(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】バリアフィルムを備えるラミネート包装材料及び該ラミネート包装材料から製造された包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20220802BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B9/00 A
(21)【出願番号】P 2018522113
(86)(22)【出願日】2016-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2016075696
(87)【国際公開番号】W WO2017072123
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-10-23
(32)【優先日】2015-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2015-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2015-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391053799
【氏名又は名称】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
【住所又は居所原語表記】70 Avenue General Guisan,CH-1009 Pully,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100151105
【氏名又は名称】井戸川 義信
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チェザーレ・ロレンツェッティ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ファイエ
(72)【発明者】
【氏名】ジル・ロシャ
(72)【発明者】
【氏名】クロード・ベルジュリウー
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-036208(JP,A)
【文献】特開2005-088452(JP,A)
【文献】特開2002-200694(JP,A)
【文献】特表2014-531341(JP,A)
【文献】特表2011-525863(JP,A)
【文献】特開平07-156339(JP,A)
【文献】特開平11-245327(JP,A)
【文献】特開2007-021880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 9/00
B32B 27/32
C23C 16/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリアフィルム(38)を備える、ウェブ又はシートの形態の液体食品の包装のためのラミネート包装材料(30)であって、
前記バリアフィルム(38)は、基層(34)、及びアモルファスダイアモンドライクカーボン(DLC)の第1コーティング(35a)を備え、
前記ラミネート包装材料は、紙若しくは板紙又は他のセルロース系材料のバルク層(31)と、前記ラミネート包装材料から作製された包装容器の最外面を提供する液密性の熱封止可能な第1最外ポリマー層(32)と、をさらに備え、その反対側である内側の前記バリアフィルムの第2面に、パックされる製品と接触することになる前記ラミネート包装材料から作製された包装容器の最内面を提供する液密性の熱封止可能な第2最内ポリマー層(33)をさらに備え、前記バリアフィルム(38)は、前記アモルファスDLCの第1コーティング(35a)と直接接触している結合層(36)により前記バルク層の第1面に結合され、前記液密性の熱封止可能な第1最外ポリマー層(32)が、その反対側である外側の前記バルク層の第2面に適用されている一方、前記液密性の熱封止可能な第2最内ポリマー層(33)は、前記バルク層(31)に結合されている面と反対側の前記バリアフィルム(38)の内側面に適用されており、前記基層(34)は、ポリエステル若しくはポリアミド若しくはそのブレンドのうち任意のものをベースとしたフィルムから成る群から選択されるポリマーフィルムであるか、又は、前記ポリマー若しくはそのブレンドのうち任意のものを含む表面層を有する多層フィルムであり、前記バリアフィルムの前記基層(34)は、バリアコーティング(35a)でコートされた側と反対側の他面にアモルファスダイアモンドライクカーボン(DLC)の接着促進プライマーコーティング(35b)を有し、前記バリアフィルムは、DLCの第2コーティングである前記接着促進プライマーコーティングにより、前記液密性の熱封止可能な第2最内ポリマー層(33)に結合されている、ラミネート包装材料(30)。
【請求項2】
前記結合層(36)は、熱可塑性ポリマーの結合層である、請求項
1に記載のラミネート包装材料(30)。
【請求項3】
前記ラミネート包装材料の前記バリアフィルムは、介在する熱可塑性結合層によりさらなる同一又は類似の第2バリアフィルム(11)にラミネート及び結合されている第1バリアフィルム(11)を備える二重バリアフィルムである、請求項1
又は2に記載のラミネート包装材料(30)。
【請求項4】
前記基層(34)は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、一軸延伸若しくは二軸延伸PET(OPET、BOPET)、非延伸若しくは一軸延伸若しくは二軸延伸ポリエチレンフラノレート(PEF)、延伸若しくは非延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタネート(PEN)など)、及びポリアミド(非延伸若しくは延伸ポリアミド(PA、OPA、BOPA)など)、並びに前記ポリマーの任意のブレンドのうち任意のものをベースとしたフィルムから成る群から選択されるポリマーフィルムであるか、又は、前記ポリマー若しくはそのブレンドのうち任意のものを含む表面層を有する多層フィルムである、請求項1~
3のいずれか一項に記載のラミネート包装材料(30)。
【請求項5】
前記第1アモルファスダイアモンドライクコーティング(35a)は、厚さが2~50nm
、又は2~40nm、
、又は5~40nm、
、又は5~35nm、
、又は10~35nmとなるように適用されている、請求項1~
4のいずれか一項に記載のラミネート包装材料(30)。
【請求項6】
接着促進プライマーコーティング(35b)として働く第2アモルファスダイアモンドライクカーボンコーティングが、厚さが2~50nm
、又は2~10nm、
又は2~5nmとなるように適用されている、請求項1~
5のいずれか一項に記載のラミネート包装材料(30)。
【請求項7】
前記第1アモルファスダイアモンドライクコーティング及び前記第2アモルファスダイアモンドライクコーティングはいずれも、それぞれ厚さが2~10nm、
又は2~8nm、
又は2~5nmとなるように適用されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のラミネート包装材料(30)。
【請求項8】
前記基層(34)は、延伸PETフィルムである、請求項1~
7のいずれか一項に記載のラミネート包装材料(30)。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載のラミネート包装材料を備える包装容器(50a;50b;50c;50d)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファスダイアモンドライクカーボンの気相蒸着バリアコーティングを有するバリアフィルムを備えるラミネート包装材料、特に流動食の包装を想定したもの、及び、当該ラミネート包装材料を製造するための方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、ラミネート包装材料を備える包装容器又はその全体がラミネート包装材料から作製された包装容器に関する。特に、本発明は、ラミネート包装材料を備える、流動食の包装を想定した包装容器に関する。
【背景技術】
【0003】
流動食用の単回使用の使い捨て型の包装容器は、板紙又はカートンベースの包装ラミネートから生産されることが多い。このような一般的に浮かぶ包装容器の一つは、商標Tetra Brik Aseptic(登録商標)を付して市場に出されており、長期間の大気保存用に販売されるミルクやフルーツジュースなどの流動食の無菌包装のために広く採用されている。この既知の包装容器における包装材料は、通常、紙又は板紙のバルク又はコア層及び熱可塑性プラスチックの外側液密層を備えるラミネートである。例えば無菌包装及びミルクやフルーツジュースの包装を行う目的で、包装容器を気密性、特に酸素気密性とするために、これらの包装容器におけるラミネートは、通常、少なくとも一つの追加層、最も一般的にはアルミニウム箔を備える。
【0004】
ラミネートの内側、すなわちラミネートから生産される容器に充填される食品内容物に面する側には、アルミニウム箔に適用される最内層が存在し、当該最内の内側層は、接着性ポリマー及び/又はポリオレフィンなどの熱封止可能な熱可塑性ポリマーを備える一つ又は複数の部分層から成るものであってよい。バルク層の外側にも、熱封止可能な最外ポリマー層が存在する。
【0005】
包装容器は、一般に、ウェブ又は既成の包装材料ブランクから充填封止パッケージを形成する種類の、現代の高速包装機により生産される。こうして、包装容器は、内側の熱封止可能な最内熱可塑性ポリマー層を一つに溶接することにより、ウェブの長手方向の両縁を重畳接合部で互いに一体化させることで、ラミネート包装材料のウェブをチューブ状に変形させることにより生産され得る。このチューブは、予定された液体食品で充填された後、互いに所定の距離をおいてチューブ中の内容物の高さより下でチューブの横方向の封止を繰り返すことにより、個々のパッケージに分割される。各パッケージは、横方向の封止に沿って切開することによりチューブから分離され、包装材料において準備された折り目線に沿って折り曲げ成形することにより、所望の幾何学的構成、通常は平行六面体又は直方体の構成とされる。
【0006】
この連続してチューブ成形、充填・封止、包装を行う方法に係るコンセプトの主な利点は、ウェブがチューブ成形の直前に連続的に殺菌され得るので、無菌包装の方法、すなわち、充填される液体内容物及び包装材料そのものにおいて細菌が減少する方法であって、充填されたパッケージが、充填された製品中で微生物が成長するリスクなしに室温でも長時間保存可能となるように、充填された包装容器が清潔な条件下で生産される方法が可能になるという点である。Tetra Brik(登録商標)タイプの包装法の別の重要な利点は、上述のように、費用効果に相当影響がある連続的な高速包装が可能になるという点である。
【0007】
敏感な流動食、例えばミルクやジュース用の包装容器も、本発明のラミネート包装材料のシート状ブランク又は既製のブランクから生産することができる。まずブランクを組み上げて開放管状の容器カプセルを形成し、当該容器カプセルの一方の開放端が一体の端部パネルの折り曲げ及び熱封止によって閉じられることにより、平坦に折り曲げられる包装ラミネートの管状ブランクからパッケージが生産される。このように閉じられた容器カプセルに、当該容器カプセルの開放端を通して問題の食品、例えばジュースが充填され、その後、対応する一体の端部パネルに対してさらなる折り曲げ及び熱封止を行うことにより、容器カプセルが閉じられる。シート状及び管状のブランクから生産される包装容器の一例は、従来のいわゆる切妻頂部パッケージである。この種類のパッケージであってプラスチックから作製された成形頂部及び/又はスクリューキャップを有するものもある。
【0008】
包装ラミネートにおけるアルミニウム箔の層は、大部分の高分子気体バリア材料よりも格段に優れた気体バリア特性を提供する。流動食用の無菌包装のための従来のアルミニウム箔ベースの包装ラミネートは、その性能レベルにおいて、今日の市場で入手可能なものの中では依然として最も費用効率の高い包装材料である。
【0009】
箔ベースの材料と張り合うような他の任意の材料は、原料に関して費用効率が高く、食品保存特性が同程度であり、包装ラミネートの完成品に変形させるにあたっての複雑さが同じくらい低いものでなければならない。
【0010】
流動食用のカートン包装のための非アルミニウム箔材料を開発しようとする努力の中では、複数のバリア機能性、すなわち酸素及び気体バリア製のみならず水蒸気、化学物質、又は芳香物質に対するバリア特性を有し、従来のラミネート包装材料のアルミニウム箔バリア材料を単純に置き換えることができ、ラミネーション及び製造のための従来のアルミニウム箔プロセスに適合され得る、予め製造されたフィルム又はシートを開発することに一般的なインセンティブが存在する。
【0011】
しかしながら、これは困難である。その理由は、大部分の代替的なバリアフィルムでは、ラミネート包装材料のバリア特性又は機械的強度特性が不十分であったり、包装材料の全費用が高すぎたり、上記の両側面によりうまく機能しなかったりするためである。特に、バリア特性を提供するために二つ以上の連続層を有するフィルムは、経済的に見て、包装ラミネートに利用するにはあまりにも高価となってしまう。
【0012】
十分なバリア特性を提供するため又はバリアフィルムの機械的性質を向上させるために、フィルムのメインバリア層又はメインバリアコーティングをさらなる層で補完することが必要な場合、このような多層バリアフィルム及び包装材料を製造するのは遥かに高額となるので、全体として、包装材料構造体に追加で費用が掛かることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、箔ラミネートされていない包装材料における上述の問題を解消又は少なくとも緩和することである。
【0014】
液体カートンラミネート包装材料におけるニーズを満たす一体性及びバリア特性を有するラミネート包装材料を提供することもまた、本発明の一般的な目的である。
【0015】
アルミニウム箔を含まないが、良好な気体バリア特性及びその他のバリア特性を有し、それほど高くないコストで長期の無菌包装に適した、酸素に敏感な製品のための包装材料(例えば液体、半固体、又は湿った食品のためのラミネート包装材料)を提供することもまた、本発明のさらなる一般的な目的である。
【0016】
特に具体的な目的は、アルミニウム箔バリア材料に対して、費用効率が高く、箔を使わない紙又は板紙ベースのラミネート包装材料であって、長期の無菌食品保存のためのパッケージを製造する目的で良好な気体バリア特性及びラミネート材料内での良好な一体性を有するラミネート包装材料を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、大気条件下で栄養の品質を維持しながら流動食の長期保存のための無菌包装容器を製造する目的で、費用効率の高い、箔を使わない、紙又は板紙ベースの熱封止可能な包装ラミネートであって、良好な気体バリア特性及び良好な層間の内部接着性を有する包装ラミネートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらの目的は、添付の特許請求の範囲において規定されるようなラミネート包装材料、包装容器、及び該包装材料を製造する方法により、本発明に従って実現される。
【0019】
本発明に関連して「長期の保存(long-term storage)」との語が用いられる場合、包装容器が、少なくとも1か月間又は2か月間、例えば少なくとも3か月間、好ましくはさらに長期間、例えば6か月間、例えば12か月間又はより長期間、周囲条件において、パックされた食品の品質、すなわち栄養価、衛生上の安全性、及び味を保つことができなければならないことを意味するものである。
【0020】
「パッケージの一体性(package integrity)」との語は、パッケージの耐久性、すなわち包装容器の漏出又は破損に対する耐性を広く意味するものである。この特性に対する貢献の主なものは、包装ラミネート内で、ラミネート包装材料の隣接する層間に良好な内部接着性があることである。別の貢献は、材料層内のピンホール、断裂などの欠陥に対する材料の耐性に起因するものであり、さらに別の貢献は、包装容器の成形時に材料が一つに封着されることで形成される封止接合部の強度に起因するものである。このため、ラミネート包装材料そのものに関しては、一体性特性は、各ラミネート層とその隣接層との接着性及び個々の材料層の性質が主に中心となる。
【0021】
本発明の第1態様によると、一般的な目的は、液体食品の包装のためのラミネート包装材料であって、バリアフィルムを備え、当該バリアフィルムは、ウェブ又はシートの形態の基層、及びアモルファスダイアモンドライクカーボン(DLC)コーティングである第1コーティングを備え、当該ラミネート包装材料は、バリアフィルムの第1面に液密性の熱封止可能な第1最外ポリマー層を、反対側(内側)のバリアフィルムの第2面に液密性の熱封止可能な第2最内ポリマー層をさらに備える、ラミネート包装材料により達成される。第1最外ポリマー層は、ラミネート包装材料から作製された包装容器の最外面を形成し、第2最内ポリマー層は、パックされる製品と接触することになる、包装材料から作製された包装容器の最内面を形成する。
【0022】
アモルファスDLCのバリアコーティングは、気相蒸着により基層に適用されるので、基層の表面と連続的である。一実施形態によると、基層は、ポリマーフィルム基材である。別の実施形態によると、液密性の熱封止可能な最外及び最内ポリマー層は、ポリオレフィン層である。
【0023】
ラミネート包装材料の一実施形態によると、液密性の熱封止可能な第1最外ポリマー層は、バリアフィルムに適用されて、バリアフィルムの第1表面と直接接触する、すなわちバリアフィルムの第1表面に連続的なものとなる。別の実施形態によると、液密性の熱封止可能な第2最内ポリマー層は、バリアフィルムに適用されて、バリアフィルムの第2表面と直接接触する、すなわちバリアフィルムの第2表面と連続的になる。
【0024】
さらなる実施形態によると、ラミネート包装材料は、紙若しくは板紙又は他のセルロース系材料のバルク層をさらに備える。
【0025】
またさらなる実施形態では、包装材料は、紙若しくは板紙又は他のセルロース系材料のバルク層をさらに備え、バリアフィルムは、結合層によりバルク層の第1面に結合され、液密性の熱封止可能な第1最外ポリマー層は、バルク層の反対側の第2面(外側面)に適用され、液密性の熱封止可能な第2最内ポリマー層は、バリアフィルムの内側面、すなわちバリアフィルムのうちバルク層に結合された側と反対側の面に適用される。
【0026】
ラミネート包装材料の一実施形態によると、結合層は、バリアフィルムの第1DLCコーティングの表面とバルク層の第1面の表面とを一つに結合させる。さらなる実施形態によると、結合層は、接着性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを備える。特別な実施形態によると、結合層は、特に大部分がエチレンモノマーユニットであるポリエチレン系ポリオレフィンコポリマー又はブレンドといったポリオレフィンである。好ましくは、バルク層のウェブとフィルム層のウェブとの間に結合性ポリマー層の溶融押出ラミネートを行うと同時に、ラミネーションローラーニップを通して前進させながらこれら3層を一つに押し付けて、積層構造を形成することにより、すなわちバリアフィルムに対してバルク層のいわゆる押出ラミネートを行うことにより、結合層は、バリアフィルムにバルク層を結合させる。特別な実施形態によると、結合層は、第1DLCコーティングであるバリアフィルムの第1表面と直接接触している、すなわち当該第1表面と連続的である。
【0027】
一実施形態によると、第1DLCコーティングは、バリアコーティングである。
【0028】
ラミネート包装材料のさらなる実施形態によると、バリアフィルムの基層は、バリアコーティングでコートされた側と反対側の他面に接着促進プライマーコーティングを有し、バリアフィルムは、接着促進プライマーコーティングにより、液密性の熱封止可能な第2最内ポリオレフィン層に結合される。この接着促進プライマーコーティングの目的は、隣接する押出コートされたポリマー、例えばポリオレフィン系ポリマー層及びその接触面に対する接着強度を提供し又は向上させることである。
【0029】
ラミネート包装材料の一実施形態では、接着促進プライマーコーティングは、アミノシラン及びポリエチレンイミンから成る群から選択される化合物を含む組成物である。ラミネート包装材料のさらなる実施形態では、接着促進プライマーコーティングは、アモルファスダイアモンドライクコーティング(DLC)の第2コーティングである。このため、この実施形態によると、ラミネート材料は、積層構造に含ませる際に硬化又は乾燥を必要とするに任意の従来の接着剤又はプライマーを用いることなく構築され得る。
【0030】
さらなる実施形態では、第1DLCコーティングも接着促進コーティングである。この場合、バリアフィルムは、ポリマーフィルムである基層から構築され、当該ポリマーフィルムは、ポリアミドやポリエチレンビニルアルコール(EVOH)ポリエステル、PET、シクロオレフィンコポリマーなどのポリマー材料における固有のバリア特性を有する。バリアフィルムは、隣接する熱可塑性ポリマー、例えばポリオレフィン(好ましくはエチレン系ホモポリマー若しくはコポリマー又はブレンドなど)などに対する接着性を良好なものとすることを主な目的として、各面において、第1DLC接着促進コーティング及び第2DLC接着促進コーティングでコートされる。バリア効果及び接着効果の組合せがDLCコーティングの各々により容易に実現されるように、厚さが薄い場合にも、DLCコーティングにより低いバリア特性が提供され得る。しかしながら、さらなるバリア特性が必要でない場合には、押出ラミネーションにおいて溶融押出ポリマー層に対して優れた接着剤性質を有することのみをもって各DLCコーティングを採用することも考えられる。
【0031】
別の実施形態では、ラミネート包装材料のバリアフィルムは、介在する熱可塑性結合層(ポリエチレン層など、例えば低密度ポリエチレン(LDPE))によりさらなる同一又は類似の第2バリアフィルムにラミネート及び結合されている第1バリアフィルムを備える二重バリアフィルムである。各バリアコーティングは、介在する熱可塑性結合層を間に挟んで、互いに向かい合い得る。あるいは、各バリアコーティングは、接着促進プライマーコーティングが介在する熱可塑性結合層により互いに結合されるように、互いに反対側を向いていてもよい。さらなる代替例は、両バリアコーティングが同じ方向を向くように二つのフィルムを互いに積み重ねることである。二重バリアフィルムは、バルク層に対してさらにラミネートされてもよい。
【0032】
さらなる実施形態では、第1バリアフィルムが、介在する熱可塑性結合層によりさらなる同一又は類似の第2バリアフィルムにラミネート及び結合され、ラミネート包装材料は、第1バリアフィルムのラミネートされていない反対側に、液密性の熱封止可能な第1最外ポリマー層をさらに備え、第2バリアフィルムのラミネートされていない反対側に、液密性の熱封止可能な第2最内ポリマー層をさらに備える。本発明のさらなるラミネート包装材料は、その間で介在する熱可塑性結合層により互いにラミネートされた少なくとも二つの、多ければ複数のバリアフィルムから成るものであってよい。ラミネート包装材料の一実施形態によると、基層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、一軸延伸若しくは二軸延伸PET(OPET、BOPET)、非延伸若しくは一軸延伸若しくは二軸延伸ポリエチレンフラノレート(PEF)、延伸若しくは非延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタネート(PEN)、非延伸ポリアミド、延伸ポリアミド(PA、OPA、BOPA)、ポリエチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリオレフィン(ポリプロピレン、一軸延伸若しくは二軸延伸ポリプロピレン(PP、OPP、BOPP)、ポリエチレン(延伸若しくは非延伸高密度ポリエチレン(HDPE)、鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)など)など)、及びシクロオレフィンコポリマー(COC)、並びに上記ポリマーの任意のブレンドのうち任意のものをベースとしたフィルムから成る群から選択されるポリマーフィルムであるか、又は、上記ポリマー若しくはそのブレンドのうち任意のものを含む表面層を有する多層フィルムである。
【0033】
ラミネート包装材料のより具体的な実施形態によると、ポリマーフィルム基材は、ポリエステル若しくはポリアミド及び上記ポリマーの任意のブレンドをベースとしたフィルムから成る群から選択されるフィルムであるか、又は、上記ポリマー若しくはそのブレンドのうち任意のものを含む表面層を有する多層フィルムである。ラミネート包装材料のより具体的な別の実施形態によると、ポリマーフィルム基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、一軸延伸若しくは二軸延伸PET(OPET、BOPET)、非延伸若しくは一軸延伸若しくは二軸延伸ポリエチレンフラノレート(PEF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタネート(PEN)、非延伸ポリアミド、延伸ポリアミド(PA、OPA、BOPA)、及び上記ポリマーの任意のブレンドのうち任意のものをベースとしたフィルムから成る群から選択されるフィルム、又は、上記ポリマー若しくはそのブレンドのうち任意のものを含む表面層を有する多層フィルムである。
【0034】
適切なポリアミドは、ポリアミド-6やポリアミド-6,6などの脂肪族ポリアミド、ナイロン-MXD6やSelarポリアミドグレードなどの半芳香族ポリアミド、脂肪族と半芳香族ポリアミドとのブレンドなどである。
【0035】
ラミネート包装材料の別の実施形態によると、第1アモルファスダイアモンドライクカーボンコーティング及び/又は第2アモルファスダイアモンドライクカーボンコーティングは、厚さが2~50nm、例えば5~40nm、例えば5~35nm、例えば10~350nm、例えば20~30nmとなるように適用される。
【0036】
別の実施形態によると、接着促進プライマーコーティングとして働く第1アモルファスダイアモンドライクカーボンコーティング及び/又は第2アモルファスダイアモンドライクカーボンコーティングは、厚さが2~50nm、例えば2~10nm、例えば2~5nmとなるように適用される。
【0037】
具体的な一実施形態によると、第1アモルファスダイアモンドライクカーボンコーティング及び第2アモルファスダイアモンドライクカーボンコーティングの両方が、厚さが2~10nm、例えば2~8nm、例えば2~5nmとなるように適用される。驚くべきことに、最終的に充填され、成形され、封止されたパッケージへの酸素透過性の最終的な効果は、このような二つの薄いDLCコーティングが相互作用する場合、同じ方法で同じ構成になるように形成されたラミネート包装材料において一つの厚いDLCコーティングが別の薄いコーティングと相互作用する場合とほとんど同じくらい良好であることがわかった。
【0038】
ラミネート包装材料の具体的な実施形態によると、ポリマーフィルム基材は、延伸PETフィルムである。
【0039】
ラミネート包装材料のさらなる具体的な実施形態によると、ポリマーフィルム基材の厚さは、12μm以下、例えば8~12μm、例えば10~12μmである。
【0040】
これより薄いポリマーフィルム基材も商業上は存在し、本発明の範囲内で実施可能であるが、現在のところ8μm未満になると現実的ではなく、厚さが4μm未満のフィルムは、包装用の産業用コーティング及びラミネーションプロセスにおけるウェブの取り扱いの観点から困難であろう。一方、12~15μmよりも厚いフィルムも当然ながら実施可能であるが、強度及び強靭性が高くなりすぎて開封器及びミシン目の機能性に適さないので、本発明のラミネート包装材料としてはあまり興味深いものではない。一実施形態によると、ポリマーフィルム基材は、12μm以下とすべきであり、例えば10~12μm、例えば約12μmの延伸PETフィルムとすべきである。フィルム基材の厚さが大きくなると、材料の強度が大きくなるのでラミネート包装材料の引裂特性及び切断特性が損なわれる。
【0041】
包装材料は、気相蒸着アモルファスダイアモンドライクカーボンのバリアコーティングを有するバリアフィルムを備え、多くの面で良好な性質を示す。例えば、低い酸素透過率(OTR)、低い水蒸気透過率(WVTR)、及び良好な芳香・香気バリア特性を有する。また、ラミネーションによりラミネート包装材料とし、このようなラミネート材料の折り曲げ成形及び封止操作によりパッケージとする、といったその後の取扱い操作において、良好な機械的性質を有する。
【0042】
特に、本発明に係るラミネート包装材料は、当該ラミネート構成内の隣接する層間に優れた接着性を提供することにより、また、ラミネート材料層において相対湿度が高いといった厳しい条件下で良質のバリアコーティングを提供することにより、優れた一体性を有することがわかった。特に、液体及び湿った食品の包装のためには、湿潤包装条件下であってもラミネート包装材料内の層間接着性を維持するということが重要である。様々な種類の気相蒸着バリアコーティングのうち、プラズマ増強化学気相蒸着(PECVD)などのプラズマコーティング技術により適用された、このDLCタイプの気相蒸着バリアコーティングが優れたラミネート一体性を有することが確認された。その他の気相蒸着法では、これほど良好なバリアコーティングは形成されず、二つの連続コーティングステップが必要となるか、若しくはコーティングの密度及びバリア性が十分に良好なものとならないか、又はその両方となる。大気プラズマコーティング法は、例えば、低密度かつ低バリア性のコーティングを形成するためのものとして知られている。一方、その他の種類の気相蒸着化学種、例えばSiOxやAlOxコーティングによるバリアコーティングは、湿潤条件及び湿った条件下での同種のラミネート材料において、良好な一体性を示さない。湿潤条件下であってもDLCコーティングが有機ポリマー(特にポリオレフィンなど)に対してこの異常な接着適合性を示すことは、真に驚くべきことであり、このようなバリアフィルムを液体カートンラミネート包装に特に適したものとする。
【0043】
本発明の第2態様によると、液体、半固体、又は湿った食品の包装を想定した、本発明のラミネート包装材料を備える包装容器が提供される。一実施形態によると、包装容器は、本発明のラミネート包装材料から製造される。さらなる実施形態によると、包装容器は、その全体がラミネート包装材料から作製される。
【0044】
さらなる実施形態によると、包装容器は、ラミネート包装材料から形成されてよく、当該ラミネート包装材料は、部分的に封止され、液体又は半流動食で充填され、次いで包装材料を当該包装材料自体に封着することにより(場合によってはプラスチック開口部又はパッケージの頂部と組み合わせて)封止される。
【0045】
長い時間をかけて、気体バリア性の基準並びに様々な機械的性質及びその他の物理的性質の必要性を満たすラミネート包装材料を設計するにあたり、様々な気相蒸着バリアコーティングが検討された。
【0046】
気相蒸着バリア層は、フィルム材料の基材表面への物理気相蒸着(PVD)又は化学気相蒸着(CVD)により適用され得る。基材材料自体も、いくつかの特性により貢献し得るが、何をおいても、気相蒸着コーティングを受容するとともに気相蒸着プロセスにおいて効率的に機能するのに適した適切な表面特性を有するものとすべきである。
【0047】
薄い気相蒸着層の厚さは、通常、僅かナノメートルレベル、すなわち、ナノメートルの大きさのオーダー、例えば1~500nm(50~5000Å)、好ましくは1~200nm、より好ましくは1~100nm、最も好ましくは1~50nmである。
【0048】
いくつかのバリア特性、特に水蒸気バリア特性を有することの多い一般的な種類の気相蒸着コーティングの一つは、いわゆる金属化層、例えば金属アルミニウム物理気相蒸着(PVD)コーティングである。
【0049】
このような気相蒸着層は、実質的に金属アルミニウムから成り、厚さが5~50nmであってよく、これは、包装用の従来の厚さ、すなわち6.3μmのアルミニウム箔中に存在する金属アルミニウム材料の1%未満に対応する。気相蒸着金属コーティングは、要する金属材料が著しく少量となるが、よくても低レベルの酸素バリア特性を提供するのみであり、最終的なラミネート材料に十分なバリア特性を付与するためには、さらなる気体バリア材料と組み合わせる必要がある。一方で、さらなる気体バリア層を補完し得るが、水蒸気バリア特性は有さず、むしろ水分に対して敏感である。
【0050】
気相蒸着コーティングの別の例は、アルミニウム酸化物(AlOx)及びシリコン酸化物(SiOx)コーティングである。一般に、このようなPVD-コーティングは、より脆く、ラミネーションにより包装材料へ組み込むには適していない。例外として、金属化層は、PVDで形成されたにもかかわらず、ラミネーション材料に適した機械的性質を有するものであるが、一般的に酸素ガスに対するバリア性はより低いものとなる。
【0051】
ラミネート包装材料のために研究されてきた他のコーティングが、プラズマ増強化学気相蒸着法(PECVD)によって適用されてもよい。PECVDでは、程度の差はあるが酸化雰囲気下において、化合物の蒸気が基材に蒸着される。例えば、シリコン酸化物コーティング(SiOx)がPECVDプロセスにより適用されてもよく、これにより、特定コーティング条件及び気体組成の下で非常に良好なバリア特性を得ることができる。残念ながら、SiOxコーティングは、溶融押出ラミネーションによりポリオレフィン及び他の隣接するポリマー層にラミネートされて、当該ラミネート材料が湿潤又は非常に湿った包装条件に曝された場合、接着特性が不十分である。液体カートン包装を想定した種類の包装ラミネートにおいて十分な接着性を実現しこれを維持するためには、特別で高価な接着剤又は接着性ポリマーが必要とされる。
【0052】
本発明によると、気相蒸着コーティングは、プラズマ増強化学気相蒸着プロセス(PECVD)により適用されたアモルファス水素化カーボンバリア層、いわゆるダイアモンドライクカーボン(DLC)である。DLCとは、ダイアモンドの典型的な性質のうちいくつかを呈するアモルファス炭素材料の分類であると定義されます。好ましくは、例えばアセチレンやメタンなどの炭化水素ガスが、コーティングを形成するためのプラズマ中のプロセスガスとして使用される。上記で指摘したように、このようなDLCコーティングは、湿潤な試験条件下で、ラミネート包装材料において隣接するポリマー層又は接着剤層に対する良好かつ十分な接着性を提供するものであることがわかった。隣接するラミネートポリマー層、すなわちDLCバリアコーティングに接着又はコートされたポリマー層に対する、特に良好な接着適合性が、ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリエチレン系コポリマーにおいて見られた。
【0053】
このため、良好な機械的性質と、充填されるパッケージの内側又は外側へ向かう方向にこのようなラミネート材料を通って移動する様々な物質に対する良好なバリア特性とをもって貢献することにより、また、ラミネートにおいて隣接するポリマー層に対する優れた接着性が得られることにより、DLCバリアコーティングは、当該バリアコーティングを有するバリアフィルムを備える包装ラミネートから作製された液体が充填された包装容器に対して、良好なバリア性及び一体性を提供する。従って、DLCバリアコーティングを有するポリエステル又はポリアミドの基層によるバリアフィルムによって、長期間の大気保存(例えば最大2~6か月間、例えば最大12か月間など)のための、酸素バリア特性及び水蒸気バリア特性を有する包装ラミネート及び包装容器を提供することができる。加えて、DLCバリアコーティングにより、パックされた食品中に存在する様々な芳香物質及び風味物質、隣接する材料層に存在するかもしれない低分子物質、香気、並びに酸素以外の気体に対する良好なバリア特性が提供される。また、DLCバリアコーティングは、ポリマーフィルム基材にコートされると、ラミネートされてカートンベースの包装ラミネートとされた場合に、良好な機械的性質を呈し、ラミネーション並びにその後の包装ラミネートの折り曲げ成形、封止、及び充填されたパッケージへの変形に耐える。ポリエステル及びポリアミドフィルムは、気相蒸着コーティングプロセス中、DLCコーティング層の開始及び成長に優れた基材表面を提供する。コーティングプロセスにおける有益な条件では、コーティング品質が向上するので、コーティング層を薄く形成することができ、それでも所望のバリア特性、接着特性、及び密着特性を実現することができる。
【0054】
DLCバリアコーティングでコートされた二軸延伸PETフィルムのクラック開始歪み(crack-onset strain;COS)は、2%を超えるものであり得る。これは通常コーティングの酸素バリア特性に関し得るもので、フィルムに2%を超える歪みが生じるまでは劣化が始まらない。
【0055】
DLCバリアコーティングは、米国特許第7,806,981号明細書に記載されたタイプのものと同様の電力に容量結合されたマグネトロン電極プラズマや欧州特許第0575299号明細書に記載されたタイプのものと同様の炭素前駆体を使用した誘導結合式の無線周波数プラズマ増強化学気相蒸着といったプラズマアシストコーティング技術により、基材に堆積され得る。
【0056】
一実施形態によると、ポリマーフィルム基材は、厚さが12μm以下、例えば8~12μmのBOPETフィルムである。延伸フィルムは、通常、フィルムを貫通する引裂又は切断に対する強度及び強靭性が向上しており、ラミネート包装材料において含まれる場合には、このようなフィルムは、パッケージの開封を困難なものとし得る。できる限り薄いポリマーフィルム基材を選択することにより、バリア材料がより脆く、ポリマー材料が全体として溶融押出コーティング及び溶融押出ラミネーションにより形成されるラミネート包装材料と比較して、その後ラミネートされる包装材料の開封容易性が損なわれない。PETフィルムは、良好な機械的性質を有する堅固かつ費用効果の高いフィルムであるので、高温に対する幾分の固有の耐性並びに化学物質及び水分に対する相対的な耐性のために、DLC気相蒸着コーティングに特に適した物質である。PETフィルムの表面はまた、高い滑らかさ及び気相蒸着DLCコーティングに対する良好な親和性を有し、逆に気相蒸着DLCコーティングもPETフィルムに対する親和性を有する。
【0057】
さらなる実施形態によると、ポリマーフィルム基材は、フィルムをラミネートしてラミネート包装材料とする際に、バリアフィルムの両側で隣接する層に対するより良好な結合性を提供するために、BOPETフィルムの他面に適用された接着プライマーコーティングを有するBOPETフィルムである。
【0058】
さらに別の実施形態によると、ポリマーフィルム基材は、フィルムをラミネートしてラミネート包装材料とする際に、バリアフィルムの両側で隣接する層に対するより良好な結合性を提供するために、BOPETフィルム層の他面に適用された追加のDLCコーティングを有するBOPETフィルムである。
【0059】
DLCコーティングは、リサイクルされる内容物中に、自然及び我々の周囲環境には元来存在しない要素又は材料を含む残留物を残さず、容易にリサイクル可能であるという利点をさらに有する。
【0060】
本発明のラミネート包装材料における液密性の熱封止可能な最外層及び最内層に適した熱可塑性ポリマーは、ポリエチレンやポリプロピレンホモポリマー又はコポリマーなどのポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、より好ましくは、低密度ポリエチレン(LDPE)、鎖状LDPE(LLDPE)、シングルサイト触媒メタロセンポリエチレン(m-LLDPE)、及びこれらのブレンド又はコポリマーから成る群から選択されるポリエチレンである。好ましい実施形態によると、最適なラミネーション特性及び熱封止特性のために、液密性の熱封止可能な最外層はLDPEであり、液密性の熱封止可能な最内層は、m-LLDPEとLDPEとのブレンド組成物である。
【0061】
最外層及び最内層に関して列挙されたものと同じ熱可塑性ポリオレフィン系材料、特にポリエチレンは、ラミネート材料内部の、すなわち紙又は板紙などのバルク層又はコア層とバリアフィルムとの間の結合層にも適している。
【0062】
代替的な実施形態によると、ラミネート材料内部の、すなわち熱封止可能な外側層とバリアコート若しくはプライマーコートされた基層との間の結合層に適しているもの、又は、単層若しくは多層のこのような結合ラミネート層においてバリアフィルムをバルク層に結合するのに適しているものとしては、LDPE若しくはLLDPEコポリマー、カルボキシル基やグリシジル基など(例えばアクリル(メタクリル)酸モノマーや無水マレイン酸(MAH)モノマーなど)のモノマーユニットを含む官能基を有するグラフトコポリマー(すなわちエチレンアクリル酸コポリマー(EAA)やエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)など)、エチレン-グリシジルアクリレート(メタクリレート)コポリマー(例えば(M)A)、又はMAH-グラフトポリエチレン(MAH-g-PE)を主にベースとする、いわゆる接着性熱可塑性ポリマー(改質ポリオレフィンなど)もある。このような改質ポリマー又は接着性ポリマーの別の例は、いわゆるアイオノマー又はアイオノマーポリマーである。好ましくは、改質ポリオレフィンは、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)又はエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)である。
【0063】
対応する改質ポリプロピレン系の熱可塑性接着剤又は結合層も、包装容器の完成品の必要条件によっては有用な場合がある。
【0064】
このような接着性ポリマー層又は繋ぎ層は、通常、共押出コーティング操作において、各外側層又はさらなるバルク-バリア結合層とともに適用される。
【0065】
しかしながら、通常、上述の接着性ポリマーの使用は、本発明のDLCバリアコーティングに対する結合に必要とされるべきではない。隣接する各層としてのポリオレフィン層に対する十分かつ適正な接着性は、少なくとも200N/m、例えば少なくとも300N/mのレベルであると結論付けられた。接着性の測定は、LDPEラミネーションから24時間後に、180度剥離力試験装置(Telemetric Instrument AB)を用いて室温で実行される。DLC/LDPEの界面で剥離が実行され、剥離アームはバリアフィルムである。必要に応じて、湿潤条件下、すなわち、ラミネート包装材料が、ラミネート材料から作製された包装容器に保存された液体からの、及び/又は湿潤環境又は非常に湿った環境での保存による、材料層を通って移動する水分で飽和した条件下における接着性を評価するために、剥離中に蒸留水の小滴が剥離界面に加えられる。与えられる接着性の値は、N/m単位で与えられ、6回の測定の平均である。
【0066】
200N/mを超える乾式接着により、通常のパッケージ製造条件下では、例えばラミネート材料を曲げて折り曲げ成形する際には各層が剥がれないようになる。これと同じレベルの湿式接着により、充填及びパッケージ成形の後、輸送、流通、及び保存中に、包装ラミネートの各層が剥がれないようになる。内部結合ポリマー層は、一般的な技術及び機械、例えば、アルミニウム箔のラミネーション用に知られているもの、特に溶融ポリマーからDLCバリアコーティング上へのポリマー層の高温ラミネーション(押出)を使用することにより、DLCバリア層がコートされたポリマーフィルム基材に直接コートされ得る。また、予め作製されたポリマーフィルムを使用して、当該ポリマーフィルムを局所的に溶融させることにより(例えば高温のシリンダー又は加熱されたローラーで熱を加えることにより)、バリアコートされたキャリアフィルムに直接結合させることが可能である。上記より、DLCバリアフィルムは、ラミネーション及びラミネート包装材料への転換を行う方法におけるアルミニウム箔バリアと同様の方法で、すなわち押出ラミネーション及び押出コーティングにより、取り扱うことができることは明らかである。ラミネーション装置及びラミネーション方法は、例えば、従来既知のプラズマコートされた材料で必要とされ得るような具体的な接着性ポリマー又はバインダー/繋ぎ層を追加するといった修正を必要としない。加えて、コートされたDLCバリア層を含むこの新規なバリアフィルムは、最終的な食品パッケージにおけるバリア特性に悪影響を及ぼすことなく、アルミニウム箔と同じくらい薄いものとして形成され得る。
【0067】
DLCバリアコーティング面を隣接する層、例えばポリエチレン(LDPEなど)層にラミネートする際には、バリアフィルムによる貢献する酸素バリア特性が2~3倍大きな値に増加することがわかった。単に本発明のDLCバリアコーティングをラミネートしてラミネート体を形成するだけでこのようにバリア性が向上することは、次のような単純なラミネート理論では説明することができない。
1/OTR=SUMi(1/OTRi)
しかしながら、本発明は、このように、各ラミネート層によるOTRへの個々の貢献を超えて全体のバリア性を向上させるものである。二つの材料間の界面が特に良好に一体化されて、これにより酸素バリア特性が向上するのは、DLCコーティングとポリオレフィン表面との間の優れた接着性に起因するものであると考えられる。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、乾燥条件及び(剥離界面に水を加えることによる)湿潤条件下で(上述のように)180°剥離試験法により測定された場合の、DLCバリアコーティング層とさらなるラミネート結合ポリマー層との間の剥離力の強さは、200N/mより大きく、例えば300N/mより大きい。200N/mを超える乾式接着により、通常の製造条件下では、例えばラミネート材料を曲げて折り曲げ成形する際には各層が剥がれないようになる。これと同じレベルの湿式接着により、充填及びパッケージ成形の後、輸送、流通、及び保存中に、包装ラミネートの各層が剥がれないようになる。
【0069】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1a】本発明の一実施形態に係る多層フィルム型のラミネート包装材料の概略断面図を示す。
【
図1b】多層フィルム型のラミネート包装材料のさらなる実施形態の概略断面図を示す。
【
図2】本発明の別の実施形態に係るバルク層を備えるラミネート包装材料の概略断面図を示す。
【
図3】本発明のさらなる実施形態に係るバルク層を備えるさらなるラミネート包装材料の概略断面図を示す。
【
図4】本発明のバリアフィルムをラミネートして、
図2及び
図3の種類の、板紙又はカートンのコア又はバルク層を有する流動食用の包装のためのラミネート包装材料とするための方法を模式的に示す。
【
図5a】本発明に係るラミネート包装材料から生産される包装容器の典型例を示す。
【
図5b】本発明に係るラミネート包装材料から生産される包装容器の典型例を示す。
【
図5c】本発明に係るラミネート包装材料から生産される包装容器の典型例を示す。
【
図5d】本発明に係るラミネート包装材料から生産される包装容器の典型例を示す。
【
図6】このような包装容器がどのようにして連続的なロール供給、成形、充填、及び封止プロセスにおいて包装ラミネートから製造されるかの原理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
〔例1〕
12μm厚の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET;三菱製のHostaphan RNK12及びRNK12-2DEF)から作製されたフィルムを、ロール・ツー・ロール式プラズマ反応器において、真空条件下のプラズマ増強化学気相蒸着(PECVD)により、様々なコーティングで蒸着コートした。本発明に沿って、ダイアモンドライクアモルファス水素化カーボンコーティング(DLC)がいくつかのフィルム試料にコートされ、その他のPECVDバリアコーティングが別の試料にコートされた。当該他のPECVDバリアコーティングは、比較例の対象であり、SiOx(xは1.5~2.2)、並びにSiOxCyコーティング及びSiOxCyNzコーティング(それぞれ(y+z)/xは1~1.5)とした。これらの他のシリコン含有バリアコーティングは、オルガノシラン前駆体気体化合物から形成された。プラズマ状の純粋なアセチレンガスから水素化アモルファスダイアモンドライクコーティングDLCを蒸着させることにより、本発明に係るフィルム試料がコートされた。
【0072】
用いられたプラズマは、40kHz周波数で送達された電力に容量結合され、フィルム-ウェブ輸送手段及び電極の組合せとして機能する回転ドラムの周面から距離を置いて配置された非平衡マグネトロン電極により磁気的に閉じ込められたものであった。ポリマーフィルム基材が、ドラムウェブ輸送手段内の冷却手段により冷却された。
【0073】
DLCコーティングは、第1例では、約15~30nmの厚さになるまで適用され、第2例では、約2~4nmの厚さになるまでしか適用されなかった。
【0074】
SiOxコーティングは、約10nmの厚さになるまでコートされた。
【0075】
次いで、このようにバリアコートされた基材フィルム試料が、液体カートン包装ラミネートにおいてアルミニウム箔に板紙を押出ラミネートするために従来使用されているラミネート結合層のLDPE材料に対応する種類の、低密度ポリエチレン(LDPE)の15g/m2厚の層で押出コートされた。
【0076】
このように押出コートされたLDPE層とバリアコートされた基材PETフィルムとの間の接着性が、上述のように、乾燥条件及び(剥離界面に蒸留水を加えることによる)湿潤条件下での180°剥離試験法により測定された。接着性が200N/mより大きいと、通常の製造条件下で、例えばラミネート材料を曲げたり折り曲げ成形したりする場合でも当該層が剥がれないようになる。これと同じレベルの湿式接着であれば、包装ラミネートの各層は、充填してパッケージ形成を行った後、輸送、流通、及び保管の間も剥がれなくなる。
【0077】
【0078】
OTRが電量センサーに基づくOxtran2-60(Mocon Inc.)装置で測定され、標準偏差は±0.5cm3/m2/日であった。
【0079】
OTRを決定するための方法は、既定の温度、所与の大気圧、及び選択された駆動力で材料を通過する単位面積及び単位時間あたりの酸素の量を特定する。
【0080】
水蒸気透過率(WVTR)測定が、38℃及び90%駆動力で、Lyssy器具(基準:相対湿度検出及びWVTR測定用の変調赤外線センサーを使用したASTM F1249-01)により実行された。この試験方法は、フィルムの水蒸気透過率(WVTR)特性の測定に特化したものである。相対湿度検出及びWVTR測定用の変調赤外線センサーを使用して、ASTM F1249-01に従って各手順が行われる。
【0081】
表1にまとめられた結果からわかるように、純粋なSiOxバリアコーティングとその上に押出コートされたLDPEとの間の乾式接着のいくつかは不十分である一方、湿潤/湿った条件下では接着が完全に劣化している。
【0082】
炭素及び窒素原子も含むより高度なSiOx化学式で実験を行うと、純粋なSiOxコーティングと比較して、乾式接着及び/又は湿式接着特性が幾分向上する様子が見られるが、湿式接着特性は不十分なまま(すなわち200N/m未満)である。
【0083】
DLCコーティングを押出コートされたLDPEに乾式接着した場合、試験されたSiOxCyNzコーティングの最良のものよりも僅かに良好である。SiOxCyNzコーティングと比較した場合のより重要で予測できない相違点は、ラミネート飲料カートン包装に対する条件のような湿潤条件又は湿った条件下では、接着が一定のまま保たれるということである。
【0084】
さらに、より驚くべきことには、DLCコーティングがより薄く形成された場合でも、厚さが僅か2nm、すなわち実際のところ顕著なバリア特性がもはや得られない場合でも、DLCコーティングの200N/mを超える値の優れた接着性が、影響を受けずに保たれる。これは、試料フィルムに対する乾燥条件及び湿潤条件の両方について当てはまる。
【0085】
当然ながら、このようなフィルムがラミネートされて板紙及び熱可塑性ポリマー材料の包装ラミネートとされる場合、フィルムの両側に優れた接着性を提供するためには、フィルムの両側にこのようなDLCコーティングをコートするのが有利である。あるいは、基材フィルムの反対側における隣接する各層への接着性は、別個に適用された三菱製の2DEF(登録商標)プライマーなどの化学プライマー組成物により固定されてもよい。DLC接着促進層は、接着層では炭素原子のみを不可欠なものとして含み、また、接着性を提供するためだけであれば非常に薄く形成することができ、バリア特性も提供するためにはより厚く形成することができるので、環境的観点及びコスト観点の両方から好ましい。任意の厚さのDLCコーティングについて、得られる接着性は、乾燥条件及び湿潤条件の両方において、少なくとも化学プライマー(三菱製の2DEF(登録商標)など)と同じくらい良好である。
【0086】
〔例2〕
表2に記載するように、例1で使用されたものと同様のBOPETフィルムの片面及び両面を同様の薄いDLCコーティングでコートした。例1と同じ方法により、23℃及び50%RHで、OTRがcc/m2/日/大気圧として測定された。次いで、15g/m2のLDPEの結合層により、また、25g/m2のLDPE及びmLLDPEのブレンドの内側層でフィルムの反対側がさらにコートされることにより、DLCコートされたフィルムがラミネートされ、外側LDPE層を有する板紙を含む包装材料構造とされた。上述のものと同じ方法により、ラミネート包装材料についてOTRが測定された。
【0087】
次いで、ラミネート包装材料を1000ml標準Tetra Brik(登録商標)Aseptic包装容器に変形させ、これに対して、23℃及び50%RHでMocon1000装置により全酸素透過の様子をさらに測定した。
【0088】
【0089】
非常に驚くべきことに、ラミネート包装材料及び当該包装材料から作製されたパッケージに対して測定を行ったところ、試験Bでのフィルムは二つの非常に薄いDLCコーティングのみでコートしたものである一方、試験Aでは、コーティングの一方はより厚く形成されて、実際のところフィルムの酸素バリア特性を提供するであろうと想定されていたものであったのだが、酸素バリア特性は同レベルであるか、むしろ試験Bのフィルムにより改善さえされることがわかった。バリアコートされたフィルムの測定では、実際は試験Aのフィルムの方が良好であったが、ラミネートされて最終的なラミネート包装材料構造体とされて、包装容器に使用されるときには、二つのフィルムはいずれも非常に良好なパフォーマンスを示し、むしろ試験Bのフィルムの方が試験Aのフィルムよりも良好なパフォーマンスであった。
【0090】
このように、上述のDLCコートされたバリアフィルムにより、高い一体性を有する包装ラミネートが提供される。液体包装で使用される場合、すなわち包装材料が湿潤条件に曝される場合でも、層間で優れた接着性が維持され、その結果、可能な限り良好なラミネート材料特性を提供するために、ラミネートの他の層を劣化から保護することができる。DLCコーティングは、良好な酸素バリア特性及び水蒸気バリア特性の両方を提供するものであるので、液体食品用のカートンパッケージラミネートにおいて使用されるものとして非常に価値のある種類のバリアコーティングである。
【0091】
さらに、添付の図に関し、
図1aには、本発明の第1実施形態のラミネート包装材料10が断面視で示されている。ラミネート包装材料10は、表面がPET又はPA、この場合は厚さが12μmの延伸PET(BOPET)フィルムであるポリマーフィルムの基層11aを有するバリアフィルム11を備え、基層は、バリアフィルムの酸素バリア性を向上させる(OTR値を減少させる)ために、プラズマ増強化学気相蒸着(PECVD)コーティングによりアモルファスDLCコーティング11bでコートされる。気相蒸着コーティング11bは、実質的に透明なコーティングとなるように均等に堆積した水素化カーボンコーティング(C:H)である。DLCコーティングの厚さは、20~40μmである。DLCバリアコーティングと反対側の他面では、フィルム基材が三菱化学製のプライマー組成物である2-DEFなどの接着促進プライマー11cの薄層でコートされる。バリアフィルムは、両側にそれぞれ熱封止可能な熱可塑性ポリマー層12、13がラミネートされ、熱可塑性ポリマー層12、13は、同一のものであってもよく、同一でなくてもよい。この熱封止可能な熱可塑性ポリマー層は、好ましくはポリオレフィン系ポリマーであり、ラミネートの熱封止可能な最外層を形成する。
【0092】
代わりに、代替的な実施形態によると、
図1aにおいて模式的に示すようなバリアフィルム11は、DLCバリアコーティングと反対側の他面において、異なる薄層であるさらなるDLC・PECVDコーティングによる接着促進層及び/又はバリアコーティング層11cでコートされている。
【0093】
図1bでは、酸素バリア性を向上させる(OTR値を減少させる)ために、
図1aと同様に、プラズマ増強化学気相蒸着コーティング(PECVD)によりコーティング面に同様のアモルファスDLCコーティング11bが気相蒸着コートされたポリマーフィルム基材11a(すなわちBOPETフィルム基材)によって同様のバリアフィルム11が設けられる。耐久性を有するDLCバリアコーティングと反対側の他面では、フィルム基材がDLC・PECVDコーティングの接着促進プライマー11cの薄層でコートされ得る。バリアフィルム11は、介在する熱可塑性ポリマーの結合層16、例えばポリオレフィン又は改質ポリオレフィン層(LLDPE層やそれぞれが同一の又は異なる複数のポリエチレン層の多層構成など)により、さらに同一又は類似のバリアフィルム11;11dにラミネートされる。このため、中間結合層は、両バリアフィルム11;11dのDLCコーティング面に結合される。バリアフィルムは、両面において、熱封止可能な熱可塑性ポリマー層12、13にラミネートされる。このため、熱封止可能な熱可塑性ポリマーの最外層はそれぞれ、バリアフィルム11;11dの各々のDLCプライマーコーティングである接着促進プライマーコーティング11c(任意)に接触する。考えられる代替的な接着促進コーティング11cとしては、三菱製の2DEF(登録商標)タイプの化学プライマーコーティングがある。
【0094】
図示しないさらなる実施形態では、ラミネート材料から作製された包装容器の外側を構成することとなる、最外層である熱封止可能な熱可塑性ポリマー層12;22;32が、ラミネートされて上記のとおり得られた二重バリアフィルムと最外層12との間に位置するバルク層21;31に適用される。ここで、二重バリアフィルムとは、中間結合層が二つのバリアフィルム11;11dのDLCバリアコーティング面11bを一つに結合している二重構造のことをいう。二重バリアフィルムは、バリア目的及び/又は接着促進の目的のために、さらなるDLCコーティング11cを含んでもよい。
【0095】
図2では、本発明の液体カートン包装用のラミネート包装材料20が示されており、当該ラミネート材料は、曲げ力が320mNである板紙バルク層21を備え、バルク層21の外側に適用されたポリオレフィンの液密性の熱封止可能な外側層22をさらに備え、当該外側層22の側は、包装ラミネートから生産される包装容器の外側に向かう側となる。外側層22のポリオレフィンは、熱封止可能な性質を有する従来の低密度ポリエチレン(LDPE)であるが、LLDPEなど、さらなる同様のポリマーを含んでもよい。液密性の熱封止可能な最内層23が、包装ラミネートから生産される包装容器の内側に向かう側となるバルク層21の反対側に配置される。すなわち、最内層23は、包装される製品と直接接触することになる。このように熱封止可能な最内層23は、ラミネート包装材料から作製された液体包装容器の最も強い封止を形成するものであり、LDPE、鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び、メタロセン触媒の存在下においてC4~C8、より好ましくはC6~C8のα-オレフィンアルキレンモノマーとエチレンモノマーとを重合させることにより生産されるLLDPE、すなわちいわゆるメタロセン-LLDPE(m-LLDPE)から成る群から選択されるポリエチレンの一つ以上の組合せを備える。
【0096】
バルク層21は、ポリマーフィルム(この場合は厚さが12μmの延伸PETフィルム)の基層24を備えるバリアフィルム28にラミネートされ、基層24は、厚さ2~50nm(例えば5~40nm)で第1面にアモルファスDLCバリア材料の薄いPECVD気相蒸着層25がコートされている。反対側の第2面では、ポリマーフィルム基材が、接着促進プライマー27、この場合は三菱化学製のプライマー組成物である2-DEFでコートされている。このようにバリアコートされたフィルム24のDLCコートされた第1面は、結合性熱可塑性ポリマーの中間層26によって、又は官能性ポリオレフィン系接着性ポリマー(この例では低密度ポリエチレン(LDPE))によって、バルク層21にラミネートされる。中間結合層26は、バルク層及び耐久性を有するバリアフィルムを互いに対して押出ラミネートすることにより形成される。中間結合層26の厚さは、好ましくは7~20μm、より好ましくは12~18μmである。これらの層間では優れた接着性が得られ、ラミネート材料の良好な一体性を提供する。ここで、PECVDコートされたDLCバリアコーティングは、相当量の炭素材料を含み、ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリエチレン系コポリマーなどの有機ポリマーに対する良好な接着適合性を示す。熱封止可能な最内層23は、同種又は異なる種類のLDPE若しくはLLDPE又はそのブレンドの二つ以上の部分層から成り、これに隣接するバリアフィルムのプライマーコートされた面と同様に良好な接着性及び一体性を有する。
【0097】
図3では、本発明の液体カートン包装用のラミネート包装材料30が示されており、当該ラミネート材料は、当該ラミネート材料は、曲げ力が320mNである板紙バルク層を備え、バルク層31の外側に適用されたポリオレフィンの液密性の熱封止可能な外側層32をさらに備え、当該外側層32の側は、包装ラミネートから生産される包装容器の外側に向かう側となる。外側層32のポリオレフィンは、熱封止可能な性質を有する従来の低密度ポリエチレン(LDPE)であるが、LLDPEなど、さらなる同様のポリマーを含んでもよい。液密性の熱封止可能な最内層33が、包装ラミネートから生産される包装容器の内側に向かう側となるバルク層31の反対側に配置される。すなわち、最内層33は、包装される製品と直接接触することになる。このように熱封止可能な最内層33は、ラミネート包装材料から作製された液体包装容器の最も強い封止を形成するものであり、LDPE、鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及び、メタロセン触媒の存在下においてC4~C8、より好ましくはC6~C8のα-オレフィンアルキレンモノマーとエチレンモノマーとを重合させることにより生産されるLLDPE、すなわちいわゆるメタロセン-LLDPE(m-LLDPE)から成る群から選択されるポリエチレンの一つ以上の組合せを備える。
【0098】
バルク層31は、ポリマーフィルム(この場合は厚さが12μmの延伸PETフィルム)の基層34を備えるバリアフィルム38にラミネートされ、基層34は、厚さ2~50nm(例えば5~40nmで、例えば10~40nm)で第1面にアモルファスDLCバリア材料の薄いPECVD気相蒸着層35がコートされている。反対側の第2面では、ポリマーフィルム基材が第2アモルファスDLCコーティング35bでコートされている。第2アモルファスDLCコーティングは、バリア特性を付与することもできるが、単に接着促進プライマーコーティングとして作用することもでき、その場合には厚さは僅か2~4nmとすることができる。このようにバリアコートされたフィルム34のDLCコートされた第1面は、結合性熱可塑性ポリマーの中間層36によって、又は官能性ポリオレフィン系接着性ポリマー(この例では低密度ポリエチレン(LDPE))によって、バルク層31にラミネートされる。中間結合層36は、バルク層及び耐久性を有するバリアフィルムを互いに対して押出ラミネートすることにより形成される。中間結合層36の厚さは、好ましくは7~20μm、より好ましくは12~18μmである。熱封止可能な最内層33は、同種又は異なる種類のLDPE若しくはLLDPE又はそのブレンドの二つ以上の部分層から成るものとすることができる。バルク層31内のこれらの層間では優れた接着性が得られ、ラミネート材料の良好な一体性を提供する。ここで、PECVDコートされたDLCバリアコーティングは、相当量の炭素材料を含み、ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリエチレン系コポリマーなどの有機ポリマーに対する良好な接着適合性を示す。
【0099】
図4では、
図2及び
図3それぞれの包装ラミネート20;30を製造するためのラミネーションプロセス40が示されており、押出ステーション45からLDPEの中間結合層44を押し出してローラーニップ46で互いに押し付けることにより、バルク層41がバリアフィルム28;38;43にラミネートされる。バリアフィルム28;38;43は、ポリマーフィルム基材の表面に堆積したアモルファスDLCバリアコーティングを有し、これにより、DLCコーティングは、ラミネーションステーション46でラミネートされるときにバルク層を向くことになる。次いで、ラミネートされたバルク紙及びバリアフィルムが第2押出機フィードブロック47-2及びラミネーションニップ47-1を通過する際に、熱封止可能な最内層23;33;47-3が、46から送られてきた紙・フィルムラミネート体のバリアフィルム側にコートされる。最後に、熱封止可能な最内層47-3を含むラミネートが、第3押出機フィードブロック48-2及びラミネーションニップ48-1を通過する際に、LDPEの熱封止可能な最外層22;32;48-3が紙層の外側にコートされる。代替的な実施形態によると、この後半のステップは、46のラミネーションの前に第1押出コーティング操作として実行されてもよい。最後に、完成した包装ラミネート49が保存リール(図示せず)に巻き付けられる。
【0100】
図5aは、本発明に係る包装ラミネート20から生産された包装容器50aの一実施形態を示す。包装容器は、ソースやスープなどの飲料に特に適する。通常、このようなパッケージの堆積は、約100~1000mlである。この包装容器は任意の構成とすることができるが、好ましくは、長手方向封止51a及び横方向封止52aを有し、任意選択で開封器53を有するレンガ形である。別の実施形態(図示せず)では、包装容器は、楔形の形状であってもよい。このような「楔形の形状」を得るためには、パッケージの底部の横方向熱封止が三角形のコーナーフラップの下に隠れるように、底部だけが折り曲げ成形され、フラップが折り曲げられてパッケージの底部に対して封着される。頂部セクションの横方向封止は、折り曲げられていない状態のままとされる。このように、半分折られた包装容器は、食品店の棚やテーブルなどに置かれた際にも、取扱いが容易で、寸法的に安定である。
【0101】
図5bは、本発明に係る代替的な包装ラミネート20から生産される包装容器50bの代替的な好ましい例を示す。代替的な包装ラミネートは、より薄い紙バルク層21を有することでより薄くなっており、このため、直方体、平行六面体、又は楔形の包装容器を形成するには寸法的な安定性が不十分であり、横方向封止52bを行った後は折り曲げ成形されない。従って、この包装容器は、枕型のポーチ状容器のままとなり、この形態で流通及び販売される。また、
図1bに関連して記載した種類の包装材料は、このような流動食及び飲料用のポーチ型パッケージに特に適している。
【0102】
図5cは、本発明の板紙のバルク層及び耐久性を有するバリアフィルムを備えるラミネート包装材料から作製された、予めカットされたシート又はブランクから折り曲げ成形された、切妻頂部パッケージ50cを示す。平坦頂部パッケージもまた、同様の材料ブランクから形成され得る。
【0103】
図5dは、本発明のラミネート包装材料の予めカットされたブランクから形成されたスリーブ54と、射出成型プラスチックをスクリューコルクなどの開封器と組み合わせて形成された頂部55との組合せである、ボトル状のパッケージ50dを示す。この種類のパッケージは、例えば、Tetra Top(登録商標)及びTetra Evero(登録商標)の商標で販売されている。これらの特定のパッケージは、閉位置で取り付けられた開封器を有する成形された頂部55をラミネート包装材料の管状スリーブ54に取り付け、このように形成されたボトルトップカプセルを殺菌し、食品で充填し、最後にパッケージの底部を折り曲げ成形してこれを封止することにより形成される。
【0104】
図6は、本出願の導入部において説明した原理、すなわち、ウェブの両長手方向縁62を重畳接合部63で互いに一体化させることにより、包装材料のウェブをチューブ61状に形成する様子を示す。チューブが予定された液体食品で充填され(64)、チューブ中の充填された内容物の高さより下で互いに所定の距離をおいてチューブの横方向の封止65を繰り返すことにより、個々のパッケージに分割される。パッケージ66は、横方向封止部で切開することにより分離され、各材料において準備された折り目線に沿って折り曲げ成形することにより、所望の幾何学的構成とされる。
【0105】
上記のとおり、本発明のラミネート包装材料により、湿潤条件下でも良好な一体性を有する包装容器、すなわち、保存可能期間の長い、液体又は湿った食品の包装のための包装容器を提供することが可能になる。
【0106】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に含まれる様々なものが考えられる。
【符号の説明】
【0107】
11 バリアフィルム
11a 基層
11b DLCバリアコーティング
11c 接着促進プライマーコーティング
11d 第2バリアフィルム
12 第1最外ポリマー層
13 第2最内ポリマー層
16 結合層
20 ラミネート包装材料
21 バルク層
22 最外層
23 最内層
24 基層
25 気相蒸着層
26 中間結合層
27 接着促進プライマー
28 バリアフィルム
30 ラミネート包装材料
31 バルク層
32 外側層
33 最内層
34 基層
35 気相蒸着層
35b 第2DLCコーティング
36 中間結合層
38 バリアフィルム
40 ラミネーションプロセス
41 バルク層
44 中間結合層
45 押出ステーション
46 ローラーニップ
46 ラミネーションステーション
47-1 ラミネーションニップ
47-2 第2押出機フィードブロック
47-3 最内層
48-1 ラミネーションニップ
48-2 第3押出機フィードブロック
49 包装ラミネート
50a 包装容器
50b 包装容器
50c 切妻頂部パッケージ
50d パッケージ
51a 長手方向封止
52a 横方向封止
52b 横方向封止
53 開封器
54 スリーブ
55 頂部
61 チューブ
62 両長手方向縁
63 重畳接合部
65 横方向封止
66 パッケージ