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特許7115979改善された溶解性と硬度を有するプロセスレシピチーズ製品および製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】改善された溶解性と硬度を有するプロセスレシピチーズ製品および製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/08 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
A23C19/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018534630
(86)(22)【出願日】2016-12-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 US2016069373
(87)【国際公開番号】W WO2017117481
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-10-29
(31)【優先権主張番号】62/273,338
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/312,843
(32)【優先日】2016-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514062242
【氏名又は名称】クラフト・フーズ・グループ・ブランズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】シャンタヌ アガーワル
(72)【発明者】
【氏名】マリーン セリス
(72)【発明者】
【氏名】キャスリン ジャンヌ ホラン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン エル リーブ
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/125525(WO,A2)
【文献】国際公開第00/008951(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0122177(US,A1)
【文献】特開平02-245137(JP,A)
【文献】特開2009-050263(JP,A)
【文献】特表2018-518159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00-23/00
A01J 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~12重量%の室温で液体の植物油、
8~16重量%の乳タンパク質、
0.5~10重量%のトウモロコシ由来デンプン、および
0~10重量%のジャガイモ由来デンプン
を含み、
45~54%の含水量を有し、
トウモロコシ由来デンプンは、ヒドロキシル化されたリン酸デンプンを少なくとも含み、
ジャガイモ由来デンプンは、酸化されたジャガイモデンプンを含むことを特徴とするプロセスレシピチーズ製品組成物。
【請求項2】
トウモロコシ由来デンプンは、25~40ミクロンの粒径を有する、請求項1に記載のプロセスレシピチーズ製品組成物。
【請求項3】
トウモロコシ由来デンプンは、ジャガイモ由来に対する比が1:1~6:1である、請求項1に記載のプロセスレシピチーズ製品組成物。
【請求項4】
6.5~12Kg.sの範囲の機械的硬度を有する、請求項1に記載のプロセスレシピチーズ製品組成物。
【請求項5】
プロセスレシピチーズ製品はその中に油滴を含み、油滴の少なくとも40%が10マイクロメートルより小さい、請求項1に記載のプロセスレシピチーズ製品組成物。
【請求項6】
室温で液体の植物油、
トウモロコシ由来デンプン、および
ジャガイモ由来デンプン
を含み、
トウモロコシ由来デンプンは、ヒドロキシル化されたリン酸デンプンを少なくとも含み
ジャガイモ由来デンプンは、酸化されたジャガイモデンプンを含み、
45~54%の含水量を有し、6.5~12Kg.sの範囲の機械的硬度、および、直径0.875インチ(2.22cm)および厚さ0.25インチ(0.635cm)のチーズの円盤を沸騰水を入れた二重ボイラで4分間加熱することによって測定して1インチ(2.54cm)~1/2インチ(1.27cm)の範囲の円盤溶解性を与えることを特徴とするプロセスレシピチーズ製品組成物。
【請求項7】
トウモロコシ由来デンプンは、25~40ミクロンの粒径を有する、請求項に記載のプロセスレシピチーズ製品組成物。
【請求項8】
トウモロコシ由来デンプンは、ジャガイモ由来に対する比が1:1~6:1である、請求項に記載のプロセスレシピチーズ製品組成物。
【請求項9】
プロセスレシピチーズ製品はその中に油滴を含み、油滴の少なくとも40%が10マイクロメートルより小さい、請求項に記載のプロセスレシピチーズ製品組成物。
【請求項10】
プロセスレシピチーズ製品を調製するための方法であって、
1~12重量%の室温で液体の植物油、8~16重量%の乳タンパク質、0~10重量%のジャガイモ由来デンプンおよび/または0.5~10重量%のトウモロコシ由来デンプンを混合して混合物を形成するステップと、
混合物を170~210°F(76.6~98.9℃)の温度で調理して調理済み混合物を形成するステップと、
混合物および調理済み混合物の少なくとも一方をせん断するステップと
を含み、
トウモロコシ由来デンプンは、ヒドロキシル化されたリン酸デンプンを少なくとも含み
ジャガイモ由来デンプンは、酸化されたジャガイモデンプンを含み、
前記製品が45~54%の含水量を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
せん断ステップおよび調理ステップの少なくとも一方は、プロセスレシピチーズ製品中に油滴を提供し、油滴の少なくとも40%が10マイクロメートルより小さい、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プロセスレシピチーズ製品は、6.5~12Kg.sの範囲の機械的硬度を有し、直径0.875インチ(2.22cm)および厚さ0.25インチ(0.635cm)のチーズの円盤を沸騰水を入れた二重ボイラで4分間加熱することによって測定して1インチ(2.54cm)~1/2インチ(1.27cm)の範囲の円盤溶解性を与える、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
トウモロコシ由来デンプンは、25~40ミクロンの粒径を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
トウモロコシ由来デンプンは、ジャガイモ由来に対する比が1:1~6:1である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年3月24日に出願された米国仮出願第62/312,843号および2015年12月30日に提出された米国仮出願第62/273,338号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本出願は、プロセスレシピチーズ製品および製造方法に関し、より詳細には、デンプンおよび非乳脂肪の使用を通じて改善された溶解性および硬度を有するプロセスレシピチーズ製品に関する。
【背景技術】
【0003】
プロセスレシピチーズ製品は、標準プロセスチーズに代わる健康的な代替品を提供するために開発された。かかるプロセスレシピチーズ製品は、より低い飽和脂肪を提供すること、様々な原料の多様性を提供すること等の多くの利益を含み得る。しかしながら、そのようにすることは、プロセスレシピチーズ製品がプロセスチーズと同様に機能しない、すなわち、所望の形状を保持し、過度の粘着性を伴わずに切断することができ、および様々な高温用途において溶融することができるのに十分な硬度を有していないので、これらの製品を消費者が容認するのに悪影響を与える。
【0004】
プロセスレシピチーズ製品には、種々の異なる成分および組成物を使用することができるが、これらのチーズが特定の官能特性、栄養特性、および機能特性を有することは、依然として望ましいことが多い。これらの特性の1つ、例えば栄養特性を改善することを試みることにより、官能評価特性および機能特性等の他の特性は、プロセスレシピチーズ製品の溶解性および硬度等において悪影響を受ける可能性がある。この点で、チーズは、ブロック構造が乏しく、粘着性が過度であるか、または、溶解性に劣る等の可能性がある。
【0005】
典型的には、植物油は、飽和脂肪が高く、心臓血管疾患を引き起こすことが知られている動物性脂肪(特に乳脂肪)を置換するために使用することができる。しかし、プロセスレシピチーズ製品に使用される植物油または植物油の組合せは、乳脂肪と比較して融点が低く、チーズローフ/チャンクの不十分なブロック構造および過度の粘着性をもたらす。配合(デンプン、親水コロイドまたはそれらの組み合わせを使用する)または加工(温度およびせん断またはこれらの組み合わせ)のいずれかによって飽和脂肪を減少させ、チーズを硬くするこれまでの試みは、高温用途(>170°F(76.7℃))におけるプロセスレシピチーズの溶解性に影響を及ぼす。換言すれば、これは高温粘性に影響を及ぼし、チーズの加工性に悪影響を及ぼし得る。
【発明の概要】
【0006】
一形態において、改善された溶解性および改善された硬度を備えるプロセスレシピチーズ製品組成物が提供される。プロセスレシピチーズ製品組成物は、成分の中でも特に、植物油、トウモロコシ由来デンプン、およびジャガイモ由来デンプンを含む。プロセスレシピチーズ製品組成物は、約1~約10重量%の植物油、約0.5~約10重量%のトウモロコシ由来デンプン、および約0~約10重量%のジャガイモ由来デンプンを含むことができる。一形態において、組成物は、約0.5~約5重量%のトウモロコシ由来デンプン、および約0~約5重量%のジャガイモ由来デンプンを含む。一形態によれば、組成物は、約0.5~約3重量%のトウモロコシ由来デンプン、および約0~約3重量%のジャガイモ由来デンプンを含む。
【0007】
一形態によれば、プロセスレシピチーズ製品組成物は、約6.5~約12Kg.sの範囲の機械的硬度を有し、直径0.875インチ(2.22cm)および厚さ0.25インチ(0.635cm)のチーズの円盤を水を入れた二重ボイラで加熱し、中程度の熱で4分間加熱することによって測定して1インチ(2.54cm)~1/2インチ(1.27cm)の範囲の溶解性を提供する。
【0008】
一形態によれば、トウモロコシまたはジャガイモ由来デンプンは、n-オクテニルコハク酸無水物(nOSA)によって架橋および/または修飾される。
【0009】
一形態では、プロセスレシピチーズ製品はその中に油滴を含み、油滴の少なくとも40%が10マイクロメートルより小さい。
【0010】
一形態によれば、プロセスレシピチーズ製品を調製するための方法が提供される。この方法は、約1~約10重量%の植物油、約0~約10重量%のジャガイモ由来デンプンおよび/または約0.5~約10重量%のトウモロコシ由来デンプンを混合して混合物を形成するステップと、混合物を約170~約210°F(約76.6~約98.9℃)の温度で調理して調理済み混合物を形成するステップと、混合物および/または調理済み混合物の少なくとも一方をせん断するステップとを含む。
【0011】
一形態によれば、せん断ステップおよび調理ステップの少なくとも一方を行い、油滴の少なくとも40%が10マイクロメートル未満である油滴をプロセスレシピチーズ製品中に提供する。
【0012】
これらの態様および他の態様は、以下の説明および添付の図面からより容易に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】二重ボイラで4分間加熱した後に所望の円盤溶解性を有する実施例1のプロセスレシピチーズを示す写真である。
図2】二重ボイラで4分間加熱した後に望ましくない円盤溶解性を有する実施例6によるプロセスレシピチーズを示す写真である。
図3】べたつきのないきれいな切れ味の硬いテクスチャを有するブロックに形成された、実施例1によるプロセスレシピチーズを示す写真である。
図4】柔らかいテクスチャと高い粘着性を有するブロックに形成された、実施例5によるプロセスレシピチーズを示す写真である。
図5A】ブロック形状の試料1の組成物の写真である。
図5B】溶融試験中の試料1の組成物の写真である。
図6A】ブロック形状の試料4の組成物の写真である。
図6B】溶融試験中の試料4の組成物の写真である。
図7A】ブロック形状の試料8の組成物の写真である。
図7B】溶融試験中の試料8の組成物の写真である。
図8A】対照試料の組成物の写真である。
図8B】試料2の組成物の写真である。
図8C】試料3の組成物の写真である。
図9A】試料5の組成物の写真である。
図9B】試料7の組成物の写真である。
図9C】試料9の組成物の写真である。
図10】表9に示す様々な例示的な組成物に対するせん断エネルギーおよび温度条件の影響を示すグラフである。
図11】試料組成物の温度に対する硬度のグラフである。
図12】試料組成物に対するタンジェントデルタ対温度のグラフである。
図13】5%のキャノーラ油の試料(良好な硬度を有する試料#109、110、111、112)において所望の硬度に合致する試料のレオロジー熱分析マッピング硬度を示す。
図14】5%のキャノーラ油の試料(良好な硬度を有する試料#109、110、111、112)において所望の硬度に合致する試料の温度に対するタンジェントデルタのレオロジー熱分析を示す図である。
図15】試料109、110、111、112の脂肪滴寸法を示す。
図16】種々の試料についての油滴寸法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
保護を求める主題の理解を容易にするため、添付の図面に実施形態を示したが、これらの図を以下の説明とともに考慮すれば、保護を求める主題、その構成、作用および利点の多くが容易に理解され、認識されるはずある。
【0015】
本出願は、プロセスレシピチーズ製品組成物および製造方法に関する。プロセスレシピチーズ製品およびプロセスレシピチーズ製品組成物という用語は、保存安定であり、FDAのLACF要件を満たす低酸性チーズであるチーズ組成物を指す。一形態では、組成物は、乳タンパク質源(例えば、ナチュラルチーズ、乳タンパク質、乳清タンパク質およびそれらの混合物);脂肪源(例えば、キャノーラ油等の植物油);乳化塩組成物;(ジャガイモおよび/またはトウモロコシ由来)、またはそれらの混合物;および乳化リン酸塩を含む。
【0016】
一形態によれば、プロセスレシピチーズ製品は、約45~約54%の含水量および約8~約16%のタンパク質含量を有することができる。一形態において、乳化塩組成物は、リン酸塩(例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウムまたはそれらの混合物)を含む。一形態では、プロセスレシピチーズ製品は、良好な溶融特性と、立方体、スライスなどに適したテクスチャの両方を有する。
【0017】
プロセスレシピチーズ製品およびプロセスレシピチーズ製品組成物は、チーズ製品または最終製品を製造するために使用される組成物を指すことができることを理解されたい。これは、最終チーズ製品を形成する工程の間に調製される1つ以上の中間組成物を含むことができる。さらに、他の形態のチーズおよびチーズ関連製品は、本明細書に記載の特徴の1つまたは複数を組み込むことができる。例えば、かかる製品には、代用チーズ、類似チーズ、および他のチーズおよびチーズ関連組成物を含むことができる。
【0018】
一形態において、プロセスレシピチーズ製品は、植物油、トウモロコシ由来デンプン、およびジャガイモ由来デンプンを含むことができる。特定の形態では、プロセスレシピチーズ製品は、ローフまたはチャンクに構成することができ、6.5~12Kg.sの範囲の機械的硬度、および、直径0.875インチ(2.22cm)および厚さ0.25インチ(0.635cm)のチーズの円盤を水を入れた二重ボイラで加熱し、中程度の熱で4分間加熱することによって測定して1インチ(2.54cm)~1/2インチ(1.27cm)の範囲の円盤溶解性を有することができる。
【0019】
より具体的には、一形態において、プロセスレシピチーズ製品は、約1~約10重量%の植物油、約0~約10重量%のジャガイモ由来デンプン(任意選択で0.5~5重量%および1~3重量%)、および/または約0.5~約10重量%のトウモロコシ由来デンプン(任意選択で0.5~5重量%および0.5~3重量%)を含む。本明細書に列挙した量は、他に特定されない限り重量による。また、組成物は、0.1~1%の親水コロイド、および他の成分を含むことができる。
【0020】
組成物は、所望の官能特性および機能特性を提供するために、様々な異なる油脂を含むことができる。例えば、植物油を使用することができる。一形態では、約2%~約12%の液体非インターエステル化/非水素化植物油を組成物に使用することができる。これらの油は、室温で液体の植物油を含むことができる。一形態において、これらの植物油は、精製され、漂白され、脱臭された植物油を含むことができる。液体非インターエステル化/非水素化植物油には、非限定的に、キャノーラ油、大豆、亜麻、ヒマワリ、グレープシード、および/またはアボカド、オリーブ等の果実、およびアーモンド、ピーナッツ油、ヘーゼルナッツ、パーム、パーム核、ココナツ、シアバター等のナッツ類、およびそれらの混合物を含む種々の材料を含むことができる。一形態において、キャノーラ油が使用される。他の形態において、キャノーラ油は、約5%~約10%の量で使用される。
【0021】
組成物はまた、種々の量の特定のトウモロコシ由来デンプンを含むことができる。例えば、一形態において、組成物は、約0.25%~約10%のトウモロコシ由来デンプンを含むことができる。
【0022】
一形態において、本発明は、3つの異なる変性食品デンプンの独特の組み合わせを使用する。それらの使用比率は相乗的に作用し、より多くの量の植物油の使用を可能にし、硬度を高め、粘着性を最小限に抑え、最終加工チーズ製品の溶解性を改善するように最適化されている。一形態において、トウモロコシ由来の2つのデンプンを含む3つの異なる変性食品デンプンを使用することができる:一方は、高い加工耐性、プロセス粘度および安定性を提供するヒドロキシル化されたリン酸デンプン(E1442)であり、他方はn-OSA置換デンプン(E1450)であり、これは、植物油の乳化を可能にする親油性特性を有する。高い処理せん断と共にn-OSA置換されたデンプンを使用することは、製品の硬度の増加に寄与しながらチーズマトリックス中に乳化を安定化するのに役立つ小さい油滴を形成することができる。使用した第3のデンプンは、最終製品中のより高い溶解性を可能にする酸化されたジャガイモデンプン(E1404)である。この改善された溶解性は、デンプンの酸化およびジャガイモデンプンのより大きい顆粒寸法によるものである。酸化は、デンプンの分子量を低下させ、その結晶構造を破壊し、それによってアミロースの逆行傾向を減少させる。
【0023】
一形態において、トウモロコシ由来デンプンは、約25~約40ミクロンの粒径を有する。一形態によれば、トウモロコシ由来デンプンの粒径は直径で約30ミクロンである。
【0024】
また、組成物は、様々な量のジャガイモ由来の食用デンプンも含むことができる。例えば、組成物は、約0.5%~約10%のジャガイモ由来の食用デンプンを含むことができる。一形態において、組成物は、約1%~約3%のジャガイモ由来の食用デンプンを含むことができる。
【0025】
顆粒状ワキシートウモロコシデンプンは、典型的には優れた水分管理剤および増粘剤であるが、酸希釈化デンプンは最終製品中の良好なゲル化剤である。この形態では、改質ワキシートウモロコシは、飛散することなくカートンを充填することを可能にする優れたプロセス内の高温粘度を提供する。酸薄化ポテトスターチは、一旦冷却されると、最終製品中に低温粘度およびゲルをもたらし、構造を生じるが溶解性を抑制しない。
【0026】
一形態において、二重改質ワキシーコーンスターチ等のトウモロコシ由来デンプンは、ジャガイモ由来に対する比が約1:1~約6:1で提供することができる。一形態によれば、かかる比は、チーズの溶解性を抑制することなく、高温粘度および最終的なチーズテクスチャに関して望ましいテクスチャを提供することができる。
【0027】
一形態において、脂肪対デンプンの比は約1:3~約1:8である。一形態によれば、脂肪対デンプンの比は約1:5である。他の形態では、比は約1:7である。
【0028】
チーズ、濃縮スキムまたは全乳、乳タンパク質濃縮物、限外濾過乳、ホエータンパク質濃縮物、バターミルク、スイートホエー等であるが、これらに限定されない種々のタンパク質源を含むことができる。さらに、無水乳脂肪、クリーム等の乳脂肪源を含むこともできる。
【0029】
親水コロイドは、冷蔵温度に冷却されたときに口当たりおよび/または硬度を迅速に提供するように選択することができ、典型的な高温適用温度(>170°F(76.7℃))で望ましい溶融特性に寄与する熱可逆性である。
【0030】
組成物は、チーズ組成物中に種々の他の成分を含むことができる。例えば、組成物は、ガム、酸、塩、香料、および他の成分を含むことができる。また、プロセスレシピチーズ製品組成物は、様々な形態を取ることができる。例えば、イミテーションチーズは、スライス、ブロック、シュレッド等の形態を取ることができる。
【0031】
さらに、イミテーションチーズは、非限定的に、アメリカン、チェダー、モッツァレラ、プロボロン、スイス等を含む様々な品種の形で提供することができる。
【0032】
一形態では、様々な成分(チーズ、乳製品粉、デンプン、塩、着色料および香料)を一緒に混合し、次に約170~210°F(約76.6~約98.9℃)の温度等で調理する。好ましくは、様々な成分または成分の組合せを一緒に混合し、調理前、調理中および/または調理後にせん断をかけて、プロセスレシピチーズ製品中の所望の油滴寸法を達成することができる。
【0033】
せん断は、高せん断ミキサー、ホモジナイザー、キャビター、せん断ポンプ、およびそれらの組み合わせなどの様々な異なる操作によって、調理前、調理中、または調理後の1つ以上の流れに提供され、油滴寸法の40~100%を所望の寸法である10ミクロン未満とすることができる。
【0034】
一形態において、せん断および/または調理プロセスを使用して、プロセスレシピチーズ製品中での所望の油滴寸法を達成することができる。一形態では、油滴の寸法は、液滴の少なくとも約40%が約10ミクロンより小さくなるようなものである。そのような油滴を有することにより、プロセスレシピチーズ製品は、加工中等の、所望の高温粘度、溶解性の改善、硬度の改善および粘着性の低下を有することができる。
【0035】
溶解性は、直径0.875インチ(2.22cm)および厚さ0.25インチ(0.635cm)のチーズの円盤を水を入れた二重ボイラで加熱し、中程度の熱で4分間加熱することによって測定することができる。レオロジー熱分析試験は、プロセスレシピチーズ製品の線形粘弾性(溶融に必要な最小エネルギー)を温度の関数として測定するために使用できる。
【0036】
プロセスレシピチーズ製品の線形粘弾性特性を温度の関数として測定するためのレオロジー熱分析試験を図11に示す。
【0037】
一形態では、プロセスレシピチーズ製品は貯蔵安定性の低い酸性製品であり、水分、pH、塩等に関してFDAの低酸缶詰食品(LACF)規制に適合するように構成することができる。
【実施例
【0038】
実施例1:伝統的なプロセスチーズのローフ/チャンクに類似した硬度および溶解性
【0039】
【表1】
【0040】
工程
【0041】
乾燥および液体成分(チーズ、乳製品粉、植物油、酵素変性チーズ、デンプンおよびガム、リン酸三カルシウム、塩化ナトリウム、着色料、ソルビン酸、および水の一部)を混和し、均質な塊にするために適切な高せん断ミキサーを用いて混合する。
【0042】
チーズ混和、水、乳酸、乳化剤を蒸気注入調理器に加える。油滴寸法の40~100%が所望の粒径10ミクロン未満を達成するのに適切なせん断速度で混和物を175~210°F(79.4~98.9℃)の温度に加熱し、最低1分間保持する。
【0043】
所望の製品特性(溶解性および硬度)を達成するために、高せん断ミキサーおよび/またはホモジナイザーを調理を通じて使用して適切なせん断を適用することができる。
【0044】
製品は、ローフ/チャンク形式に包装され、調理後1 ~6時間以内に130°F(54.4℃)未満、好ましくは100°F(37.8℃)未満の温度に冷却される。
【0045】
実施例1の組成物を溶融特性について試験した。この組成物は、直径0.875インチ(2.22cm)および厚さ0.25インチ(0.635cm)のチーズの円盤を水を入れた二重ボイラで加熱し、中程度の熱で4分間加熱して測定して、1インチ(2.54cm)~1/2インチ(1.27cm)の範囲の円盤溶解性を生じた。図1に示すように、実施例1の組成物は適切な溶解性を有していた。
【0046】
さらに、実施例1の組成物は、図3に示すように、チーズ製品ブロックに形成された。チーズ製品ブロックは硬いテクスチャを有し、べたつきのないきれいなカットを有する。
【0047】
実施例2:伝統的なプロセスチーズのローフ/チャンクと同様の硬度および溶解性
【0048】
【表2】
【0049】
工程
【0050】
乾燥および液体成分(チーズ、乳製品粉、植物油、酵素変性チーズ、デンプンとガム、リン酸三カルシウム、塩化ナトリウム、着色料、ソルビン酸、および水の一部)を混和し、適切な高せん断ミキサーを用いて混合する。
【0051】
チーズ混和物、水、乳酸、乳化剤を蒸気注入調理器に加える。油滴寸法の40~100%が所望の粒径である10ミクロン未満を達成するのに適切なせん断速度で混和物を175~210°F(79.4~98.9℃)の温度に加熱し、最低1分間保持する。
【0052】
所望の製品特性(溶解性および硬度)を達成するために調理した後に、高せん断ミキサーおよび/またはホモジナイザーを使用して、油滴寸法の40~100%が所望の粒径である10ミクロン未満を達成するのに適切なせん断を適用することができる。
【0053】
製品は、ローフ/チャンク形式に包装され、調理後1~6時間以内に130°F(54.4℃)未満、好ましくは100°F(37.8℃)未満の温度に冷却される。
【0054】
実施例3:伝統的なプロセスチーズのローフ/チャンクと同様の硬度および溶解性
【0055】
【表3】
【0056】
工程
【0057】
高せん断ミキサーおよび/またはホモジナイザーの組み合わせ等の高せん断装置を使用して、水、いくらかの乳製品粉、いくらかのデンプンおよび植物油の湿潤混合エマルジョンを作製する。
【0058】
乾燥および液体成分(チーズ、湿潤混合エマルジョン、酵素変性チーズ、デンプンおよびガム、リン酸三カルシウム、塩化ナトリウム、着色料、ソルビン酸、および水の一部)を混和してチーズ混和物を作り、油滴寸法の40~100%が所望の粒子寸法である10ミクロン未満を達成するのに適切な高せん断ミキサーを用いて混合する。
【0059】
チーズ混和物、水、乳酸、乳化剤を蒸気注入調理器に加える。混和物を175~210°F(79.4~98.9℃)に加熱し、最低1分間保持する。適切なせん断は、高せん断ミキサーおよび/またはホモジナイザーを用いて適用することができる。
【0060】
製品は、ローフ/チャンク形式に包装され、1~6時間以内に130°F(54.4℃)未満、好ましくは100°F(37.8℃)未満の温度に冷却される。
【0061】
実施例4:伝統的なプロセスチーズのローフ/チャンク(パーム油または固体脂肪/油)と同様の硬度および溶解性
【0062】
【表4】
【0063】
工程
【0064】
乾燥および液体成分(チーズ、乳製品粉、植物油、酵素変性チーズ、デンプンおよびガム、リン酸三カルシウム、塩化ナトリウム、着色料、ソルビン酸、および水の一部)を混和し、油滴寸法の40~100%が所望の粒子寸法である10ミクロン未満を達成するのに適切な高せん断ミキサーを用いて混合する。
【0065】
チーズ混和物、水、乳酸、乳化剤を蒸気注入調理器に加える。混和物を適切なせん断速度で175~210°F(79.4~98.9℃)の温度に加熱し、最低1分間保持する。
【0066】
調理した後に、高せん断ミキサーおよび/またはホモジナイザーを用いて、所望の製品特性(溶解性および硬度)を達成するために適切なせん断を適用することができる。
【0067】
製品は、ローフ/チャンク形式に包装され、調理後1~6時間以内に130°F(54.4℃)未満、好ましくは100°F(37.8℃)未満の温度に冷却される。
【0068】
実施例5:伝統的なプロセスチーズのローファ/チャンクと比較して劣った硬度
【0069】
【表5】
【0070】
工程
【0071】
乾燥および液体成分(チーズ、乳製品粉、植物油、酵素変性チーズ、デンプンおよびガム、リン酸三カルシウム、塩化ナトリウム、着色料、ソルビン酸、および水の一部)を混和し、混合する。
【0072】
チーズ混和物、水、乳酸、乳化剤を蒸気注入調理器に加える。混合物を175~185°F(79.4~85.0℃)に加熱し、最低1分間保持する。
【0073】
湿潤混合物の調理前および/またはプロセスレシピチーズの調理中および/または調理後に、増分せん断が適用されてない、または、わずかに適用される。
【0074】
製品は、ローフ/チャンク形式に包装され、1~6時間以内に130°F(54.4℃)未満、好ましくは100°F(37.8℃)未満の温度に冷却される。
【0075】
実施例6:従来のプロセスチーズのローフ/チャンクと比較して劣った溶解性
【0076】
【表6】
【0077】
工程
【0078】
乾燥および液体成分(チーズ、乳製品粉、植物油、酵素変性チーズ、デンプンおよびガム、リン酸三カルシウム、塩化ナトリウム、着色料、ソルビン酸、および水の一部)を混和し、混合する。
【0079】
チーズ混和物、水、乳酸、乳化剤を蒸気注入調理器に加える。混合物を185°F~210°F(85~98.9℃)に加熱し、最低1分間保持する。
【0080】
湿潤ミックスの調理前および/またはプロセスレシピチーズの調理中および/または調理後に過度の増分せん断を適用した。
【0081】
製品は、ローフ/チャンク形式に包装され、1~6時間以内に130°F(54.4℃)未満、好ましくは100°F(37.8℃)未満の温度に冷却される。
【0082】
実施例6の組成物を、実施例1と同様にして、溶解性について分析した。実施例6の組成物は、図2に示すように、溶解性が乏しくなった。
【0083】
実施例7:伝統的なプロセスチーズのローフ/チャンクと同様の硬度および溶解性
【0084】
【表7】
【0085】
工程
【0086】
高せん断ミキサーおよび/またはホモジナイザーの組み合わせ等の高せん断装置を用いて、水、乳製品粉、デンプンおよび植物油の湿潤混合エマルジョンを作製する。
【0087】
乾燥および液体成分(チーズ、湿潤エマルジョン、酵素変性チーズ、デンプンおよびガム、リン酸三カルシウム、塩化ナトリウム、着色料、ソルビン酸、および水の一部分)を混和し、油滴寸法の40~100%が所望の粒子寸法である10ミクロン未満を達成するのに適切な高せん断ミキサーを用いて混合することによりチーズ混和物を作成する。
【0088】
チーズ混和物、水、乳酸、および乳化剤を蒸気注入調理器に加える。混和物を175~210°F(79.4~98.9℃)に加熱し、最低1分間保持する。高せん断ミキサーおよび/またはホモジナイザーを用いて適切なせん断を適用することができる。
【0089】
製品は、ローフ/チャンク形式に包装され、1~6時間以内に130°F(54.4℃)未満、好ましくは100°F(37.8℃)未満の温度に冷却される。
【0090】
表8は、標準プロセスチーズ配合から、本明細書の多くの実施例に記載および示されているようなキャノーラ油を含有する配合に変更した場合の、飽和脂肪酸等の脂肪酸のプロファイルの変化を示す。
【0091】
【表8-1】
【表8-2】
【0092】
表9は、良好な溶解性および硬度または劣った溶解性および硬度のいずれかを有するプロセスチーズを供給した加工条件およびデンプンを列挙する。各数字は、異なる調理温度、せん断および異なるデンプンの組み合わせで実施された試験を示す。以下の各例は、実施例1~7を基に、デンプン成分および加工条件を変えたものである。低い調理温度は170°F~185°F(76.7℃~85.0℃)の範囲であり、高い調理温度は185°F~220°F(85.0℃~104.4℃)の範囲であった。低せん断エネルギーは7000~8500J/lbの範囲であり、高せん断エネルギーは8500~10000J/lbの範囲であった。
【0093】
【表9】
【0094】
表9に示された試料の一般的条件のグラフを図10に示す。この図から分かるように、調理のためのせん断および温度を変化させると、組成物の全体的な溶解性および硬度に影響を与えた。
【0095】
図11は、所望の硬度(溶解性データ1.25および硬度8.33Kg.sを有する試料#123;配合例1,3,4および7)を有する試料の所望の溶解性および硬度と劣った硬度(溶解性データ1.30および硬度5.2kg.sを有する試料#146;配合例5および6)を有する試料を比較したレオロジー熱分析を示す。試料#146の処理には追加のせん断は適用されず、試料#123と比較して硬度が低下した。
【0096】
図12は、所望の溶解性および硬度(溶解性データ1.25および硬度8.33Kg.sを有する試料#123;配合例1,3,4および7)と劣った硬度(溶解性データ0.875および硬度3.8Kg.sを有する試料#101)とを比較したレオロジー熱分析を示す。試料#101は、試料#123と比較して高温および高せん断で調理され、溶解性が低下した。
【0097】
図16は、種々の試料についての油滴寸法を示す。例えば、所望の硬度(8.8Kg.s)を有し、油滴寸法が10ミクロンより小さい試料#150(配合例1)に対し、せん断していない試料#146(配合例5)は、10ミクロンより大きな粒子寸法の油を40%超有し、望ましくない硬度(5.2kg.s)を有する。
【0098】
表10は、上記の実施例2の配合に基づいて調製された種々の試料を含む。各試料は、表10に示すように、それぞれに用いたデンプンを変化させた。
【0099】
【表10】
【0100】
使用されるデンプンの総量は3%であり、E1442と、E1404と、E1450の比は0.1.5~0.6:0.15~0.4:0.25~0.6の範囲、またはE1442とE1450の比は0.1.5~0.6:0.25~0.6の範囲、またはE1442とE1450の比は0.15~0.6:0.25~0.6の範囲である。
【0101】
得られた組成物の写真を図5~9に示す。試料1では、図5Aおよび図5Bに示すように、硬いテクスチャと、最小限の箔への粘着と、優れた溶解性とが得られた。試料4は、図6Aおよび図6Bに示すように、硬いテクスチャと、最小限の箔への粘着と、優れた溶解性を有していた。試料8は、図7Aおよび図7Bに示すように、硬いテクスチャと、最小限の箔への粘着と を有し、組成物が溶融した。対照品は、図8Aに示すように、柔らかいテクスチャを有し、非常に湿潤で粘着性があり、融解した。試料2は、図8Bに示すように、非常に硬いテクスチャを有し、粘着性でなく、融解しなかった。試料3は、図8Cに示すように、硬いテクスチャを有し、若干粘着性で、溶融した。試料5は、図9Aに示すように、スライスしたときに亀裂を有する適度に硬いテクスチャを有し、粘着性であり、融解した。試料7は、図9Bに示すように、硬いテクスチャを有し、若干湿潤であり、粘着性であり、融解した。試料9は、図9Cに示すように、硬いテクスチャを有し、粘着性でなく、融解しなかった。
【0102】
前述の説明および添付の図面に記載の事項は、単なる例示であり、限定ではない。特定の実施形態を示し、説明してきたが、変更および修正が、出願人の寄与する広い態様から逸脱することなくなされ得ることは、当業者には明らかであろう。求められる保護の実際の範囲は、従来技術に基づいて適切な観点で見た場合に、以下の特許請求の範囲で定義されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16