹脂などが用いられている。
例えば、特許文献1には、ガラス繊維織物とビニルエステル樹脂などの硬化樹脂層とからなる透明不燃性シートや、特許文献2には、ガラス繊維基材に軟質塩化ビニル樹脂組成物を含浸被覆させてなる透明性複合シートが提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにガラス繊維織物と複合化する樹脂に熱硬化樹脂を用いる場合、当該不燃性シートを折り曲げや折り畳みを行った際、シート内部に白化傷が発生する状態がしばしば観察される。この白化傷とは、熱硬化性樹脂とガラス繊維織物との界面、或いはガラス繊維織物の繊維間に微細な剥離による隙間が生じることで、当該隙間が復元せず屈折乱反射してしまう状態であり、白化した傷のように視認される。特に、熱硬化性樹脂は伸びにくいため、ガラス繊維織物と追従できずに白化傷が生じやすいものであった。そのため熱硬化性樹脂を用いた不燃性シートは、柔軟性を必要とする用途にはあまり適さない。
【0006】
また、特許文献2のようにガラス繊維布帛と複合化する樹脂に塩化ビニル樹脂を用いる場合、ガラス繊維と軟質塩化ビニル樹脂との接着不足により剥離してしまい、折り曲げや折り畳みを繰り返した際にシート内部に白化傷が発生しやすいものであった。
【0007】
そんな中、本出願人は、透明性を長期維持でき、かつ柔軟性にも優れる不燃シートの開発を進めたところ、ガラス繊維布帛と複合化する樹脂としてスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることで、透明性、柔軟性を備えた不燃シートが得られることを見出し、すでに特許出願を行っている(特許文献3、4)。
【0008】
また、特許文献5には、ガラス繊維布帛にスチレン系熱可塑性エラストマーを含浸させた樹脂層に、接着剤を用いることなくカバー層を積層した透明シートが開示されている。
【0009】
特許文献4や5のようにガラス繊維布帛に樹脂を含浸させたシート(含浸層と称することもある)の表面に他の樹脂層を積層させる方法としては、熱ラミネートなどが開示されている。しかしながら、含浸層と他の樹脂層との接着性は、接着剤を用いなくとも熱ラミネートによってある程度の接着性は得られるものの、用途によっては不十分であり、接着性の向上が求められている。
例えば、塩化ビニル樹脂層を積層する場合には、塩化ビニル樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーの両方との接着性に優れる接着剤を用いる方法が挙げられるが、接着剤によっては不燃シートとしての透明性を低下虞があった。しかも、塩化ビニル樹脂中の可塑剤の影響により、シート表面がべたつくためロール搬送しにくく、塩化ビニル樹脂層と含浸層との貼り合わせ工程が困難であるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2005-319746号公報
【文献】特開2010-052370号公報
【文献】特開2017-172085号公報
【文献】特願2017-186050
【文献】特開2017-209943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、不燃シートとしての透明性を損なうことなく含浸層と塩化ビニル樹脂層との接着性を向上させた不燃シート、及び塩化ビニル樹脂層と含浸層との貼り合せ行程を容易とする製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願人が鋭意検討したところ、塩化ビニル樹脂層に粒子を含有した樹脂層を形成し、その樹脂層と含浸層とを熱ラミネートによって貼リ合わせることで、接着性を向上させ及び貼り合わせ行程を容易にさせることを見出し、本願発明にいたったものである。
【0013】
すなわち、本願発明の透明不燃シートは、ガラス繊維布帛にスチレン系熱可塑性エラストマーが含浸されてなる中間層と、当該中間層の両面にアクリル系樹脂層を介して塩化ビニル樹脂層を積層させてなり、当該アクリル系樹脂層には、アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子が含有されてなり、シートの全光線透過率が80%以上であり、且つヘーズが30%以下であることを特徴とする。
【0014】
また、本願発明は、透明不燃シートの製造方法であって、塩化ビニル樹脂層に、アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子を含むアクリル系樹脂層を形成し、当該アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子が当該アクリル系樹脂層表面から露出した状態とし、中間層の両面に当該塩化ビニル樹脂層をアクリル系樹脂層が中間層と接触するように積層して熱ラミネート方式で一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
塩化ビニル樹脂層と中間層との間に、アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子を含むアクリル系樹脂層を設けたので、透明性に優れ、塩化ビニル樹脂層と中間層との接着性が良好な不燃シートが得られる。
【0016】
また、塩化ビニル樹脂層と中間層の貼り合せ行程において、アクリル系樹脂層の表面にアクリル-スチレン共重合性樹脂粒子が露出した状態で貼り合せを行うため、ロール搬送での滑り性がよく、容易に貼り合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本願発明の不燃シートを説明する図である。
図2】塩化ビニル樹脂層と中間層とを貼り合わせる前の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示す通り、本願発明の不燃シート1は、ガラス繊維布帛にスチレン系熱可塑性エラストマーが含浸されてなる中間層2と、前記中間層2の両面にアクリル系樹脂層4を介して塩化ビニル樹脂層3を積層させてなり、前記アクリル系樹脂層4には、アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子5が含有されてなることを特徴とする。
【0019】
本願発明の中間層2について説明する。
中間層2は、ガラス繊維布帛に熱可塑性樹脂が含浸されたものであるが、透明性を付与するためには、ガラス繊維布帛のガラス繊維と屈折率差の少ない樹脂を使用する必要がある。そこで、本願発明では、屈折率の調整が容易な樹脂として、スチレン系熱可塑性エラストマーを使用している。
【0020】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系モノマーとブタジエンのブロック共重合体(SBS)、スチレン系モノマーとイソプレンのブロック共重合体(SIS)、SBSの二重結合部分を水素添加したスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン系ブロック共重合体(SEBS)、SISの二重結合部分を水素添加したスチレン-エチレン・プロピレン-スチレン系ブロック共重合体(SEPS)などが使用でき、水素添加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(以下、水添スチレン系熱可塑性エラストマーと示す)を使用することが好ましい。また、水添率は90%以上が好ましく、完全水添されていることがより好ましい。
【0021】
前記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等が挙げられ、コスト面等から、スチレン、又はα-メチルスチレンが好ましい。これらスチレン系モノマーは、単独でも2種以上併用してもよい。
一方、ブタジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)等が挙げられ、コスト面等から、1,3-ブタジエンが好ましい。これらブタジエン系モノマーは、単独でも2種以上併用してもよい。
【0022】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、強度を付与するスチレンブロック領域(ハードセグメント)と、ゴム弾性の挙動を付与するエチレン・ブチレン領域(ソフトセグメント)を備えており、その組成等を調整することにより、様々な特性を有する。例えば、耐熱性、耐候性、透明性、他の樹脂へのなじみ性に優れ、さらに、軟質塩化ビニル樹脂と同等の柔軟性を与えることができる。特に、二重結合部分を水素添加した水添スチレン系熱可塑性エラストマーは耐候性に優れるものである。
【0023】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーは、塩化ビニル樹脂のように可塑剤等の添加剤を添加することなく、ハードセグメントとソフトセグメントの組成等により屈折率の調整が可能である。そのため、ガラス繊維布帛に含浸させた場合、中間層からの可塑剤のブリードアウトによってガラス繊維との屈折率の差が大きくなり、経時で透明性が低下することがなく、透明性を長期維持できる。
本願発明では、屈折率が1.53~1.59の範囲に調整されたものが使用できる。この範囲であれば、汎用ガラス繊維(Eガラス)の屈折率が平均で1.56程度であるので、屈折率の差を軽微にできる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとガラス繊維との屈折率差は0.03以下が好ましく、さらに好ましくは0.02以下である。屈折率差が0.03以下であれば、ガラス繊維布帛が目立ちにくくなり、透明性の高い中間層が得られる。
【0024】
なお、本願発明の屈折率は、JIS K 7142に準拠して求めたものであり、屈折率が近い物質であれば、透明性に優れる。
【0025】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーはハードセグメントとソフトセグメントの組成等により柔軟性をも調整でき、ガラス繊維布帛と含浸させてなる中間層2は、ガラス繊維布帛の変形に追従できるほど柔軟性に優れたものである。
また、スチレン系熱可塑性エラストマーは、ガラス繊維布帛への含浸性に優れるため、中間層2を折り曲げや折り畳みを繰り返しても、スチレン系熱可塑性エラストマーとガラス繊維布帛との界面、及びガラス繊維間に微細な剥離による隙間が生じることがなく、シート内部の白化傷の発生を抑えることができる。
【0026】
特に、水添スチレン系熱可塑性エラストマーにおいて、水素添加処理されたブタジエン部分におけるSP値が17.5(J/cm1/2以上であることが好ましい。この範囲であれば、極性が高い樹脂や無機材料とのなじみ性、ぬれ性に優れるものとなる。
中間層2において、当該水添スチレン系熱可塑性エラストマーを用いれば、ガラス繊維布帛への含浸性が向上するため、透明性も高まり(ヘーズ値の低下)、折り曲げや折り畳みによる白化傷の発生をさらに抑制できる。
【0027】
ここで、溶解度パラメータ(SP値、Solubility Parameter)は、他の物質への溶解性、付着性、或いはぬれ性を評価するのに使用されている。SP値は、(モル凝集エネルギー(J/mol)/モル容積(10-6/mol))1/2の式から算出される。
【0028】
本願発明では、スチレン系熱可塑性エラストマーのガラス転移温度(Tg)は-55~30℃の範囲が好ましく、-20~20℃がより好ましい。また、この範囲にあることで塩化ビニル樹脂フィルムとの接着性も高まり、さらに柔軟性が高いシートとなる。
【0029】
本願発明では、スチレン系熱可塑性エラストマーを含浸させるガラス繊維布帛として、ガラス繊維からなる縦糸及び横糸から構成される織布、編布、或いは不織布などの布帛を使用できる。
【0030】
ガラス繊維布帛を構成するガラス繊維としては、公知のガラス繊維を用いることができ、例えば、汎用の無アルカリガラス繊維(Eガラス)、耐酸性の含アルカリガラス繊維(Cガラス)、耐アルカリ性ガラス繊維(ARガラス)、高強度且つ高弾性率のガラス繊維(Sガラス、Tガラス)等が挙げられる。
中でも汎用性やスチレン系熱可塑性エラストマーとの屈折率差の面からEガラスが好ましく、また、柔軟性の観点ではSガラスやTガラス等が好ましい。
【0031】
また、ガラス繊維布帛を構成するガラス繊維は、フィラメントの直径が4~7μmの範囲であることが好ましい。ガラス繊維の直径を前記範囲とすることで、繊維布帛の強度が良好であり、且つ繊維間へのスチレン系熱可塑性エラストマーの含浸が良好である。
【0032】
さらに、ガラス繊維布帛は、ガラス繊維布帛を構成するガラス繊維が、シランカップリング剤等で表面処理されていることが好ましい。具体的にはビニルシラン、フェニルシラン、エポキシシラン、アクリルシラン、芳香族アミノシラン、脂肪族アミノシランが挙げられ、好ましくは芳香族アミノシランが使用できる。
ガラス繊維が前記表面処理されていることで、スチレン系熱可塑性エラストマーとの含浸性が高まり、良好な透明性を維持することができるとともに、屈曲時等において、ガラス繊維とスチレン系熱可塑性エラストマーとの剥離によるシート内部の白化傷の発生が抑制できる。
【0033】
また、ガラス繊維布帛は、目付け量が20~60g/mであることが好ましい。
ガラス繊維布帛の目付け量が20g/m未満の場合、スチレン系熱可塑性エラストマーの含浸は良好に行われるが、シートの強度が低かったり、加工時に変形が生じるおそれがある。一方、目付け量が60g/mを超える場合、ガラス繊維間への当該樹脂の含浸が困難となり、透明不燃シートの透明性が低下するおそれがある。
【0034】
さらに、ガラス繊維布帛は、該ガラス繊維布帛を構成している隣接する縦糸の繊維束間の隙間及び隣接する横糸の繊維束間の隙間が0.5mm以下であることが好ましい。前記範囲以上の隙間が存在する場合、不燃性が得られ難くなるおそれがある。
この場合、打ち込み密度で示すと、縦糸密度及び横糸密度が60本/2.54cm以上が好ましく、繊維束間の隙間が0.5mm以下を達成可能であり、優れた不燃性が保持できる。
【0035】
本願発明の中間層2において、ガラス繊維布帛へのスチレン系熱可塑性エラストマーの付着量は特に指定されるものではないが、乾燥状態で10~90g/mが好ましく、30~90g/mがより好ましい。付着量が少なすぎると、良好な透明性が得られ難く、また付着量が多すぎると、不燃性が得られない。
【0036】
本願発明では、含浸性について、デジタルマイクロスコープを用いて、樹脂が含浸せずにガラス繊維が見えている箇所の面積比率を輝度抽出領域の面積計算にて算出した値で評価している。当該面積比率が20%未満であることが好ましい。
なお、樹脂が含浸せずにガラス繊維が見えている箇所は、ガラス繊維の白色が視認され、含浸した箇所(透明)との輝度差を生じることとなり、この輝度差から、画像処理によって面積比率を求めることができる。
【0037】
なお、中間層2には、ブリード性を有するものを除き、必要に応じて他の添加剤を含有してもよい。例えば、着色用顔料や無機フィラー、難燃剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光拡散剤、他の樹脂等が挙げられる。
【0038】
次いで、本願発明の塩化ビニル樹脂層3について説明する。
本願発明は、中間層2の両面にアクリル系樹脂層4を介して塩化ビニル樹脂層3が積層されてなる。
当該塩化ビニル樹脂層3を設けることで、不燃性を高めるとともに、熱溶着性によるシートの幅繋ぎが可能となる。
【0039】
また、透明な不燃シートを得るためには、塩化ビニル樹脂層3は透明であることが好ましく、具体的には、全光線透過率が90%以上、ヘーズ値が5%以下である。
【0040】
本願発明では、塩化ビニル樹脂3として、特に限定されないが、例えば、可塑剤を含む軟質塩化ビニル樹脂が使用できる。
また、可塑剤の添加量は、塩化ビニル樹脂層3の質量%に対し、15~40質量%が望ましく、柔軟性を保持しつつ、ブリードアウトによるシート表面のべた付きを抑えることができる。なお、塩化ビニル樹脂層3に可塑剤を含有していても、不燃シートとしての透明性が低下することはなく、経時でも確認されていない。
さらに、本願発明の効果を損なわない範囲で、難燃剤、紫外線吸収剤、充填剤、帯電防止剤、着色剤などの添加物が含まれていてもよい。
【0041】
塩化ビニル樹脂層3の表面には、ブロッキング防止や帯電防止等の目的に応じた表面処理が施されていてもよい。
【0042】
塩化ビニル樹脂層3の厚みは特に制限されないが、各層で0.05~0.2mmが好ましく、さらに好ましくは0.08~0.15mmである。0.2mmより厚いと不燃性が低下する。0.05mm未満ではガラス繊維布帛の凹凸が塩化ビニル樹脂層の表面に影響し、視認性が低下してしまう。
【0043】
本願発明では、中間層2と塩化ビニル樹脂層3との間に、アクリル系樹脂層4を備えており、当該樹脂層にはアクリル-スチレン共重合性樹脂粒子5を含む。
アクリル系樹脂層は、本願発明の中間層2及び塩化ビニル樹脂層3の両方との密着性に優れる。
【0044】
本願発明のアクリル系樹脂層4を形成する樹脂としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸エステルや、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が9以上の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。中でも、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが好ましく用いられる。
特に、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系モノマーとの共重合体が好ましい。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、p-スチレンスルホン酸等が挙げられる。
また、モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン系モノマー以外のものも用いてもよく、例えばジエン系モノマーが挙げられる。ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0045】
アクリル系樹脂層4の厚みは、1~4μmが好ましい。厚みが1μm未満であると、中間層2と塩化ビニル樹脂層3との接着性が不十分である。厚みが4μmを超えると、中間層2と塩化ビニル樹脂層3との接着性は良好だが、含有するアクリル-スチレン共重合性樹脂粒子が表面に露出しにくく、滑り性が劣ってしまい後述する塩化ビニル樹脂層3と中間層2との貼り合せ行程が難しくなる。
【0046】
本願発明のアクリル系樹脂層4は、アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子5を含んでいる。
アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子5としては、(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系モノマーとの共重合体、或いはさらに他の共重合可能なモノマーとの共重合体から形成される。
(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン系モノマーとしては、上述したアクリル系樹脂層4と同様のものを用いることができる。
また、モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン系モノマー以外のものも用いてもよい。
具体的には、メタクリル酸メチル-スチレン-1,6-ヘキサンジオールメタクリレート共重合体、メタクリル酸メチル-スチレン-ジビニルベンゼン共重合体を用いることができる。
【0047】
本願発明のアクリル-スチレン共重合性樹脂粒子5は、後述するように不燃シートを製造する工程において、塩化ビニル樹脂表面に滑り性を付与するとともに、中間層2と塩化ビニル樹脂層3との接着性を向上させることができる。
一般的に、塩化ビニル樹脂表面の滑り性を向上するためには、表面にエンボスロールなどで表面に梨地の凹凸を形成する方法や粉を吹き付ける方法が知られている。前者の方法では透明性を維持し、且つ可塑剤等のブリードによるフィルム表面のベタツキを防止するには不十分なものであり、後者の方法では、清潔を要する現場での使用が不可能となり、使用用途が限定される。
【0048】
本願発明のアクリル-スチレン共重合性樹脂粒子5の平均粒子径としては、2~8μmが好ましい。2μm未満だと、塩化ビニル樹脂層3の滑り性が得られず、不燃シートが製造し難くなる。8μmを超えると、中間層2と塩化ビニル樹脂層3との接着性に劣り、またアクリル系樹脂層4への固定が不十分でロール搬送中に脱落しやすくなり、不燃シートが製造し難くなる。
また、粒子としては中空、中実のどちらも使用できるが、不燃シートとしての透明性を高めるためには中実が好ましい。
【0049】
アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子5の含有率は、アクリル系樹脂層4中の質量比で3~30%が好ましい。含有率が3質量%未満だと、塩化ビニル樹脂層3のべたつきが軽減されず、滑り性が得られにくく不燃シートが製造し難くなる。含有率が30質量%を超えると、中間層2と塩化ビニル樹脂層3との接着性は向上するが、不燃シートとしての透明性が低下してしまう。
【0050】
アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子5は、図1で示すように、アクリル系樹脂層4中に粒子状態で存在している。通常、樹脂層中に粒子などの異物が混入したりすると透明性が低下するが、本願発明において、アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子の屈折率が1.53以上1.54以下のものを用いれば、透明性を損なうことがなく好ましい。
これは、アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子5と中間層2の含浸樹脂であるスチレン系熱可塑性エラストマーやアクリル系樹脂層を形成する樹脂との屈折率差が小さくなるためである。本発明では、さらに中間層2の含浸樹脂とガラス繊維との屈折率差が小さいため、透明性に優れる不燃シートを得ることができる。
【0051】
本願発明の製造方法について説明するが、これに限定されるものではない。
本願発明の不燃シート1は、(1)中間層2を製造する工程、(2)塩化ビニル樹脂層3にアクリル系樹脂層4を形成する工程(3)中間層2の両面に塩化ビニル樹脂層3を積層する工程により製造される。
【0052】
(1)中間層2を製造する工程
中間層2は、ガラス繊維布帛にスチレン系熱可塑性エラストマーを含浸させて製造される。
当該含浸方法としては、溶液含浸法を用いることができる。
まず、所定の溶媒で所定濃度に溶解・希釈し、スチレン系熱可塑性エラストマー溶液(含浸液)を調整し、ガラス繊維布帛を浸漬させる。このとき、含浸液には必要に応じて添加剤を加えてもよい。
次いで、ガラス繊維布帛に前記含浸液が充分含浸した後に、該ガラス繊維布帛を取り出し、ロール圧搾して余分な溶液を絞った後、又はロール圧搾せず自重にて余分な溶液を排除させながら、所定温度で加熱・乾燥させ、中間層2を得る。
【0053】
スチレン系熱可塑性エラストマーを溶解させる際に用いる溶媒としては、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム等が使用でき、中でも作業効率の観点からトルエンが好ましい。
【0054】
また、含浸液の濃度としては、10~30質量%とすることが好ましい。前記濃度が10質量%未満の場合、ガラス繊維布帛へ溶液の含浸が容易ではあるが、樹脂付着量が少なくなり易く、所定の透明性を得られ難くなるおそれがある。一方、30質量%を超える場合、溶液の粘度が高くなり、ガラス繊維織布へ溶液が含浸し難くなり、透明性や製造効率が低下するおそれがある。
この際、前記含浸液の粘度としては50~2500cpsとすると含浸及び樹脂付着量の面で好ましい。
【0055】
他の含浸方法としては、所定の溶媒で所定濃度に溶解・希釈し、ペースト状にしたスチレン系熱可塑性エラストマー溶液が塗布されたフィルムを、ガラス繊維布帛の両面に積層し、熱圧着して樹脂を含浸させ、所定温度で加熱・乾燥させたあと、当該フィルムを剥離することにより、中間層2を得ることができる。
【0056】
さらに、前記溶液含浸法で得られた透明不燃シートに、熱プレス等の処理を加え、表面平滑性を向上させることもできる。
【0057】
(2)塩化ビニル樹脂層3にアクリル系樹脂層4を形成する工程
アクリル系樹脂及びアクリル-スチレン共重合性樹脂粒子5を含有する塗工液を予め準備された塩化ビニル樹脂フィルムの表面に塗布後、加熱乾燥させてアクリル系樹脂層4を形成する。
【0058】
塗工液の溶媒としては、有機溶剤、水系など特に限定されないが、水性エマルジョンが好ましい。近年、有機溶剤系を用いることでの環境問題やシックハウス/シックスクール症候群などの人体への配慮により、水系のものが求められている。
【0059】
本願発明の塗工液としてアクリル系樹脂の水性エマルジョンを用いる場合には、分散している樹脂は熱を加えると樹脂層を形成するが、アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子5は粒子のまま塩化ビニル樹脂フィルム表面に固着された状態となる。
【0060】
塗工液には、その他にレベリング剤、界面活性剤、帯電防止剤などの添加剤を含んでもよい。
【0061】
(3)中間層2の両面に(2)で得られた塩化ビニル樹脂層3を積層して不燃シート1を形成する工程
図2に示すように、中間層2の両面に、前記(2)の工程で得られた塩化ビニル樹脂層3をアクリル系樹脂層4が中間層と接触するように積層して熱ラミネート方式で一体化し、不燃シート1を形成する。
熱ラミネート方式で実施すると、熱で中間層2中の樹脂が溶融して変形し、その中間層2の表面凹凸は小さくなり、また塩化ビニル樹脂層3がアクリル系樹脂層4を介してその凹凸に沿うようにラミネートされるので、透明性の高い不燃シートを得ることができる。
【0062】
本願発明の不燃シート1は、例えば以下のようにロールtoロールでの生産が可能である。
工程(1)においては、巻き出されたガラス繊維布帛にスチレン系熱可塑性エラストマーを含浸し、加熱乾燥して中間層2を形成し、ロールに巻き取る。
工程(2)においては、巻き出された塩化ビニル樹脂層3の表面に塗工液を塗布し、加熱乾燥してアクリル系樹脂層4を形成し、ロールに巻き取る。
工程(1)で得られた中間層2の両面に、工程(2)で得られた塩化ビニル樹脂層3をアクリル系樹脂層4が中間層面側と接触させるように積層した状態で、熱ロール間に通してラミネートし、ロールに巻き取る。
【0063】
このとき、アクリル系樹脂層4において、アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子5が露出することでサラサラした触感となり、塩化ビニル樹脂層3に滑り性が付与される。そのため、ロール搬送がスムーズとなりエアー抜けも良好で、中間層2と塩化ビニル樹脂層3との貼り合せ行程が容易となる。
【0064】
本願発明において、得られた不燃シート1は、以下のように評価する。
【0065】
〔中間層2と塩化ビニル樹脂層3との接着性〕
JIS K 6854(1999)に準拠して、塩化ビニル樹脂層と中間層間の剥離強度を測定して評価される。本願発明では剥離強度が8N/25mm以上とし、10N/25mm以上が好ましい。
【0066】
〔透明性〕
ヘーズメーターを用いて測定した全光線透過率及びヘーズ値によって評価される。
本願発明の不燃シートは、全光線透過率が80%以上であり、より好ましくは90%以上である。透過率が80%以上であることによって高い透明性を有し、例えば、防災用のカーテンとして使用した際はシートの反対側が視認でき、また、防炎垂壁等で天井に吊った際は、照明等の輝度を過度に低下させることがない。
また、ヘーズ値は、30%以下とし、20%以下であることが好ましい。ヘーズ値が前記範囲内であることによって、得られるシートの反対側の視認性が向上する。
【0067】
〔不燃性〕
建築基準法第2条第9号および建築基準法施行令第108条の2に基づきコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験を行い、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えず、総発熱量が8MJ/m以下の要件を満たすものであり、不燃性を有する。
【実施例
【0068】
以下に、実施例を用いて本願発明を説明するが、これらに限定されるものではない。
【0069】
〔中間層〕
スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ社製、商品名「S.O.E.S1605」、水素添加処理されたブタジエン部分のSP値17.5(J/cm1/2以上、屈折率 1.559、Tg 18℃)をトルエン溶媒に固形分20質量%になるように溶解させた溶液を作製し、その溶液に芳香族アミノシランで表面処理した厚み29μm、目付け量31.5g/mのガラス繊維織布(Eガラス繊維、屈折率1.558)を浸漬した。このとき、樹脂の付着量をウェット状態で150g/mとした。
次に、溶媒を揮発させるためにオーブンにて130℃×5分間乾燥させ、樹脂含浸ガラス繊維織布(中間層)を得た。得られた中間層の樹脂付着量は乾燥状態で30g/m、厚みは0.05mmであった。
【0070】
〔塗工液〕
表1に示す通り、主剤、粒子、イオン交換水、レベリング剤(塗工液中、1質量%)を混合し、塗工液A~Mを作成した。なお、塗工液中の樹脂濃度は20質量%とし、表中の粒子の含有率は、塗工液の樹脂成分を100質量%としたときの質量%を示す。
【0071】
塗工液に使用した主剤、及び粒子を以下に示す。
主剤i アクリル-スチレン共重合性樹脂水系エマルジョン(日本合成化学社製「モビニール749E」、Tg:25℃、MFT:40℃)
主剤ii アクリル系樹脂水系エマルジョン(日本合成化学社製「モビニール6969D」、Tg:72℃、MFT:72℃)
主剤iii エチレン-酢酸ビニル系樹脂水系エマルジョン(日本合成化学社製「モビニール081F」、Tg:-23℃、MFT:77℃)
粒子1 アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子(積水化成品工業社製「テクポリマーMSH-5」、平均粒子径5μm、屈折率: 1.535)
粒子2 アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子(積水化成品工業社製「テクポリマーMSX-5F」、平均粒子径5μm、屈折率:1.53)
粒子3 アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子(積水化成品工業社製「テクポリマーSMX-5」、平均粒子径5μm、屈折率1.555)
粒子4 アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子(積水化成品工業社製「テクポリマーMSX-5Z」、平均粒子径5μm、屈折率:1.51)
粒子5 アクリル系樹脂粒子(積水化成品工業社製「テクポリマーMBX-5」、平均粒子径5μm、屈折率:1.49)
粒子6 アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子(綜研化学社製「MP-5500」、平均粒子径0.4μm、屈折率:1.58)
レベリング剤(日本合成化学社製「オルフィン4036」)
【0072】
〔実施例1~9〕
表2に示す通り、厚み0.12mmの塩化ビニル樹脂フィルム(アキレス社製、商品名「アキレスフラーレ」)に塗工液をバーコーターにて塗布し、加熱乾燥させてアクリル-スチレン共重合性樹脂層を形成した。
次いで、アクリル-スチレン共重合性樹脂層を内側とした2枚の塩化ビニル樹脂フィルムの間に樹脂含浸ガラス繊維織布(中間層)を挟み、熱ラミネーターにて加熱温度180℃、圧力280N/cm、速度0.2m/minの条件でラミネートし、厚みが約0.30~0.33mmの不燃シートをそれぞれ得た。
【0073】
〔実施例10〕
塩化ビニル樹脂フィルムにアクリル系樹脂層を形成したこと以外は実施例1~9と同様にして、厚みが約0.30mmの不燃シートを得た。
【0074】
〔比較例1~5〕
表3に示す通り、厚み0.12mmの塩化ビニル樹脂フィルム(アキレス社製、商品名「アキレスフラーレ」)に塗工液をバーコーターにて塗布し、加熱乾燥させてアクリル-スチレン共重合性樹脂層を形成した。
以降は実施例と同様にして、厚みが約0.30~0.31mmの不燃シートをそれぞれ得た。
【0075】
〔比較例6~8〕
表3に示す通り、厚み0.12mmの塩化ビニル樹脂フィルム(アキレス社製、商品名「アキレスフラーレ」)に塗工液をバーコーターにて塗布し、加熱乾燥させてアクリル系樹脂層を形成した。
以降は実施例と同様にして、厚みが約0.30~0.31mmの不燃シートをそれぞれ得た。
【0076】
〔比較例9〕
表3に示す通り、厚み0.12mmの塩化ビニル樹脂フィルム(アキレス社製、商品名「アキレスフラーレ」)に塗工液をバーコーターにて塗布し、加熱乾燥させてエチレン-酢酸ビニル樹脂層を形成した。
以降は実施例と同様にして、厚みが約0.30mmの不燃シートを得た。
【0077】
〔比較例10〕
2枚の未処理の塩化ビニル樹脂フィルム(厚み0.12mm、アキレス社製、商品名「アキレスフラーレ」)の間に中間層を挟み、熱ラミネーターにて加熱温度180℃、圧力280N/cm、速度0.2m/minの条件でラミネートし、厚みが約0.29mmの不燃シートを得た。
【0078】
〔比較例11〕
表面が梨地の塩化ビニル樹脂フィルム(厚み0.15mm、凹凸0.1μm、アキレス社製、商品名「アキレスフラーレ(梨地タイプ)」)を用いること以外は比較例10と同様にして、厚みが約0.35mmの不燃シートを得た。
【0079】
〔比較例12〕
表3に示す通り、表面が梨地の塩化ビニル樹脂フィルム(厚み0.15mm、凹凸0.1μm、アキレス社製、商品名「アキレスフラーレ(梨地タイプ)」)に塗工液をバーコーターにて塗布し、加熱乾燥させてアクリル-スチレン共重合性樹脂層を形成した。
以降は比較例11と同様にして、厚みが約0.35mmの不燃シートを得た。
【0080】
実施例、及び比較例において、塩化ビニル樹脂層に各塗工液を塗布し形成した塗膜については、塩化ビニル樹脂との密着性及び滑り性の評価を行い、得られた不燃シートについては、透明性、接着性、不燃性の評価を行った。結果を表2,3に示す。
【0081】
〔塩化ビニル樹脂(PVC)との密着性〕
JIS K 5600-5-6(クロスカット法)に準拠し、塩化ビニル樹脂層に形成された塗膜表面に、粘着テープ(日東電工社製、品番「No.31B」)を貼って剥がし、塩化ビニル樹脂(PVC)との密着性を以下の通り評価した。

評価基準
○ 塗膜が全く剥がれない
× 塗膜が全面で剥がれる
【0082】
〔滑り性〕
塩化ビニル樹脂層に形成された塗膜表面の触感を確認し、以下の通り評価した。なお、比較例10及び11は、塩化ビニル樹脂層の滑り性を評価した。

評価基準
○ サラサラした感触であり、製造時のロール搬送が可能である
△ 若干べたつきがあり、製造時のロール搬送性に劣る
× べたつきがあり、製造時のロールにひっつきロール搬送ができない
【0083】
〔透明性〕
ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製、商品名「HZ-V3」)を用いて、全光線透過率及びヘーズ値を測定し、シートの透明性を評価した。
なお、本願発明の透明不燃シートは、全光線透過率80%以上、ヘーズ値30%以下である。
【0084】
〔接着性〕
JIS K 6854(1999)に準拠し、引張試験機(エー・アンド・デイ社製、「テンシロン万能材料試験機」)を用いて、剥離速度を100mm/minとし、塩化ビニル樹脂層と中間層との剥離強度を測定した。サンプルの大きさは、幅25mm、長さ100mmとした。接着性を以下の通り評価した。

評価基準
◎ 剥離強度が10N/25mm以上
○ 剥離強度が8N/25mm以上10N/25mm未満
△ 剥離強度が6N/25mm以上8N/25mm未満
× 剥離強度が6N/25mm未満
【0085】
〔不燃性〕
建築基準法第2条第9号および建築基準法施行令第108条の2に基づきコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験を行い、加熱開始後の最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えず、総発熱量が8MJ/m以下の要件を満たすものを合格、それ以外を不合格とした。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
実施例1~10より、透明性があり、中間層と塩化ビニル樹脂層との接着性に優れる不燃シートが得られた。
特に、アクリル系樹脂層としてアクリル-スチレン共重合性樹脂水系エマルジョンを用いた場合には、中間層と塩化ビニル樹脂層との接着性がより向上する結果となった。
【0090】
比較例1~12では、ヘーズ値が30未満と透明性に劣るものや、透明性が良好でも塩化ビニル樹脂層と中間層との剥離強度に劣るものであった。
また、アクリル系樹脂層中に粒子を含まない比較例5,8では、塩化ビニル樹脂表面に形成された塗膜の滑り性が劣り、ロール搬送がしにくく、貼り合せ工程が困難なものであった。
【符号の説明】
【0091】
1 不燃シート
2 中間層(含浸層)
3 塩化ビニル樹脂層
4 アクリル系樹脂層
5 アクリル-スチレン共重合性樹脂粒子
図1
図2