IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エー123 システムズ エルエルシーの特許一覧

特許7116159電気化学的活性粉末のメタライゼーションプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】電気化学的活性粉末のメタライゼーションプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20220802BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220802BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20220802BHJP
   C23C 18/30 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 C
H01M10/0525
C23C18/30
【請求項の数】 45
(21)【出願番号】P 2020512404
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 US2018033429
(87)【国際公開番号】W WO2019045805
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-04-28
(31)【優先権主張番号】62/553,067
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515167067
【氏名又は名称】エー123 システムズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】A123 Systems LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】スキャンラン ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】マックスウェル デリック スペンサー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン デレク シー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】イオッコ ロッコ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ウェイドン
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-522820(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1288743(KR,B1)
【文献】特開2013-008584(JP,A)
【文献】国際公開第2010/098452(WO,A1)
【文献】特開2010-080221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
H01M 4/36
H01M 10/0525
C23C 18/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的活性電極材料と、
前記電気化学的活性電極材料の外面に直接結合され、完全に覆う連続的なポリマー被覆であって、該連続的なポリマー被覆は導電性及びイオン伝導性であり、芳香族ポリイミド、リチウムポリアメート、ジアミン及び二無水物の交互モノマー単位、架橋ポリ(アミック酸)アミン塩、及び芳香族ポリ(アミック酸)のうちの1つ又は複数を含む、連続的なポリマー被覆と、
無電解析出(ELD)反応を触媒するために連続的な前記ポリマー被覆に付着した金属触媒と、
前記金属触媒と連続的な前記ポリマー被覆を完全に覆う連続的な金属被覆であって、該連続的な金属被覆は金属銅を含み、ELD反応によって形成される、連続的な金属被覆と、
を含む、
被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項2】
前記電気化学的活性電極材料は、リチウムイオン電池のアノードのための電気化学的活性材料を含む、
請求項1に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項3】
前記電気化学的活性電極材料は、グラファイト粉末を含む、
請求項1又は2に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項4】
前記電気化学的活性電極材料は、グラファイトメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項5】
前記金属触媒は、パラジウム、プラチナ、ロジウム、金、及び銀の1つ又は複数を含む貴金属を含む、
請求項1~のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項6】
前記ポリマー被覆は、前記芳香族ポリイミドを含む、
請求項1~のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項7】
前記ポリマー被覆は、前記リチウムポリアメートを含む、
請求項1~のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項8】
前記ポリマー被覆は、前記ジアミン及び二無水物の交互モノマー単位を含む、
請求項1~のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項9】
前記ポリマー被覆は、前記架橋ポリ(アミック酸)アミン塩を含む、
請求項1~のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項10】
前記ポリマー被覆が、前記芳香族ポリ(アミック酸)を含む、
請求項1~のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項11】
前記ポリマー被覆は、前記被覆された電気化学的活性電極材料の1~5重量%である、
請求項1~10のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項12】
前記金属被覆は、前記被覆された電気化学的活性電極材料の5~20重量%である、
請求項1~11のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項13】
前記金属触媒は、前記被覆された電気化学的活性電極材料の0.01~1.0重量%である、
請求項1~12のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項14】
前記金属被覆の厚さが75~150nmである、
請求項1~13のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項15】
前記金属触媒は、前記ポリマー被覆の外面で不連続であり、前記ポリマー被覆上の前記金属触媒の面密度は500~10,000粒子/μmの間である、
請求項1~14のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項16】
前記金属触媒は、前記ポリマー被覆の外面上で連続的である、
請求項1~14のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項17】
前記金属被覆は均一な厚さを有する、
請求項1~16のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。
【請求項18】
前記金属被覆は不均一な厚さを有するが、前記電気化学的活性電極材料の外面の間の半径方向の距離が滑らかな外面を含み、
前記金属被覆の外面は、前記電気化学的活性電極材料の外面全体の周りで同じである、
請求項1~17のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極材料。


【請求項19】
電気化学的活性電極粉末粒子と、
前記電気化学的活性電極粉末粒子の外面に直接被覆され、完全に覆うポリマーであって、該ポリマーは導電性及びイオン伝導性であり、芳香族ポリイミド、リチウムポリアメート、ジアミン及び二無水物の交互モノマー単位、架橋ポリ(アミック酸)アミン塩、及び芳香族ポリ(アミック酸)のうちの1つ又は複数を含む、ポリマーと、
無電解析出(ELD)反応を触媒するためにポリマーに結合された金属触媒と、
前記金属触媒と前記ポリマーを完全に覆う連続的な金属被覆であって、該連続的な金属被覆は金属銅を含み、ELD反応によって形成される、連続的な金属被覆と、
を含む、
被覆された電気化学的活性電極粉末。
【請求項20】
前記電気化学的活性電極粉末粒子は、1~50μmの間の直径を有する二次粒子を含む、
請求項19に記載の被覆された電気化学的活性電極粉末。
【請求項21】
前記電気化学的活性電極粉末粒子は、リチウムイオン電池のアノードのための電気化学的活性アノード材料である、
請求項19又は20に記載の被覆された電気化学的活性電極粉末。
【請求項22】
前記電気化学的活性電極粉末粒子はグラファイトを含む、
請求項19~21のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極粉末。
【請求項23】
前記ポリマーはリチウムポリアメートを含む、
請求項19~22のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極粉末。
【請求項24】
前記ポリマーは、前記架橋ポリ(アミック酸)アミン塩を含む、
請求項19~23のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極粉末。
【請求項25】
前記電気化学的活性電極粉末の外面上の前記ポリマーの連続被覆の厚さは50~200nmの間である、
請求項19~24のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極粉末。
【請求項26】
前記ポリマーの連続被覆は均一な厚さを含む、
請求項19~25のいずれか1項に記載の被覆された電気化学的活性電極粉末。
【請求項27】
電極を含む電池セルであって、
前記電極は被覆された電気化学的活性電極材料を含み、
被覆された電気化学的活性電極材料は、粉末粒子の外面上に配置されたポリマー被覆及び金属被覆の両方を有する粉末粒子を含み、
前記ポリマー被覆は、前記金属被覆と前記粉末粒子の外面の間に配置され、前記ポリマー被覆は前記粉末粒子の外面を完全に覆い、前記ポリマー被覆は導電性及びイオン伝導性であり、前記ポリマー被覆は芳香族ポリイミド、リチウムポリアメート、ジアミン及び二無水物の交互モノマー単位、架橋ポリ(アミック酸)アミン塩、及び芳香族ポリ(アミック酸)のうちの1つ又は複数を含み、
前記金属被覆は金属銅を含み、該金属被覆は無電解析出(ELD)によって前記粉末粒子上の前記ポリマー被覆を完全に覆うように形成される、
電池セル。
【請求項28】
前記電池セルは、リチウムイオン電池セルである、
請求項27に記載の電池セル。
【請求項29】
前記電気化学的活性電極材料は、リチウムイオン電池セルのアノード用のグラファイト又は別の電気化学的活性材料を含む、
請求項27又は28に記載の電池セル。
【請求項30】
前記粉末粒子は、前記粉末粒子上の前記金属被覆の無電解析出(ELD)を触媒するために前記ポリマー被覆に付着された金属触媒をさらに含む、
請求項27~29のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項31】
10CのCレートでの前記電池セルの容量が、前記電池セルの最大容量の少なくとも80%である、
請求項27~30のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項32】
粉末粒子の外面を導電性及びイオン伝導性であり、芳香族ポリイミド、リチウムポリアメート、ジアミン及び二無水物の交互モノマー単位、架橋ポリ(アミック酸)アミン塩、及び芳香族ポリ(アミック酸)のうちの1つ又は複数を含むポリマーの連続層で完全に被覆し、
ポリマーへの無電解析出(ELD)反応のための触媒をアニーリングし、
無電解析出により前記触媒と前記ポリマー上に、前記触媒と前記ポリマーを完全に覆う金属の連続層を堆積する、
電気化学的活性電極材料の粉末粒子をメタライゼーションする方法。
【請求項33】
前記電気化学的活性電極材料はグラファイトを含む、
請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記触媒は、パラジウム、プラチナ、ロジウム、金、及び銀のうちの1つ又は複数を含む金属触媒を含む、
請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリマーは、前記芳香族ポリイミド、前記リチウムポリアメート、及び前記架橋ポリ(アミック酸)アミン塩のうちの1つ又は複数を含む、
請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記粉末粒子の外面を前記ポリマーの連続層で被覆することは、以下のうちの1つ又は複数を含む、請求項32~35のいずれか1項に記載の方法。
前記ポリマーを溶媒に溶解してポリマー溶液を形成する、
前記ポリマー溶液を前記電気化学的活性電極材料と混合する、
前記電気化学的活性電極材料を含む前記ポリマー溶液を乾燥させて固体にする、
前記固体を粉砕して前記粉末粒子を形成する、
非溶媒で前記粉末粒子をボールミリングする、
濾過により前記非溶媒から前記粉末粒子を除去する。
【請求項37】
前記触媒を前記ポリマーにアニーリングすることは、前記ポリマーが前記粉末粒子上に被覆された後に行われる、
請求項32~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
アニーリングは、以下の1つ以上を含む、請求項32~37のいずれか1項に記載の方法。
前記粉末粒子を、前記触媒を含む溶液と混合することにより、前記ポリマーの連続層を含む前記粉末粒子上に前記触媒を堆積させる、
前記溶液から濾過することより、粉末を前記溶液から分離する、
粉末を脱イオン水でリンスする、
前記ポリマー及び堆積した前記触媒の連続層を含む前記粉末粒子を250~300℃の温度で加熱する。
【請求項39】
前記触媒を前記ポリマーにアニーリングすることは、
前記触媒を含む前記溶液と前記粉末粒子を混合する前に、前記ポリマーの連続層を含む前記粉末粒子を水酸化アルカリ溶液と混合することをさらに含む、
請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記触媒を含む前記溶液は硝酸銀水溶液を含む、
請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
無電解堆積(ELD)による前記触媒及び前記ポリマー上への前記金属の連続層の堆積はELD反応を行うことを含み、
ELD反応を行うことは、以下の1つ又は複数を含む、
請求項32~40のいずれか1項に記載の方法。
前記粉末粒子を還元溶液、還元剤、及び前記を含む溶液と混合する、
前記粉末粒子を、前記還元溶液、前記還元剤、及び前記を含有する溶液の混合物から濾過することにより分離する、
脱イオン水で前記粉末粒子をリンスする、
前記粉末粒子を乾燥して前記脱イオン水を除去する。
【請求項42】
ELDによる前記触媒及び前記ポリマー上への前記金属の連続層の堆積は、前記粉末粒子が前記ポリマーの連続層で被覆された後、前記触媒が前記ポリマーにアニールされた後に行われる、
請求項32~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
電気化学的活性電極粉末と、
金属銅を含み、無電解析出(ELD)反応によって形成された金属被覆と、
電気化学的活性電極粉末の外面と前記金属被覆との間に配置されたポリマー被覆であって、該ポリマー被覆は前記電気化学的活性電極粉末の外面を完全に覆い、前記ポリマー被覆は導電性及びイオン伝導性であり、芳香族ポリイミド、リチウムポリアメート、ジアミン及び二無水物の交互モノマー単位、架橋ポリ(アミック酸)アミン塩、及び芳香族ポリ(アミック酸)のうちの1つ又は複数を含む、ポリマー被覆と、
を含み、
前記金属被覆は連続的であり、前記ポリマー被覆を完全に覆う、
被覆電気化学的活性電極粉末。
【請求項44】
無電解析出(ELD)反応を触媒するために前記ポリマー被覆に適用された金属触媒をさらに含む、
請求項43に記載の被覆電気化学的活性電極粉末。
【請求項45】
前記金属被覆の厚さは、150nm未満である、
請求項43又は44に記載の被覆電気化学的活性電極粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年8月31日に出願された「電気化学的活性粉末のメタライゼーションプロセス」という名称の米国仮出願第62/553,067号の優先権を主張するものである。上記出願の全内容は、全ての目的のために、ここに引用して援用する。
【0002】
(分野)
本願は、一般に、リチウムイオン電池などの電気化学エネルギー貯蔵装置の電極を形成する電気化学的活性粉末を被覆するシステム及び方法に関する。
【0003】
(背景と概要)
充電式電池は、電気エネルギーと化学ポテンシャルエネルギーとの間の可逆的な変換を介して大量の電気エネルギーを繰り返し貯蔵及び放出することを可能にする一種の電気化学エネルギー貯蔵装置である。エネルギー業界や他の消費者からのより高いエネルギー密度の電池に対する需要の増加により、充電式電池業界は主にリチウムイオン電池の使用にシフトしている。リチウムは最軽量かつ最も電気陽性の金属であるため、高エネルギー密度を必要とする電気化学エネルギー貯蔵装置に組み込む最も魅力的な要素の1つである。
【0004】
典型的なリチウムイオン電池セルは、正極(カソード)、負極(アノード)、2つの電極間でのリチウムイオンの往復運動をサポートするイオン電解質溶液、及びアノードとカソードの電気的な絶縁を保持する多孔性セパレータを含む。リチウムイオン電池は、正極と負極の両方に組み込まれた電気化学的活物質で発生する可逆的な電気化学的還元と酸化反応により、電気エネルギーを繰り返し貯蔵及び放電できる。例えば、放電中、リチウムイオンは電解液を通ってアノードからカソードに移動し、電流を生成する。遷移金属酸化物及びリン酸塩は、正極(カソード)の電気化学的活物質として一般的に使用され、さまざまな種類の炭素は、通常、負極(アノード)の電気化学的活物質として使用される。そのような電気化学的活性電極材料は、通常、電気化学反応のための高い界面領域を可能にし、リチウムイオンの移動を促進するために、バインダー及び導電性添加剤を用いて集電装置に適用される微粉末の形で使用される。
【0005】
リチウムイオン電池を充電及び放電している間、電解質と電気化学的活性電極材料との間の界面で電気化学反応が起こる。特に、リチウムイオンは、活性電極材料と電解質の間を移動する。しかしながら、電解質に直接さらされると、これらの電気化学的活性電極材料は電解質の分解を触媒する可能性があり、その結果、電池セルの電気化学サイクル性能が低下し、クーロン効率(所定の充放電サイクル中の放電容量を充電容量で割ったもの)が低下する。さらに、有機電解液の分解とそれに続くガス生成により、電解液の引火点が下がり、電池の安全性が低下し、火災のリスクが高まる。
【0006】
従って、電気化学的活性電極材料の表面は、例えば被覆を適用することにより、活性材料と電解質との望ましくない寄生副反応を防止又は最小化し、電池のサイクル寿命を改善することによって修正され得る。従って、活性電極材料の表面は、それらのバルク特性(エネルギー貯蔵容量)に大きな影響を与えることなく、それらの表面特性を有利に変更することにより、それらの性能を改善するように修正され得る。元の材料の好ましいバルク特性(特に、エネルギー貯蔵容量)への影響を最小限にするために、そのような表面改質は、表面特性を十分に改質しながら、できるだけ薄くすることが好ましい。このようなタイプの表面改質の1つは、複合材料の表面特性が合金又は金属被覆の表面特性に非常に似ており、バルク特性が元の粉末の特性に非常に似ているように、電気化学的活性電極材料を金属又は合金の薄い連続層で被覆することである(「粉末メタライゼーション」)。
【0007】
電気化学的活性電極材料上の金属被覆は、エネルギーを貯蔵するために必要な電位で電気化学的に活性であっても不活性であってもよい。電気化学的に不活性な金属で活物質を被覆すると、電気伝導率が高くなり、電荷移動抵抗が低くなるため、より速い充放電速度が可能になる。しかしながら、電気化学的に活性ではない金属を堆積させると、電極材料の比容量が大幅に低下する可能性がある。
【0008】
一方、電気化学的活性金属での被覆は、溶媒共インターカレーションに対する耐性、より高い電子伝導性、より低い電荷移動インピーダンス、より良いサイクル寿命、及びより高いインターカレーション容量をもたらし得る。従って、リチウムイオン電池のエネルギー密度は、より高いエネルギー貯蔵容量を有する他の電気化学的活性金属で活物質を被覆することによって増加され得る。例えば、Jae Woo Kimらは、無電解析出(ELD)により銅で被覆されたシリコン粉末は、リチウムイオン電池のアノード材料として使用した場合、純粋なシリコン粉末と比較して、サイクル寿命、電子伝導率、及びクーロン効率が向上することを開示している。Gaoらは、ELDにより銅で被覆されたグラファイト粉末が、リチウムイオン電池のアノード材料として使用された場合に、純粋なグラファイトよりも溶媒共インターカレーションに対して高い耐性を示すことを開示している。
【0009】
電気化学的活性電極材料などの金属上に薄い金属膜(<1μmの厚さ)を堆積させるためのいくつかの異なるアプローチが存在する。例えば、物理蒸着(PVD)は、ほとんどの金属のナノメートル厚の膜を生成できる。ただし、これは「line-of-sight」技術であり、平坦で均一でない表面を被覆することは非常に困難である。別の例として、化学蒸着(CVD)は、PVDと同様の厚さの金属被覆を生成することもでき、「line-of-sight」による制限が少ない。ただし、PVDとCVDのいずれも、スループットの低い高価な高真空装置を必要とするため、メタライズされた粉末の大量生産には経済的に実現可能ではない。
【0010】
基板上に金属薄膜を堆積させる別の方法は、金属イオンの溶液からの電着によるものであり、それにより、外部電源が、金属イオンを基板の表面に還元する電子源を提供する。従来の電気化学的堆積では、作用電極(めっきされる基板)と対電極の間の電気的接触が必要である。それ以外の場合、電流が基板を流れず、金属が堆積しない。微粉末の各粒子と一定の電気的接触を行うと同時に、粉末の表面が遮られていないことを保証することは不可能であるため、従来の電気化学的堆積は、粉末メタライゼーションの商業的に実行可能な方法ではない。
【0011】
最も広く使用されている金属被覆方法は、無電解めっき(「ELD」)である。この方法では、金属の表面で水性還元剤が自己触媒的に酸化され、電気的接触を必要としない電子源を提供する。これらの電子は金属を通って伝導し、続いて溶媒和金属イオンを還元して金属堆積物の表面上で金属形態にして、それを厚く成長させる。ELDめっき槽には、金属イオンの供給源となる金属塩、金属表面で自己触媒的に酸化できる還元剤、及びめっき槽の自然分解を防ぐ錯化剤が含まれている必要がある。適切な還元剤の酸化のための触媒活性を持たない表面上でELDを開始するために、高い触媒活性を有する金属(本明細書では「触媒」と呼ばれる)のシード層を最初に適用する必要がある。
【0012】
触媒は、典型的には、不連続であるが、直径が約10nm未満の金属ナノ粒子の実質的に最密な層である。ELD反応が進行し、金属が触媒粒子上に堆積すると、それらは基板上に半球状の金属アイランドを形成し、隣接するアイランドが合体して連続的な金属膜を形成するまでサイズが大きくなる。連続膜を実現するために必要な最小の厚さは、全ての金属アイランドが1つのコンパクトな層に融合したときの平均厚さ(総体積/総面積)である。最小厚さ(<150nm)を実現するには、触媒粒子の直径を最小化して、面の部位密度(粒子数/面積)を最大化する必要がある。触媒粒子が脱離した電極材料の領域は金属で被覆されないため、触媒粒子が基板(電気化学的活性電極材料)に対して優れた接着性を有することを確実にすることも重要である。
【0013】
触媒粒子は通常、パラジウム、プラチナ、ロジウム、金、銀などの貴金属(PM)で構成される。PMは、最も一般的な水性還元剤の酸化に対する触媒活性が高く、カチオンから元素状態への還元が容易であるために使用される。従来のELD触媒プロセスでは、PMナノ粒子は2つの方法のいずれかで基板の表面に適用される。第1の方法では、PMカチオンは、しばしば錯化剤を含むPM塩の水溶液に浸すことにより、基板の表面に吸着される。続いて、基板を水性還元剤で処理する。これにより、表面でPMナノ粒子が核生成される。第2の方法では、PM塩と還元剤が事前に混合され、多くの場合は分散剤とともに、PMナノ粒子のコロイドが作成される。次に、基板はこのコロイドで処理され、基板の表面へのPMナノ粒子の物理的接着に依存する。ELD用のPM触媒は、特に半導体産業において、マクロスケール基板での使用について広く研究されてきたが、微粉末のメタライゼーションへの使用に関する研究はかなり少なくなっている。従って、上記の従来のメタライゼーションプロセスは通常、プロセスを正確に制御できる環境で、比較的滑らかで均一な表面で使用するために開発されたPM触媒を備えている。また、高額な費用がかかるため、PM触媒は通常、製品のコストを比較的低く抑えるために少量使用される。
【0014】
しかしながら、本明細書の発明者らは、微粉末をメタライゼーションするために適用されたとき、マクロスケール基板のための上記のメタライゼーションアプローチに関する潜在的な問題を認識した。一例として、そのようなELDメタライゼーションプロセスは、電気化学的活性電極粉末で使用される場合、高価である。微細な電気化学的活性電極粉末の比表面積は、従来のELDメタライゼーションプロセスで使用される一般的なマクロスケール基板よりもはるかに大きい(1000倍以上)ため、表面を触媒するために最大1000倍多くのPM触媒を使用する必要がある。上述のように、PM触媒は、パラジウムなどの高価な材料を含み、従って、ELD手法を用いて電極粉末をPM触媒で被覆するコストが大幅に増加する。
【0015】
別の例として、そのようなメタライゼーションプロセスは、微細な電極粉末に使用された場合、基板を連続的に被覆するのに完全に有効ではない。その結果、被覆は、活物質による電解質の分解を防ぐのに効果的ではない可能性がある。特に、従来の大きく滑らかなELD基板の表面と比較して、ほとんどの微粉末は本質的に表面の凹凸が大きいため、多くの粉末処理技術に伴う高い剪断応力と相まって、連続した薄い金属膜を生成できる十分に高密度で均一な触媒層を確保することは非常に困難である。従って、触媒を基板に付着させるための上記のアプローチは、粉末が基板として使用される場合、触媒を付着させるのに著しく効果的ではない。上記のメタライゼーションアプローチは、従来のマクロスケール基板と比較して、粉末上の触媒の面密度が低くなるため、結果として得られる金属被覆は、通常、不連続でありかつ/又は不均一であり、従って、活性電極材料粉末の一部が依然として電解液にさらされる。そのため、従来のメタライゼーション手法では、電気化学的活性材料の表面で電解質の分解反応が発生し、それによって性能が低下する。
【0016】
ELDを用いた粉末メタライゼーションにはいくつかのアプローチが存在するが、これらのアプローチのほとんどは、導電性インク、接着剤などに使用する非導電性粉末に用いられる。例えば、Oyamadaらは、導電性添加剤として使用される微粉末上に実質的に連続したニッケル被覆を作成する方法を開示している。特に、Oyamadaは触媒プロセスを利用して、パラジウムイオンを粉末の表面の表面に吸着させ(前処理して吸着を増やすことができる)、次に水性還元剤で処理して表面のパラジウムナノ粒子を核生成する。Alexanderらは、複合鋳造品で使用するために、シリケート粒子をPMで被覆する同様の方法を開示している。同様のアプローチがGaoら及びShuklaらによって示されており、銅金属がグラファイトとフライアッシュ粉末にそれぞれ堆積される。
【0017】
本発明者らは、電気化学的活性材料に適用された場合、上記のELD粉末メタライゼーション手法に関する潜在的な問題を認識した。一例として、PM触媒は、従来技術のいくつかの従来の不活性粉末とは異なり、電気化学的活性材料に十分に接着しないため、電気化学的活性電極材料の表面の面密度が低くなる可能性がある。これにより、不連続な金属被覆が生じる。より具体的には、可能な限り最小の厚さで完全に連続した均一な金属被覆を達成するために、基板へのELD触媒の接着は優れている必要がある。ELD触媒が基板に十分に付着せず、十分に高い面密度がない場合、基板上への金属の堆積は基板の表面上のELD触媒の存在に依存するため、結果として得られる金属被覆の均一性と連続性が損なわれる。従って、触媒層は、理想的には、均一な最密構造として核生成し、基板から分離する触媒粒子は、不連続な被覆をもたらす。プロセスの感度(基板の表面特性又はプロセス条件のいずれか)により、触媒の接着が不十分になる可能性がある。
【0018】
貴金属ELD触媒は、それらの従来のELD基板の対応物と比較して、電気化学的活性電極粉末によく付着しない傾向があり、材料の表面特性により敏感になる傾向がある。特に、従来のELD基板の表面特性は、電気化学的活性電極粉末よりも正確に制御できる。リチウムイオン電池の電気化学的活性電極材料は、PMイオンの吸着が不十分な傾向があるため、PM捕獲基の表面機能化を高めるために前処理する必要がある。PMの吸着を増やすために表面の機能化に依存すると、材料の表面の不純物に対してプロセスをより敏感にするなど、いくつかの問題が発生する可能性がある。このため、より高純度でより高価な原材料の使用が必要になる場合がある。さらに、PM吸着を増加させるであろう多くの表面改質技術は、リチウムイオン電池の電気化学的活性材料と互換性がないかもしれない。材料又は材料のクラスごとに異なる前処理方法が必要になる場合があり、複数の材料のプロセスを開発してスケールアップすることがより困難で費用がかかるようになる。
【0019】
さらに、電極の材料処理中に導入される高い剪断応力は、触媒粒子を電気化学的活性電極材料から分離させる可能性が高い。これは、金属ナノ粒子を形成する還元反応が基板と液体の界面で起こり、これらのナノ粒子の付着は主に静電相互作用によるものであるという事実によるものである。コロイド触媒プロセスが使用される場合、付着は完全に静電相互作用によるものである。このため、ナノ粒子の付着は、材料の表面化学、触媒及びめっき槽の組成(特にイオン強度とpH)、及び材料処理中に発生する機械的応力に敏感である。Oyamadaらは、従来のPM ELD触媒を使用する場合、ELDめっき槽内の粉末の表面積を10m/L(通常のリチウムイオン活物質の約10g/Lに相当)未満に維持する必要があると報告している。そのような低い固体含有量(solid loading)を用いると、廃棄物が増えるだけでなく、所望のスループットを達成するためにより大きな装置が必要になる。
【0020】
触媒工程なしでELDプロセスを採用するいくつかのアプローチが示されている。例えば、Palaniappaらは、PM触媒を使用しない熱活性化プロセスを使用してグラファイト粉末上に不連続なニッケル被覆を堆積させる方法を開示している。Jae Woo Kimらは、フッ化水素酸でエッチングした後、シリコン粉末の表面に銅金属のほぼ連続した層を堆積させる方法を報告している。ただし、これらのELDプロセスはいずれも、被覆が連続的ではないため、パフォーマンスが低下する。
【0021】
粉末メタライゼーションを目的としたいくつかのアプローチは、ELDを完全に無視している。ELD触媒への別のアプローチがLiらによって示されている。この方法では、ポリイミド膜に銀イオンを含浸させ、その後空気中で加熱して、銀を熱還元し、ポリイミドの表面の触媒粒子を核生成する。Dowらは、銀の代わりに銅を含浸させる同様の方法を報告し、水性還元剤を使用して、表面の触媒銅ナノ粒子を核生成する。理論的には、連続したポリイミド層を微粉末に適用できる場合、ELD触媒に同様の方法を使用できるが、これはこれまで実施されていない。
【0022】
微粉末にポリマーを被覆するアプローチはRoweによって実証されている。Roweでは、被覆するポリマーを含む有機溶媒に粉末を分散させ、非溶媒をゆっくりと加えて粉末の表面にポリマーを沈殿させる、溶媒ベースのプロセスが用いられる。Smith-Johannsenらは、高温流体エネルギーミルを使用して、ポリマー溶液から有機溶媒を蒸発させることによりポリマーを微粉末に被覆することを開示している。
【0023】
しかしながら、本発明者らは、上記のポリマー被覆及びメタライゼーションアプローチに関する潜在的な問題を認識している。一例として、Palaniappaら、Jae Woo Kimらによって開示されたアプローチは、連続的及び/又は均一な被覆を提供しないため、活性電極材料による電解質の分解が可能になり、電池用途に適用した場合の電池のサイクル寿命のさらなる改善が妨げられる。別の例として、微粉末上にポリマーを被覆するための先行技術に記載された方法は、ポリイミドタイプのポリマーをリチウムイオン電池活物質上に被覆するために実行可能ではない。Roweの溶媒/非溶媒ベースのプロセスは、例えば、ポリマー被覆粉末の凝集を防止するために鉱物ケイ酸塩の使用に依存している。ポリイミドの表面に付着する粒子は、ポリイミドから核生成された触媒粒子を覆うため、最終的な金属被覆が不連続になる可能性がある。さらに、ケイ酸塩を含む金属酸化物は、リチウムイオン電池の内部で電気化学的に活性である可能性があり、セルの最初のサイクルのクーロン効率を大幅に低下させる可能性がある。Smith-Johannsen et alらに開示されている高温流体エネルギー粉砕プロセスは、粉末の表面を横切って流れ、それを均一に被覆するために、ポリマーは溶融しなければならないので、問題もある。ポリアミック酸ポリマーがガラス転移温度を超えて流れ、流動できるようになると、化学反応を迅速に起こして、脆く、はるかに高い温度になるまで流動しないポリイミドを形成する。さらに、PM捕獲能力を回復するために、ポリイミドを塩基加水分解によりポリ(アミック酸)形態に再変換する必要がある。そのような処理は、基板からポリマー被覆を溶解する可能性がある。これらのプロセスはいずれも、溶剤を大量に使用する必要がある。n-メチルピロリドンなどのポリ(アミック酸)の溶解に適したものは、一般に危険であり、主に水ベースのポリマー被覆プロセスと比較して、安全上のリスクと廃棄物処理コストが増加する。
【0024】
本発明者は、ポリマー被覆が粉末に適用される場合、PM触媒が電気化学的活性電極粉末により確実に付着することを認識した。従って、上記の問題は、電気化学的活性電極材料の外面に直接結合された連続的なポリマー被覆と、無電解堆積(ELD)反応を触媒するために連続的な前記ポリマー被覆に付着した金属触媒と、前記金属触媒と連続的な前記ポリマー被覆を完全に覆う連続的な金属被覆とを含む、電気化学的活性電極材料によって少なくとも部分的に対処することができる。金属触媒は、電気化学的活性電極材料自体よりもポリマーに強く付着し得る。従って、活性電極材料の外面がむき出しで、ポリマーで被覆されていない場合よりも、活性電極材料の外面が連続ポリマー被覆を含む場合、金属触媒は、電気化学活性電極材料の外面をより密に埋めることができる。このようにして、後続のELD反応中に、より薄く、より連続的で、平らで、均一な導電性金属被覆を活性電極材料に適用することができる。
【0025】
別の例として、上記の問題は、電気化学的活性電極粉末粒子の外面に直接被覆されたポリマーと、無電解析出(ELD)反応を触媒するためにポリマーに結合された金属触媒と、前記金属触媒と前記ポリマーを完全に覆う連続的な金属被覆とを含む、被覆された電気化学的活性電極粉末によって少なくとも部分的に対処され得る。
【0026】
さらに別の例では、上記の問題は、粉末粒子の外面をポリマーの連続層で被覆し、無電解析出(ELD)反応のための触媒をポリマーにアニーリング/適用し、続いて低温熱処理を行い、無電解堆積により前記触媒と前記ポリマー上に金属の連続層を堆積する、電気化学的活性電極材料の粉末粒子をメタライゼーションする方法によって少なくとも部分的に対処することができる。
【0027】
従って、電気化学的活性電極材料にポリマー被覆を適用することにより、金属めっき触媒の微細な電気化学的活性電極粉末への付着が増加する。従って、電気化学的活性電極粉末上の金属めっき触媒の面密度が増加する。これにより、ELDプロセスの感度が大幅に低下し、新しい複合材料の開発と製造が簡素化される。さらに、金属被覆は完全に連続した金属被覆であり、十分に薄い厚さ(<150nm)と均一な表面形態を示す。被覆がより連続的で均一であり、連続的で均一な表面形態を維持しながら金属導電性被覆を薄くすることができるため(金属触媒の面密度が高いため)、これらの被覆を有する電気化学的活性材料を含む電池の充放電性能が向上し得る。さらに、ポリマー被覆が活性材料に最初に適用されるとき、金属触媒は電気化学的活性材料により多く付着するため、使用する必要のある金属触媒は少なくてよく、それによりそのような金属被覆電気化学的活性粉末の製造コストを削減できる。
【0028】
上記の要約は、詳細な説明においてさらに説明される概念の選択を簡単な形で導入するために提供されることが理解されるであろう。これは、クレームされた発明特定事項の主要な又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、その範囲は、詳細な説明に続く請求項によって一意に定義される。さらに、特許請求の範囲に記載された発明特定事項は、上記又は本開示のいずれかの部分に記載されたあらゆる不利益を解決する実装に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A】本開示の少なくとも1つの実施形態に係る、ポリマー及び金属で被覆された電気化学的活性電極材料を含むリチウムイオン電池を製造するための例示的な方法の概略図である。
図1B】本開示の少なくとも1つの実施形態に係る、架橋可能なポリマー及び金属で被覆された電気化学的活性電極材料を含むリチウムイオン電池を製造するための例示的な方法の概略図である。
図2】本開示の少なくとも1つの実施形態により、電極材料上に金属被覆を堆積させる前に、電気化学的活性電極材料にポリマー被覆を適用することによって、図1A及び/又は図1Bのリチウムイオン電池などの電池の電気化学的活性電極材料をメタライゼーションするための例示的な方法のフローチャートである。
図3】本開示の少なくとも1つの実施形態に係る、電気化学的活性電極材料をポリマーで被覆するための例示的な方法のフローチャートである。
図4A】本開示の少なくとも1つの実施形態に係る、電気化学的活性電極材料のポリマー被覆上にELD反応のための金属触媒を適用するための例示的な方法のフローチャートである。
図4B】本開示の少なくとも1つの実施形態に係る、電気化学的活性電極材料の架橋可能なポリマー被覆上にELD反応のための金属触媒を適用するための例示的な方法のフローチャートである。
図5】本開示の少なくとも1つの実施形態に係る、ELDによって電気化学的活性電極材料を金属で被覆するための例示的な方法のフローチャートである。
図6A】本開示の少なくとも1つの実施形態に係る、複数の被覆されていない二次粒子を含む例示的な電気化学的活性電極材料サンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図6B】金属で被覆されているが、ポリマーで被覆されていない電気化学的活性電極材料サンプルの複数の二次粒子を含む例示的な電気化学的活性電極材料サンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図6C】本開示の1つ以上の実施形態に係る、金属及びポリマーで被覆された電気化学的活性電極材料サンプルの複数の二次粒子を含む、例示的な電気化学的活性電極材料サンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図6D】本開示の少なくとも1つの実施形態に係る、例示的な電気化学的活性電極材料サンプルの二次粒子上の金属被覆を示す、図6CのSEM画像のより拡大されたバージョンである。
図6E】1つ以上の添加剤を加えた、本開示の1つ以上の実施形態に係る、連続金属被覆及びポリマーで被覆された電気化学的活性電極材料サンプルの複数の二次粒子を含む、例示的な電気化学的活性電極材料サンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図6F】本開示の少なくとも1つの実施形態に係る、例示的な電気化学的活性電極材料サンプルの二次粒子上の連続金属被覆を示す、図6DのSEM画像のより拡大されたバージョンである。
図7】本開示に記載される被覆方法の少なくとも1つによる、ポリマー及び金属で被覆された電気化学的活性電極材料の例示的な二次粒子の断面の概略図である。
図8】本開示の少なくとも1つの実施形態によって製造された電極を含むリチウムイオン電池の様々なCレートで測定された維持容量を比較する例示的な試験データのグラフである。該電極は、被覆されていない電極を含むリチウムイオン電池と比較して、ポリマー及び金属で被覆された電気化学的活性材料を含む。
【0030】
(詳細な説明)
本開示は、アノードのグラファイトなどの電気化学的活性電極材料を、電気化学的活性電極材料自体よりも金属めっき触媒(例えば、ELD反応のための金属触媒)により容易に付着するポリマーで被覆するための材料及び方法に関する。活性電極材料をポリマーで被覆することにより、金属めっき反応を実行するために必要な金属めっき触媒が少なくなり、より多くの量の触媒が活性電極材料に付着し、それにより、反応(例えば、ELD反応)が行われるとき、電気化学的活性電極材料上に、より薄く、より連続的で及び/又は均一な金属被覆がもたらされる。
【0031】
図1A及び1Bの例に示されるように、リチウムイオン電池は、電極、すなわち、負極(アノード)及び正極(カソード)を含む。電極は電気化学的活性材料から作られている。例えば、アノードは、グラファイトで構成することができ、カソードは、ニッケルニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNiMnCo1-x-y又はNMC)などの高ニッケル活性カソード材料から構成することができる。
【0032】
電気化学的活性電極材料は、粉末の形態であり得、グラファイトメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)のサンプルのSEM画像の例に示されるように、多孔質二次粒子を含み得る。図2の例示的なメタライゼーション方法で説明したように、活性電極材料はポリマーで被覆され得、ELD反応のための触媒がポリマー被覆に適用され得る。次に、このELD触媒を使用して、ポリマー被覆の上に金属被覆を堆積させるELD反応を触媒することができる。図3は、活性電極材料上にポリマーを被覆するための例示的な方法を示す。ポリマーは、多くの異なる化合物を含み得る。図1A,1B、4A、及び4Bは、異なるタイプのポリマー被覆に触媒を適用するための様々な方法を示す。ポリマー及び触媒が活性電極材料に適用されると、図5の例示的な方法に記載されるように、ELD反応を使用して活性電極材料上に金属を被覆することができる。
【0033】
実験とテストを通じて、ポリマー中間体を構成する金属被覆活性電極材料は、より連続的及び/又は均一な金属被覆を備えており、ポリマー層を含まず、基板表面の貴金属触媒の核生成に依存する、他の金属被覆活性電極材料よりも大きな容量維持率を有している。例えば、図6B~6Fは、ポリマー被覆された活性電極材料の金属被覆が、ポリマー被覆を欠いている活性電極材料よりもはるかに連続的で均一であることを示すSEM画像を示す。また、図8は、ポリマー被覆活性電極材料を含む電池セルの維持容量が、他の活性電極材料よりも高いCレートでいかにはるかに大きいかを報告する試験結果例を示す。さらに、被覆の厚さは、電池セルの体積容量が悪影響を受けないように、十分に低く維持され得る(例えば、<150nm)。
【0034】
従って、リチウムイオンの移動を促進する導電性金属で電極活物質をより完全かつ均一に覆うことにより、電池セルの性能を改善することができる。具体的には、銅などの導電性金属で電極活物質をより連続的かつ均一に被覆することにより、より高い高率放電能力を達成することができる。さらに、被覆を比較的薄く保つことができるので、電池セルの体積容量を犠牲にすることなく、このより大きな高率放電能力を達成することができる。特に、触媒は、電気化学的活性電極材料自体よりもポリマーに容易に付着するため、活性電極材料の表面上の触媒の面積密度は増加し得る。触媒の面積密度が増加するため、隣接する触媒アイランド間のギャップを埋めるために必要な金属被覆の量が減少し、完全に連続した被覆を形成するために必要な金属被覆の厚さが減少する。
【0035】
さらに、ポリマー被覆電極材料は、活物質粉末の二次粒子上に連続的及び/又は均一な金属被覆を施すことができるため、それらが組み込まれる電池セルの安全性を高めることができる。活性電極材料を金属薄膜でより完全に覆うことにより、活性電極材料による電解質との相互作用、ひいては電解質の分解を最小限に抑えることができ、それにより、電池セルの引火点が増加する。
【0036】
明瞭性と継続性の目的で、以下の説明では、同じ概念、アイデア又はアイテムを参照するために複数の異なる名前が使用される場合があり、その逆も同様であることを理解されたい。例えば、「活性電極材料」は、グラファイト、グラファイトメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、LiCoO2、LiMn2O4、LiFePO4、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)などを含むがこれらに限定されない、リチウムイオン電池で使用される全ての電気化学的活性電極粉末を指すためにここで使用できることを理解されたい。
【0037】
さらに、本開示は主にELD反応による電気化学的活性材料の金属めっきに関するが、本開示の範囲から逸脱することなく他の金属めっき技術を使用できることを理解されたい。同様に、本開示は主にELD反応に適した触媒(例えば、貴金属)に関するが、本開示の範囲から逸脱することなく他の触媒を使用できることを理解されたい。例えば、白金族金属(白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、レニウム)の1つ以上、ならびに金及び銀を、上記の金属めっき技術の1つ以上の触媒として使用することができる。さらに、ELDを使用してメッキできる金属(銅、ニッケル、コバルト、鉄など)を触媒として使用できる。
【0038】
さらに、以下の説明では、提示された概念の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が述べられている。提示された概念は、これらの特定の詳細の一部又は全てがなくても実践できる。他の例では、説明された概念を不必要に曖昧にしないように、周知のプロセス動作は詳細には説明されていない。特定の実施形態に関連していくつかの概念を説明するが、これらの実施形態は限定を意図するものではないことが理解されよう。
【0039】
ここで使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図していない。ここで使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明確に他を示さない限り、「少なくとも1つ」を含む複数形を含むことが意図される。「又は(or)」は「及び/又は(and/or)」を意味する。ここで使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連する列挙されたアイテムの1つ又は複数のありとあらゆる組み合わせを含む。この明細書で用いる場合、「備える(comprises)」及び/又は「備える(comprising)」、又は、「含む(includes)」及び/又は「含む(including)」は、記載されている機能、領域、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、1つ以上の他の機能、領域、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除しない。用語「又はその組み合わせ(or a combination thereof)」又は「の混合物(a mixture of)」は、前述の要素の少なくとも1つを含む組み合わせを意味する。
【0040】
特に定義されない限り、ここで使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、この開示が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術及び本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、ここで明確にそのように定義されていない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0041】
図1A及び1Bを参照すると、それらは、ポリマー及び導電性金属の層状被覆を有する電気化学的活性材料を含むリチウムイオン電池用の電極を製造するための異なる例示的なプロセスの概略図を示す。特に、図1Aは、リチウムイオン電池を製造するための例示的な方法を示し、活物質の被覆のポリマーは架橋可能でないポリマーを含み、図1Bは、同様の方法を示すが、架橋可能なポリマーである。図1A及び図1Bで説明した2つのプロセスの違いは、図4A及び4Bに関して以下でより詳細に詳述される。
【0042】
図1Aを参照すると、それは、架橋可能でないポリマーの被覆の上に導電性金属の被覆を備える電気化学的活性材料を含むリチウムイオン電池を製造する例示的な方法の概略100を示す。電気化学的活性電極材料102は、まず、架橋可能でないポリマーを含む溶液(例えば、アルカリポリアメート溶液(alkali polyamate solution)103)と混合される。
【0043】
好ましい実施形態では、活性電極材料102は、アノードの電気化学的活性材料を含むことができる。例えば、活性電極材料102は、グラファイト及び/又はグラファイトMCMB、ハードカーボンなどの他の形態の炭素、リチウムと合金化できる元素(例えば、シリコン、スズ、アンチモン、又はそれらの化合物)を含むことができる。しかしながら、他の例では、活性電極材料102は、LiCoO2、LiMn2O4、及びLiFePO4などのカソードの電気化学的活性材料、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)などを含むことができる。
【0044】
アルカリポリアメート溶液103は、溶媒(例えば、水)に溶解された芳香族ポリイミド(例えば、リチウムポリアメート塩(lithium polyamate salt))を含み得る。従って、アルカリポリアメート溶液103は、まず、芳香族ポリ(アミック酸)などのポリマーを合成し、次にその合成されたポリマーを溶媒に溶解することによって調製することができる。溶液103中のポリマーは、溶液103の溶媒(例えば、水)に非常に高い溶解性を有し、比較的低分子量(<100kDa)であり、主鎖の周りの回転に対する高いエネルギー障壁を有する化学構造を含み、貴金属(PM)イオンをキレート化する実質的な能力を備え、好ましくは空気雰囲気中で低温熱処理によってキレート化PMイオンを金属ナノ粒子に還元でき、熱処理後に水に完全に不溶性となり、リチウムイオン電池のコンポーネントとして使用すると、高い電子伝導性とイオン伝導性が得られる。
【0045】
従って、アルカリポリアメート溶液103のポリマーは、ジアミンと二無水物の交互のモノマー単位からなる芳香族ポリ(アミック酸)を含み得る。熱処理すると、ポリ(アミック酸)は芳香族ポリイミドに変わる。以下の表は、アルカリポリアメート溶液103のポリマーで使用するためのいくつかの適切なモノマーの例を提供する。
【表1】
【0046】
アルカリポリアメート溶液103のリチウムポリアメート塩を合成するために、まず、ポリ(アミック酸)を合成し、次に熱処理してもよい。ポリ(アミック酸)ポリマーを合成するために、ジアミンと二無水物モノマーは、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの適切な溶媒中で、1~8時間、約40~80℃の温度で、約1:1の比率で反応させることができる。溶液中のポリマーの濃度は、5~30重量%、最も好ましくは約20重量%である。この反応は、窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことができる。ポリマーの分子量は、反応の時間と温度、及び反応物の純度と比率を変えることによって制御できる。ポリ(アミック酸)PMキレート能力を与えるために、遊離カルボン酸基は、塩基、好ましくはアルカリ金属水酸化物、最も好ましくは水酸化リチウムで中和されてもよい。アルカリで中和されたポリ(アミック酸)は水溶性が高いため、粉末に被覆した後でポリ(アミック酸)を中和することはできない。そうしないと、ポリマー被覆が溶液に完全に溶解する可能性がある。従って、水酸化リチウムの水溶液をポリ(アミック酸)のNMP溶液にゆっくりと加え、10~60分間混合し、50~100℃の温度で熱処理することができる。次に、リチウムポリアメート塩を、回転蒸発のようなコンデンサー技術によって溶媒から分離することができる。リチウムポリアメート塩は、リチウムポリアメート塩を沈殿させるために溶媒と混和性である非溶媒を加え、続いて濾過して沈殿物から溶媒を除去することによって分離することもできる。
【0047】
次に、リチウムポリアメート塩を溶媒(例えば、水)に溶解して、リチウムポリアメート溶液103を形成することができる。アルカリポリアメート溶液103のポリマーは、活性電極材料102への触媒粒子の均一な核形成及び付着を増加させる。アルカリポリアメート溶液103は、活性電極材料102と混合されて、電極材料102上に薄いポリマー層を形成し得る。図3を参照して以下により詳細に説明されるように、アルカリポリアメート溶液103及び活性電極材料102は、アルカリポリアメート溶液103中のポリマーが活性電極材料102上に堆積し、連続的に活性電極材料102を被覆するまで、混合、乾燥等され得る。乾燥すると、ポリマー被覆活性電極材料が凝集して巨視的な粒子を形成し得る。従って、活性電極材料102及びリチウムポリアメート溶液103の乾燥後、得られた粒子を粉末に粉砕して、ポリマー被覆活性電極材料粉末104を得ることができる。
【0048】
活性電極材料粉末104は、少なくとも1つの(例えば、複数の)微粉末粒子を含むことができる。これらの粉末粒子は、二次粒子を含み得、二次粒子は、複数の一次粒子から構成される。特に、二次粒子は、化学的に結合されたナノメートルサイズの一次粒子の凝集体であり得る。対照的に、一次粒子は原子又は分子結合によって結合された基本的な粒子であり、超高エネルギーの適用によってのみ、より小さな粒子に分離することができる。従って、一次粒子は二次粒子よりもはるかに小さい。例えば、一次粒子は、直径がおよそ1μm以下であり得るが、活性電極材料粉末の二次粒子は、直径が1μmより大きく、直径が数十ミクロンまでサイズが増大し得る。電気化学的活性電極材料粉末の例示的な二次粒子は、図6A~6Fを参照して以下により詳細に示され、説明される。
【0049】
図4Aを参照して以下により詳細に説明するように、次に、触媒含有溶液105を、ポリマー被覆活性電極材料粉末104と混合して、粉末104に導電性金属触媒を適用し、触媒活性電極材料粉末106を得る。触媒含有溶液105は、溶媒に溶解された、ELD反応において触媒として使用され得る金属を含み得る。例えば、金属は、パラジウム、ロジウム、金、銀、及び白金などの貴金属を含み得る。好ましい実施形態では、触媒含有溶液105は硝酸銀水溶液を含むことができ、ELD反応用の金属触媒は銀を含むことができる。しかしながら、触媒含有溶液105は、任意の可溶性銀塩を含み得ることが理解されるべきである。
【0050】
従って、金属触媒は、ポリマー被覆活性電極材料粉末のポリマーにアニールすることができる。従って、触媒活性電極材料粉末106は、粉末104が触媒含有溶液105からの金属触媒も含み得ることを除いて、ポリマー被覆活性電極材料粉末104と同じポリマー被覆を含む。図5を参照して以下により詳細に説明するように、次に、銅などの導電性金属を、ELD反応により、触媒活性電極材料粉末上に堆積及び/又は被覆することができる。これは、触媒活性電極材料粉末106を1つ以上の還元溶液107及び金属含有溶液108と混合して、ELD槽109(本明細書では「めっき槽109」とも呼ばれる)を形成することを含み得る。ELD反応は、ELD槽109内で進行することができ、それにより、触媒含有溶液105からの金属触媒は、電極材料粉末上への金属含有溶液108中の金属の堆積を触媒することができる。
【0051】
図5を参照して以下により詳細に説明するように、まず還元溶液を触媒活性電極材料粉末106と混合し、次に金属含有溶液108をその後ゆっくりと加えることができる。還元溶液107は、金属堆積物の成長特性を制御するために、還元剤140、弱酸及び弱塩基からなる緩衝液141、高分子界面活性剤142、消泡剤143、及び金属の成長特性を制御するための添加剤144のうちの1つ以上を含み得る。
【0052】
還元剤140は、一般に、ELD槽109の自然分解を回避するのに十分に安定でなければならないが、ELD反応が十分な速度で起こり、妥当な時間の後に本質的に全ての可溶性金属塩を還元するのに十分な反応性でなければならない。
【0053】
各金属又は合金の触媒活性は異なる還元剤によって異なるので、還元剤140は、堆積される金属に応じて選択される。例えば、還元剤140は、ホルムアルデヒド及びグリオキシル酸などのアルデヒド、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム、アンモニアボラン及びジメチルアミンボランを含むボランのアミン錯体、ならびに水素化ホウ素ナトリウムの1つ以上を含み得る。還元溶液107中の還元剤140の濃度は、典型的には、金属形態に加えられる金属塩の全てを還元するのに必要な化学量論量の25~100%過剰であり、0.10~0.50モルの範囲であり得る。
【0054】
緩衝液141は、弱酸と弱塩基の混合物であってもよく、ELD反応の経過中にELD槽109のpHが大幅に変化するのを防ぐために必要である。ELD槽109のpHは、還元剤に依存し、そして反応速度を最大にするように選択され得る。ELD槽109は、約9.0~13.0の範囲のpHを有するアルカリ性であり得るが、次亜リン酸ナトリウムなどの特定の還元剤は、約3.0~6.0のpHを有する酸性めっき槽で代替的に使用され得る。いくつかのポリイミドはアルカリ性溶液中で加水分解を受けやすいため、ポリマー被覆がポリイミドを含む例では、pHを11未満に維持して、ELD槽109でポリイミドが溶解するのを防ぐことができる。緩衝液141に使用される酸は、ギ酸、酢酸、クエン酸などのカルボン酸を含むことができ、塩基は、アンモニア又は有機アミンを含むことができる。しかしながら、11を超えるpHが望ましい他の例では、水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリを加え、pHを上げることができる。アルカリめっき槽の場合、塩基は、還元溶液107に0.25~2.0Mの濃度で加えることができ、pHを測定しながら、pHが所望の値で安定するまで酸を加えることができる。酸性めっき槽の場合は、その逆を行ってもよい。
【0055】
めっき槽109は、炭素などの疎水性材料の湿潤を可能にし、またELD反応中の粒子の凝集を防止するために、界面活性剤142をさらに含んでもよい。最も適切な還元剤の酸化から水素ガスが発生するため、発泡を引き起こす界面活性剤は望ましくなく、潜在的に危険である。従って、適切な界面活性剤は、一般に、分子量が約2.5~25kDaのポリマーであり、金属の表面に配位する官能基を含んでいる。そのようなポリマーの例には、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、及びポリ(ビニルピロリドン)が含まれる。還元溶液107中の界面活性剤の濃度は、5~25g/Lの間であり得る。
【0056】
発生した水素ガスが爆発の危険性のある過剰な発泡を引き起こすのを防ぐため、消泡剤143を界面活性剤142と共に加えてもよい。消泡剤143は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノールなどの脂肪族アルコールを含んでもよく、還元溶液107中に50~250mL/Lの濃度で存在してもよい。
【0057】
堆積された金属膜の特性、特に表面形態、粒径、及び不純物濃度を制御するために、添加剤144は、100万分の1~50部の間の還元溶液107中の濃度範囲で使用され得る。好ましい実施形態では、1つの添加剤が堆積速度を増加させ(「促進剤」)、1つの添加剤が堆積速度を減少させる(「抑制剤」)2つの添加剤システムを利用することができる。金属表面の電位がより負になるにつれて、促進剤に対する抑制剤の相対的吸着が増加するように、促進剤及び抑制剤を選択しなければならない。これは、金属表面のより負でない領域で過電圧を低減し、より負の領域で過電圧を増加させる効果があり、金属膜の結節成長(nodular growth)を実質的に防ぎ、表面形態の均一性を大幅に改善する。
【0058】
金属含有溶液108は、ELD反応中に電極材料粉末106上に被覆される金属を含む。より具体的には、金属含有溶液108は、堆積させる金属の可溶性金属塩150、金属塩150をキレート化するための錯化剤151、及びpH調整剤152の1つ又は複数を含むことができる。
【0059】
可溶性金属塩150は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、タングステン、モリブデン、スズ、アンチモン、鉛、及びビスマスの1つ又は複数を含むことができる。金属塩150は、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、又は市販されており、水に容易に溶解し、ELD槽109で望ましくない反応を受けない任意の他の化合物の形態であってよい。好ましい実施形態では、金属塩150の濃度は、溶液の総容量を減らすために、可能な限り高くてもよい。金属塩150の溶解度に応じて、濃度は、金属含有溶液108中で0.25~1.50モルの範囲であり得る。
【0060】
金属含有溶液108中の錯化剤151は、金属塩150が高pHで水酸化物として沈殿するのを防ぎ、ELD槽109の自然分解を防ぐことができる。錯化剤151は、多座カルボン酸又はアミンを含むことができるが、使用するのに最も好ましい錯化剤は、存在する金属塩及び必要なpHに依存する。例えば、錯化剤151は、酒石酸、クエン酸、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、及びチオ尿素のうちの1つ以上を含み得る。錯化剤の濃度は、金属-配位子錯体を形成するのに必要な化学量論量を超えて、10~25%の範囲であり得る。例えば、0.50Mの硫酸銅(II)を含有する溶液では、0.55~0.625MのEDTA又は1.1~1.25Mの酒石酸を使用することができる。
【0061】
金属含有溶液108にpH調整剤152を加えて、還元溶液107と同じpHを達成する。還元溶液が酸性である場合、クエン酸又は酢酸などの弱酸を使用することができる。還元溶液107が塩基性である場合、アンモニアなどのアミン、又は水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリを使用することができる。使用されるpH調整剤152の量は、錯化剤151の構造及び濃度、並びに目標pHに依存し得る。pH調整剤の濃度は、金属含有溶液108中で0.1~1.0モルの範囲であり得る。導電性金属で触媒活性電極材料粉末106を被覆するためのELD反応及びプロセスは、図5を参照して以下により詳細に説明され得る。
【0062】
図1Aを続けると、ELD反応はELD槽109で進行し、金属含有溶液108からの導電性金属が触媒作用を有する活性電極材料粉末106を被覆する。次に、槽109内の液体を蒸発させ、金属含有溶液108からの金属の連続層で被覆された金属被覆活性電極材料粉末110を残すことができる。金属被覆活性電極材料粉末110の例は、図6E及び6FのSEM画像で以下に示され、説明される。
【0063】
電極材料粉末をアルカリポリアメート溶液103からのポリマー及び金属含有溶液108からの金属で被覆した後、金属被覆活性電極材料粉末110は、次に、金属被覆活性電極110を含む電極111に作製され得る。電極111を製造する前に、金属被覆活性電極材料粉末110は、1つ又は複数の導電性添加剤及び/又はバインダーと予備混合することができる。電極111の製造は、金属被覆活性電極材料粉末110を導電性添加剤及び/又はバインダーを含むスラリーに混合し、スラリーを導電性基板に被覆し、スラリー被覆された導電性基板を乾燥し、被覆を圧縮し、カレンダー加工する(calendering)ことを含み得る。例えば、金属被覆活性電極材料粉末110は、1つ以上のスラリー添加剤132と混合されて、スラリーを形成し得る。特に、スラリー添加剤132は、1つ以上の溶媒及び/又はポリマーバインダーなどの結合剤を含み得る。別の例として、金属被覆活性電極材料粉末110は、非水性溶媒中でバインダー及び少なくとも1つの添加剤と混合されて、スラリーを形成し得る。次に、金属被覆活性電極材料粉末110を含むスラリーは、金属箔(例えば、銅箔、リチウム箔、アルミニウム箔など)などの導電性基板(ここでは「集電体」とも呼ばれる)上に被覆され、その後、乾燥させ、プレスし、カレンダー加工して、電極111を形成することができる。
【0064】
次に、金属被覆活性電極材料粉末110を含む電極111は、電極108を別の電極及びセパレータ114と組み立てることにより、リチウムイオンセル118に作製され得る。いくつかの例では、金属被覆電極111の1つだけが、リチウムイオンセル118を製造するために使用され得る。そのような例では、電極111は、反対の極性の電極で製造され得る。例えば、金属被覆電極がアノードを含む(例えば、電気化学的活性材料としてグラファイトを含む)場合、カソードを電極111と組み合わせて使用して、セル118を形成することができる。逆に、電極111がカソードとして作製される場合(例えば、金属被覆活性電極材料粉末110の電気化学的活性材料が、LiCoO2、LiMn2O4、LiFePO4、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)等の1つ以上を含む)場合、電極111をアノードと組み合わせて使用して、セル118を製造することができる。さらに別の例では、反対の極性の2つの金属被覆電極111を製造し、リチウムイオンセル118を形成するために使用することができる。
【0065】
セパレータ114は、それらの物理的接触を回避するように、アノード112及びカソード116を分離するように機能する。好ましい実施形態では、セパレータ114は、高い多孔度、電解液に対する優れた安定性、及び優れた液体保持特性を有する。セパレータ114の例示的な材料は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン又はセラミック被覆材料でできた不織布又は多孔質膜から選択されてもよい。
【0066】
次に、リチウムイオンセル118は、電解質117(図1Aの斜線で示される)で満たされ、充填されたリチウムイオンセル120が生成される。リチウムイオンセル118は、例えば、アノード112、カソード116、セパレータ114、及び電解質117を収容するポーチ(pouch)等のハウジング114を備える。電解質117がハウジング114内に含まれるように、セル118を仕上げるときにハウジング114を密封することができる。
【0067】
電解質117は、図示されるように、リチウムイオンセル120内の構成要素と密接に接触している。電解質117は、リチウム塩、有機カーボネートなどの有機溶媒、及び添加剤を含むことができる。電解質117は、リチウムイオンセル全体に存在し、アノード112、カソード116、及びセパレータ114と物理的に接触している。
【0068】
次に、充填されたリチウムイオンセル120は、第1の充電/放電サイクルとも呼ばれるセル形成を受けて、リチウムイオンセル122を形成し得る。リチウムイオンセル122は、他の同様に仕上げられたリチウムイオンセルと組み合わせて、リチウムイオン電池に挿入又は使用する準備ができている、完全に製造され、完全な電池セルであり得る。
【0069】
さらに、セル形成の間、他の反応、例えば相加反応が起こり得る。いくつかの実施形態では、セル形成中のリチウムイオンセルの熱処理が行われてもよい。熱処理は、電池コンポーネントの反応速度に影響を与える可能性がある。例えば、セルは、30℃~100℃、例えば35℃、45℃、60℃、80℃、又は100℃のような温度に、30分から7日までの間、曝されてもよい。
【0070】
このようにして、電気化学的活性材料がポリマー及び導電性金属で被覆され、リチウムイオン電池の少なくとも1つの電池セルの電極を形成するために使用される、リチウムイオン電池を製造することができる。特に、リチウムイオン電池は、1つ又は複数の電池セルを含むことができ、1つ又は複数の電池セルは、セパレータ、電解質、及び2つの電極(アノード及びカソード)を含み、電極の少なくとも1つは、層状ポリマー及び導電性金属被覆を有する電気化学的活性材料を含む。
【0071】
ここで図1Bを参照すると、電気化学的活性電極材料102を被覆するための、架橋可能なポリ(アミック酸)アミン塩を含む、図1Bの例で使用されるポリマーを除いて図1Aの例示的な概略図及び方法と同様の別の例示的な概略図100が示される。従って、概略100は、図1Aで上記で説明したものとは異なるポリマー(例えば、リチウムポリアメート塩ではない)を使用して金属被覆電極111を形成する別の方法を簡単に示す。
【0072】
従って、図1Aで上述した架橋可能でないポリマーの代わりに、図1Bは、架橋可能なポリ(アミック酸)アミン塩123を使用して金属被覆電極111を製造する方法を提供する。図1Bのポリイミドは、その電子伝導性を高め、高アルカリ性溶液に溶解するのを防ぐために、好ましくは低温熱処理によって架橋される。架橋剤は、芳香族カルボン酸無水物又は芳香族アミンなどの、ポリマー鎖を終結(エンドキャップ)することができる単官能性モノマーであってよい。架橋剤はまた、アミン又は無水物に接続された芳香環を含む、1つ又は複数の芳香環に共役されているアルキンを含まなければならない。適切な架橋剤の例は、4-フェニルエチニルフタル酸無水物(PEPA)である。架橋剤は、ポリマー中のモノマーの総モルに対して1:20~1:100のモル比で加えることができる。架橋剤がアミンである場合、1当量少ないジアミンモノマーを加えてもよい。それが無水物である場合、1当量少ない二無水物モノマーを加えてもよい。例えば、架橋剤がPEPAであり、架橋比が1:50である場合、モノマー混合物は、1部のPEPA、25部のジアミン、及び24部の二無水物である。エンドキャッピング架橋剤を加えると、得られるポリマーの分子量が大幅に低下する場合がある。ポリマーの分子量が絡み合いの臨界分子量を超えていることを確認する必要がある場合がある。そうでない場合、ポリマー被覆が不連続になる可能性がある。従って、約1:30~1:50の架橋比を使用することが好ましい。
【0073】
架橋ポリ(アミック酸)の合成手順は、ポリ(アミック酸)を水酸化アルカリで中和する代わりに、ジエタノールアミン又はトリエチルアミンなどの有機アミンで中和することを除いて、図1Aで上述した非架橋ポリマーの合成手順に類似している。得られた熱架橋性ポリ(アミック酸)のアミン塩は水溶性であり、同じプロセスを使用して粉末に被覆することができる。ポリマーを被覆した後、空気中又はアルゴンや窒素などの不活性雰囲気中で、350~425℃の温度に15~60分間加熱して熱架橋する必要がある。冷却後、架橋したポリイミド被覆粉末を、水酸化アルカリ溶液125、好ましくは水酸化リチウム又は水酸化ナトリウムと10~60分間混合する。水酸化アルカリ溶液125は、0.5~2.5モルの水酸化物濃度を含むことができ、40~80℃の温度に加熱することができる。その後、粉末を濾過により混合物から除去し、脱イオン水を数回加えてリンスし、過剰な水酸化物を除去する。図4Bを参照して以下により詳細に説明するように、次に、粉末を触媒含有溶液105と混合し、未架橋ポリイミドを利用した粉末と同様に加熱して、触媒活性電極材料粉末106を形成する。
【0074】
図2に移ると、電気化学的活性電極材料(例えば、図1A及び1Bにおいて上述した電気化学的活性電極材料102)をメタライゼーション(例えば、金属めっき)するための例示的な方法200のフローチャートを示す。従って、方法200は、電気化学的活性電極材料を銅などの導電性金属で被覆するための例示的なアプローチの一般的な概要を与える。
【0075】
方法200は、図1A及び図1Bで上述したのと同じ又は同様の方法でポリマーを合成することを含む202で始まる。従って、ポリマーは、架橋可能なポリ(アミック酸)アミン塩、芳香族ポリ(アミック酸)、芳香族ポリイミド、ポリリチウム酸リチウム、及び任意の他の芳香族ポリイミドタイプのポリマーの1つ以上を含み得る。図1A及び1Bで上述したように、リチウムポリアメート塩よりも架橋可能なポリ(アミック酸)アミン塩を合成する場合、異なる合成手順を使用することができる。次に、204で、合成されたポリマーを電気化学的活性電極材料に被覆することができる。図3を参照して以下により詳細に説明するように、特に、合成ポリマーを溶媒に溶解し、次に、電気化学的活性電極と混合することができる。ポリマー被覆は、電気化学的活性電極材料の粉末粒子の外面を完全に覆うように連続的であってもよい。
【0076】
次に、図4を参照して以下により詳細に説明するように、206で触媒を、ポリマー被覆電気化学活性電極粉末(例えば、図1A及び1Bで上述したポリマー被覆活性電極粉末104)に付着させることができる。触媒は、例えば、ELD反応のための金属触媒を含み得る。ELD触媒がポリマー被覆された電気化学的活性電極粉末に付着すると、ELD反応が進行し得る。従って、208で、電気化学的活性電極粉末は、ELD反応によって導電性金属で被覆されてもよい。図5のフローチャートは、活性電極粉末を導電性金属でめっきする(例えば、ELD反応を実施する)ための例示的な方法の詳細を提供する。その後、方法200は終了する。
【0077】
図3に移ると、電気化学的活性電極材料(例えば、図1A及び1Bで上述した電気化学的活性電極材料102)上にポリマー被覆を適用する例示的な方法300のフローチャートが示されている。方法300は302で始まり、合成ポリマー(例えば、リチウムポリアメート塩、架橋性ポリ(アミック酸)アミン塩など)を溶媒に溶解することを含む。一例では、溶媒は水を含み得る。特に、ポリマーは、粉末に被覆される量に応じて、約0.5~5.0wt%の濃度で脱イオン水に溶解することができる。次に、方法300は、302から304に続き、合成ポリマー溶液を電気化学的活性電極材料と混合することにより、電気化学的活性電極材料上に合成ポリマーを堆積することを含む。特に、粉末をポリマー溶液に完全に分散させるために、高剪断ミキサーを使用してポリマー溶液(例えば、図1Aで上述したアルカリポリアメート溶液103及び/又は図1Bで上述した架橋性ポリ(アミック酸)アミン塩)を活物質粉末と混合し、40~70wt%の個体含有量の水性スラリーを生成する。好ましい実施形態では、粉末を完全に分散させながら、固体含有量をできるだけ高く保つことができる。粉末へのポリマー(例えば、リチウムポリアメート)の全体的な含有量は、粉末の形状及び表面積に応じて、1.0~5.0重量%、より好ましくは2.0~3.0重量%であり得る。連続的なポリマー被覆を達成しながら、可能な限り少量のポリマー(例えば、リチウムポリアメート)を適用することが好ましい。
【0078】
得られた混合物/スラリーは、続いて306で固体へと乾燥される。一例として、ポリマー溶液及び電気化学的活性電極材料混合物/スラリーは、60~100℃の温度で、真空下で乾燥され得る。乾燥後、合成ポリマーで被覆された電気化学的活性電極材料を含む得られた固体は、308で粗粉末に粉砕される。一例では、固体は、0.5mm以下、好ましくは0.1~0.5mmの粒子サイズに粉砕される。次に、粉末粒子は、310で非溶媒を用いてボールミリングされ得る。特に、粗粉末、非溶媒、及びミリング媒体は、回転式ボールミリングチャンバに投入され得る。非溶媒の目的は、ポリマー(例えば、リチウムポリアメート)を膨潤及び可塑化して、粉末の凝集を回避しながら、機械的粉砕によって粉末の表面に均一に分散できるようにすることである。適切な非溶媒は、好ましくは、エステル、ケトン、又はカーボネートなどの低分子量の極性非プロトン性有機溶媒である。例えば、非溶媒は、最も低い分子量のケトンであり、安価で容易に入手できるので、アセトンを含んでもよい。ミリング媒体は、好ましくは、直径が1~10mm、最も好ましくは直径が約5mmの球形である。ミリング媒体は、好ましくは、ミリングされる構成要素に対して耐久性があり、反応しない高密度材料からなる。
【0079】
粉末は、ミリングチャンバーの体積の約10~30%の間からなり、ミリング媒体は、体積の約20~50%の間からなり得る。非溶媒は、得られるスラリーが、ミリング媒体の重量を含まない、約25~50重量%固形分となるように添加され得る。ミリングチャンバーの約20~50%が未充填のままになる場合がある。回転ミルは、好ましくは10~400rpm、最も好ましくは50~200rpmの速度で操作される。材料は、凝集のない濃厚なスラリーが得られるまで、0.5~4.0時間の間粉砕されてもよい。
【0080】
次に、ミリング媒体及び非溶媒を除去して、312で、ポリマー被覆粉末粒子(例えば、図1A及び1Bで上述したポリマー被覆活性電極材料粉末104)を形成することができる。特に、ミリング媒体ではなく、スラリーを通過させるスクリーンを混合物が通過することにより、ミリング媒体はスラリーから分離される。次に、所望の固体が濾過により非溶媒から除去され、凝集のないリチウムポリアメートで被覆された粉末が得られる。この粉末は、さらなる処理の前に、優先的には真空下で20~80℃の温度でさらに乾燥させることができる。リチウムポリアメートで被覆された粉末粒子は二次粒子を含むことができ、リチウムポリアメート被覆は連続的で(二次粒子の外面全体を覆う)、比較的滑らかで、厚さが実質的に均一であることができる。二次粉末粒子がポリマー被覆で被覆されると、次に、方法300は、図4Aの方法400の402又は図4Bの方法450の452に続く。特に、リチウムポリアメートがポリマー被覆中のポリマーとして使用される場合、方法300は図4Aに続き、ポリ(アミック酸)アミンがポリマー被覆中のポリマーとして使用される場合、方法300は図4Bに続く。
【0081】
図4Aに続くと、ポリマー被覆された電気化学的活性電極材料粉末(例えば、ポリマー被覆された活性電極材料粉末104)上のリチウムポリアメート被覆に触媒を付着させる方法400が示される。
【0082】
方法400は、図3の方法300の312から続き、リチウムポリアメート被覆粉末粒子を、触媒を含む溶液(例えば、図1A及び1Bで上述した触媒含有溶液105)と混合することにより、ポリマー被覆粉末粒子上に触媒を堆積させることから始まる。触媒は、パラジウム、プラチナ、ロジウム、金、銀などの1つ以上を含む貴金属などのELD反応用の触媒であってもよい。一例では、ポリマー被覆粉末は、5~30分の間、硝酸銀に水溶液と混合され得る。混合物中の粉末の含有量は、5~25重量%の間であり得る。好ましい実施形態では、混合物中の粉末の含有量は、15重量%であり得る。硝酸銀は、リチウムポリアメートの遊離カルボキシレート基に対応する1:1のモル比で追加できる。必要とされる硝酸銀の量は、ポリ(アミック酸)繰り返し単位の分子量及び繰り返し単位あたりのカルボキシレート基の数に基づいて計算することができる。粉末へのリチウムポリアメートの量及び混合物中の粉末の量に応じて、硝酸銀の濃度は約1~20g/Lの間であり得る。
【0083】
次に、方法400は、ポリマー被覆粉末粒子を触媒溶液(例えば、硝酸銀溶液)中で混合した後、402から404に続く。404の方法400は、濾過により混合物から粉末粒子を分離することを含む。次に、406で、粉末粒子は、全ての過剰な硝酸銀が除去されるまで、脱イオン水を数回加えてリンスすることができる。406でリンスした後、方法400は408に続き、粉末粒子を加熱し、次に冷却することにより触媒を粉末粒子にアニールすることを含む。一例では、粉末粒子は、空気中で、15~60分間、250~300℃の温度に加熱することができ、その後、さらなる処理の前に、室温まで放冷することができる。次に、方法400は、図5の方法500の502に続く。
【0084】
一方、図4Bは、ポリマー被覆された電気化学的活性電極材料粉末(例えば、ポリマー被覆された活性電極材料粉末104)上のポリ(アミック酸)アミン被覆に触媒を付着させるための例示的な方法450を示す。ポリ(アミック酸)アミン塩が、ポリマー被覆された電気化学的活性電極材料のポリマーとして使用される場合、方法450は、図3の方法300の312から進むことができる。方法450は、方法400の402~408に記載されるように、触媒及び粉末粒子を混合、分離、リンス、及びアニーリングする前に、方法450は、ポリマー被覆された粉末粒子を水酸化アルカリ溶液と混合する追加の工程を含むことを除き、方法400と実質的に同じである。リチウムポリアメートは合成中に水酸化アルカリで中和されるが、ポリ(アミック酸)アミン塩は、合成中にジエタノールアミンやトリメチルアミンなどの有機アミンで中和される。従って、ポリ(アミック酸)アミン塩は、ポリマーで被覆された電気化学的活性電極粉末粒子上に被覆されるまで、水酸化アルカリ溶液と混合されない。
【0085】
方法450は、それを加熱することによりポリ(アミック酸)アミン塩を架橋することを含む451で始まる。一例として、ポリ(アミック酸)アミン塩被覆を含むポリマー被覆された電気化学的活性電極粉末粒子は、空気中又はアルゴンや窒素などの不活性雰囲気中のいずれかで、15~60分間、350~425℃の温度に加熱することができる。冷却後、方法450は、451から、ポリマー被覆粉末粒子を水酸化アルカリ水溶液と混合することを含む452に続くことができる。一例として、架橋されたポリイミド被覆粉末は、水酸化アルカリ、好ましくは水酸化リチウム又は水酸化ナトリウムの水溶液と10~60分間混合することができる。水酸化アルカリ溶液は、0.5~2.5モルの水酸化物濃度を有することができ、40~80℃の温度に加熱することができる。
【0086】
次に、方法450は、452から454に続き、濾過により混合物から粉末粒子を除去することを含む。濾過後、方法450は、454から、粉末粒子を脱イオン水でリンスすることを含む456に続くことができる。特に、過剰な水酸化物を除去するために、脱イオン水を数回加えて粉末をリンスすることができる。次に、粉末を硝酸銀と混合し、図4Aの方法400で上述した、未架橋ポリイミドを利用した粉末と同様に加熱する。方法450は、ステップ458~464に続くことができる。これは、図4Aを参照して既に上記で説明されたステップ402~408と同じ又は同様であり得る。ステップ458~464を実行した後、方法450は次に、図5の方法500の502に続くことができる。
【0087】
図5に続くと、ELD反応を実行して、ELD触媒(例えば、図1A及び1Bで上述した触媒活性電極材料粉末106)を含むポリマー被覆電気化学活性電極粉末上に導電性金属(例えば銅)を堆積させる例示的な方法500が示されている。従って、方法500は、図4Bの464又は図4Aの408のいずれかから継続することができる。
【0088】
方法500は、還元溶液(例えば、図1A及び1Bで上述した還元溶液107)を加熱することを含む502で始まる。還元溶液は、50~80℃に加熱することができる。さらに、還元溶液は、ELD反応の間(ステップ508~514)、及び/又は、金属含有溶液(例えば、図1A及び1Bで上述した金属含有溶液108)が還元溶液と触媒粉末粒子に加えられる前に、加熱され続けてもよい。還元溶液は、緩衝液(例えば、図1A及び1Bで上述した緩衝液141)、界面活性剤(例えば、図1A及び1Bで上述した界面活性剤142)、消泡剤(例えば、図1A及び1Bで上述した消泡剤143)、及び、添加剤(例えば、図1A及び1Bで上述した添加剤144)を十分な脱イオン水に溶解して、還元溶液の最終体積の80~90%の体積に到達させることによって調製することができる。ELD反応が始まる前の分解を防ぐために、還元剤(例えば、図1A及び1Bで上述した還元剤140)を脱イオン水(最終体積の10~20%)に個別に溶解し、使用直前(例えば、508において金属含有溶液が加えられる直前)に加えることができる。
【0089】
方法500は、502から、触媒粉末粒子を還元溶液と混合して粉末を分散させることを含む504へと続く。(還元剤の添加前の)還元溶液は、所望の温度まで加熱され、次に触媒粉末が溶液に加えられ、完全に分散するまで混合される。次に、506で、還元剤が、還元溶液及び混合された触媒粉末粒子を含む反応混合物に加えられる。還元剤は、反応混合物に加えられる前に脱イオン水に溶解されてもよい。10秒~5分の待機期間の後、全金属含有溶液の一部が混合物に加えられる。還元溶液、金属含有溶液、及び分散粉末粒子は、ELD槽(例えば、図1A及び1Bで上述したELD槽109)を含み、508で金属含有溶液が加えられると、ELD反応が進行する。
【0090】
反応混合物の固体含有量に応じて、金属源溶液の総容量の5~20%を最初に(508で)加えてもよい。次に、方法500は、508から510に続き、これは、ELD反応を進行させることができる期間、反応混合物(ELD槽)を混合することを含む。ELD反応は、30~120分間、又は水素発生の大幅な減少によって証明されるように反応がほぼ停止するまで続行できる。
【0091】
次に、金属含有溶液の残りを512で加える。一例では、ELD反応の速度を制限するために、金属源溶液の残りを30~240分の期間にわたってゆっくりと加えることができる。ELD反応全体の間、ELD槽は引き続き混合される。従って、方法500は、512から、ある期間(反応が停止するまで)ELD槽中で反応混合物を混合し続けることを含む514に続く。一例として、全ての金属源溶液が加えられた後、反応混合物にかなりの量の金属イオンが溶解しなくなるまで、反応をさらに30~120分間進行させる。
【0092】
次に、方法500は、514から、濾過により溶液から粉末を除去することを含む516に続く。続いて、518で、粉末を脱イオン水でリンスすることができる。一例では、脱イオン水のいくつかのアリコートを用いて、粉末から不純物を除去することができる。次に、520で粉末を真空乾燥して、金属被覆された電気化学的活性電極粉末(例えば、図1A及び1Bで上述した金属被覆された活性電極材料粉末110)を形成することができる。粉末を真空下で乾燥して、金属表面を酸化することなく残留水を除去することができる。その後、方法500は終了する。
【0093】
ここで、図6A~6Fを参照すると、電気化学的活性電極材料からの例示的な二次粒子の様々なSEM画像が示される。特に、それらは、グラファイトを含む電気化学的活性アノード材料のSEM画像を示している。具体的には、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)のSEM画像を示す。
【0094】
図6Aは、むき出しの、被覆を有さないMCMBの例示的な二次粒子602の第1のSEM画像600を示す。図6Aには、二次粒子602のむき出しのグラファイト外面604が露出して示されている。
【0095】
図6Bは、導電性金属被覆で被覆されているが、ポリマー被覆では被覆されていないMCMBの二次粒子602(二次粒子602は、金属被覆を施す前にポリマーで二次粒子602を被覆しない従来技術の手法を使用して被覆されている)の第2のSEM画像610を示す。図6Bの金属被覆は、銅被覆606を含む。
【0096】
図6Cは、ポリマー被覆及び導電性同被覆606で被覆されたMCMBの二次粒子602の第3のSEM画像620を示す。二次粒子602は、図1A~5を参照して上述した被覆方法の1つ又は複数を用いて、ポリマー及び導電性銅被覆606で被覆され得る。しかしながら、図6Cの二次粒子602は、添加剤(例えば、図1A及び1Bで上述した添加剤144)を使用せずに被覆されている。図6Dは、図6Cの第3のSEM画像620の第4のより拡大された画像630を示す。
【0097】
図6Eは、ポリマー被覆及び導電性銅被覆606で被覆されたMCMBの二次粒子602の第5のSEM画像640を示す。二次粒子602は、図1A~5を参照して上述した被覆方法の1つ又は複数を用いて、ポリマー及び導電性銅被覆606で被覆され得る。さらに、図6Cの二次粒子602は、図6C及び6Dの二次粒子602とは対照的に、添加剤(例えば、図1A及び1Bで上述した添加剤144)を使用して被覆された。図6Fは、図6Eの第5のSEM画像640のより拡大された第6の画像650を示す。
【0098】
図6A~6EのSEM画像から分かるように、ポリマーを用いて被覆されたメタライゼーションされた二次粒子は、ポリマー被覆を含まない二次粒子よりも連続的で滑らかで均一な金属被覆を含む。特に、ここに開示される1つ又は複数の実施形態に従って触媒されたMCMBグラファイトは、処理中に金属粒子の分離を示さず、ポリマーが使用されない手法(従来技術)と比較して接着が大幅に改善されたことを示す。触媒層のより良好な接着により、この材料上に堆積された銅被覆(図6C~6F)は、ポリマー層を有さないMCMBグラファイト(図6B)よりも著しく連続的であり、結節性が少なかった。しかしながら、図6C及び6Dの銅堆積物は、依然としてやや不連続であり、結節状の表面形態を有していた。抑制剤(例:ベンゾトリアゾール、「BTA」)と促進剤(3-(メルカプトプロピル)スルホン酸ナトリウム、「MPS」)をそれぞれ1~50ppm加えると、この結節成長を抑制し、画像6E及び6Fに示すように、均一な表面形態の完全に連続した銅被覆が得られる。約2m/gの元の粉末の比表面積と約12wt%の銅含有量に基づいて、この銅層の厚さは約150nmと計算された。
【0099】
図7に移ると、本開示の1つ以上の実施形態に係る、ポリマー及び導電性金属で被覆された電気化学的活性電極材料の例示的な二次粒子の断面図の概略700が示される。特に、図7は、図1A~5で上述した被覆及び/又はメタライゼーション方法の1つ又は複数を用いてその材料が上記の構成要素で被覆されている場合、電気化学的活性電極材料の二次粒子上のポリマー被覆、触媒、及び導電性金属被覆の構造、形態、及び層状化の例を示している。
【0100】
図7は、金属被覆活性電極材料粉末110の例示的な二次粒子の断面図の概略図を示す。金属被覆活性電極材料粉末110は、図1A及び/又は1Bで上述した電気化学的活性電極材料102と同じ又は同様な電気化学的活性電極材料702を含む。従って、電気化学的活性電極材料702は、例えば、グラファイトを含むことができる。電気化学的活性電極材料は、2つの層で被覆されてもよい:電気化学的活性電極材料702の外面705と金属被覆706との間に位置するポリマー被覆704である。ポリマー被覆704は、ポリマー(例えば、芳香族ポリイミド)を含み、金属被覆706は、導電性金属(例えば、銅)を含む。図7の例から分かるように、ポリマー被覆704及び金属被覆706は、完全に連続的であり、厚さが実質的に均一であり得る。従って、ポリマー被覆704は、電気化学的活性電極材料702の二次粒子の外面705の周りで完全に連続的であり得る(外面705の全てを完全に覆う)。2つの被覆704及び706は同じ厚さを有するものとして示されているが、他の例では、被覆704及び706の厚さは互いに異なり得ることを理解されたい。ポリマー被覆704の厚さは、50~200nmの間であり得る。金属被覆706の厚さは、150nm未満であってもよく、75~150nmの間であってもよい。
【0101】
図1A~1B及び3~4Bで上述したように、触媒がポリマー被覆704に適用され得、次いで低温熱処理408(例えば、図4A及び4Bで上述したように250~300℃)が、触媒粒子708をポリマー被覆704に固定/アニールすることができる。図7に示されるように、触媒粒子708(例えば、銀粒子)は、ポリマー被覆704内に突出し得るが、電気化学的活性電極材料702内に突出又は延在しない。従って、触媒粒子708は、触媒をポリマー被覆704に適用し、加熱するプロセスの間にポリマー被覆704中に埋め込まれる。触媒粒子708はまた、金属被覆706内に突出し得る。電気化学的活性電極材料702のポリマー被覆704の表面上の触媒粒子708の面密度は、約500~10,000粒子/μmであり得る。
【0102】
示されるように、金属被覆706は、ポリマー被覆704及び触媒粒子708の周りで完全に連続的であり得る。すなわち、金属被覆706は、触媒粒子708及び触媒粒子708で覆われていないポリマー被覆704の全ての外向き表面を完全に覆い得る。
【0103】
図8に続くと、本開示の1つ以上の実施形態に係る、導電性金属で被覆された電気化学的活性材料を有する電極を含むリチウムイオン電池セルの例示的な試験データを報告するグラフ800が示される。特に、電極は、Cu被覆されたMCMB(図8のプロット802として示される)及び未修整のMCMB(プロット804及び806として示される図8の「制御(control)」)の両方を使用して準備された。両方の電極は、図1A及び図1Bで上述したのと同じ配合剤及び導電性添加剤を使用して、活物質スラリーを銅箔に適用することによって製造された。電極は、銅被覆の効果を分離するために、同じ面積容量と多孔性を持つように設計されている。リチウムフォイルに対して半分のセルを組み立て、異なるレートで放電した。10C(6分で完全放電)の速度では、Cu被覆されたMCMBは公称容量の約81%(プロット802)を放電できたが、「制御」は公称容量の約66%しか放電しなかった(プロット804及び806)。
【0104】
このように、電気化学的活性電極材料への触媒ナノ粒子のより良い均一性及び接着は、ここに開示される新規の形成メカニズムによって達成され得る。貴金属ナノ粒子が基板の表面で核生成される従来の方法とは異なり、この場合、ナノ粒子は、貴金属含浸ポリマーの大部分で均一に核生成する。そして、触媒ナノ粒子は合体して、ポリマーの表面に向かって移動し、自然に最密構造を形成する。貴金属イオンの吸着量は、ポリマー繰り返し単位の数に対して化学量論的であり、ポリマーの組成は均一であるため、触媒の面含有量は、ポリマー被覆の厚さに直接比例する。特に、電気化学的活性電極材料のポリマー被覆の表面上の触媒の面密度は、約500~10,000粒子/μmであり得る。
【0105】
従って、ポリマー被覆が連続的で均一である限り、触媒層は最密充填で均一になる。この最密充填触媒構造により、固有の欠陥がないため、理論上の最小厚さに近い連続被覆を作成できる。さらに、ポリマーには貴金属を捕捉する能力があるため、プロセスは基板の表面化学に影響されず、他の前処理を必要としない。
【0106】
ポリマーの大部分からその表面への触媒粒子の移動により、触媒粒子とポリマー内の絡み合いの間に強力な機械的インターロッキングがあり、触媒粒子とそれに続くELD金属被覆の接着が大幅に改善される。水性還元剤を使用して触媒粒子がポリマーの表面で核生成される場合、このタイプのインターロッキングは発生しない。優れた付着力により、ELDプロセスの化学反応と処理条件に対する触媒性能の感度が大幅に低下し、そのようなプロセスの開発と最適化が簡素化される。この低い感度は、先行技術と比較した場合、ELD反応中の3桁より高い固体含有量の使用を可能にし、それによりプロセスのスループットが高くなり、コストが低くなる。
【0107】
さらに、ポリマー被覆プロセス(図3)は、可塑剤を利用して、ポリマーのガラス転移温度を超えて温度を上げることなく、ミリングによる被覆の機械的減衰を可能にする。これにより、3%未満の含有量で完全に連続した均一なポリイミド被覆が得られる。さらに、凝集を制御するための添加剤を必要とせず、凝集がなく、主に水ベースである微粉末を生成する。さらに、このポリマー被覆プロセスは、高温又は高圧機器の使用を回避する。
【0108】
触媒プロセスは、ポリイミドの均一な組成と厚さ、及びポリイミドからの触媒粒子の均一な核形成により、触媒層のより良い均一性をもたらする。さらに、触媒プロセス(図4A及び4B)は、均一な核生成メカニズムに起因するポリマーの絡み合いによる触媒粒子の機械的インターロックにより、接着性が大幅に向上し、ポリイミドが十分なPMを捕捉するため、基板材料の表面化学に大きく依存しない。機能性。さらに、触媒プロセスは、パラジウムの使用を回避し、従来技術の方法よりも銀での収率が高い。
【0109】
さらに、ELDプロセス(図5)は、ポリマー被覆を使用しない方法よりも、処理条件、特に機械的ストレスに対する感度がはるかに低い。その結果、はるかに高い固体含有量が使用され、それにより、より少ない溶液量、ひいてはより小さな装置の使用を可能にし、資本及び運用コストの削減、並びに廃棄物の発生の減少をもたらす。さらに、添加剤を使用すると、結節成長が抑制され、被覆がより均一になる。
【0110】
このようにして、これらの方法で製造された金属被覆は、完全又はほぼ完全な連続性、約150nmの厚さを示し、約10wt%の固体含有量を使用して連続被覆を適用でき、表面形態が均一であるため、比表面積が低くなる。
【0111】
このようにして、活物質粉末に金属被覆を堆積させることによって製造された複合材料は、導電性金属被覆と体積容量の無視できる減少による高速放電能力の向上を示し、サイクル寿命、エネルギー密度、高速充電能力を向上させる可能性のある既存の電池設計に材料を組み込むことができる。
【0112】
粉体の表面にポリマーを被覆するためにここで説明されているプロセスは、大量の有機溶媒を使用しないという点で、先行技術よりも優れている。最初のポリマー適用は完全に水ベースであり、粉砕プロセスで使用される非溶媒はろ過によって分離され、プロセスにリサイクルされる。このリサイクルプロセスは、蒸発や凝縮などのエネルギー集約的なユニット操作を回避し、非溶媒の精製を必要としない。ここに記載されるプロセスはまた、高圧又は高温装置における揮発性有機化合物の使用を必要としない。
【0113】
このプロセスで製造された金属被覆は、150nm未満の厚さで完全な連続性と滑らかな表面形態を示す。その結果、連続金属被覆は、約10wt%未満の金属含有量で活物質粉末に堆積できる。これにより、活物質の重量エネルギー貯蔵容量がわずかに減少するが、金属被覆の厚さが薄く密度が高いため、容積容量の減少は無視できる。従って、このプロセスを使用した活物質の表面改質は、性能が向上した材料を製造するために実行可能である。例えば、MCMBグラファイトの10Cでの放電能力は、銅の被覆の結果として23%増加したが、容量には大きな影響はなかった。
【0114】
ここに示され説明されたものに加えて、本発明の様々な修正は、上記の説明の当業者には明らかであろう。このような修正はまた、添付の特許請求の範囲内にあることが意図されている。前述の説明は、本発明の特定の実施形態の例示であるが、その実施に対する制限を意味するものではない。前述の議論は例示として理解されるべきであり、いかなる意味においても限定と見なされるべきではない。本発明は、その好ましい実施形態を参照して特に示され説明されてきたが、当業者には、請求項によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更が行われ得ることが理解されよう。以下の請求項における全ての手段又はステップ及び機能要素の対応する構造、材料、動作及び同等物は、特に請求される他の請求される要素と組み合わせて機能を実行するための任意の構造、材料又は動作を含むことが意図される。
【0115】
最後に、上記の物品、システム、及び方法は、本開示の実施形態であり、多数の変形及び拡張が同様に企図される非限定的な例であることが理解されよう。従って、本開示は、ここに開示される物品、システム、及び方法の全ての新規かつ非自明な組み合わせ及び部分的な組み合わせ、並びにそれらの任意の及び全ての均等物を含む。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8