(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】軌道変位予測方法及び軌道変位予測システム
(51)【国際特許分類】
E01B 35/00 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
E01B35/00
(21)【出願番号】P 2019090412
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100187388
【氏名又は名称】樋口 天光
(72)【発明者】
【氏名】石川 智行
(72)【発明者】
【氏名】三和 雅史
【審査官】大塚 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-066146(JP,A)
【文献】特開2018-076724(JP,A)
【文献】特開平10-185666(JP,A)
【文献】特開2009-192504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0154914(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道の長さ方向に沿って配置された複数の区間を含む前記軌道における前記複数の区間の各々での軌道変位を予測する軌道変位予測方法において、
(a)前記複数の区間の各々で、前記長さ方向に沿って互いに異なる複数の測定位置で前記軌道変位を測定し、前記複数の測定位置の各々でそれぞれ測定された複数の前記軌道変位の測定値のばらつきを表す第1指標を算出するステップ、
(b)前記(a)ステップにて前記軌道変位を測定した後、前記複数の区間の各々で、前記複数の測定位置で前記軌道変位を再度測定し、前記第1指標を再度算出するステップ、
(c)前記複数の区間の各々で、前記(a)ステップにて算出された前記第1指標の第1算出値と、前記(b)ステップにて算出された前記第1指標の第2算出値と、に基づいて、前記(b)ステップにて前記軌道変位を測定する以前の前記軌道変位の変化の程度を表す第2指標を算出するステップ、
(d)前記複数の区間の各々でそれぞれ算出された複数の前記第1算出値と、前記(c)ステップにて前記複数の区間の各々でそれぞれ算出された複数の前記第2指標の第3算出値と、に基づいて、前記第1指標と前記第2指標との関係を示す回帰式を算出するステップ、
(e)前記複数の区間の各々で、前記第1算出値と、前記回帰式と、に基づいて、前記第2指標の第1予測値を算出し、算出された前記第1予測値と、前記第3算出値と、の関係を示す第1補正係数を算出するステップ、
(f)前記複数の区間の各々で、前記第2算出値と、前記回帰式と、前記(e)ステップにて算出された前記第1補正係数の第4算出値と、に基づいて、前記(b)ステップにて前記軌道変位を測定した以後の前記軌道変位の変化の程度を表す第3指標の第2予測値を算出するステップ、
を有する、軌道変位予測方法。
【請求項2】
請求項1に記載の軌道変位予測方法において、
前記(e)ステップでは、前記複数の区間の各々で、前記回帰式に前記第1指標として前記第1算出値を代入することにより、前記第1予測値を算出し、算出された前記第1予測値に対する前記第3算出値の比率である前記第1補正係数を算出する、軌道変位予測方法。
【請求項3】
請求項2に記載の軌道変位予測方法において、
前記(f)ステップでは、前記複数の区間の各々で、前記回帰式に前記第1指標として前記第2算出値を代入することにより、前記第2指標の第3予測値を算出し、算出された前記第3予測値に前記第1補正係数を乗ずることにより、前記第2予測値を算出する、軌道変位予測方法。
【請求項4】
請求項3に記載の軌道変位予測方法において、
(g)前記(b)ステップにて前記軌道変位を測定した後、前記複数の区間の各々で、前記複数の測定位置で前記軌道変位を再度測定し、前記第1指標を再度算出するステップ、
(h)前記複数の区間の各々で、前記第2算出値と、前記(g)ステップにて算出された前記第1指標の第5算出値と、に基づいて、前記(g)ステップにて前記軌道変位を測定する以前の前記軌道変位の変化の程度を表す第4指標を算出するステップ、
(i)前記複数の区間の各々で、前記第3予測値と、前記(h)ステップにて算出された前記第4指標の第6算出値と、前記第1補正係数と、の関係を示す第2補正係数を算出するステップ、
(j)前記複数の区間の各々で、前記第5算出値と、前記回帰式と、前記第4算出値と、前記(i)ステップにて算出された前記第2補正係数の第7算出値と、に基づいて、前記(g)ステップにて前記軌道変位を測定した以後の前記軌道変位の変化の程度を表す第5指標の第4予測値を算出するステップ、
を有する、軌道変位予測方法。
【請求項5】
請求項4に記載の軌道変位予測方法において、
前記(i)ステップでは、前記複数の区間の各々で、前記第3予測値と前記第1補正係数との積に対する、前記第6算出値の比率である、前記第2補正係数を算出する、軌道変位予測方法。
【請求項6】
請求項1に記載の軌道変位予測方法において、
前記(e)ステップでは、前記複数の区間の各々で、前記回帰式に前記第1指標として前記第1算出値を代入することにより、前記第1予測値を算出し、算出された前記第1予測値に対する前記第3算出値の差分である前記第1補正係数を算出する、軌道変位予測方法。
【請求項7】
軌道の長さ方向に沿って配置された複数の区間を含む前記軌道における前記複数の区間の各々での軌道変位を予測する軌道変位予測方法において、
(a)前記複数の区間の各々で、前記長さ方向に沿って互いに異なる複数の測定位置で前記軌道変位を測定し、前記複数の測定位置の各々でそれぞれ測定された複数の前記軌道変位の測定値に基づいて、前記複数の軌道変位の測定値のばらつきを表す第1指標と、前記複数の区間の各々での輪重又はレール圧力を表す第2指標と、を算出するステップ、
(b)前記(a)ステップにて前記軌道変位を測定した後、前記複数の区間の各々で、前記複数の測定位置で前記軌道変位を再度測定し、前記第1指標と前記第2指標とを再度算出するステップ、
(c)前記複数の区間の各々で、前記(a)ステップにて算出された前記第1指標の第1算出値と、前記(b)ステップにて算出された前記第1指標の第2算出値と、に基づいて、前記(b)ステップにて前記軌道変位を測定する以前の前記軌道変位の変化の程度を表す第3指標を算出するステップ、
(d)前記(a)ステップにて前記複数の区間の各々でそれぞれ算出された複数の前記第2指標の第1指標算出値と、前記(c)ステップにて前記複数の区間の各々でそれぞれ算出された複数の前記第3指標の第3算出値と、に基づいて、前記第2指標と前記第3指標との関係を示す回帰式を算出するステップ、
(e)前記複数の区間の各々で、前記第1指標算出値と、前記回帰式と、に基づいて、前記第3指標の第1予測値を算出し、算出された前記第1予測値と、前記第3算出値と、の関係を示す第1補正係数を算出するステップ、
(f)前記複数の区間の各々で、前記(b)ステップにて算出された前記第2指標の第2指標算出値と、前記回帰式と、前記(e)ステップにて算出された前記第1補正係数の第4算出値と、に基づいて、前記(b)ステップにて前記軌道変位を測定した以後の前記軌道変位の変化の程度を表す第4指標の第2予測値を算出するステップ、
を有する、軌道変位予測方法。
【請求項8】
軌道の長さ方向に沿って配置された複数の区間を含む前記軌道における前記複数の区間の各々での軌道変位を予測する軌道変位予測システムにおいて、
前記複数の区間の各々で、前記長さ方向に沿って互いに異なる複数の測定位置で前記軌道変位を測定し、前記複数の測定位置の各々でそれぞれ測定された複数の前記軌道変位の測定値のばらつきを表す第1指標を算出する第1算出部と、
前記第1算出部により前記軌道変位が測定された後、前記複数の区間の各々で、前記複数の測定位置で前記軌道変位を再度測定し、前記第1指標を再度算出する第2算出部と、
前記複数の区間の各々で、前記第1算出部により算出された前記第1指標の第1算出値と、前記第2算出部により算出された前記第1指標の第2算出値と、に基づいて、前記第2算出部により前記軌道変位が測定される以前の前記軌道変位の変化の程度を表す第2指標を算出する第3算出部と、
前記複数の区間の各々でそれぞれ算出された複数の前記第1算出値と、前記第3算出部により前記複数の区間の各々でそれぞれ算出された複数の前記第2指標の第3算出値と、に基づいて、前記第1指標と前記第2指標との関係を示す回帰式を算出する第4算出部と、
前記複数の区間の各々で、前記第1算出値と、前記回帰式と、に基づいて、前記第2指標の第1予測値を算出し、算出された前記第1予測値と、前記第3算出値と、の関係を示す第1補正係数を算出する第5算出部と、
前記複数の区間の各々で、前記第2算出値と、前記回帰式と、前記第5算出部により算出された前記第1補正係数の第4算出値と、に基づいて、前記第2算出部により前記軌道変位が測定された以後の前記軌道変位の変化の程度を表す第3指標の第2予測値を算出する第6算出部と、
を有する、軌道変位予測システム。
【請求項9】
請求項8に記載の軌道変位予測システムにおいて、
前記第5算出部は、前記複数の区間の各々で、前記回帰式に前記第1指標として前記第1算出値を代入することにより、前記第1予測値を算出し、算出された前記第1予測値に対する前記第3算出値の比率である前記第1補正係数を算出する、軌道変位予測システム。
【請求項10】
請求項9に記載の軌道変位予測システムにおいて、
前記第6算出部は、前記複数の区間の各々で、前記回帰式に前記第1指標として前記第2算出値を代入することにより、前記第2指標の第3予測値を算出し、算出された前記第3予測値に前記第1補正係数を乗ずることにより、前記第2予測値を算出する、軌道変位予測システム。
【請求項11】
請求項10に記載の軌道変位予測システムにおいて、
前記第2算出部により前記軌道変位が測定された後、前記複数の区間の各々で、前記複数の測定位置で前記軌道変位を再度測定し、前記第1指標を再度算出する第7算出部と、
前記複数の区間の各々で、前記第2算出値と、前記第7算出部により算出された前記第1指標の第5算出値と、に基づいて、前記第7算出部により前記軌道変位が測定される以前の前記軌道変位の変化の程度を表す第4指標を算出する第8算出部と、
前記複数の区間の各々で、前記第3予測値と、前記第8算出部により算出された前記第4指標の第6算出値と、前記第1補正係数と、の関係を示す第2補正係数を算出する第9算出部と、
前記複数の区間の各々で、前記第5算出値と、前記回帰式と、前記第4算出値と、前記第9算出部により算出された前記第2補正係数の第7算出値と、に基づいて、前記第7算出部により前記軌道変位が測定された以後の前記軌道変位の変化の程度を表す第5指標の第4予測値を算出する第10算出部と、
を有する、軌道変位予測システム。
【請求項12】
請求項11に記載の軌道変位予測システムにおいて、
前記第9算出部は、前記複数の区間の各々で、前記第3予測値と前記第1補正係数との積に対する、前記第6算出値の比率である、前記第2補正係数を算出する、軌道変位予測システム。
【請求項13】
請求項8に記載の軌道変位予測システムにおいて、
前記第5算出部は、前記複数の区間の各々で、前記回帰式に前記第1指標として前記第1算出値を代入することにより、前記第1予測値を算出し、算出された前記第1予測値に対する前記第3算出値の差分である前記第1補正係数を算出する、軌道変位予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道変位を予測する軌道変位予測方法及び軌道変位予測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路等の軌道における軌道変位の測定データから将来の軌道変位を予測する方法として、過去から軌道変位の測定が行われており、軌道変位の履歴データが十分に確保できる場合において、軌道変位の履歴データに基づいてデータ処理により将来の軌道変位を予測する方法、及び、新しく得られた軌道変位のデータを反映して予測の精度を向上させる方法が知られている。
【0003】
ここで、軌道変位として、レールの上下方向の変位である高低変位と、レールの幅方向(左右方向)の変位である通り変位と、左右両側のレール同士の間隔の設定値からの差分である軌間変位と、左右両側のレール同士の高さの差の設定値からの差分である水準変位と、一定距離を隔てた2点間の水準の差である平面性変位と、を例示することができる。
【0004】
特開2018-76724号公報(特許文献1)には、所定の軌道検測区間を測定して得られた時系列データの逐次更新予測判定方法において、新規に取得した時系列データをもとにした事後分布を算出し、1又は複数回前の事後分布結果の変化速度と新規に取得したデータをもとにした事後分布の変化速度と比較する技術が開示されている。
【0005】
特開2018-76681号公報(特許文献2)には、軌道維持管理方法において、軌道変位の履歴データに基づいて将来の軌道変位の推移を予測する工程と、予測された軌道変位が基準値を超える箇所を保守対象箇所として選定する工程と、予測された軌道変位が基準値を超えない箇所のリスクを判断する工程と、判断されたリスクが閾値を超える場合、予測された軌道変位が基準値を超えない箇所を保守対象箇所として選定する工程と、を含む技術が開示されている。
【0006】
特開2017-110375号公報(特許文献3)には、軌道修正要領生成装置において、軌道の計測データを取得する計測データ取得部と、車両による軌道の走行を模擬する走行シミュレーションを計測データと軌道における車両の位置に応じて定められた速度とに基づいて行うシミュレーション実行部と、軌道の修正内容を示す情報である修正要領を走行シミュレーションの結果に基づいて生成する修正要領生成部と、を備える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-76724号公報
【文献】特開2018-76681号公報
【文献】特開2017-110375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の軌道変位の予測方法では、過去に取得された軌道変位の履歴データが十分に蓄積されている場合に、蓄積されたデータに基づく軌道変位の予測を行っていた。しかしながら、軌道変位の履歴データが十分に蓄積されていない場合には、高精度で軌道変位を予測することが困難であった。
【0009】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、軌道変位を予測する軌道変位予測方法において、軌道変位の履歴データが少なく、十分でない場合でも、将来の軌道変位を高精度で予測することができる軌道変位予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
本発明の一態様としての軌道変位予測方法は、軌道の長さ方向に沿って配置された複数の区間を含む軌道における複数の区間の各々での軌道変位を予測する軌道変位予測方法である。当該軌道変位予測方法は、複数の区間の各々で、長さ方向に沿って互いに異なる複数の測定位置で軌道変位を測定し、複数の測定位置の各々でそれぞれ測定された複数の軌道変位の測定値のばらつきを表す第1指標を算出する(a)ステップと、(a)ステップにて軌道変位を測定した後、複数の区間の各々で、複数の測定位置で軌道変位を再度測定し、第1指標を再度算出する(b)ステップと、を有する。また、当該軌道変位予測方法は、複数の区間の各々で、(a)ステップにて算出された第1指標の第1算出値と、(b)ステップにて算出された第1指標の第2算出値と、に基づいて、(b)ステップにて軌道変位を測定する以前の軌道変位の変化の程度を表す第2指標を算出する(c)ステップと、複数の区間の各々でそれぞれ算出された複数の第1算出値と、(c)ステップにて複数の区間の各々でそれぞれ算出された複数の第2指標の第3算出値と、に基づいて、第1指標と第2指標との関係を示す回帰式を算出する(d)ステップと、を有する。また、当該軌道変位予測方法は、複数の区間の各々で、第1算出値と、回帰式と、に基づいて、第2指標の第1予測値を算出し、算出された第1予測値と、第3算出値と、の関係を示す第1補正係数を算出する(e)ステップと、複数の区間の各々で、第2算出値と、回帰式と、(e)ステップにて算出された第1補正係数の第4算出値と、に基づいて、(b)ステップにて軌道変位を測定した以後の軌道変位の変化の程度を表す第3指標の第2予測値を算出する(f)ステップと、を有する。
【0012】
また、他の一態様として、(e)ステップでは、複数の区間の各々で、回帰式に第1指標として第1算出値を代入することにより、第1予測値を算出し、算出された第1予測値に対する第3算出値の比率である第1補正係数を算出してもよい。
【0013】
また、他の一態様として、(f)ステップでは、複数の区間の各々で、回帰式に第1指標として第2算出値を代入することにより、第2指標の第3予測値を算出し、算出された第3予測値に第1補正係数を乗ずることにより、第2予測値を算出してもよい。
【0014】
また、他の一態様として、当該軌道変位予測方法は、(b)ステップにて軌道変位を測定した後、複数の区間の各々で、複数の測定位置で軌道変位を再度測定し、第1指標を再度算出する(g)ステップと、複数の区間の各々で、第2算出値と、(g)ステップにて算出された第1指標の第5算出値と、に基づいて、(g)ステップにて軌道変位を測定する以前の軌道変位の変化の程度を表す第4指標を算出する(h)ステップと、を有してもよい。また、当該軌道変位予測方法は、複数の区間の各々で、第3予測値と、(h)ステップにて算出された第4指標の第6算出値と、第1補正係数と、の関係を示す第2補正係数を算出する(i)ステップと、複数の区間の各々で、第5算出値と、回帰式と、第4算出値と、(i)ステップにて算出された第2補正係数の第7算出値と、に基づいて、(g)ステップにて軌道変位を測定した以後の軌道変位の変化の程度を表す第5指標の第4予測値を算出する(j)ステップと、を有してもよい。
【0015】
また、他の一態様として、(i)ステップでは、複数の区間の各々で、第3予測値と第1補正係数との積に対する、第6算出値の比率である、第2補正係数を算出してもよい。
【0016】
また、他の一態様として、(e)ステップでは、複数の区間の各々で、回帰式に第1指標として第1算出値を代入することにより、第1予測値を算出し、算出された第1予測値に対する第3算出値の差分である第1補正係数を算出してもよい。
【0017】
本発明の一態様としての軌道変位予測方法は、軌道の長さ方向に沿って配置された複数の区間を含む軌道における複数の区間の各々での軌道変位を予測する軌道変位予測方法である。当該軌道変位予測方法は、複数の区間の各々で、長さ方向に沿って互いに異なる複数の測定位置で軌道変位を測定し、複数の測定位置の各々でそれぞれ測定された複数の軌道変位の測定値に基づいて、複数の軌道変位の測定値のばらつきを表す第1指標と、複数の区間の各々での輪重又はレール圧力を表す第2指標と、を算出する(a)ステップと、(a)ステップにて軌道変位を測定した後、複数の区間の各々で、複数の測定位置で軌道変位を再度測定し、第1指標と第2指標とを再度算出する(b)ステップと、を有する。また、当該軌道変位予測方法は、複数の区間の各々で、(a)ステップにて算出された第1指標の第1算出値と、(b)ステップにて算出された第1指標の第2算出値と、に基づいて、(b)ステップにて軌道変位を測定する以前の軌道変位の変化の程度を表す第3指標を算出する(c)ステップと、(a)ステップにて複数の区間の各々でそれぞれ算出された複数の第2指標の第1指標算出値と、(c)ステップにて複数の区間の各々でそれぞれ算出された複数の第3指標の第3算出値と、に基づいて、第2指標と第3指標との関係を示す回帰式を算出する(d)ステップと、を有する。また、当該軌道変位予測方法は、複数の区間の各々で、第1指標算出値と、回帰式と、に基づいて、第3指標の第1予測値を算出し、算出された第1予測値と、第3算出値と、の関係を示す第1補正係数を算出する(e)ステップと、複数の区間の各々で、(b)ステップにて算出された第2指標の第2指標算出値と、回帰式と、(e)ステップにて算出された第1補正係数の第4算出値と、に基づいて、(b)ステップにて軌道変位を測定した以後の軌道変位の変化の程度を表す第4指標の第2予測値を算出する(f)ステップと、を有する。
【0018】
本発明の一態様としての軌道変位予測システムは、軌道の長さ方向に沿って配置された複数の区間を含む軌道における複数の区間の各々での軌道変位を予測する軌道変位予測システムである。当該軌道変位予測システムは、複数の区間の各々で、長さ方向に沿って互いに異なる複数の測定位置で軌道変位を測定し、複数の測定位置の各々でそれぞれ測定された複数の軌道変位の測定値のばらつきを表す第1指標を算出する第1算出部と、第1算出部により軌道変位が測定された後、複数の区間の各々で、複数の測定位置で軌道変位を再度測定し、第1指標を再度算出する第2算出部と、を有する。また、当該軌道変位予測システムは、複数の区間の各々で、第1算出部により算出された第1指標の第1算出値と、第2算出部により算出された第1指標の第2算出値と、に基づいて、第2算出部により軌道変位が測定される以前の軌道変位の変化の程度を表す第2指標を算出する第3算出部と、複数の区間の各々でそれぞれ算出された複数の第1算出値と、第3算出部により複数の区間の各々でそれぞれ算出された複数の第2指標の第3算出値と、に基づいて、第1指標と第2指標との関係を示す回帰式を算出する第4算出部と、を有する。また、当該軌道変位予測システムは、複数の区間の各々で、第1算出値と、回帰式と、に基づいて、第2指標の第1予測値を算出し、算出された第1予測値と、第3算出値と、の関係を示す第1補正係数を算出する第5算出部と、複数の区間の各々で、第2算出値と、回帰式と、第5算出部により算出された第1補正係数の第4算出値と、に基づいて、第2算出部により軌道変位が測定された以後の軌道変位の変化の程度を表す第3指標の第2予測値を算出する第6算出部と、を有する。
【0019】
また、他の一態様として、第5算出部は、複数の区間の各々で、回帰式に第1指標として第1算出値を代入することにより、第1予測値を算出し、算出された第1予測値に対する第3算出値の比率である第1補正係数を算出してもよい。
【0020】
また、他の一態様として、第6算出部は、複数の区間の各々で、回帰式に第1指標として第2算出値を代入することにより、第2指標の第3予測値を算出し、算出された第3予測値に第1補正係数を乗ずることにより、第2予測値を算出してもよい。
【0021】
また、他の一態様として、当該軌道変位予測システムは、第2算出部により軌道変位が測定された後、複数の区間の各々で、複数の測定位置で軌道変位を再度測定し、第1指標を再度算出する第7算出部と、複数の区間の各々で、第2算出値と、第7算出部により算出された第1指標の第5算出値と、に基づいて、第7算出部により軌道変位が測定される以前の軌道変位の変化の程度を表す第4指標を算出する第8算出部と、を有してもよい。また、当該軌道変位予測システムは、複数の区間の各々で、第3予測値と、第8算出部により算出された第4指標の第6算出値と、第1補正係数と、の関係を示す第2補正係数を算出する第9算出部と、複数の区間の各々で、第5算出値と、回帰式と、第4算出値と、第9算出部により算出された第2補正係数の第7算出値と、に基づいて、第7算出部により軌道変位が測定された以後の軌道変位の変化の程度を表す第5指標の第4予測値を算出する第10算出部と、を有してもよい。
【0022】
また、他の一態様として、第9算出部は、複数の区間の各々で、第3予測値と第1補正係数との積に対する、第6算出値の比率である、第2補正係数を算出してもよい。
【0023】
また、他の一態様として、第5算出部は、複数の区間の各々で、回帰式に第1指標として第1算出値を代入することにより、第1予測値を算出し、算出された第1予測値に対する第3算出値の差分である第1補正係数を算出してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様を適用することで、軌道変位を予測する軌道変位予測方法において、軌道変位の履歴データが少なく、十分でない場合でも、将来の軌道変位を高精度で予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態1の軌道変位予測システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1の軌道変位予測方法の一部のステップを示すフロー図である。
【
図3】実施の形態1の軌道変位予測方法による1回目の軌道変位の測定を説明するための図である。
【
図4】実施の形態1の軌道変位予測方法による2回目の軌道変位の測定を説明するための図である。
【
図5】実施の形態1の軌道変位予測方法による回帰式の算出を説明するための図である。
【
図6】実施の形態1の軌道変位予測方法による補正係数の算出を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1の軌道変位予測方法による3回目の軌道変位の測定を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1の軌道変位予測方法による補正係数の算出を説明するための図である。
【
図9】実施の形態1の変形例の軌道変位予測方法による補正係数の算出を説明するための図である。
【
図10】実施の形態2の軌道変位予測方法による回帰式の算出を説明するための図である。
【
図11】実施の形態2の軌道変位予測方法による補正係数の算出を説明するための図である。
【
図12】実施の形態2の軌道変位予測方法による補正係数の算出を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0028】
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0029】
更に、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見やすくするためにハッチング(網掛け)を省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見やすくするためにハッチングを付す場合もある。
【0030】
なお、以下の実施の形態においてA~Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
【0031】
(実施の形態1)
<軌道変位予測システム及び軌道変位予測方法>
初めに、実施の形態1の軌道変位予測システム及び軌道変位予測方法について説明する。本実施の形態1の軌道変位予測システムは、軌道の長さ方向に沿って配置された複数の区間を含む軌道における複数の区間の各々での軌道変位を予測する軌道変位予測システムであり、本実施の形態1の軌道変位予測方法は、軌道の長さ方向に沿って配置された複数の区間を含む軌道における複数の区間の各々での軌道変位を予測する軌道変位予測方法であり、本実施の形態1の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法である。
【0032】
図1は、実施の形態1の軌道変位予測システムの構成を示すブロック図である。
図2は、実施の形態1の軌道変位予測方法の一部のステップを示すフロー図である。
図3は、実施の形態1の軌道変位予測方法による1回目の軌道変位の測定を説明するための図である。
図4は、実施の形態1の軌道変位予測方法による2回目の軌道変位の測定を説明するための図である。
図5は、実施の形態1の軌道変位予測方法による回帰式の算出を説明するための図である。
図6は、実施の形態1の軌道変位予測方法による補正係数の算出を説明するための図である。
【0033】
図1に示すように、本実施の形態1の軌道変位予測システム10は、第1算出部11と、第2算出部12と、第3算出部13と、第4算出部14と、第5算出部15と、第6算出部16と、第7算出部17と、第8算出部18と、第9算出部19と、第10算出部20と、を有する。第1算出部11乃至第10算出部20により、算出部21が構成されている。また、本実施の形態1の軌道変位予測システムは、軌道変位を測定する測定部22と、算出部21及び測定部22の動作を制御する制御部23と、を有してもよい。第1算出部11乃至第10算出部20即ち算出部21、及び、制御部23として、例えば各算出部に一定の動作をさせるためのプログラムを実行するコンピュータを用いることができる。
【0034】
測定部22は、例えば軌道検測車に設けられており、軌道検測車が軌道を走行する際に、軌道の変位である軌道変位を測定する。また、前述したように、軌道変位として、レールの上下方向の変位である高低変位と、レールの幅方向(左右方向)の変位である通り変位と、左右両側のレール同士の間隔の設定値からの差分である軌間変位と、左右両側のレール同士の高さの差の設定値からの差分である水準変位と、一定距離を隔てた2点間の水準の差である平面性変位と、を例示することができる。測定部22として、例示した各種の軌道変位を適切に測定可能な各種の測定装置を用いることができる。
【0035】
本実施の形態1の軌道変位予測方法では、まず、第1算出部11(
図1参照)は、
図3に示すように、軌道RAの長さ方向に沿って配置された複数の区間SCを含む軌道RAにおける複数の区間SCの各々で、軌道RAの長さ方向に沿って互いに異なる複数の測定位置MPで軌道変位TRを測定部22(
図1参照)により測定し、複数の測定位置MPの各々でそれぞれ測定された複数の軌道変位TRの測定値のばらつきを表す指標IN1を算出する(
図2のステップS11)。
【0036】
好適には、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差又は最大値を用いることができるが、以下では、標準偏差を用いる場合を例示して説明する。このような場合、
図2に示すように、ステップS11では、1回目の軌道変位TRの標準偏差を算出することになる。なお、本願明細書では、1回目の軌道変位TRとは、1回目の測定の軌道変位TRを意味し、2回目以降についても同様である。
【0037】
ステップS11にて1回目の軌道変位TRの測定を行って得られる測定値を、
図3に示す。
図3では、一例として、5つの区間SCを、区間SC1、区間SC2、区間SC3、区間SC4及び区間SC5と表示している。また、
図3では、1回目の軌道変位TRを軌道変位TR1として実線で表示している。
【0038】
指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、
図3に示すように、指標IN1の算出値CV1として、複数の区間SCの各々における複数の測定位置MPの各々でそれぞれ測定された複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差σ
1の算出値を用いることができる。そして、指標IN1の算出値CV1を、1回目の軌道変位TRの標準偏差とし、1回目の軌道変位TRとみなすことができる。
【0039】
なお、以下では、何回目の軌道変位TRの測定かを規定せずに一般化した軌道変位TRの標準偏差を、標準偏差σと定義する。
【0040】
本実施の形態1の軌道変位予測方法では、ステップS11にて第1算出部11が測定部22により軌道変位TRを測定した後、第2算出部12(
図1参照)は、
図4に示すように、複数の区間SCの各々で、複数の測定位置MPで軌道変位TRを測定部22により再度測定し、指標IN1を再度算出する(
図2のステップS12)。
【0041】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、
図2に示すように、ステップS12では、2回目の軌道変位TRの標準偏差を算出することになる。また、1回目の軌道変位TRの測定の後、予め定められた期間経過後、2回目の軌道変位TRの測定を行うことになるが、通常は、1回目の軌道変位TRの測定の後、例えば数か月乃至1年の期間経過後、2回目の軌道変位TRを測定することができる。
【0042】
図4でも、
図3と同様に、一例として、5つの区間SCを、区間SC1、区間SC2、区間SC3、区間SC4及び区間SC5と表示している。また、
図4では、理解を簡単にするために、2回目の軌道変位TRを軌道変位TR2として実線で表示し、1回目の測定の軌道変位TRを軌道変位TR1として破線で表示している。
【0043】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、
図4に示すように、指標IN1の算出値CV2として、複数の区間SCの各々における複数の測定位置MPの各々でそれぞれ測定された複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差σ
2の算出値を用いることができる。そして、指標IN1の算出値CV2を、2回目の軌道変位TRの標準偏差とし、2回目の軌道変位TRとみなすことができる。
【0044】
本実施の形態1の軌道変位予測方法では、次に、第3算出部13(
図1参照)は、
図4に示すように、複数の区間SCの各々で、ステップS11にて第1算出部11により算出された指標IN1の算出値CV1と、ステップS12にて第2算出部12により算出された指標IN1の算出値CV2と、に基づいて、ステップS11にて第1算出部11が測定部22により軌道変位TRを測定した以後であって且つステップS12にて第2算出部12が測定部22により軌道変位TRを測定する以前の軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN2を算出する(
図2のステップS13)。
【0045】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、
図2に示すように、ステップS13では、1、2回目の標準偏差の差分を算出することになる。また、指標IN2の算出値CV3として、1、2回目の標準偏差の差分Δσ
12の算出値を用いることができる。即ち、指標IN2として、指標IN1の算出値CV1に対する指標IN1の算出値CV2の差分を用いることができる。また、1、2回目の標準偏差の差分Δσ
12は、下記式(数1)により算出される。
【0046】
【0047】
なお、以下では、何回目の軌道変位TRの測定かを規定せずに一般化した連続2回の軌道変位TRの測定の間の標準偏差の差分を、標準偏差の差分Δσと定義する。
【0048】
本実施の形態1の軌道変位予測方法では、次に、第4算出部14(
図1参照)は、
図5に示すように、ステップS11にて第1算出部11により複数の区間SCの各々でそれぞれ算出された複数の指標IN1の算出値CV1(標準偏差σ
1)と、ステップS12にて第2算出部12により複数の区間SCの各々でそれぞれ算出された複数の指標IN2の算出値CV3(標準偏差の差分Δσ
12)と、に基づいて、指標IN1と指標IN2との関係を示す回帰式RE1を算出する(
図2のステップS14)。なお、
図5は、横軸を軌道変位TRの標準偏差σとし、縦軸を標準偏差の差分Δσとしたグラフを模式的に示す。
【0049】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、
図2に示すように、ステップS14では、標準偏差σ
1と標準偏差の差分Δσ
12とから回帰式RE1を算出することになる。
【0050】
図5に示すように、横軸を軌道変位TRの標準偏差σとし、縦軸を標準偏差の差分Δσとしたグラフに、複数の区間SCの各々でそれぞれ算出された指標IN1の算出値CV1(標準偏差σ
1)と指標IN2の算出値CV3(標準偏差の差分Δσ
12)との組データをプロットする。そして、下記式(数2)又は下記式(数2)の一例としての下記式(数3)により表される回帰式RE1を用いた回帰計算を行って、例えば相関係数が最大になるようなa及びbの値を決定する。このような方法により、回帰式RE1を算出することができる。
【0051】
【0052】
【0053】
本実施の形態1の軌道変位予測方法では、次に、第5算出部15(
図1参照)は、
図6に示すように、複数の区間SCの各々で、ステップS11にて第1算出部11により算出された指標IN1の算出値CV1(標準偏差σ
1)と、回帰式RE1と、に基づいて、指標IN2の予測値PV1を算出し、算出された指標IN2の予測値PV1と、指標IN2の算出値CV3と、の関係を示す補正係数CF1を算出する(
図2のステップS15)。なお、
図6は、
図5と同様に、横軸を軌道変位TRの標準偏差σとし、縦軸を標準偏差の差分Δσとしたグラフを模式的に示す。
【0054】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、
図2に示すように、ステップS15では、第5算出部15は、標準偏差の差分Δσ
12の補正係数CF1を算出することになる。
【0055】
好適には、第5算出部15は、
図6に示すように、ステップS15では、複数の区間SCの各々で、回帰式RE1に指標IN1として算出値CV1を代入することにより、指標IN2の予測値PV1を算出する。また、好適には、第5算出部15は、
図6に示すように、ステップS15では、複数の区間SCの各々で、算出された指標IN2の予測値PV1に対する指標IN2の算出値CV3の比率である補正係数CF1を算出する。また、補正係数CF1を補正係数γ
1として表すことにすると、補正係数γ
1は、下記式(数4)により表される。
【0056】
【0057】
ここで、上記式(数4)の等式の右辺の分子は、指標IN2の算出値CV3(標準偏差の差分Δσ12)を表し、上記式(数4)の等式の右辺の分母は、指標IN2の予測値PV1を表す。
【0058】
また、回帰式RE1が上記式(数3)により表される場合、指標IN2の算出値CV3(標準偏差の差分Δσ
12)は、下記式(数5)により表される補正式CE1を満たすことになる。なお、
図6では、回帰式RE1を実線で表示し、補正式CE1を破線で表示している。
【0059】
【0060】
本実施の形態1では、ステップS15では、補正係数を、基本モデル(回帰式)による軌道変位の予測値と実際の軌道変位の測定値から算出する。
図6に示すように、本実施の形態1では、計算方法の一例として、実際の軌道変位の測定値を、基本モデルによる軌道変位の予測値で除することにより、補正係数を算出する方法を示している。このような方法により、補正係数を容易に計算することができる。
【0061】
即ち、本実施の形態1では、ステップS11乃至ステップS15では、ある程度長い区間において軌道変位の予測のための基本モデルを構築して、短い区間ごとに基本モデルで予測した軌道変位に対して補正係数γ
1を乗じる。基本モデルは、例えば、初期の軌道変位の標準偏差または輪重から軌道変位の標準偏差の進みを計算するものである。
図3及び
図4に示すように、軌道変位の測定値から入力値である初期の軌道変位及び軌道変位の進みを計算し、
図5に示すように、軌道変位の測定値のプロットから回帰分析等で近似曲線を推定して基本モデルを構築する。
【0062】
本実施の形態1の軌道変位予測方法では、次に、第6算出部16(
図1参照)は、
図6に示すように、複数の区間SCの各々で、ステップS12にて第2算出部12により算出された指標IN1の算出値CV2と、回帰式RE1と、ステップS15にて第5算出部15により算出された補正係数CF1の算出値CV4と、に基づいて、ステップS12にて第2算出部12が測定部22により軌道変位TRを測定した以後の軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN3の予測値PV2を算出する(
図2のステップS16)。
【0063】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、
図2に示すように、ステップS16では、第6算出部16は、2、3回目の標準偏差の差分を予測することになる。また、指標IN3の予測値PV2を、2、3回目の標準偏差の差分の予測値Δσ
2
*として表すことにすると、指標IN3の予測値PV2は、下記式(数6)により表される。
【0064】
【0065】
ここで、上記式(数6)の等式の右辺のうち左側の因子を、指標IN2の予測値PV3とすると、指標IN2の予測値PV3は、回帰式RE1に指標IN1として算出値CV2(標準偏差σ2)を代入することにより、算出される。即ち、好適には、第6算出部16は、ステップS16では、複数の区間SCの各々で、回帰式RE1に指標IN1として算出値CV2を代入することにより、指標IN2の予測値PV3を算出し、算出された指標IN2の予測値PV3に補正係数CF1を乗ずることにより、指標IN3の予測値PV2を算出することになる。このような方法により、指標IN3の予測値PV2を容易に算出することができる。
【0066】
従来の軌道変位の予測方法では、過去に取得された軌道変位の履歴データが十分に蓄積されている場合に、蓄積されたデータに基づく軌道変位の予測を行っていた。しかしながら、軌道変位の履歴データが十分に蓄積されていない場合、又は、軌道変位の履歴データが十分に蓄積されていても軌道構造、車両若しくは運転等の条件が変化した場合には、高精度で軌道変位を予測することが困難であった。
【0067】
また、従来の軌道保守計画の作成のための方法では、シミュレーションにより加速度又は車両の揺れを予測し、軌道保守計画に用いている。この際に、軌道変位(路面の凹凸量)を、設計値と実測値との比較により補正する必要があった。
【0068】
一方、本実施の形態1の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法では、1回目に測定された軌道変位TRのばらつきを表す指標IN1の算出値CV1と、2回目に測定された軌道変位TRのばらつきを表す指標IN1の算出値CV2と、に基づいて、2回目の測定以前の軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN2を算出し、指標IN1と指標IN2との関係を示す回帰式RE1を算出する。また、本実施の形態1の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法では、回帰式RE1に基づいて算出された指標IN2の予測値PV1と、指標IN2の算出値CV3との関係を示す補正係数CF1の算出値CV4に基づいて、2回目の測定以後の軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN3を予測する。
【0069】
軌道変位の履歴データが少ない場合でも、ある程度長い区間の軌道変位について、数回分の測定データが得られている場合には、その区間内での軌道変位の変化の傾向を確認することは可能である。従って、本実施の形態1の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法では、まずある程度長い区間内での軌道変位の変化の傾向を予測するための基本モデル(回帰式)を構築し、区間内の軌道変位の変化を大まかに予測する。次に、さらに短い区間に区切って、短い区間ごとに異なる補正係数を設定し、基本モデルによる計算結果の補正を行う。基本モデルは、例えば、初期の軌道変位の標準偏差又は輪重から軌道変位の標準偏差の進みを計算するものである。
【0070】
そのため、本実施の形態1の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法では、過去2回の測定で測定された軌道変位の測定値があれば足り、それ以上多数回の測定を行う必要がない。従って、軌道変位の履歴データが少なく、十分でない場合でも、将来の軌道変位を高精度で予測することができる。また、軌道変位の履歴データが十分に蓄積されていても軌道構造、車両又は運転等の条件が変化した場合には、高精度で軌道変位を予測することが困難であったが、本実施の形態1によれば、このような場合でも、将来の軌道変位を高精度で予測することができる。なお、本実施の形態1では、初期の軌道変位の標準偏差から軌道変位の標準偏差の進みを計算するが、実施の形態2では、初期の輪重から軌道変位の標準偏差の進みを計算する。
【0071】
また、本実施の形態1の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法では、軌道変位の測定結果から将来の軌道変位を予測するモデルを作成し、過去2回分の軌道変位の測定値と、作成されたモデルによる1回分の軌道変位の予測値と、を比較することにより、更にその後の軌道変位の予測値の補正を行う。そのため、シミュレーションを行うことなく、将来の軌道変位を高精度で予測することができる。
【0072】
また、本実施の形態1の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法によれば、算出した軌道変位の予測値から軌道の保守周期の予測値を算出することにより、ライフサイクルコストの計算をすることも可能である。
【0073】
また、本実施の形態1の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法では、補正係数を、短い区間ごとの特徴、又は、軌道変位の変化の傾向、に応じて設定することができる。
【0074】
また、本実施の形態1の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法では、補正係数を、軌道変位の測定データが追加される度に更新することができる。以下、補正係数の更新について説明する。
【0075】
図7は、実施の形態1の軌道変位予測方法による3回目の軌道変位の測定を説明するための図である。
図8は、実施の形態1の軌道変位予測方法による補正係数の算出を説明するための図である。
【0076】
好適には、ステップS12にて第2算出部12が測定部22により軌道変位TRを測定した後、第7算出部17(
図1参照)は、
図7に示すように、複数の区間SCの各々で、複数の測定位置MPで軌道変位TRを測定部22により再度測定し、指標IN1を再度算出する(
図2のステップS17)。
【0077】
指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、
図2に示すように、ステップS17では、3回目の軌道変位TRの標準偏差を算出することになる。また、2回目の軌道変位TRの測定の後、予め定められた期間経過後、3回目の軌道変位TRの測定を行うことになるが、例えば、1回目の軌道変位TRの測定の後、2回目の軌道変位TRの測定を行うまでの期間と等しい期間経過後、3回目の軌道変位TRの測定を行うことができる。
【0078】
図7でも、
図3と同様に、一例として、5つの区間SCを、区間SC1、区間SC2、区間SC3、区間SC4及び区間SC5と表示している。また、
図7では、理解を簡単にするために、3回目の軌道変位TRを軌道変位TR3として実線で表示し、2回目の軌道変位TRを軌道変位TR2として破線で表示している。
【0079】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、
図7に示すように、指標IN1の算出値CV5として、複数の区間SCの各々における複数の測定位置MPの各々でそれぞれ測定された複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差σ
3の算出値を用いることができる。そして、指標IN1の算出値CV5を、3回目の軌道変位TRの標準偏差とし、3回目の軌道変位TRとみなすことができる。
【0080】
本実施の形態1の軌道変位予測方法では、次に、第8算出部18(
図1参照)は、
図7に示すように、複数の区間SCの各々で、ステップS12にて第2算出部12により算出された指標IN1の算出値CV2と、ステップS17にて第7算出部17により算出された指標IN1の算出値CV5と、に基づいて、ステップS12にて第2算出部12が測定部22により軌道変位TRを測定した以後であって且つステップS17にて第7算出部17が測定部22により軌道変位TRを測定する以前の軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN4を算出する(
図2のステップS18)。
【0081】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、
図2に示すように、ステップS18では、2、3回目の標準偏差の差分を算出することになる。また、指標IN4の算出値CV6として、2、3回目の標準偏差の差分Δσ
23の算出値を用いることができる。また、2、3回目の標準偏差の差分Δσ
23は、下記式(数7)により算出される。
【0082】
【0083】
本実施の形態1の軌道変位予測方法では、次に、第9算出部19(
図1参照)は、
図8に示すように、複数の区間SCの各々で、指標IN2の予測値PV3と、ステップS18にて第8算出部18により算出された指標IN4の算出値CV6と、補正係数CF1と、の関係を示す補正係数CF2を算出する(
図2のステップS19)。なお、
図8は、
図5と同様に、横軸を軌道変位TRの標準偏差σとし、縦軸を標準偏差の差分Δσとしたグラフを模式的に示す。
【0084】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、
図2に示すように、ステップS19では、第9算出部19は、標準偏差の差分Δσ
23の補正係数CF2を算出することになる。
【0085】
好適には、第9算出部19は、
図8に示すように、ステップS19では、複数の区間SCの各々で、指標IN2の予測値PV3と補正係数CF1との積に対する、指標IN4の算出値CV6の比率である、補正係数CF2を算出する。また、補正係数CF2を補正係数γ
2として表すことにすると、補正係数γ
2は、下記式(数8)により表される。
【0086】
【0087】
ここで、上記式(数8)の等式の右辺の分子は、指標IN2の算出値CV6(標準偏差の差分Δσ23)を表し、上記式(数8)の等式の右辺の分母のうち左側の因子は、指標IN2の予測値PV3を表し、回帰式RE1に指標IN1として算出値CV2(標準偏差σ2)を代入することにより、算出される。
【0088】
また、回帰式RE1が上記式(数3)により表される場合、指標IN4の算出値CV6(標準偏差の差分Δσ
23)は、下記式(数9)により表される補正式CE2を満たすことになる。なお、
図8では、回帰式RE1を実線で表示し、補正式CE1及び補正式CE2を破線で表示している。
【0089】
【0090】
このような場合、ステップS18では、補正係数を、軌道変位の測定データが追加される度に更新することができる。
【0091】
本実施の形態1の軌道変位予測方法では、次に、第10算出部20(
図1参照)は、
図8に示すように、複数の区間SCの各々で、ステップS17にて第7算出部17により算出された指標IN1の算出値CV5と、回帰式RE1と、ステップS15にて第5算出部15により算出された補正係数CF1の算出値CV4と、ステップS19にて第9算出部19により算出された補正係数CF2の算出値CV7と、に基づいて、ステップS17にて第7算出部17が測定部22により軌道変位TRを測定した以後の軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN5の予測値PV4を算出する(
図2のステップS20)。
【0092】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、
図2に示すように、ステップS20では、第10算出部20は、3、4回目の標準偏差の差分を予測することになる。また、指標IN5の予測値PV4を、3、4回目の標準偏差の差分の予測値Δσ
3
*として表すことにすると、指標IN5の予測値PV4は、下記式(数10)により表される。
【0093】
【0094】
ここで、上記式(数10)の等式の右辺のうち最も左側の因子は、回帰式RE1に指標IN1として算出値CV5(標準偏差σ3)を代入することにより、算出される。
【0095】
ステップS17乃至ステップS20を行うことにより、軌道変位のデータが追加で得られるたびに、軌道変位の予測値及び測定値も追加で得られるため、補正係数が更新される。軌道変位のデータの取得と補正係数の更新を繰り返し、より高精度で軌道変位の予測が可能となる。
【0096】
なお、ステップS17乃至ステップS20を繰り返すことができる。即ち、軌道変位の測定を、3回目と同様に、4回目、5回目・・・i回目(iは2以上の自然数)と繰り返すことができる。そして、i回目の軌道変位の測定を行った後、i回目、i+1回目の標準偏差の差分を予測する場合には、i回目、i+1回目の標準偏差の差分の予測値Δσi
*は、下記式(数11)により表される。
【0097】
【0098】
ここで、上記式(数11)の等式の右辺のうち左側の因子は、i回目の軌道変位TRの測定を行った以後であって且つi+1回目の軌道変位TRの測定を行う以前の軌道変位TRの変化の程度を表す指標の予測値を表す。また、上記式(数11)の等式の右辺のうち右側の因子は、補正係数を表し、下記式(数12)により表される。
【0099】
【0100】
このようにして、軌道変位の測定を、4回目、5回目と繰り返すことができ、3回目と同様に補正係数を更新することができ、3回目と同様に予測値の補正を行うことができる。
【0101】
ステップS17乃至ステップS20を繰り返すことにより、軌道変位のデータの取得と補正係数の更新を繰り返し、より高精度で軌道変位の予測が可能となる。更に、補正係数の変化を追跡することにより、補正係数が急激に大きくなっている区間については、軌道変位が急進している区間であるとして抽出することも可能である。
【0102】
また、本実施の形態1の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法では、軌道構造、車両又は運転等の条件が変化した場合には、例えば回帰式RE1を算出し直すことにより、基本モデルを条件の変化に応じて変更し、補正係数についてはそのまま適用する。そして、条件の変化に対応して将来の軌道変位が軌道変位の推移に与える影響や効果を予測することで、軌道構造の改良、車両の更新、速度向上等の施策の検討を行うことも可能である。また、条件が変化した場合でも将来の軌道変位の変化を算出できるため、施策を実施した場合としない場合のライフサイクルコストの変化を比較することで、施策の評価を行うことができる。そのため、軌道構造、車両又は運転等の条件の変化にも対応可能な将来の軌道変位を予測する軌道変位予測方法及び軌道変位予測システムを実現することができる。
【0103】
<軌道変位予測システム及び軌道変位予測方法の変形例>
次に、実施の形態1の軌道変位予測システム及び軌道変位予測方法の変形例について説明する。本変形例の軌道変位予測方法は、補正係数CF1が、算出された指標IN2の予測値PV1に対する指標IN2の算出値CV3の比率であることに代えて、算出された指標IN2の予測値PV1に対する指標IN2の算出値CV3の差分である点で、実施の形態1の軌道変位予測方法と異なる。
【0104】
図9は、実施の形態1の変形例の軌道変位予測方法による補正係数の算出を説明するための図である。なお、
図9は、
図5と同様に、横軸を軌道変位TRの標準偏差σとし、縦軸を標準偏差の差分Δσとしたグラフを模式的に示す。
【0105】
本変形例の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法では、実施の形態1と同様にステップS11乃至ステップS14を行った後、ステップS15では、第5算出部15は、
図9に示すように、複数の区間SCの各々で、指標IN1の算出値CV1(標準偏差σ
1)と、回帰式RE1と、に基づいて、指標IN2の予測値PV1を算出し、算出された指標IN2の予測値PV1と、指標IN2の算出値CV3と、の関係を示す補正係数CF1を算出する。好適には、ステップS15では、第5算出部15は、複数の区間SCの各々で、回帰式RE1に指標IN1として算出値CV1を代入することにより、指標IN2の予測値PV1を算出する。
【0106】
しかし、本変形例では、ステップS15では、実施の形態1と異なり、第5算出部15は、
図9に示すように、算出された指標IN2の予測値PV1に対する指標IN2の算出値CV3の差分である補正係数CF1を算出する。また、補正係数CF1を補正係数γ
1として表すことにすると、補正係数γ
1は、下記式(数13)により表される。
【0107】
【0108】
ここで、上記式(数13)の等式の右辺のうち左側の項は、指標IN2の算出値CV3(標準偏差の差分Δσ12)を表し、上記式(数13)の等式の右辺のうち右側の項は、指標IN2の予測値PV1を表す。
【0109】
また、回帰式RE1が上記式(数3)により表される場合、指標IN2の算出値CV3(標準偏差の差分Δσ
12)は、下記式(数14)により表される補正式CE3を満たすことになる。なお、
図9では、回帰式RE1を実線で表示し、補正式CE3を破線で表示している。
【0110】
【0111】
本変形例でも、実施の形態1と同様に、ステップS15では、補正係数を、基本モデルによる軌道変位の予測値と実際の軌道変位の測定値から算出する。しかし、
図9に補正係数の計算方法を示すように、本変形例では、計算方法の一例として、実施の形態1と異なり、実際の軌道変位の測定値を、基本モデルによる軌道変位の予測値と実際の軌道変位の測定値との差分により算出する方法を示している。
【0112】
本変形例の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法では、ステップS16では、実施の形態1と同様に、第6算出部16は、
図9に示すように、複数の区間SCの各々で、ステップS12にて第2算出部12により算出された指標IN1の算出値CV2と、回帰式RE1と、ステップS15にて第5算出部15により算出された補正係数CF1の算出値CV4と、に基づいて、ステップS12にて第2算出部12が測定部22により軌道変位TRを測定した以後の軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN3の予測値PV2を算出する。
【0113】
本変形例でも、ステップS16では、実施の形態1と同様に、第5算出部15は、2、3回目の標準偏差の差分を予測することになる。しかし、指標IN3の予測値PV2を、2、3回目の標準偏差の差分の予測値Δσ2
*として表すことにすると、本変形例では、ステップS16では、実施の形態1と異なり、指標IN3の予測値PV2は、下記式(数15)により表される。
【0114】
【0115】
ここで、上記式(数15)の等式の右辺のうち左側の項は、回帰式RE1に指標IN1として算出値CV2(標準偏差σ2)を代入することにより、算出される。
【0116】
本変形例の軌道変位予測方法は、補正係数CF1が、算出された指標IN2の予測値PV1に対する指標IN2の算出値CV3の比率であることに代えて、算出された指標IN2の予測値PV1に対する指標IN2の算出値CV3の差分である点以外は、実施の形態1と同様にすることができる。そのため、本変形例の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法でも、例えば、軌道変位の履歴データが少なく、十分でない場合でも、将来の軌道変位を高精度で予測できること等、実施の形態1の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法と同様の効果を有する。
【0117】
(実施の形態2)
<軌道変位予測システム及び軌道変位予測方法>
次に、実施の形態2の軌道変位予測システム及び軌道変位予測方法について説明する。本実施の形態2の軌道変位予測方法は、複数の軌道変位TRの測定値のばらつきを表す指標IN1と、軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN2と、の関係を示す回帰式RE1に代えて、複数の区間SCの各々での輪重を表す指標と、軌道変位の変化の程度を表す指標IN2と、の関係を示す回帰式RE2を用いる点で、実施の形態1の軌道変位予測方法と異なる。
【0118】
図10は、実施の形態2の軌道変位予測方法による回帰式の算出を説明するための図である。
図11及び
図12は、実施の形態2の軌道変位予測方法による補正係数の算出を説明するための図である。
【0119】
本実施の形態2の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法では、ステップS11では、実施の形態1と同様に、第1算出部11(
図1参照)は、
図3に示したように、複数の区間SCの各々で、軌道RAの長さ方向に沿って互いに異なる複数の測定位置MPで軌道変位TRを測定し、複数の測定位置MPの各々でそれぞれ測定された複数の軌道変位TRの測定値に基づいて、複数の軌道変位TRの測定値のばらつきを表す指標IN1を算出する。好適には、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差又は最大値を用いることができるが、以下では、標準偏差を用いる場合を例示して説明する。
【0120】
一方、本実施の形態2では、ステップS11では、実施の形態1と異なり、第1算出部11は、複数の測定位置MPの各々でそれぞれ測定された複数の軌道変位TRの測定値に基づいて、指標IN1に加えて、複数の区間SCの各々での輪重を表す指標として、複数の区間SCの各々での累積輪重WL1を算出する。
【0121】
ここで、輪重を表す指標として累積輪重を用いる場合は、下記式(数16)乃至下記式(数21)に従って、軌道に作用する1車輪あたりの輪重を計算し、軌道上を通過する車輪の数を乗じて累積輪重を算出する。
【0122】
まず、累積輪重WL1を累積輪重Pとして表すことにすると、累積輪重Pは、車両の荷重による輪重Pst、高低変位による慣性力ΔPsp、レール凹凸による動的輪重ΔPunspを用いて、下記式(数16)により表される。
【0123】
【0124】
ここで、高低変位による慣性力ΔPsp、及び、レール凹凸による動的輪重ΔPunspは、車両の荷重による輪重Pstに対して、軌道状態による輪重を表す。
【0125】
また、直線区間、曲線区間における内軌側、及び、曲線区間における外軌側についての車両の荷重による輪重Pstは、下記式(数17)、下記式(数18)、及び、下記式(数19)により表される。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
また、高低変位による慣性力ΔPsp、及び、レール凹凸による動的輪重ΔPunspは、下記式(数20)、及び、下記式(数21)により表される。
【0130】
【0131】
【0132】
上記式(数17)乃至上記式(数21)における変数は、下記に示すような変数である。
W0:車両が静止している時の軸重(kN)
HG
*:車両の有効重心高さ(m)
v:車両の走行速度(m/s)
V:車両の走行速度(km/h)
R:曲線半径(m)
C:カント(m)
G:軌間(m)
z:高低変位(mm)
α:継目の状態による係数
【0133】
上記式(数16)に示すように、累積輪重WL1(累積輪重P)は、高低変位による慣性力ΔPspに依存し、上記式(数20)に示すように、高低変位による慣性力ΔPspは、高低変位zに依存し、高低変位zは、指標IN1(標準偏差σ1)に依存する。そのため、ステップS11にて第1算出部11が測定部22により軌道変位TRを測定して得られる累積輪重WL1(累積輪重P)を累積輪重P1とすると、累積輪重WL1(累積輪重P1)は、指標IN1の算出値CV1(標準偏差σ1)に依存する。
【0134】
本実施の形態2では、ステップS11にて第1算出部11が測定部22により軌道変位TRを測定した後、ステップS12では、第2算出部12(
図1参照)は、実施の形態1と同様に、
図4に示すように、複数の区間SCの各々で、複数の測定位置MPで軌道変位TRを測定部22により再度測定し、指標IN1を再度算出する。
【0135】
一方、本実施の形態2では、ステップS12では、実施の形態1と異なり、第2算出部12は、指標IN1に加えて、複数の区間SCの各々での輪重を表す指標として、複数の区間SCの各々での累積輪重WL1を再度算出する。ステップS12における累積輪重WL1の算出は、ステップS11における累積輪重WL1の算出と同様にすることができる。そのため、ステップS12にて第2算出部12が測定部22により軌道変位TRを測定して得られる累積輪重WL1(累積輪重P)を累積輪重P2とすると、累積輪重WL1(累積輪重P2)は、指標IN1の算出値CV2(標準偏差σ2)に依存する。
【0136】
本実施の形態2では、次に、ステップS13では、実施の形態1と同様に、第3算出部13(
図1参照)は、ステップS11にて第1算出部11により算出された指標IN1の算出値CV1と、ステップS12にて第2算出部12により算出された指標IN1の算出値CV2と、に基づいて、ステップS11にて第1算出部11が測定部22により軌道変位TRを測定した以後であって且つステップS12にて第2算出部12が測定部22により軌道変位TRを測定する以前の軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN2を算出する。本実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、指標IN2として、指標IN1の算出値CV1に対する指標IN1の算出値CV2の差分を用いることができる。
【0137】
本実施の形態2では、次に、ステップS14では、実施の形態1と異なり、第4算出部14(
図1参照)は、
図10に示すように、ステップS11にて第1算出部11により複数の区間SCの各々でそれぞれ算出された複数の輪重を表す指標としての累積輪重WL1の輪重算出値CL1と、ステップS13にて第3算出部13により複数の区間SCの各々でそれぞれ算出された複数の指標IN2の算出値CV3と、に基づいて、累積輪重WL1と指標IN2との関係を示す回帰式RE2を算出する。なお、
図10は、横軸を累積輪重Pとし、縦軸を標準偏差の差分Δσとしたグラフを模式的に示す。
【0138】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、
図10に示すように、ステップS14では、累積輪重WL1(累積輪重P
1)と標準偏差の差分Δσ
12とから回帰式RE2を算出することになる。
【0139】
図10に示すように、横軸を累積輪重Pとし、縦軸を標準偏差の差分Δσとしたグラフに、複数の区間SCの各々でそれぞれ算出された累積輪重WL1の輪重算出値CL1(累積輪重P
1)と指標IN2の算出値CV3(標準偏差の差分Δσ
12)との組データをプロットする。そして、下記式(数22)又は下記式(数22)の一例としての下記式(数23)により表される回帰式RE2を用いた回帰計算を行って、例えば相関係数が最大になるようなc及びdの値を決定する。このような方法により、回帰式RE2を算出することができる。
【0140】
【0141】
【0142】
本実施の形態2では、次に、ステップS15では、実施の形態1と異なり、第5算出部15(
図1参照)は、
図11に示すように、複数の区間SCの各々で、累積輪重WL1の輪重算出値CL1(累積輪重P
1)と、回帰式RE2と、に基づいて、指標IN2の予測値PV1を算出し、算出された指標IN2の予測値PV1と、指標IN2の算出値CV3と、の関係を示す補正係数CF1を算出する。なお、
図11は、
図10と同様に、横軸を累積輪重Pとし、縦軸を標準偏差の差分Δσとしたグラフを模式的に示す。
【0143】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、ステップS15では、第5算出部15は、標準偏差の差分Δσ12の補正係数CF1を算出することになる。
【0144】
好適には、第5算出部15は、
図11に示すように、ステップS15では、複数の区間SCの各々で、回帰式RE2に累積輪重WL1として輪重算出値CL1を代入することにより、指標IN2の予測値PV1を算出する。また、好適には、第5算出部15は、
図11に示すように、ステップS15では、複数の区間SCの各々で、算出された指標IN2の予測値PV1に対する指標IN2の算出値CV3の比率である補正係数CF1を算出する。また、補正係数CF1を補正係数γ
1として表すことにすると、補正係数γ
1は、実施の形態1と同様に、上記式(数4)により表される。
【0145】
また、回帰式RE2が上記式(数23)により表される場合、指標IN2の算出値CV3(標準偏差の差分Δσ
12)は、下記式(数24)により表される補正式CE4を満たすことになる。なお、
図11では、回帰式RE2を実線で表示し、補正式CE4を破線で表示している。
【0146】
【0147】
本実施の形態2では、次に、ステップS16では、実施の形態1と異なり、第6算出部16は、
図11に示すように、複数の区間SCの各々で、ステップS12にて第2算出部12により算出された累積輪重WL1の輪重算出値CL2と、回帰式RE2と、ステップS15にて第5算出部15により算出された補正係数CF1の算出値CV4と、に基づいて、ステップS12にて第2算出部12が測定部22により軌道変位TRを測定した以後の軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN3の予測値PV2を算出する。
【0148】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、ステップS16では、第6算出部16は、2、3回目の標準偏差の差分を予測することになる。また、指標IN3の予測値PV2を、2、3回目の標準偏差の差分の予測値Δσ2
*として表すことにすると、指標IN3の予測値PV2は、上記式(数6)により表される。また、好適には、第6算出部16は、ステップS16では、複数の区間SCの各々で、回帰式RE2に累積輪重WL1として輪重算出値CL2を代入することにより、指標IN2の予測値PV3を算出し、算出された指標IN2の予測値PV3に補正係数CF1を乗ずることにより、指標IN3の予測値PV2を算出することになる。
【0149】
本実施の形態2の軌道変位予測方法は、複数の軌道変位TRの測定値のばらつきを表す指標IN1と、軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN2と、の関係を示す回帰式RE1に代えて、複数の区間SCの各々での輪重を表す指標と、軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN2と、の関係を示す回帰式RE2を用いる点以外は、実施の形態1と同様にすることができる。そのため、本実施の形態2の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法でも、例えば、軌道変位の履歴データが少なく、十分でない場合でも、将来の軌道変位を高精度で予測できること等、実施の形態1の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法と同様の効果を有する。
【0150】
また、本実施の形態2では、複数の軌道変位TRの測定値のばらつきを表す指標IN1と、軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN2と、の関係を示す回帰式RE1に代えて、複数の区間SCの各々での輪重を表す指標と、軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN2と、の関係を示す回帰式RE2を用いる点以外は、実施の形態1と同様に、ステップS17乃至ステップS20を行うことができる。
【0151】
即ち、本実施の形態2では、ステップS12にて第2算出部12が測定部22により軌道変位TRを測定した後、ステップS17では、第7算出部17(
図1参照)は、実施の形態1と異なり、複数の区間SCの各々で、複数の測定位置MPで軌道変位TRを再度測定し、指標IN1と累積輪重WL1とを再度算出する。
【0152】
また、本実施の形態2では、次に、ステップS18では、第8算出部18(
図1参照)は、
図7に示したように、実施の形態1と同様に、複数の区間SCの各々で、ステップS12にて第2算出部12により算出された指標IN1の算出値CV2と、ステップS17にて第7算出部17により算出された指標IN1の算出値CV5と、に基づいて、ステップS12にて第2算出部12が測定部22により軌道変位TRを測定した以後であって且つステップS17にて第7算出部17が測定部22により軌道変位TRを測定する以前の軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN4を算出する。
【0153】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、ステップS18では、2、3回目の標準偏差の差分を算出することになる。また、指標IN4の算出値CV6として、2、3回目の標準偏差の差分Δσ23の算出値を用いることができる。また、2、3回目の標準偏差の差分Δσ23は、上記式(数7)により算出される。
【0154】
また、本実施の形態2では、次に、ステップS19では、第9算出部19(
図1参照)は、
図12に示すように、実施の形態1と同様に、複数の区間SCの各々で、指標IN2の予測値PV3と、ステップS18にて第8算出部18により算出された指標IN4の算出値CV6と、補正係数CF1と、の関係を示す補正係数CF2を算出する。なお、
図12は、
図10と同様に、横軸を累積輪重Pとし、縦軸を標準偏差の差分Δσとしたグラフを模式的に示す。
【0155】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、ステップS19では、第9算出部19は、標準偏差の差分Δσ23の補正係数CF2を算出することになる。
【0156】
好適には、第9算出部19は、
図12に示すように、ステップS19では、複数の区間SCの各々で、指標IN2の予測値PV3と補正係数CF1との積に対する、指標IN4の算出値CV6の比率である、補正係数CF2を算出する。また、補正係数CF2を補正係数γ
2として表すことにすると、補正係数γ
2は、上記式(数8)により表される。
【0157】
また、回帰式RE2が上記式(数23)により表される場合、指標IN2の算出値CV6(標準偏差の差分Δσ
23)は、下記式(数25)により表される補正式CE5を満たすことになる。なお、
図12では、回帰式RE2を実線で表示し、補正式CE4及び補正式CE5を破線で表示している。
【0158】
【0159】
但し、ステップS19では、実施の形態1と異なり、回帰式RE2に、累積輪重WL1として、ステップS12にて第2算出部12により算出された累積輪重WL1の輪重算出値CL2(累積輪重P2)を代入することにより、指標IN2の予測値PV3を算出する。
【0160】
また、本実施の形態2では、次に、ステップS20では、第10算出部20は、実施の形態1と異なり、複数の区間SCの各々で、ステップS17にて第7算出部17により算出された累積輪重WL1の輪重算出値CL3(累積輪重P3)と、回帰式RE2と、ステップS15にて第5算出部15により算出された補正係数CF1の算出値CV4と、ステップS19にて第9算出部19により算出された補正係数CF2の算出値CV7と、に基づいて、ステップS17にて第7算出部17が測定部22により軌道変位TRを測定した以後の軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN5の予測値PV4を算出する。
【0161】
前述したように、指標IN1として、複数の軌道変位TRの測定値の標準偏差を用いる場合、ステップS20では、第10算出部20は、3、4回目の標準偏差の差分を予測することになる。また、指標IN5の予測値PV4を、3、4回目の標準偏差の差分の予測値Δσ3
*として表すことにすると、指標IN5の予測値PV4は、上記式(数10)により表される。
【0162】
ステップS17乃至ステップS20を繰り返すことにより、軌道変位のデータの取得と補正係数の更新を繰り返し、より高精度で軌道変位の予測が可能となる。そのため、本実施の形態2の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法でも、実施の形態1の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法と同様に、軌道構造、車両又は運転等の条件の変化にも対応可能な将来の軌道変位を予測する軌道変位予測方法及び軌道変位予測システムを実現することができる。
【0163】
なお、輪重を表す指標の算出方法として、複数の区間SCの各々で同一の算出方法を用いることができればよいので、輪重を表す指標として、累積輪重に限定されるものではなく、累積輪重の算出方法以外の各種の算出方法により算出された輪重を用いることができる。また、以下の変形例において説明するように、輪重を表す指標に代えて、レール圧力を表す指標を用いることもできる。
【0164】
<軌道変位予測システム及び軌道変位予測方法の変形例>
前述したように、実施の形態2の軌道変位予測システム及び軌道変位予測方法の変形例として、輪重を表す指標に代えて、レール圧力を表す指標を用いる場合について説明する。なお、輪重を表す指標に代えて、レール圧力を表す指標を用いること以外については、本変形例の軌道変位予測システム及び軌道変位予測方法は、実施の形態2の軌道変位予測システム及び軌道変位予測方法と同様にすることができるので、その詳細な説明及び図示を省略する。
【0165】
本変形例では、ステップS11では、実施の形態2と同様に、第1算出部11(
図1参照)は、
図3に示したように、複数の区間SCの各々で、軌道RAの長さ方向に沿って互いに異なる複数の測定位置MPで軌道変位TRを測定し、複数の測定位置MPの各々でそれぞれ測定された複数の軌道変位TRの測定値に基づいて、複数の軌道変位TRの測定値のばらつきを表す指標IN1を算出する。
【0166】
一方、本変形例では、ステップS11では、実施の形態2と異なり、第1算出部11は、複数の測定位置MPの各々でそれぞれ測定された複数の軌道変位TRの測定値に基づいて、指標IN1に加えて、輪重を表す指標に代えて、複数の区間SCの各々でのレール圧力を表す指標として、複数の区間SCの各々でのレール圧力を算出する。また、輪重を表す指標に代えて、レール圧力を表す指標を用いる場合は、下記式(数26)乃至下記式(数31)に従って、レール圧力を算出する。
【0167】
まず、レール圧力をレール圧力Pr(kN)として表すことにすると、レール圧力Prは、前述した実施の形態2で説明した累積輪重P、まくらぎ敷設間隔α(m)、及び、連続弾性床上の梁モデルを用いて、下記(数26)により表される。
【0168】
【0169】
また、上記式(数26)における変数βは、下記式(数27)乃至下記(数30)を用いて表される。
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
上記式(数27)乃至上記式(数30)における変数は、下記に示すような変数である。
k:単位長さあたりのレール支持ばね係数(MN/m2)
EIx:レールの垂直曲げ剛さ(MN・m2)
DP:軌道パッドばね係数(=110MN/m)
DB:道床ばね係数(MN/m)
DS:路盤ばね係数(MN/m)
hB:道床厚(mm)
K30:路盤強度(MN/m3)
ST:まくらぎ底面積(m2)
【0175】
また、まくらぎとして弾性まくらぎを用いた場合は、単位長さ当たりのレール支持ばね係数kに代えて、下記式(数31)により算出される単位長さあたりのレール支持ばね係数k´を用いる。
【0176】
【0177】
上記式(数31)における変数は、下記に示すような変数である。
DM:弾性材ばね係数(MN/m)
【0178】
上記式(数26)に示すように、レール圧力Prは、累積輪重Pに依存し、前述した実施の形態2で説明したように、累積輪重Pは、指標IN1の算出値CV1(標準偏差σ1)に依存する。そのため、ステップS11にて第1算出部11が測定部22により軌道変位TRを測定して得られるレール圧力Prをレール圧力Pr1とすると、レール圧力Pr1は、指標IN1の算出値CV1(標準偏差σ1)に依存する。
【0179】
本変形例では、ステップS11にて第1算出部11が測定部22により軌道変位TRを測定した後、ステップS12では、第2算出部12(
図1参照)は、実施の形態2と同様に、
図4に示すように、複数の区間SCの各々で、複数の測定位置MPで軌道変位TRを測定部22により再度測定し、指標IN1を再度算出する。
【0180】
一方、本変形例では、ステップS12では、実施の形態2と異なり、第2算出部12は、指標IN1に加えて、輪重を表す指標に代えて、複数の区間SCの各々でのレール圧力を表す指標として、複数の区間SCの各々でのレール圧力Prを再度算出する。ステップS12におけるレール圧力Prの算出は、ステップS11におけるレール圧力Prの算出と同様にすることができる。そのため、ステップS12にて第2算出部12が測定部22により軌道変位TRを測定して得られるレール圧力Prをレール圧力Pr2とすると、レール圧力Pr2は、指標IN1の算出値CV2(標準偏差σ2)に依存する。
【0181】
本変形例では、次に、ステップS13では、実施の形態2と同様にして、第3算出部(
図1参照)は、ステップS11にて第1算出部11が測定部22により軌道変位TRを測定した以後であって且つステップS12にて第2算出部12が測定部22により軌道変位TRを測定する以前の軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN2を算出する。
【0182】
本変形例では、次に、ステップS14では、輪重を表す指標に代えて、レール圧力を表す指標を用いる点以外は、実施の形態2と同様にすることができる。そして、ステップS14では、第4算出部14(
図1参照)は、ステップS11にて第1算出部11により複数の区間SCの各々でそれぞれ算出された複数のレール圧力を表す指標としてのレール圧力P
rの指標算出値(
図10の輪重算出値CL1に相当)と、ステップS13にて第3算出部13により複数の区間SCの各々でそれぞれ算出された複数の指標IN2の算出値CV3と、に基づいて、レール圧力を表す指標と指標IN2との関係を示す回帰式RE2を算出する(
図10参照)。
【0183】
本変形例では、次に、ステップS15では、輪重を表す指標に代えて、レール圧力を表す指標を用いる点以外は、実施の形態2と同様にすることができる。そして、ステップS15では、第5算出部15(
図1参照)は、複数の区間SCの各々で、レール圧力P
rの指標算出値(
図11の輪重算出値CL1に相当)と、回帰式RE2と、に基づいて、指標IN2の予測値PV1を算出し、算出された指標IN2の予測値PV1と、指標IN2の算出値CV3と、の関係を示す補正係数CF1を算出する(
図11参照)。
【0184】
本変形例では、次に、ステップS16では、輪重を表す指標に代えて、レール圧力を表す指標を用いる点以外は、実施の形態2と同様にすることができる。そして、ステップS16では、第6算出部16(
図1参照)は、複数の区間SCの各々で、ステップS12にて第2算出部12により算出されたレール圧力P
rの指標算出値(
図11の輪重算出値CL2に相当)と、回帰式RE2と、ステップS15にて第5算出部15により算出された補正係数CF1の算出値CV4と、に基づいて、ステップS12にて第2算出部12が測定部22により軌道変位TRを測定した以後の軌道変位TRの変化の程度を表す指標IN3の予測値PV2を算出する(
図11参照)。
【0185】
本変形例の軌道変位予測方法は、輪重を表す指標に代えて、レール圧力を表す指標を用いる点以外は、実施の形態2と同様にすることができる。そのため、本変形例の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法でも、例えば、軌道変位の履歴データが少なく、十分でない場合でも、将来の軌道変位を高精度で予測できること等、実施の形態2の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法と同様の効果を有する。
【0186】
本変形例では、その後、輪重を表す指標に代えて、レール圧力を表す指標を用いる点以外は、実施の形態2と同様に、ステップS17乃至ステップS20を行うことができる(
図12参照)。
【0187】
ステップS17乃至ステップS20を繰り返すことにより、軌道変位のデータの取得と補正係数の更新を繰り返し、より高精度で軌道変位の予測が可能となる。そのため、本変形例の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法でも、実施の形態2の軌道変位予測システムを用いた軌道変位予測方法と同様に、軌道構造、車両又は運転等の条件の変化にも対応可能な将来の軌道変位を予測する軌道変位予測方法及び軌道変位予測システムを実現することができる。
【0188】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0189】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0190】
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明は、軌道変位を予測する軌道変位予測方法及び軌道変位予測システムに適用して有効である。
【符号の説明】
【0192】
10 軌道変位予測システム
11 第1算出部
12 第2算出部
13 第3算出部
14 第4算出部
15 第5算出部
16 第6算出部
17 第7算出部
18 第8算出部
19 第9算出部
20 第10算出部
21 算出部
22 測定部
23 制御部
CE1~CE5 補正式
CF1、CF2 補正係数
CL1~CL3 輪重算出値
CV1~CV7 算出値
IN1~IN5 指標
MP 測定位置
PV1~PV4 予測値
RA 軌道
RE1、RE2 回帰式
SC、SC1~SC5 区間
TR、TR1~TR3 軌道変位
WL1 累積輪重