(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】バリアフィルムまたはシートおよびそのフィルムまたはシートを含むラミネート包装材料およびそれから作られた包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20220802BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20220802BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B9/00 A
B32B27/36
(21)【出願番号】P 2018516768
(86)(22)【出願日】2016-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2016075695
(87)【国際公開番号】W WO2017072122
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-10-24
(32)【優先日】2015-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2015-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2015-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391053799
【氏名又は名称】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
【住所又は居所原語表記】70 Avenue General Guisan,CH-1009 Pully,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100151105
【氏名又は名称】井戸川 義信
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ラリュー
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ファイエ
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-188734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0100320(US,A1)
【文献】特開2004-314407(JP,A)
【文献】特開2008-120077(JP,A)
【文献】特開平07-156339(JP,A)
【文献】特開2006-289836(JP,A)
【文献】特開2008-248374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 9/00
B32B 27/36
C23C 16/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
12μm以下の厚さを有しているPETのポリマーフィルム基材(11)およびプラズマ強化化学気相堆積(PECVD)により、10から35nmの厚さで、前記ポリマーフィルム基材上に気相堆積被覆された耐久性ダイヤモンドライクカーボン(DLC)バリア被覆(12)を含み、包装材料および包装材料から製作された容器においてガスバリア特性および水蒸気バリア特性を提供する、液体食品用のラミネート包装材料に使用するためのバリアフィルム(10a;10b;10c)であって、前記被覆は、前記ポリマーフィルム基材との界面から被覆の表面に向かって前記被覆の深さの至るところで、酸素イオン濃度を最小値まで減少させる勾配およびそれに続く増加を示す単層の勾配ダイヤモンドライクカーボン被覆(DLC)であり、バリア被覆の表面(B)から、バリア被覆とポリマーフィルムとの間の界面(A)までを測定し、動的タイム・オブ・フライト二次イオン質量分析法(ToF-SiMS)の表面分析によって強度対厚さの図表で示され、TEM顕微鏡の厚さ測定に較正されるときに、減少勾配は、被覆厚さナノメートルあたり9×10
4から1.1×10
5カウントの傾きを有しており、最小値は被覆の深さの40から60%に位置しており、一方、炭素および水素イオン基の濃度は、被覆の深さの至るところで実質的に一定のレベルにとどまっており、前記ポリマーフィルム基材(C)の表面から測定するときに、10から15nmに位置する水素イオンおよび3価の炭素イオンの局所的および一時的な濃度減少(A)があり、前記耐久性DLCバリア被覆(12)は、sp2およびsp3混成結合の総含有量に基づいて、60から70%のsp2混成結合の含有量を有しており、前記バリアフィルムは、23℃および50%のRHでMocon 2/60により測定したときに、3.0cc/day/m
2/atmの上側規格限界(USL)以下の酸素透過率OTR、38℃および90%のRHでMocon PermatranまたはLyssy装置によって測定したときに、1.0g/day/m
2以下の水蒸気透過率WVTR、および2%以上の欠陥開始ひずみCOSを有している、バリアフィルム。
【請求項2】
酸素イオン濃度の減少勾配は、被覆厚さナノメートルあたり10
5
カウントの傾きを有している、請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項3】
最小値は、前記バリア被覆の表面(B)から、前記バリア被覆と前記ポリマーフィルム基材(11)との間の界面(A)までを測定したときに、被覆の深さの45から55%に位置している、請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項4】
前記ポリマーフィルム基材(11)は、配向PETフィルムである、請求項1から3のいずれか一項に記載のバリアフィルム。
【請求項5】
前記ポリマーフィルム基材(11)は、8から12μm、好ましくは12μmの厚さを有している、請求項1から4のいずれか一項に記載のバリアフィルム。
【請求項6】
前記ポリマーフィルム基材(11)は、前記単層の勾配耐久性DLCバリア被覆(12)で被覆された面の反対側の他の面に接着促進プライマー被覆(13)を有している、請求項1から5のいずれか一項に記載のバリアフィルム。
【請求項7】
前記接着促進プライマー被覆(13)は、第2のDLC被覆である、請求項1から6のいずれか一項に記載のバリアフィルム。
【請求項8】
前記耐久性DLCバリア被覆(12)は、20から30nmの厚さで適用される、請求項1から7のいずれか一項に記載のバリアフィルム。
【請求項9】
前記接着促進プライマー被覆(13)は、第2のDLC被覆であり、2から5nmの厚さで適用される、請求項1から7のいずれか一項に記載のバリアフィルム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のバリアフィルム(10a、10b、10c)を含むラミネート包装材料(20a、20b)であって、第1の最外の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層(22)および第2の最内の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層(23)をさらに含む、ラミネート包装材料。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載のバリアフィルム(10a、10b、10c)を含むラミネート包装材料(20a、20b)であって、紙または板紙または他のセルロース系材料のバルク層(21)、第1の最外の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層(22)、第2の最内の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層(23)、および紙または板紙のバルク層(21)の内側で、前記バルク層と前記最内の層との間に配置された、前記バリアフィルム(10a;10b;10c;28)をさらに含む、ラミネート包装材料。
【請求項12】
前記バリアフィルム(10a;10b;10c;28)は、前記バリアフィルム(10a;10b;10c;28)の前記耐久性DLCバリア被覆(12;25;25a)の表面を前記バルク層(21)に結合させる中間熱可塑性ポリマー結合層(26)によって、前記バルク層(21)に結合される、請求項11に記載のラミネート包装材料。
【請求項13】
前記バリアフィルムの前記ポリマーフィルム基材(24)は、前記単層の勾配耐久性DLCバリア被覆(25、25a)で被覆された面の反対側の他の面上に接着促進プライマー被覆(27、25b)を有しており、前記バリアフィルムは、前記接着促進プライマー被覆(27)によって前記第2の最内の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層(23)に結合される、請求項10から12のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項14】
前記ラミネート包装材料の前記バリアフィルムは、二重バリアフィルムであり、これは中間熱可塑性結合層によってさらに同一のまたは類似の第2のバリアフィルム(10a;10b;10c)にラミネートされて、および結合されている第1のバリアフィルム(10a;10b;10c)を含む、請求項10から13のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項15】
第1のバリアフィルム(10a;10b;10c)は、中間熱可塑性結合層によって、さらに同一のまたは類似の第2のバリアフィルム(10a;10b;10c)にラミネートされて、および結合されており、前記ラミネート包装材料は、前記第1のバリアフィルムの反対側で、ラミネートされていない側の第1の最外の液密でヒートシール可能なポリマー層(12)および前記第2のバリアフィルムの反対側で、ラミネートされていない側の第2の最内の液密でヒートシール可能なポリマー層(13)をさらに含む、請求項10に記載のラミネート包装材料。
【請求項16】
請求項10から15のいずれか一項に記載のラミネート包装材料を含む包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質耐久性ダイヤモンドライクカーボン(DLC)の気相堆積バリア被覆を有する耐久性バリアフィルムに関する。本発明はまた、そのようなバリアフィルムを含むラミネート包装材料、特に液体食品包装を目的としたラミネート包装材料に関する。
【0002】
さらに、本発明は、ラミネート包装材料を含む包装容器、またはラミネート包装材料で作られた包装容器に関する。特に、本発明は、液体食品包装を目的とした包装容器に関する。
【背景技術】
【0003】
液体食品用の使い捨てタイプの包装容器は、板紙またはカートンに基づく包装ラミネートからしばしば製造される。一つのそのような共通に生じる包装容器は、Tetra Brik Aseptic(登録商標)の下で市販されており、牛乳、フルーツジュースなどの液体食品の無菌包装に主として使用されており、長期周囲保管用に販売される。この公知の包装容器の包装材料は、紙、板紙または他のセルロース系材料のバルクまたはコア層、および熱可塑性プラスチックの外側の液密層を含むラミネートである。包装容器を気密に、特に酸素気密にするために、例えば無菌包装および牛乳またはフルーツジュースの包装の目的のために、これらの包装容器におけるラミネートは、通常少なくとも1つの追加の層、最も共通にはアルミニウム箔を含む。
【0004】
ラミネートの内側、すなわちラミネートから製造された容器に充填された食品内容物に面することが意図されている面において、アルミニウム箔上に塗布された最内層があり、この最内の内側層は、接着性ポリマーおよび/またはポリオレフィンのようなヒートシール可能な熱可塑性ポリマーを含む、1つまたは複数の部分層からなり得る。また、バルク層の外側には、最外のヒートシール可能なポリマー層がある。
【0005】
包装容器は、一般的に、ウェブから、または包装材料の予め製造されたブランクから包装を形成、充填および密封するタイプの最新の高速パッケージングマシーンによって製造される。包装容器はこのようにして、最内及び最外のヒートシール可能な熱可塑性ポリマー層を互いに溶接することによって重複する接合部分で互いに結合されているウェブの長手方向縁部の両者によって、ラミネート包装材料のウェブをチューブに再構成することによって製造することができる。チューブは、目的の液体食品で満たされ、その後、チューブ内の内容物のレベルより下で互いから所定の距離で、チューブの繰り返される横方向の密封によって個々の包装に分割される。包装は、横方向の密封に沿って切開によってチューブから分離され、包装材料において準備された折り目線に沿って折畳み形成によって、所望の幾何学的形状、通常は平行六面体形状を与える。
【0006】
この連続的なチューブ形成、充填および密封包装の方法の概念の主な利点は、チューブ形成の直前にウェブを連続的に滅菌してもよく、それによって無菌包装の方法、すなわち、充填された包装が充填された製品において微生物の成長の危険もなく、周囲温度でさえも長期間保存され得るように、充填すべき液体内容物および包装材料それ自身が、細菌から減少され、および充填された包装容器は、清潔な条件の下で製造される方法の可能性を提供する。Tetra Brik(登録商標)タイプの包装の方法の別の重要な利点は、上述したように、費用効率にかなりの影響を与える、連続的な高速包装の可能性である。
【0007】
敏感な液体食品、例えば牛乳またはジュース用の包装容器はまた、本発明のラミネート包装材料のシート状ブランクまたは予め製造されたブランクから製造されることができる。平らに折畳まれた包装ラミネートのチューブ状ブランクから、容器は、第一に、開いたチューブ状容器のカプセルを形成するまでブランクを組み立てることによって製造され、その一つの開放端は、一体のつま面(end panel)の折畳みおよびヒートシールによって閉鎖される。このようにして閉じられた容器のカプセルは、その開口端を通して、問題の食品、例えばジュースで満たされ、その後、対応する一体のつま面のさらなる折畳みおよびヒートシールによって閉鎖される。シート状およびチューブ状ブランクから製造された包装容器の実施例は、従来のいわゆるゲーブルトップ容器である。プラスチックで作られたモールドトップキャップおよび/またはスクリューキャップを有するこの種の容器もある。
【0008】
包装ラミネート中のアルミニウム箔の層は、ほとんどのポリマーガスバリア材料よりもかなり優れたガスバリア性を提供する。液体食品無菌包装用の従来のアルミニウム箔ベースの包装ラミネートは依然として、今日でも市場で入手可能な、その性能レベルで最も費用対効果の高い包装材料である。
【0009】
箔ベースの材料と競合する他の材料は、原材料に関して費用効率が良くなければならず、同等の食品保存特性を有し、完成した包装ラミネートへの変換における同程度に低い複雑性を有していなければならない。
【0010】
液体食品カートン包装のための非アルミニウム箔材料を開発する努力の中には、高度で多重のバリア機能、すなわち、酸素およびガスバリアだけでなく水蒸気、化学物質または芳香物質のバリア特性を有する予め製造されたフィルムまたはシートの開発に対する一般的な動機もあり、それは従来のラミネート包装材料のアルミニウム箔バリア材料を置き換えてもよく、およびそれをラミネートおよび製造のための従来のAl箔プロセスに適応させてもよい。
【0011】
しかしながら、ほとんどの代替のバリアフィルムは、ラミネート包装材料に不十分なバリア特性または機械的強度特性を提供しているので、非常に高い全体の包装材料の費用を生み出すか、または前記態様の両方に起因して失敗するため、これは困難であった。特に、バリア特性を提供するための2つ以上の連続的な層を有するフィルムは、包装ラミネートにおいて経済的に実現可能であるには高価すぎるようになる。十分なバリア特性を提供するために、またはバリアフィルムに改善された機械的特性を提供するために、フィルムの主バリア層または主バリア被覆をさらなる層で補完する必要がある場合、そのような多層バリアフィルムおよび包装材料は、製造においてはるかに高価であるので、費用が包装材料構造に全体として追加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、包装材料へとラミネートするためのバリアフィルムおよびシートにおける上述した問題を克服すること、または少なくとも軽減することである。
【0014】
液体カートンラミネート包装材料におけるニーズを満たすバリア特性および他の特性を有するバリアフィルムまたはシートを提供することはまた、本発明の一般的な目的である。
【0015】
妥当な費用で長期的な無菌包装に適している、アルミニウム箔を含まないが依然として良好なガスおよび他のバリア特性を有する、液体、半固体または湿潤食品用のラミネート包装材料のような酸素感受性製品用の包装材料を提供することは、本発明のさらなる一般的な目的である。
【0016】
特定の目的は、長期的な無菌食品保管のための包装を製造する目的のために、良好なガスバリア特性および良好な水蒸気バリア特性を有する、アルミニウム箔バリア材料に対して費用効率がよく、箔を用いない、紙または板紙ベースのラミネート包装材料を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、周囲条件下で維持された栄養品質で液体食品の長期保管のための無菌包装容器を製造する目的のために、良好なガスバリア特性、良好な水蒸気バリア特性および層間の良好な内部接着を有する、費用効率のよく、箔を用いない、紙または板紙ベースの、およびヒートシール可能な包装ラミネートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このように、これらの目的は、添付の特許請求の範囲に定義された、バリアフィルム、ラミネート包装材料、包装容器および包装材料の製造方法によって本発明に従って達成される。
【0019】
本発明に関連した用語「長期保管」とは、包装容器が包装された食品の品質、すなわち栄養価、衛生的な安全性および味を、周囲条件で、少なくとも1ヶ月または2ヶ月、例えば少なくとも3ヶ月、好ましくはより長く、例えば6ヶ月、例えば12ヶ月またはそれ以上で保存することができるべきであることを意味する。
【0020】
用語「パッケージ完全性」とは、一般的に包装の耐久性、すなわち包装容器の漏損または破損に対する耐性を意味している。この特性についての主な寄与は、包装ラミネート内で、ラミネート包装材料の隣接する層間に良好な内部接着が提供されることである。別の寄与は、材料層内のピンホール、破裂などの欠陥に対する材料耐性からもたらされ、さらに別の寄与は、材料が包装容器の形成時に一緒に密封される密封接合部の強度からもたらされる。ラミネートされた包装材料自体に関して、完全性は、それぞれのラミネート層のその隣接する層への接着、並びに個々の材料層の品質に主に焦点を当てている。
【0021】
本発明の第1の態様によれば、一般的な目的は、液体食品用のラミネート包装材料に使用するため、および酸素および他のガスに敏感な製品を包装するための、耐久性バリアフィルムによって達成され、バリアフィルムはポリマーフィルム基材およびその上に気相堆積被覆された耐久性ダイヤモンドライクカーボン(DLC)バリア被覆を含み、包装材料及びそれに関して作られた包装においてガスバリア特性および水蒸気バリア特性を提供し、被覆は、ポリマーフィルム基材との界面から、被覆の表面に向かって被覆の深さの至るところで、酸素イオン含有量を最小値まで減少させる勾配およびそれに続く増加を示す、単層の勾配ダイヤモンドライク被覆(DLC)であり、減少勾配は、バリア被覆(B)の表面からバリア被覆とポリマーフィルムとの間の界面(A)まで測定され、動的タイム・オブ・フライト二次イオン質量分析法(ToF-SiMS)の表面分析による強度対時間の図表で示され、TEM顕微鏡の厚さ測定値に較正されるときに、被覆厚さのナノメートルあたり5×104から5×105カウントまで、例えばナノメートルあたり8×104から1.2×105カウント、例えば9×104から1.1×105カウント、例えば105カウントの傾きを有しており、最小値は、被覆の深さの40から60%、例えば45から55%、例えば50%に位置しており、一方、炭素および水素イオン基の濃度は、被覆の深さの至るところで実質的に一定のレベルにとどまっている。
【0022】
このようにして、被覆は、ポリマーフィルム基材から、被覆されたバリアフィルムの表面に向かってバリア被覆を通って外側に観察され、動的タイム・オブ・フライト二次イオン質量分析法(ToF-SiMS)の表面分析による強度対時間の図表で示されるときに、それらの間に勾配界面を有する、主として3つのゾーンを示す単層の勾配ダイヤモンドライクコーティング(DLC)であり、第1のゾーンは、ポリマーフィルム基材Cの表面に近い酸素濃度の持ち上がりを示し、第2のゾーンは、図表の右から左に見られる負の勾配として減少する酸素濃度を示し、一方第3のゾーンは、DLC被覆Bの表面における酸素濃度の立ち直りを示し、炭素および水素イオン基の濃度は、3つの被覆ゾーンおよび被覆の深さの至るところで実質的に一定のレベルのままである。
【0023】
さらなる実施形態によれば、ポリマーフィルム基材Cの表面から測定したときに10から15nmの被覆厚さの位置で、すなわちポリマーフィルム基材Cの表面から10から15nmの範囲で、水素イオンおよび3価の炭素イオンの局所的および一時的な濃度不足/減少A、すなわち、より小さな減少および立ち直りがある。
【0024】
一実施形態によれば、ポリマーフィルム基材は、ポリエステルまたはポリアミドまたはそれらの混合に基づくフィルム、および前記ポリエステルまたはポリアミドまたはそれらの混合を含む表面層を有する多層フィルムからなる群から選択されるフィルムである。
【0025】
別の実施形態によれば、ポリマーフィルム基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、一軸または二軸配向PET(OPET、BOPET)、未配向または一軸配向または二軸配向ポリエチレンフラノエート(PEN)、配向または未配向ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタネート(PEN)、ポリアミド、未配向または配向ポリアミド(PA、OPA、BOPA)、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、一軸または二軸配向ポリプロピレン(PP、OPP、BOPP)、配向または未配向高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびシクロオレフィンコポリマー(COC)のようなポリエチレンに基づく、または前記ポリマーの2種以上の混合に基づくフィルム、またはそのようなポリマーまたはその混合を含む表面層を有する多層フィルムからなる群から選択されるフィルムである。
【0026】
より具体的な実施形態によれば、ポリマーフィルム基材は、ポリエステルまたはポリアミドに基づく、またはそのようなポリマーの混合またはラミネートの組み合わせに基づくフィルムからなる群から選択されるフィルムである。さらに特定の実施形態によれば、ポリマーフィルム基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、一軸または二軸配向PET(OPET、BOPET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタネート(PEN)、未配向ポリアミド、配向ポリアミド(PA、OPA、BOPA)に基づくフィルム、またはそのようなポリマーまたはその混合を含む表面層を有する多層フィルムからなる群から選択されるフィルムである。一実施形態によれば、ポリアミドは、ポリアミド6またはポリアミド6,6などの脂肪族ポリアミド、ナイロン-MXD6またはSelarなどの半芳香族ポリアミド、または脂肪族および半芳香族ポリアミドの混合からなる群から選択される。
【0027】
さらに特定の実施形態によれば、ポリマーフィルム基材は配向PETフィルムである。
【0028】
別の実施形態によれば、ポリマーフィルム基材は12μm以下、例えば8から12μm、例えば12μmの厚さを有している。
【0029】
より薄いポリマーフィルム基材は、商業的に存在しており、本発明の範囲内に適しているが、8μm未満になることは現在のところ現実的ではなく、4μmより薄いフィルムは、包装のための工業的な被覆およびラミネート工程におけるウェブ操作の観点から困難であろう。一方、12から15μmより厚いフィルムはもちろん適しているが、それらは開口デバイスの機能および穿孔に対してあまりにも多くの強度および靭性を付加するので、本発明のラミネート包装材料にとっては費用効率の観点から興味深いものではない。一実施形態によれば、ポリマーフィルム基材は、12μm以下でなければならず、例えば10から12μm、例えば約12μmの配向PETフィルムである。フィルム基材のより大きい厚さでは、材料のより高い強度のために、ラミネート包装材料の裂傷および切断特性が損なわれる。
【0030】
さらなる実施形態によれば、ポリマーフィルム基材は、その片面に、単層の勾配耐久性DLCバリアコーティングで被覆された面の反対側に接着促進プライマー被覆を有する。接着促進プライマー被覆は、アミノシランおよびポリエチレンイミンの群から選択される化合物を含む組成物であってもよい。
【0031】
さらなる実施形態によれば、耐久性DLCバリア被覆は、2から50nm、例えば5から40nm、例えば5から35nm、例えば10から35nm、例えば20から30nmの厚さまで堆積される。
【0032】
さらなる実施形態によれば、耐久性DLCバリア被覆は、耐久性DLC被覆におけるsp2およびsp3混成結合の全含有量に基づいて、60から70%のsp2結合の含有量を有している。特に良好な特性の被覆は、そのような構成を有することが証明されている。
【0033】
上述した方法で得られた耐久性バリアフィルムは、低OTR、低WVTR、良好な芳香性および臭気性のバリア特性ならびに良好な耐薬品性のような多くの点において優れた特性を示しており、ラミネート包装材料へのラミネート、およびそのようなラミネート材料の包装への折畳み形成および密封操作などの後続する処理操作において良好な機械的特性を有することを証明している。優れた機械的特性は、DLCバリア被覆の耐久性がPECVD被覆法の条件によって最適化されていること、および堆積されたDLCバリア層内に良好な凝集性、ならびにポリマーフィルム基材の表面への良好な接着性および結合があることを意味していることにより、説明することができるはずである。液体包装に役立つそのような優れた機械的特性の重要な指標は、酸素バリア特性が劣化し始める欠陥開始ひずみ(COS)、すなわちバリアフィルムの歪みである。PETベースのフィルムに対して、耐久性DLC被覆のCOSは2%より上であることがわかっている。
【0034】
このようにして、一実施形態によれば、バリアフィルムは、12μm以下の厚さを有するPETのポリマーフィルム基材と、ポリマーフィルム基材上に20から30nmの厚さで気相堆積被覆された耐久性DLCバリア被覆とを含み、フィルムは、23℃および50%のRHでMocon 2/60によって測定したときに3.0cc/day/m2/atmの上側規格限界以下である酸素透過率(OTR)、および38℃および20%のRHでMocon PermatranまたはLyssy装置で測定したときに1g/day/m2以下の水蒸気透過率(WVTR)、および2%以上の欠陥開始ひずみ(COS)を有している。
【0035】
いくつかの目的のため、およびいくつかの実施形態によれば、液体包装のためのラミネートされたカートン材料から作られた最終のおよび充填された包装において適切な酸素バリア特性に達するために、最初からバリアフィルムの酸素バリアは、23℃および50%のRHで3.0cc/day/m2/atmに等しいかそれよりも良好であるべきである。もちろん、フィルムバリアが可能な限り良好であればよいが、これは液状食品包装のいくつかの目的に有用である限界のOTRレベルとみなされる。
【0036】
別の実施形態によれば、ポリマーフィルム基材は、単層の勾配耐久性DLCバリア被覆で被覆された面の反対側である他の面に接着促進プライマー被覆を有する。接着促進プライマー被覆の目的は、隣接する押出被覆されたポリマー、例えばポリオレフィンベースのポリマー層およびその接触表面に対する接着強度を生み出すことまたは改善することである。
【0037】
ラミネート包装材料の一実施形態において、接着促進プライマー被覆は、アミノシランおよびポリエチレンイミンからなる群から選択される化合物を含む組成物である。
【0038】
ラミネート包装材料のさらなる実施形態において、接着促進プライマー被覆は、非晶質ダイヤモンドライク被覆(DLC)の第2の被覆である。そのような接着促進プライマーDLC被覆は、2から50nm、例えば2から10nm、例えば2から5nmの厚さで適用される。
【0039】
本発明の第2の態様において、本発明のバリアフィルムを含むラミネート包装材料が提供される。ラミネート包装材料は、第1の最外の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層および第2の最内の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層をさらに含むことができる。
【0040】
一実施形態によれば、ラミネート包装材料は、紙または板紙のバルク層、第1の最外の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層、第2の最内の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層、および紙または板紙のバルク層の内側で、包装材料から作られた包装容器の内側に向かって、バルク層と最内層との間に配置された、前記バリアフィルムを含む。
【0041】
さらなる実施形態によれば、バリアシートまたはフィルムは、中間の接着性または熱可塑性ポリマー結合層によってバルク層に結合され、このようにしてバリアフィルムの耐久性DLCバリア被覆の表面をバルク層に結合する。特有の実施形態によれば、結合層は、ポリオレフィン層、例えば特に、大部分のエチレンモノマーの単位を含むポリエチレン系ポリオレフィンコポリマーまたはその混合の層である。好ましくは、結合層は、バルク層のウェブとフィルム層のウェブとの間に結合ポリマー層を溶融押出ラミネートし、ラミネーションローラーニップに通して進める間に同時に3つの層を一緒にプレスし、これによりラミネート構造を提供すること、すなわち、バルク層をバリアフィルムにいわゆる押出ラミネートすることによって、バルク層をバリアフィルムに結合させることである。
【0042】
さらなる実施形態によれば、バリアフィルムのポリマーフィルム基材は、単層の勾配耐久性DLCバリア被覆で被覆された面の反対側である他の面に接着促進プライマー被覆を有しており、バリアフィルムは、接着促進プライマー被覆によって第2の最内の液状でヒートシール可能なポリオレフィン層に結合される。
【0043】
特に、本発明によるラミネート包装材料は、ラミネート構造内の隣接層間に優れた接着性を提供し、バリア被覆の良好な品質を提供することによって、優れた完全性を有することが分かっている。特に、液体や水分のある食品を包装するために、湿潤包装の条件下でもラミネート包装材料内の層間接着を維持することが重要である。様々な種類の気相堆積バリア被覆の中で、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)などのプラズマ被覆技術によって適用されるこのDLCタイプの気相堆積バリア被覆は、優れたラミネート完全性を有することが確認されている。他方、SiOxまたはAlOx被覆のような他の種類の気相堆積化学物質からのバリア被覆は、湿潤および湿気条件下で同じ種類のラミネート材料において良好な完全性を示さない。湿潤条件下でもDLC被覆の有機ポリマーへの、例えば特にポリオレフィンへのこの桁外れの接着適合性は、予想外で驚くべきものであり、そのようなバリアフィルムを液体包装に特に適したものにする。
【0044】
別の実施形態において、ラミネート包装材料のバリアフィルムは、中間の熱可塑性結合層により、さらに同一または類似の第2のバリアフィルムにラミネートされおよび結合された第1のバリアフィルムを含む二重のバリアフィルムである。バリア被覆は、その間の中間の熱可塑性結合層を用いて互いに向いて面していてもよい。あるいは、接着促進プライマー被覆が中間の熱可塑性結合層によって互いに結合されるように、バリア被覆は、互いに対して外方を向いてもよい。さらなる代替は、両方のバリア被覆が同じ方向を向くように、2つのフィルムを互いに積層することである。二重のバリアフィルムは、紙または板紙または他のセルロース系材料のようなバルク層にさらにラミネートされてもよい。
【0045】
さらなる実施形態において、第1のバリアフィルムは、中間の熱可塑性結合層によって、さらなる同一または類似の第2のバリアフィルムにラミネートされ、および結合され、ラミネート包装材料はさらに、第1のバリアフィルムのラミネートされていない面である反対側に第1の最外の液密でヒートシール可能なポリマー層と、および第2のバリアフィルムのラミネートされていない面である反対側に第2の最内の液状でヒートシール可能なポリマー層とを含む。
【0046】
特に、本発明によるラミネート包装材料は、ラミネート構造内の隣接層間に優れた接着性を提供し、液体カートンラミネートのような高湿度条件下でバリア被覆の良好な品質を提供することによって、優れた完全性を有していることが分かっている。特に、液体および水分のある食品を包装するために、ラミネート包装材料内の層間接着性を湿潤包装条件下でも維持することが重要である。様々な種類の気相堆積バリア被覆の中でも、プラズマ強化気相堆積(PECVD)などのプラズマ被覆技術によって適用される、このDLCタイプの気相堆積バリア被覆は、優れたラミネート完全性を有することが確認されている。他方、SiOxまたはAlOx被覆のような他の種類のPECVD堆積化学物質からのバリア被覆は、湿潤および湿気条件下で同じ種類のラミネート材料において良好な完全性を示さない。湿潤条件下でもDLC被覆の有機ポリマーへの、例えば特にポリオレフィンおよびさらに特別にはポリエチレンへのこの桁外れの接着適合性は、予想外で驚くべきものであり、そのようなバリアフィルムを液体カートン包装に特に適したものにする。
【0047】
本発明の第3の態様において、液体、半固体または水分を含む食品の包装を目的とした本発明のラミネート包装材料を含む包装容器が提供される。一実施形態によれば、包装容器は、本発明のラミネート包装材料から製造され、さらなる実施形態によれば、ラミネート包装材料からその全体が作られる。
【0048】
さらに別の実施形態によれば、包装容器は、部分的に密封されたラミネート包装材料から形成され、液体または半液体食品で満たされ、その後任意でプラスチック開口または包装の上部と組み合わせて、包装材料をそれ自体で密封することによって密封される。
【0049】
時間と共に、ガスバリア基準並びに様々な機械的および他の物理的特性の必要性を満たす包装材料の設計において、様々な気相堆積バリア被覆が考慮されてきた。
【0050】
気相堆積されたバリア層は、物理気相堆積(PVD)または化学気相堆積(CVD)によって、フィルム材料の基材表面上に適用することができる。基材材料自体が同様にいくつかの特性に寄与してもよいが、とりわけ気相堆積被覆を受けるのに適した適切な表面特性、および気相堆積プロセスにおいて作業効率を有していなければならない。
【0051】
薄い気相堆積層は、通常、わずかナノメートルの厚さ、すなわちナノメートルの大きさのオーダーの厚さ、例えば1から500nm(50から5000Å)、好ましくは1から200nm、より好ましくは1から100nm、最も好ましくは1から50nmである。
【0052】
しばしばいくつかのバリア特性、特に水蒸気バリア特性を有する、1つの共通する種類の気相堆積被覆は、いわゆる金属被覆法、例えばアルミニウム金属物理気相堆積被覆である。
【0053】
実質的にアルミニウム金属からなるそのような気相堆積された層は、包装のための従来の厚さ、すなわち6.3mmのアルミニウム箔に存在するアルミニウム金属材料の1%未満に対応する5から50nmの厚さを有している。気相堆積金属被覆は著しく少ない金属材料を必要とすると同時に、それらはせいぜい低レベルの酸素バリア特性しか提供せず、十分なバリア特性を有する最終的なラミネート材料を提供するために、さらなるガスバリア材料と組み合わせる必要がある。他方、水蒸気バリア特性を有さないが、水分に対してかなり敏感なさらなるガスバリア層を補完してもよい。
【0054】
気相堆積被覆の他の実施例は、酸化アルミニウム(AlOx、Al2O3)および酸化ケイ素(SiOx)被覆である。一般的に、そのようなPVD被覆は、より脆く、ラミネートによる包装材料への組み込みにあまり適しておらず、一方、例外としての金属化層は、PVDによって作られたにもかかわらず、ラミネート材料に適した機械的特性を有している。
【0055】
ラミネート包装材料のために研究された他の被覆は、プラズマ強化化学気相堆積法(PECVD)によって適用することができ、化合物の蒸気は、多かれ少なかれ酸化環境の下で基材上に堆積される。酸化ケイ素被覆(SiOx)は、例えば、PECVDプロセスによって適用することもでき、特定の被覆条件およびガスの製法(gas recipes)の下で非常に良好なバリア特性を得ることができる。残念なことに、SiOx被覆は、ポリオレフィンおよび他の隣接するポリマー層への溶融押出ラミネーションによってラミネートされたときに、悪い接着特性を示す。特別に高価な接着剤または接着性ポリマーが、液体カートン包装を目的とした種類の包装ラミネートにおいて十分な接着力を達成するために必要とされる。
【0056】
本発明の気相堆積被覆は、PECVDプロセス、すなわち特定の耐久性ダイヤモンドライクカーボン(DLC)によって適用される特定の非晶質水素化炭素バリア層である。DLCは、ダイヤモンドの典型的な特性のいくつかを示す非晶質炭素材料のクラスを定義している。好ましくは、炭化水素ガス、例えば、アセチレンまたはメタンなどは、被覆を製造するためにプラズマにおいてプロセスガスとして使用される。本発明の特定の耐久性DLC被覆は、ラミネート包装材料において隣接するポリマーまたは接着剤層に対して良好な接着性を提供することがわかった。隣接するポリマー層に対する特に良好な接着性は、ポリオレフィン、特にポリエチレンおよびポリエチレンベースのコポリマーで見られる。
【0057】
一実施形態によれば、バリアフィルムは、液体カートン包装ラミネートにおける使用のためのオーダーメイドの特性を有する耐久性DLCバリア被覆を有する。耐久性DLC高バリア被覆は、優れた機械的特性に寄与することにより、並びに充填された包装から内側方向または外側方向のいずれかにそのようなラミネート材料を通して移動する様々な物質に対する優れたバリア特性をもたらすことにより、および加えてラミネートにおいて隣接するポリマー層への優れた接着性によって、特に良好なバリア特性を、本発明のバリアフィルムを含む包装ラミネートから作られた充填された包装容器に提供する。バリア特性のこの最適化により、バリアフィルムは、酸素バリア特性および水蒸気バリア特性の全体の寄与を伴った包装ラミネート及び包装容器を提供し、長期間にわたる、例えば2から6ヶ月に至るまで、例えば12ヶ月に至るまでの周囲保管に対する無菌食品包装容器を製造するために、酸素バリア材料をさらに添加する必要はない。加えて、耐久性DLC高バリア被覆は、包装された食品中に存在する様々な芳香性および香気性物質、場合によっては材料の隣接層において現れる低分子物質、および酸素よりも臭気性および他のガスに対する良好なバリア特性を提供する。同様に、耐久性DLCバリア被覆は、カートンベースの包装ラミネートにラミネートされるとき、ポリマーフィルム基材上に被覆された場合に非常に良好な機械的特性を示し、包装ラミネートのラミネーションおよびその後の折畳み形成に耐え、充填された包装へと密封する。
【0058】
従って、耐久性DLCバリア被覆は、被覆されたバリアフィルムの歪みの増加に伴う酸素バリア特性の低下の程度の測定である、高い欠陥開始ひずみ(crack on-set strain)(COS)と共に、優れたガスバリア特性および水蒸気バリア特性を有している。COSの測定は、被覆されたバリアフィルムの機械的強度および耐久性の間接的な指標であり、ラミネート包装材料から折畳まれて、充填されて、および密封された包装容器へのラミネーションおよび変換で使用されるとき、耐久性DLCバリア被覆のポリマーフィルム基材へ接着性および耐久性DLCバリア被覆内の凝集性などの特性を含む。
【0059】
本発明の耐久性DLCバリア被覆で被覆された二軸配向PETフィルムのCOSは、2%より高く、これは通常、2%より上にフィルムをひずませるまで劣化し始めない被覆の酸素バリア特性に関連することができる。
【0060】
耐久性DLCバリア被覆は、真空条件下でPECVDプロセスによって適用される、一実施形態によるものである。米国特許第7,806,981号は、PECVDプロセスにおいてウェブ基材を連続的にコーティングするためのそのようなデバイスおよび方法を開示している。デバイスは、真空チャンバを備えた被覆ステーションと、真空チャンバ内で、ウェブ基材を支持および移送し、かつ対向電極を形成する回転ドラムとを備える。このようにして、シートまたはフィルム基材のウェブは、回転ドラム上を移動し、反応器のプラズマ反応および被覆ゾーンを通過することによりロールから巻かれずに送られ、ドラムの他の面上のロールに巻き戻される。デバイスはさらに、回転ドラムの周囲上に複数のマグネトロン電極をさらに備える。マグネトロン電極は、ウェブ基材の表面に面している。デバイスは、回転ドラムとマグネトロン電極との間の空間にプロセスガスを供給する手段をさらに備える。マグネトロン電極は、40から50kHzの交流電圧で適切に給電される。プラズマは、電力に容量結合され、ドラム電極およびその周面から少し離れて、およびその周りに位置するマグネトロン電極によって磁気的に閉じ込められる。
【0061】
一実施形態によれば、回転ドラムは感応基材を一定温度に保つために冷却される。一実施形態によれば、ポリマーフィルム基材は、摂氏10度以下の一定温度に冷却される。
【0062】
基材は、ドラムによって運搬および移送されることにより、一定の速度でプラズマゾーンを通過し、速度はドラムの回転速度によって調節される。
【0063】
一実施形態によれば、マグネトロン電極は、プラズマ反応ゾーン全体にわたってプロセスおよび均一なプラズマのより良好な制御を可能にするために、個別に電力供給され得る。
【0064】
一実施形態によれば、ラジカル、イオンおよび分子のプラズマ前駆体ガスを生成するために使用されるガスは、アセチレンからなる。ガス流量10から30標準リットル/分(slm)および電力20から50kW、アセチレンガス流に対する電力の比1.8~4、例えば1.8から3.5で制御することにより、および反応器内のガス圧を30から60μbarに維持することにより、良好なプラズマは、ポリマーフィルム基材表面上に耐久性DLCバリア被覆を堆積させるために形成される。一実施形態によれば、アルゴン、窒素または酸素プラズマまたはそれらの1つ以上の混合での基材表面の前処理は、ポリマーフィルム基材と耐久性DLC被覆との間で正確な界面を得るための、先行するプラズマ被覆操作である。耐久性DLC高バリア被覆の厚さは、2から50nmの間で変化し得る。有用なバリア特性が望まれる場合、被覆は2nmよりも厚くした方がよい。しかしながら、いくつかの低バリア特性は、既に2nmで得ることができる。
【0065】
ウェブ基材は、単層または多層フィルムとすることができる。多層フィルムは、特に、基材表面ポリマー層を有する。ウェブ基材、すなわち、多層ポリマーフィルムの単層ポリマーフィルムまたは基材表面層は、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリエチレンナフテン酸塩(polyethylenenaphthenate)とすることができる。ウェブ基材またはフィルムはまた、ポリアルケン、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)またはシクロオレフィン(コ)ポリマー(COC)とすることができる。ウェブ基材またはフィルムはまた、ポリアミド(PA)または液晶ポリマー(LCP)とすることができる。ウェブ基材またはフィルムはまた、例えばハロゲン化プラスチック、例えばポリ塩化ビニル(PVC)またはポリ塩化ビニリデン(PVDC)とすることができる。
【0066】
ポリマーフィルム基材は、一実施形態によれば、配向ポリエチレンテレフタレート(OPET、BOPET)フィルム、配向ポリプロピレン(BOPP、OPP)、配向ポリエチレン(OHDPE、BOHDPE、OLLDPE)フィルムまたは配向ポリアミド(OPA、BOPA)フィルムから選択される。
【0067】
一実施形態によれば、ポリマーフィルム基材は、厚さが12μm以下、例えば8μm以下、例えば8から12μmのBOPETフィルムである。配向フィルムは一般的に、フィルムを通した引裂きまたは切断に対して増大した強度および靭性を示し、ラミネート包装材料に含まれる場合、そのようなフィルムは包装を開封するのを困難にし得る。可能な限り薄いポリマーフィルム基材を選択することによって、バリア材料がより脆く、且つポリマー材料が溶融押出被覆および溶融押出ラミネートによって完全に作られるラミネート包装材料と比較して、その後にラミネートされた包装材料の開封性が損なわれることはない。
【0068】
PETフィルムは、良好な機械的特性を有する丈夫で費用効率の良いフィルムであり、これは、いくつかの固有の高温耐性および化学薬品および水分に対する相対的耐性に起因して、それらをDLC気相堆積被覆に特に適した基材にしている。PETフィルムの表面はまた、高い平滑性および気相堆積されたDLC被覆に対する良好な親和性を有し、逆もまた同様である。
【0069】
さらなる実施形態によれば、ポリマーフィルム基材は、フィルムをラミネート包装材料にラミネートするときに、バリアフィルムの両面上の隣接層に良好な結合を提供するために、BOPETフィルムの他の面に適用された接着促進プライマー被覆を有するBOPETフィルムである。接着促進プライマー被覆は、アミノシランおよびポリエチレンイミンの群から選択される化合物を含む組成物によって適用され得る。本発明の目的に適したプライマーの特定の実施例は、以下の実施例で使用されるような、三菱製のHostaphan(登録商標) RNK12 BOPETフィルム上で使用される2DEF(登録商標)プライマーである。
【0070】
DLCバリア被覆は、再生利用される内容物において自然界および周囲環境に必然的に存在しない元素または材料を含む残留物を残すことなく、再生利用可能であるという利点をさらに有している。
【0071】
本発明の一態様によれば、耐久性バリアフィルムは、包装に適したラミネート材料にこのようにして含まれ、これにより耐久性バリアフィルムは、両側のヒートシール可能で液密なポリオレフィン層にラミネートされる。
【0072】
最外のおよび最内のヒートシール可能で液密な層に適した熱可塑性プラスチックは、ポリエチレンおよびポリプロピレンのホモまたはコポリマーのようなポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、より好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状LDPE(LLDPE)、シングルサイト触媒メタロセンポリエチレン(m-LLDPE)およびそれらの混合またはコポリマーからなる群から選択されるポリエチレンである。好ましい実施形態によれば、最外のヒートシール可能で液密な層はLDPEであり、一方最内のヒートシール可能で液密な層は、最適なラミネートおよびヒートシール特性のために、m-LLDPEおよびLDPEの混合組成物である。
【0073】
最外層および最内層に関して列挙されたのと同じ熱可塑性ポリオレフィン系材料、特にポリエチレンは、ラミネート材料の内部、すなわち紙または板紙などのバルク層またはコア層とバリアフィルムとの間の層を結合するのにも適している。一実施形態において、熱可塑性結合層は、低密度ポリエチレン(LDPE)層などのポリエチレン層であってもよい。
【0074】
別の実施形態によれば、例えばバルク層またはコア層とバリアフィルムとの間、または外側のヒートシール可能な層とバリア被覆またはプライマー被覆されたポリマーフィルム基材との間のような、ラミネート材料内部の適切な結合層またはタイ層は、大部分はLDPEまたはLLDPEコポリマー、またはカルボン酸基またはグリシジル官能基などのモノマー単位を含む官能基を有するグラフトコポリマー、例えば、(メタ)アクリル酸モノマーまたは無水マレイン酸(MAH)モノマー、(すなわち、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)またはエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA))、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレートコポリマー(EG(M)A)またはMAH-グラフトポリエチレン(MAH-g-PE)に基づいた、いわゆる接着性熱可塑性ポリマー、例えば変性ポリオレフィンである。そのような変性ポリマーまたは接着性ポリマーの別の例は、いわゆるアイオノマーまたはアイオノマーポリマーである。好ましくは、変性ポリオレフィンは、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)またはエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)である。
【0075】
対応する変性ポリプロピレン系熱可塑性接着剤または結合層は、完成した包装容器の要件に応じて、有用でもあり得る。
【0076】
そのような接着性ポリマー層またはタイ層は、共押出被覆操作においてそれぞれの外層と一緒に適用される。
【0077】
しかしながら、通常、上述した接着性ポリマーの使用は、本発明のDLCバリア被覆への結合を必要とすべきではない。ポリオレフィン層、特にポリエチレン層への隣接層としての十分なおよび適切な接着は、少なくとも200N/m、例えば少なくとも300N/mのレベルで決定される。
【0078】
接着性の測定は、LDPEラミネート後、24時間、180°剥離力試験装置(Telemetric Instrument AB)を用いて室温で実施される。剥離はDLC/LDPE界面で実施され、剥離アームはバリアフィルムである。必要に応じて、湿潤条件、すなわち、ラミネート材料から作られた包装容器に保存された液体から材料層を通って移動する水分をともなってラミネート包装材料が飽和しているとき、および/または湿潤または高湿度の環境における保存の状態の下での接着性を評価するために、蒸留水の液滴が剥離した界面に加えられる。所与の接着値はN/mで与えられ、6回の測定の平均である。
【0079】
200N/mを超える乾燥接着性は、通常の包装製造条件の下、例えばラミネート材料を折曲げて折畳み形成するときに、層が層間剥離しないことを確実にする。この同じレベルの湿潤接着性は、充填および包装形成の後、輸送、流通および保管の間に包装ラミネートの層が層間剥離しないことを確実にする。
【0080】
内部結合ポリマー層は、共通の技術および機械、例えばアルミニウム箔のラミネーション、特に溶融ポリマーからのポリマー層のホットラミネーション(押出し)に対して周知のものを使用することによって、その上に被覆された耐久性DLCバリア層を有するポリマーフィルム基材上に直接被覆することができる。同様に、既製のポリマーフィルムを使用して、局所的にそれを溶融すること、例えばホットシリンダーまたは加熱されたローラーによって熱を加えることによってバリア被覆されたキャリアフィルムにそれを直接結合させることが可能である。
【0081】
上記から、耐久性DLCバリアフィルムは、ラミネート包装材料へのラミネーションおよび変換の方法におけるアルミニウム箔バリアと同様の方法において取り扱うことができることは明らかである。ラミネーション装置および方法は、例えば、以前から知られているプラズマ被覆材料において必要とされ得るような特定の接着性ポリマーまたはバインダ/タイ層を加えることによって、いかなる修正も必要としない。加えて、その上に被覆された耐久性DLCバリア層を含む新しいバリアフィルムは、最終の食品包装におけるバリア特性に悪影響を及ぼすことなく、アルミニウム箔と同じくらい薄くすることができる。
【0082】
耐久性DLCバリア被覆表面を、例えば、LDPEのようなポリエチレンの隣接層にラミネートするとき、バリアフィルムから寄与される酸素バリア特性は、バリアフィルム自体の測定のみよりも2から3倍高い値まで増加する。本発明の耐久性DLCバリア被覆をラミネートに単にラミネートすることによる、このバリアの改善は、
1/OTR=SUMi(1/OTRi)
に従う単純なラミネート理論によって説明することはできないが、このようにして各ラミネート層によるOTRの個々の寄与を超えて全体のバリアを改善する。DLC被覆とポリオレフィン表面との間の優れた接着性は、2つの材料間の特に良好は統合界面をもたらし、それによって改善された酸素バリア特性をもたらすと考えられている。
【0083】
本発明の好ましい実施形態において、耐久性DLCバリア被覆層とさらにラミネートする結合ポリマー層との間の剥離力強度は、(上述したような)乾燥および(剥離界面に水を置くことによる)湿潤条件下での180°剥離試験方法によって測定される場合、200N/mより高く、例えば300N/mより高い。200N/mを超える乾燥接着性は、層が通常の製造条件、例えば、ラミネート材料を折曲げおよび折畳み形成するときに層間剥離しないことを確実にする。同じレベルの湿潤接着性は、包装ラミネートの層が、充填および包装形成の後、輸送、流通および保管の間に層間剥離しないことを確実にする。
【図面の簡単な説明】
【0084】
以下では、本発明の好ましい実施形態が図面を参照して説明される。
【0085】
【
図1a】本発明による、ポリマーフィルム基材およびその上に堆積された耐久性DLCバリア被覆を含むバリア被覆の断面を概略的に示している。
【
図1b】その反対面が接着プライマーで被覆された類似のフィルムを示している。
【
図1c】2つの連続した気相堆積被覆段階において、耐久性DLCバリア被覆が両面に気相堆積被覆されたポリマーフィルム基材を含む、類似のバリアフィルムの断面を概略的に示している。
【
図2a】本発明の一実施形態によるラミネート包装材料の概略断面図を示している。
【
図2b】
図1cの耐久性バリアフィルムを含む、本発明の一実施形態によるさらなるラミネート包装材料の概略断面図を示す。
【
図3】本発明の耐久性バリアフィルムを板紙またはカートンのコアまたはバルク層を有する、液体包装用のラミネート包装材料にラミネートするための方法を概略的に示している。
【
図4】マグネトロンプラズマによる、基材フィルム上への、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)被覆のためのプラントの模式図を示している。
【
図5a】本発明によるラミネート包装材料から製造された包装容器の典型的な実施例を示している。
【
図5b】本発明によるラミネート包装材料から製造された包装容器の典型的な実施例を示している。
【
図5c】本発明によるラミネート包装材料から製造された包装容器の典型的な実施例を示している。
【
図5d】本発明によるラミネート包装材料から製造された包装容器の典型的な実施例を示している。
【
図6】そのような包装容器が、連続的な、ロール給送、成形、充填及び密封プロセスにおいて包装ラミネートからどのように製造されるかの原理を示している。
【
図7】ポリマーフィルム基材がPETフィルムである、耐久性DLC被覆の元素組成が、ポリマーフィルム基材表面Cから、バリア被覆への界面Aにわたって、バリア被覆の表面Bに至るまで、被覆の深さを通して分析されている、動的タイム・オブ・フライト二次イオン質量分析(ToF-SiMS)の図表を示している。
【
図8】ポリマーフィルム基材がポリアミド(PA)フィルムである、耐久性DLC被覆の元素組成が、ポリマーフィルム基材表面Cから、バリア被覆への界面Aにわたって、バリア被覆の表面Bに至るまで、被覆の深さを通して分析されている、動的タイム・オブ・フライト二次イオン質量分析(ToF-SiMS)の図表を示している。
【発明を実施するための形態】
【0086】
実施例
12μmの厚膜の二軸配向ポリエチレンテレフタレート(三菱製のBOPET Hostaphan RNK12)は、真空条件下でプラズマ強化化学気相堆積(PECVD)により、ロール・ツー・ロールプラズマ反応器において、堆積被覆される。プラズマは、40kHzの周波数で供給される電力に容量結合され、および回転ドラムの周面、結合されたフィルム-ウェブ移送手段および電極から少し離れて置かれた不平衡マグネトロン電極によって磁気的に閉じ込められている。フィルムはまず、3標準リットル/分(slm)の流量のアルゴンガスおよび5kWの前処理電力で前処理された。続いて、フィルムは、24kWの総被覆電力、12slmの総アセチレン流量および約0.03mbarのプロセスガス圧力で、純粋なアセチレンガスから形成されたプラズマからの非晶質の水素化ダイヤモンドライク被覆DLCを堆積させることによって被覆された。ポリマーフィルム基材は、ドラム型ウェブ-移送手段内の冷却手段によって、10℃以下の一定温度で冷却された。DLC被覆は約23nmの厚さで適用された。
【0087】
プロセスの異なる設定が、異なる被覆バッチ間で試みられ、酸素透過率(OTR)および水蒸気透過率(WVTR)の測定によって評価された。
【0088】
23℃の室温、50%のRHで測定された未被覆BOPETフィルムのOTRは、1atmで110cm3/m2/dayであると決定される。OTRは、電量センサーに基づくOxtran 2-60(Mocon Inc.)装置で、その結果の標準偏差は±0.5cm3/m2/dayで測定された。
【0089】
OTRを決定するための方法は、定義された温度、所定の大気圧、および選択された推進力で材料を通過する際の単位表面および単位時間あたりの酸素量を特定する。
【0090】
水蒸気透過率(WVTR)測定は、38℃および90%の推進力で、Lyssy機器(相対湿度検出およびWVTR測定のための変調赤外線センサーを用いた規格:ASTM F1249-01)によって実施された。この試験方法は、フィルムの水蒸気透過率(WVTR)特性を測定するために使用されている。この手順は、相対湿度検出およびWVTR測定のための変調赤外線センサーを用いるASTM F1249-01に従って行われる。
【0091】
【0092】
表1における試料のテストランの間に、プラズマ反応ゾーンにおける前駆体ガスの圧力は、42~52μbarに維持された。
【0093】
表1におけるテストランの結果から明らかなように、1.8から3.5の電力と流れとの比が最適なOTR結果に対して好ましい場合がある。
【0094】
プラズマに対する前駆体ガスの量が多すぎると、バリア特性が破壊されるように見えることがわかっている。
【0095】
一方で、前駆体ガスの量を低下させると、プラズマがゆっくりと希釈され、バリア特性が徐々に低下し、すなわち、OTRおよびWVTRが表1の最適値から離れて増加する。
【0096】
試料1、3、4、5、7および8によって得られた耐久性バリアフィルムはさらに、優れた芳香性バリア特性、耐化学性および臭気性バリア特性を示した。重要なことに、フィルムは、2%を超える高い欠陥開始歪み(COS)を示した。ラミネーション操作、およびバリアフィルムを含むラミネート包装材料からの包装の形成において、このことからの良好な効果は、バリア被覆が、すなわち、耐熱性であることによって、および巻き取り、巻き戻し、ラミネート、折畳み形成および包装への密封における良好な機械的特性を有していることによって、耐久性があることである。
【0097】
さらに、バリアフィルムおよび耐久性DLC被覆の表面は、隣接するポリオレフィンラミネート層に対して優れた接着性を有しており、隣接するポリエチレン層への付着において、200N/mを超えて、例えば300N/mを超えて測定された。
【0098】
【0099】
表2における酸素透過率は、23℃および50%のRHで、Mocon 2/60で測定された。表2の全てのテストランにおいて、ポリマーフィルム基材は、配向PETの12μmの厚膜であった。F2_150205*及びF2_150128*を除く全ての試料は、表1において使用したのと同じポリマーフィルム基材、すなわち三菱製のBOPET Hostaphan RNK12から作製された。F2_150205*及びF2_150128*は、同様に12μmの厚さを有する異なるBOPETフィルムから作製された。
【0100】
μ*はOTRの中央値であり、σ*は乗法標準偏差である。USLは、対数正規分布における3シグマ(σ*3)で与えられた上側規格限界である。
【0101】
nは試料の数、すなわち、測定を行うべきバリアフィルムから取られた試料の数である。
【0102】
水蒸気透過率(WVTR)は、表2に集計された試料に対して系統的に測定されなかった。同じ設定および条件で実施された他の試験は、Mocon PermatranまたはLYSSY装置のどちらかで、38℃および90%のRHで、0.6から1.0g/day/m2のWVTRが報告された。
【0103】
実施例-接着性試験
厚さ12μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレート(三菱製のBOPET Hostaphan RNK12およびRNK12-2DEF)からのフィルムは、ロール・ツー・ロールプラズマ反応器において、真空条件下のプラズマ強化化学気相堆積(PECVD)によって種々の被覆で堆積被覆された。ダイヤモンドライク非晶質水素化炭素コーティング(DLC)が、本発明に従って、いくつかのフィルム試料上に被覆され、一方他のPECVDバリア被覆が他の試料上に被覆された。比較例の対象である他のPECVDバリア被覆は、xが1.5から2.2で変化するSiOx、(y+z)/xが1から1.5であるSiOxCy被覆およびSiOxCyNz被覆であった。これらの他のケイ素含有バリア被覆は、オルガノシラン前駆体ガス化合物から形成された。本発明によるフィルム試料は、純粋なアセチレンガスから形成されたプラズマからの非晶質水素化ダイヤモンドライクコーティングDLCを堆積させることによって被覆された。
【0104】
使用されるプラズマは、40kHzの周波数で供給される電力に容量結合され、結合されたフィルム-ウェブ移送手段および電極として機能する、回転ドラムの周面から少し離れて置かれた不平衡マグネトロン電極によって磁気的に閉じ込められている。ポリマーフィルム基材は、ドラム型ウェブ-移送手段内の冷却手段によって冷却される。
【0105】
DLC被覆は、第1の実施例において約15~30nmの厚さまで適用され、第2の実施例において約2~4nmだけの厚さまで適用された。
【0106】
SiOx被覆は約10nmの厚さに被覆された。
【0107】
このようにしてバリア被覆された基材フィルムの試料は、次いで液体カートン包装ラミネートにおいて板紙をアルミニウム箔へ押出ラミネートするために従来使用されているラミネート結合層のLDPE材料に対応する種類の低密度ポリエチレン(LDPE)を15g/m2の厚い層で押出し被覆された。
【0108】
このように押出被覆されたLDPE層とバリア被覆された基材PETフィルムとの密着性は、上述したように、乾燥および(剥離界面に蒸留水を置くことによる)湿潤条件下で180°剥離試験法によって測定された。200N/mを超える接着性は、層が通常の製造条件下、例えば、ラミネートされた材料を折曲げおよび折畳み形成するときでも剥離しないことを確実にする。この同じレベルの湿潤接着性は、包装ラミネートの層が、充填およびパッケージ形成後、輸送、流通および保管の間に剥離しないことを確実にする。
【0109】
【0110】
表1に要約された結果からわかるように、純粋なSiOxバリア被覆とそこへ押出被覆されたLDPEとの間にいくらかの不十分な乾燥接着性があり、一方、湿潤/湿気条件下で接着性は完全に劣化している。
【0111】
炭素原子および窒素原子も含有する、より前進したSiOxの分子式を用いて実験するとき、純粋なSiOx被覆と比較して、若干の改善が乾燥および/または湿潤接着特性において見られるが、乾燥接着特性は不十分なままであり、すなわち200N/m以下である。
【0112】
DLCコーティングの押出被覆されたLDPEへの乾燥接着性は、試験されたSiOxCyNz被覆の最良の場合よりもわずかに良好である。SiOxCyNz被覆と比較して、より重要で予測できない相違は、接着性が、ラミネートされた飲料カートン包装のための条件であるような、湿潤または湿気条件下で一定のままであることである。
【0113】
さらに、むしろ驚くべきことに、200N/mを超える値のDLC被覆の優れた接着性は、DLC被覆をより薄くし、および2nmと同じくらい薄くしたときに、すなわち、もはや顕著なバリア特性が実際に得られない場合にも影響を受けない。これは、試料フィルムについて乾燥および湿潤条件の両方の場合に当てはまる。
【0114】
もちろん、そのようなフィルムが板紙および熱可塑性ポリマー材料の包装ラミネートにラミネートされるとき、フィルムの両面に優れた接着性を提供するために、フィルムの両面にそのようなDLC被覆を被覆することが有利である。あるいは、基材フィルムの反対側の隣接する層への接着性は、三菱製の2 DEF(登録商標)プライマーのような別個に適用された化学的プライマー組成物によって固定されてもよい。DLC接着促進層は、それが接着層において炭素原子のみを含むので、およびそれは接着性を提供するだけのためならば非常に薄くされ、またはバリア特性をも提供するためならばより厚くされるので、環境および費用の両方の観点から好ましい。DLC被覆の任意の厚さにおいて、得られる接着性は、乾燥および湿潤条件の両方の下で、(三菱製の2 DEF(登録商標)のような)化学プライマーの接着性と少なくとも同程度良好である。ポリマーフィルム基材上へのDLC被覆の両側の適用は、しかしながら、2つの連続したプロセスステップで実施される必要がある。
【0115】
接着性試験に関するさらなる実施例:
上記の実施例で使用したものと同様のBOPETフィルムは、表2で説明するように、片面および両面に、同様の薄いDLC被覆で被覆された。OTRは、上記の実施例と同様の方法で、23℃および50%のRHでcc/m2/day/atmで測定された。DLC被覆フィルムは次いで、15g/m2のLDPEの結合層による外側LDPE層を有する板紙を含む包装材料構造にラミネートされ、およびフィルムの反対側に25g/m2のLDPEおよびmLLDPEの混合の内側層でさらに被覆されている。OTRは、前に説明したような同じ方法によりラミネート包装材料上で測定された。
【0116】
次いで、ラミネート包装材料は、1000mlの標準Tetra Brik(登録商標)Aseptic包装容器へ再構成され、総酸素透過率が、23℃および50%のRHでMocon 1000装置によりさらに測定された。測定結果が表2に示されている。
【0117】
【0118】
非常に驚くべきことに、ラミネート包装材料上および包装材料からの包装上で測定されるとき、試験Bにおけるフィルムが二つの非常に薄いDLC被覆のみで被覆されたにも関わらず、酸素バリア特性は、試験Bのフィルムによって同じレベルであるか、または改善さえされており、一方、試験Aにおいて、被覆の一つはより厚く、フィルムの結果としての酸素バリア特性を提供することが実際に意図されている。バリア被覆されたフィルムでの測定により、試験Aのフィルムは実際に良好であったが、最終のラミネート包装材料構造にラミネートされ、包装容器に使用されるときに、2つのフィルムの両方が非常に良好に機能し、試験Bのフィルムは、試験Aのフィルムよりも良好に実行さえされた。
【0119】
このように、できるだけ良好なラミネート材料の特性を提供するために、上述したDLC被覆されたバリアフィルムにより高品質の包装ラミネートが提供され、これは液体包装に使用されるとき、すなわち包装材料が湿潤条件にさらされるときにも層間の優れた接着性を維持し、結果としてラミネートの他の層を劣化から保護し得る。本発明による耐久性DLC被覆は、良好な酸素バリア特性と水蒸気バリア特性の両方を提供するので、それは液状食品用のカートン包装ラミネートに使用される非常に貴重な種類のバリア被覆である。
【0120】
さらに、添付の図面に関連して:
図1aにおいて、本発明のバリアフィルム10aの第1の実施形態の断面図が示されている。ポリマーフィルム基材11は、酸素バリア特性を改善するために(OTR値を低減するために)、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)被覆により、耐久性非晶質DLC被覆12で被覆された、PETまたはPAまたはポリオレフィン、好ましくはBOPETのフィルム基材である。気相堆積された被覆12は、褐色の透明な被覆色へ均一に堆積された炭素被覆(C:H)である。耐久性DLC被覆の厚さは、好ましくは5から50nm、より好ましくは5から30μmである。
【0121】
図1bでは、
図1aと類似のポリマーフィルム基材11、この場合ではBOPETフィルム基材は、酸素バリア特性を改善するために(OTR値を低減するために)、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)被覆により、被覆側に、類似の耐久性非晶質DLC被覆12で気相堆積被覆されている。耐久性DLCバリア被覆の反対側であるその他の面では、フィルム基材は、三菱化学製の2-DEF、ポリエチレンイミンベースのプライミング組成物のような接着促進プライマー13の薄層で被覆されている。
【0122】
図1cでは、
図1aおよび1bと類似のポリマーフィルム基材11、この場合ではBOPETフィルム基材は、本発明による20nm厚さの耐久性DLC被覆で両面12a、12bが気相堆積被覆されている。フィルムのOTRは、23℃および50%のRHで、1cc/day/m
2/atm未満で測定された。
【0123】
図2aでは、液体カートン包装用の、本発明のラミネート包装材料20aが示されており、ラミネート材料は、320mNの曲げ力を有している板紙の板紙バルク層21を含み、バルク層21の外側であって、その側は包装ラミネートから製造される包装容器の外側に向けられるバルク層21の外側に適用されたポリオレフィンの外側に液密でヒートシール可能な層22をさらに含む。外側層22のポリオレフィンは、ヒートシール可能な品質の従来の低密度ポリエチレン(LDPE)であるが、LLDPEを含むさらに類似のポリマーを含むことができる。最内の液密でヒートシール可能な層23は、包装ラミネートから製造される包装容器の内側に向けられる、バルク層21の反対側に配置され、すなわち、層23は、包装された製品と直接接触することになる。ラミネート包装材料から作られた液体包装容器の最も強い密封を形成する、最内のヒートシール可能な層23は、LDPE、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびメタロセン触媒の存在下でエチレンモノマーをC4からC8、より好ましくはC6からC8、α-オレフィンアルキレンモノマーで重合することによって製造されたLLDPE、すなわちいわゆるメタロセン-LLDPE(m-LLDPE)からなる群から選択されるポリエチレンの一つ以上の組み合わせを含む。
【0124】
バルク層21は、本発明による、20から30nmの厚さの、非晶質耐久性DLCバリア材料の薄いPECVD気相堆積された層の層25で第1の側が被覆されているポリマーフィルム基材24を含む、耐久性バリアフィルム28でラミネートされている。その第2の、反対の側では、ポリマーフィルム基材は、接着促進プライマー27、この場合は、三菱化学製の2-DEF(登録商標)、ポリエチレンイミンベースのプライミング組成物で被覆されている。このようにして耐久性バリアで被覆されたフィルム24の第1の側は、結合熱可塑性ポリマーまたは官能化ポリオレフィンベースの接着性ポリマー、この例では低密度ポリエチレン(LDPE)の中間層26によって、バルク層21にラミネートされている。中間結合層26は、バルク層および耐久性バリアフィルムを互いに押出しラミネートすることによって形成される。中間結合層26の厚さは、好ましくは7から20μm、より好ましくは12から18μmである。最内のヒートシール可能な層23は、同一または異なる種類のLDPEまたはLLDPEまたはそれらの混合の2つまたはいくつかの部分層からなることができる。優れた接着性がラミネート材料において得られ、PECVD被覆された耐久性DLCバリア被覆は、相当量の炭素材料を含有しており、ポリオレフィン、特にポリエチレンおよびポリエチレンベースの共重合体のようなポリマーとの良好な接着適合性を示す。
【0125】
図2bでは、液体カートン包装用の本発明のラミネート包装材料20bが示されており、ラミネート材料は、320mNの曲げ力を有する板紙コア層21を含み、バルク層21の外側であって、その側は包装ラミネートから製造される包装容器の外側に向けられるバルク層21の外側に適用された、ポリオレフィンの外側に液密でヒートシール可能な層22をさらに含む。外側層22のポリオレフィンは、ヒートシール可能な品質の従来の低密度ポリエチレン(LDPE)であるが、LLDPEを含むさらに類似のポリマーを含んでもよい。最内の液密でヒートシール可能な層23は、包装ラミネートから製造された包装容器の内側に向けられる、バルク層21の反対側に配置され、すなわち、層23は包装された製品と直接接触する。ラミネート包装材料から作られた液体包装容器の最も強い密封を形成するための、最内のヒートシール可能な層23は、LDPE、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、およびメタロセン触媒の存在下でエチレンモノマーをC4からC8、より好ましくはC6からC8、α-オレフィンアルキレンモノマーで重合することによって製造されたLLDPE、すなわちいわゆるメタロセン-LLDPE(m-LLDPE)からなる群から選択されるポリエチレンの組み合わせの一つ以上を含む。
【0126】
バルク層21は、2つの連続したPECVD被覆操作において、基材24のポリマーフィルムの面のうちの1つに、それぞれ厚さが10から30nmである、本発明による非晶質の耐久性DLCバリア材料の薄いPECVD気相堆積層25aおよび25bで両側が被覆されている、耐久性バリアフィルム28にラミネートされる。このように、耐久性バリア被覆されたフィルム28は、結合熱可塑性ポリマーの中間層26によって、または官能化ポリオレフィンベースの接着ポリマー、この例においては低密度ポリエチレン(LDPE)によって、バルク層21にラミネートされる。中間結合層26は、バルク層および耐久性バリアフィルムを互いに押出しラミネートすることによって形成される。中間結合層26の厚さは、好ましくは、7から20μm、より好ましくは12から18μmである。最内のヒートシール可能な層23は、同一または異なる種類のLDPEまたはLLDPEまたはそれらの混合の2つまたはいくつかの部分層からなり得る。ラミネート材料において優れた接着性が得られ、PECVD被覆された耐久性DLCバリア被覆は、相当量の炭素材料を含有しており、これはポリオレフィン、例えば特にポリエチレンおよびポリエチレンベースの共重合体のようなポリマーとの良好な接着適合性を示す。
【0127】
図3では、
図2のそれぞれの包装ラミネート20を製造するためのラミネーション工程30が示されており、バルク層31は、押出ステーション35からのLDPE34の中間結合層を押出し、ローラーニップ36で一緒にプレスすることによって、
図1aおよび1bの耐久性バリアフィルム10aまたは10b(33)にラミネートされている。耐久性バリアフィルム10a;10b;33は、ポリマーフィルム基材の表面上に堆積された耐久性DLCバリア被覆を有しており、それによってラミネーションステーション36でラミネートされるときに、DLC被覆がバルク層に向けられる。続いて、ラミネートされた紙バルクおよびバリアフィルムは、第2の押出フィードブロック37-2およびラミネーションニップ37-1を通過し、ここで最内のヒートシール可能な層23;37-3が、36から送り出された紙-フィルムラミネートのバリアフィルム側10a;10b上に被覆される。最後に、最内のヒートシール可能な層37-3を含むラミネートは、第3の押出フィードブロック38-2およびラミネーションニップ38-1通過し、ここでLDPE22;38-3の最外のヒートシール可能な層が、紙層の外側上に被覆される。この後者のステップは、別の実施形態によれば、36でのラミネーションの前に第1の押出被覆操作として実施することもできる。完了した包装ラミネート39は、最終的に図示しない収納リールに巻き取られる。
【0128】
図4は、ポリマーフィルム基材上への水素化非晶質ダイヤモンドライクカーボン被覆のプラズマ強化気相堆積被覆(PECVD)用のプラントの一例の概略図である。フィルム基材44は、その表面の一方で、マグネトロン電極45と、電極としても作用するフィルム移送ドラム46との間の空間に作り出されるプラズマ反応ゾーンにおけるプラズマの連続的なPECVD、50、にさらされ、一方、フィルムは回転ドラムによって送られて、ドラムの周面に沿ったプラズマ反応ゾーンを通る。プラズマは、アセチレンまたはメタンなどの1つまたは複数のガス状有機炭化水素から形成され、被覆は、堆積被覆されたフィルム1aまたは1bがそれぞれ形成されるように、1から500nm、好ましくは2から100nmの厚さに適用される。
【0129】
図5aは、本発明による包装ラミネート20から製造された包装容器50aの一実施形態を示す。包装容器は、飲料、ソース、スープなどに特に適している。典型的には、そのような包装は約100から1000mlの容量を有している。それは、いかなる構成であってもよいが、好ましくは、縦方向シール51aおよび横方向シール52aおよび任意で開口デバイス53を有するレンガ形状である。図示されていない別の実施形態では、包装容器は、くさびとして形成されてもよい。このような「くさび形」を得るために、容器の底部のみが折畳み形成されて、底部の横方向ヒートシールは、包装の底部に対して折畳まれて密封される三角形のコーナーフラップの下に隠れる。頂部セクションの横方向シールは折畳まれていないままにされている。このようにして、半分折畳まれた包装容器は、食料品店内の棚またはテーブルなどに置かれたときに、依然として扱いやすく、寸法的に安定している。
【0130】
図5bは、本発明による代替の包装ラミネート20から製造された包装容器50bの代替の好ましい実施例を示す。代替の包装容器は、より薄い紙バルク層21を有することによって薄くなり、このようにして、平行六面体またはくさび形の包装容器を形成するのに十分に寸法的に安定ではなく、横方向シール52bの後で折畳み形成されていない。このように、枕形状でポーチ状の容器のままであり、この形態で流通及び販売される。
【0131】
図5cは、本発明の板紙のバルク層および耐久性バリアフィルムを含むラミネーション包装材料からの、予め切断されたシートまたはブランクから折畳み形成された破風状頂部の容器50cを示す。同様に、平坦な頂部容器が、材料の類似のブランクから形成されてもよい。
【0132】
図5dは、本発明のラミネート包装材料の予め切断されたブランクから形成されたスリーブ54と、スクリューコルクなどの開口デバイスと組み合わせてプラスチックを射出成形することによって形成された頂部55との組合せあるボトル状容器50dを示している。この種類の容器は、例えば、Tetra Top(登録商標)およびTetra Evero(登録商標)の商品名の下で市販されている。これらの特定の容器は、閉じた位置に取り付けられた開口デバイスを有する成形された頂部55を、ラミネート包装材料のチューブ状スリーブ54に取り付け、このようにして形成されたボトル-頂部カプセルを滅菌し、食品で充填し、最後に容器の底部を折畳み形成し、密封することによって形成される。
【0133】
図6は、本出願の序論で説明した原理を示しており、すなわち、包装材料のウェブは、重複継手63において互いに結合されるウェブの長手方向縁部62によってチューブ61に形成される。チューブは意図した液体食品64で充填され、チューブ内に充填された内容物のレベルより下で互いからの所定の距離でチューブの繰り返される横方向のシール65によって個々のパッケージに分割される。容器66は、横方向シールにおける切込みによって分離され、材料内の準備された折り線に沿った折畳み形成によって所望の幾何学的形状が与えられる。
【0134】
図7は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材上に堆積された耐久性DLCバリア被覆の様々な深さにおけるタイム・オブ・フライト二次イオン質量分析法(ToF-SiMS)による表面分析からの強度対時間の図表を示している。
【0135】
図8は、ポリアミド(PA)フィルム基材上に堆積された耐久性DLCバリア被覆の様々な深さにおけるタイム・オブ・フライト二次イオン質量分析法(ToF-SiMS)による表面分析からの強度対時間の図表を示している。
【0136】
二次イオン質量分析法(SiMS)は、試料の表面を集束一次イオンビームでスパッタリングし、放出された二次イオンを収集し分析することによって、固体表面および薄膜の組成を分析するために使用される技術である。これらの二次イオンの質量/電荷比は、1から2nmの深さまでの表面の元素、同位体、または分子組成を決定するために、質量分析計で測定される。異なる材料間のイオン化確率の大きな変動に起因して、SiMSは一般的に定性的技術であると考えられており、パーツパーミリオンからパーツパービリオンまでの範囲にある元素検出限界をともなう非常に敏感な表面分析技術である。
【0137】
ToF-SiMS法は、固体表面および薄膜の組成を測定し、このように被覆の、および被覆内部の化学構造を決定するために、材料の異なる深さでこれを行うことができる。
【0138】
ToF-SiMS測定は、IONTOF GmBH社製のTOF 5装置を用いて実施された。
分析条件:
・ 一次イオンBi+ 25keV、I~1.86pA
・ 分析面積 70×70μm2、256×256ピクセル
・ 負の二次イオンが分析される
・ 電荷補償(<20eV)
スパッタリング条件:
・ 一次イオンCs+ 500eV、40nA
・ スパッタリング面積:250×250μm2
分析/スパッタリングサイクル:
・ 0から300umaまでの2分析スキャン(タイム・オブ・フライト最大=50μs)
・ スパッタリング:1.638秒
スパッタリングと分析の間の休止:0.5秒。
【0139】
厚さの測定は、Titan 80-300のFEI装置を用いて透過型電子顕微鏡(Transmission Electronic Microscopy)で実施された。試料は、ライカ製のEM UC6 Microtomeでの超薄切片法により調製される。
【0140】
図7および
図8は、第1のゾーンにおけるポリマーフィルム基材Cの表面の下から、基材表面と被覆との間の界面Aにおける第2のゾーンを通って、第3のゾーンすなわち被覆表面Bのゾーンまでの酸素イオン濃度の大幅に減少する勾配、および初期濃度のレベルを多かれ少なかれ再び回復させるように、この第3のゾーン内で酸素濃度の急速な増加が存在することを示している。このように、PECVD被覆プロセスは、初期のポリマー表面の下から開始する、ゾーンCでのポリマーフィルムの表面を最初に改質し、界面Aで、バリア被覆の作成を開始し、それに関する頂部表面Bで、バリア被覆の全厚に至る。炭素および水素イオンの濃度は、3つの被覆ゾーンの全体にわたって実質的に一定のレベルにとどまっている。一実施形態によれば、本発明の耐久性DLC被覆は、第二のゾーンAの間に、水素イオンおよび3価の炭素イオンの相対的に小さく、一時的な空乏を特徴的に示すが、1価の炭素イオンおよび2価の炭素イオンの濃度は、被覆の3つ全てのゾーンおよび深さを通して実質的に一定のままである。PETフィルム基材と比較してポリアミドフィルム基材上に被覆が適用され、分析されたときに、図はわずかに異なっているが、被覆中のイオン含有量に関する特性および変化のパターンは非常に類似していることが分かる。
【0141】
本方法によって製造され、ToF-SiMSによって分析されるときにこれらの特性を有する特定のDLCバリア被覆が、被覆されたフィルムの最適な初期酸素バリアおよび水蒸気バリアの両方を提供し、機械的歪みに曝された後の、すなわち、フィルムがラミネーションに用いられ、フィルムを含むラミネート材料の包装への折畳み形成および密封されるときに前記バリア特性に関する優れた耐久性を提供することがわかった。被覆とフィルム表面との間の界面Aにおける水素イオンおよび3価の炭素イオンの一時的な空乏は、被覆とフィルムとの間に共有結合が存在することを示しており、これは少なくとも、フィルム基材への被覆の接着性および被覆内の内部凝集を含む、歪み時の良好な機械的特性に対して寄与する要因であると考えられている。
【0142】
本発明は、上で示し、および説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で変更することができる。
【符号の説明】
【0143】
1a、1b 堆積被覆されたフィルム
10a、10b 耐久性バリアフィルム
11 ポリマーフィルム基材
12 バリア被覆
13 接着促進プライマー被覆
20a、20b ラミネート包装材料
21 バルク層
22 ヒートシール可能な層
23 ヒートシール可能な層
24 ポリマーフィルム基板
25 バリア材料
26 中間結合層
27 接着促進プライマー被覆
28 耐久性バリアフィルム
31 バルク層
33 耐久性バリアフィルム
35 押出ステーション
36 ローラーニップ
37-1 ラミネーションニップ
37-2 押出フィードブロック
37-3 最内のヒートシール可能な層
38-1 ラミネーションニップ
38-2 押出フィードブロック
39 終了した包装ラミネート
44 フィルム基材
45 マグネトロン電極
46 フィルム搬送ドラム
50 プラズマ
50a 包装容器
50b 包装容器
50c 折り畳み形成された破風の上部容器
50d ボトル状容器
51a 長手方向シール
52a 横方向シール
52b 横方向シール
53 開口デバイス
54 チューブ状スリーブ
55 頂部
61 チューブ
62 ウェブの長手方向縁部
63 オーバーラップ継手
64 液体食品
65 横方向のシール
66 容器