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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】有機半導体化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20220802BHJP
   C07D 495/22 20060101ALI20220802BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20220802BHJP
   H01L 51/42 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C07D495/04 101
C07D495/22 CSP
H01L31/04 154C
H01L31/08 T
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019548717
(86)(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2018055406
(87)【国際公開番号】W WO2018162447
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】17160116.4
(32)【優先日】2017-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514238696
【氏名又は名称】レイナジー テック インコーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チャンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル、ウィリアム
【審査官】牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-193145(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104557968(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0062726(US,A1)
【文献】Burrezo, Paula Mayorga et al,Planarization, Fusion, and Strain of Carbon-Bridged Phenylenevinylene Oligomers Enhance π-Electron and Charge Conjugation: A Dissectional Vibrational Raman Study,Journal of the American Chemical Society,2015年,137(11),,3834-3843
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
(式中、個々の基が、互いに独立して、出現するごとに、同一に又は異なって、以下の意味:
11及びU12の一方がC=C二重結合であり、他方がCRであり、
21及びU22の一方がC=C二重結合であり、他方がCRであり、
Ar 、Ar 、Ar 5~30個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基R若しくはLで置換されるキノイド性脂環式又は複素環式基、
Ar 及びAr 下式(1C)~(35C)及びそれらの鏡像から選択される、
【化2】
X O、S、Se又はTe、
R、R’ 式Iについて定義されるR 又はLの意味のうちの1つ、
# C=C二重結合を介して、式Iの隣接する基に結合されるsp 炭素原子、
C-C単結合を介して、式I中の隣接する基に結合されるsp 炭素原子、
Z、Z’ O、S、C(=O)、NR、=N-又は=CR-(ここで、Z及びZ’の少なくとも1つが、=N-及び=CR-と異なる)、
Ar 、Ar 縮合5員又は6員芳香環(ここで、1つ以上のCH基が、-O-、-S-、Se、Te、=N-、-NR-又は-C(=O)-で任意選択的に置換され、1つ以上のH原子が、R 又はLで任意選択的に置換される)、
Y CR 、SiR 、GeR 、NR、C(=O)又はS(=O)、
1~4 H、F、Cl、CN、1~40個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル(ここで、O及び/又はS原子が、互いに直接結合されないように、1つ以上のCH基が、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=S)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-SiR00-、-CF-、-CR=CR00-、-CY=CY-又は-C≡C-で任意選択的に置換され、1つ以上のH原子が、F、Cl、Br、I又はCNで任意選択的に置換され、1つ以上のCH又はCH基が、カチオン性又はアニオン性基で任意選択的に置換される)、
又は1~40個のSi原子を有する直鎖状、分枝鎖状若しくは環状シリル、
又はアリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ(ここで、上記の環式基のそれぞれが、5~20個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基Lで置換される)、
L F、Cl、-NO、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、R、OR、SR、-C(=O)X、-C(=O)R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-R、-NH、-NHR、-NR00、-C(=O)NHR、-C(=O)NR00、-SO、-SO、-OH、-NO、-CF、-SF、又は1~20個のSi原子を有する任意選択的に置換されるシリル、又は任意選択的に置換され、任意選択的に、1つ以上のヘテロ原子を含む、1~30個のC原子を有するカルビル若しくはヒドロカルビル、好適には、F、-CN、R、-OR、-SR、-C(=O)-R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-R、-O-C(=O)-OR、-C(=O)-NHR、又は-C(=O)-NR00
、R00 H又は任意選択的にフッ素化される1~40個のC原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル、
ハロゲン、好適には、F又はCl、
a、b 0又は1~10の整数
を有する)
の化合物。
【請求項2】
下式IA、IB
【化3】
から選択され、式IA、IB中、Ar1~5、U11、U21、U22、a、bが、請求項1に示される意味を有し、Ar11及びAr12が、Arについて示される意味のうちの1つを有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式I中のAr及び式IA中のAr11が、下式及びそれらの鏡像:
【化4】
から選択され、式中、個々の基が、互いに独立して、出現するごとに、同一に又は異なって、以下の意味:
X O、S、Se又はTe、
R、R’ 請求項1において定義されるR又はLの意味のうちの1つ、
# C=C二重結合を介して、式I、IA又はIB中の隣接する基に結合されるsp炭素原子、及び
C-C単結合を介して、式I、IA又はIB中の隣接する基に結合されるsp炭素原子、
Z、Z’ O、S、C(=O)、NR、=N-又は=CR-(ここで、Z及びZ’の少なくとも1つが、=N-及び=CR-と異なる)を有する、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
式I中のAr及び式IB中のAr12が、下式及びそれらの鏡像:
【化5】
から選択され、式中、個々の基が、互いに独立して、出現するごとに、同一に又は異なって、以下の意味を有し、
X、Z、Z’、R、#及びが、請求項3に示される意味を有し、
Ar、Ar 縮合5員又は6員芳香環(ここで、1つ以上のCH基が、-O-、-S-、Se、Te、=N-、-NR-又は-C(=O)-で任意選択的に置換され、1つ以上のH原子が、R又はLで任意選択的に置換される)、
Y CR、SiR、GeR、NR、C(=O)又はS(=O)、
ここで、L、R及びRが、請求項1において定義されるとおりである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
Ar及びArが、下式及びそれらの鏡像:
【化6】
から選択され、式中、Ar、Ar、R、R’、X、Y、Z、Z’、#及びが、請求項3及び4において定義されるとおりであり、Y’が、N又はCRを示す、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
下式
【化7】
から選択され、式中、R1~5、R及びR’が、請求項1及び4において示される意味を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
1~4が、任意選択的にフッ素化される1~40個のC原子を有するアルキル若しくはアルコキシ、又は単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、請求項1において定義される1つ以上の基Lで任意選択的に置換される、4~30個の環原子を有するアリール若しくはヘテロアリールから選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物を含み、半導体、正孔若しくは電子輸送、正孔若しくは電子遮断、導電、光伝導、光活性又は発光特性のうちの1つ以上を有する1つ以上の化合物、及び/又は結合剤をさらに含む組成物。
【請求項9】
1つ以上のn型半導体(そのうちの少なくとも1つが、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物である)を含み、1つ以上のp型半導体をさらに含む、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
共役ポリマーから選択される1つ以上のp型半導体を含む、請求項又はに記載の組成物。
【請求項11】
請求項10のいずれか一項に記載の組成物から形成されるバルクヘテロ接合(BHJ)。
【請求項12】
電子若しくは光電子デバイスにおける、又はこのようなデバイスの構成要素における、又はこのようなデバイスを含むアセンブリにおける、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物、又は請求項10のいずれか一項に記載の組成物を含み、有機溶媒から選択される1つ以上の溶媒をさらに含む配合物。
【請求項14】
請求項1~のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項10のいずれか一項に記載の組成物を含む、電子若しくは光電子デバイス、又はその構成要素、又はそれを含むアセンブリ。
【請求項15】
有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機発光電気化学セル(OLEC)、有機光起電デバイス(OPV)、有機光検出器(OPD)、有機太陽電池、色素増感太陽電池(DSSC)、ペロブスカイト系太陽電池(PSC)、有機光電気化学セル(OPEC)、レーザーダイオード、ショットキーダイオード、光伝導体、光検出器、熱電デバイス及びLCウインドウから選択される、請求項14に記載の電子又は光電子デバイス。
【請求項16】
電荷注入層、電荷輸送層、中間層、平坦化層、帯電防止フィルム、ポリマー電解質膜(PEM)、伝導性基板及び伝導性パターンから選択される、請求項14に記載の構成要素。
【請求項17】
集積回路(IC)、無線自動識別(RFID)タグ、セキュリティマーキング、セキュリティデバイス、フラットパネルディスプレイ、フラットパネルディスプレイのバックライト、電子写真デバイス、電子写真記録デバイス、有機記憶デバイス、センサーデバイス、バイオセンサー及びバイオチップから選択される、請求項14に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π伸長したω-二置換されたジシアノメチレンキノイド構造を含有する新規な有機半導体化合物、それらの調製方法及びそれに使用される遊離体又は中間体、それらを含有する組成物、ポリマーブレンド及び配合物、有機電子(OE:organic electronic)デバイス、特に、有機光起電(OPV:organic photovoltaic)デバイス、ペロブスカイト系太陽電池(PSC:perovskite-based solar cell)デバイス、有機光検出器(OPD:organic photodetector)、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)及び有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)の調製における、又はそれらの調製のための有機半導体としてのこれらの化合物、組成物及びポリマーブレンドの使用、並びにこれらの化合物、組成物又はポリマーブレンドを含むOE、OPV、PSC、OPD、OFET及びOLEDデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多用途の、より低コストの有機電子(OE)デバイスを製造するために、有機半導体(OSC)材料の開発があった。このような材料は、ほんの数例を挙げると、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、ペロブスカイト系太陽電池(PSC)デバイス、有機光検出器(OPD)、有機光起電(OPV)電池、センサー、記憶素子及び論理回路を含む広範なデバイス又は装置に応用される。有機半導体材料は、典型的に、例えば50~300nmの厚さの薄層の形態で、電子デバイス中に存在する。
【0003】
OSC材料は、主に、低温で費用効果の高い溶液処理技術によって製造されるOEデバイスにおいて大きな利益を生み出す商業的展望のため、ここ20年にわたって大きな注目を集めてきた。有機及び/又はポリマー半導体は、軽量の可撓性のバックプレーンを製造する可能性、低コストで、高速の溶液ベースの製造技術を用いて広域ディスプレイを作製する可能性、並びにそれらの光学及び電子特性が、合理的な化学構造修飾によって微調整可能であることなどの、無機の同等物を上回る多くの利点を有するものと一般に考えられている。しかしながら、主な欠点は、それらが、比較的低いデバイス性能、並びに低い熱、光及び電気的安定性を未だに示すことである。過去およそ20年間にわたる徹底的な構造設計及び合成試験のおかげで、広範な新規なπ共役ポリマーが入手可能になり、OSCベースのデバイス、特に、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)におけるそれらの性能は、電荷キャリア移動度の点で、アモルファスシリコンのものを上回る大きな改善を遂げた。その一方で、活性な電子供与材料として低バンドギャップπ共役ポリマーを用いて製造される有機太陽電池の電力変換効率は、10%を超えた。
【0004】
これまで、OFET、OPV電池又はOPDのようなOEデバイスにおけるOSC材料として使用され得る多数のπ共役化合物が合成されてきた。これらの中でも、p型OSC材料は、主に、構成単位及び前駆体の合成可能性の相対的容易さのため、圧倒的に優勢を保っている。対照的に、n型OSCとしての商業的可能性を示した、利用可能な電子受容共役化合物は少ない。この状況は、CMOS構造を含む有機回路を製造する際の相補的なn型OSCの限られた選択につながる。
【0005】
有利な特性、特に、良好な加工性、有機溶媒への高い溶解性、良好な構造機構及び塗膜形成特性を有する、OPV電池、OPD及びOFETのようなOEデバイスにおいて使用するためのn型OSCが依然として必要とされている。さらに、OSC材料は、特に、大量生産に好適な方法によって合成するのが容易であるべきである。OPV電池において使用するために、OSC材料は、特に、低いバンドギャップを有するべきであり、これは、光活性層による集光の改善を可能にし、より高い電池効率、高い安定性及び長い寿命につながり得る。OFETにおいて使用するために、OSC材料は、特に、高い電荷キャリア移動度、トランジスタデバイスにおける高いオン・オフ比、高い酸化安定性及び長い寿命を有するべきである。
【0006】
本発明の目的は、先行技術からのOSCの欠点を克服することができ、上記の有利な特性、特に、大量生産に好適な方法による容易な合成、良好な加工性、高い安定性、OEデバイスにおける長い寿命、有機溶媒への良好な溶解性、高い電荷キャリア移動度、及び低いバンドギャップのうちの1つ以上を提供する新規なn型OSCを提供することであった。本発明の別の目的は、専門家が利用可能なOSC材料及びn型OSCのプールを拡張することであった。本発明の他の目的は、以下の詳細な説明から専門家に直ちに明白である。
【0007】
本発明の発明者らは、n型OSCとして使用され得る、以下において開示及び権利請求される電子不足化合物を提供することによって、上記の目的の1つ以上が達成され得ることを見出した。これらの化合物は、以下の式Iに示されるように、ジシアノメチレン基でω-二置換された、π伸長したキノイド多環式単位を含有する。
【0008】
このような化合物は、それらが上述される有利な特性を示す、OPV電池又はOPDのようなOEデバイスにおいて使用するためのn型有機半導体として使用され得ることが分かっている。
【0009】
キノイド性構造を有し、ジシアノメチレン基で終端されている化合物が、先行技術の文献、例えば特許文献1~4に開示されている。しかしながら、本明細書において以後、開示及び権利請求される化合物は、先行技術においてこれまで開示されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】中国特許出願公開第102477045号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0303383 A1号明細書
【文献】中国特許出願公開第105837598号明細書
【文献】中国特許出願公開第105838104号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、式I
【0012】
【化1】
(式中、個々の基が、互いに独立して、出現するごとに、同一に又は異なって、以下の意味:
11及びU12の一方がC=C二重結合であり、他方がCRであり、
21及びU22の一方がC=C二重結合であり、他方がCRであり、
Ar1~5 任意選択的に、より大きいキノイド性基の一部であり、5~30個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基R若しくはLで置換されるキノイド性脂環式又は複素環式基、
1~4 H、F、Cl、CN、1~40個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル(ここで、O及び/又はS原子が、互いに直接結合されないように、1つ以上のCH基が、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=S)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-SiR00-、-CF-、-CR=CR00-、-CY=CY-又は-C≡C-で任意選択的に置換され、1つ以上のH原子が、F、Cl、Br、I又はCNで任意選択的に置換され、1つ以上のCH又はCH基が、カチオン性又はアニオン性基で任意選択的に置換される)、
又は1~40個のSi原子を有する直鎖状、分枝鎖状若しくは環状シリル、
又はアリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ(ここで、上記の環式基のそれぞれが、5~20個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は1つ以上の同一若しくは異なる基Lで置換される)、
L F、Cl、-NO、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、R、OR、SR、-C(=O)X、-C(=O)R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-R、-NH、-NHR、-NR00、-C(=O)NHR、-C(=O)NR00、-SO、-SO、-OH、-NO、-CF、-SF、又は1~20個のSi原子を有する任意選択的に置換されるシリル、又は任意選択的に置換され、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含む、1~30個、好適には1~20個のC原子を有するカルビル若しくはヒドロカルビル、好適には、F、-CN、R、-OR、-SR、-C(=O)-R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-R、-O-C(=O)-OR、-C(=O)-NHR、又は-C(=O)-NR00
、R00 H又は任意選択的にフッ素化される、1~20個、好適には1~16個のC原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル、
ハロゲン、好適には、F又はCl、
a、b 0又は1~10の整数、好適には、0、1、2又は3
を有する)
の化合物に関する。
【0013】
本発明はさらに、式Iの化合物を調製するための新規な合成方法、及びそれに使用される新規な中間体に関する。
本発明はさらに、半導体としての、好適には、電子受容体又はn型半導体としての、好適には、半導体材料、電子若しくは光電子デバイス、又は電子若しくは光電子デバイスの構成要素における、式Iの化合物の使用に関する。
【0014】
本発明はさらに、色素又は顔料としての式Iの化合物の使用に関する。
本発明はさらに、式Iの1つ以上の化合物を含み、半導体、正孔若しくは電子輸送、正孔若しくは電子遮断、絶縁、結合、導電、光伝導、光活性又は発光特性のうちの1つ以上を有する1つ以上の化合物をさらに含む組成物に関する。
【0015】
本発明はさらに、式Iの1つ以上の化合物を含み、結合剤、好適には、電気的に不活性の結合剤、非常に好適には、電気的に不活性のポリマー結合剤をさらに含む組成物に関する。
【0016】
本発明はさらに、式Iの化合物を含み、好適には共役ポリマーから選択される、1つ以上の電子供与体又はp型半導体をさらに含む組成物に関する。
本発明はさらに、1つ以上のn型半導体(そのうちの少なくとも1つが、式Iの化合物である)を含み、1つ以上のp型半導体をさらに含む組成物に関する。
【0017】
本発明はさらに、1つ以上のn型半導体(そのうちの少なくとも1つが、式Iの化合物であり、少なくとももう1つが、フラーレン又はフラーレン誘導体である)を含み、好適には共役ポリマーから選択される1つ以上のp型半導体をさらに含む組成物に関する。
【0018】
本発明はさらに、電子受容体又はn型半導体としての式Iの化合物と、好適には共役ポリマーから選択される、電子供与体又はp型半導体である1つ以上の化合物とを含む組成物から形成されるバルクヘテロ接合(BHJ:bulk heterojunction)に関する。
【0019】
本発明はさらに、半導体、電荷輸送、導電、光伝導、光活性又は発光材料としての、式Iの化合物又は上記及び下記に記載される組成物の使用に関する。
本発明はさらに、電子若しくは光電子デバイスにおける、又はこのようなデバイスの構成要素における、又はこのようなデバイスを含むアセンブリにおける、式Iの化合物又は上記及び下記に記載される組成物の使用に関する。
【0020】
本発明はさらに、式Iの化合物又は上記及び下記に記載される組成物を含む、半導体、電荷輸送、導電、光伝導、光活性又は発光材料に関する。
本発明はさらに、式Iの化合物又は上記及び下記に記載される組成物を含む、電子若しくは光電子デバイス、又はその構成要素、又はそれを含むアセンブリに関する。
【0021】
本発明はさらに、上記及び下記に記載される半導体、電荷輸送、導電、光伝導又は発光材料を含む、電子若しくは光電子デバイス、又はその構成要素、又はそれを含むアセンブリに関する。
【0022】
本発明はさらに、式Iの1つ以上の化合物を含むか、又は上記及び下記に記載される組成物若しくは半導体材料を含み、好適には有機溶媒から選択される1つ以上の溶媒をさらに含む配合物に関する。
【0023】
本発明はさらに、電子若しくは光電子デバイス又はその構成要素の調製のための、上記及び下記に記載される配合物の使用に関する。
本発明はさらに、上記及び下記に記載される配合物の使用によって得られる、電子若しくは光電子デバイス又はその構成要素に関する。
【0024】
電子又は光電子デバイスとしては、限定はされないが、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機発光電気化学セル(OLEC)、有機光起電デバイス(OPV)、有機光検出器(OPD)、有機太陽電池、色素増感太陽電池(DSSC:dye-sensitized solar cell)、有機光電気化学セル(OPEC:organic photoelectrochemical cell)、ペロブスカイト系太陽電池(PSC)デバイス、レーザーダイオード、ショットキーダイオード、光伝導体、光検出器及び熱電デバイスが挙げられる。
【0025】
好ましいデバイスは、OFET、OTFT、OPV、PSC、OPD及びOLED、特に、OPD及びBHJ OPV又は逆BHJ OPVである。
電子又は光電子デバイスの構成要素は、限定はされないが、電荷注入層、電荷輸送層、中間層、平坦化層、帯電防止フィルム、ポリマー電解質膜(PEM:polymer electrolyte membrane)、伝導性基板及び伝導性パターンが挙げられる。
【0026】
電子又は光電子デバイスを含むアセンブリとしては、限定はされないが、集積回路(IC:integrated circuit)、無線自動識別(RFID:radio frequency identification)タグ、セキュリティマーキング、セキュリティデバイス、フラットパネルディスプレイ、フラットパネルディスプレイのバックライト、電子写真デバイス、電子写真記録デバイス、有機記憶デバイス、センサーデバイス、バイオセンサー及びバイオチップが挙げられる。
【0027】
さらに、上記及び下記に記載される式Iの化合物及び組成物は、電池において、又はDNA配列を検出及び判別するための構成要素若しくはデバイスにおいて、電極材料として使用され得る。
用語及び定義
当業者に公知であるように、キノンは、「偶数の-CH=基を、二重結合の必要な転位を有する-C(=O)-基へと転化することによって、芳香族又は複素環式芳香族化合物から誘導される完全に共役した環状ジオン構造を有する化合物(多環式及び複素環式類似体が含まれる)」を表す(PAC、1995年、第67巻、p.1307)。最も簡単な例は、p-ベンゾキノンである。
【0028】
先行技術において、「キノイド性(quinoidal)」という用語は、通常、キノンと類似しているか又はキノンの形態であるが、ケトン酸素原子を除外する化合物を意味することが理解される。
本明細書において使用される際、「キノイド」及び「キノイド性」という用語は、不飽和脂環式若しくは複素環式部分、又はこのような部分を含有する化合物を意味することが理解され、これは、単環式又は多環式であり、完全に共役されており、また、芳香環と縮合されてもよく、偶数の2個以上のsp炭素原子を含有し、sp炭素原子のそれぞれが、式Iに示されるように、環外C=C二重結合を介して隣接部分に化学的に結合されて、脂環式又は複素環式部分及び前記隣接部分が、C=C二重結合及びC-C単結合の、連続した交互の配列を有する伸長したπ共役系を形成するようになっている。
【0029】
本明細書において使用される際、「ポリマー」という用語は、高い相対分子量を有する分子を意味し、その構造は、実際に又は概念的に、低い相対分子量の分子から誘導される単位の多重反復を本質的に含むことが理解されるであろう(ピュア・アンド・アプライド・ケミストリー(Pure Appl.Chem.)、1996年、第68巻、p.2291)。「オリゴマー」という用語は、中間の相対分子量の分子を意味し、その構造は、実際に又は概念的に、より低い相対分子量の分子から誘導される少数の複数の単位を本質的に含むことが理解されるであろう(ピュア・アンド・アプライド・ケミストリー(Pure Appl.Chem.)、1996年、第68巻、p.2291)。本明細書において本発明で使用される好ましい意味では、ポリマーは、1つより多い、すなわち、少なくとも2つの繰返し単位、好適には5つ以上、好適には10個以上の繰返し単位を有する化合物を意味することが理解され、オリゴマーは、1つより多く10個未満、好適には5つ未満の繰返し単位を有する化合物を意味することが理解されるであろう。
【0030】
さらに、本明細書において使用される際、「ポリマー」という用語は、1つ以上の異なるタイプの繰返し単位(分子の最小構成単位)の骨格(「主鎖」とも呼ばれる)を包含する分子を意味し、「オリゴマー」、「コポリマー」、「ホモポリマー」、「ランダムポリマー」などの一般的に知られている用語を含むことが理解されるであろう。さらに、ポリマーという用語は、ポリマー自体に加えて、このようなポリマーの合成に付随する開始剤、触媒及び他の要素からの残渣を含むことが理解されるであろう。ここで、このような残渣は、ポリマーに共有結合的に組み込まれていないことが理解される。さらに、このような残渣及び他の要素は、重合後の精製プロセス中に通常は除去されるが、ポリマーが容器間で又は溶媒若しくは分散媒間で移されるとき、それらが一般にポリマー内に留まるように、典型的にポリマーと混合又は混ぜ合わせられる。
【0031】
本明細書において使用される際、例えば、置換基、繰返し単位又はポリマーを示す化学式において、記号-*は、隣接する基、繰返し単位又は末端基に対する単結合を意味することが理解されるであろう。例えば、ベンゼン又はチオフェン環のような環では、アスタリスクは、環の一部を形成し、単結合を介して隣接する基に結合されるsp炭素原子を意味することが理解されるであろう。
【0032】
本明細書において使用される際、「繰返し単位(repeat unit)」、「繰返し単位(repeating unit)」及び「モノマー単位」という用語は、同義的に使用され、構成繰返し単位(CRU)を意味し、これは、その繰返しが規則的なポリマー、規則的なオリゴマー分子、規則的なブロック又は規則的な鎖を構成する最小構成単位であることが理解されるであろう(ピュア・アンド・アプライド・ケミストリー(Pure Appl.Chem.)、1996年、第68巻、p.2291)。本明細書においてさらに使用される際、「単位」という用語は、それ自体で繰返し単位であり得る構造単位、又は他の単位と一緒に構成繰返し単位を形成し得る構造単位を意味することが理解されるであろう。
【0033】
本明細書において使用される際、「末端基」は、ポリマー主鎖を終端させる基を意味することが理解されるであろう。「骨格の末端位置に」という表現は、一方の側がこのような末端基に連結され、他方の側が別の繰返し単位に連結された二価の単位又は繰返し単位を意味することが理解されるであろう。このような末端基としては、エンドキャップ基、又は例えば、以下に定義されるR22又はR23の意味を有する基のような、重合反応に関与しなかったポリマー主鎖を形成するモノマーに結合された反応基が挙げられる。
【0034】
本明細書において使用される際、「エンドキャップ基」という用語は、ポリマー主鎖の末端基に結合されるか、又はそれを置換する基を意味することが理解されるであろう。エンドキャップ基は、エンドキャッピングプロセスによってポリマー中に導入され得る。エンドキャッピングは、例えば、ポリマー主鎖の末端基を、例えば、アルキル-若しくはアリールハライド、アルキル-若しくはアリールスタンナン又はアルキル-若しくはアリールボロネートのような単官能性化合物(「エンドキャッパー」)と反応させることによって行われ得る。エンドキャッパーは、例えば重合反応の後に付加され得る。あるいは、エンドキャッパーは、重合反応の前又はその間に反応混合物にその場で付加され得る。エンドキャッパーのその場での付加はまた、重合反応を終了させ、それによって、形成するポリマーの分子量を制御するのに使用され得る。典型的なエンドキャップ基は、例えば、H、フェニル及び低級アルキルである。
【0035】
本明細書において使用される際、「小分子」という用語は、典型的に、反応してポリマーを形成し得る反応基を含有せず、モノマー形態で使用されることが規定されるモノマー化合物を意味することが理解されるであろう。それと対照的に、「モノマー」という用語は、特に規定されない限り、反応してポリマーを形成し得る1つ以上の反応性官能基を有するモノマー化合物を意味することが理解されるであろう。
【0036】
本明細書において使用される際、「供与体」又は「供与性」及び「受容体」又は「受容性」という用語は、それぞれ電子供与体又は電子受容体を意味することが理解されるであろう。「電子供与体」は、別の化合物又は化合物の別の原子群に電子を供与する化学物質を意味することが理解されるであろう。「電子受容体」は、別の化合物又は化合物の別の原子群からそれに移動された電子を受容する化学物質を意味することが理解されるであろう。国際純正・応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)、コンペンディウム・オブ・ケミカル・テクノロジー(Compendium of Chemical Technology)、ゴールド・ブック(Gold Book)、第2.3.2版、2012年8月19日、p.477及び480も参照されたい。
【0037】
本明細書において使用される際、「n型」又は「n型半導体」という用語は、伝導電子密度が可動正孔密度を超えている外因性半導体を意味することが理解され、「p型」又は「p型半導体」という用語は、可動正孔密度が伝導電子密度を超えている外因性半導体を意味することが理解されるであろう(J.シューリス(J.Thewlis)著、コンサイス・ディクショナリー・オブ・フィジックス(Concise Dictionary of Physics)、ペルガモン・プレス(Pergamon Press)、オックスフォード(Oxford)、1973年も参照されたい)。
【0038】
本明細書において使用される際、「脱離基」という用語は、特定の反応に関与する分子の残基又は主要部分であると考えられるものの中の原子から切り離される原子又は基(帯電又は非帯電であり得る)を意味することが理解されるであろう(ピュア・アンド・アプライド・ケミストリー(Pure Appl.Chem.)、1994年、第66巻、p.1134も参照されたい)。
【0039】
本明細書において使用される際、「共役」という用語は、主に、sp混成(又は任意選択的にsp混成も)有するC原子を含有する化合物(例えばポリマー)を意味することが理解され、これらのC原子はまた、ヘテロ原子で置換され得る。最も単純な場合、これは、例えば、交互のC-C単結合及び二重(又は三重)結合を有する化合物であるが、例えば、1,4-フェニレンのような芳香族単位を有する化合物も含む。これに関連する「主に」という用語は、共役の中断をもたらし得る、自然に(自発的に)発生する欠陥、又は設計によって含まれる欠陥を有する化合物が、まだ共役化合物と見なされることを意味することが理解されるであろう。
【0040】
本明細書において使用される際、特に規定されない限り、分子量は、数平均分子量M又は重量平均分子量Mとして示され、テトラヒドロフラン、トリクロロメタン(TCM、クロロホルム)、クロロベンゼン又は1,2,4-トリクロロ-ベンゼンなどの溶離溶媒中のポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)によって決定される。特に規定されない限り、クロロベンゼンは、溶媒として使用される。繰返し単位の総数とも呼ばれる重合度nは、n=M/M(式中、Mは数平均分子量であり、Mは、単一の繰返し単位の分子量である)として示される数平均重合度を意味することが理解されるであろう(J.M.G.コウィー(J.M.G.Cowie)著、ポリマー:現代の材料の化学及び物理学(Polymers:Chemistry & Physics of Modern Materials)、ブラッキー(Blackie)、グラスゴー(Glasgow)、1991年を参照されたい)。
【0041】
本明細書において使用される際、「カルビル基」という用語は、任意の非炭素原子を有さずに(例えば-C≡C-のような)、又は任意選択的に、B、N、O、S、P、Si、Se、As、Te若しくはGeなどの少なくとも1つの非炭素原子と組み合わせて(例えばカルボニルなど)、少なくとも1つの炭素原子を含む任意の一価又は多価有機部分を意味することが理解されるであろう。
【0042】
本明細書において使用される際、「ヒドロカルビル基」という用語は、1つ以上のH原子をさらに含有し、任意選択的に、例えばB、N、O、S、P、Si、Se、As、Te又はGeのような1つ以上のヘテロ原子を含有するカルビル基を意味することが理解されるであろう。
【0043】
本明細書において使用される際、「ヘテロ原子」という用語は、H原子又はC原子ではない有機化合物中の原子を意味することが理解され、好適には、B、N、O、S、P、Si、Se、As、Te又はGeを意味することが理解されるであろう。
【0044】
3つ以上のC原子の鎖を含むカルビル又はヒドロカルビル基は、直鎖状、分枝鎖状及び/又は環状であってもよく、スピロ結合環及及び/又は縮合環を含み得る。
好ましいカルビル及びヒドロカルビル基としては、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ及びアルコキシカルボニルオキシ(これらはそれぞれ、任意選択的に置換され、1~40個、好適には、1~25個、非常に好適には、1~18個のC原子を有する)、さらに、6~40個、好適には、6~25個のC原子を有する任意選択的に置換されるアリール又はアリールオキシ、さらに、アルキルアリールオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシ及びアリールオキシカルボニルオキシ(これらはそれぞれ、任意選択的に置換され、6~40、好適には、7~40個のC原子を有する)が挙げられ、ここで、全てのこれらの基は、任意選択的に、好適には、B、N、O、S、P、Si、Se、As、Te及びGeから選択される1つ以上のヘテロ原子を含有する。
【0045】
さらなる好ましいカルビル及びヒドロカルビル基としては、例えば:C~C40アルキル基、C~C40フルオロアルキル基、C~C40アルコキシ又はオキサアルキル基、C~C40アルケニル基、C~C40アルキニル基、C~C40アリル基、C~C40アルキルジエニル基、C~C40ポリエニル基、C~C40ケトン基、C~C40エステル基、C~C18アリール基、C~C40アルキルアリール基、C~C40アリールアルキル基、C~C40シクロアルキル基、C~C40シクロアルケニル基などが挙げられる。上記の基の中で好ましいのは、それぞれ、C~C20アルキル基、C~C20フルオロアルキル基、C~C20アルケニル基、C~C20アルキニル基、C~C20アリル基、C~C20アルキルジエニル基、C~C20ケトン基、C~C20エステル基、C~C12アリール基、及びC~C20ポリエニル基である。
【0046】
例えば、シリル基、好適には、トリアルキルシリル基で置換された、アルキニル基、好適には、エチニルのような、炭素原子を有する基と、ヘテロ原子を有する基との組合せも含まれる。
【0047】
カルビル又はヒドロカルビル基は、非環式基又は環式基であり得る。カルビル又はヒドロカルビル基が、非環式基である場合、それは、直鎖状又は分枝鎖状であり得る。カルビル又はヒドロカルビル基が、環式基である場合、それは、非芳香族炭素環式若しくは複素環式基、又はアリール若しくはヘテロアリール基であり得る。
【0048】
上記及び下記において言及される非芳香族炭素環式基は、飽和又は不飽和であり、好適には、4~30個の環C原子を有する。上記及び下記において言及される非芳香族複素環式基は、好適には、4~30個の環C原子を有し、ここで、C環原子のうちの1つ以上が、好適にはN、O、S、Si及びSeから選択されるヘテロ原子で、又は-S(O)-若しくは-S(O)-基で任意選択的に置換される。非芳香族炭素環式及び複素環式基は、単環式又は多環式であり、縮合環も含有してもよく、好適には、1、2、3又は4つの縮合環又は非縮合環を含有し、1つ以上の基Lで任意選択的に置換され、ここで、
Lは、F、Cl、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-R、-OR、-SR、-C(=O)X、-C(=O)R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-R、-NH、-NHR、-NR00、-C(=O)NHR、-C(=O)NR00、-SO、-SO、-OH、-NO、-CF、-SF、又は任意選択的に置換されるシリル、又は任意選択的に置換され、任意選択的に、1つ以上のヘテロ原子を含む、1~40個、好適には1~20個のC原子を有するカルビル若しくはヒドロカルビルから選択され、ここで、Xは、ハロゲン、好適には、F又はClであり、R、R00は、H又は任意選択的にフッ素化される、1~20個、好適には1~12個のC原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキルを示す。
【0049】
好適には、Lは、F、-CN、R、-OR、-SR、-C(=O)-R、-C(=O)-OR、-O-C(=O)-R、-O-C(=O)-OR、-C(=O)-NHR及び-C(=O)-NR00から選択される。
【0050】
さらに好適には、Lは、F、又は1~12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキル、チオアルキル、フルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、又は2~12個のC原子を有するアルケニル若しくはアルキニルから選択される。
【0051】
好ましい非芳香族炭素環式又は複素環式基は、テトラヒドロフラン、インダン、ピラン、ピロリジン、ピペリジン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジヒドロ-フラン-2-オン、テトラヒドロ-ピラン-2-オン及びオキセパン-2-オンである。
【0052】
上記及び下記において言及されるアリール基は、好適には、4~30個の環C原子を有し、単環式又は多環式であり、縮合環も含有してもよく、好適には、1、2、3、4、5、6、7又は8つの縮合環又は非縮合環を含有し、上記で定義される1つ以上の基Lで任意選択的に置換される。
【0053】
上記及び下記において言及されるヘテロアリール基は、好適には、4~30個の環C原子を有し、ここで、C環原子のうちの1つ以上が、好適にはN、O、S、Si及びSeから選択されるヘテロ原子で置換され、単環式又は多環式であり、縮合環も含有してもよく、好適には、1、2、3、4、5、6、7又は8つの縮合環又は非縮合環を含有し、上記で定義される1つ以上の基Lで任意選択的に置換される。
【0054】
上記及び下記において言及されるアリールアルキル又はヘテロアリールアルキル基は、好適には、-(CH-アリール又は-(CH-ヘテロアリールを示し、ここで、aは、1~6の整数、好適には1であり、「アリール」及び「ヘテロアリール」は、上記及び下記に示される意味を有する。好ましいアリールアルキル基は、Lで任意選択的に置換されるベンジルである。
【0055】
本明細書において使用される際、「アリーレン」は、二価のアリール基を意味することが理解され、「ヘテロアリーレン」は、上記及び下記に示されるアリール及びヘテロアリールの全ての好ましい意味を含む、二価のヘテロアリール基を意味することが理解されるであろう。
【0056】
好ましいアリール及びヘテロアリール基は、フェニル(さらに、1つ以上のCH基がNで置換され得る)、ナフタレン、チオフェン、セレノフェン、チエノチオフェン、ジチエノチオフェン、フルオレン及びオキサゾールであり、これらは全て、非置換であるか、上記で定義されるLで一置換又は多置換され得る。非常に好ましいアリール及びヘテロアリール基は、ピロール、好適には、N-ピロール、フラン、ピリジン、好適には、2-又は3-ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、イソチアゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チオフェン、好適には、2-チオフェン、セレノフェン、好適には、2-セレノフェン、2,5-ジチオフェン-2’,5’-ジイル、チエノ[3,2-b]チオフェン、チエノ[2,3-b]チオフェン、フロ[3,2-b]フラン、フロ[2,3-b]フラン、セレノ[3,2-b]セレノフェン、セレノ[2,3-b]セレノフェン、チエノ[3,2-b]セレノフェン、チエノ[3,2-b]フラン、インドール、イソインドール、ベンゾ[b]フラン、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[1,2-b;4,5-b’]ジチオフェン、ベンゾ[2,1-b;3,4-b’]ジチオフェン、キノール、2-メチルキノール、イソキノール、キノキサリン、キナゾリン、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアジアゾール、4H-シクロペンタ[2,1-b;3,4-b’]ジチオフェン、7H-3,4-ジチア-7-シラ-シクロペンタ[a]ペンタレンから選択され、これらは全て、非置換であるか、上記で定義されるLで一置換又は多置換され得る。アリール及びヘテロアリール基のさらなる例は、以下に示される基から選択されるものである。
【0057】
アルキル基又はアルコキシ基(すなわち、末端CH基が-O-で置換される)は、直鎖状又は分枝鎖状であり得る。それは、好適には、直鎖状であり、2、3、4、5、6、7、8、12又は16個の炭素原子を有し、したがって、好適には、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシル又はヘキサデシル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ドデコキシ又はヘキサデコキシ、さらに、メチル、ノニル、デシル、ウンデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、トリデコキシ又はテトラデコキシである。
【0058】
アルケニル基(すなわち、1つ以上のCH基が-CH=CH-で置換される)は、直鎖状又は分枝鎖状であり得る。それは、好適には、直鎖状であり、2~10個のC原子を有し、したがって、好適には、ビニル、プロパ-1-、又はプロパ-2-エニル、ブタ-1-、2-又はブタ-3-エニル、ペンタ-1-、2-、3-又はペンタ-4-エニル、ヘキサ-1-、2-、3-、4-又はヘキサ-5-エニル、ヘプタ-1-、2-、3-、4-、5-又はヘプタ-6-エニル、オクタ-1-、2-、3-、4-、5-、6-又はオクタ-7-エニル、ノナ-1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-又はノナ-8-エニル、デカ-1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-又はデカ-9-エニルである。
【0059】
特に好ましいアルケニル基は、C~C-1E-アルケニル、C~C-3E-アルケニル、C~C-4-アルケニル、C~C-5-アルケニル及びC-6-アルケニル、特に、C~C-1E-アルケニル、C~C-3E-アルケニル及びC~C-4-アルケニルである。特に好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E-プロペニル、1E-ブテニル、1E-ペンテニル、1E-ヘキセニル、1E-ヘプテニル、3-ブテニル、3E-ペンテニル、3E-ヘキセニル、3E-ヘプテニル、4-ペンテニル、4Z-ヘキセニル、4E-ヘキセニル、4Z-ヘプテニル、5-ヘキセニル、6-ヘプテニルなどである。5個までのC原子を有する基が一般に好ましい。
【0060】
オキサアルキル基(すなわち、1つのCH基が-O-で置換される)は、好適には、例えば、直鎖状2-オキサプロピル(=メトキシメチル)、2-(=エトキシメチル)若しくは3-オキサブチル(=2-メトキシエチル)、2-、3-、若しくは4-オキサペンチル、2-、3-、4-、若しくは5-オキサヘキシル、2-、3-、4-、5-、若しくは6-オキサヘプチル、2-、3-、4-、5-、6-若しくは7-オキサオクチル、2-、3-、4-、5-、6-、7-若しくは8-オキサノニル又は2-、3-、4-、5-、6-,7-、8-若しくは9-オキサデシルである。
【0061】
1つのCH基が-O-で置換され、1つのCH基が-C(O)-で置換されたアルキル基において、これらの基は、好適には隣接している。したがって、これらの基は、一緒に、カルボニルオキシ基-C(O)-O-又はオキシカルボニル基-O-C(O)-を形成する。好適には、この基は、直鎖状であり、2~6個のC原子を有する。したがって、それは、好適には、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2-アセチルオキシエチル、2-プロピオニルオキシエチル、2-ブチリルオキシエチル、3-アセチルオキシプロピル、3-プロピオニルオキシプロピル、4-アセチルオキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2-(メトキシカルボニル)エチル、2-(エトキシカルボニル)エチル、2-(プロポキシカルボニル)エチル、3-(メトキシカルボニル)プロピル、3-(エトキシカルボニル)プロピル、4-(メトキシカルボニル)-ブチルである。
【0062】
2つ以上のCH基が-O-及び/又は-C(O)O-で置換されたアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状であり得る。それは、好適には直鎖状であり、3~12個のC原子を有する。したがって、それは、好適には、ビス-カルボキシ-メチル、2,2-ビス-カルボキシ-エチル、3,3-ビス-カルボキシ-プロピル、4,4-ビス-カルボキシ-ブチル、5,5-ビス-カルボキシ-ペンチル、6,6-ビス-カルボキシ-ヘキシル、7,7-ビス-カルボキシ-ヘプチル、8,8-ビス-カルボキシ-オクチル、9,9-ビス-カルボキシ-ノニル、10,10-ビス-カルボキシ-デシル、ビス-(メトキシカルボニル)-メチル、2,2-ビス-(メトキシカルボニル)-エチル、3,3-ビス-(メトキシカルボニル)-プロピル、4,4-ビス-(メトキシカルボニル)-ブチル、5,5-ビス-(メトキシカルボニル)-ペンチル、6,6-ビス-(メトキシカルボニル)-ヘキシル、7,7-ビス-(メトキシカルボニル)-ヘプチル、8,8-ビス-(メトキシカルボニル)-オクチル、ビス-(エトキシカルボニル)-メチル、2,2-ビス-(エトキシカルボニル)-エチル、3,3-ビス-(エトキシカルボニル)-プロピル、4,4-ビス-(エトキシカルボニル)-ブチル、5,5-ビス-(エトキシカルボニル)-ヘキシルである。
【0063】
チオアルキル基(すなわち、1つのCH基が-S-で置換される)は、好適には、直鎖状チオメチル(-SCH)、1-チオエチル(-SCHCH)、1-チオプロピル(=-SCHCHCH)、1-(チオブチル)、1-(チオペンチル)、1-(チオヘキシル)、1-(チオヘプチル)、1-(チオオクチル)、1-(チオノニル)、1-(チオデシル)、1-(チオウンデシル)又は1-(チオドデシル)であり、ここで、好適には、sp混成ビニル炭素原子に隣接するCH基が置換される。
【0064】
フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキルC2i+1(ここで、iは、1~15の整数である)、特に、CF、C、C、C、C11、C13、C15又はC17、非常に好適には、C13、又は好適には1~15個のC原子を有する部分フッ素化アルキル、特に、1,1-ジフルオロアルキルのいずれかであり得、上記は全て、直鎖状又は分枝鎖状である。
【0065】
好適には、「フルオロアルキル」は、部分フッ素化(すなわち、非過フッ素化)アルキル基を意味する。
アルキル、アルコキシ、アルケニル、オキサアルキル、チオアルキル、カルボニル及びカルボニルオキシ基は、アキラル又はキラル基であり得る。特に好ましいキラル基は、例えば、2-ブチル(=1-メチルプロピル)、2-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-エチルヘキシル、2-ブチルオクチル、2-ヘキシルデシル、2-オクチルドデシル、2-プロピルペンチル、特に、2-メチルブチル、2-メチルブトキシ、2-メチルペントキシ、3-メチル-ペントキシ、2-エチル-ヘキソキシ、2-ブチルオクトキシ、2-ヘキシルデコキシ、2-オクチルドデコキシ、1-メチルヘキソキシ、2-オクチルオキシ、2-オキサ-3-メチルブチル、3-オキサ-4-メチル-ペンチル、4-メチルヘキシル、2-ヘキシル、2-オクチル、2-ノニル、2-デシル、2-ドデシル、6-メトキシ-オクトキシ、6-メチルオクトキシ、6-メチルオクタノイルオキシ、5-メチルヘプチルオキシ-カルボニル、2-メチルブチリルオキシ、3-メチルバレロイルオキシ、4-メチルヘキサノイルオキシ、2-クロロ-プロピオニルオキシ、2-クロロ-3-メチルブチリルオキシ、2-クロロ-4-メチル-バレリル-オキシ、2-クロロ-3-メチルバレリルオキシ、2-メチル-3-オキサペンチル、2-メチル-3-オキサ-ヘキシル、1-メトキシプロピル-2-オキシ、1-エトキシプロピル-2-オキシ、1-プロポキシプロピル-2-オキシ、1-ブトキシプロピル-2-オキシ、2-フルオロオクチルオキシ、2-フルオロデシルオキシ、1,1,1-トリフルオロ-2-オクチルオキシ、1,1,1-トリフルオロ-2-オクチル、2-フルオロメチルオクチルオキシである。非常に好ましいのは、2-エチルヘキシル、2-ブチルオクチル、2-ヘキシルデシル、2-オクチルドデシル、2-ヘキシル、2-オクチル、2-オクチルオキシ、1,1,1-トリフルオロ-2-ヘキシル、1,1,1-トリフルオロ-2-オクチル及び1,1,1-トリフルオロ-2-オクチルオキシである。
【0066】
好ましいアキラル分枝鎖状基は、イソプロピル、イソブチル(=メチルプロピル)、イソペンチル(=3-メチルブチル)、tert.ブチル、イソプロポキシ、2-メチル-プロポキシ、3-メチルブトキシ及び3,7-ジメチルオクチルである。
【0067】
好ましい実施形態において、アリール又はヘテロアリール環における置換基は、互いに独立して、1~40個のC原子を有する第1級、第2級若しくは第3級アルキル又はアルコキシ(ここで、1つ以上のH原子が、Fで任意選択的に置換される)、又は任意選択的にアルキル化又はアルコキシ化され、4~30個の環原子を有する、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール若しくはヘテロアリールオキシから選択される。このタイプの非常に好ましい基は、下式
【0068】
【化2】
からなる群から選択され、式中、「ALK」は、1~20個、好適には1~16個のC原子、第3級基の場合、非常に好適には1~10個のC原子を有する、任意選択的にフッ素化された、好適には直鎖状のアルキル又はアルコキシを示し、破線は、これらの基が結合される環への結合を示す。これらの基の中で特に好ましいのは、全てのALK部分基が同一であるものである。
【0069】
本明細書において使用される際、アリール(オキシ)又はヘテロアリール(オキシ)基が、「アルキル化又はアルコキシ化」されている場合、これは、それが、1~20個のC原子を有し、直鎖状又は分枝鎖状である1つ以上のアルキル又はアルコキシ基で置換されていることを意味し、ここで、1つ以上のH原子は、F原子で任意選択的に置換される。
【0070】
上記及び下記において、Y及びYは、互いに独立して、H、F、Cl又はCNである。
本明細書において使用される際、-CO-、-C(=O)-及び-C(O)-は、カルボニル基、すなわち、構造
【0071】
【化3】
を有する基を意味することが理解されるであろう。
【0072】
本明細書において使用される際、C=CRなどは、構造
【0073】
【化4】
を有する基を意味することが理解されるであろう。
【0074】
特に記載されない限り、置換基に言及しない「任意選択的に置換される」は、Lで任意選択的に置換されることを意味する。
本明細書において使用される際、「ハロゲン」は、F、Cl、Br又はI、好適には、F、Cl又はBrを含む。環又は鎖における置換基を表すハロゲン原子は、好適には、F又はClであり、非常に好適には、Fである。モノマー中の反応基を表すハロゲン原子は、好適には、Cl、Br又はIであり、非常に好適には、Br又はIである。
【0075】
上記及び下記において、「及びその鏡像」という語句は、外部対称面又は該当する部分を通って延在する対称面にわたって垂直に及び/又は水平に少なくとも1回ひっくり返すことによって、ある部分から得られる別の部分を含むことを意味する。例えば、部分
【0076】
【化5】
の場合、「及びその鏡像」という語句は、以下の部分
【0077】
【化6】
を含むことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本発明の化合物は、合成が容易であり、有利な特性を示す。それらは、デバイス製造プロセスのための良好な加工性、有機溶媒への高い溶解性を示し、溶液処理方法を用いた大量生産に特に好適である。
【0079】
式Iの化合物は、(電子)受容体又はn型半導体として、及びOPD又はBHJ OPVデバイスにおいて使用するのに好適なn型及びp型半導体のブレンドの調製に特に好適である。
【0080】
式Iの化合物はさらに、OPV又はOPDデバイスにおいてn型半導体としてこれまで使用されてきたフラーレン化合物の代わりに用いるのに好適である。
それに加えて、式Iの化合物は、以下の有利な特性を示す:
i)分子から芳香族化エネルギーを放出するための電子注入の容易さのため、高い電子移動度のn型半導体材料をもたらす伸長したキノイド性構造。
【0081】
ii)化合物の溶解性が、縮合シクロペンタジエン部分における可溶化基R1~4の選択によって容易に最適化され得る。
iii)位置R1~4におけるアルキル鎖の可溶化がまた、中間体の合成及び精製の容易さ、最も重要なことには、半導体材料としての最終化合物の加工性を与える。
【0082】
式Iの化合物の合成は、本明細書にさらに例示されるように、文献に記載される、当業者に公知の方法に基づいて行われ得る。
式Iの化合物は、好適には、下式
【0083】
【化7】
から選択され、式中、Ar11及びAr12は、式IにおいてArについて示される意味のうちの1つを有し、Ar2~5、U11、U21、U22、a、bは、式Iにおいて示される意味を有する。
【0084】
好適には、式I及びその部分式中のAr、Ar、Ar及びArは、5~30個の環原子を有し、単環式、二環式、三環式、四環式、五環式又は六環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は上記で定義される1つ以上の同一若しくは異なる基R若しくはLで置換される、キノイド性脂環式又は複素環式基を示す。
【0085】
好適には、式I及びその部分式中のAr、Ar11及びAr12は、Ar及びArと一緒に形成されるより大きいキノイド性基の一部であり、5~30個の環原子を有し、単環式、二環式、三環式、四環式、五環式又は六環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は上記で定義される1つ以上の同一若しくは異なる基R若しくはLで置換される、キノイド性脂環式又は複素環式基を示す。
【0086】
本発明の好ましい実施形態において、式I中のAr及び式IA中のAr11は、下式及びそれらの鏡像:
【0087】
【化8】
から選択され、式中、個々の基が、互いに独立して、出現するごとに、同一に又は異なって、以下の意味:
X O、S、Se又はTe、
R、R’ 上記及び下記に定義されるR又はLの意味のうちの1つ、
# C=C二重結合を介して、式I、IA又はIB中の隣接する基に結合されるsp炭素原子、及び
C-C単結合を介して、式I、IA又はIB中の隣接する基に結合されるsp炭素原子
Z、Z’ O、S、Se、Te、C(=O)、NR、=N-又は=CR-(ここで、Z及びZ’の少なくとも1つが、=N-及び=CR-と異なる)
を有する。
【0088】
好ましい基Ar及びAr11は、上記の式1A~25A及びそれらの鏡像から選択され、式中、XはSである。
非常に好ましい基Ar及びAr11は、式1A、5A、11A、13A、15A及び25Aから選択され、ここで、式11A及び15A中、好適には、XはSであり、式13A中、好適には、XはSであり、R’は、Hと異なり、式25A中、好適には、ZはC=Oであり、Z’はNRである。
【0089】
本発明の別の好ましい実施形態において、式I中のAr及び式IB中のAr12は、下式及びそれらの鏡像:
【0090】
【化9】
から選択され、式中、個々の基が、互いに独立して、出現するごとに、同一に又は異なって、以下の意味を有し、
X、Z、Z’、R、#及びは、上記及び下記に示される意味又は好ましい意味を有し、
Ar、Ar 縮合5員又は6員芳香環(ここで、1つ以上のCH基が、O、S、Se、Te、=N-、NR又はC(=O)で任意選択的に置換され、1つ以上のH原子が、R又はLで任意選択的に置換される)、
Y CR、SiR、GeR、NR、C(=O)又はS(=O)(ここで、R及びRは、上記に定義されるとおりである)。
【0091】
非常に好ましい基Ar及びAr12は、上記の式1B~23B及びそれらの鏡像から選択され、式中、XはSであり、YはCRである。
好ましい基Arは、下式
【0092】
【化10】
から選択され、式中、X、R及びは、上記及び下記に示される意味又は好ましい意味を有し、R”は、Rの意味のうちの1つを有し、好適にはHである。
【0093】
好ましい基Arは、下式
【0094】
【化11】
から選択され、式中、は、上記に示される意味を有する。
【0095】
非常に好ましい基Ar12は、式1B、4B、6B、7B、8B、9B、10B及び11Bから選択される。ここで、好適には、Arは、式X1又はX2のものであり、Arは、式Y1又はY3のものであり、XはSであり、Yは、CR又はNRであり、Z’は、NR、=N-又は=CR-であり、Zは、=N-又はC(=O)であり、又は2つの基Zの一方は、=N-又は=CR-であり、他方は、O又はSである。
【0096】
本発明の好ましい実施形態において、式I、IA及びIB中のAr及びArは、下式及びそれらの鏡像:
【0097】
【化12】
から選択され、式中、Ar、Ar、R、R’、X、Y、Z、Z’、#及びは、上記及び下記に示される意味又は好ましい意味を有する。
【0098】
非常に好ましい基Ar及びArは、上記の式1C~35C及びそれらの鏡像から選択され、式中、XはSであり、Yは、CR又はNRである。
特に好ましい基Ar及びArは、式1C、11C、12C、13C、15C及び16Cから選択され、式中、好適には、XはSである。
【0099】
本発明の好ましい実施形態において、式I、IA及びIB中のAr及びArは、下式及びそれらの鏡像:
【0100】
【化13】
から選択され、式中、Ar、Ar、R、R’、X、Y、Z、Z’、#及びは、上記及び下記に示される意味又は好ましい意味を有し、Y’は、N又はCRを示す。
【0101】
非常に好ましい基Ar及びArは、上記の式1D~45D及びそれらの鏡像から選択され、式中、XはSであり、Yは、CR又はNRである。
さらなる好ましい基Ar及びArは、式1D、5D、12D、13D、17D、18D、19D、20D、21D、22D及び23D及びそれらの部分式から選択され、式中、Xは好適にはSである。
【0102】
非常に好ましい基Ar及びArは、以下の部分式及びそれらの鏡像:
【0103】
【化14】
から選択され、式中、R、R”、X、Y’及び#は、上記及び下記に示される意味又は好ましい意味を有し、Z”及びZ’”は、Zについて示される意味のうちの1つを有する。ここで、好適には、R’は、Hと異なり、R”はHであり、XはSであり、Y’はNであり、Z’はNRであり、Z”はC(=O)であり、又はZ’は、=N-又は=CR-であり、2つの基Z”の一方は、=N-又はCRであり、他方は、O又はSであり、Z”’は、NR、O又はSである。
【0104】
式18D1、18D2、19D1、19D2及び20D1の非常に好ましい基は、以下の部分式及びそれらの鏡像:
【0105】
【化15】
から選択され、式中、R及び#は、上記に示される意味又は好ましい意味を有する。
【0106】
本発明の好ましい実施形態において、式I及びその部分式の化合物並びに基Ar1~5、Ar11及びAr12は、環状及び縮合sp炭素原子、すなわち、2つの縮合環の一部であり、かつスピロ炭素原子でないsp炭素原子を含有しない。
【0107】
本発明の好ましい実施形態において、式I、IA、IB及びそれらの部分式中のR1~4は、F、Cl又は直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル、アルコキシ、スルファニルアルキル、スルホニルアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル及びアルキルカルボニルオキシから選択され、これらはそれぞれ、1~40個、好適には1~20個のC原子を有し、非置換であるか又は1つ以上のF原子で置換される。
【0108】
本発明の別の好ましい実施形態において、式I、IA、IB及びそれらの部分式中のR1~4は、単環式又は多環式アリール又はヘテロアリールから選択され、これらはそれぞれ、式Iにおいて定義される1つ以上の基Lで任意選択的に置換され、4~30個の環原子を有し、ここで、2つ以上の環は、互いに縮合されるか又は共有結合によって互いに結合され得る。
【0109】
本発明の好ましい実施形態において、式1A~25A、1B~23B、1C~35C、1D~45D及びそれらの部分式中の1つ以上、好適には全ての基Rが、Hである。
本発明の別の好ましい実施形態において、式1A~25A、1B~23B、1C~35C、1D~45D及びそれらの部分式中の基Rの少なくとも1つが、Hと異なる。
【0110】
式13A、17C及び23D中、好適には、RはHであり、R’は、Hと異なる。
本発明の好ましい実施形態において、式1A~25A、1B~23B、1C~35C、1D~45D及びそれらの部分式中のR及びR’は、Hと異なる場合、F、Cl又は直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル、アルコキシ、スルファニルアルキル、スルホニルアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル及びアルキルカルボニルオキシから選択され、これらはそれぞれ、1~40個、好適には1~20個のC原子を有し、非置換であるか又は1つ以上のF原子で置換される。
【0111】
本発明の別の好ましい実施形態において、式1A~25A、1B~23B、1C~35C、1D~45D及びそれらの部分式中のR及びR’は、Hと異なる場合、アリール又はヘテロアリールから選択され、これらはそれぞれ、式Iにおいて定義される1つ以上の基Lで任意選択的に置換され、4~30個の環原子を有する。
【0112】
好ましいアリール及びヘテロアリール基R1~4、R及びR’は、下式から選択される。
【0113】
【化16】
式中、R11~17は、互いに独立して、出現するごとに、同一に又は異なって、Hを示し、又は式IにおいてLについて示される意味のうちの1つ若しくは上記及び下記に示されるその好ましい意味のうちの1つを有する。
【0114】
非常に好ましいアリール及びヘテロアリール基R1~4、R及びR’は、下式
【0115】
【化17】
から選択され、式中、R11~15は、上記で定義されるとおりである。
【0116】
別の好ましい実施形態において、R1~4、R又はR’のうちの1つ以上が、1~50個、好適には2~50個、非常に好適には2~30個、より好適には2~24個、最適には2~16個のC原子を有する、直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基を示し、ここで、1つ以上のCH又はCH基が、カチオン性又はアニオン性基で置換される。
【0117】
カチオン性基は、好適には、ホスホニウム、スルホニウム、アンモニウム、ウロニウム、チオウロニウム、グアニジウム又は複素環式カチオン、例えば、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、トリアゾリウム、モルホリニウム又はピペリジニウムカチオンからなる群から選択される。
【0118】
好ましいカチオン性基は、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、N-アルキルピリジニウム、N,N-ジアルキルピロリジニウム、1,3-ジアルキルイミダゾリウムからなる群から選択され、ここで、「アルキル」は、好適には、1~12個のC原子を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキル基を示す。
【0119】
さらなる好ましいカチオン性基は、下式
【0120】
【化18】
からなる群から選択され、式中、R’、R’、R’及びR’は、互いに独立して、H、1~12個のC原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル基又は非芳香族炭素環式若しくは複素環式基又はアリール若しくはヘテロアリール基(上記の基はそれぞれ、3~20個、好適には5~15個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、上記で定義される1つ以上の同一若しくは異なる置換基Lで任意選択的に置換される)を示し、又はそれぞれの基R1~9への結合を示す。
【0121】
上記の式の上記のカチオン性基において、基R’、R’、R’及びR’(それらがCH基を置換する場合)のいずれか1つは、それぞれの基R1~9への結合を示すことができ、又は2つの隣接する基R’、R’、R’又はR’(それらがCH基を置換する場合)は、それぞれの基R1~9への結合を示し得る。
【0122】
アニオン性基は、好適には、ボレート、イミド、ホスフェート、スルホネート、スルフェート、スクシネート、ナフテネート又はカルボキシレートからなる群から、非常に好適には、ホスフェート、スルホネート又はカルボキシレートから選択される。
【0123】
式I及びその部分式のさらなる好ましい化合物は、以下の好ましい実施形態又はそれらの任意の組合せから選択される:
-a及びbが0であり、
-a及びbが、1、2又は3であり、
-a及びbの一方が0であり、他方が、1、2又は3であり、
-U11、U12、U21、U22が、C-C二重結合と異なる場合、CR又はSiR、好適にはCRを示し、
-XがSであり、
-Yが、CR又はNRであり、
-Zが、=N-又はC(=O)であり、又は1つの基Zが、=N-又は=CR-であり、他のものが、O又はSであり、
-Z’が、NR、=N-又は=CR-であり、
-全ての置換基RがHであり、
-式17C及び23D中、RがHであり、R’が、Hと異なり、
-R1~4が、Hと異なり、
-R1~4が、F、Cl又は直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル、アルコキシ、スルファニルアルキル、スルホニルアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル及びアルキルカルボニルオキシ(これらはそれぞれ、1~40個、好適には1~20個のC原子を有し、非置換であるか又は1つ以上のF原子で置換される)から、好適には、F、又は任意選択的にフッ素化される、1~16個のC原子を有するアルキル若しくはアルコキシから選択され、
-R1~4が、アリール又はヘテロアリール(これらはそれぞれ、式Iにおいて定義される1つ以上の基Lで任意選択的に置換され、4~30個の環原子を有する)から、好適には4位において、1~30個のC原子、好適には1~16個のC原子を有するアルキル又はアルコキシで任意選択的に置換される好適にはフェニル、非常に好適には、4-アルキルフェニル(ここで、アルキルは、C1~16アルキルである)、最適には、4-メチルフェニル又は4-ヘキシルフェニルから選択され、
-L’がHであり、
-L、L’が、F、Cl、CN、NO、又は任意選択的にフッ素化される、1~16個のC原子を有するアルキル若しくはアルコキシを示し、
-RがHであり、
-少なくとも1つのRが、Hと異なり、
-Rが、Hと異なる場合、それは、F、Cl又は直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル、アルコキシ、スルファニルアルキル、スルホニルアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル及びアルキルカルボニルオキシ(これらはそれぞれ、1~40個、好適には1~20個のC原子を有し、非置換であるか又は1つ以上のF原子で置換されるが、過フッ素化されない)から、好適には、F、又は任意選択的にフッ素化される、1~16個のC原子を有するアルキル若しくはアルコキシから選択され、
-R’が、F、Cl又は直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル、アルコキシ、スルファニルアルキル、スルホニルアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル及びアルキルカルボニルオキシ(これらはそれぞれ、1~40個、好適には1~20個のC原子を有し、非置換であるか又は1つ以上のF原子で置換されるが、過フッ素化されない)から、好適には、F、又は任意選択的にフッ素化される、1~16個のC原子を有するアルキル若しくはアルコキシから選択され、
-R’が、アリール又はヘテロアリール(これらはそれぞれ、式Iにおいて定義される1つ以上の基Lで任意選択的に置換され、4~30個の環原子を有する)から、好適には、任意選択的に置換されるフェニルから選択される。
【0124】
式I及びIAの好ましい化合物は、以下の部分式
【0125】
【化19】
から選択され、式中、R1~4、R、R及びR’は、上記及び下記に示される意味を有する。
【0126】
好適には、式I1~I20中、Rは、任意選択的にフッ素化される、1~40個、好適には1~20個のC原子を有するアルキル又はアルコキシから選択される。
好適には、式I1~I20中、R1~4及びR’は、任意選択的にフッ素化される、1~40個、好適には1~20個のC原子を有するアルキル又はアルコキシから選択される。
【0127】
さらに好適には、式I1~I20中、R1~4及びR’は、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、式Iにおいて定義される1つ以上の基Lで任意選択的に置換される、4~30個の環原子を有するアリール若しくはヘテロアリールから、好適には4位において、1~40個、好適には1~20個のC原子を有するアルキル若しくはアルコキシで任意選択的に置換される好適にはフェニルから、又は好適には5位において、1~40個、好適には1~20個のC原子を有するアルキル若しくはアルコキシで任意選択的に置換されるチオフェンから選択される。
【0128】
本発明の別の実施形態は、式Iの化合物を含み、好適には共役ポリマーから選択される、1つ以上の電子供与体又はp型半導体をさらに含む組成物に関する。
第1の好ましい実施形態において、電子供与体又はp型半導体は、少なくとも1つの電子供与性単位(「供与性単位」)及び少なくとも1つの電子受容性単位(「受容体単位」)、及び任意選択的に、供与性単位を受容体単位と隔てる少なくとも1つのスペーサ単位を含む共役ポリマーであり、
ここで、各供与体及び受容体単位は、直接、別の供与体若しくは受容体単位に又はスペーサ単位に結合され、供与体、受容体及びスペーサ単位の全ては、5~20個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は上記に定義される1つ以上の同一若しくは異なる基Lで置換される、アリーレン又はヘテロアリーレンから選択される。
【0129】
好適には、スペーサ単位は、存在する場合、供与性単位及び受容体単位が互いに直接結合されないように、供与体単位と受容体単位との間に位置する。
好ましい共役ポリマーは、式U1の1つ以上の単位及び式U2の1つ以上の単位
-(D-Sp)- U1
-(A-Sp)- U2
を含み、非常に好適には、それらからなり、式中、Dは、供与性単位を示し、Aは、受容体単位を示し、Spは、スペーサ単位を示し、これらは全て、5~20個の環原子を有し、単環式又は多環式であり、任意選択的に縮合環を含有し、非置換であるか又は上記に定義される1つ以上の同一若しくは異なる基Lで置換される、アリーレン又はヘテロアリーレンから選択される。
【0130】
非常に好ましいのは、式Pi及びPii
-[(D-Sp)-(A-Sp)- Pi
-[(D-A)-(A-Sp)- Pii
のポリマーであり、式中、A、D及びSpは、式U1及びU2において定義されるとおりであり、xは、単位(D-Sp)又は(D-A)のモル分率を示し、yは、単位(A-Sp)のモル分率を示し、x及びyはそれぞれ、互いに独立して、0超かつ1未満であり、ここで、x+y=1であり、nは、1を超える整数である。
【0131】
式P1及びP2及びそれらの部分式のポリマーにおいて、x及びyは、好適には、0.1~0.9、非常に好適には、0.3~0.7、最適には、0.4~0.6である。
好ましい供与性単位又は単位Dは、下式
【0132】
【化20】
から選択され、式中、R11、R12、R13、R14は、互いに独立して、Hを示し、又は上記で定義されるLの意味のうちの1つを有する。
【0133】
好ましい受容体単位又は単位Aは、下式
【0134】
【化21】
から選択され、式中、R11、R12、R13、R14は、互いに独立して、Hを示し、又は上記で定義されるLの意味のうちの1つを有する。
【0135】
好ましいスペーサ単位又は単位Spは、下式
【0136】
【化22】
から選択され、式中、R11、R12、R13、R14は、互いに独立して、Hを示し、又は上記で定義されるLの意味のうちの1つを有する。
【0137】
式Sp1~Sp17中、好適には、R11及びR12はHである。式Sp18中、好適には、R11~14は、H又はFである。
好適には、共役ポリマーは、
a)式D1、D7、D10、D11、D19、D22、D29、D30、D35、D36、D37、D44、D55、D84、D87、D88、D89、D93、D106、D111、D140、D141、D146、及びD147からなる群から選択される1つ以上の供与性単位及び/又は
b)式A1、A6、A7、A15、A16、A20、A74、A88、A92、A94、A98、A99及びA100からなる群から選択される1つ以上の受容体単位、
及び
c)任意選択的に、式Sp1~Sp18、非常に好適には、式Sp1、Sp6、Sp11及びSp14からなる群から選択される1つ以上のスペーサ単位
を含有し、好適には、それらからなり、ここで、スペーサ単位は、存在する場合、好適には、供与性単位及び受容体単位が互いに直接結合されないように、供与体単位と受容体単位との間に位置する。
【0138】
第2の好ましい実施形態において、式Iの化合物は、
1つ以上、好適には、1つ、2つ、3つ又は4つの、別個の繰返し単位D、及び
1つ以上、好適には、1つ、2つ又は3つの、別個の繰返し単位A
を含み、好適には、それらからなる共役ポリマーである。
【0139】
好適には、この第2の好ましい実施形態に係る共役ポリマーは、1~6つ、非常に好適には、1つ、2つ、3つ又は4つの別個の単位D及び1~6つ、非常に好適には、1つ、2つ、3つ又は4つの別個の単位Aを含有し、ここで、d1、d2、d3、d4、d5及びd6は、各別個の単位Dのモル比を示し、a1、a2、a3、a4、a5及びa6は、各別個の単位Aのモル比を示し、
d1、d2、d3、d4、d5及びd6のそれぞれが、0~0.6であり、d1+d2+d3+d4+d5+d6は、0.2~0.8、好適には、0.3~0.7であり、
a1、a2、a3、a4、a5及びa6のそれぞれが、0~0.6であり、a1+a2+a3+a4+a5+d6は、0.2~0.8、好適には、0.3~0.7であり、
d1+d2+d3+d4+d5+d6+a1+a2+a3+a4+a5+a6は、0.8~1、好適には1である。
【0140】
好適には、この第2の好ましい実施形態に係る共役ポリマーは、
a)式D1、D7、D10、D11、D19、D22、D29、D30、D35、D36、D37、D44、D55、D84、D87、D88、D89、D93、D106、D111、D140、D141、D146、及びD147からなる群から選択される1つ以上の供与性単位及び/又は
b)式A1、A6、A7、A15、A16、A20、A74、A88、A92、A94、A98、A99及びA100からなる群から選択される1つ以上の受容体単位
を含有し、好適には、それらからなる。
【0141】
式P及びその部分式のもののような上記の共役ポリマーにおいて、繰返し単位の総数nは、好適には、2~10,000である。繰返し単位の総数nは、好適には、5以上、非常に好適には、10以上、最適には、50以上、かつ好適には、500以下、非常に好適には、1,000以下、最適には、2,000以下(nの上記の下限及び上限の任意の組合せを含む)である。
【0142】
共役ポリマーは、好適には、統計又はランダムコポリマーである。
非常に好ましい共役ポリマーは、以下の部分式
【0143】
【化23】
から選択され、式中、R11~17、x、y及びnは、上記に定義されるとおりであり、w及びzは、yについて示される意味のうちの1つを有し、x+y+w+z=1であり、R18及びR19は、R11について示される意味のうちの1つを有し、X、X、X及びXは、H、F又はClを示す。
【0144】
式P1~P49中、好適には、X、X、X及びXのうちの1つ以上がFを示し、非常に好適には、X、X、X及びXの全てがFを示し、又はX及びXがHを示し、X及びXがFを示す。
【0145】
式P1~P49中、好適には、R11及びR12はHである。さらに好適には、R11及びR12は、Hと異なる場合、任意選択的にフッ素化される、1~40個、好適には1~20個のC原子を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキルを示す。
【0146】
式P1~P49中、好適には、R15及びR16はHであり、R13及びR14は、Hと異なる。
式P1~P49中、好適には、R13、R14、R15及びR16は、Hと異なる場合、以下の群:
-任意選択的にフッ素化される、1~40個、好適には1~20個のC原子を有する、直鎖状若しくは分枝鎖状アルキル、アルコキシ又はスルファニルアルキルからなる群、
-任意選択的にフッ素化される、2~40個、好適には2~20個のC原子を有する、直鎖状若しくは分枝鎖状アルキルカルボニル又はアルキルカルボニルオキシからなる群
から選択される。
【0147】
式P1~P49中、好適には、R17及びR18は、Hと異なる場合、以下の群:
-任意選択的にフッ素化される、1~40個、好適には1~20個のC原子を有する、直鎖状又は分枝鎖状アルキル、アルコキシ又はスルファニルアルキルからなる群、
-任意選択的にフッ素化される、2~40個、好適には2~20個のC原子を有する、直鎖状又は分枝鎖状アルキルカルボニル又はアルキルカルボニルオキシからなる群、
-F及びClからなる群
から選択される。
【0148】
さらに好ましいのは、式PT
31-鎖-R32 PT
から選択される共役ポリマーであり、式中、「鎖」は、式Pi、Pii又はP1~P49から選択されるポリマー鎖を示し、R31及びR32は、互いに独立して、上記で定義されるR11の意味のうちの1つを有するか、又は互いに独立して、H、F、Br、Cl、I、-CHCl、-CHO、-CR’=CR”、-SiR’R”R”’、-SiR’X’X”、-SiR’R”X’、-SnR’R”R”’、-BR’R”、-B(OR’)(OR”)、-B(OH)、-O-SO-R’、-C≡CH、-C≡C-SiR’、-ZnX’又はエンドキャップ基を示し、X’及びX”は、ハロゲンを示し、R’、R”及びR’”は、互いに独立して、式Iにおいて示されるRの意味のうちの1つを有し、好適には、1~16個のC原子を有するアルキルを示し、R’、R”及びR’”のうちの2つはまた、それらが結合されるそれぞれのヘテロ原子と一緒に、2~20個のC原子を有するシクロシリル、シクロスタンニル、シクロボラン又はシクロボロネート基を形成し得る。
【0149】
好ましいエンドキャップ基R31及びR32は、H、C1~20アルキル、又は任意選択的に置換されるC6~12アリール若しくはC2~10ヘテロアリール、非常に好適には、H、フェニル又はチオフェンである。
【0150】
式Iの化合物並びに式P及びPTの共役ポリマーは、文献に記載される、当業者に公知の方法にしたがって又はそれと類似の方法で合成され得る。他の調製方法が、実施例から理解され得る。
【0151】
例えば、本発明の化合物は、山本カップリング、鈴木カップリング、スティルカップリング、薗頭カップリング、ヘックカップリング又はバックワルドカップリングなどのアリール-アリールカップリング反応によって好適に調製され得る。遊離体は、当業者に公知の方法にしたがって調製され得る。
【0152】
上記及び下記に記載される合成方法に使用される好ましいアリール-アリールカップリング方法は、山本カップリング、熊田カップリング、根岸カップリング、鈴木カップリング、スティルカップリング、薗頭カップリング、ヘックカップリング、C-H活性化カップリング、ウルマンカップリング又はバックワルドカップリングである。特に好ましいのは、鈴木カップリング、根岸カップリング、スティルカップリング及び山本カップリングである。鈴木カップリングは、例えば、国際公開第00/53656 A1号パンフレットに記載されている。根岸カップリングは、例えば、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティ・ケミカル・コミュニケーションズ(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.)、1977年、p.683~684に記載されている。山本カップリングは、例えば、T.山本ら著、プログレス・イン・ポリマー・サイエンス(Prog.Polym.Sci.)、1993年、第17巻、p.1153~1205、又は国際公開第2004/022626 A1号パンフレットに記載されている。スティルカップリングは、例えば、Z.バオ(Z.Bao)ら著、米国化学会誌(J.Am.Chem.Soc.)、1995年、第117巻、p.12426~12435に記載されており、C-H活性化は、例えば、M.ルクレール(M.Leclerc)ら著、アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディション(Angew.Chem.Int.Ed.)、2012年、第51巻、p.2068~2071に記載されている。例えば、山本カップリングを使用する場合、2つの反応性ハライド基を有する遊離体が好適には使用される。鈴木カップリングを使用する場合、2つの反応性ボロン酸又はボロン酸エステル基又は2つの反応性ハライド基を有する遊離体が好適には使用される。スティルカップリングを使用する場合、2つの反応性スタンナン基又は2つの反応性ハライド基を有する遊離体が好適には使用される。根岸カップリングを使用する場合、2つの反応性有機亜鉛基又は2つの反応性ハライド基を有する遊離体が好適には使用される。
【0153】
特に、鈴木、根岸又はスティルカップリングのための好ましい触媒は、Pd(0)錯体又はPd(II)塩から選択される。好ましいPd(0)錯体は、Pd(PhP)などの少なくとも1つのホスフィンリガンドを有するものである。別の好ましいホスフィンリガンドは、トリス(オルト-トリル)ホスフィン、すなわち、Pd(o-TolP)である。好ましいPd(II)塩としては、酢酸パラジウム、すなわち、Pd(OAc)が挙げられる。あるいは、Pd(0)錯体は、Pd(0)ジベンジリデンアセトン錯体、例えばトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、又はPd(II)塩、例えば酢酸パラジウムと、ホスフィンリガンド、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(オルト-トリル)ホスフィン又はトリ(tert-ブチル)ホスフィンと混合することによって調製され得る。鈴木カップリングは、塩基、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化リチウム、リン酸カリウム又は炭酸テトラエチルアンモニウム若しくは水酸化テトラエチルアンモニウムなどの有機塩基の存在下で行われる。山本カップリングは、Ni(0)錯体、例えばビス(1,5-シクロオクタジエニル)ニッケル(0)を用いる。
【0154】
上述されるハロゲンの代替として、式-O-SOの脱離基が使用され得、ここで、Zは、アルキル又はアリール基、好適には、C1~10アルキル又はC6~12アリールである。このような脱離基の特定の例は、トシレート、メシレート及びトリフレートである。
【0155】
式I及びその部分式の化合物は、文献に記載される、当業者に公知の方法、例えば、以下の合成スキームに示される方法によって又はそれと類似の方法で合成され得る。特に好適なかつ好ましい合成方法は、スキーム1に例示的に示され、ここで、R1~4及びAr1~3は、式Iにおいて定義されるとおりであり、A1~3は、Ar1~3の対応する非キノイド性形態を示す。
スキーム1
【0156】
【化24】
上記及び下記に記載される式Iの化合物を調製する新規な方法が、本発明の別の態様である。
【0157】
式Iの化合物はまた、例えば、電荷輸送、半導体、導電、光伝導及び/又は発光半導体特性を有するモノマー若しくはポリマー化合物と一緒に、又は例えば、PSC若しくはOLEDにおける中間層若しくは電荷遮断層として使用するための正孔遮断若しくは電子遮断特性を有する化合物と一緒に、組成物において使用され得る。
【0158】
したがって、本発明の別の態様は、電荷輸送、半導体、導電、光伝導、正孔遮断及び電子遮断特性のうちの1つ以上を有する、式Iの1つ以上の化合物及び1つ以上の小分子化合物及び/又はポリマーを含む組成物に関する。
【0159】
これらの組成物のブレンドは、先行技術に記載される、当業者に公知の従来の方法によって調製され得る。典型的に、化合物及び/又はポリマーは、互いに混合されるか、又は好適な溶媒及び組み合わされた溶液に溶解される。
【0160】
本発明の別の態様は、上記及び下記に記載される式Iの1つ以上の化合物又は組成物と、1つ以上の有機溶媒とを含む配合物に関する。
好ましい溶媒は、脂肪族炭化水素、塩素化炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、エーテル及びそれらの混合物である。使用され得るさらなる溶媒としては、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、ペンチルベンゼン、メシチレン、クメン、シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン、デカリン、2,6-ルチジン、2-フルオロ-m-キシレン、3-フルオロ-o-キシレン、2-クロロベンゾトリフルオリド、N,N-ジメチルホルムアミド、2-クロロ-6-フルオロトルエン、2-フルオロアニソール、アニソール、2,3-ジメチルピラジン、4-フルオロアニソール、3-フルオロアニソール、3-トリフルオロ-メチルアニソール、2-メチルアニソール、フェネトール、4-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-フルオロ-3-メチルアニソール、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベラトロール、2,6-ジメチルアニソール、3-フルオロベンゾ-ニトリル、2,5-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、ベンゾニトリル、3,5-ジメチル-アニソール、N,N-ジメチルアニリン、安息香酸エチル、1-フルオロ-3,5-ジメトキシ-ベンゼン、1-メチルナフタレン、N-メチルピロリジノン、3-フルオロベンゾ-トリフルオリド、ベンゾトリフルオリド、ジオキサン、トリフルオロメトキシ-ベンゼン、4-フルオロベンゾトリフルオリド、3-フルオロピリジン、トルエン、2-フルオロ-トルエン、2-フルオロベンゾトリフルオリド、3-フルオロトルエン、4-イソプロピルビフェニル、フェニルエーテル、ピリジン、4-フルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、1-クロロ-2,4-ジフルオロベンゼン、2-フルオロピリジン、3-クロロフルオロ-ベンゼン、1-クロロ-2,5-ジフルオロベンゼン、4-クロロフルオロベンゼン、クロロ-ベンゼン、o-ジクロロベンゼン、2-クロロフルオロベンゼン、p-キシレン、m-キシレン、o-キシレン又はo-、m-、及びp-異性体の混合物が挙げられる。比較的低い極性を有する溶媒が、一般に好ましい。インクジェット印刷では、高沸点を有する溶媒及び溶媒混合物が好ましい。スピンコーティングでは、キシレン及びトルエンのようなアルキル化ベンゼンが好ましい。
【0161】
特に好ましい溶媒の例としては、限定はされないが、ジクロロメタン、トリクロロメタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、アニソール、2,4-ジメチルアニソール、1-メチルナフタレン、モルホリン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、1,4-ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,5-ジメチルテトラリン、プロピオフェノン、アセトフェノン、テトラリン、2-メチルチオフェン、3-メチルチオフェン、デカリン、インダン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、メシチレン及び/又はそれらの混合物が挙げられる。
【0162】
溶液中の化合物又はポリマーの濃度は、好適には、0.1~10重量%、より好適には、0.5~5重量%である。任意選択的に、溶液は、例えば、国際公開第2005/055248 A1号パンフレットに記載されるように、レオロジー特性を調整するために1つ以上の結合剤も含む。
【0163】
適切な混合及びエージングの後、溶液は、以下のカテゴリー:完全な溶液、境界線上の溶液(borderline solution)又は不溶性のうちの1つとして評価される。溶解性と不溶性とを分ける溶解性パラメータ-水素結合限界値の概略を示すために外形線が描かれる。溶解性領域の範囲内に入る「完全な」溶媒は、“クラウリー,J.D.(Crowley,J.D.)、テグ,G.S.Jr(Teague,G.S.Jr)及びロウェ,J.W.Jr.(Lowe,J.W.Jr.)著、ジャーナル・オブ・ペイント・テクノロジー(Journal of Paint Technology)、1966年、第38巻(496)、p.296”などに公開されている文献値から選択され得る。溶媒ブレンドも使用され得、“ソルベンツ(Solvents)、W.H.エリス(W.H.Ellis)著、フェデレーションズ・オブ・ソサエティーズ・フォー・コーティングス・テクノロジー(Federation of Societies for Coatings Technology)、p.9~10、1986年”に記載されているように確認され得る。このような手順は、本発明のポリマーの両方を溶解させる「非」溶媒のブレンドをもたらし得るが、ブレンド中に少なくとも1つの真溶媒を有することが望ましい。
【0164】
式Iの化合物はまた、上記及び下記に記載されるデバイスにおけるパターニングされたOSC層において使用され得る。現代のマイクロエレクトロニクスへの応用では、一般に、コスト(単位面積当たりより多いデバイス)、及び電力消費を減少させるために小さい構造又はパターンを製造することが望ましい。本発明に係る化合物を含む薄層のパターニングは、例えば、フォトリソグラフィー、電子ビームリソグラフィー又はレーザーパターニングによって行われ得る。
【0165】
電子又は電気光学デバイスにおいて薄層として使用するために、本発明の化合物、組成物又は配合物は、任意の好適な方法によって堆積され得る。デバイスの液体コーティングは、真空蒸着技術より望ましい。溶液堆積法が特に好ましい。本発明の配合物は、多くの液体コーティング技術の使用を可能にする。好ましい堆積技術としては、限定はされないが、ディップコーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、ノズル印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、ドクターブレードコーティング、ローラ印刷、逆ローラ印刷、オフセットリソグラフィー印刷、ドライオフセットリソグラフィー印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、スプレーコーティング、カーテンコーティング、ブラシコーティング、スロットダイコーティング又はパッド印刷が挙げられる。
【0166】
高解像度の層及びデバイスが作製される必要がある場合、インクジェット印刷が特に好ましい。本発明の選択された配合物は、インクジェット印刷又はマイクロディスペンシング(microdispensing)によって予め作製されたデバイス基板に適用され得る。好適には、限定はされないが、アプリオン(Aprion)、日立工機(Hitachi-Koki)、インクジェット・テクノロジー(InkJet Technology)、オン・ターゲット・テクノロジー(On Target Technology)、ピコジェット(Picojet)、スペクトラ(Spectra)、トリデント(Trident)、ザール(Xaar)によって供給されるものなどの工業用圧電プリントヘッドが、有機半導体層を基板に適用するのに使用され得る。さらに、ブラザー(Brother)、エプソン(Epson)、コニカ(Konica)、セイコーインスツル(Seiko Instruments)、東芝テック(Toshiba TEC)によって製造されるものなどの半工業用のヘッド、又はマイクロドロップ(Microdrop)及びマイクロファブ(Microfab)によって製造されるものなどのシングルノズルマイクロディスペンサーが使用され得る。
【0167】
インクジェット印刷又はマイクロディスペンシングによって適用されるために、化合物又はポリマーは、まず、好適な溶媒に溶解されるべきである。溶媒は、上述される必要条件を満たさなければならず、選択されたプリントヘッドに対して有害作用を与えてはならない。さらに、溶媒は、プリントヘッドの内部での溶液の乾燥によって引き起こされる操作性の問題を防ぐために、100℃超、好適には、140℃超、より好適には、150℃超の沸点を有するべきである。上述される溶媒の他に、好適な溶媒としては、置換及び非置換キシレン誘導体、ジ-C1~2-アルキルホルムアミド、置換及び非置換アニソール並びに他のフェノール-エーテル誘導体、置換複素環、例えば置換ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピロリジノン、置換及び非置換N,N-ジ-C1~2-アルキルアニリン並びに他のフッ素化又は塩素化芳香族化合物が挙げられる。
【0168】
インクジェット印刷によって式Iの化合物を堆積するのに好ましい溶媒は、1つ以上の置換基で置換されたベンゼン環を有するベンゼン誘導体を含み、ここで、1つ以上の置換基の中の炭素原子の総数は、少なくとも3である。例えば、ベンゼン誘導体は、プロピル基又は3つのメチル基で置換されていてもよく、いずれの場合も、合計で少なくとも3個の炭素原子がある。このような溶媒は、化合物又はポリマーを含む溶媒を含むインクジェット流体が形成されるのを可能にし、それにより、噴霧中のジェットの目詰まり及び成分の分離を低減又は防止する。溶媒としては、例の以下のリストから選択されるものが挙げられる:ドデシルベンゼン、1-メチル-4-tert-ブチルベンゼン、テルピネオール、リモネン、イソデュレン、テルピノレン、シメン、ジエチルベンゼン。溶媒は、溶媒混合物、すなわち、2つ以上の溶媒の組合せであってもよく、各溶媒は、好適には、100℃超、より好適には、140℃超の沸点を有する。このような溶媒はまた、堆積された層中での膜形成を促進し、層中の欠陥を減少させる。
【0169】
インクジェット流体(すなわち、溶媒、結合剤及び半導体化合物の混合物)は、好適には、20℃で、1~100mPa・s、より好適には、1~50mPa・s、最適には、1~30mPa・sの粘度を有する。
【0170】
本発明に係る組成物及び配合物は、例えば、表面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤、接着剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気器、希釈剤(反応性若しくは非反応性であり得る)、助剤、着色剤、色素又は顔料、増感剤、安定剤、ナノ粒子又は阻害剤から選択される1つ以上のさらなる成分又は添加剤をさらに含み得る。
【0171】
本発明に係る化合物は、光学、電気光学、電子、エレクトロルミネセンス又は光ルミネセンス構成要素又はデバイスにおける電荷輸送、半導体、導電、光伝導又は発光材料として有用である。これらのデバイスにおいて、本発明の化合物は、典型的に、薄層又は薄膜として適用される。
【0172】
したがって、本発明は、電子デバイスにおける半導体化合物又は組成物又は層の使用も提供する。化合物又は組成物は、様々なデバイス及び装置における高移動度半導体材料として使用され得る。化合物又は組成物は、例えば、半導体層又は薄膜の形態で使用され得る。したがって、別の態様において、本発明は、本発明に係る化合物又は組成物を含む、電子デバイスに使用するための半導体層を提供する。この層又は薄膜は、約30ミクロン未満であり得る。様々な電子デバイス用途では、厚さは、約1ミクロン未満の厚さであり得る。この層は、上記の溶液コーティング又は印刷技術のいずれかによって、例えば、電子デバイスの一部に堆積され得る。
【0173】
本発明は、さらに、本発明に係る化合物又は組成物又は有機半導体層を含む電子デバイスを提供する。特に好ましいデバイスは、OFET、TFT、IC、論理回路、コンデンサ、RFIDタグ、OLED、OLET、OPED、OPV、PSC、OPD、太陽電池、レーザーダイオード、光伝導体、光検出器、電子写真デバイス、電子写真記録デバイス、有機記憶デバイス、センサーデバイス、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、伝導性基板及び伝導性パターンである。
【0174】
特に好ましい電子デバイスは、OFET、OLED、OPV、PSC及びOPDデバイス、特に、PSC、OPD及びバルクヘテロ接合(BHJ)OPVデバイスである。OFETにおいて、例えば、ドレインとソースとの間の活性半導体チャネルは、本発明の化合物又は組成物を含み得る。別の例として、OLEDデバイスにおいて、電荷(正孔又は電子)注入又は輸送層は、本発明の化合物又は組成物を含み得る。
【0175】
OPV又はOPDデバイスの光活性層における使用の場合、本発明に係る化合物は、好適には、1つ以上のp型(電子供与体)半導体及び1つ以上のn型(電子受容体)半導体を含むか又は含有する、より好適には、それらからなる組成物に使用される。
【0176】
n型半導体は、例えば、式Iの化合物によって構成される。
p型半導体は、好適には、上記で定義される共役ポリマーである。
組成物は、n型半導体としての式Iの化合物、共役ポリマーのようなp型半導体、及び好適にはフラーレン又は置換フラーレンである第2のn型半導体も含み得る。
【0177】
フラーレンは、例えば、ICBAのようなインデン-C60-フラーレンビス付加体、又は「PCBM-C60」若しくは「C60PCBM」としても知られ、例えば、G.ユ(G.Yu)、J.ガオ(J.Gao)、J.C.フムレン(J.C.Hummelen)、F.ウドゥル(F.Wudl)、A.J.ヒーガー(A.J.Heeger)著、サイエンス(Science)、1995年、第270巻、p.1789以降に開示され、以下に示される構造を有する(6,6)-フェニル-酪酸メチルエステルで誘導体化されたメタノC60フラーレン、又は例えばC61フラーレン基、C70フラーレン基、若しくはC71フラーレン基を有する構造的に類似した化合物、又は有機ポリマー(例えば、コークリー,K.M(Coakley,K.M.)及びマクギー,M.D(McGehee,M.D.)著、ケミストリー・オブ・マテリアルズ(Chem.Mater.)、2004年、第16巻、p.4533を参照)である。
【0178】
【化25】
好適には、フラーレンは、PCBM-C60、PCBM-C70、ビス-PCBM-C60、ビス-PCBM-C70、ICMA-c60(1’,4’-ジヒドロ-ナフト[2’,3’:1,2][5,6]フラーレン-C60)、ICBA、oQDM-C60(1’,4’-ジヒドロ-ナフト[2’,3’:1,9][5,6]フラーレン-C60-Ih)、又はビス-oQDM-C60である。
【0179】
OPV又はOPDデバイスは、好適には、光活性層の一方の側の透明又は半透明基板上の第1の透明又は半透明電極と、光活性層の他方の側の第2の金属又は半透明電極とをさらに含む。
【0180】
さらに好適には、OPV又はOPDデバイスは、光活性層と第1又は第2の電極との間に、金属酸化物(例えば、ZTO、MoO、NiOのような)、共役ポリマー電解質(例えばPEDOT:PSSのような)、共役ポリマー(例えばポリトリアリールアミン(PTAA:polytriarylamine)のような)、絶縁ポリマー(例えばナフィオン(nafion)、ポリエチレンイミン又はポリスチレンスルホネートのような)、有機化合物(例えばN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(1-ナフチル)(1,1’-ビフェニル)-4,4’ジアミン(NPB:N,N’-diphenyl-N,N’-bis(1-naphthyl)(1,1’-biphenyl)-4,4’diamine)、N,N’-ジフェニル-N,N’-(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD:N,N’-diphenyl-N,N’-(3-methylphenyl)-1,1’-biphenyl-4,4’-diamine)のような)などの材料を含む、正孔輸送層及び/又は電子遮断層として働くか、あるいは金属酸化物(例えば、ZnO、TiOのような)、塩(例えばLiF、NaF、CsFのような)、共役ポリマー電解質(例えばポリ[3-(6-トリメチルアンモニウムヘキシル)チオフェン]、ポリ(9,9-ビス(2-エチルヘキシル)-フルオレン]-b-ポリ[3-(6-トリメチルアンモニウムヘキシル)チオフェン]、若しくはポリ[(9,9-ビス(3’-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル)-2,7-フルオレン)-alt-2,7-(9,9-ジオクチルフルオレン)]のような)又は有機化合物(例えばトリス(8-キノリノラト)-アルミニウム(III)(Alq)、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリンのような)などの材料を含む、正孔阻止層及び/又は電子輸送層として働く、1つ以上のさらなるバッファ層を含む。
【0181】
式Iの化合物及び共役ポリマーを含む本発明に係る組成物において、ポリマー:式Iの化合物の比率は、好適には、重量基準で5:1~1:5、より好適には、重量基準で1:1~1:3、最適には、重量基準で1:1~1:2である。
【0182】
本発明に係る組成物は、好適には、5~95重量%のポリマー結合剤も含み得る。結合剤の例としては、ポリスチレン(PS:polystyrene)、ポリジメチルシラン(PDMS:polydimethylsilane)、ポリプロピレン(PP:polypropylene)及びポリメチルメタクリレート(PMMA:polymethylmethacrylate)が挙げられる。
【0183】
好適にはポリマーである、上述される配合物に使用される結合剤は、絶縁結合剤若しくは半導体結合剤のいずれか、又はそれらの混合物を含んでいてもよく、本明細書において、有機結合剤、ポリマー結合剤又は単に結合剤と呼ばれ得る。
【0184】
好適には、ポリマー結合剤は、1000~5,000,000g/mol、特に、1500~1,000,000g/mol、より好適には、2000~500,000g/molの範囲の重量平均分子量を含む。少なくとも10000g/mol、より好適には、少なくとも100000g/molの重量平均分子量を有するポリマーで、意外な効果を得ることができる。
【0185】
特に、ポリマーは、1.0~10.0の範囲、より好適には、1.1~5.0の範囲、最適には、1.2~3の範囲の多分散指数M/Mを有し得る。
好適には、不活性結合剤は、-70~160℃、好適には、0~150℃、より好適には、50~140℃、最適には、70~130℃の範囲のガラス転移温度を有するポリマーである。ガラス転移温度は、ポリマーのDSCを測定することによって決定され得る(DIN EN ISO 11357、加熱速度10℃/分)。
【0186】
式Iのものなどの、ポリマー結合剤対OSC化合物の重量比は、好適には、30:1~1:30の範囲、特に、5:1~1:20の範囲、より好適には、1:2~1:10の範囲である。
【0187】
好ましい実施形態によれば、結合剤は、好適には、スチレンモノマー及び/又はオレフィンモノマーに由来する繰返し単位を含む。好ましいポリマー結合剤は、少なくとも80重量%、好適には、90重量%、より好適には、99重量%の、スチレンモノマー及び/又はオレフィンに由来する繰返し単位を含み得る。
【0188】
スチレンモノマーは、当該技術分野において周知である。これらのモノマーとしては、スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン(α-メチルスチレン及びα-エチルスチレンなど)、環にアルキル置換基を有する置換スチレン(ビニルトルエン及びp-メチルスチレンなど)、ハロゲン化スチレン(モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン及びテトラブロモスチレンなど)が挙げられる。
【0189】
オレフィンモノマーは、水素及び炭素原子からなる。これらのモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン及び1,3-ブタジエンが挙げられる。
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリマー結合剤は、50,000~2,000,000g/mol、好適には、100,000~750,000g/molの範囲、より好適には、150,000~600,000g/molの範囲、最適には、200,000~500,000g/molの範囲の重量平均分子量を有するポリスチレンである。
【0190】
好適な結合剤のさらなる例は、例えば、米国特許出願公開第2007/0102696 A1号明細書に開示されている。特に好適なかつ好ましい結合剤は、以下に記載されている。
【0191】
結合剤は、好適には、薄膜、より好適には、可撓性薄膜を形成することが可能であるべきである。
結合剤として好適なポリマーとしては、ポリ(1,3-ブタジエン)、ポリフェニレン、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(α-ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリエチレン、シス-ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(4-メチルスチレン)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(2-メチル-1,3-ブタジエン)、ポリ(p-キシリレン)、ポリ(α-α-α’-α’テトラフルオロ-p-キシリレン)、ポリ[1,1-(2-メチルプロパン)ビス(4-フェニル)カーボネート]、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリイソブチレン、ポリ(ビニルシクロヘキサン)、ポリ(ケイ皮酸ビニル)、ポリ(4-ビニルビフェニル)、1,4-ポリイソプレン、ポリノルボルネン、ポリ(スチレン-ブロック-ブタジエン);31重量%のスチレン、ポリ(スチレン-ブロック-ブタジエン-ブロック-スチレン);30重量%のスチレン、ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸)(及びエチレン/ブチレン)1~1.7%の無水マレイン酸、ポリ(スチレン-ブロック-エチレン/ブチレン-ブロック-スチレン)トリブロックポリマー13%のスチレン、ポリ(スチレン-ブロック-エチレン-プロピレン-ブロック-スチレン)トリブロックポリマー37重量%のスチレン、ポリ(スチレン-ブロック-エチレン/ブチレン-ブロック-スチレン)トリブロックポリマー29重量%のスチレン、ポリ(1-ビニルナフタレン)、ポリ(1-ビニルピロリドン-コ-スチレン)64%のスチレン、ポリ(1-ビニルピロリドン-コ-酢酸ビニル)1.3:1、ポリ(2-クロロスチレン)、ポリ(2-ビニルナフタレン)、ポリ(2-ビニルピリジン-コ-スチレン)1:1、ポリ(4,5-ジフルオロ-2,2-ビス(CF3)-1,3-ジオキソール-コ-テトラフルオロエチレン)テフロン(Teflon)、ポリ(4-クロロスチレン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(4-メチルスチレン)、ポリ(4-ビニルピリジン-コ-スチレン)1:1、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(ブタジエン-グラフト-ポリ(メチルアクリレート-コ-アクリロニトリル))1:1:1、ポリ(ブチルメタクリレート-コ-イソブチルメタクリレート)1:1、ポリ(ブチルメタクリレート-コ-メチルメタクリレート)1:1、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリ(エチレン-コ-1-ブテン-コ-1-ヘキセン)1:1:1、ポリ(エチレン-コ-エチルアクリレート-コ-無水マレイン酸);2%の無水物、32%のエチルアクリレート、ポリ(エチレン-コ-グリシジルメタクリレート)8%のグリシジルメタクリレート、ポリ(エチレン-コ-メチルアクリレート-コ-グリシジルメタクリレート)8%のグリシジルメタクリレート25%のメチルアクリレート、ポリ(エチレン-コ-オクテン)1:1、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-5-メチレン-2-ノルボルネン)50%のエチレン、ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)1:1、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)-コ-(フルオレセインO-メタクリレート)80%のメチルメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート-コ-ブチルメタクリレート)85%のメチルメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート-コ-エチルアクリレート)5%のエチルアクリレート、ポリ(プロピレン-コ-ブテン)12%の1-ブテン、ポリ(スチレン-コ-アリルアルコール)40%のアリルアルコール、ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸)7%の無水マレイン酸、クメン末端ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸)(1.3:1)、ポリ(スチレン-コ-メチルメタクリレート)40%のスチレン、ポリ(ビニルトルエン-コ-α-メチルスチレン)1:1、ポリ-2-ビニルピリジン、ポリ-4-ビニルピリジン、ポリ-α-ピネン、ポリメチルメタクリレート、ポリベンジルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-コ-エチルアクリレート18%のエチルアクリレート、ポリエチレン-コ-酢酸ビニル12%の酢酸ビニル、ポリエチレン-グラフト-無水マレイン酸0.5%の無水マレイン酸、ポリプロピレン、ポリプロピレン-グラフト-無水マレイン酸8~10%の無水マレイン酸、ポリスチレンポリ(スチレン-ブロック-エチレン/ブチレン-ブロック-スチレン)グラフト無水マレイン酸2%の無水マレイン酸1:1:1のその他、分枝鎖状ポリ(スチレン-ブロック-ブタジエン)1:1、ポリ(スチレン-ブロック-ブタジエン-ブロック-スチレン)、30%のスチレン、ポリ(スチレン-ブロック-イソプレン)10重量%のスチレン、ポリ(スチレン-ブロック-イソプレン-ブロック-スチレン)17重量%のスチレン、ポリ(スチレン-コ-4-クロロメチルスチレン-コ-4-メトキシメチルスチレン2:1:1、ポリスチレン-コ-アクリロニトリル25%のアクリロニトリル、ポリスチレン-コ-α-メチルスチレン1:1、ポリスチレン-コ-ブタジエン4%のブタジエン、ポリスチレン-コ-ブタジエン45%のスチレン、ポリスチレン-コ-クロロメチルスチレン1:1、ポリ塩化ビニル、ポリケイ皮酸ビニル、ポリビニルシクロヘキサン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロピレン1:1(推定)、ポリ(スチレン-ブロック-エチレン/プロピレン-ブロック-スチレン)30%のスチレン、ポリ(スチレン-ブロック-エチレン/プロピレン-ブロック-スチレン)18%のスチレン、ポリ(スチレン-ブロック-エチレン/プロピレン-ブロック-スチレン)13%のスチレン、ポリ(スチレン-ブロックエチレンブロック-エチレン/プロピレン-ブロックスチレン)32%のスチレン、ポリ(スチレン-ブロックエチレンブロック-エチレン/プロピレン-ブロックスチレン)30%のスチレン、ポリ(スチレン-ブロック-エチレン/ブチレン-ブロック-スチレン)31%のスチレン、ポリ(スチレン-ブロック-エチレン/ブチレン-ブロック-スチレン)34%のスチレン、ポリ(スチレン-ブロック-エチレン/ブチレン-ブロック-スチレン)30%のスチレン、ポリ(スチレン-ブロック-エチレン/ブチレン-ブロック-スチレン)60%、スチレン、分枝鎖状又は非分枝鎖状ポリスチレン-ブロック-ポリブタジエン、ポリスチレン-ブロック(ポリエチレン-ran-ブチレン)-ブロック-ポリスチレン、ポリスチレン-ブロック-ポリブタジエン-ブロック-ポリスチレン、ポリスチレン-(エチレン-プロピレン)-ジブロック-コポリマー(例えばクラトン(KRATON)(登録商標)-G1701E、シェル(Shell))、ポリ(プロピレン-コ-エチレン)及びポリ(スチレン-コ-メチルメタクリレート)が挙げられる。
【0192】
上述される配合物に使用される好ましい絶縁結合剤は、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリケイ皮酸ビニル、ポリ(4-ビニルビフェニル)、ポリ(4-メチルスチレン)、及びポリメチルメタクリレートである。最も好ましい絶縁結合剤は、ポリスチレン及びポリメチルメタクリレートである。
【0193】
結合剤はまた、例えばアクリレート、エポキシ、ビニルエーテル、チオレンなどのような架橋性結合剤から選択され得る。結合剤はまた、メソゲン性又は液晶性であり得る。
有機結合剤は、それ自体が半導体であってもよく、その場合、それは、本明細書において半導体結合剤と呼ばれる。半導体結合剤は、さらに好適には、本明細書において定義される低い誘電率の結合剤である。本発明において使用するための半導体結合剤は、好適には、少なくとも1500~2000、より好適には、少なくとも3000、さらにより好適には少なくとも4000、最適には、少なくとも5000の数平均分子量(M)を有する。半導体結合剤は、好適には、少なくとも10-5cm-1-1、より好適には、少なくとも10-4cm-1-1の電荷キャリア移動度を有する。
【0194】
好ましい半導体結合剤は、アリールアミン(好適には、トリアリールアミン)を含有するホモポリマー又はコポリマー(ブロック-コポリマーを含む)を含む。
BHJ OPVデバイスにおいて薄層を製造するために、本発明の化合物、組成物及び配合物は、任意の好適な方法によって堆積され得る。デバイスの液体コーティングは、真空蒸着技術より望ましい。溶液堆積法が特に好ましい。本発明の配合物は、多くの液体コーティング技術の使用を可能にする。好ましい堆積技術としては、限定はされないが、ディップコーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、ノズル印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、ドクターブレードコーティング、ローラ印刷、逆ローラ印刷、オフセットリソグラフィー印刷、ドライオフセットリソグラフィー印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、スプレーコーティング、カーテンコーティング、ブラシコーティング、スロットダイコーティング又はパッド印刷が挙げられる。OPVデバイス及びモジュールの製造のために、可撓性基板と適合する領域印刷方法、例えば、スロットダイコーティング、スプレーコーティングなどが好ましい。
【0195】
式Iの化合物とポリマーとの混合物を含有する好適な溶液又は配合物が調製されなければならない。配合物の調製において、好適な溶媒は、両方の成分、p型及びn型成分への完全な溶解を確実にし、選択された印刷方法によって導入される境界条件(例えばレオロジー特性)を考慮に入れるように、選択されなければならない。
【0196】
有機溶媒は、一般に、この目的のために使用される。典型的な溶媒は、芳香族溶媒、ハロゲン化溶媒又は塩素化溶媒(塩素化芳香族溶媒を含む)であり得る。例としては、限定はされないが、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、四塩化炭素、トルエン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アニソール、2,4-ジメチルアニソール、1-メチルナフタレン、モルホリン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、1,4-ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,5-ジメチルテトラリン、プロピオフェノン、アセトフェノン、テトラリン、2-メチルチオフェン、3-メチルチオフェン、デカリン、インダン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、メシチレン及びそれらの組合せが挙げられる。
【0197】
OPVデバイスは、例えば、文献から知られている任意のタイプのものであり得る(例えば、ウォルドーフ(Waldauf)ら著、アプライド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.)、2006年、第89巻、p.233517を参照)。
【0198】
本発明に係る第1の好ましいOPVデバイスは、以下の層:
-任意選択的に、基板、
-アノードとして働く、好適には、例えばITOのような金属酸化物を含む高仕事関数電極、
-好適には、例えば、PEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレン-スルホネート)、又はTBD(N,N’-ジフェニル-N-N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’ビフェニル-4,4’-ジアミン)又はNBD(N,N’-ジフェニル-N-N’-ビス(1-ナフチルフェニル)-1,1’ビフェニル-4,4’-ジアミン)の有機ポリマー又はポリマーブレンドを含む、任意選択的な伝導性ポリマー層又は正孔輸送層、
-BHJを形成する、例えばp型/n型二重層として、又は別個のp型及びn型層として、又はブレンド若しくはp型及びn型半導体として存在し得るp型及びn型有機半導体を含む、「光活性層」とも呼ばれる層、
-任意選択的に、例えばLiF又はPFNを含む、電子輸送特性を有する層、
-カソードとして働く、好適には、例えばアルミニウムのような金属を含む低仕事関数電極
を(下から上への順序で)含み、
電極の少なくとも1つ、好適にはアノードが、可視光に対して透過性であり、
n型半導体は、式Iの化合物である。
【0199】
本発明に係る第2の好ましいOPVデバイスは、逆OPVデバイスであり、以下の層:
-任意選択的に、基板、
-例えばITOを含む、カソードとして働く、高仕事関数の金属又は金属酸化物電極、
-好適には、TiO若しくはZnのような金属酸化物、又はポリ(エチレンイミン)を含む、正孔遮断特性を有する層、
-BHJを形成する、例えばp型/n型二重層として、又は別個のp型及びn型層として、又はブレンド若しくはp型及びn型半導体として存在し得る、電極間に位置するp型及びn型有機半導体を含む光活性層、
-好適には、例えば、PEDOT:PSS、ナフィオン(nafion)又は例えばTBD若しくはNBDのような置換トリアリールアミン誘導体の有機ポリマー又はポリマーブレンドを含む、任意選択的な伝導性ポリマー層又は正孔輸送層、
-アノードとして働く、例えば銀のような高仕事関数の金属を含む電極
を(下から上への順序で)含み、
電極の少なくとも1つ、好適にはカソードが、可視光に対して透過性であり、
n型半導体は、式Iの化合物である。
【0200】
本発明のOPVデバイスにおいて、p型及びn型半導体材料は、好適には、上述されるように、化合物/ポリマー/フラーレン系のような材料から選択される。
光活性層が基板に堆積される場合、それは、ナノスケールレベルで相分離するBHJを形成する。ナノスケール相分離に関する説明については、デンラー(Dennler)ら著、IEEE予稿集(Proceedings of the IEEE)、2005年、第93巻(8)、p.1429又はホップ(Hoppe)ら著、アドバンスト・ファンクショナル・マテリアルズ(Adv.Func.Mater)、2004年、第14巻(10)、p.1005を参照されたい。その際、ブレンドモルフォロジー、ひいてはOPVデバイス性能を最適化するために、任意選択的なアニール工程が必要であり得る。
【0201】
デバイス性能を最適化するための別の方法は、相分離を適切な方法で促進するために高沸点添加剤を含み得るOPV(BHJ)デバイスの製造のための配合物を調製することである。1,8-オクタンジチオール、1,8-ジヨードオクタン、ニトロベンゼン、クロロナフタレン、及び他の添加剤が、高効率の太陽電池を得るために使用されている。例は、J.ピート(J.Peet)ら著、ネイチャー・マテリアルズ(Nat.Mater.)、2007年、第6巻、p.497又はフレチェット(Frechet)ら著、米国化学会誌(J.Am.Chem.Soc.)、2010年、第132巻、p.7595~7597に開示されている。
【0202】
本発明の別の好ましい実施形態は、DSSC又はPSCにおける色素、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層及び/又は電子遮断層としての、本発明に係る化合物又は組成物の使用、及び本発明に係る化合物又は組成物を含むDSSC又はPSCに関する。
【0203】
DSSC及びPSCは、文献、例えば、ケミカル・レビューズ(Chem.Rev.)、2010年、第110巻、p.6595~6663、アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディション(Angew.Chem.Int.Ed.)、2014年、第53巻、p.2~15又は国際公開第2013171520A1号パンフレットに記載されるように製造され得る。
【0204】
本発明に係る好ましいOEデバイスは、太陽電池、好適には、以下に記載されるように少なくとも部分的に無機である光吸収体を含むPSCである。
本発明に係る光吸収体を含む太陽電池において、少なくとも部分的に無機である光吸収体材料の選択に関してそれ自体で制限はない。
【0205】
「少なくとも部分的に無機」という用語は、光吸収体材料が、実質的に無機であり、かつ好適には、結晶構造における単一の位置が有機イオンによって割り当てられ得る結晶構造を有する金属有機錯体又は材料から選択され得ることを意味する。
【0206】
好適には、本発明に係る太陽電池に含まれる光吸収体は、2.8eV以下かつ0.8eV以上の光学バンドギャップを有する。
非常に好適には、本発明に係る太陽電池における光吸収体は、2.2eV以下かつ1.0eV以上の光学バンドギャップを有する。
【0207】
本発明に係る太陽電池に使用される光吸収体は、好適には、フラーレンを含有しない。フラーレンの化学は、有機化学の分野に属する。したがって、フラーレンは、本発明に係る「少なくとも部分的に無機」であるという定義を満たさない。
【0208】
好適には、少なくとも部分的に無機である光吸収体は、ペロブスカイト構造を有する材料又は2D結晶ペロブスカイト構造を有する材料である。
上記及び下記において使用される際の「ペロブスカイト」という用語は、一般に、ペロブスカイト結晶構造又は2D結晶ペロブスカイト構造を有する材料を示す。
【0209】
ペロブスカイト太陽電池(PSC)という用語は、ペロブスカイト構造を有する材料又は2D結晶ペロブスカイト構造を有する材料である光吸収体を含む太陽電池を意味する。
少なくとも部分的に無機である光吸収体は、限定はされないが、ペロブスカイト結晶構造を有する材料、2D結晶ペロブスカイト構造を有する材料(例えば、クリスタル・エンジニアリング・コミュニケーションズ(CrystEngComm)、2010年、第12巻、p.2646~2662)、Sb(輝安鉱)、Sb(SSe(x-1)3、PbSSe(x-1)、CdSSe(x-1)、ZnTe、CdTe、ZnSSe(x-1)、InP、FeS、FeS、Fe、FeSiS、FeGeS、CuS、CuInGa、CuIn(Se(1-x)、CuSbBi(x-1)、(SSe(y-1)、CuSnS、SnSSe(x-1)、AgS、AgBiS、BiSI、BiSeI、Bi(SSe(x-1)、BiS(1-x)SeI、WSe、AlSb、金属ハロゲン化物(例えばBiI、CsSnI)、黄銅鉱(例えばCuInGa(1-x)(SSe(1-y))、黄錫亜鉛鉱(例えばCuZnSnS、CuZnSn(Se(1-x)4、CuZn(Sn1-xGe)S)及び金属酸化物(例えばCuO、CuO)又はそれらの混合物から構成される。
【0210】
好適には、少なくとも部分的に無機である光吸収体は、ペロブスカイトである。
光吸収体についての上記の定義において、x及びyはそれぞれ、独立して、以下のように定義される:(0≦x≦1)かつ(0≦y≦1)。
【0211】
非常に好適には、光吸収体は、特殊なペロブスカイト、すなわち、上記及び下記に詳細に記載される金属ハロゲン化物ペロブスカイトである。最適には、光吸収体は、ペロブスカイト太陽電池(PSC)に含まれる有機-無機ハイブリッド金属ハロゲン化物ペロブスカイトである。
【0212】
本発明の1つの特に好ましい実施形態において、ペロブスカイトは、式ABX
(式中、
Aは、一価の有機カチオン、金属カチオン又はこれらのカチオンの2つ以上の混合物であり、
Bは、二価のカチオンであり、
Xは、F、Cl、Br、I、BF又はそれらの組合せである)
で表される金属ハロゲン化物ペロブスカイトを示す。
【0213】
好適には、ペロブスカイトの一価の有機カチオンは、アルキルアンモニウム(ここで、アルキル基は、1~6個のC原子を有する直鎖状又は分枝鎖状である)、ホルムアミジニウム又はグアニジウムから選択され、又は金属カチオンは、K、Cs又はRbから選択される。
【0214】
好適なかつ好ましい二価のカチオンBは、Ge2+、Sn2+又はPb2+である。
好適なかつ好ましいペロブスカイト材料は、CsSnI、CHNHPb(I1-xCl、CHNHPbI3、CHNHPb(I1-xBr、CHNHPb(I1-x(BF、CHNHSn(I1-xCl、CHNHSnI又はCHNHSn(I1-xBrであり、ここで、xはそれぞれ、独立して、以下のように定義される:(0<x≦1)。
【0215】
さらなる好適なかつ好ましいペロブスカイトは、式Xa(3-x)Xb(x)に対応する2つのハロゲン化物を含んでいてもよく、ここで、Xa及びXbはそれぞれ、独立して、Cl、Br、又はIから選択され、xは、0超かつ3未満である。
【0216】
好適なかつ好ましいペロブスカイトはまた、国際公開第2013/171517号パンフレット、請求項52~71及び請求項72~79(全体が参照により本明細書に援用される)に開示されている。材料は、ハロゲン化物アニオン及びカルコゲニドアニオンから選択される2つ以上の異なるアニオンを含む混合アニオンペロブスカイトとして定義される。好ましいペロブスカイトは、18頁、5~17行に開示されている。記載されるように、ペロブスカイトは、通常、CHNHPbBrI、CHNHPbBrCl、CHNHPbIBr、CHNHPbICl、CHNHSnFBr、CHNHSnFI及び(HN=CH-NH)PbI3zBr3(1-z)から選択され、ここで、zは、0超かつ1未満である。
【0217】
本発明はさらに、上記及び下記に記載される、光吸収体、好適にはPSCを含む太陽電池に関し、ここで、式Iの化合物は、1つの電極と光吸収体層との間の層として用いられる。
【0218】
本発明はさらに、上記及び下記に記載される、光吸収体、好適にはPSCを含む太陽電池に関し、ここで、式Iの化合物は、電子選択層に含まれる。
電子選択層は、電子-電荷輸送に有利に働く、高い電子伝導性及び低い正孔伝導性を提供する層として定義される。
【0219】
本発明はさらに、上記及び下記に記載される、光吸収体、好適にはPSCを含む太陽電池に関し、ここで、式Iの化合物は、電子選択層の一部としての、電子輸送材料(ETM:electron transport material)又は正孔遮断材料として用いられる。
【0220】
好適には、式Iの化合物は、電子輸送材料(ETM)として用いられる。
代替的な好ましい実施形態において、式Iの化合物は、正孔遮断材料として用いられる。
【0221】
本発明に係るPSCデバイスのデバイス構造は、文献から知られている任意のタイプのものであり得る。
本発明に係るPSCデバイスの第1の好ましいデバイス構造は、以下の層:
-任意選択的に、任意の組合せで、可撓性又は剛性、及び透明、半透明又は不透明、及び導電性又は非導電性であり得る基板;
-好適には、ドープされた金属酸化物、例えばフッ素ドープ酸化スズ(FTO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、又はアルミニウムドープ酸化亜鉛を含む高仕事関数電極;
-1つ以上の電子輸送材料(そのうちの少なくとも1つが、式Iの化合物である)を含み、また、場合によっては、緻密層であり得、及び/又はナノ粒子から構成され得、好適には、TiO、ZnO、SnO、Y、Ga、SrTiO、BaTiO又はそれらの組合せなどの金属酸化物を含む電子選択層;
-任意選択的に、伝導性、半導体又は絶縁性であり得、好適には、TiO、ZnO、SnO、Y、Ga、SrTiO、BaTiO、Al、ZrO、SiO又はそれらの組合せなどの金属酸化物を含み、好適には、ナノ粒子、ナノロッド、ナノフレーク、ナノチューブ又はナノカラムから構成される多孔質骨格;
-少なくとも部分的に無機であり、特に好適には、上述される金属ハロゲン化物ペロブスカイトである光吸収体を含み、また、場合によっては、緻密層又は多孔質層であり得、任意選択的に、下位層に部分的に若しくは完全に浸透する層;
-任意選択的に、1つ以上の正孔輸送材料を含み、場合によっては、正孔選択層の特性、例えば導電性を促進し、及び/又はその処理を促進し得る添加剤、例えばリチウム塩、例えばLiY(ここで、Yは、一価の有機アニオン、好適には、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである)、第3級アミン、例えば4-tert-ブチルピリジン、又は任意の他の共有結合若しくはイオン性化合物、例えばトリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)-コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド))も含み得る正孔選択層;
並びに金属製である、例えばAu、Ag、Al、Cu、Ca、Ni又はそれらの組合せで作製されるか、又は非金属性であり得、及び透明、半透明又は不透明であり得る裏面電極
を(下から上への順序で)含む。
【0222】
本発明に係るPSCデバイスの第2の好ましいデバイス構造は、以下の層:
-任意選択的に、任意の組合せで、可撓性又は剛性、及び透明、半透明又は不透明、及び導電性又は非導電性であり得る基板;
-好適には、ドープされた金属酸化物、例えばフッ素ドープ酸化スズ(FTO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、又はアルミニウムドープ酸化亜鉛を含む高仕事関数電極;
-任意選択的に、例えば、下位電極の仕事関数を変化させ、及び/又は下位層の表面を変性し、及び/又は下位層の粗面を平坦化するのに役立ち、場合によっては、単層でもあり得る正孔注入層;
-任意選択的に、1つ以上の正孔輸送材料を含み、場合によっては、正孔選択層の特性、例えば導電性を促進し、及び/又はその処理を促進し得る添加剤、例えばリチウム塩、例えばLiY(ここで、Yは、一価の有機アニオン、好適には、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである)、第3級アミン、例えば4-tert-ブチルピリジン、又は任意の他の共有結合若しくはイオン性化合物、例えばトリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)-コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド))も含み得る正孔選択層;
-少なくとも部分的に無機であり、特に好適には、記載されるか又は好適には上述される金属ハロゲン化物ペロブスカイトである光吸収体を含む層;
-1つ以上の電子輸送材料(そのうちの少なくとも1つが、式Iの化合物である)を含み、また、場合によっては、緻密層であり得、及び/又はナノ粒子から構成され得、例えば、TiO、ZnO、SnO、Y、Ga、SrTiO、BaTiO又はそれらの組合せなどの金属酸化物を含み得、及び/又は置換フラーレン、例えば[6,6]-フェニルC61-酪酸メチルエステルを含み得、及び/又は分子、オリゴマー又はポリマー電子-輸送材料、例えば2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、又はそれらの混合物を含み得る電子選択層;
並びに金属製である、例えばAu、Ag、Al、Cu、Ca、Ni又はそれらの組合せで作製されるか、又は非金属性であり得、及び透明、半透明又は不透明であり得る裏面電極
を(下から上への順序で)含む。
【0223】
本発明に係るPSCデバイスにおける電子選択層を製造するために、式Iの化合物は、任意選択的に、ブレンド又は混合物の形態で、他の化合物又は添加剤と一緒に、任意の好適な方法によって堆積され得る。デバイスの液体コーティングは、真空蒸着技術より望ましい。溶液堆積方法が特に好ましい。式Iの化合物を含む配合物は、多くの液体コーティング技術の使用を可能にする。好ましい堆積技術としては、限定はされないが、ディップコーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、ノズル印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、ドクターブレードコーティング、ローラ印刷、逆ローラ印刷、オフセットリソグラフィー印刷、ドライオフセットリソグラフィー印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、スプレーコーティング、カーテンコーティング、ブラシコーティング、スロットダイコーティング又はパッド印刷が挙げられる。PSCデバイス及びモジュールの製造のために、大面積コーティングのための堆積技術、例えば、スロットダイコーティング又はスプレーコーティングが好ましい。
【0224】
本発明に係る光電子デバイスにおける、好適には、PSCデバイスにおける電子選択層を製造するのに使用され得る配合物は、任意選択的に、1つ以上のさらなる電子輸送材料及び/又は正孔遮断材料及び/又は結合剤及び/又は上記及び下記に記載される他の添加剤、及び1つ以上の溶媒と一緒に、ブレンド又は混合物の形態で、上述される式Iの1つ以上の化合物又は好ましい実施形態を含む。
【0225】
配合物は、上記又は下記に記載される前記必要な又は任意選択的な成分を含んでいてもよく、又は含むか、それらから本質的になるか若しくはそれらからなり得る。配合物に使用され得る全ての化合物又は成分は、公知であるか若しくは市販されており、又は公知のプロセスによって合成され得る。
【0226】
上述される配合物は、
(i)まず、式Iの化合物、任意選択的に、上述される結合剤又は結合剤の前駆体、任意選択的に、さらなる電子輸送材料、任意選択的に、上記及び下記に記載される1つ以上のさらなる添加剤及び上記及び下記に記載される溶媒又は溶媒混合物を混合すること、並びに
(ii)このような混合物を基板に適用し;及び任意選択的に、溶媒を蒸発させて、本発明に係る電子選択層を形成すること
を含む方法によって調製され得る。
【0227】
工程(i)において、溶媒は、式Iの化合物及び有機結合剤のための単一の溶媒であってもよく、及び/又はさらなる電子輸送材料がそれぞれ、別個の溶媒に溶解された後、得られた溶液を混合して、化合物を混合し得る。
【0228】
あるいは、結合剤は、任意選択的に溶媒の存在下で、式Iの化合物を、結合剤の前駆体、例えば液体モノマー、オリゴマー又は架橋性ポリマー中で混合するか又はそれに溶解させ、混合物又は溶液を、例えばそれを基板に浸漬、噴霧、塗布又は印刷することによって堆積して、液体層を形成し、次に、液体モノマー、オリゴマー又は架橋性ポリマーを、例えば放射線、熱又は電子ビームへの曝露によって硬化させて、固体層を生成することによって、その場で形成され得る。予め形成された結合剤が使用される場合、それは、式Iの化合物と一緒に、上述される好適な溶媒に溶解されてもよく、溶液が、例えばそれを基板に浸漬、噴霧、塗布又は印刷することによって堆積されて、液体層を形成し、次に、溶媒を除去して、固体層を残す。配合物の全ての成分を溶解させることが可能であり、溶液ブレンドから蒸発させると一貫した欠陥のない層を生じる溶媒が選択されることが理解されるであろう。
【0229】
前記構成要素の他に、上述される配合物は、さらなる添加剤及び処理助剤を含み得る。これらとしては、特に、表面活性物質(界面活性剤)、潤滑剤及びグリース、粘度を調節する添加剤、伝導性を高める添加剤、分散剤、疎水化剤、接着促進剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤(反応性若しくは非反応性であり得る)、充填剤、助剤、処理助剤、色素、顔料、安定剤、増感剤、ナノ粒子及び阻害剤が挙げられる。
【0230】
添加剤は、電子選択層の特性及び/又は隣接層のいずれかの特性及び/又は本発明に係る光電子デバイスの性能を強化するのに使用され得る。添加剤はまた、電子選択層の堆積、処理若しくは形成及び/又は隣接する層のいずれかの堆積、処理若しくは形成を促進するのに使用され得る。好適には、電子選択層の導電性を促進し、及び/又は隣接する層のいずれかの表面を不動態化する1つ以上の添加剤が使用される。
【0231】
1つ以上の添加剤を組み込むのに好適な方法は、例えば、大気圧若しくは減圧下での添加剤の蒸気への曝露、1つ以上の添加剤及び記載されるか又は好適には上述される材料若しくは配合物を含有する溶液又は固体を混合すること、上述される材料若しくは配合物への1つ以上の添加剤の熱拡散によって、又は上述される材料若しくは配合物への1つ以上の添加剤のイオン注入によって、1つ以上の添加剤を、上述される材料若しくは配合物と接触させることを含む。
【0232】
この目的のために使用される添加剤は、有機、無機、金属又はハイブリッド材料であり得る。添加剤は、分子化合物、例えば有機分子、塩、イオン性液体、配位錯体又は有機金属化合物、ポリマー又はそれらの混合物であり得る。添加剤はまた、粒子、例えばハイブリッド又は無機粒子、好適には、ナノ粒子、又は炭素系材料、例えばフラーレン、カーボンナノチューブ若しくはグラフェンフレークであり得る。
【0233】
導電性を促進し得る添加剤の例は、例えばハロゲン(例えばI、Cl、Br、ICl、ICl、IBr及びIF)、ルイス酸(例えばPF、AsF、SbF、BF、BCl、SbCl、BBr及びSO)、プロトン酸、有機酸、又はアミノ酸(例えばHF、HCl、HNO、HSO、HClO、FSOH及びClSOH)、遷移金属化合物(例えばFeCl、FeOCl、Fe(ClO、Fe(4-CHSO、TiCl、ZrCl、HfCl、NbF、NbCl、TaCl、MoF、MoCl、WF、WCl、UF及びLnCl(ここで、Lnは、ランタノイドである))、アニオン(例えばCl、Br、I、I 、HSO 、SO 2-、NO 、ClO 、BF 、PF 、AsF 、SbF 、FeCl 、Fe(CN) 3-、及び様々なスルホン酸のアニオン、例えばアリール-SO )、カチオン(例えばH、Li、Na、K、Rb、Cs、Co3+及びFe3+)、O、酸化還元活性塩(例えばXeOF、(NO )(SbF )、(NO )(SbCl )、(NO )(BF )、NOBF、NOPF、AgClO、HIrCl及びLa(NO・6HO)、強電子受容性有機分子(例えば2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ))、遷移金属酸化物(例えばWO、Re及びMoO)、コバルト、鉄、ビスマス及びモリブデンの金属-有機錯体、(p-BrCNSbCl、ビスマス(III)トリス(トリフルオロアセテート)、FSOOOSOF、アセチルコリン、R、(Rは、アルキル基である)、R(Rは、直鎖状又は分枝鎖状アルキル基1~20である)、RAs(Rは、アルキル基である)、R(Rは、アルキル基である)及びイオン性液体(例えば1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)である。好適なコバルト錯体は、トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)-コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド))の他に、国際公開第2012/114315号パンフレット、国際公開第2012/114316号パンフレット、国際公開第2014/082706号パンフレット、国際公開第2014/082704号パンフレット、欧州特許第2883881号明細書又は特開2013-131477号公報に記載されるようにコバルト錯塩である。
【0234】
好適なリチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの他に、リチウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、リチウムジシアンアミド、メチル硫酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムテトラシアノボレート、リチウムジシアンアミド、リチウムトリシアノメチド、リチウムチオシアネート、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム又は2つ以上の組合せである。好ましいリチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである。
【0235】
好適には、配合物は、0.1mM~50mM、好適には、5~20mMのリチウム塩を含む。
式Iの化合物及び混合ハロゲン化物ペロブスカイトを含むPSCのための好適なデバイス構造が、国際公開第2013/171517号パンフレット、請求項52~71及び請求項72~79(全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0236】
式の化合物及び誘電体骨格をペロブスカイトと一緒に含むPSCのための好適なデバイス構造が、国際公開第2013/171518号パンフレット、請求項1~90又は国際公開第2013/171520号パンフレット、請求項1~94(全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0237】
式Iの化合物、半導体及びペロブスカイトを含むPSCのための好適なデバイス構造が、国際公開第2014/020499号パンフレット、請求項1及び3~14(全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。そこに記載される、表面が増加する骨格構造は、支持層に適用及び/又は固定されるナノ粒子、例えば多孔質TiOを含む。
【0238】
式の化合物を含み、平面ヘテロ接合を含むPSCのための好適なデバイス構造が、国際公開第2014/045021号パンフレット、請求項1~39(全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。このようなデバイスは、n型(電子伝導性)層とp型(正孔伝導性)層との間に配置された光吸収又は発光ペロブスカイトの薄膜を有することを特徴とする。好適には、薄膜は、小型の薄膜である。
【0239】
本発明はさらに、上記又は下記に記載されるPSCを調製する方法であって、
-第1及び第2の電極を提供する工程と;
-式Iの化合物を含む電子選択層を提供する工程と
を含む。
【0240】
本発明はさらに、上記及び下記に記載される本発明に係る少なくとも1つのデバイスを含むタンデムデバイスに関する。好適には、タンデムデバイスは、タンデム太陽電池である。
【0241】
本発明に係るタンデムデバイス又はタンデム太陽電池は、2つのセミセル(semi-cell)を有していてもよく、ここで、セミセルの一方は、記載されるか又は好適には上述される活性層中に化合物、オリゴマー又はポリマーを含む。当該技術分野において公知の任意の他のタイプのデバイス又は太陽電池であり得る他のタイプのセミセルの選択について制限は存在しない。
【0242】
当該技術分野において公知の2つの異なるタイプのタンデム太陽電池がある。いわゆる2端子又はモノリシックタンデム太陽電池は、2つのみの接続部を有する。2つのサブセル(subcell)(又は同意語としてセミセル)が直列接続される。したがって、両方のサブセルにおいて生成される電流は同一である(電流整合)。電力変換効率の増加は、2つのサブセルの電圧を合計した際の電圧の増加によるものである。他のタイプのタンデム太陽電池は、いわゆる4端子又は積層タンデム太陽電池である。この場合、両方のサブセルは、独立して動作される。したがって、両方のサブセルは、異なる電圧で動作され得、異なる電流も生成し得る。タンデム太陽電池の電力変換効率は、2つのサブセルの電力変換効率の合計である。
【0243】
本発明はさらに、上述されるか又は好適には上述される本発明に係るデバイスを含むモジュールに関する。
本発明の化合物及び組成物はまた、他の用途における色素又は顔料として、例えば、塗料、インク、プラスチック、布帛、化粧品、食品及び他の材料を着色する際の、インク色素、レーザー色素、蛍光マーカ、溶剤染料、食用色素、造影剤又は顔料として使用され得る。
【0244】
本発明の化合物及び組成物はまた、OFETの半導体チャネルにおいて使用するのに好適である。したがって、本発明は、ゲート電極、絶縁(又はゲート絶縁)層、ソース電極、ドレイン電極及びソース電極とドレイン電極とを接続する有機半導体チャネルを含むOFETも提供し、ここで、有機半導体チャネルは、本発明に係る化合物及び組成物を含む。OFETの他の特徴は、当業者に周知である。
【0245】
OSC材料がゲート誘電体と、ドレイン電極及びソース電極との間の薄膜として配置されるOFETは、一般に知られており、例えば、米国特許第5,892,244号明細書、米国特許第5,998,804号明細書、米国特許第6,723,394号明細書及び背景項に引用されている参考文献に記載されている。本発明に係る化合物の溶解性、ひいては大きい表面の加工性を用いた低コスト生産のような利点のため、これらのOFETの好ましい用途は、集積回路、TFTディスプレイ及びセキュリティ用途などである。
【0246】
OFETデバイスにおけるゲート、ソース及びドレイン電極並びに絶縁及び半導体層は、任意の順序で配置され得、ただし、ソース及びドレイン電極が、絶縁層によってゲート電極から隔てられ、ゲート電極及び半導体層が両方とも絶縁層に接触し、ソース電極及びドレイン電極が両方とも半導体層に接触する。
【0247】
本発明に係るOFETデバイスは、好適には、
-ソース電極、
-ドレイン電極、
-ゲート電極、
-半導体層、
-1つ以上のゲート絶縁体層、
-任意選択的に、基板
を含み、ここで、半導体層は、好適には、式Iの化合物を含む。
【0248】
OFETデバイスは、トップゲート型デバイス又はボトムゲート型デバイスであり得る。OFETデバイスの好適な構造及び製造方法は、当業者に公知であり、文献、例えば、米国特許出願第2007/0102696 A1号明細書に記載されている。
【0249】
ゲート絶縁体層は、好適には、例えば、市販のサイトップ(Cytop)809M(登録商標)又はサイトップ(Cytop)107M(登録商標)(旭硝子(Asahi Glass)製)のようなフルオロポリマーを含む。好適には、ゲート絶縁体層は、例えば、スピンコーティング、ドクターブレーディング、ワイヤバーコーティング、スプレー若しくはディップコーティング又は他の公知の方法によって、絶縁体材料と、1つ以上のフルオロ原子を含む1つ以上の溶媒(フルオロ溶媒)、好適には、パーフルオロ溶媒を含む配合物から堆積される。好適なパーフルオロ溶媒は、例えばFC75(登録商標)(アクロス(Acros)から入手可能、カタログ番号12380)である。例えば、パーフルオロポリマーテフロン(Teflon)AF(登録商標)1600若しくは2400(デュポン(DuPont)製)又はフルオロペル(Fluoropel)(登録商標)(サイトニクス(Cytonix)製)又はパーフルオロ溶媒FC43(登録商標)(アクロス(Acros)、No.12377)のような他の好適なフルオロポリマー及びフルオロ溶媒が、先行技術において公知である。特に好ましいのは、例えば、米国特許出願公開第2007/0102696 A1号明細書又は米国特許第7,095,044号明細書に開示されているように、1.0~5.0、非常に好適には、1.8~4.0の低い誘電率(又は比誘電率)を有する有機誘電材料(「低k材料」)である。
【0250】
セキュリティ用途では、トランジスタ又はダイオードのような、本発明に係る半導体材料を含むOFET及び他のデバイスは、紙幣、クレジットカード若しくはIDカード、国家ID文書、免許証又は金銭的価値を有する任意の製品(切手、チケット、株式、小切手などのような)のような有価証券を証明し、その偽造を防止するために、RFIDタグ又はセキュリティマーキングに使用され得る。
【0251】
あるいは、本発明に係る化合物及び組成物(以後、「材料」と呼ばれる)は、OLED、例えば、フラットパネルディスプレイ用途におけるアクティブディスプレイ材料として、又は例えば液晶ディスプレイのようなフラットパネルディスプレイのバックライトとして使用され得る。一般的なOLEDは、多層構造を用いて実現される。発光層は、一般に、1つ以上の電子輸送及び/又は正孔輸送層の間に挿入される。電圧を印加することによって、電荷キャリアとしての電子及び正孔は、発光層に向かって移動し、そこで、それらの再結合により、励起、ひいては発光層に含まれるルモフォア(lumophor)単位の発光が生じる。本発明に係る材料は、それらの電気的及び/又は光学特性に対応して、電荷輸送層の1つ以上及び/又は発光層において用いられ得る。さらに、本発明に係る材料が、それ自体でエレクトロルミネセンス特性を示すか、又はエレクトロルミネセンス基又は化合物を含む場合、発光層内でのそれらの使用は特に有利である。OLEDに使用するための好適なモノマー、オリゴマー及びポリマー化合物又は材料の選択、特性評価並びに処理は、一般に、当業者によって公知であり、例えば、ミューラー(Mueller)ら著、シンセティック・メタルズ(Synth.Metals)、2000年、第111~112巻、p.31~34、アルカラ(Alcala)、応用物理学会誌(J.Appl.Phys.)、2000年、第88巻、p.7124~7128及びそこで引用される文献を参照されたい。
【0252】
別の使用によれば、本発明に係る材料、特に、光ルミネセンス特性を示す材料は、欧州特許出願公開第0 889 350 A1号明細書又はC.ウェダー(C.Weder)ら著、サイエンス(Science)、1998年、第279巻、p.835~837によって記載されているように、例えばディスプレイデバイスにおける光源の材料として用いられ得る。
【0253】
本発明のさらなる態様は、本発明に係る材料の酸化型及び還元型の両方に関する。電子の損失又は獲得のいずれかにより、高伝導性を有する高度に非局在化されたイオン形態の形成が生じる。これは、一般的なドーパントへの曝露の際に起こり得る。好適なドーパント及びドーピング方法は、例えば、欧州特許第0 528 662号明細書、米国特許第5,198,153号明細書又は国際公開第96/21659号パンフレット号明細書から当業者に公知である。
【0254】
ドーピングプロセスは、典型的に、酸化還元反応において酸化剤又は還元剤で半導体材料を処理して、材料中に非局在化されたイオン中心を形成することを意味し、対応する対イオンは、適用されたドーパントに由来する。好適なドーピング方法は、例えば、大気圧又は減圧下でのドーピング蒸気への曝露、ドーパントを含有する溶液中での電気化学的ドーピング、ドーパントを半導体材料と接触させて、熱的に拡散させること、及び半導体材料中へのドーパントのイオン注入を含む。
【0255】
電子がキャリアとして使用される場合、好適なドーパントは、例えばハロゲン(例えば、I、Cl、Br、ICl、ICl、IBr及びIF)、ルイス酸(例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、SbCl、BBr及びSO)、プロトン酸、有機酸、又はアミノ酸(例えば、HF、HCl、HNO、HSO、HClO、FSOH及びClSOH)、遷移金属化合物(例えば、FeCl、FeOCl、Fe(ClO、Fe(4-CHSO、TiCl、ZrCl、HfCl、NbF、NbCl、TaCl、MoF、MoCl、WF、WCl、UF及びLnCl(ここで、Lnは、ランタノイドである)、アニオン(例えば、Cl、Br、I、I 、HSO 、SO 2-、NO 、ClO 、BF 、PF 、AsF 、SbF 、FeCl 、Fe(CN) 3-、及び様々なスルホン酸のアニオン、例えばアリール-SO )である。正孔がキャリアとして使用される場合、ドーパントの例は、カチオン(例えば、H、Li、Na、K、Rb及びCs)、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Rb、及びCs)、アルカリ土類金属(例えば、Ca、Sr、及びBa)、O、XeOF、(NO )(SbF )、(NO )(SbCl )、(NO )(BF )、AgClO、HIrCl、La(NO・6HO、FSOOOSOF、Eu、アセチルコリン、R、(Rは、アルキル基である)、R(Rは、アルキル基である)、RAs(Rは、アルキル基である)、及びR(Rは、アルキル基である)である。
【0256】
本発明に係る材料の伝導性形態は、限定はされないが、OLED用途における電荷注入層及びITO平坦化層、フラットパネルディスプレイ及びタッチスクリーン用のフィルム、帯電防止フィルム、印刷された伝導性基板、プリント回路基板及びコンデンサなどの電子用途におけるパターン又はトラクトを含む用途において、有機「金属」として使用され得る。
【0257】
本発明に係る材料はまた、例えば、コラー(Koller)ら著、ネイチャー・フォトニクス(Nat.Photonics)、2008年、第2巻、p.684に記載されているように、有機プラズモン放出ダイオード(OPED:organic plasmon-emitting diode)に使用するのに好適であり得る。
【0258】
別の使用によれば、本発明に係る材料は、例えば、米国特許出願公開第2003/0021913号明細書に記載されているように、LCD又はOLEDデバイスにおける配向層において又はそのような配向層として、単独で又は他の材料と一緒に使用され得る。本発明に係る電荷輸送化合物の使用は、配向層の導電性を増大させ得る。LCDにおいて使用される場合、この導電性の増大は、切り替え可能なLCDセルにおける不都合な残留dc作用を低減し、画像の固着を抑制することができるか又は、例えば強誘電体LCDにおいて、強誘電体LCの自発的な分極電荷の切り替えによって生成される残留電荷を低減することができる。配向層上に提供された発光材料を含むOLEDデバイスにおいて使用される場合、この導電性の増大は、発光材料のエレクトロルミネセンスを促進することができる。
【0259】
メソゲン性又は液晶性を有する本発明に係る材料は、上述される配向した異方性フィルムを形成することができ、これは、前記異方性フィルム上に提供された液晶媒体中で配向を誘導又は促進するための配向層として特に有用である。
【0260】
別の使用によれば、本発明に係る材料は、スマートウインドウとしても知られている液晶(LC:liquid crystal)ウインドウに使用するのに好適である。
本発明に係る材料はまた、米国特許出願公開第2003/0021913 A1号明細書において記載されているように、光配向層において又は光配向層として使用するための光異性化可能な化合物及び/又は発色団と組み合わされ得る。
【0261】
別の使用によれば、本発明に係る材料、特に、それらの水溶性誘導体(例えば、極性若しくはイオン性側基を有する)又はイオン的にドープされた形態は、DNA配列を検出及び識別するための化学センサー又は材料として用いられ得る。このような使用は、例えば、L.チェン(L.Chen)、D.W.マクブランチ(D.W.McBranch)、H.ワン(H.Wang)、R.ヘルゲソン(R.Helgeson)、F.ウドゥル(F.Wudl)及びD.G.ホイッテン(D.G.Whitten)著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)、1999年、第96巻、p.12287;D.ワン(D.Wang)、X.ゴン(X.Gong)、P.S.ヒーガー(P.S.Heeger)、F.リニンスランド(F.Rininsland)、G.C.バザン(G.C.Bazan)及びA.J.ヒーガー(A.J.Heeger)著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)、2002年、第99巻、p.49;N.ディチェザレ(N.DiCesare)、M.R.ピノ(M.R.Pinot)、K.S.シャンツェ(K.S.Schanze)及びJ.R.ラコウィッツ(J.R.Lakowicz)著、ラングミュア(Langmuir)、2002年、18巻、p.7785;D.T.マクウェイド(D.T.McQuade)、A.E.プレン(A.E.Pullen)、T.M.スワガー(T.M.Swager)著、ケミカル・レビューズ(Chem.Rev.)、2000年、第100巻、p.2537に記載されている。
【0262】
文脈上明らかに他の意味を示さない限り、本明細書において使用される際、本明細書における用語の複数形は、単数形を含むものと解釈されるべきであり、逆もまた同様である。
【0263】
本明細書の説明及び特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise)」及び「含有する(contain)」という用語、及びその用語の変化形、例えば「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」は、「限定はされないが、~を含む(including but not limited to)」を意味し、他の構成要素を除外することは意図されない(除外しない)。
【0264】
本発明の上記の実施形態の変形が、本発明の範囲内に依然として含まれながら行われ得ることが理解されるであろう。本明細書に開示される各特徴は、特に規定されない限り、同一、同等又は同様の目的を果たす代替的な特徴によって置き換えられ得る。したがって、特に規定されない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等又は同様の特徴の一例に過ぎない。
【0265】
本明細書に開示される特徴の全ては、このような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが互いに排他的である組合せを除いて、任意の組合せで組み合わされ得る。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明の全ての態様に適用可能であり、任意の組合せで使用され得る。同様に、非本質的な組合せで記載される特徴は、別々に(組み合わせずに)使用され得る。
【0266】
上記及び下記において、特に規定されない限り、パーセンテージは重量パーセントであり、温度は℃で示される。
ここで、本発明は、以下の実施例を参照することによってより詳細に説明されるが、実施例は、例示のためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定しない。
【実施例
【0267】
実施例1
化合物1は、以下のように調製した。
2,7-ジヨード-4,4,9,9-テトラヘキサデシル-4,9-ジヒドロ-s-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン(1.1)
【0268】
【化26】
ヨウ素(2.094g;8.25mmol)及び(ジアセトキシヨード)ベンゼン(2.958g;9.00mmol)は、40℃で乾燥クロロホルム(300cm)中の4,4,9,9-テトラヘキサデシル-4,9-ジヒドロ-s-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン(8.731g;7.50mmol)の撹拌溶液に連続して加え、混合物は、この温度で4時間撹拌した。溶媒は、減圧下で回転蒸発によって除去し、残渣は、アセトンで研和した。オレンジ色の固体の沈殿物は、吸引ろ過によって収集し、アセトン、メタノール及びアセトンで洗浄した。次に、粗生成物は、シクロヘキサンに溶解させ、溶液は、シリカプラグ(10g)に通してろ過した。プラグは、シクロヘキサンで溶離した。ろ液は、ほぼ乾固するまで濃縮し、次に、アセトンで粉砕した。固体は、吸引ろ過によって収集し、アセトンで洗浄し、空気乾燥させて、生成物をクリーム色の粉末(9.69g、93%)として得た。H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ 7.11(s,1H)、7.05(s,1H)、1.91-1.79(m,2H)、1.73(td,J=13.0、12.6、4.7Hz、2H)、1.27-0.95(m,52H)、0.81(t,J=6.8Hz、6H)、0.77-0.61(m,4H).13C NMR(101MHz、CDCl)δ 155.83、152.54、146.71、135.44、131.20、113.32、73.33、54.24、38.97、31.94、29.92、29.71、29.67、29.63、29.58、29.37、29.30、24.09、22.70、14.13.
2,7-ジシアノメチレン-4,4,9,9-テトラヘキサデシル-4,9-ジヒドロ-s-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェンキノン(1)
【0269】
【化27】
無水N,N-ジメチルホルムアミド(40cm)中のマロノニトリル(0.661g;10.0mmol)の溶液に、水素化ナトリウム60%の分散体(0.400g;10.0mmol)固体を少しずつ加えた。混合物は、脱気し、20℃で20分間撹拌した。2,7-ジヨード-4,4,9,9-テトラヘキサデシル-4,9-ジヒドロ-s-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン(1.416g;1.00mmol)及びテトラキス(トリフェニルホルフィノ)パラジウム(116mg;0.100mmol)は、窒素下で加えた。混合物は、さらに10分間にわたってさらに脱気し、次に、110℃で20時間撹拌して、濃い赤色の透明な溶液を得た。溶液は、20℃に冷却した。10%のHCl(50cm)は、ゆっくりと加えた。黄褐色の沈殿物は、吸引ろ過によって収集した。固体は、ジクロロメタン(50cm)に溶解させた。2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(0.681g;3.0mmol)を加え、混合物は、30分間にわたって還流状態で撹拌して、濃い青色の溶液を得た。混合物は、乾固するまで回転蒸発させた。褐色の残渣は、メタノールで研和し、褐色の固体は、吸引ろ過によって収集し、次に、40~60℃で石油エーテル中の30%のジクロロメタンの混合物で溶離されるシリカ上でクロマトグラフにかけた。純粋な生成物は、紫がかった褐色の固体(0.188g、14.5%)として単離した。H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ 6.88(s,1H)、6.80(s,1H)、1.83(dddd,J=25.2、17.9、12.5、4.9Hz、4H)、1.27-1.02(m,52H)、0.81(t,J=6.7Hz、8H).13C NMR(101MHz、CDCl)δ 174.93、172.35、160.58、149.37、140.11、119.30、114.01、113.73、113.48、69.09、53.29、39.20、31.93、29.72、29.67、29.60、29.37、29.32、24.45、22.70、14.13.
実施例2
化合物2は、以下のように調製した。
2,8-ジヨード-6,6,12,12-テトラ(4-ヘキサデシル-1-フェニル)-6,12-ジヒドロ-ジチエノ[2,3-d:2’,3’-d’]-s-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン(2.1)
【0270】
【化28】
ヨウ素(0.335g;1.32mmol)及び(ジアセトキシヨード)ベンゼン(0.473g;1.44mmol)は、60℃で無水クロロホルム(50cm)中の6,6,12,12-テトラ(4-ヘキサデシル-1-フェニル)-6,12-ジヒドロ-ジチエノ[2,3-d:2’,3’-d’]-s-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン(1.897g;1.20mmol)の撹拌溶液に連続して加えた。混合物は、この温度で2時間撹拌した。赤褐色の溶液は、20℃に冷却した。飽和亜硫酸ナトリウム溶液5cmを加え、二重層混合物は、ヨウ素の色が消失するまで30分間にわたって激しく撹拌した。溶媒は、減圧下で回転蒸発によって除去し、残渣は、水で研和した。薄赤色の固体は、吸引ろ過して取り出し、水、メタノール及びアセトンで洗浄した。固体は、高温シクロヘキサンに溶解させ、次に、シリカプラグに通してろ過した。溶離液は、濃縮して、純粋な生成物を淡黄色の固体(2.05g、93%)として得た。H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ 7.38(s,1H)、7.32(s,1H)、7.07-6.96(m,8H)、2.48(t,J=7.8Hz、4H)、1.51(q,J=7.4Hz、4H)、1.18(s,52H)、0.80(t,J=6.6Hz、6H).
2,8-ジシアノメチレン-6,6,12,12-テトラ(4-ヘキサデシル-1-フェニル)-6,12-ジヒドロ-ジチエノ[2,3-d:2’,3’-d’]-s-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェンキノン(2)
【0271】
【化29】
無水N,N-ジメチルホルムアミド(40cm)中のマロノニトリル(0.495g;7.50mmol)の溶液に、水素化ナトリウム60%の分散体(0.30g;7.50mmol)固体を少しずつ加えた。混合物は、脱気し、20℃で20分間撹拌した。2,8-ジヨード-6,6,12,12-テトラ(4-ヘキサデシル-1-フェニル)-6,12-ジヒドロ-ジチエノ[2,3-d:2’,3’-d’]-s-インダセノ[1,2-b:5,6-b’]ジチオフェン(1.374g;0.75mmol)及びテトラキス(トリホスフィノ)パラジウム(87mg;0.075mmol)は、窒素下で加えた。黄色の懸濁液は、さらに10分間にわたってさらに脱気し、次に、110℃で16時間撹拌した。温度は、150℃(外部)に上昇させ、混合物は、3時間撹拌した。溶液は、20℃に冷却し、10%のHCl(50cm)をゆっくりと加えた。オレンジ色の沈殿物は、吸引ろ過によって収集し、水及びメタノールで洗浄した。固体は、ジクロロメタン(50cm)に溶解させ、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(0.511g;2.25mmol)は、撹拌しながら加えた。紫色の混合物は、20℃で1時間撹拌し、乾固するまで回転蒸発させた。褐色の残渣は、メタノールで研和し、赤褐色の固体は、吸引ろ過によって収集した。固体は、1:1のクロロホルム-石油エーテル40~60℃で溶離されるシリカ上でクロマトグラフにかけた。生成物は、濃い緑色の粉末(0.50g、39%)として単離した。H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ 7.12-7.07(m,4H)、7.06-7.17(br,2H)7.03-6.97(m,4H)、2.52(dd,J=9.1、6.7Hz、4H)、1.53(t,J=7.6Hz、4H)、1.18(s,52H)、0.86-0.73(m,6H).MS(APPI、m/z):実測値1706.1;C114H152N4S4についての計算値1706。