(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】リエントリカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20220802BHJP
A61B 17/02 20060101ALI20220802BHJP
A61B 17/32 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
A61M25/00 540
A61B17/02
A61B17/32
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019078832
(22)【出願日】2019-04-17
(62)【分割の表示】P 2017082779の分割
【原出願日】2012-06-21
【審査請求日】2019-05-16
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-17
(32)【優先日】2011-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2011-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516349286
【氏名又は名称】カーディナルヘルス スウィツァーランド 515 ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン・マシュー
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】安井 寿儀
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0109809(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0230167(US,A1)
【文献】特表2010-533014(JP,A)
【文献】特表2006-523515(JP,A)
【文献】特表2008-513125(JP,A)
【文献】特表平8-501003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内膜下領域から血管の腔までの通路の形成を容易にするリエントリカテーテルであって、
遠位端及び前記遠位端におけるテーパー形状を有する細長い外側管状部材と、
近位端において、前記腔に対する前記リエントリカテーテルの位置決めと、遠位方向への段階的な量での押込部材の駆動との双方を行うべく構成された機械的ハンドルと、
前記外側管状部材の中に同軸状に配置された管状の作動部材と
を含み、
前記作動部材は、前記押込部材に作動的に接続され、
前記作動部材の中には前記作動部材を通って摺動可能な切断部材が同軸状に配置され
、
前記作動部材は、前記外側管状部材の遠位端から近位方向に延びるストラットにより前記リエントリカテーテルの位置決めを行うべく前記押込部材に作動的に接続される、リエントリカテーテル。
【請求項2】
前記切断部材はニッケルチタン合金から形成されたカニューレである、請求項1のリエントリカテーテル。
【請求項3】
前記内膜下領域は、前記血管を閉塞する病変に隣接し、
前記
切断部材は、前記病変の少なくとも一部分を貫通するべく構成される、請求項1のリエントリカテーテル。
【請求項4】
前記切断部材は、前記作動部材の遠位端におけるポートから出て前進するべく構成される、請求項1のリエントリカテーテル。
【請求項5】
前記作動部材の遠位端におけるポートから出て前進するべく構成されたガイドワイヤーをさらに含む、請求項1のリエントリカテーテル。
【請求項6】
前記外側管状部材の遠位端は、前記血管を閉塞する病変に隣接して位置決めされて前記
切断部材を前進させて前記病変の少なくとも一部分を貫通させるように構成される、請求項1のリエントリカテーテル。
【請求項7】
前記機械的ハンドルは、ラックと係合するピニオン部分を有する、請求項2のリエントリカテーテル。
【請求項8】
解除されるまで前記押込部材を所望位置に保持するべく前記押込部材に係合するように構成されたラチェットをさらに含む、請求項1のリエントリカテーテル。
【請求項9】
前記リエントリカテーテルは、ほぼ3フレンチ以下の範囲の径を有する、請求項1のリエントリカテーテル。
【請求項10】
前記作動部材は、前記機械的ハンドルに作動的に接続される、請求項1のリエントリカテーテル。
【請求項11】
前記リエントリカテーテルは、ほぼ6フレンチ以下の範囲の径を有する、請求項1のリエントリカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血管内用カテーテルに関し、より具体的には、完全閉塞した血管を横断するように構成される機器に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞性血管疾患は、硬く石灰化した沈着が血管を通る血液の流れを阻止することを一般に特徴とする。閉塞性血管疾患は、冠状動脈血管及び末梢血管の両方で閉塞を引き起こし得る。特に重篤な例としては、病変及び沈着が血管を完全に閉塞する、慢性完全閉塞(CTO)として知られる状態が挙げられる。典型的なCTOは、沈着物、典型的には石灰化したフィブリンが蓄積することに起因する患者の血管に位置する病変である。
【0003】
従来より、このタイプの疾患の治療には、閉塞した血管を侵襲的かつ外傷性の外科的バイパス術を必要とした。近年、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)、粥腫切除術、ステント送達、及び他のカテーテルベースの治療を含む様々なタイプの介入処置用の通路を作るために、ガイドワイヤーを病変部に通過させて又は横断させて前進させることによる閉塞性血管疾患の治療にかなりの努力が費やされてきた。
【0004】
血管の真腔は閉塞部に埋め込まれ、時間の経過とともに形成された偽腔に囲まれることが多い。真腔を横断する試みは、ガイドワイヤーの先端が偽腔によって又は閉塞部の硬いキャップによって屈折し血管の内膜層と外膜層との間の内膜下領域の中に入る結果となる。あるいは、機器は、内膜下領域に意図的に誘導されて病変をパイパスしてもよく、閉塞部を貫通することに関連した困難を避ける。そのような手技はまた、より平滑な通路となる可能性が潜在的にある。
【0005】
しかしながら、一旦機器が内膜下領域にあると、機器を血管腔へ戻るように向けるのは非常に困難であり得る。現在、これらの処置の好ましい方法は、ガイドワイヤー又は別の機器が血管の真腔に戻るように操縦するように構成された屈折機能を有するカテーテルの使用を伴う。そのようなカテーテルは、「リエントリ」カテーテルと一般に呼ばれる。
【0006】
リエントリカテーテルのデザインに関していくつかの難題がある。例えば、真腔に戻る通路が形成されるように、カテーテルの先端は適切な回転方向で保持されるべきである。さらに、病変の大半が迂回されたとしても、閉塞部のある部分を貫通する必要があることが依然として多い。結果として、リエントリカテーテルは、硬化した病変を通る通路を形成する際の困難さを最小限にするべきである。別の重要な特性は、機器のトラッカビリティー及び柔軟性である。蛇行した脈管構造を通り抜けるために、機器は、比較的きつい屈曲及びねじれを通り抜けることができるだけ十分な柔軟性がなければならない。しかし、十分な硬さを提供することは、機器のプッシャビリティーを向上させ、機器の近位端部に加えたトルクを遠位先端部まで送達するために有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、血管を閉塞する病変に対して容易に位置決めができ、内膜下領域から真腔への通路の作成を容易にする医療機器の必要性が依然としてある。脈管構造を通って前進するように、そのような機器に柔軟性を持たせて提供することは有利である。真腔への通路が形成されている間、機器を安定させて支持する手段を提供することも有利である。以下の考察で詳述するように、本発明はこれら及び他の目的を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の必要性及び以下で言及され明白になる必要性により、本開示は、内膜下領域から血管の腔までの通路の形成を容易にするリエントリカテーテルを目的とし、該エントリカテーテルは、遠位端部及び遠位端部に隣接したウィンドウを有する細長い外側の管状部材、ウィンドウ内に長手方向に配置された複数の屈折可能なストラット、及び外側の管状部材内に同軸状に配置された作動部材を含み、外側の管状部材に対する作動部材の軸運動がストラットを半径方向外側に屈折させるように、屈折可能なストラットの近位端部が作動部材の遠位端部に作動的に接続される。好ましくは、カテーテルは、外側の管状部材にウィンドウと対向する位置で側面ポートを有する。さらに好ましくは、ストラットはニッケルチタン合金から形成される。
【0009】
一態様では、ウィンドウは、ほぼ120°~240°の範囲に相当する外側の管状部材の円周部分を占める。
【0010】
本発明の別の態様では、作動部材に加えられた張力は、細長い管状部材の遠位端部で剛性を高くする。
【0011】
必要に応じて、カテーテルは、ストラットによって支持されストラット間で力を配分するように構成された膜を特色とすることもできる。
【0012】
本発明の別の実施形態は、作動部材内に同軸状に配置された切断部材を含む。好ましくは、切断部材は作動部材内に摺動可能に配置され、切断部材は側面ポートから出て前進するように構成される。より好ましくは、切断部材はニッケルチタン合金から形成される。
【0013】
本発明のカテーテルは、作動部材に作動的に接続された機械的ハンドルを特色とすることもできる。好ましくは、機械的ハンドルは、作動部材を段階的な量で軸方向に遠位に動かすように構成される。
【0014】
さらに、現在好ましいカテーテルは、ほぼ2mm(ほぼ6フレンチ)以下の範囲の径を有する。
【0015】
本開示はさらに、遠位端部及び遠位端部に隣接したウィンドウを有する細長い外側の管状部材、ウィンドウ内に長手方向に配置された複数の屈折可能なストラット、外側の管状部材内に同軸状に配置された作動部材であって、屈折可能なストラットの近位端部が作動部材の遠位端部に作動的に接続される作動部材、及びウィンドウに対向して位置する側面ポート、を備えたリエントリカテーテルを提供するステップ、カテーテルの遠位端部を内膜下領域を通って前進させるステップ、作動部材を遠位方向に動かしてストラットを半径方向外側に屈折させるステップ、及びリエントリ機器を側面ポートを通して前進させ血管の内膜層を通って腔内に前進させるステップ、を含む、内膜下領域から血管の腔まで通路を形成する方法を目的とする。好ましくは、作動部材を遠位方向に動かしてストラットを半径方向外側に屈折させることで血管の外膜層と係合させ、側面ポートを内膜層に押しつけて位置決めさせる。
【0016】
一態様では、機器を側面ポートを通して前進させるステップはガイドワイヤーを前進させることを含む。あるいは、リエントリ機器は、作動部材内に同軸状に配置されたカニューレであり得、その場合リエントリ機器を側面ポートを通して前進させるステップはカニューレを作動部材を通して摺動させることを含む。
【0017】
本開示の別の態様は、作動部材に張力を加えることによってカテーテル(cathether)の遠位端部に剛性を与え、カテーテルの遠位端部が脈管構造を通り抜け内膜下領域に達するのを容易にすることを目的とする。
【0018】
更なる態様は作動部材に作動的に接続された機械的ハンドルを備えたカテーテルを提供することを目的とし、したがって方法は、ハンドルを作動して作動部材を段階的な量で軸方向に遠位に動かすことを含む。
【0019】
本発明の更なる別の態様は、ストラットを半径方向外側に屈折させ内膜層と外膜層との間に空間を作るために作動部材を遠位方向に動かすステップ、及びカテーテルの遠位先端部を空間の中に前進させるステップを含む。
【0020】
さらに、方法は、血管を閉塞する病変に隣接して遠位先端部を位置決めすること、及び病変の少なくとも一部分を貫通するようにリエントリ機器を前進させることも含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
更なる特徴及び利点は、添付図面に例示する本発明の好ましい実施形態の以下のより具体的な説明から明らかになるであろう。添付図面の同様の参照記号は、図全体を通じて同一の部分又は要素を一般に示す。
【
図1】本発明による拡張可能な遠位部分を有するリエントリカテーテルの例示的な実施形態の概略部分立面図である。
【
図2】弛緩時の形状での本発明による
図1に示す実施形態の図である。
【
図3】拡張した形状での本発明による
図1に示す実施形態の図である。
【
図4】拡張した形状でリエントリカニューレが前進した本発明による
図1に示す実施形態の図である。
【
図5】拡張した形状でリエントリカニューレが前進した本発明による
図1に示す実施形態の横断面図である。
【
図6】機械的ハンドルを示す本発明によるリエントリカテーテルの近位端部の概略立面図である。
【
図7】本発明による拡張可能な遠位部分を有するリエントリカテーテルの別の例示的な実施形態の概略部分横断面図である。
【
図8】本発明による、本発明による拡張可能な遠位部分を有するリエントリカテーテルの別の例示的な実施形態の概略立面図である。
【
図9】本発明による
図8に示す実施形態の図である。
【
図10】閉塞している病変に隣接して位置決めされた本発明によるリエントリカテーテルの概略図である。
【
図11】閉塞している病変に隣接して位置決めされた拡張した形状での本発明によるリエントリカテーテルの概略図である。
【
図12】作動したカニューレで真腔への再進入を示す拡張した形状での本発明によるリエントリカテーテルの概略図である。
【
図13】
図12に示す本発明によるリエントリカテーテルの線A-Aに沿った横断面図である。
【
図14】本発明によるリエントリカテーテルのさらに別の例示的な実施形態の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
初めに、例示された材料、構築、ルーチン、方法、又は構造は、もちろん一様でなくてもよいので、本開示はそれらに特に制限されないことを理解されるべきである。したがって、本明細書で説明するものと類似する又は同等である数多くの選択が本開示の実施形態を実行するにおいて使用可能であるが、好ましい材料及び方法を本明細書で説明する。
【0023】
本明細書で使用する用語は、本開示の特定の実施形態を説明するためのみであって、制限することを意図するものでないことも理解されるべきである。
【0024】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。
【0025】
さらに、本明細書で引用する刊行物、特許、及び特許出願はすべて、前記又は以下にかかわらず、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0026】
最後に、本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。
【0027】
当業者に既知のように、動脈は、いくつかの層を含む動脈壁に囲まれた真腔を画定する。動脈壁の組織は、動脈又は血管内で総じて管腔外空間と呼ばれる。内膜層は、動脈壁の最も内側の層で、内皮、内皮下層、及び内弾性板を含む。内膜層に隣接して中膜層があり、続いて最外層として外膜層がある。外膜層の外に脈管外組織が位置する。以下で使用する場合、内膜層と外膜層との間で、一般に中膜層を含む領域は、内膜下領域と呼ばれる。本開示は、血管の真腔に戻る通路が形成され、完全閉塞を横断するとき好適な血管内機器がその通路を通って通過できるように、内膜下領域内でのリエントリカテーテルの位置決めを目的する。
【0028】
閉塞性血管疾患は、アテローム、プラーク、血栓、及び/又は心血管系疾患に通常関連する他の閉塞する物質を一般に含む。「完全」閉塞とは、閉塞する物質が動脈又は他の血管の全内腔を実質的に閉塞し、その結果、血管を通る血流が実質的に止まる状態を説明すると一般に考えられる。一旦本開示の手技を用いて閉塞を横切ると、例えば、血管形成術、粥腫切除術、ステント留置術等の様々な血管内への介入手技を用いて病態を治療し、血流が罹患血管を通って修復されることができる。
【0029】
本発明のリエントリカテーテルは、真腔に戻る通路が形成される間、屈折可能なストラットを用いて、内膜下の位置で遠位先端部を安定させ支持する。真腔への再進入は、切断要素又は従来のガイドワイヤーを用いて実施することができる。本開示のリエントリカテーテルの別の特徴は、屈折可能なストラットに加えられる力の量によって、遠位先端部の相対的柔軟性が異なり得ることである。これら及び他の特徴は、以下で論じる例示的な実施形態に関してより明らかに認識され得る。
【0030】
次に
図1~5を参照して、本発明による特徴を有するリエントリカテーテル10の遠位部分が、いくらかは部分断面で、様々な視野及び形状で略図的に描かれる。リエントリカテーテル10は、細長い外側の管状部材12を含む。外側の管状部材12はノーズコーン16内の遠位端部で終端し、脈管構造を通って前進し易いようにテーパー状の形状を好ましくは有する。
【0031】
外側の管状部材12は、ノーズコーン16に隣接した遠位端部で形成されたウィンドウ18も特色とする。複数の屈折可能なストラット20は、ウィンドウ18内に長手方向に配置される。現在好ましい実施形態は、少なくとも3つのストラット20を含む。ストラット20の遠位端部はノーズコーン16で固定される。ストラット20の近位端部は、作動部材22に作動的に接続され、作動部材22によって軸方向に移動するように構成され、屈折が起こる。この実施形態では、作動部材22は、外側の管状部材12内に同軸状に配置されるハイポチューブ又は他の同様の構造を含む。作動部材22は、外側の管状部材12に対して軸方向に摺動するように構成され、その結果、作動部材22の近位端部を遠位方向に動かすことでストラット20の近位端部に押す力を伝え、ストラットを外側に曲げてウィンドウ18で半径方向に拡大させる。必要に応じて、ストラット20間の領域に力を配分するのを助長するために、ストラット20は膜24で覆うことができる。膜24は、ストラット20に被せて配置する、ストラット20の内部に固定する、又は他の好適な手段によって支持されることができる。膜は、ポリテトラフルロエチレンで好ましくは形成されるが、シリコーン、ポリアミド、ナイロン等の弾性重合体、又はポリエチレン等のポリオレフィンを含む他の生体適合性物質から形成することもできる。
【0032】
外側の管状部材12上の側面ポート26はウィンドウ18と対向する。閉塞している病変を貫通するように構成された切断部材、例えば、リエントリカニューレ30は、カテーテル10の縦軸に対して好適な角度でポート26を通して前進することができるように内側の管状部材14内に摺動可能に配置される。脈管内膜の血管壁を貫通することによって、真腔への通路を形成することができる。
【0033】
見て分かるように、
図2は、弛緩時の拡張していない状態で外側の管状部材12と並行に隣接しているストラット20を示す。したがって、均一のプロフィールをもたらし、カテーテル10が脈管構造を通って前進することができる。一方で
図3は、屈折し拡張した状態のストラット20を示す。ストラット20の屈折は血管の外膜層との係合を一般に起こさせ、その結果、側面ポート26が内膜層に押当てられ、
図4に示すようにカニューレ30が前進する際、カテーテル10を安定させ支持する。
【0034】
カテーテル10の横断面図が
図5に示される。側面ポート26は、ウィンドウ18と対向する外側の管状部材12上に位置する。この構成は、ストラット20の拡張によって提供される支持を最大限にし、カニューレ30が潜在的に硬化した病変を通って前進するのを容易にする。さらに、膜24は、ストラット20の拡張によって形成された円周に沿った圧力を配分するのに役立つ。示す実施形態では、ウィンドウ18及びストラット20は、外側の管状部材12の円周のほぼ120°を占める。以下で論ずるように、必要に応じて他の構成も使用することができる。
【0035】
論じたように、作動部材22は、軸力をストラット20に伝える。十分な圧縮力がストラット20を半径方向外側に曲げ、ウィンドウ18に隣接するカテーテル10の部分を拡張させる。更に、作動部材22も他の度合いの軸力をストラット20に伝えることができる。例えば、ストラット20を屈折させる閾値未満の圧縮力を加えることができる。ストラット20に生じる張力は、ストラット20に張力が加えられていない状態と比べて、カテーテル10の遠位先端部に剛性を与える。逆に、作動部材22を近位方向に引くことによってストラット20に引込む力を加えることができる。ストラット20が完全に引込まれるとき、この力を加えることでストラット20が引っ張られ剛性が相対的に高くなる。したがって、操作者は、カテーテル10の遠位先端部の柔軟性に影響を与えるために近位又は遠位のいずれかの方向に異なる度合いの張力を加えることができ、脈管構造の通り抜けを容易にすることができることを当業者は理解するであろう。
【0036】
好ましくは、作動部材22は、カテーテルの近位端部で機械的ハンドル32で操縦される。例えば、レバー34はラック38と係合するピニオン部分36を有する。レバー34を押し下げるとピニオン36がラック38に沿って移動し、したがって、押込部材40を遠位方向に動かす。レバー34の作動がストラット20を屈折するように構成された軸運動に変換されるように、押込部材40は作動部材22に作動的に接続される。ラチェット42は、押込部材40と係合するように構成され、解除されるまで所望位置で押込部材を保持する。以下で理解されるように、ハンドル32の機械的な性質は、作動部材22を介してストラット20に伝えられる力の量に関して操作者に直接触知できるフィードバックを与える。さらにこの構成は、ストラット20の屈折によって引き起こされた拡張の量を操作者が段階的に調節を行うことを可能にする。
【0037】
図7に示す本発明の別の実施形態は、ノーズコーン54内の遠位端部で終端する細長い管状部材52を有するリエントリカテーテル50を一般に含み、そのリエントリカテーテルは、脈管構造を通り進み易いようにテーパー状の形状を好ましくは有する。外側の管状部材52は、ノーズコーン54に隣接した遠位端部でウィンドウ56を形成する。複数の屈折可能なストラット58は、ウィンドウ56内に長手方向に配置される。ストラット58の遠位端部はノーズコーン54で固定される。ストラット20の近位端部は、作動部材60に作動的に接続され、作動部材60によって軸方向に移動するように構成され、屈折が起こる。この実施形態では、作動部材22は、外側の管状部材52内に同軸状に配置されたハイポチューブを含む。作動部材60は外側の管状部材52に対して軸方向に摺動するように構成される。作動部材60の遠位運動は、ストラット58を外側に曲げ、カテーテル50の遠位端部をウィンドウ56で半径方向に拡張させる。外側の管状部材52上の横方向ポート62はウィンドウ54と対向する。好ましくは、側面ポート62は、作動部材60を横方向に通り進んだガイドワイヤーを向け直すように構成され、その結果、ガイドワイヤーの先端が内膜壁を貫通し血管の真腔にアクセスできる。
【0038】
次に、本発明のさらに別の実施形態を
図8及び9に示す。
図7に示す実施形態と類似して、カテーテル70は、外側の管状部材74の遠位端部に配置された複数の屈折可能なストラット72を特色とする。ストラット72は、拡張した形状へ屈折されるとき、加えられた力がより均等に配分されるようにより幅広いプロフィールをもたらすように構成される。ストラット72は、ノーズコーン76によって遠位端部で固定される。ストラット72の近位端部は、外側の管状部材74内に摺動可能に配置された細長い管状の作動部材78に固定される。作動部材78のルーメン80を通して前進したガイドワイヤーは、カテーテル70が内膜下領域に位置決めされるとき、側面ポート82を通して血管の腔の方に向くように構成される。必要に応じて、ストラット72は、圧力の配分を増やすためにより幅広いプロフィールを有すことができる。例えば、ストラット72は、拡張したとき、縁部が隣接する又は接触するように形成することができる。そのような実施形態において、ストラット72は弛緩時の拡張していない形態のとき重なり合う。ストラット72は、外側の管状部材74の遠位端部に形成されたウィンドウ84内に配置される。
【0039】
一般に、本発明の要素は、ステンレス鋼等の金属、ポリエチレン等の重合体、及び複合材料を含む従来材から形成することができる。以下で論ずるように、形状記憶ニッケルチタン合金は、ストラット及びリエントリカニューレ用に好適である。
【0040】
図10~14は、血管94の腔92を完全に閉塞している病変90に対する本発明のリエントリカテーテルの作動の種々な態様を示す。実施形態ではカテーテル10が示されているが、本明細書で論じる例示的な実施形態、又は本発明の特徴を有する他の実施形態のいずれも、同様な方法で使用することができることが認識されよう。
図10に示すように、カテーテル10は、内膜層98と外膜層100との間の内膜下領域96を前進している。必要に応じて、ストラット20は、拡張させて内膜層98と外膜層100との間に空間を作り、カテーテル10が前進し易くすることができる。
【0041】
一旦カテーテル10の遠位先端部が病変90を越えて十分な距離に前進すると、作動部材22を遠位方向に軸方向に動かすことで、
図11に示すようにストラット20が半径方向外側に屈折する。膜24は、外膜層100に対して加えられる力を配分する。上述のように、ストラット20の拡張はカテーテル10を安定させ、側面ポート26が内膜層98に押当てられる。
【0042】
カテーテル10がストラット20の拡張によって支持されると、カニューレ30は、
図12に示すように側面ポート26を出て前進することができる。場合によっては、腔92にアクセスするために、内膜層98に加えて病変90の一部分を貫通する必要がある。病変90が石灰化又は硬化している場合、カニューレ30の前進にかなりの抵抗を生じ得る。ストラット20の拡張によって、カテーテル10は外膜層100の幅広い領域と係合することができ、必要な支持を提供するのに役立ち、その結果、カニューレ30は位置合わせ又は配向を失うことなく病変90を押し通ることができる。
【0043】
図13は、
図12の線A-Aで得た断面を示す。見て分かるように、ストラット20の拡張は、移動した外膜層100の幾何学形状内に合うように構成されたプロフィールでカテーテル10を提供する。これは、側面ポート26が腔92と実質的に垂直に位置合わせをするのに役立つ。好ましくは、改善された配向は、任意の視覚化の必要性を最小限にするのに役立つ。さらに、ストラット20の拡張によってもたらされた拡大領域は、外膜層100のより大きな部分と係合する。そのような拡張なしでは、硬化した病変の貫通を試みるとき、カテーテルだけのより狭いプロフィールは、比較的弾性のある層の中に押し返される傾向がより大きい。
【0044】
図13に示すように、ストラット20及びウィンドウ18は、外側の管状部材12の円周のほぼ120°に相当する。本発明の更なる態様では、ストラット20によって占められる円周の割合は、動作特性を変えるために変更することができる。例えば、別の実施形態では、
図14に示すようにストラット20及びウィンドウ18は、外側の管状部材12の円周のほぼ240°に相当する。一般に、ウィンドウ18によって占められる部分は、ほぼ90°~270°の範囲であり得る。以下で理解されるように、そのような実施形態は、外膜層100の内膜層98からの分離により形成された空間内で、より密接した嵌着を提供することができる。
【0045】
本開示の別の態様は、本明細書で開示するカテーテルを使用することで達成できる全体的な径の縮小である。屈折可能なストラットの拡張によって提供された支持の増加により、病変を貫通するとき、抗力に抵抗する能力を維持するために必要な構造剛性が少なくて済む。さらに、支持の増加によって、より小径のガイドワイヤー、例えば、0.36cm(0.14インチ)のガイドワイヤーの使用も可能になる。現在好ましい実施形態は、フレンチサイズ6以下のカテーテルを含む。同様に、カテーテルは向上した柔軟性を持つことができ、より広範囲の領域にアクセスすることができる。プッシャビリティーのために高い剛性が必要な場合、上述したように屈折可能なストラットに張力を加えることができる。更なる径の縮小は、リエントリカニューレを特徴としないカテーテル50及び70等の実施形態を用いることで達成することができる。例えば、本発明の一実施形態は、3フレンチの径を有し、腸骨の分岐部を誘導し表在の大腿動脈の位置まで対側アプローチを可能にするのに十分な柔軟性を有する。以下で理解されるように、そのような実施形態は脛骨及び他の膝下領域へのアクセスに使用することができる。小さい径を有する実施形態は、冠状動脈の用途にも好適であり得る。
【0046】
本発明の現在好ましい実施形態では、ストラット20、58又は72は、ニチノール等のニッケルチタン合金から形成される。さらに好ましくは、カニューレ30はニッケルチタン合金から形成することができる。当業者に既知のように、これらの合金は、形状記憶及び/又は超弾性の特性を示し得る。一般に、形状記憶は、部材が第2の形状に変形することを可能にし、しかも加熱されると元の形状に戻る。一方で、超弾性の特性は、金属がひずみ及び変形を受けることを一般に可能にし、相変態が生じる。一旦ひずみが取り除かれると、超弾性部材は相を変え元の形状に戻る。これらの相は、比較的低い引張り強度を有し、比較的低温で安定するマルテンサイト相、及び比較的高い引張り強度を有し、マルテンサイト相よりも高い温度で安定するオーステナイト相である。
【0047】
形状記憶特性は、金属を、マルテンサイト相からオーステナイト相への転移が完了する温度以上の温度、すなわち、オーステナイト相が安定する温度(Af温度)以上の温度まで加熱することによって、合金に付与される。この加熱処理中の金属の形状は、「記憶された」形状である。加熱処理された金属は、マルテンサイト相が安定する温度まで冷却され、オーステナイト相をマルテンサイト相に転移させる。次いで、マルテンサイト相内の金属は、例えば、患者の体内へのその進入を促進するように塑性的に変形される。マルテンサイトからオーステナイトへの転移温度以上の温度までの、その後の変形されたマルテンサイト相の加熱は、変形したマルテンサイト相をオーステナイト相へ転移させ、この相転移中に、金属は、未拘束の場合、その本来の形状に戻る。拘束されている場合、金属は、拘束が除去されるまでマルテンサイトのままである。
【0048】
応力が、オーステナイトが安定する温度(すなわち、マルテンサイト相のオーステナイトへの転移が完了する温度)以上の温度で超弾性特性を呈するニチノール等の金属の試料に適用されるとき、該試料は、次いで、合金がオーステナイト相からマルテンサイト相への応力誘発相転移を受ける特定の応力レベルに達するまで、弾性的に変形する。相転移が進行すると、合金は、有意なひずみの増加を受けるが、応力の対応する増加はほとんど、又は全くない。ひずみが増加する一方、応力は、マルテンサイト相へのオーステナイト相の転移が完了するまで、実質的に一定のままである。その後、更なる変形を引き起こすために更なる応力の増加が必要である。マルテンサイト金属は、まず、付加的な応力の印加時に、弾性的に、次いで、永久的残留変形で塑性的に変形する。
【0049】
任意の永久的変形が生じる前に試料上の荷重が除去される場合、マルテンサイト試料は、弾性的に回復し、オーステナイト相に逆転移する。応力減少は、まず、ひずみの低下を引き起こす。応力減少が、マルテンサイト相がオーステナイト相に逆転移するレベルに到達すると、試料内の応力レベルは、オーステナイト相への逆転移が完了する、すなわち、対応するごくわずかな応力減少でひずみの有意な回復が存在するまで、本質的に一定のままである(しかし、実質的に、オーステナイトがマルテンサイトに転移する一定の応力レベル以下)。オーステナイトへの逆転移が完了した後、更なる応力減少は、弾性のひずみの減少を引き起こす。荷重の印加時に比較的一定応力で有意なひずみをもたらし、かつ荷重の除去時の変形から回復するこの能力は、一般に、超弾性又は擬似弾性と称される。
【0050】
上述の特性は、ストラット20、58及び72が弛緩時の拡張していない状態から曲がり出て拡張した形状に屈折するのに特に好適であることを当業者は理解するであろう。同様に、カニューレ30は、作動される前に直線の形状に拘束されることができ、横方向ポート26を出て前進する際に、真腔をより直接ねらうために湾曲したプロフィールをとることができる。
【0051】
状況によっては(It some situations)、血管の真腔に戻る通路が形成されるように完全閉塞に対して本発明の機器の位置を判定する必要がある場合がある。最も簡単に、そのような位置の判定は、従来の方法で血管を透視撮影することで行うことができる。そのような透視撮影の代わりに又は追加として、血管内画像化、例えば、血管内超音波撮影(IVUS)、及び様々な光学画像モダリティー(optical imaging modelities)、例えば、光干渉断層撮影(OCT)が用いられてもよい。例えば、最初内膜下領域にアクセスするために超音波画像ガイドワイヤーが使用されてもよく、及び/又は、内膜下領域にアクセスするために使用されるワイヤーと交換されてもよい。内膜下領域中にある画像ガイドワイヤーは、血管腔内で閉塞物質の有無を容易に検出し得る。閉塞物質から閉塞物質無しまでの移行が検出されると、ガイドワイヤーの位置が完全閉塞を越えて前進したことが分かる。
【0052】
本明細書に図示及び説明した実施形態は、最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるが、当業者であれば、本明細書に説明及び図示した特定の設計及び方法からの変更はそれ自体当業者にとって自明であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用できることは明らかであろう。本発明は、説明及び図示される特定の構造に限定されるものではないが、付属の特許請求の範囲に含まれ得るすべての改変例と一貫性を有するものとして解釈されなければならない。