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特許7116096抱卵されたセッタートレイの中に設置されている卵を鶏舎の床に置くための移送機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】抱卵されたセッタートレイの中に設置されている卵を鶏舎の床に置くための移送機
(51)【国際特許分類】
   A01K 41/00 20060101AFI20220802BHJP
   A01K 41/04 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
A01K41/00
A01K41/04
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019570526
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018066962
(87)【国際公開番号】W WO2019007741
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】2017/5479
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】518393311
【氏名又は名称】ヴェルヴァーク - ベラヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルヴァーク,スティーブン
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/161387(WO,A1)
【文献】特開2015-085483(JP,A)
【文献】特開2003-137210(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0118130(US,A1)
【文献】米国特許第03061352(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 41/00 - 41/06
B65G 47/91
B65B 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏舎の床の上に卵(23)を配置するための移送機(1)であって、該卵がセッタートレイ(2)の中に抱卵されて設置された、前記移送機(1)が、
前記鶏舎中を進めることができるフレーム(4)と、該フレーム(4)に取り付けられ、抱卵後の卵(23)と共に前記セッタートレイ(2)の少なくとも1つを運搬するように構成された運搬機構(7)と、
それぞれが前記抱卵後の卵(23)の1つを把持するように構成された一連の卵ピックアップ手段(19)を有する、前記フレーム(4)に取り付けられた移送機構(14)であって、前記抱卵後の卵(23)を持ち上げて前記セッタートレイ(2)から出し、前記抱卵後の卵(23)を前記床の上に配置するように構成されている移送機構(14)と、を備え、
前記移送機構(14)は、前記フレーム(4)上で上方位置と下方位置との間で所定の経路内で上下に移動可能に取り付けられ、前記運搬機構(7)は、前記運搬機構(7)が前記移送機構(14)の経路の外側にある外側位置と、前記運搬機構(7)が前記移送機構(14)の経路内に位置する内側位置との間で前記フレーム(4)上に移動可能に取り付けられており、
前記フレーム(4)には第1のガイド手段(16)が備わっており、前記移送機構(14)には第2のガイド手段(17)が備わっており、該第1のガイド手段および該第2のガイド手段(16、17)は、前記移送機構(14)の経路を決定しており、
さらに、前記移送機(1)が、
前記移送機構(14)を上下に移動させるように構成された第1のアクチュエータ(20)と、
前記運搬機構(7)を前後に移動させるように構成された第2のアクチュエータ(9)と、
前記卵ピックアップ手段(19)を作動させるように構成された第3のアクチュエータ(25)と、
制御機構であって、
a)前記運搬機構(7)をその外側位置からその内側位置に移動させるために前記第2のアクチュエータ(9)を制御するステップと、
b)前記移送機構(14)を前記運搬機構(7)上の前記セッタートレイ(2)に設置された前記抱卵後の卵(23)まで下げるように移動させるために前記第1のアクチュエータ(20)を制御するステップと、
c)前記卵ピックアップ手段(19)によって前記抱卵後の卵(23)を掴むために前記第3のアクチュエータ(25)を制御するステップと、
d)前記運搬機構(7)をその内側位置からその外側位置に移動させるために前記第2のアクチュエータ(9)を制御するステップと、
e)前記移送機構(14)を前記経路に沿って前記床に向かって下方に移動させるために前記第1のアクチュエータ(20)を制御するステップと、
f)前記抱卵後の卵(23)を前記卵ピックアップ手段(19)から解放して前記床に配置するために前記第3のアクチュエータ(25)を制御するステップと、
g)前記移送機構(14)をその上方位置まで移動させるために前記第1のアクチュエータ(20)を制御するステップと、をアルファベット順で実行するように構成された制御機構と、
を備えることを特徴とする、移送機(1)。
【請求項2】
前記移送機構(14)は、互いに向かって、および互いから離れるように移動させることができる少なくとも2つの運搬要素(18a、18b、18c、18d、18e)と、該少なくとも2つの運搬要素(18a、18b、18c、18d、18e)を互いに向かって、および互いから離れるように移動させるように構成された第4のアクチュエータ(26)とを備え、いくつかの一連の前記卵ピックアップ手段(19)が前記運搬要素(18a、18b、18c、18d、18e)の各々に適用されており、前記制御機構は、
ステップd)の後、かつステップf)の前に、前記運搬要素(18a、18b、18c、18d、18e)を互いから離れるように移動させるために前記第4のアクチュエータ
(26)を制御し、
ステップf)の後、前記運搬要素(18a、18b、18c、18d、18e)を互いに向かって移動させるために前記第4のアクチュエータ(26)を制御するようにさらに構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の移送機(1)。
【請求項3】
前記第4のアクチュエータ(26)は空気圧ピストン機構(30)を備え、少なくとも1つの調整可能なリミッター(33)が、前記運搬要素(18a、18b、18c、18d、18e)間の最大距離を制御し制限するために前記運搬要素(18a、18b、18c、18d、18e)間に設けられることを特徴とする、請求項2に記載の移送機(1)。
【請求項4】
前記移送機構(14)の前記所定の経路は、前記一連の卵ピックアップ手段(19)の各卵ピックアップ手段(19)の所定の経路を画定し、前記運搬機構(7)は、前記抱卵後の卵(23)の各々が、前記卵ピックアップ手段(19)のうちの1つの前記所定の経路上にあるように、前記セッタートレイ(2)を位置決めするように構成された位置決め手段を備え、
前記運搬機構(7)は、該位置決め手段を駆動するように構成された第5のアクチュエータ(11)を備え、また前記制御機構は、ステップb)の前に、前記抱卵後の卵(23)の各々が前記卵ピックアップ手段(19)のうちの1つの前記所定の経路上にあるように前記運搬機構(7)の経路内に前記セッタートレイ(2)を位置決めするために前記第5のアクチュエータ(11)を制御するようにさらに構成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の移送機(1)。
【請求項5】
前記位置決め手段は、前記セッタートレイ(2)を実質的に水平方向に移動させるように構成された輸送機構(12)を備えることを特徴とする、請求項4に記載の移送機(1)。
【請求項6】
前記位置決め手段の移動方向は、前記運搬機構(7)の移動の前後方向に実質的に垂直であることを特徴とする、請求項4または5に記載の移送機(1)。
【請求項7】
前記運搬機構(7)は、実質的に水平方向に前記フレーム(4)上に前後に移動可能に取り付けられていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の移送機(1)。
【請求項8】
前記セッタートレイ(2)は実質的に長方形の形状を有し、前記運搬機構(7)は、それぞれの短辺が実質的に互いに接するように配置される少なくとも2つのセッタートレイ(2)を搬送するために設けられていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の移送機(1)。
【請求項9】
各卵ピックアップ手段(19)は、ステップb)の間、前記抱卵後の卵(23)の1つと接触するように構成された吸引カップ(22)を備え、前記第3のアクチュエータ(25)、吸引によって前記抱卵後の卵(23)を掴むために前記吸引カップ(22)から外に空気を吸い出すように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の移送機(1)。
【請求項10】
各卵ピックアップ手段(19)は、ステップb)の間、前記抱卵後の卵(23)の1つと接触するように構成された吸引カップ(22)を備え、前記第3のアクチュエータ(25)は、吸引によって前記抱卵後の卵(23)を掴むために前記吸引カップ(22)から外に空気を吸い出すように構成され、
前記運搬要素(18a、18b、18c、18d、18e)のそれぞれには、前記運搬要素(18a、18b、18c、18d、18e)の前記卵ピックアップ手段(19)が接続される真空リザーバが備わっており、前記第3のアクチュエータ(25)は、該真空リザーバから空気を吸引するように構成され、
前記吸引カップ(22)は、弾力性があるため、ステップf)の間、前記弾力性のある吸引カップ(22)によって生成される力によって、前記抱卵後の卵(23)の各々は、前記鶏舎の床の上で被覆材(3)の層の中に特定の深さまで入り込むことを特徴とする、請求項2に従属する移送機(1)。
【請求項11】
前記吸引カップ(22)は、弾力性があるため、ステップf)の間、前記弾力性のある吸引カップ(22)によって生成される力によって、前記抱卵後の卵(23)の各々は、前記鶏舎の床の上で被覆材(3)層の中に特定の深さまで入り込むことを特徴とする、請求項に記載の移送機(1)。
【請求項12】
前記第3のアクチュエータ(25)は、ステップf)の間、各吸引カップ(22)に空気を送り込むようにさらに構成されることで、前記抱卵後の卵(23)の各々は、前記鶏舎の床の上で被覆材(3)層の中に特定の深さまで入り込むことを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の移送機(1)。
【請求項13】
前記アクチュエータ(9、11、20、25、26)の1つまたは複数空気圧式に駆動されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の移送機(1)。
【請求項14】
前記一連の卵ピックアップ手段(19)からの卵ピックアップ手段(19)の数は、1つまたはいくつかの前記セッタートレイ(2)の中卵(23)の数に対応しており、前記移送機構(14)は前記セッタートレイ(2)の各々から前記抱卵後の卵(23)の1つ1つを同時に持ち上げるように構成されていることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の移送機(1)。
【請求項15】
前記一連の卵ピックアップ手段(19)は、少なくとも30個卵ピックアップ手段(19)を含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の移送機(1)。
【請求項16】
前記フレーム(4)を前記鶏舎中を移動させるように構成されたモータが備わっていることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の移送機(1)。
【請求項17】
前記制御機構は、ステップc)の後、かつステップd)の前に、前記卵ピックアップ手段(19)によって把持された前記抱卵後の卵(23)を前記セッタートレイ(2)から出して持ち上げるために前記移送機構(14)を上方に移動させるために、前記第1のアクチュエータ(20)を制御するようにさらに構成されることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の移送機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抱卵されたセッタートレイの中に設置されている卵を鶏舎の床に置くための移送機に関する。
【背景技術】
【0002】
セッタートレイ内の抱卵後の卵は、まず鶏舎に移される。その後、抱卵後の卵はセッタートレイから鶏舎の床に移される。その後、ひながブロイラー鶏舎内で孵り、このことは鳥の健康を増進させる。結局のところ、ひなはもはや輸送する必要がなく、すぐに使える餌と水も備わっている。
【0003】
実際には、抱卵後の卵が同時に孵るわけではないという問題が起こる。例えば、鶏の場合、19日後に既に孵る卵もあるが、21日経たないと孵らない卵もある。卵を孵化場で孵化させ、1日経ったひなをブロイラー鶏舎に輸送する場合、これは、ひなの一部が2日から3日の間餌も水もない状態であることを意味する。ひなの輸送およびその準備の間、ひなはまた、びっしりと一緒に詰め込まれる。これは、鳥の健康だけでなく、ひなの成長および発育ならびに病気に対する罹患率にも悪影響を及ぼす。
【0004】
このようなことを回避するために、新たなシステムが開発され、このシステムでは、特に18日間抱卵された抱卵後の卵をブロイラー鶏舎に持ち込み、そこで卵を孵化させることが可能であった。いわゆる「X-Treckシステム」では、抱卵後の卵は、それらが設置されるセッタートレイと一緒に鶏舎内に吊り下げられた輸送システム上に配置される。セッタートレイ内の卵の温度はその後、鶏舎内の輸送システムをそれが暖かくなる高さまで持ち上げるか、またはそれがより低温になる高さまで下げることによって制御することができる。特に卵の孵化が近づくと、卵の中のひなの活動が活発になるため、その温度が上昇する。輸送システムはこの場合、鶏が輸送システムからブロイラー鶏舎の床に飛び乗ることができるように、鶏舎の床より上の限られた高さに配置される。
【0005】
いわゆる「パティオシステム」では、セッタートレイ用の複数の輸送システムが互いの上に設けられ、それぞれが、その下に、ひなが屠殺の準備ができるまで生きることができる敷き藁で覆われたコンベアベルトを備える。様々なレベルの通気は、特許文献1に記載されているように水平方向の空気流によって行われる。このパティオシステムの利点は、鶏舎内で必要とされる空間が少ないことであるが、当然のことながら、このシステムはX-Treckシステムよりも高価である。
【0006】
特許文献2は、X-Treckシステムに関連しており、そこでは、卵を含むセッタートレイはブロイラー鶏舎の飼育システムの上に配置される。本特許出願によれば、ブロイラー鶏舎の床に配置された卵は孵化率が低くなるため、飼育システムは卵の温度を制御できるようにする必要がある。
【0007】
コスト、メンテナンスの複雑さ、およびシステムの清掃に伴う追加作業を考慮すると、これらの既知のシステムは実際には限られた規模にしか適用されない。1日経ったひなはセッタートレイ内で孵り、しばらくの間その上を歩き続けるため、セッタートレイは新たに孵化したひなの糞によって汚される。その結果、細菌、特にサルモネラ菌などの有害な細菌によるセッタートレイの感染の現実のリスクがある。汚染のリスクとシステムのコストの両方ために、養鶏業者は、自分の鶏舎にそのようなシステムを設置したがらない。抱卵中の卵の温度を制御するために必要とされる高度の開放性を備えたセッタートレイの複雑な設計により、セッタートレイの清掃もまた困難である。特に、セッタートレイには、感染症や、例えばサルモネラ菌などに感染する可能性がある鶏糞を簡単には取り除くことができない多くの角と縁部がある。ひなをセッタートレイ自体で孵化させることの別の欠点は、その大きな開放性のために鳥の健康に関する問題があることである。実際、新たに孵化したひなは、必要な空気流のために高度の開放性を維持しつつ卵を保持するためにセッタートレイ内に存在する多くの角や縁部で自分自身を傷つける場合がある。その結果、ひなはセッタートレイの中で動けなくなることすらあり得る。
【0008】
特許文献3には、鶏舎で卵を孵化させる別のシステムが記載されている。この特許に概略的に示されているように、抱卵後の卵はセッタートレイで孵化させず、敷き藁の層上の紙のシート上に寝かされる。餌と水も、この紙のシート上で新たに孵化したひなに与えられる。卵の温度を制御するために、卵は閉鎖されたカート内に置かれる、またはブロイラー鶏舎の床自体に置かれるときはそれを覆うようにカバーが敷かれる。
【0009】
特許文献3には、敷き藁の層の上の紙のシート上に抱卵後の卵を配置する可能性が示されているが、これは、パティオシステムでもX-Treckシステムでも特に実施されなかった。ブロイラー鶏舎では、数千または数万、例えば40,000個の抱卵後の卵を適所に効率的に置いていかなければならないため、抱卵後の卵を適所に置いていくのに必要な時間はほとんどない。手作業の労働のコストを考慮すると、卵がブロイラー鶏舎内で自由な状態で下に置かれる場合、これは迅速に行う必要があり、このことは、とりわけブロイラー鶏舎内の高い温度が原因で、非常に厄介な作業であるだけではなく、卵に損傷を与える高いリスクももたらすことになる。孵化時間に向かって卵殻はいっそう脆くなるため、卵は、特に卵殻に極めて細い亀裂が形成されるのを防ぐために、そっと扱う必要がある。極めて細い亀裂が生じた場合、卵の中のひなはより早く乾燥してしまい、ひなを弱らせ、より感染症にかかりやすくなる。その結果、孵化する卵の数が少なくなり、一般的に卵に極めて細い亀裂がある場合は実質的に15%少なくなり、細菌感染と戦うためにより多くの抗生物質治療が必要になる。このような抗生物質による治療は、近年プレッシャーを受けているため、故に可能な限り避けるべきである。
【0010】
セッタートレイを介した汚染の伝播を防ぐために、特許文献4には、卵がブロイラー鶏舎に輸送される前に、抱卵後の卵をセッタートレイから段ボールの容器に移すことが提案されている。したがって抱卵後の卵はこうした厚紙の容器の中で孵化場からブロイラー鶏舎に輸送される。このシステムは「One2Born」という名前で実際に使用されている。段ボールの容器は、卵の通気と温度制御のための追加の穴を含む鶏卵箱で構成されている。卵が鶏舎の床に直接置かれないように、容器は段ボールの脚の上に立っている。
【0011】
段ボール容器は生分解性であるという事実にもかかわらず、それらは鶏舎で余分な廃棄物を生み出すため、それを取り除く必要がある。段ボール容器のさらなる欠点は、それらが折り畳まれた形で配送され、容器を設置するためにかなりの量の手作業が必要とされることである。段ボール容器を購入するだけでなく、それらを設置するのにも追加の費用が伴う。孵化場自体においても、さらに卵を段ボール容器に移す必要がなおもある。実際には、とりわけ卵がこの目的のために鶏卵箱に設けられた空洞に位置決めされる場合、そのような移送ステップは毎回約0.5%の追加の平均的な損失を引き起こすことが分かっている。実際、卵はこれらの空洞に対して常に完全に正確に位置決めされるとは限らないため、卵を空洞内に入れる場合、卵は空洞の壁と接触することになる。卵殻の脆弱性のため、これは卵殻にかなりの量の極めて細い亀裂を生じさせる。
【0012】
特許文献5には、上記のシステムの問題を解決する請求項1の前文による移送機が記載される。特に、移送機は、鶏舎中を進めることができるフレームと、フレームに取り付けられ、抱卵後の卵と共に該セッタートレイの少なくとも1つを運搬するように構成された運搬機構と、それぞれが抱卵後の卵の1つを把持するように構成された一連の卵ピックアップ手段を有する、フレームに取り付けられた移送機構であって、抱卵後の卵を持ち上げてセッタートレイから出し、抱卵後の卵を床の上に配置するように構成された移送機構とを備える。
【0013】
このような移送機を使用すると、鶏舎内の断熱性の敷き藁の層の中にあるそれぞれのセッタートレイから直接、例えば1時間あたり数千から数万個の多数の卵を置いていくことが可能になる。加えて、セッタートレイは、このように1日経ったひなによって生み出される鶏糞によって汚されることがない。実際には、鶏舎はひなを新たに供給する前に消毒され、新しい敷き藁の層が準備されるため、セッタートレイが感染する危険性も生じない。セッタートレイと鶏舎内の材料との物理的な接触も簡単に回避できる。さらに、セッタートレイ自体は汚れていないため、セッタートレイの消毒は非常に簡単である。
【0014】
さらに、特許文献5は、特許文献2に示されているものとは反対に、鶏舎での卵の孵化率は、抱卵後の卵が鶏舎の床の上に置かれた場合の孵化場での同じ卵の孵化率ほど低くならないことを記載している。
【0015】
特許文献5の移送機には、セッタートレイが配置されるコンベアベルトと、一連の卵ピックアップ手段、特に一連の吸引カップを備えた旋回ロボットアームが装備されている。ロボットアームは、卵ピックアップ手段をコンベアベルト上のセッタートレイの近くまで下げるように構成されており、その後、卵ピックアップ手段が卵を掴むことができる。次に、ロボットアームが卵を持ち上げて、敷き藁の層の上まで枢動させ、その後、ロボットアームが卵を敷き藁の層近くまで下げる。次に、卵ピックアップ手段のスイッチがオフにされ、卵は鶏舎の敷き藁の層の上に落ち着く。
【0016】
既知の機械の欠点は、十分な能力を有するためは、すなわち、鶏舎に1時間あたり十分な数の卵を配置することができるためには、ロボットアームの動き、特にロボットアームの旋回運動が比較的高速でなければならない点である。しかしながら、このように比較的高速である場合、卵を損傷するリスクも高くなる。結局のところ、前述のように、孵化時間に向かって卵殻はいっそう脆くなるため、卵は、特に卵殻の極めて細い亀裂の形成を防ぐためにそっと扱う必要がある。さらに、ロボットアームの枢動運動中の損傷のリスクは、その瞬間の卵が吸引カップにぶら下がっており、したがって互いに衝突する可能性があるため、さらに大きくなる。これらは全て、既知の移送機では、最大能力が、ロボットアームの枢動運動の最大の安全速度によって制限されることを確実にする。
【0017】
さらに、ロボットアームの長さにより、ロボットアームの枢動中に機械の揺動運動が発生する可能性がある。機械のこのような揺動運動は、結果として損傷させる可能性があるため、卵にとって有害である。この作用は、ロボットアームの遠位部の重量が大きくなるほど大きくなり、空気圧タイヤを備えた車輪を機械に取り付けた場合、さらに増強される。
【0018】
既知の機械のさらなる欠点は、セッタートレイが、少なくとも一時的にロボットアームと並んだ位置になるため、ロボットアームが比較的大きな力、特に力のモーメントを処理しなければならないことである。したがって、ロボットアームは、セッタートレイとロボットアームの支持点との間の距離によるレバー効果を考慮して、充填されたセッタートレイの重量を支えるのに十分に強力でなければならない。そのようなロボットアームは、ロボットアーム、すなわち機械の重量、および機械を製造するための価格の両方を増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】オランダ特許第1012453号明細書
【文献】欧州特許第2873319号明細書
【文献】欧州特許第1414291号明細書
【文献】国際公開第2016/053088号
【文献】ベルギー特許第1023719号明細書
【発明の概要】
【0020】
したがって、本発明の目的は、卵のさらなる損失のリスクを高めることなく最大能力を高める、セッタートレイ内で抱卵された卵を鶏舎内でその床の上に置くための改良された移送機を提供することである。
【0021】
この目的のために、本発明による移送機は、移送機構はフレーム上で上方位置と下方位置との間で所定の経路内で上下に移動可能に取り付けられ、支持機構は、運搬機構が移送機構の経路の外側にある外側位置と、運搬機構が移送機構の経路内に位置する内側位置との間でフレーム上に移動可能に取り付けられており、移送機は、移送機構を上下に移動させるように構成された第1のアクチュエータと、運搬機構を前後に移動させるように構成された第2のアクチュエータと、卵ピックアップ手段を作動させるように構成された第3のアクチュエータと、以下のステップ、すなわちa)運搬機構をその外側位置からその内側位置に移動させるために第2のアクチュエータを制御するステップと、b)移送機構を運搬機構上のセッタートレイに設置された抱卵後の卵まで下げるように移動させるために第1のアクチュエータを制御するステップと、c)卵ピックアップ手段によって抱卵後の卵を掴むために第3のアクチュエータを制御するステップと、d)運搬機構をその内側位置からその外側位置に移動させるために第2のアクチュエータを制御するステップと、e)移送機構を経路に沿って床に向かって下方に移動させるために第1のアクチュエータを制御するステップと、f)抱卵後の卵を卵ピックアップ手段から解放して床に配置するために第3のアクチュエータを制御するステップと、g)移送機構をその上方位置まで移動させるために前記第1のアクチュエータを制御するステップとを実行するように構成された制御機構とをさらに備えることを特徴とする。
【0022】
移送機構の経路内に運搬機構を配置し、またそこから出すことによって、卵が、卵ピックアップ手段によって把持されたときに上下運動しか受けなくて済む移送機構を実現することができる。このような垂直方向の移動は、水平方向の移動に比べて害が少ないため、また特に卵が横方向で互いに接触するリスクがないため卵を損傷するリスクを低下させる。加えて、運搬機構を前後に移動させる間、卵はまだセッタートレイの中にある。セッタートレイによってさらなる保護が提供されるため、この前後の移動は、既知の移送機の枢動運動よりも高速で行うことができる。したがって、運搬機構の前後の移動と移送機構の上下の移動を組み合わせた移動は、既知のロボットアームの移動よりも高速であり、卵の追加の損失のリスクを高めることなく、より高い最大能力をもたらす。
【0023】
本発明の一実施形態では、移送機構は、互いに向かって、および互いから離れるように移動させることができる少なくとも2つの運搬要素と、該少なくとも2つの運搬要素を互いに向かって、および互いから離れるように移動させるように構成された第4のアクチュエータとを備え、いくつかの一連の卵ピックアップ手段が運搬要素の各々に適用されており、制御機構は、ステップd)の後、かつステップf)の前に、運搬要素を互いから離れるように移動させるために第4のアクチュエータを制御し、またステップf)の後、運搬要素を互いに向かって移動させるために第4のアクチュエータを制御するようにさらに構成されている。
【0024】
この実施形態では、卵の間の距離を変えることが可能である。これは、卵の間の距離がその温度に対して重要な影響を与えると判断されているために有利である。例えば、卵のストリップの外側の卵の列は、ストリップの中央にある卵よりも温度が低くなる。卵を互いに少し離れた距離に配置することによって、卵の温度が孵化時間に向かって高くなりすぎるのを防ぐことができる。
【0025】
好ましくは、第4のアクチュエータは、空気圧ピストン機構を備え、少なくとも1つの調整可能なリミッターが、運搬要素間の最大距離を制御し制限するために前記運搬要素の間に設けられる。調整可能なリミッターにより、卵の間の距離を調整することができるため、卵のサイズも考慮することができる。したがって、例えば、より大きな卵の場合、卵の間により大きな距離を設けることができる。
【0026】
本発明の一実施形態では、移送機構の所定の経路は、一連の卵ピックアップ手段の各卵ピックアップ手段の所定の経路を画定し、運搬機構は、抱卵後の卵の各々が卵ピックアップ手段のうちの1つの所定の経路上にあるように、セッタートレイを位置決めするように構成された位置決め手段を備え、運搬機構は、位置決め手段を駆動するように構成された第5のアクチュエータを備え、また制御機構は、ステップb)の前に、抱卵後の卵の各々が卵ピックアップ手段のうちの1つの所定の経路上にあるように、運搬機構の経路内にセッタートレイを位置決めするために第5のアクチュエータを制御するようにさらに構成されている。
【0027】
この実施形態において、セッタートレイは、卵ピックアップ手段の各経路が卵の位置と交差するように、位置決め手段によって自動的に正確に位置決めされる。この自動化により、卵を並べる間の追加の時間の増加が生まれる。
【0028】
好ましくは、位置決め手段は、セッタートレイを実質的に水平方向に移動させるように構成された輸送機構を備える。
【0029】
好ましくは、運搬機構は、実質的に水平方向にフレーム上で前後に移動可能に取り付けられる。
【0030】
水平方向は、輸送機構と運搬機構の両方の移動距離、したがって移動時間を制限する。
加えて、位置決め手段の移動方向が運搬機構の移動の前後方向に実質的に垂直であることが特に有利である。これにより、運搬機構を移送機構の前または後ろに配置させることができ、この場合運搬機構は横方向に装填することができる。
【0031】
本発明の一実施形態では、セッタートレイは実質的に長方形の形状を有し、運搬機構は、それぞれの短辺がほぼ互いに接するように配置される少なくとも2つのセッタートレイを搬送するために設けられる。
【0032】
既知の移送機では、ベルギー特許第1023719号明細書に記載されているように、セッタートレイは、セッタートレイをそれぞれの短辺に沿って互いに接するように配置することに伴う大きな力、とりわけ特に力のモーメントを回避するために、それぞれの長辺が互いに接するように配置される。ただし、セッタートレイは短辺が互いに接するように配置するのが好ましく、これは、このことが移送機の総移動距離を制限するためである。
【0033】
本発明の一実施形態では、各卵ピックアップ手段は、ステップb)の間、抱卵後の卵の1つと接触するように構成された吸引カップを備え、第3のアクチュエータ、好ましくは真空ポンプは、吸引によって抱卵後の卵を掴むために吸引カップから外に空気を吸い出すように構成されている。
【0034】
吸引カップは、卵を損傷するリスクが最も少ないため、機械式グリッパよりも好まれる。
【0035】
好ましくは、吸引カップは弾力性があり、好ましくはふいご形状であるため、ステップf)の間、弾力性の吸引カップによって生成される力によって、抱卵後の卵の各々は、鶏舎の床の上の被覆材の層、好ましくは断熱性の被覆材、より好ましくは敷き藁を含む被覆材の層の中に特定の深さまで入り込む。
【0036】
好ましくは、第3のアクチュエータは、ステップf)の間、各吸引カップに空気を送り込むようにさらに構成されることで、抱卵後の卵の各々は、鶏舎の床の上の被覆材、好ましくは断熱性の被覆材、より好ましくは敷き藁を含む被覆材の層の中に特定の深さまで入り込む。
【0037】
弾力性の作用および/または空気のポンピングのために、卵は被覆材の層の中に特定の深さまで押し込まれる。これにより、卵の断熱を制御することが可能になる。卵が被覆材に深く入れられるほど、周囲の空気から断熱されることになる
【0038】
本発明の一実施形態では、1つまたは複数のアクチュエータ、好ましくはアクチュエータの各々は、空気圧駆動される。これにより、万一漏れが発生した場合、鶏舎を汚染する可能性のある油圧作動油の使用を回避する。
【0039】
本発明の一実施形態では、一連の卵ピックアップ手段からの卵ピックアップ手段の数は、1つまたはいくつかのセッタートレイの中の、とりわけ1つまたは2つのセッタートレイの中の卵の数に対応しており、移送機構はセッタートレイの各々から抱卵後の卵の1つ1つを同時に持ち上げるように構成されている。
【0040】
卵を同時に持ち上げると、卵を並べる間の追加の時間が生じることになる。
【0041】
本発明の一実施形態では、一連の卵ピックアップ手段は、少なくとも30個、好ましくは少なくとも50個、より好ましくは少なくとも100個、特に300個の卵ピックアップ手段を含む。
【0042】
移送機に多数の卵ピックアップ手段を設けることにより、移送の容量を増やすことができ、これにより必要な数の卵を短時間でブロイラー鶏舎に入れることができる。
【0043】
本発明の一実施形態では、移送機には、フレームを鶏舎中で移動させるように構成されたモータが設けられている。その結果、移送機の動作は、例えば、それが独立して移動することを可能にすることによってさらに自動化することができ、これにより、卵を並べる間の時間をさらに節約でき、また人が移送機を動かす必要もなくなる。
【0044】
本発明の一実施形態では、制御機構は、ステップc)の後、かつステップd)の前に、卵ピックアップ手段によって把持された抱卵後の卵をセッタートレイから出して持ち上げるために移送機構を上方に移動させるために、第1のアクチュエータを制御するようにさらに構成されている。
【0045】
この実施形態では、卵は掴まれた後に持ち上げられる。結果として、運搬機構が、移送機構の真下から離れるように摺動する間に、運搬機構の上にある空のセッタートレイが把持された卵に触れている間に卵を損傷させる危険性は全くない。
【0046】
本発明のさらなる利点および詳細は、本発明による移送機の好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。ただし、この説明は例としてのみ提供されており、特許請求の範囲で定義されている保護範囲を制限することを意図したものではない。
【0047】
説明で与えられる参照符号は、添付の図面に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】抱卵後の卵を、セッタートレイから鶏舎内の敷き藁の適用されたストリップに移すための、本発明による移送機の斜視図を概略的に示す図である。
図2a図1の移送機の移送機構のハウジングの上面図である。
図2b図1の移送機の移送機構のハウジングの上面図である。
図3a図1の移送機の移送機構の卵ピックアップ手段による1つの卵の把持ステップの斜視図である。
図3b図1の移送機の移送機構の卵ピックアップ手段による1つの卵の把持ステップの斜視図である。
図3c図1の移送機の移送機構の卵ピックアップ手段による1つの卵を敷き藁上に位置決めするステップの斜視図である。
図3d図1の移送機の移送機構の卵ピックアップ手段による1つの卵を敷き藁上に位置決めするステップの斜視図である。
図4図1の移送機によって並べられた卵をその上に有する敷き藁の層の一部の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
一般に、本発明は、セッタートレイ2の中で抱卵されていた卵をブロイラー鶏舎の床に移すための移送機1に関する。鶏の卵の場合、これは卵が約18日間抱卵された後に行われる。最初の卵は19日経たないと孵化しないため、鶏舎内での輸送中または移送中に卵が既に孵化している危険性はない。本発明による移送機1は、他の卵、例えば七面鳥、キジなどの卵にも適用することができる。
【0050】
実際には、鶏卵を抱卵するための様々な種類のセッタートレイ2が存在する。この一例は、Petersime社の標準セッタートレイである「Tray B00568」である。このセッタートレイは15個の卵の10列、つまり合計150個の卵に対して設けられる。
【0051】
卵をブロイラー鶏舎に輸送するために、セッタートレイ2は移動式カートに入れられ、このカートはその後トラックで輸送される。セッタートレイ2を使用して卵を輸送する利点は、常に一定量の卵に損傷を与える移送ステップが不要であることである。
【0052】
ブロイラー鶏舎では、断熱性の被覆材3の層(図3C図3Dおよび図4に例示される)が好ましくは設けられ、その上にセッタートレイ2からの抱卵後の卵が移送機1によって位置決めされる。断熱性の被覆材3は、特に1つまたは複数のストリップでブロイラー鶏舎の床に適用される。断熱性の被覆材3は、例えばプラスチック気泡でできたマットなどのマットによって形成することができるが、好ましくは、例えば亜麻わら、おがくず、木の削りくずなどの敷き藁がこの目的のために使用される。
【0053】
卵が被覆材上の1つまたは複数のストリップに位置決めされる場合、このような側面に沿ってより多くの被覆材を提供することにより、これらのストリップの側面に沿って卵に追加の断熱を与えることが好ましい。敷き藁の場合、高さを高くするために、側面に沿って一緒にしてなでつけることができる。これは、敷き藁を卵の外側の列までなでつけることができるように、卵が移された後に行われる場合もあり得る。
【0054】
卵の下に配置される敷き藁は、鶏舎の床の残りの部分を覆う敷き藁と同じにすることもできるが、そうする必要はない。好ましくは、鶏舎の床全体を最初に敷き藁の薄い層で覆い、その後、卵が位置決めされるであろう場所の上に、敷き藁の(同じまたは異なる)追加の層または被覆材が加えられる。
【0055】
卵を十分に暖かく保つために、鶏舎の卵の下の床に適用される被覆材3の層は、好ましくは少なくとも2cm、より好ましくは少なくとも3cm、最も好ましくは4cmの平均の厚さを有するべきである。卵をこの被覆材3に移した後、例えば、紙のシートまたはプラスチックフィルムなどのシートで卵を覆うことによって追加の断熱が提供されてもよい。また、例えば、余分な敷き藁を卵の上に振りかけることも可能である。しかしながら、シートの使用には、卵が孵化しようとしているときに再度取り去ることで孵化時間に向かって卵の温度が上がり過ぎることを回避することができるという利点がある。
【0056】
卵の温度を制御するには、いくつかの卵を監視することが望ましい。鶏舎の温度は、卵の温度に合わせて調整することができる。卵殻温度の測定は、例えば赤外線温度計を使用して手動で行うことができるが、OvoScan(商標)システムなど、卵殻の温度を監視する自動システムもある。これは現在、孵化場の中の卵を孵す鶏の温度を監視および制御するために使用されており、したがって、ブロイラー鶏舎の環境制御システムに適合させるだけでよい。
【0057】
図1は、卵を移送するために使用される移送機1の実施形態を概略的に示している。この移送機1は、車輪5が取り付けられたフレーム4を備えた自動運転機である。移送機1は、卵の移送中にブロイラー鶏舎内を前進するために提供される。この目的のために、移送機1には、車輪軸の少なくとも1つを駆動するために、モータ(図示せず)、好ましくは電気モータが設けられている。移送機1には、進行方向を調節することができるステアリング装置6も設けられている。
【0058】
図示されていない実施形態では、移送機1は、鶏舎内で卵が上に置かれる被覆材3の1つまたは複数のストリップを配置するためにも使用される。これにより、鶏舎に事前に被覆材3を用意する必要がなくなることが保証される。この目的のために、被覆材3を適用するための装置(図示せず)が移送装置1に接続されている。
【0059】
被覆材3が発泡体のロールである場合、この装置は単にホルダーであり、これを利用してこのようなロールが鶏舎の床に広げられる。被覆材3が敷き藁を含む場合、装置は敷き藁を鶏舎の床に所望の厚さで散布するスプレッダーである。これは、例えば、スプレッダーのホイールによって駆動されるロータによって行われる。好ましくは、スプレッダーは、鶏舎の床に散布される敷き藁の量を制御することができる制御装置を有する。例えば、この制御装置は、車輪の回転数とロータの回転数との関係を調節することができる、スプレッダーのホイールとロータとの間に制御可能な軸継ぎ手を含むことができる。
【0060】
移送機1の上部には、レール23内を走行するいくつかの車輪8の助けを借りて、フレーム4に摺動可能に取り付けられた運搬機構7が設けられている。このようにして、運搬機構7全体をフレーム4上で前後に移動させることができる。運搬機構7のために移送機1にはアクチュエータ9も設けられており、これにより運搬機構7全体の位置を変えることができる。好ましくは、運搬機構7の縁部を決定するためのセンサ(図示せず)が設けられる。このセンサ情報はその後、運搬機構7の縁部が事前に設定された位置に来るまでアクチュエータ9に対して使用され、該位置は、以下に説明するように、卵ピックアップ手段の位置に基づいて決定される。
【0061】
運搬機構7には、輸送機構が設けられており、その上に、機械1のオペレータは1つまたは複数のセッタートレイ2を配置する必要がある。輸送機構は、アクチュエータ11、好ましくは電気モータによって駆動される。この搬送機構により、セッタートレイ2は機械1上の正しい位置に位置決めされる。特には、セッタートレイ2の縁部の位置を検出するセンサ(図示せず)が設けられる。次いで、このセンサ情報を使用して、セッタートレイ2の縁部が事前に設定された位置に来るまでアクチュエータ11を駆動し、該位置は、以下に説明するように卵ピックアップ手段の位置に基づいて決定される。
【0062】
図1に示すように、輸送機構は、セッタートレイ2の両側が支持される2つの対向するベルト12によって形成される。ベルト12は、アクチュエータ11によって駆動される車輪軸13の周りを回転する。好ましくは、アクチュエータ11は2つの異なる方向に作動させることができ、それにより空のセッタートレイ2を機械1のオペレータに押し戻すことができる。
【0063】
2つの対向するベルト12が、コンベアベルトまたはローラシステムなどの他の輸送機構に置き換えることもできることは明らかである。
【0064】
フレーム4には、フレーム4上で上下に移動可能に取り付けられた移送機構14も設けられている。具体的には、図1に示すように、直立壁15にその上に2つのレール16が設けられており、その中に各ケースにおいて1つの支持要素17が摺動可能に取り付けられている。支持要素17の端部の近くに、ハウジング18が、特に横ばり21を介して取り付けられており、その上に卵ピックアップ手段19がある。また、ハウジング18を上下に、またこれにより卵ピックアップ手段19を上下に動かすために、壁15にはアクチュエータ20が設けられている。これらの卵ピックアップ手段19により、卵はセッタートレイ1から持ち上げられ、次いでハウジング18全体を上下に動かすことによって被覆材3の上に位置決めされる。
【0065】
卵を把持するために、真空ポンプ25の形態のアクチュエータが設けられ、図3a~図3dにより詳細に後述するように、卵ピックアップ手段19が卵に接触するように位置決めされたとき、そこから空気を吸引する。機械的手段により卵を掴むために卵ピックアップ手段19が設けられる場合、真空ポンプ25は、機械的手段を駆動するための別の種類のアクチュエータ、例えば電動機に置き換えることができる。
【0066】
代替の一実施形態では、運搬機構7は、移送機構14のすぐ隣に横向きに配置される場合もある。しかしながら、図1に示すように、運搬機構7を移送機構14の背後で移動方向に配置することが好ましい。これは、すなわち、横向きに取り付けられた運搬機構7と比較して、より安定した形態を構成する。運搬機構7を移送機構14の前方で進行方向に配置することも可能である。
【0067】
図2aおよび図2bは、卵ピックアップ手段19が設けられているハウジング18の詳細を示している。具体的には、ハウジング18は、5つの別個のボックス18a、18b、18c、18d、18eからなり、これらはボックス18a、18b、18c、18d、18eごとに、2つの連結ロッド31と、連結ロッド31ごとに1つの連結片32とによって相互に接続される。図1に示すように、これらのボックス18a、18b、18c、18d、18eのそれぞれには、卵ピックアップ手段19を備えた2つの列が設けられている。ボックス18cは、直立壁15上のレール16内の支持要素17に固定式に取り付けられている。連結ロッド31および連結片32により、ボックス18a、18b、18d、18eは、ボックス18cと同じ垂直移動を受ける。ボックス18a、18b、18c、18d、18eを一緒に結合するために、異なる数、例えば1つのみの連結ロッド31を使用できることは明らかである。
【0068】
真空ポンプ25がメインホースを介してボックス18dに接続され、ボックス18dから2本の分配チューブ29が互いにボックス18a、18b、18c、18eへと進む。言い換えれば、各ボックス18a、18b、18c、18d、18eは、ボックス18a、18b、18c、18d、18eの1つにのみ直接作用する真空ポンプと共に真空リザーバ(真空容器)として機能する。必要に応じて、各ボックス18a、18b、18c、18eに1本の分配ホース29のみを設けることも可能であるが、これにより、卵を卵ピックアップ手段19で把持することができる速度は低下する。同様に、卵を掴むために必要な負圧により素早く到達するために、各ボックス18a、18b、18c、18eに3個以上の分配ホース29を設けることもできる。
【0069】
図2aおよび図2bに示されるように、ボックス18a、18b、18c、18d、18eは、それらの間に2つの異なる位置を有する。図2aでは、ボックス18a、18b、18c、18d、18eは閉位置にあり、ボックス18a、18b、18c、18d、18e間の距離は、卵ピックアップ手段19間の距離がセッタートレイ2の卵の間の距離に相当するように選択され、すなわち、セッタートレイ2のサイズは、卵ピックアップ手段19およびボックス18a、18b、18c、18d、18eの位置調整を決定する。
【0070】
図2bでは、ボックス18a、18b、18c、18d、18eは離れるように押され、それにより卵ピックアップ手段19の各対の列が互いに一定の距離だけ隔てられる。言い換えれば、卵が卵ピックアップ手段19によって把持される場合、それらを対にして互いから離して移動させることが可能である。このようにして、卵の温度上昇を孵化時間に向けてより最適に制御できるように、卵を被覆材3上で互いからより長い距離のところに配置することがとりわけ可能である。
【0071】
ボックス18a、18b、18c、18d、18eを互いから離すように移動させるために、図1に示すように直立壁15に取り付けられたアクチュエータ26によって駆動されるピストン機構30が設けられている。このピストン機構30は、ボックス18aとボックス18eの両方に取り付けられており、それらを互いから離れるように、または互いに向かうように摺動させる。連結ロッド31の端部には、ボックス18a、18e間の最大距離を決定する止め具が存在する。好ましくは、この止め具は調節可能であり、これは、止め具を連結ロッド31の複数の穴に配置できるピンとして実施することにより容易に実現することができる。チェーン33が、各2つの隣接するボックス18a、18b、18c、18d、18eの間に設けられる。これらのチェーン33は、ボックス18a、18eが互いに対して移動するときに、ボックス18b、18c、18dが離れるように摺動することを保証する。加えて、これらのチェーン33は、ハウジング18の最大に伸長した位置も決定する。言い換えれば、これらのチェーン33をより長いまたはより短いチェーンと交換することにより、ボックス18a、18b、18c、18d、18e間の相互の最大距離も制御することができる。
【0072】
ハウジング18は、互いに対して移動可能な異なる部分で構成すべきではないが、鶏舎内に卵を置くために一体型のハウジング18を使用することもでき、一体型のハウジング18はこのとき、卵ピックアップ手段19のための単一の真空リザーバを形成することが理解されるであろう。
【0073】
図1に示すように、移送機1には、フレーム4に取り付けられ、異なるアクチュエータ9、11、20、25、26に電力を供給するために設けられるポータブル発電機27が備わっている。そのような発電機27は、当然のことながら有限であるバッテリー駆動電源に関連する欠点を克服する。そのような場合鶏舎全体にケーブルを設ける必要がある、外部の電力ネットワークへの接続を設ける必要もない。
【0074】
有利な実施形態では、発電機27はフレーム4から取り外し可能である。このようにして、発電機27を個別に清掃することができ、メンテナンスが容易になり、よって汚染のリスクが軽減される。
【0075】
さらに、移送機1には、アクチュエータ9、11、20、25、26などの様々な構成要素の動作を制御するための制御機構(図示せず)も設けられている。アクチュエータ9、11、20、25、26の1つまたは複数を1つまたは複数の関節アクチュエータに組み合わせることもできることは明らかである。
【0076】
図示の実施形態では、移送機1のオペレータは、卵で満たされた1つのセッタートレイ2を運搬機構7の上に配置することにより開始する。輸送機構、すなわちアクチュエータ11を備えたベルト12が配置されたセッタートレイ2を移動させることで、オペレータが運搬機構7上に既に配置されたセッタートレイ2の隣に第2のセッタートレイ2を配置することができる。2つのセッタートレイ2が両方とも配置されると、輸送機構はセッタートレイ2を所定の横方向の位置に移動させ、卵と卵ピックアップ手段19は互いに対して同じ横線上にある。その後、運搬機構7全体が前方に移動して、移送機構14の下方に移動する、特に、卵と卵ピックアップ手段19が互いに同じ前方線上にある所定の前方位置に移動する。次に、図3a~図3dにより詳細に説明するように、卵ピックアップ手段19を有するハウジング18は、卵ピックアップ手段19がセッタートレイ2内の卵に接触するまで下げられ、そこで卵が把持される。次に、卵ピックアップ手段19を備えたハウジング18を上方に移動させることで、卵がセッタートレイ2から持ち上げられるが、好ましくは、卵のこの持ち上げ作業は、それらを把持することによって行われることで、ハウジング18がその全体を持ち上げる必要はない。運搬機構7全体をここで後方に移動させることができることで、卵が床の近く、特に鶏舎の床の上の被覆材3の近くに位置するまで、卵ピックアップ手段19および卵と共にハウジング18を下方に移動させるための経路が自由に使えるようになる。次に、図3a~図3dに従って、以下で詳細に説明するように卵が解放される。卵を被覆材3上に配置するとき、できるだけ慎重に卵を被覆材3上に配置することができるように、移送機1を停止させることが好ましい。その後、ハウジング18は再び上に移動される。好ましくは、空のセッタートレイ2も、運搬機構7から取り外され、これは手動で、または輸送システムによって行うことができる。したがって、これら全ての間に、セッタートレイ2は鶏舎またはその中に置かれた敷き藁と接触しないため、セッタートレイが汚染されるリスクはない。
【0077】
図3a~図3dは、卵ピックアップ手段19およびその動作、すなわち、セッタートレイ2からの卵の把持および被覆材3内での卵の位置決めに関する詳細を示している。具体的には、これらは、図3aに示すように、1個の卵の上部に嵌まる吸引カップ22として実行される。実際には、そのような卵ピックアップ手段19は、抱卵後の卵をセッタートレイ2から孵化用トレイに移送するために、孵化場で使用される定置移送機で既に使用されている。この一例は、150個の吸引カップを備えた「Petersime Transferring Machine」であり、これにより、1つのセッタートレイから150個の卵を一度に孵化用トレイに移すことが可能になる。
【0078】
吸引カップ22がそれぞれの卵23に接触すると、真空ポンプ25が作動し、吸引カップ22内の空間から空気を吸引する。その結果、図3bの黒い矢印で示すように、卵が吸引される。この図では、卵を吸引することにより、吸引カップ22が圧縮されることも見ることができ、このことは、卵がセッタートレイ2からある程度持ち上げられることを保証する。図示されていない実施形態では、卵は吸引カップの吸引効果によってセッタートレイ2から完全に持ち上げることができ、これが時間の節約になることは当業者には明らかであろう。
【0079】
上述のようにハウジング18全体を下げることにより、卵は図3cに示すように被覆材3のすぐ上まで移動し、その下降は黒い矢印で示されている。真空ポンプ23のスイッチを切ることにより、空気が再び吸引カップ22に取り込まれ、その結果、吸引カップは膨張して元の形状に戻る。その結果、図3dに示すように、卵は一部が被覆材3の中に押し込まれる。これは卵を断熱するのに有利である。これは、事前にそのような空洞を取り入れる必要がなく自動的に達成される。
【0080】
有利な実施形態では、真空ポンプ23が空気をハウジング18に向かって、したがって吸引カップ22に向かって吹き出すことも可能である。つまり、真空ポンプは可逆式であり、空気を吹き出すことと、空気を吸引することができる。このようにして、被覆材3内での卵の位置決めの間、真空ポンプが空気を吹き出すことが可能である。第一に、これにより、吸引カップ22が卵をより迅速に放すことが保証され、移送機1の全体的な動作が加速される。さらに、この空気流は卵3を被覆材の中に押し込むのにも役立つ。必要に応じて、空気流を使用するだけで卵を被覆材3の中に押し込むこともできる。
【0081】
代替として、卵を被覆材3の中に押し込まずに、被覆材3の上に配置することも可能である。これは、被覆材3が、鶏舎の床に広げられるとともに、卵のための空洞を事前に設けることができる発泡体のロールを含む場合に特に有利であり得る。この方法では、卵は適切に断熱され、被覆材3の中に押し込む必要はない。
【0082】
吸引カップ22は、欧州特許第3044097号明細書に記載されているように、機械式グリッパに置き換えてもよいことが理解されよう。ここで、必要に応じて、機械式グリッパはまた、卵をまだ把持している間にそれらを被覆材3の中に押し込み、その後、それらを解放するだけで卵を被覆材3の中に配置することもできる。ただし、吸引カップは、卵を損傷するリスクが最も少ないため、機械式グリッパよりも好ましい。
【0083】
図4は、卵23をセッタートレイ2から鶏舎の床の被覆材3に移した最終結果を示している。これを見て分かるように、卵23は、列の対の間に幾分より広い空間を有して、列の対ごとに位置決めされており、これは上述のようにハウジング18の異なる部分を互いから離れるように移動させたことの結果である。このようにして、卵の温度上昇を孵化時間に向けてより最適に制御できるように、卵を被覆材3上で互いからより長い距離のところに配置することがとりわけ可能である。
【0084】
上記の移送機1により、鶏舎内の任意の場所に卵を配置することが可能になる。暖房費を削減するために、鶏舎の中で最も高温の場所を事前に測定することが望ましい。これは、暖房システムだけでなく、風向にも左右され得る。次いで、測定された温度に基づいて、すなわち卵を置く場所、つまり卵を抱卵するのに可能な限り温度が最適な場所を決定することができる。通常、これは非常に例外的ではあるが鶏舎での冷却が必要な場合を除き、鶏舎で最も高温の場所になる。
【0085】
特定の実施形態に関して本発明の態様を説明したが、これらの態様は他の形態でも実施できることは当業者には明らかであろう。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図4