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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】スタビライザー装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 21/055 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
B60G21/055
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020507172
(86)(22)【出願日】2018-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2018011075
(87)【国際公開番号】W WO2019180824
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼山 年雄
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-112908(JP,U)
【文献】特開2007-320327(JP,A)
【文献】特開2009-067218(JP,A)
【文献】米国特許第6637757(US,B2)
【文献】特開2015-230029(JP,A)
【文献】特開2007-154977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のロールを抑制するためのスタビライザー装置において、
第1スタビライザー及び第2スタビライザーと、
前記第1スタビライザーと前記第2スタビライザーとを連結し、オン状態とオフ状態とを切替可能なジョイント装置とを備え、
前記オン状態とは、前記第1スタビライザー及び前記第2スタビライザーのうち少なくとも一方のスタビライザーに入力された力を他方のスタビライザーに伝達することが可能な状態であり、前記オフ状態とは、前記伝達が不可能な状態であり、
前記ジョイント装置は、
前記第1スタビライザーが固定されたハウジングと、
前記ハウジング内に収納され、係合位置と非係合位置との間で変位可能な少なくとも1つの係合部と、を有し、
前記係合位置とは、前記係合部が、前記第2スタビライザーに設けられた被係合部と係合する位置であり、前記非係合位置とは、前記係合部が前記被係合部から離間した位置であり、
前記ジョイント装置は、前記少なくとも1つの係合部が前記係合位置にあるときに前記オン状態となり、前記少なくとも1つの係合部が前記非係合位置にあるときに前記オフ状態となり、
前記ジョイント装置が前記オン状態である場合には、前記一方のスタビライザーに入力されたトルクが前記他方のスタビライザーに伝達可能となり、
前記係合部である第1の係合部が設けられていると共に、前記被係合部である第1の被係合部が設けられており、
前記第2スタビライザーにおける前記第1の被係合部から外周方向にずれた位置には、前記被係合部である第2の被係合部が設けられ、かつ、前記ハウジング内には、前記第2の被係合部と係合可能な前記係合部である第2の係合部が設けられており、
さらに、前記第1の係合部は、前記第2の被係合部と係合不可能であり、かつ、前記第2の係合部は、前記第1の被係合部と係合不可能であるスタビライザー装置。
【請求項2】
車体のロールを抑制するためのスタビライザー装置において、
第1スタビライザー及び第2スタビライザーと、
前記第1スタビライザーと前記第2スタビライザーとを連結し、オン状態とオフ状態とを切替可能なジョイント装置とを備え、
前記オン状態とは、前記第1スタビライザー及び前記第2スタビライザーのうち少なくとも一方のスタビライザーに入力された力を他方のスタビライザーに伝達することが可能な状態であり、前記オフ状態とは、前記伝達が不可能な状態であり、
前記ジョイント装置は、
前記第1スタビライザーが固定されたハウジングと、
前記ハウジング内に収納され、係合位置と非係合位置との間で変位可能な少なくとも1つの係合部と、を有し、
前記係合位置とは、前記係合部が、前記第2スタビライザーに設けられた被係合部と係合する位置であり、前記非係合位置とは、前記係合部が前記被係合部から離間した位置であり、
前記ジョイント装置は、前記少なくとも1つの係合部が前記係合位置にあるときに前記オン状態となり、前記少なくとも1つの係合部が前記非係合位置にあるときに前記オフ状態となり、
前記ジョイント装置が前記オン状態である場合には、前記一方のスタビライザーに入力されたトルクが前記他方のスタビライザーに伝達可能となり、
前記係合部である第1の係合部が設けられていると共に、前記被係合部である第1の被係合部が設けられており、
前記第2スタビライザーにおいて、前記第1の被係合部から前記中心軸線の方向にずれ、且つ、前記第1の被係合部から外周方向にずれた位置には、第2の被係合部が設けられ、
さらに、前記ハウジング内には、前記第2の被係合部と係合可能な第2の係合部が設けられているスタビライザー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体のロールを抑制するためのスタビライザー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に係るスタビライザー装置では、第1スタビライザバーと第2スタビライザバーとが、摩擦式のクラッチ機構を介して連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-260625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係るスタビライザー装置では、第1スタビライザバーに入力されたトルクは、クラッチ板と摩擦板との接触面で発生する摩擦力により第2スタビライザバーに伝達される。
【0005】
しかし、上記接触面に生じる摩擦力の大きさは、クラッチ機構を構成する部品の寸法バラツキ等により変化する。したがって、特許文献1に係るスタビライザー装置では、ロール抑制機能が十分に発揮されない恐れがある。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑み、ロール抑制機能を安定して発揮させることが可能なスタビライザー装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係るスタビライザー装置は、車体のロールを抑制するために用いられ、第1スタビライザー及び第2スタビライザーと、第1スタビライザーと第2スタビライザーとを連結し、オン状態とオフ状態とを切替可能なジョイント装置とを備える。なお、オン状態とは、第1スタビライザー及び第2スタビライザーのうち少なくとも一方のスタビライザーに入力された力を他方のスタビライザーに伝達することが可能な状態である。また、オフ状態とは、該伝達が不可能な状態である。
【0008】
また、ジョイント装置は、第1スタビライザーが固定されたハウジングと、ハウジング内に収納され、係合位置と非係合位置との間で変位可能な少なくとも1つの係合部と、を有する。なお、係合位置とは、係合部が、第2スタビライザーに設けられた被係合部と係合する位置であり、非係合位置とは、係合部が被係合部から離間した位置である。そして、ジョイント装置は、少なくとも1つの係合部が係合位置にあるときにオン状態となり、少なくとも1つの係合部が非係合位置にあるときにオフ状態となる。
【0009】
これにより、上記スタビライザー装置は、係合部と被係合部との機械的な係合により、いずれか一方のスタビライザーに入力された力を他方のスタビライザーに伝達する。
したがって、特許文献1に係るスタビライザー装置に比べて、一方のスタビライザーから他方のスタビライザーに伝達可能な力の大きさの変動を抑制できる。延いては、当該スタビライザー装置では、特許文献1に係るスタビライザー装置に比べてロール抑制機能が安定して発揮され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るスタビライザー装置を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るスタビライザー装置の分解図である。
図3】第1実施形態に係るジョイント装置の構造を示す断面図である。
図4】第1実施形態に係るジョイント装置の構造を示す断面図である。
図5】第1実施形態に係るジョイント装置の構造を示す断面図である。
図6】第1実施形態に係るジョイント装置の構造を示す断面図である。
図7】第1実施形態に係る被係合部の説明図である。
図8】第1実施形態に係るカムリングを示す斜視図である。
図9】第1実施形態に係る係合機構を示す斜視図である。
図10】第1実施形態に係る係合機構を示す正面図である。
図11】第1実施形態に係る係合機構を示す斜視図である。
図12】第1実施形態に係るカムリングと係合部との接触箇所を示す説明図である。
図13】第2実施形態に係る被係合部を示す説明図である。
【符号の説明】
【0011】
1… スタビライザー装置 3… 第1スタビライザー 3A… 第1トーション部 5… 第2スタビライザー 5A… 第2トーション部 5C~5E… 被係合部 10… ジョイント装置 13… 係合装置 14… ケーシング 15A… 第1蓋部 15B… 第2蓋体 16… 係合機構 16A~16C… 係合部 17… カム機構
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の「実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0013】
なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載されたものである。本開示は、各図に付された方向に限定されるものではない。
少なくとも符号が付されて説明された構成は、「1つの」等の記載がされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の記載がない場合には、該構成は2以上設けられていてもよい。
【0014】
(第1実施形態)
1.スタビライザー装置の概要
図1は、本実施形態に係るスタビライザー装置1を示している。スタビライザー装置1は車体(図示せず。)のロールを抑制する。スタビライザー1装置は、第1スタビライザー3、第2スタビライザー5及びジョイント装置10等を備えている。
【0015】
第1スタビライザー3は、トーション部3A及びアーム部3Bを有する1本の鋼材にて構成されている。第2スタビライザー5は、トーション部5A及びアーム部5Bを有する1本の鋼材にて構成されている。
【0016】
トーション部3A、5Aは、主に捻り変形する丸棒状の部位である。アーム部3B、5Bの各々の一方の端部は、トーション部3A、5Aの各々に連結される。また、アーム部3B、5Bの各々の他方の端部は、車体に回転可能に連結される。
【0017】
トーション部3Aは、ブッシング7を介して車体に連結される。トーション部5Aは、ブッシング9を介して車体に連結される。ジョイント装置10は、第1スタビライザー3(本実施形態では、トーション部3A)と第2スタビライザー5(本実施形態では、トーション部5A)とを連結する。
【0018】
2.ジョイント装置の構造
2.1 ジョイント装置の概要
ジョイント装置10は、トーション部3A(以下、第1トーション部3A)とトーション部5A(以下、第2トーション部5A)との連結状態を、オン状態及びオフ状態のうちいずれかとするための切替装置である。
【0019】
オン状態では、第1トーション部3A及び第2トーション部5Aのうち少なくとも一方に入力された力を、他方に伝達することが可能である。オフ状態では、当該力の伝達が不可能である。
【0020】
なお、本実施形態では、一方のトーション部に入力されたトルク(回転力)が、他方のトーション部に伝達される。つまり、オン状態では、一方のトーション部に入力されたトルクを、他方のトーション部に伝達可能である。
【0021】
2.2 ジョイント装置の構成
<ジョイント装置の概要>
ジョイント装置10は、図2に示されるように、係合装置13、ケーシング14、第1蓋部15A及び第2蓋体15B等を有する。ケーシング14、第1蓋部15A及び第2蓋体15Bは、係合装置13を収納する円柱状の空間を構成するハウジングである。
【0022】
つまり、ケーシング14、第1蓋部15A及び第2蓋体15Bは、それぞれ、ハウジングの一部を構成する部品である。第1蓋部15Aは、ケーシング14の軸線方向の一方の端部(図2では、右側の端部)の開口を閉塞する蓋体である。
【0023】
第2蓋体15Bは、ケーシング14の軸線方向の他方の端部(図2では、左側の端部)の開口を閉塞する蓋体である。ケーシング14、第1蓋部15A及び第2蓋体15Bは、例えば、ねじ又は溶接等の固定手法により一体化されている。
【0024】
係合装置13は、図3に示されるように、第1蓋部15Aと第2蓋体15Bとにより挟まれた状態でケーシング14内に固定されている。第1蓋部15Aには、第2トーション部5Aが貫通する貫通穴15Cが設けられている。
【0025】
第2蓋体15Bには、第1トーション部3Aが固定されている。具体的には、第1トーション部3Aは、第2蓋体15Bに設けられた凹部15Dに嵌められ、例えば、圧入又は溶接等の固定手法により第2蓋体15Bに固定されている。
【0026】
第2蓋体15Bにおける凹部15Dの反対側には、第2トーション部5Aを嵌めることが可能な凹部15Eが設けられている。貫通穴15C及び凹部15Eの各々には、筒状のメタル軸受部15F、15Gが挿入されている。
【0027】
メタル軸受部15F、15Gは、第2トーション部5Aの外周面に滑り接触可能に接触している。つまり、第2トーション部5Aは、メタル軸受部15F、15Gにより、中心軸線Loを中心に回転可能に支持されている。
【0028】
なお、貫通穴15C及び凹部15D、15Eの各々における中心軸線は、中心軸線Loと一致している。つまり、第1トーション部3Aの中心軸線と第2トーション部5Aの中心軸線とは、中心軸線Loと一致する。
【0029】
<係合装置の構造>
係合装置13は、オン状態とオフ状態とを切り替えるための機構である。該機構は、図2に示されるように、係合機構16、カム機構17、及び軸方向規制部18、19等を有している。
【0030】
本実施形態に係る係合機構16は、1つ以上(一例として、3つ)の係合部16A~16Cを有する。各係合部16A~16Cは、金属製の部材であり、図3及び図4に示されるように、中心軸線Loと直交する方向に、第2トーション部5Aに対して接近又は離間するように変位する。
【0031】
第2トーション部5Aには、図5及び図6に示されるように、各係合部16A~16Cと係合可能な被係合部5C~5Eが設けられている。各被係合部5C~5Eは、各係合部16A~16Cを嵌めることが可能な凹部である。
【0032】
具体的には、被係合部5C(以下、第1被係合部5C)は、係合部16A(以下、第1係合部16A)を嵌めることが可能な凹部である。被係合部5D(以下、第2被係合部5D)は、係合部16B(以下、第2係合部16B)を嵌めることが可能な凹部である。被係合部5E(以下、第3被係合部5E)は、係合部16C(以下、第3係合部16C)を嵌めることが可能な凹部である。
【0033】
そして、各係合部16A~16Cの位置が、被係合部5C~5Eに嵌った係合位置であるときは、オン状態となる(図5参照)。各係合部16A~16Cの位置が各被係合部5C~5Eから離間した非係合位置であるときは、オフ状態となる(図6参照)。
【0034】
各係合部16A~16Cは、図5及び図6に示されるように、第2トーション部5Aの外周側を囲み、且つ、第2トーション部5Aの外周方向に沿って等間隔(一例として、120°間隔)で配置されている。
【0035】
各被係合部5C~5Eは、図7に示されるように、等間隔で設けられ、且つ、各係合部16A~16Cに対応する位置に配置される。一例として、第2被係合部5Dは、第1被係合部5Cに対して外周方向に120°ずれた位置に設けられている。
【0036】
第3被係合部5Eは、第2被係合部5Dに対して外周方向に120°ずれた位置に設けられている。第1被係合部5Cは、第3被係合部5Eに対して外周方向に120°ずれた位置に設けられている。
【0037】
本実施形態では、各被係合部5C~5Eの穴の形状が相違している。そして、第1係合部16Aは、第2被係合部5D及び第3被係合部5Eと係合不可能、つまり嵌ることが不可能な形状を有する。第2係合部16Bは、第1被係合部5C及び第3被係合部5Eと係合不可能な形状を有する。
【0038】
第3係合部16Cは、第2被係合部5D及び第1被係合部5Cと係合不可能な形状を有する。このため、各係合部16A~16Cがオン状態であるときには、第1トーション部3Aに対する第2トーション部5Aの相対位相角は、常に同一となる。
【0039】
なお、トーション部の相対位相角とは、中心軸線Loを中心として、予め決められた基準位置から当該トーション部の外周方向に沿って回転した角度である。つまり、本実施形態では、各係合部16A~16Cが係合位置まで変位してオン状態になると、アーム部3Bの角度及びアーム部5Bの角度は、常に予め決められた角度となる。
【0040】
各係合部16A~16Cの第2トーション部5A側には、図4に示されるように、少なくとも1つの離間ばね16Dが配設されている。離間ばね16Dは、各係合部16A~16Cをオン状態の位置からオフ状態の位置に変位させる弾性力を、各係合部16A~16Cに作用させる。
【0041】
離間ばね16Dは、C字状等のように一部が開放又は切断された環状のばねである。つまり、離間ばね16Dは、曲率半径が大きくなるように復元することで、上記の弾性力を各係合部16A~16Cに作用させる。
【0042】
離間ばね16Dは、図6に示されるように、各係合部16A~16Cにおける被係合部5C~5Eに面した部位に配置されている。なお、各係合部16A~16Cにおける離間ばね16Dが配置される部位には、離間ばね16Dが嵌る凹部が設けられている。
【0043】
<カム機構>
カム機構17は、各係合部16A~16Cを、オフ状態の位置からオン状態の位置に変位させる。つまり、カム機構17は、離間ばね16Dの弾性力に対抗する力を各係合部16A~16Cに作用させて、各係合部16A~16Cをオフ状態の位置からオン状態の位置に変位させる。
【0044】
本実施形態に係るカム機構17は、図2に示されるように、カムリング17A及び少なくとも1つの捻りばね17Bを有する。カムリング17Aは、第2トーション部5Aを中心に回転可能な金属製の部材である。
【0045】
そして、図6に示されるオフ状態である場合、カムリング17Aが左向きに回転すると、各係合部16A~16Cがオフ状態の位置からオン状態の位置に変位する。一方、図5に示されるオン状態である場合、カムリング17Aが右向きに回転すると、各係合部16A~16Cがオン状態の位置からオフ状態の位置に変位する。
【0046】
すなわち、図8に示されるように、環状のカムリング17Aの内周面には、その中心側に向けて突出した複数の突起部17Cが設けられている。複数の突起部17Cは、複数の係合部16A~16Cと同数設けられる。また、各突起部17Cは、複数の係合部16A~16Cに設けられた各カム面16F(図5等参照)に滑り接触する。
【0047】
カムリング17Aの外周には、レバー部17Dが設けられている。レバー部17Dは、カムリング17Aの外周面において、中心軸線Loと平行な方向に延びる。レバー部17Dには、係止部17Eが少なくとも1つ設けられている。
【0048】
係止部17Eは、図9に示されるように、捻りばね17Bの一方の端部が引っ掛けられ、該端部が係止される。本実施形態では、レバー部17Dは、延び方向の中間部にてカムリング17Aと結合され、かつ、延び方向の両方の端部に係止部17Eが設けられている。
【0049】
つまり、本実施形態では、2つの捻りばね17Bが設けられ、かつ、各捻りばね17Bは、カムリング17Aを挟んで軸線方向の一方の端部及び他方の端部に設けられている。2つの捻りばね17Bは、各係合部16A~16Cをオン状態の位置に変位させる向きの弾性力をカムリング17Aに作用させる。
【0050】
レバー部17D又はカムリング17Aには、連結係止部17Fを設けられ得る。本実施形態では、一例として、カムリング17Aに連結係止部17Fが設けられる。連結係止部17Fは、コントロールケーブル(図示せず)の一方の端部が連結される。
【0051】
コントロールケーブルは、ドライバ又は同乗者により操作される。コントロールケーブルが操作されると、各係合部16A~16Cを、オン状態の位置からオフ状態の位置に変位させる向きの回転力が、カムリング17Aに作用する。
【0052】
したがって、コントロールケーブルが操作されると、各係合部16A~16Cがオフ状態となる。そして、コントロールケーブルの操作力が消失すると、2つの捻りばね17Bの弾性力により、各係合部16A~16Cはオン状態に復帰するとともに、当該オン状態が保持される。
【0053】
<軸方向規制部>
軸方向規制部18は、図4に示されるように、中心軸線Lo方向の一方の側(図4では、右側)から各係合部16A~16Cに接触することにより、各係合部16A~16Cの中心軸線Lo方向の位置を規制する。
【0054】
軸方向規制部19は、中心軸線Lo方向の他方の側(図4では、左側)から各係合部16A~16Cに接触することにより、各係合部16A~16Cの中心軸線Lo方向の位置を規制する。
【0055】
なお、軸方向規制部18と軸方向規制部19とは、係合機構16の位置にある対象軸を中心に対称な構成を有する。つまり、軸方向規制部18と軸方向規制部19とは、左右対称構造である。
【0056】
軸方向規制部18は、図2に示されるように、第1ベース板18A、第2ベース板18B、及びガイド板18C等を有する。軸方向規制部19も同様に、第1ベース板19A、第2ベース板19B、及びガイド板19Cを少なくとも有する。
【0057】
第2ベース板18B及びガイド板18C、並びに第2ベース板19B及びガイド板19Cには、ピン20(図11参照)が貫通可能な穴が設けられている。第1ベース板18Aと第2ベース板18Bとは、例えば溶接等の接合手法により一体化されている。同様に、第1ベース板19Aと第2ベース板19Bとは、例えば溶接等の接合手法により一体化されている。
【0058】
これにより、第1ベース板18Bと第1ベース板19Bとの間に、係合機構16、つまり位置決めされた状態の係合部16A~16Cが収納される。なお、本実施形態に係る第1ベース板18A、19A及び第2ベース板18B、19Bは、プレス加工(例えば、ダイカット)により成形される。
【0059】
ガイド板18Cには、図10に示されるように、複数の周方向規制部18Dが設けられている。各周方向規制部18Dは、対応する各係合部16A~16Cと滑り接触可能である。これにより、各係合部16A~16Cが第2トーション部5Aを中心とする円周方向に変位することが規制される。
【0060】
すなわち、互いに対向する2つの周方向規制部18Dは、径方向に延びる溝部18Eの側壁を構成している。各係合部16A~16Cにおける中心軸線Lo方向の一端は、図3に示されるように、ガイド板18Cに滑り接触可能に接触している。
【0061】
ガイド板19Cもガイド板18Cと同一の構成である。このため、各係合部16A~16Cにおける中心軸線Lo方向の他端は、ガイド板19Cに滑り接触可能に接触している。つまり、各係合部16A~16Cは、対応する溝部18Eに滑り接触可能に嵌められている。したがって、各係合部16A~16Cは、第2トーション部5Aに対して径方向のみに変位できる。
【0062】
ガイド板18C及びガイド板19Cの外周には、図5に示されるように、少なくとも1つ(一例として、2つ)の突起部18Gが設けられている。突起部18Gは、ケーシング14の内壁に設けられた凹部14Aに嵌められている。
【0063】
このため、第2トーション部5Aに入力されたトルクは、係合部16A~16Cを介してガイド板18C及びガイド板19Cに伝達された後、ケーシング14及び第2蓋体15Bを介して第1トーション部3Aに伝達される(図3参照)。
【0064】
図11に示されるストッパパイプ18Fは、カムリング17Aの外周面に滑り接触可能な円筒状の部材である。ストッパパイプ18Fは、カムリング17Aの回転を案内するとともに、カムリング17Aに作用する径方向の力を受ける。
【0065】
すなわち、図12に示されるように、第2トーション部5AにトルクTが作用すると、各係合部16A~16Cと各被係合部5C~5Eとの接触部には、力Foが作用する。各係合部16A~16Cは、テーパ状であり、各係合部16A~16Cと各被係合部5C~5Eとの接触部は、第2トーション部5Aの径方向に対して傾いている。
【0066】
このため、力Foにおける径方向成分の力F1は、突起部17Cを介してカムリング17Aの直径を拡大させる向きの力をカムリング17Aに作用させる。そして、ストッパパイプ18Fは、カムリング17Aに作用する当該拡大させる向きの力を受ける。
【0067】
図11に示されるように、カムリング17Aには、径方向に突出したストッパ部17Gが設けられている。ストッパパイプ18Fには、被当接部18Hが設けられている。カムリング17Aがオン状態の位置からオフ状態の位置まで回転したとき、ストッパ部17Gは被当接部18Hに接触する。
【0068】
カムリング17Aは、ストッパ部17Gが被当接部18Hに接触するまで回転すると、これ以上同方向に回転できなくなる。このため、突起部17Cが各係合部16A~16Cから離間する位置までカムリング17Aが回転してしまうことが規制される。
【0069】
2.3 係合機構の作動
コントロールケーブルが操作されていないときには、捻りばね17Bの弾性力により各係合部16A~16Cは被係合部5C~5Eに係合し、ジョイント装置10はオン状態となっている(図3及び図5参照)。
【0070】
コントロールケーブルが引かれるように操作されると、カムリング17Aが回転する。これにより、離間ばね16Dの弾性力により各係合部16A~16Cが被係合部5C~5Eから離間し、ジョイント装置10はオフ状態となる(図4及び図6参照)。
【0071】
オフ状態において、コントロールケーブルの操作が解除されると、捻りばね17Bの弾性力によりカムリング17Aが回転し、各係合部16A~16Cは被係合部5C~5Eに係合し、ジョイント装置10はオン状態に復帰する。
【0072】
3.本実施形態に係るスタビライザー装置の特徴
本実施形態に係るスタビライザー装置1は、各係合部16A~16Cと各被係合部5C~5Eとの機械的な係合により、いずれか一方のスタビライザーに入力されたトルクを他方のスタビライザーに伝達する。
【0073】
したがって、特許文献1に係る摩擦式のスタビライザー装置に比べて、伝達可能なトルクの変動が小さくなる。延いては、本実施形態に係るスタビライザー装置1では、特許文献1に係るスタビライザー装置に比べて、ロール抑制機能が安定して発揮され得る。
【0074】
第1係合部16Aは、第2被係合部5D及び第3被係合部5Eと係合不可能な形状を有する。第2係合部16Bは、第1被係合部5C及び第3被係合部5Eと係合不可能な形状を有する。
【0075】
第3係合部16Cは、第2被係合部5D及び第1被係合部5Cと係合不可能な形状を有する。このため、各係合部16A~16Cがオン状態にあるときには、第1トーション部3Aに対する第2トーション部5Aの相対位相角は、常に同一となる。
【0076】
したがって、第1トーション部3Aと第2トーション部5Aとにおける相対位相角のずれを抑制できる。さらに、本実施形態では、位置検出装置等の相対位相角のずれを検出する装置が不要であるので、スタビライザー装置1の製造原価を抑制し得る。
【0077】
ところで、WO2006/118129号明細書(以下、特許文献2という。)に係るスタビライザー装置は、ねじ機構、それに係合するナット、及びナットを覆うように設置された2つの作動油室を有するロータリーアクチュエータ等を備えている。
【0078】
そして、特許文献2に記載のスタビライザー装置では、2つの作動油室における作動油の出入りを制御することにより、第1スタビライザバーに入力されたトルクの第2スタビライザバーへの伝達が切替えられる。
【0079】
したがって、特許文献2に係るスタビライザー装置では、以下の技術的課題を有する。すなわち、(1)ねじ加工、シリンダ機構、及び油圧シール等の高精度な部品が必要であるので、高コストである。(2)油圧に耐える構造とする必要があるので、サイズ及び重量が増える。(3)オン状態又はオフ状態とするための切替機構として、配管、切替バルブ、制御装置、及びバルブ駆動装置が必要となるので、スペース、コスト、及び重量がさらに増える。
【0080】
(4)メンテナンス時及び故障時に作動油を取り扱う必要がるので、メンテナンス性が良くない。(5)第1スタビライザーと第2スタビライザーとにおける相対位相角のずれを防止するために、例えば位置検出装置が必要となるので、コストが高くなる。
【0081】
これに対して、本実施形態に係るスタビライザー装置1では、上記(1)~(5)のいずれの技術的課題も有しておらず、スペース、コスト、及び重量の点で、特許文献2に係るスタビライザー装置より有利である。
【0082】
(第2実施形態)
上述の実施形態では、各被係合部5C~5Eは、外周方向に沿って並んだ状態で設けられる。これに対して、本実施形態では、図13に示されるように、各被係合部5C~5Eは、中心軸線Lo方向及び外周方向にずれた位置に設けられる。
【0083】
このため、本実施形態においても、第1係合部16Aは、第2被係合部5D及び第3被係合部5Eと係合不可能である。第2係合部16Bは、第1被係合部5C及び第3被係合部5Eと係合不可能である。
【0084】
第3係合部16Cは、第2被係合部5D及び第1被係合部5Cと係合不可能である。したがって、各係合部16A~16Cが係合位置にあるときには、第1トーション部3Aに対する第2トーション部5Aの相対位相角は、常に同一となる。
【0085】
なお、図13に示された各被係合部5C~5Eは同一形状である。しかし、各被係合部5C~5Eは、互いに異なる形状であってもよい。また、図13における第1実施形態と同一の構成要素等は、第1実施形態と同一の符号が付されている。このため、第2実施形態についての第1実施形態と重複する説明は、省略されている。
【0086】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、3つの係合部16A~16Cが設けられていた。しかし、本開示は、これに限定されない。すなわち、本開示は、例えば、1つの係合部及び1つの被係合部が設けられた構成、又は2つ以上の係合部及び2つ以上の被係合部が設けられた構成であってもよい。
【0087】
ジョイント装置12の構成は、上述の実施形態に示された構成に限定されない。すなわち、ジョイント装置12は、オン状態とオフ状態とを切り替えることが可能な構成であれば、どのような構成を有していても良い。
【0088】
上述の実施形態では、オン状態にあるときに第1トーション部3Aに対する第2トーション部5Aの相対位相角を同一とするための位相角維持機構が設けられている。しかし、本開示は、これに限定されない。すなわち、本開示は、例えば、位相角維持機構を有さない構成であってもよい。
【0089】
上述の実施形態では、コントロールケーブルにてカムリング17Aを回転させた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、例えば、ソレノイド等の電気式アクチュエータにてカムリング17Aを回転させてもよい。
【0090】
上述の実施形態に係るジョイント装置10は、トルクを断続可能に伝達する。しかし、本開示は、これに限定されない。すなわち、本開示は、トルク以外の力、例えば、曲げモーメントを断続可能に伝達する装置に適用されても良い。
【0091】
さらに、本開示は、特許請求の範囲に記載された構成の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態を組み合わせてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13