(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】クロスフェード装置を備えるレーダターゲットエミュレータおよび信号をクロスフェードするための方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20220802BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20220802BHJP
【FI】
G01S7/40 152
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2019535914
(86)(22)【出願日】2017-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2017084684
(87)【国際公開番号】W WO2018122285
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-07
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】513131176
【氏名又は名称】アーファオエル・リスト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・グルーバー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・エルンスト・ガートリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート・シュライバー
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-230029(JP,A)
【文献】特開平09-270772(JP,A)
【文献】特開平04-212083(JP,A)
【文献】特開2003-149324(JP,A)
【文献】国際公開第2011/008146(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列式に接続された時間遅延構成体(200)のチェーン、切り替え装置(300)、及び、クロスフェード装置(100)を備えるレーダターゲットエミュレータ(1)であって、
前記クロスフェード装置(100)は、
第一の信号を受信するために設けられている第一の入力部(110a)と、
第二の信号を受信するために設けられている第二の入力部(110b)と、
信号伝送式に前記第一の入力部(110a)に接続されているとともに、前記第一の信号を
所定の程度で減衰させ、第一の減衰信号を供給するために構成されている第一の減衰装置(120a)と、
信号伝送式に前記第二の入力部(110b)に接続されているとともに、前記第二の信号を
所定の程度で減衰させ、第二の減衰信号を供給するために構成されている第二の減衰装置(120b)と、
第三の信号を受信するために設けられている第三の入力部(110c)と、
信号伝送式に前記第三の入力部(110c)に接続されているとともに、前記第三の信号を所定の程度で減衰させ、第三の減衰信号を供給するために構成されている第三の減衰装置(120c)と、
前記第一の減衰信号と前記第二の減衰信号
と前記第三の減衰信号とを加算し、対応する出力信号を出力するために構成されている加算装置(130)と、を
有しており、
前記クロスフェード装置(100)は、3個の減衰装置(120a,120b,120c)のみを有しており、前記切り替え装置(300)は、前記時間遅延構成体(200)の個々の任意の信号を前記減衰装置(120a,120b,120c)の少なくとも一つに伝送することが可能であるように、前記時間遅延構成体(200)を信号伝送式に前記クロスフェード装置(100)に接続している
レーダターゲットエミュレータ。
【請求項2】
前記第一および第二の減衰装置(120a,120b)は、少なくとも実質的に互いに独立して調整可能である、請求項1に記載のレーダターゲットエミュレータ。
【請求項3】
前記第一の減衰装置(120a)および/または前記第二の減衰装置(120b)は、調整可能な
減衰装置である、請求項1または2に記載のレーダターゲットエミュレータ。
【請求項4】
前記第一の信号と、前記第二の信号と、
前記第三の信号とは、共通の原信号(U))に遡り、
少なくとも一つの特性に関して互いに異なっている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のレーダターゲットエミュレータ。
【請求項5】
前記第一の減衰装置(120a)の減衰レベルおよび/または前記第二の減衰装置(120b)の減衰レベル、
および/または前記第三の減衰装置(120c)の減衰レベルは、極小値と極大値の間で調整され、および/または変化させられ、
前記極大値は少なくとも実質的に100%の減衰に相当し、および/または前記極小値は少なくとも実質的に0%の減衰に相当する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のレーダターゲットエミュレータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のレーダターゲットエミュレータを用いて、信号をクロスフェードするための方法であって、
S1 第一の減衰装置に第一の信号を
与え、第二の減衰装置に第二の信号を与え
、第三の減衰装置に第三の信号を与えるステップと、
S2 前記第一および前記第二の減衰装置を用いて、前記第一の信号と前記第二の信号を
異なる減衰レベルで減衰させるステップであって、前記第一の減衰装置および/または前記第二の減衰装置の減衰レベルは、
ダイナミックおよび/もしくはインクリメンタルに、
または少なくとも実質的に連続的に調整すること、および/または変化させることが
可能であり、付加的に前記第三の減衰装置を用いて、前記第三の信号は、前記第一および/または前記第二の減衰装置の減衰レベルと異なる減衰レベルで減衰させられ、前記第三の減衰装置の減衰レベルは、ダイナミックおよび/もしくはインクリメンタルに、または少なくとも実質的に連続的に変化させることができるステップと、
S2a 前記第一の減衰装置の減衰レベルが高められる一方、少なくとも実質的に同時に、前記第二の減衰装置の減衰レベルは低減され、前記第三の減衰装置の減衰レベルは恒常的に、少なくとも実質的に極大値に相当するステップと、
S2b 前記第一の減衰装置の減衰レベルが、少なくとも実質的に極大値に到達し、前記第二の減衰装置の減衰レベルが、少なくとも実質的に極小値に到達したとき、
前記第二の減衰装置の減衰レベルが高められる一方、少なくとも実質的に同時に、前記第三の減衰装置の減衰レベルは低減され、前記第一の減衰装置の減衰レベルは恒常的に、少なくとも実質的に極大値に相当し、
第四の信号を前記第一の減衰装置に与えるステップと、
S3 第一の減衰信号と第二の減衰信号と
第三の減衰信号とを供給するステップと、
S4 前記第一の減衰信号と前記第二の減衰信号と
前記第三の減衰信号とを、出力信号が前記第一の信号と前記第二の信号
と前記第三の信号との所望の混合を有するように加算するステップと、
S5 出力信号を供給するステップと、を有する方法。
【請求項7】
前記第一の減衰装置の減衰レベルおよび/または前記第二の減衰装置の減衰レベル、
および/または前記第三の減衰装置の減衰レベルは、極小値と極大値の間で調整され、および/または変化させられ
る、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法であって、
S2bにおいて、付加的に第四の信号が前記第一の減衰装置に与えられ、
S2cにおいて、前記第二の減衰装置の減衰レベルが、少なくとも実質的に極大値
に到達し、前記第三の減衰装置の減衰レベルが、少なくとも実質的に極小値
に0%に到達したとき、
前記第三の減衰装置の減衰レベルが高められる一方、少なくとも実質的に同時に、前記第一の減衰装置の減衰レベルは低減され、前記第二の減衰装置の減衰レベルは
恒常的に、少なくとも実質的に極大値
に相当する、方法。
【請求項9】
前記第一の減衰装置(120a)および/または前記第二の減衰装置(120b)は、、可変式および/またはインクリメンタルに、または少なくとも実質的に連続的および/もしくはダイナミックに調整可能な減衰装置である、請求項3に記載のレーダターゲットエミュレータ。
【請求項10】
前記第一の信号と、前記第二の信号と、前記第三の信号とは、共通の原信号(U))に遡り、時間遅延に関して互いに異なっている、請求項4に記載のレーダターゲットエミュレータ。
【請求項11】
前記第一の減衰装置、前記第二の減衰装置、前記第三の減衰装置の減衰レベルの極大値が100%であり、極小値が0%である、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロスフェード装置を備えるレーダターゲットエミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
特に地上に配備される車両、例えば乗用車、トラック、またはオートバイなどのモバイルシステムの複雑性は、近年増大し続けている。排気および/または燃料消費を低減すること、あるいは運転の快適さを増大させることと並んで、モバイルシステムの複雑化も、まさに大都市圏において常に増大する交通量と、それに伴って増大する様々な運転状況の複雑性の処理を容易にするために行われている。これを担うのは通常、運転者支援システムであり、当該運転者支援システムは車両内センサを介して、および/または他の車両および/または定置箇所もしくは施設との通信を介して、車両環境に関する情報、特に予測されるルートを、標準的状況および/または極端な状況において、指示の型式で運転者を支援するため、および/または車両挙動にアクティブに介入するために用いる。
【0003】
多くの場合、少なくとも上記のセンサシステムの構成要素としてレーダセンサが用いられ、当該レーダセンサは障害物および/または先行車両などに関して車両の直接的な周囲を監視する。このような支援システムを評価するために、これらのセンサに対して一の、特に仮想的なテストシナリオに関する情報を供給し、当該支援システムの反応を分析することが知られている。
【0004】
特許文献1から、プログラム可能な光ファイバ遅延ラインおよびそれを含むレーダターゲットシミュレーションシステムが知られている。遅延ラインの特別な型式が開示されており、各遅延ラインは、予め定められた光遅延を有する多数の光ファイバセグメントと、所望の遅延に累積するセグメントのみを集合遅延ラインに互いに接続させるためのスイッチング機構を含む。一の実施例において異なるセグメントは、互いに異なる長さおよび対応した異なる遅延期間を有し、2進数列で配置されている。選択されたセグメントは、集合遅延ラインに切り替えられ、望まないセグメントに対しては、光バイパスが集合遅延ラインに切り替えられる。開示されたシステムはこのとき好適に二つのこのような遅延ラインを有しており、作動時に適切な長さを有する第一の遅延ラインはアクティブに切り替えられており、すなわち信号を伝送する一方、第二の遅延ラインは非アクティブに切り替えられている。この第二の遅延ラインにおいて次に必要とされる長さが調整され、その後、第一のラインから第二のラインへの切り替えが行われ、このようなやり方で比較的大きな位相ジャンプを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第69221121号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の点に鑑み、本発明は、クロスフェード装置を備えるレーダターゲットエミュレータもしくは信号をクロスフェードするための方法であって、従来技術に対して改善されているものを記載することを課題とする。
【0007】
上記の課題は本発明によれば、請求項1に記載のクロスフェード装置を備えるレーダターゲットエミュレータと、請求項7に記載の信号をクロスフェードするための方法とによって解決される。
【0008】
本発明の第一の態様は、クロスフェード装置を備えるレーダターゲットエミュレータに関し、クロスフェード装置は、第一の信号を受信するために設けられている第一の入力部と、第二の信号を受信するために設けられている第二の入力部と、信号伝送式に第一の入力部に接続されているとともに、第一の信号を、特に所定の程度で減衰させ、第一の減衰信号を供給するために構成されている第一の減衰装置と、信号伝送式に第二の入力部に接続されているとともに、第二の信号を、特に所定の程度で減衰させ、第二の減衰信号を供給するために構成されている第二の減衰装置と、第一の減衰信号と第二の減衰信号を加算し、対応する出力信号を出力するために構成されている加算装置と、を有する。
【0009】
これは特に有利であるが、それはこのようなやり方で対象物の移動が、次の距離セグメントへの突然の切り替えによってエミュレートされるのではなく、好適には隣接する距離セグメントから、減衰装置を用いて疑似的にあらゆる任意の中間位置が調整され、それにより少なくとも実質的に連続的な移動を、高周波信号の有意な位相ジャンプを有さずに写像するためである。
【0010】
本発明は、異なる長さで遅延させられた二つの信号をオーバーラップさせると、一の信号が生じ、当該信号の「重心」は、振幅によって重みづけされた、元の遅延の平均値に相当するという認識に基づいている。この関係は
図1において、時間的なずれを有する信号s(t-t
1)およびs(t-t
2)に基づいて表示される。時間的なずれを有するこれらの信号の線形結合as(t-t
1)+(1-a)s(t-t
2)の「重心」はこうして、t
1とt
2の間でパラメータaを適切に選択することにより、ずらすことができる。好ましくはこのやり方で、近似的に中間にあるあらゆる遅延をシミュレートすることが可能である。FMCWレーダセンサ(もしくは連続波レーダセンサ)の場合、挙動はさらに改善されるが、それは異なる遅延を介して両方の信号が、異なるけれども互いに接近している周波数を有しているためである。これらの信号をオーバーラップさせると、いわゆるうなり、すなわち振幅変調された振動が生じる。この振動の周波数は、本発明の一の実施によれば両方の元の周波数の重みづけされた平均値に相当する。このやり方で好適に、必要な距離間隔において少なくとも実質的にあらゆる周波数はシミュレートされ、それとともにゼロと極大値の間のあらゆる遅延はシミュレートされる。
【0011】
本発明による「レーダターゲットエミュレータ」とは特にセンサ、特に車両のセンサを刺激するための装置であり、当該装置は特にセンサのレーダ信号を受信し、変調してセンサに戻し、変調の際にテストシナリオが写像され、それによりこの、特に仮想的なテストシナリオにおける制御機器の反応を特定するとともに評価する。
【0012】
本発明による「クロスフェード装置」とは特に、第一の状態において第一の信号に基づいている出力信号を、特に少なくとも実質的に連続的に変化させるために備えられ、特に構成されている装置であり、それにより出力信号は第二の状態において少なくとも実質的に第二の信号に基づいている。
【0013】
本発明による「信号」とは特に、高周波信号、特にレーダ信号である。
【0014】
本発明による「減衰装置」とは特に、入力信号を特に所定の程度において変化させ、特に減衰させるとともに、相応に変化させられた信号を供給するために備えられ、特に構成されている装置である。本発明による減衰装置は一の実施によれば、減衰および/または増幅装置として形成されていてもよく、すなわち本発明による減衰装置を介した入力信号の増幅も、一の実施による保護範囲に明示的に含まれている。
【0015】
本発明による「加算装置」とは特に、高周波技術の領域における電気的にパッシブな構成素子であり、当該構成素子は導波として説明される電磁出力を導体構造体内に結合するために役立つ。本発明による加算器は一の実施の形態によれば、変圧器およびコンデンサを有するブリッジ回路、または例えばストリップラインの型式の電気的導体プレート上の導線カップラー、または導波管の組み合わせを有している。しかしながら本発明による加算装置は、例えば広帯域の演算増幅器を備える加算回路の使用により、アクティブに実現することもできる。
【0016】
本発明の一の実施によれば、第一および第二の減衰装置は少なくとも実質的に互いに独立して調整可能である。これは特に有利であるが、それはこのようなやり方で、レーダターゲットエミュレータを制御する際に有利な柔軟性が可能となるからである。
【0017】
本発明の一のさらなる実施によれば、第一の減衰装置および/または第二の減衰装置は、調整可能な減衰装置、特に可変式および/またはインクリメンタルに、特に少なくとも実質的に連続的および/またはダイナミックに調整可能な減衰装置である。これは特に有利であるが、それはこのようなやり方で出力信号における上記の位相ジャンプを緩和すること、特に回避することができるからであり、それは評価すべきシステムの観点からすると、有利なことにテストシナリオの現実に近い写像を生じさせる。
【0018】
本発明の一のさらなる実施によれば、加算装置はクロスフェード加算器を有する。
【0019】
本発明の一のさらなる実施によればレーダターゲットエミュレータはさらに、第三の信号を受信するために設けられている第三の入力部と、第三の入力信号電界と接続されているとともに、第三の信号を、特に所定の程度で減衰させ、第三の減衰信号を供給するために構成されている第三の減衰装置とを有し、加算装置は、第一の減衰信号と第二の減衰信号と第三の減衰信号とを加算し、対応する出力信号を出力するために構成されている。
【0020】
一の実施の形態によれば第一の信号、第二の信号、および第三の信号は、互いに異なる遅延を有する原信号によって形成される。当該遅延は、エミュレートされる対象物がレーダセンサに対して有するエミュレートされた距離に相当する。対象物が車両に向かって移動する、もしくは車両と対象物との距離が小さくなることをエミュレートすべきとき、第一の信号および第二の信号は、エミュレートすべき距離がそれぞれ写像された距離の間にあるように決定される。以下において方法に関して説明されるように、エミュレートすべき距離は、対応する減衰装置を作動させることにより、エミュレートすべき距離が少なくとも実質的に両方の信号の一つと一致するまで、変化する重み係数を用いて両方の信号から調整される。さらにまた、少なくとも実質的に有意な位相ジャンプを有さずに距離写像を生じさせられるように、ここで説明される第三の入力部は第三の減衰装置を備えている。第三の信号として、エミュレートされる移動方向(すなわちセンサに向かう、もしくはセンサから離れる)に応じて、特に次の必要な距離間隔を形成する上記の両方の信号の一つと共に一の信号が選択され、第三の入力部に与えられる。第三の減衰装置を介して、エミュレートすべき対象物の移動方向のエミュレーションは、少なくとも実質的に連続的に続けることができる。これは特に有利であるが、それはこのやり方でテストシナリオの写像の正確性がさらに向上しているからである。
【0021】
本発明の一のさらなる実施によれば、第一の信号と、第二の信号と、特に第三の信号とは、共通の原信号に遡り、特に少なくとも一つの特性、特に時間遅延に関して、互いに異なっている。ここで説明されるように、一の実施によれば、現実のセンサ、例えば評価すべき車両のセンサから送信されるレーダ信号が受信され、遅延させられ、仮想のテストシナリオを写像する過程でさらなる変調を行うために供給される。本発明の一の実施によれば、三つの信号は少なくとも実質的に、被った遅延に関してのみ異なり、当該遅延はさらなる経過において、センサに対して互いに異なる距離にある異なる対象物のエミュレーションに役立つ。これは特に有利であるが、それはこのようなやり方で複数の信号を人工的に作り出す必要がなく、車両のセンサに入力する必要がなく、センサ自体によって作られた信号を原信号として利用することができるからであり、これもまた現実により近いものであり、したがってテストシナリオの写像の正確性を良好にすることに寄与する。
【0022】
本発明の一のさらなる実施によれば、第一の減衰装置の減衰レベルおよび/または第二の減衰装置の減衰レベル、特におよび/または第三の減衰装置の減衰レベルは、極小値と極大値の間で調整され、および/または変化させられ、特に極大値は少なくとも実質的に100%の減衰に、および/または極小値は少なくとも実質的に0%の減衰に相当する。言い換えれば、少なくとも実質的に100%の減衰の場合、それぞれ与えられた入力信号は少なくとも実質的に完全に抑制される一方、少なくとも実質的に0%の減衰の場合、それぞれ与えられた入力信号は、少なくとも実質的に変化せずに伝送される。これは特に有利であるが、それはこのようなやり方で同じく位相ジャンプの出現が少なくとも緩和され、特に少なくとも実質的に防止されるからである。
【0023】
本発明のさらなる態様は、特に本願で説明される型式のレーダターゲットエミュレータを用いて、信号をクロスフェードするための方法に関し、当該方法は以下のステップ、すなわち、
S1 第一の減衰装置に第一の信号を与えるとともに、第二の減衰装置に第二の信号を与えるステップと、
S2 第一および第二の減衰装置を用いて、第一の信号と第二の信号を、特に異なる減衰レベルで減衰させるステップであって、第一の減衰装置および/または第二の減衰装置の減衰レベルは、特にダイナミックおよび/またはインクリメンタルに、特に少なくとも実質的に連続的に調整すること、および/または変化させることができるステップと、
S3 第一の減衰信号と第二の減衰信号を供給するステップと、
S4 第一の減衰信号と第二の減衰信号を、出力信号が第一の信号と第二の信号の所望の混合を有するように加算するステップと、
S5 出力信号を供給するステップと、を有する。
【0024】
さらなる好適な実施の形態および対応する有利点については、重複を避けるために、レーダターゲットエミュレータに関する上記の説明が参照される。
【0025】
本発明に係る方法の一の実施によれば、S1において付加的に第三の信号が第三の減衰装置に与えられ、S2において付加的に第三の減衰装置を用いて第三の信号は、特に第一および/または第二の減衰装置の減衰レベルと異なる減衰レベルで変化させられ、第三の減衰装置の減衰レベルは、特にダイナミックおよび/またはインクリメンタルに、特に少なくとも実質的に連続的に変化させることができる。S3において付加的に第三の減衰信号を供給し、S4において第一の減衰信号と第二の減衰信号と第三の減衰信号を、出力信号が第一の信号と第二の信号と第三の信号の所望の混合を有するように加算する。さらなる好適な実施の形態および対応する有利点については、重複を避けるために、レーダターゲットエミュレータに関する上記の説明が参照される。
【0026】
本発明に係る方法の一のさらなる実施によれば、第一の減衰装置の減衰レベルおよび/または第二の減衰装置の減衰レベル、特におよび/または第三の減衰装置の減衰レベルは、極小値と極大値の間で調整され、および/または変化させられ、特に極大値は少なくとも実質的に100%の減衰に相当し、および/または極小値は少なくとも実質的に0%の減衰に相当する。さらなる好適な実施の形態および対応する有利点については、重複を避けるために、レーダターゲットエミュレータに関する上記の説明が参照される。
【0027】
本発明に係る方法の一の実施によれば、方法はさらに以下のステップ、すなわち、
S2a 第一の減衰装置の減衰レベルが高められる一方、少なくとも実質的に同時に、第二の減衰装置の減衰レベルは低減され、第三の減衰装置の減衰レベルは特に恒常的に、少なくとも実質的に極大値、特に100%に相当するステップと、
S2b 第一の減衰装置の減衰レベルが、少なくとも実質的に極大値、特に少なくとも実質的に100%に到達し、第二の減衰装置の減衰レベルが、少なくとも実質的に極小値、特に少なくとも実質的に0%に到達したとき、
第二の減衰装置の減衰レベルが高められる一方、少なくとも実質的に同時に、第三の減衰装置の減衰レベルは低減され、第一の減衰装置の減衰レベルは特に恒常的に、少なくとも実質的に極大値、特に100%に相当し、
第四の信号を第一の減衰装置に与えるステップと、を有する。
【0028】
これは特に有利であるが、それはこのようなやり方で対象物距離の所望のエミュレーションを、位相ジャンプが緩和された状態で、特に少なくとも実質的に位相ジャンプが防止された状態で、特に少なくとも実質的に位相ジャンプを有さずに実現することができるからである。ステップS2aでは第一の信号と第二の信号とをクロスフェードすることが説明され、これに対してステップS2bでは、距離が少なくとも実質的に第二の信号によってエミュレートされる距離に相当し、したがって他の距離領域への「切り替え」を行わなければならず、当該他の距離領域内ではその後距離が再び、少なくとも実質的に連続的に調整され得るとき、エミュレートすべき対象物距離を、どのようにさらに変化させることができるか説明されている。これは特に有利であるが、それはこのようなやり方でまた、比較的大きな距離から接近する対象物、もしくは車両から離れてゆく対象物を有利なやり方でエミュレートすることができるからである。
【0029】
本発明に係る方法の一のさらなる実施によれば、以下のステップ、すなわち
S2bにおいて、付加的に第四の信号が第一の減衰装置に与えられ、
S2cにおいて、第二の減衰装置の減衰レベルが、少なくとも実質的に極大値、特に少なくとも実質的に100%に到達し、第三の減衰装置の減衰レベルが、少なくとも実質的に極小値、特に少なくとも実質的に0%に到達したとき、
第三の減衰装置の減衰レベルが高められる一方、少なくとも実質的に同時に、第一の減衰装置の減衰レベルは低減され、第二の減衰装置の減衰レベルは特に恒常的に、少なくとも実質的に極大値、特に100%に相当する。
【0030】
これは特に有利であるが、それはこのようなやり方でまた、さらなる距離領域へのクロスフェードを、特に少なくとも実質的に出力信号における位相ジャンプを有さずに行うことができるからであり、それは第四の信号が入力部であって、当該入力部の減衰装置が少なくとも実質的に100%の極大値の領域内で移動する入力部に与えられるからであり、これにより切り替えの際に生じる位相ジャンプは、少なくとも実質的に出力信号に入り込まないことになる。言い換えれば、必要とされる次の距離領域をエミュレートするために必要とされる信号は、それぞれクロスフェード装置の非アクティブな入力部に与えられる。それぞれの入力部が非アクティブであると見なされる理由は、それぞれの時点でのクロスフェードが他の両方の減衰装置の間で行われ、非アクティブな入力部の減衰レベルが少なくとも実質的に100%であることであり、それによりすでに述べたように、これに応じて与えられる信号の変化は、少なくとも実質的にクロスフェード装置の出力信号に影響を及ぼさない。
【0031】
以下において図に表示されている限定的でない実施の形態に基づいて、本発明をより詳しく説明する。図において少なくとも部分的に概略的に示すのは以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】本発明の一の実施によるクロスフェード装置の基本概念の回路図である。
【
図3】本発明の一の実施によるクロスフェード装置を備えるレーダターゲットエミュレータの回路図である。
【
図4】本発明の一のさらなる実施によるクロスフェード装置を備えるレーダターゲットエミュレータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図2は、本発明の一の実施によるクロスフェード装置100の基本概念の極めて概略的な回路図である。
図2の実施の形態によればクロスフェード装置100は、5個の減衰装置120a,120b,120cおよび複数の、本図では特に5個の加算装置130を有する。元信号Uは直列式に接続された時間遅延構成体200のチェーンに供給される。
【0034】
それぞれの時間遅延構成体200は時間遅延機器と、方向性結合器と、場合により増幅器とを有する。時間遅延機器を用いて元信号は遅延させられる。上記においてすでに説明したようにこの遅延を用いて、テストセンサに対する変調すべき対象物の距離が写像される。このように遅延させられた信号は、方向性結合器を介して分岐され、分岐信号は場合により増幅器を介して増幅され、第一の減衰装置120aに入力信号として供給される。
図2に示す本実施の場合、前記の型式の5個の時間遅延構成体200は直列式に接続されており、それぞれ後置された時間遅延構成体200の入力信号は、前置された時間遅延構成体200の出力信号を有し、特に後置された時間遅延構成体200の入力信号は、前置された時間遅延構成体200の出力信号によって形成される。当該直列接続を介して、それぞれの減衰装置120a,120b,120cに対して全体で5個の入力信号が供給され、当該入力信号はそれぞれ当該入力信号の遅延において異なっている。表示された時間遅延構成体によって提供される時間遅延は必ずしも同一ではないことに留意すべきである。むしろ一の実施によれば、それぞれの時間遅延構成体200に対して、例えばセンサへの1m、2m、4mおよび8mなどの距離を写像するために、異なる時間遅延を与えることが有利である。
【0035】
一の実施によれば元信号Uは、テストセンサの現実のレーダセンサから送信される信号であり、レーダセンサの前に設けられた受信装置により受信され、信号方向において第一の時間遅延構成体200に供給される。このように特に有利なやり方で、単独の遅延線のみを用いることが可能であり、当該単独の遅延線は異なる遅延を有する信号を、写像すべき対象物のエミュレーションのために供給することができる。
【0036】
減衰装置120a,120b,120cの(入力)信号は所定の程度で減衰させられ、減衰信号として供給される。
図2の実施によれば減衰装置120a,120b,120cのそれぞれに対して、加算装置130がそれぞれ設けられており、加算装置は減衰信号を出力信号Aの成分として伝送するために構成されている。
【0037】
図3には本発明の一の実施によるクロスフェード装置100を備えるレーダターゲットエミュレータ1の回路図が示されている。
図3のクロスフェード装置100は、3個の減衰装置120a,120b,120cのみが設けられている点で、少なくとも実質的に
図2のクロスフェード装置と異なる。上記においてすでに説明したように本発明の一の実施によれば3個の減衰装置で十分であるが、それは本発明の一の実施によれば出力信号Aが常に二つの減衰装置120a,120b,120cを用いて調整される一方、残りの減衰装置は少なくとも実質的に100%の減衰レベルを有し、したがってパッシブに切り替えられているからである。当該残りの減衰装置に、時間的推移において次に必要とされる距離領域を定義するために必要な信号が与えられる。距離領域を変更した後、他の両方の減衰装置120a,120b,120cの一つはパッシブに切り替えられている。この段階において対応する減衰装置がパッシブに切り替えられている一方で、次の領域変更を準備するために、対応する入力部にはすでに、後続の距離領域を提供するために必要である信号を与えることができる。
【0038】
したがって
図3に示されるように、クロスフェード装置100の入力部110a,110b,110cの数は3個に減っている。これはクロスフェード装置100の構成上の複雑さを低減させる。しかしながら
図3に示されるように、複数の時間遅延構成体200(本図では7個)を信号伝送式に入力部に接続するために、切り替え装置300が設けられている。
【0039】
切り替え装置300はこの場合、24個の切り替え構成体(図示せず)を有し、当該切り替え構成体は8列で3行のマトリックスの型式で相互接続されている。したがって本発明の一の実施によれば、マトリックスの列は写像すべき対象物の異なる距離に相当し、3個の入力部110a,110b,110cのそれぞれに対して独自の行が備えられている。
【0040】
本発明の一の実施によれば切り替え装置300の切り替え構成体は、方向性結合器と、切り替え機器と、加算装置とを有する。時間遅延構成体の一つから供給された信号は、方向性結合器を介して第一の出力信号と分岐信号とに分岐させられ、当該分岐信号は切り替え機器に供給される。切り替え機器は少なくとも二つの切り替え状態の間、すなわち第一の切り替え状態と第二の切り替え状態の間で往復式に切り替えを行うために構成されており、分岐信号は第一の切り替え状態では加算装置100に供給され、第二の切り替え状態では伝送されない。加算装置は第二の信号を分岐信号と組み合わせて第二の出力信号にする。一の実施によれば、正しい相互接続を確保するために、特に切り替え装置の信号方向において最前の列に、必ずしも第二の入力信号が与えられる必要はない。この場合、第二の出力信号は少なくとも実質的に、分岐信号のみから形成される。説明したばかりのマトリックス構成を介して、時間遅延構成体の個々の任意の信号を減衰装置120a,120b,120cの少なくとも一つに伝送することが可能である。
【0041】
図4は、本発明の一のさらなる実施によるクロスフェード装置100を備えるレーダターゲットエミュレータ1の回路図を示している。
図3に示すレーダターゲットエミュレータ1に対して
図4に示すレーダターゲットエミュレータ1は、直列接続された6個の時間遅延構成体200を示し、当該時間遅延構成体はそれぞれ3τの時間遅延を生じさせる。このように作り出された第一の入力信号は、元信号と同じように上記において説明された型式の切り替え装置300に入力されるが、当該切り替え装置は7列で2行のマトリックスの型式で構成されている。このように生じさせられた両方の第二の出力信号のそれぞれは、直列式に接続されているとともにそれぞれτの時間遅延を実現している3個の時間遅延構成体200のさらなるブロックに伝えられるとともに、場合により再度遅延させられた信号が減衰装置120a,120b,120cの一つに供給される前に、6列で3行のマトリックスの型式のさらなる切り替え装置300に伝えられる。
【0042】
切り替え装置と時間遅延構成体とのこの階層的な構成により、遅延に関してそれぞれ3τに調整可能な第二の出力信号を、さらに1τに分解することが可能である。これは付加的にレーダターゲットエミュレータ1の写像の正確性を高め、このアプローチを介して時間遅延構成体200の第一の直列接続のためのコストを低く保つことができる一方、出力信号Aに対する分解能とスケーラビリティは少なくとも保持され、特に改善される。
【符号の説明】
【0043】
1 レーダターゲットエミュレータ
100 クロスフェード装置
110a (第一の)入力部
110b (第二の)入力部
110c (第三の)入力部
120a (第一の)減衰装置
120b (第二の)減衰装置
120c (第三の)減衰装置
130 加算装置
U 元信号