(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】発電システムおよび蒸気供給方法
(51)【国際特許分類】
F01D 25/10 20060101AFI20220802BHJP
F01K 23/10 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
F01D25/10 E
F01K23/10 W
(21)【出願番号】P 2018230550
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中橋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松下 智彦
(72)【発明者】
【氏名】藤島 英樹
(72)【発明者】
【氏名】富樫 克則
(72)【発明者】
【氏名】小倉 実
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05388411(US,A)
【文献】特開2010-159713(JP,A)
【文献】特開2000-328903(JP,A)
【文献】特開2017-040201(JP,A)
【文献】中国実用新案第207348910(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/10
F01K 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内部でタービンロータが軸支された支持部を有
する蒸気タービンと、
前記タービンロータの駆動用として前記蒸気タービンに供給する高圧高温な第1蒸気を生成する第1蒸気生成部と、
前記第1蒸気を分流させた一部の蒸気を減圧し前記第1蒸気よりも低圧な第2蒸気を生成する第2蒸気生成部と、
前記第1蒸気と同等の圧力で前記第1蒸気よりも低温な飽和蒸気を生成する第3蒸気生成部と、
前記飽和蒸気を減圧して第3蒸気を生成し前記第2蒸気に混合し、前記支持部のシール用として前記支持部へ供給する第4蒸気を生成する第4蒸気生成部と
を具備する発電システム。
【請求項2】
前記第4蒸気の圧力を検出する圧力センサと、
前記第4蒸気の温度を検出する温度センサと、
前記圧力センサにより検出される圧力と前記温度センサにより検出される温度とを基に、予め設定された前記第4蒸気の
所定の蒸気条件を満たすように前記第2蒸気生成部および前記第4蒸気生成部を制御する制御部と
を具備する請求項1記載の発電システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第4蒸気の状態が、
前記蒸気タービン
の始動時から
前記所定の蒸気条件に達するまで、前記第2蒸気生成部および前記第4蒸気生成部を制御する請求項2記載の発電システム。
【請求項4】
ハウジング内部でタービンロータが軸支されたタービングランドを有
する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンに供給する高圧高温な主蒸気を生成する排熱回収ボイラーと、
前記蒸気タービンと前記排熱回収ボイラーとを接続し、前記主蒸気を前記蒸気タービンへ供給する主蒸気管と、
前記タービングランドに接続されたタービングランド蒸気管と、
前記主蒸気管から分岐した分岐管と、
前記分岐管とタービングランド蒸気管との間に介挿して接続され、前記分岐管からの蒸気を減圧し前記タービングランド蒸気管へ送るグランド蒸気調節弁と、
前記排熱回収ボイラーにおいて前記主蒸気と同等の圧力で前記主蒸気よりも低温な飽和蒸気を抽出する高圧ドラムと、
前記高圧ドラムに接続された低温蒸気供給管と、
前記低温蒸気供給管に接続され、前記高圧ドラムにより抽出された高圧低温の飽和蒸気を減圧する高圧低温蒸気調節弁と、
一端が前記高圧低温蒸気調節弁に接続され他端が前記タービングランド蒸気管に接続され、前記高圧低温蒸気調節弁により減圧された蒸気を前記タービングランド蒸気管に導入し、前記グランド蒸気調節弁により減圧された蒸気と混合する合流管と
を具備する発電システム。
【請求項5】
前記タービングランド蒸気管に設置され、
前記タービングランド蒸気管内部を流れる蒸気の圧力を検出する圧力センサと、
前記タービングランド蒸気管に設置され、
前記タービングランド蒸気管内部を流れる蒸気の温度を検出する温度センサと、
前記圧力センサにより検出される圧力と前記温度センサにより検出される温度とを基に、前記タービングランド蒸気管で混合される蒸気の状態が予め設定された所定の蒸気条件を満たすように前記グランド蒸気調節弁および前記高圧低温蒸気調節弁を制御する制御部と
を具備する請求項4記載の発電システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記タービングランド蒸気管で混合された蒸気の状態が
前記蒸気タービン
の始動時から
前記所定の蒸気条件に達するまで、前記グランド蒸気調節弁および前記高圧低温蒸気調節弁を制御する請求項5記載の発電システム。
【請求項7】
ガスタービンと、
蒸気タービンと、
前記ガスタービンの排熱により蒸気を発生する高圧ドラムおよび前記高圧ドラムから発生する蒸気を加熱する
過熱器を有し、前記
過熱器にて加熱された蒸気を前記蒸気タービンの駆動源として供給する排熱回収ボイラーと、
前記排熱回収ボイラーの前記高圧ドラム
で抽出された低温飽和蒸気を前記過熱器にて加熱した高圧高温蒸気を減圧して生成された低圧高温の蒸気
と前記高圧ドラムで抽出された前記低温飽和蒸気の一部を分流し減圧して生成された低圧低温の蒸気を混合して前記蒸気タービンに供給するグランドシール蒸気供給手段と
を具備する発電システム。
【請求項8】
ケーシング内部でタービンロータが軸支された支持部を有
する蒸気タービンを備えた発電システムにおける蒸気供給方法において、
前記タービンロータの駆動用として前記蒸気タービンに供給する高圧高温な第1蒸気を生成し、
前記第1蒸気と同等の圧力で前記第1蒸気よりも低温な飽和蒸気を生成し、
前記第1蒸気を分流させた一部の蒸気を減圧し前記第1蒸気よりも低圧な第2蒸気を生成し、
前記飽和蒸気を減圧して第3蒸気を生成し前記第2蒸気に混合した第4蒸気を前記支持部へシール用として供給する蒸気供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蒸気タービン備えた発電システムおよび蒸気供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
復水器および蒸気タービンなどを備える発電システム(以下「発電プラント」と称す)では、蒸気タービンが蒸気を受け入れ発電に至る前に、仕事を行った蒸気を凝縮し回収のために設ける復水器内部の圧力を真空状態にする必要があり、復水器の真空上昇過程(タービン始動時から中間負荷程度まで)において、蒸気タービンのグランド部(タービングランド)の空気の侵入を、蒸気によって遮断している。
【0003】
このような発電プラントでは、一般に、中間負荷までは、蒸気を外部から導入してタービングランドへ供給してシールを行い、タービン負荷の上昇に伴いタービン内部からの蒸気漏洩量の増加によって、高圧な蒸気が得られるようになると、タービングランドからリークする蒸気によってシールを行うようにしている。
【0004】
一般に、タービングランドに使用できる蒸気の条件は、タービングランドの側で受け入れられる蒸気の温度が決められている。また、排熱回収ボイラーが運転される前は、蒸気を供給できないため、蒸気の温度条件に合う別途設けた蒸気ライン(補助ボイラーなど)から蒸気をタービングランドへ供給することが多い。
【0005】
近年、排熱回収ボイラーが運転を始める前の蒸気供給設備(補助ボイラーなど)を設置していない発電プラントが多く、このような発電プラントでは、排熱回収ボイラーの主蒸気管から分岐させた蒸気配管を通じて蒸気をタービングランドに供給することになるが、タービングランドの蒸気として必要となる蒸気の状態は、低圧状態の飽和温度に近い蒸気であるため、主蒸気管から分岐した高圧高温の蒸気を必要な圧力および温度になるまで減圧および減温(蒸気の状態を調節)してタービングランドに供給する手法がとられている。なお、減圧および減温は、主蒸気管から分岐させた蒸気配管に蒸気減温器を設置し、蒸気減温器に外部から冷却水を注水して蒸気の温度を下げる方法がよく知られている。
【0006】
このような減圧減温方法の場合、蒸気を減温する過程で冷却水をタービングランドへの蒸気配管に注入することから、冷却水の水滴がタービングランドに送られてタービングランドへ衝突しタービン軸の振動や機械的ダメージを与えることとなり、これが元で発電プラントの停止や寿命の短命化に繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭60-261905号公報
【文献】特開2001-90507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、タービングランドの蒸気の条件は、低圧状態の飽和蒸気に近い状態であり、蒸気過熱度(蒸気温度-使用蒸気圧力の飽和温度)が低いため、排熱回収ボイラーから蒸気タービンへの主蒸気の一部を分流させた蒸気を減圧弁で減圧し、さらに蒸気減温器で減温した上で、グランド蒸気として使用することになる。
【0009】
しかしながら、従来の技術の場合、蒸気を減温する際に、蒸気減温器に冷却水を注入するため、冷却水の水滴がそのままタービングランドに入り込み、水滴による問題、例えば蒸気タービンの振動増大やタービン翼のエロージョンなどを引き起こし、プラントの停止(トリップ)やプラント寿命の短命化に繋がることがある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、冷却水を用いることなくタービングランドシール用の蒸気を減温することで、タービングランドへの水滴の影響をなくし、発電プラントの運転効率の向上と長寿命化を図ることができる発電システムおよび蒸気供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の発電システムは、蒸気タービン、第1蒸気生成部、第2蒸気生成部、第3蒸気生成部、第4蒸気生成部を備える。蒸気タービンはハウジング内部でタービンロータが軸支された支持部を有する。第1蒸気生成部はタービンロータの駆動用として蒸気タービンに供給する高圧高温な第1蒸気を生成する。第2蒸気生成部は第1蒸気を分流させた一部の蒸気を減圧し第1蒸気よりも低圧な第2蒸気を生成する。第3蒸気生成部は第1蒸気と同等の圧力で第1蒸気よりも低温な飽和蒸気を生成する。第4蒸気生成部は飽和蒸気を減圧して第3蒸気を生成し第2蒸気に混合して支持部のシール用として支持部へ供給する第4蒸気を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の発電システムの構成を示す図である。
【
図2】実施形態の発電システムにおける蒸気の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
(実施形態)
図1はタービングランドへ蒸気供給を行うシステムの一つの実施の形態の発電システムを示す図である。
【0014】
図1に示すように、実施形態の発電システムは、ガスタービン10と、このガスタービン10用の排熱回収ボイラー1と、蒸気タービン30と、復水器9と、この蒸気タービン30と排熱回収ボイラー1とを接続する配管(蒸気管)である主蒸気管2と、この主蒸気管2に一端を接続し他端をグランド蒸気調節弁6に接続する配管である分岐管3と、一端をグランド蒸気調節弁6に接続し他端をタービングランド31に接続する配管であるタービングランド蒸気管8と、排熱回収ボイラー1の上部に配置(付設)された高圧ドラム12と、高圧ドラム12に一端が接続され、他端が高圧低温蒸気調節弁5に接続される低温蒸気供給管4と、一端が高圧低温蒸気調節弁5に接続され他端がタービングランド蒸気管8に合流するように接続される配管である合流管7と、タービングランド蒸気管8に設置された圧力センサ23および温度センサ25と、これら圧力センサ23および温度センサ25に信号線で接続され、各調節弁に制御線で接続された制御部20とを有する。なお、図では、信号線や制御線を破線で示し、配管などを実線で示す。
【0015】
復水器9は、蒸気タービン30から排出される蒸気を凝縮し水に戻して熱回収ボイラー1へ給水する。ガスタービン10は、供給されるCO2ガスなどによりタービンを回転させて発電機を駆動し発電を行う。
【0016】
この発電システムは、排熱回収ボイラー1を利用してガスタービン10の排ガスを蒸気で熱回収し蒸気タービン30で発電させるコンバインドサイクル発電プラントの一つである。
【0017】
排熱回収ボイラー1は、節炭器11、高圧ドラム12、蒸発器13、過熱器14などを備える。節炭器11は、過熱器14を加熱して出てくるガスの余熱を利用して給水の予熱を行い高圧ドラム12へ送る装置である。排熱回収ボイラー1は、過熱器14により加熱された蒸気を蒸気タービン30の駆動源として供給する。
【0018】
高圧ドラム12は、ガスタービン10から供給される排ガスの熱(排熱)により蒸気を発生する。高圧ドラム12および蒸発器13は、節炭器11により予熱されて発生する蒸気の気水分離を行い、高圧低温の飽和蒸気を取り出し(抽出し)、低温蒸気供給管4を通じて高圧低温蒸気調節弁5へ送る。すなわち、高圧ドラム12は、主蒸気(第1蒸気)と同等の圧力で主蒸気(第1蒸気)よりも低温な飽和蒸気を生成する第3蒸気生成部として機能する。
【0019】
高圧ドラム12により抽出される飽和蒸気は、例えば200℃前後~250℃前後の比較的低い温度、15×105Pa弱~35×105Pa前後の比較的高い圧力の水分が含まれていない高圧低温蒸気である。なお、温度や圧力は、蒸気タービン30の負荷によって変動するため、各数値に、ある程度の幅(範囲)がある。
【0020】
過熱器14は、高圧ドラム12により発生される蒸気を加熱する。具体的には、過熱器14は、高圧ドラム12により抽出される飽和蒸気を加熱して高圧高温の第1蒸気である主蒸気を生成し主蒸気管2を通じて蒸気タービン30へ送る。主蒸気管2は、蒸気タービン30のタービンロータを回転駆動する主蒸気を蒸気タービン30へ供給する配管である。
【0021】
すなわち、過熱器14は、タービンロータの駆動用として蒸気タービン30に供給する高圧高温な主蒸気(第1蒸気)を生成する第1蒸気生成部として機能するものである。
【0022】
蒸気タービン30は、ケーシング内部でタービンロータが軸支された支持部であるタービングランド31を有する。このタービングランド31は、蒸気供給によるシールが必要である。
【0023】
グランド蒸気調節弁6は、制御部20により制御されて、蒸気の圧力をタービングランド31の蒸気条件を満たす(既定の範囲の蒸気圧力)まで下げる調節弁である。グランド蒸気調節弁6は、分岐管3とタービングランド蒸気管8との間に介挿接続されており、分岐管3からの高圧高温蒸気(主蒸気管2から分流した蒸気)を減圧する。
【0024】
すなわち、グランド蒸気調節弁6は、主蒸気(第1蒸気)の一部が分流された蒸気を減圧し主蒸気(第1蒸気)よりも低圧な第2蒸気37(
図2参照)を生成する第2蒸気生成部として機能する。
【0025】
高圧低温蒸気調節弁5は、制御部20により制御されて、高圧ドラム12から低温蒸気供給管4を通じて送られてきた低温の飽和蒸気を減圧し、低圧低温の蒸気(これを「第3蒸気」という)を生成し合流管7を通じてタービングランド蒸気管8へ送る。
【0026】
合流管7は、高圧低温蒸気調節弁5により減圧された第3蒸気33(
図2参照)をタービングランド蒸気管8に導入し、グランド蒸気調節弁6により減圧された第2蒸気37(
図2参照)と混合する。
【0027】
すなわち、高圧低温蒸気調節弁5は、飽和蒸気を減圧して第3蒸気を生成し、合流管7を通じてタービングランド蒸気管8に導入し、タービングランド蒸気管8を流れる第2蒸気37(
図2参照)に混合してタービングランド31のシール用としてタービングランド31へ供給する蒸気(これをタービングランド蒸気という)を生成する第4蒸気生成部として機能する。タービングランド蒸気を第4蒸気ともいう。
【0028】
分岐管3、低温蒸気供給管4、高圧低温蒸気調節弁5、蒸気調節弁6、合流管7、タービングランド蒸気管8などは、排熱回収ボイラー1の高圧ドラム12からの蒸気および排熱回収ボイラー1の過熱器14からの蒸気を混合して蒸気タービン30に供給するグランドシール蒸気供給手段として機能する。
【0029】
圧力センサ23は、タービングランド蒸気管8内を流れるタービングランド蒸気の圧力を検出する。温度センサ25は、タービングランド蒸気管8内を流れるタービングランド蒸気の温度を検出する。
【0030】
制御部20は、信号線を通じて圧力センサ23と温度センサ25を監視し、これらセンサの検出値に基づき高圧低温蒸気調節弁5およびグランド蒸気調節弁6を制御して、タービングランド蒸気管8内のタービングランド蒸気が、復水器の真空上昇過程において、所定の蒸気条件(温度と圧力それぞれの設定値)に達するまで、低圧高温蒸気と低圧低温蒸気とを混合(ミキシング)してタービングランド蒸気の状態を適切な蒸気状態に調節(減温)する。
【0031】
なお、復水器の真空上昇過程とは、始動時(蒸気タービン30の負荷0%)から中間負荷(蒸気タービン30の負荷50%)程度までをいう。所定の蒸気条件は、例えばタービングランド蒸気39の適切な蒸気の状態として、例えば適切な温度が280℃、適切な圧力が28.00×103Paなどが予め制御部20またはメモリ(図示せず)に設定されている。この他、蒸気条件としては、蒸気タービン30の始動時からの負荷上昇に応じた各配管部分の温度、圧力などが設定されている。
【0032】
具体的には、高圧ドラム12により抽出された低温の飽和蒸気(高圧低温蒸気)を、低温蒸気供給管4を通じて高圧低温蒸気調節弁5に送り、高圧低温蒸気調節弁5にて減圧して低圧低温蒸気33(
図2参照)として合流管7を通じてタービングランド蒸気管8に導くと同時に、排熱回収ボイラー1の主蒸気管2の高温高圧蒸気より分岐する分岐管3の高圧高温蒸気36(
図2参照)をグランド蒸気調節弁6で減圧して低圧高温蒸気37(
図2参照)としてタービングランド蒸気管8に導き、タービングランド蒸気管8において、互いの蒸気(低圧高温蒸気37と低圧低温蒸気33)を混合(ミキシング)する。
【0033】
以下、
図2を参照してこの発電システムの動作を説明する。
この発電システムでは、制御部20は、タービングランド蒸気管8に設置した圧力センサ23と温度センサ25を監視し、高圧低温蒸気調節弁5およびグランド蒸気調節弁6を制御して、タービングランド蒸気管8内の蒸気が、始動時から所定の蒸気条件(温度、圧力)に達するまで、低圧高温蒸気37と低圧低温蒸気33とを混合(ミキシング)してタービングランド31へ送るタービングランド蒸気39の状態を適切な状態に調節(減温)する。タービングランド蒸気39の適切な状態は、蒸気の温度が例えば280℃、蒸気の圧力が例えば28.00×10
3Paなどである。
【0034】
高圧ドラム12で抽出した低温飽和蒸気32(例えば15×105Pa弱~35×105Pa前後の圧力、200℃前後~250℃前後の温度の高圧低温蒸気)を、低温蒸気供給管4を通じて高圧低温蒸気調節弁5で減圧して低圧低温蒸気33としてタービングランド蒸気管8に導く。
【0035】
これと同時に、排熱回収ボイラー1からの主蒸気管2の主蒸気35(300℃弱~450℃前後の温度、15×105Pa強~30×105Pa強の気圧の高温高圧蒸気)のうちの一部の蒸気36を分岐管3に分岐(分流)させて、分岐管3を通じてグランド蒸気調節弁6に送り、グランド蒸気調節弁6により減圧して低圧高温蒸気37としてタービングランド蒸気管8に送る(導く)。
【0036】
そして、タービングランド蒸気管8において、低圧高温蒸気37に低圧低温蒸気33を混合(ミキシング)して減温し、タービングランド蒸気39として適切な状態(280℃、28.00×103Paなど)の蒸気を作り出し、タービングランド31へ供給する。
【0037】
この例のように高圧ドラム12からの低温な飽和蒸気と主蒸気管2からの高温な蒸気ととのミキシングでは冷却水を使用しないことから水滴の発生がないため、蒸気タービン30ヘのダメージ(タービングランド31への水滴の衝突によるタービン軸の振動やタービン軸自体が受ける機械的ダメージなど)を低減することができる。
【0038】
このようにこの実施形態の発電システムによれば、排熱回収ボイラー1からの最終発生蒸気35(主蒸気)から分流させ低圧化した低圧高温蒸気37に、高圧ドラム12により抽出された飽和蒸気32を低圧化した低圧低温蒸気33をタービングランド蒸気管8にて混合(ミキシング)して、タービングランド31へ供給するよう蒸気の流路を形成し、タービングランド31へ供給する蒸気を、冷却水を用いることなく減温することで、タービングランド31への水滴の衝突がなくなり、タービン軸の振動やタービン軸自体が機械的ダメージを受けるといった、水滴による影響をなくすことができる。この結果、発電システム(発電プラント)が停止(トリップ)する頻度が少なくなり運転効率が向上するとともに蒸気タービン30や発電システム(発電プラント)の長寿命化を図ることができる。
【0039】
従来の蒸気タービンを利用した発電システム(発電プラント)では、補助ボイラーなどの蒸気供給装置を設けて、始動時から比較的低負荷の状態までは、補助ボイラーからの蒸気供給によりタービングランド31のシールを行うものもあるが、近年の発電システム(発電プラント)では、補助ボイラーを設置しないプラントも多く、本発明はこのようなプラントに有効である。
【0040】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1…排熱回収ボイラー、2…主蒸気管、3…タービングランド蒸気供給管、4…低温蒸気供給管、5…高圧低温蒸気調節弁、6…グランド蒸気調節弁、7…合流管、8…タービングランド蒸気管、9…復水器、10…ガスタービン、12…高圧ドラム、13…蒸発器、14…過熱器、20…制御部、23…圧力センサ、25…温度センサ、30…蒸気タービン、31…タービングランド、32…飽和蒸気(高圧低温蒸気)、33…低圧低温蒸気(第3蒸気)、35…主蒸気(第1蒸気)、36…主蒸気管から分流した蒸気、37…低圧高温蒸気(第2蒸気)、39…タービングランド蒸気(第4蒸気)。