(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】衝突性能が改善された湾曲カバーガラスを有する車両内装システム及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20220802BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20220802BHJP
C03B 23/023 20060101ALI20220802BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G09F9/00 313
C03C21/00 101
C03B23/023
B60R11/02 C
G09F9/00 362
G09F9/00 350Z
(21)【出願番号】P 2020515260
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 US2018050900
(87)【国際公開番号】W WO2019055667
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-09-10
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ブラック,マシュー リー
(72)【発明者】
【氏名】クリアリー,トーマス マイケル
(72)【発明者】
【氏名】コールマン,ショーン パトリック
(72)【発明者】
【氏名】フェントン,ホープ マリー
(72)【発明者】
【氏名】ニッカーボッカー,ワード タイソン
(72)【発明者】
【氏名】クマール,アチュール
(72)【発明者】
【氏名】メルウィー,エリアス
(72)【発明者】
【氏名】モウ,ジンファー
(72)【発明者】
【氏名】スゥン,ヤーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,チュンハァ
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-529611(JP,A)
【文献】特開2006-323158(JP,A)
【文献】特表2018-528912(JP,A)
【文献】特表2018-528116(JP,A)
【文献】特表2019-501052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
C03C 21/00
C03B 23/023
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内装システムであって、
前記車両内装システムは:
湾曲面を備えるベースと;
ガラス基板であって、前記ガラス基板は、第1の主面、第2の主面、前記第1の主面と前記第2の主面とを接続する副面、及び0.05mm~2mmの厚さを備え、前記第2の主面は、500mm以上である第1の曲率半径を有する、ガラス基板と;
前記湾曲面上に配置される任意のディスプレイであって、前記ディスプレイは、前記ガラス基板の前記第2の主面に取り付けられるディスプレイモジュールを備える、ディスプレイと
を備え、
質量が6.8kgのインパクタが衝突速度5.35m/s~6.69m/sで前記第1の主面に衝突するとき、前記インパクタの減速は120g(g力)以下であり、
前記ガラス基板の少なくとも1つの縁部領域は、縁部衝突性能の改善のために強化される、車両内装システム。
【請求項2】
前記インパクタの前記減速は、前記衝突の時間全体にわたるいずれの3msの間隔に関して80g以下である、請求項1に記載の車両内装システム。
【請求項3】
前記縁部領域は、#400グリット又は#600グリットより微細なグリットサイズの研削ツールによって達成される、研削された縁部を備え、前記研削された縁部は任意に、#1000グリット又は#1500グリットより微細なグリットサイズの研削ツールで更に研削される、請求項1又は2に記載の車両内装システム。
【請求項4】
前記研削された縁部は、イオン交換によって更に強化されるか、又はウェット酸エッチングで縁部損傷を除去することにより更に強化され、かつイオン交換によって更に強化される、請求項3に記載の車両内装システム。
【請求項5】
前記ガラス基板を前記ベースに接着する接着剤を更に備え、前記接着剤のヤング率は300MPa以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両内装システム。
【請求項6】
前記第1の主面に前記インパクタが衝突した場合に、前記ガラス基板は破壊されない、又は破断しない、請求項1~5のいずれか1項に記載の車両内装システム。
【請求項7】
前記ガラス基板は、前記ガラス基板のガラス転移温度未満の温度で、前記ベースに一致するように冷間形成された状態であり、
前記第2の主面は、前記接着剤によって前記ベースに取り付けられ、
前記第2の主面は、前記ベースの前記湾曲面に対応する第1の曲率半径を有し、
前記冷間形成された状態において、前記ガラス基板は、前記ガラス基板の破砕性の改善のための所定の値未満の貯蔵内部引張エネルギを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の車両内装システム。
【請求項8】
前記第1の主面は、前記ガラス基板の前記第1の曲率半径を有する領域において前記貯蔵内部引張エネルギが前記所定の値未満となるような、圧縮応力及び層深さ(DOL)を有する、請求項7に記載の車両内装システム。
【請求項9】
前記ベースを車両内に設置するための設置機構を備え、
前記ベースと前記ガラス基板との組み合わせは、第1の剛度K1を有し、
前記設置機構は、前記車両内装システムの侵入を所望の最大侵入レベルに制限する第2の剛度K2を有し、
前記車両内装システムは、以下:
Ks=(K1×K2)/(K1+K2)
として定義されるシステム剛度Ksを有し、
前記システム剛度Ksは、前記ガラス基板が前記インパクタの衝突によって破断しない範囲内である、請求項1~8のいずれか1項に記載の車両内装システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の車両内装システムを作製する方法であって、
前記方法は:
第1の曲率半径を有する表面を備えるベースを提供するステップ;
ガラス基板を化学強化して、前記ガラス基板の厚さ及び前記ガラス基板の所望の最小曲率半径に基づく、所望のイオン交換プロファイルを達成するステップ;並びに
前記ベースの前記表面に一致するように前記ガラス基板を曲げるステップ
を含み、
前記曲げるステップは、前記ガラス基板のガラス転移温度未満の温度で実施され、前記ガラス基板は、前記ガラス基板の前記所望の最小曲率半径より大きな曲率半径を有し、
前記ガラス基板は、前記曲げるステップの後、所定のエネルギ量未満の貯蔵内部引張エネルギを有し、前記所定のエネルギ量は、前記ガラス基板の前記厚さ、前記ガラス基板の圧縮応力、前記ガラス基板の層深さ、及び前記所望の最小曲率半径の関数であり、
前記所定のエネルギ量未満において、前記ガラス基板は改善された破砕性を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下で、2017年9月13日出願の米国仮特許出願第62/558,341号、2017年12月1日出願の米国仮特許出願第62/593,553号、及び2018年5月16日出願の米国仮特許出願第62/672,123号の優先権の利益を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は依拠され、参照によりその全体が本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ガラスを含む車両内装システム、及びその形成方法に関し、より詳細には、冷間形成又は冷間曲げを施されたカバーガラスを含み、かつ改善された衝突性能を有する車両内装システム、及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
車両内装は湾曲面を含み、このような湾曲面にディスプレイ及び/又はタッチパネルを組み込むことができる。このような湾曲面の形成に使用される材料は典型的にはポリマーに限られているが、これは、ガラスの耐久性及び光学的性能を示さない。従って、特にディスプレイ及び/又はタッチパネル用のカバーとして使用する場合には、湾曲ガラス基板が望ましい。このような湾曲ガラス基板を形成する既存の方法、例えば熱形成は、高コスト、光学歪み、及び表面の痕跡を含む欠点を有している。更に、例えばガラスを破壊するのに十分な力でガラスへの衝突が発生した場合(これは人間の皮膚を切り裂くことができるガラスの破片を生成する恐れがある)の、既存のガラスディスプレイにおいては、運転手及び乗客の安全も懸念事項である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、出願人は、コスト効率が高い方法で、またガラスの熱形成プロセスに通常関連する問題を伴わずに、そして業界標準の安全性試験及び規制に合格するための機械的性能も有しながら、湾曲ガラス基板を組み込むことができる車両内装システムの必要を認識している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様は、車両内装システムに関する。1つ以上の実施形態では、上記車両内装システムは、湾曲面を有するベースと、上記ベース上に配置されたガラス基板をと含む。上記ガラス基板は、第1の主面、第2の主面、及び上記第1の主面と上記第2の主面とを接続する副面を有する。上記ガラス基板の厚さは0.05mm~2mmであり、上記第2の主面は、1つ以上の実施形態によると500mm以上である第1の曲率半径を含む。上記車両内装システムの1つ以上の実施形態によると、質量が6.8kgのインパクタが衝突速度5.35m/s~6.69m/sで上記第1の主面に衝突するとき、上記インパクタの減速は120g(g力)以下である。上記インパクタの上記減速は、上記衝突の時間全体にわたるいずれの3msの間隔に関して80g以下である。上記ガラス基板の上記第1の主面と上記第2の主面との間で測定された最大厚さは、1つ以上の実施形態では1.5mm以下であり、いくつかの実施形態では0.3mm~0.7mmである。上記ガラス基板は、1つ以上の実施形態では、化学強化ガラス、並びに上記ガラス基板の上記第1の主面上に配置された防眩性コーティング、反射防止コーティング、及び清掃容易化コーティングのうちの少なくとも1つである。1つ以上の実施形態では、上記車両内装システムは、上記湾曲面上に配置されたディスプレイを含み、上記ディスプレイは、上記ガラス基板の上記第2の主面に取り付けられたディスプレイモジュールを含む。上記車両内装システムは、上記ガラス基板を上記ベースに接着する接着剤を含む。いくつかの実施形態では、上記ガラス基板は、縁部衝突性能の改善のために強化された、少なくとも1つの縁部領域を含む。
【0006】
本開示の別の態様は、車両内装システムの作製方法に関する。1つ以上の実施形態では、上記方法は、ガラス基板を、上記ガラス基板のガラス転移温度未満の温度で湾曲させるステップを含む。他の実施形態では、上記方法は、上記ガラス基板を、上記ガラス基板のガラス転移温度を超える温度で湾曲させるステップを含む。いくつかの実施形態の上記方法は、基板を上記ガラス基板で湾曲させるステップを更に含む。
【0007】
本開示の他の態様は、ベース及びガラス基板を含む車両内装システム、並びに上記車両内装システムの設計方法に関する。1つ以上の実施形態によると、上記車両内装システムは、上記ガラス基板が、冷間形成済み状態において、上記ガラス基板の破砕性の改善のために、所定の値未満の貯蔵内部引張エネルギを有するように、設計される。上記貯蔵内部引張エネルギの上記所定の値未満では、上記車両内装システムのディスプレイは、上記ガラス基板が破断された後でも、視聴者が読み取ることができる状態のままである。
【0008】
本開示の別の態様は:湾曲面を有するベース;上記ベースを車両内に設置するための設置機構;並びに第1の主面、第2の主面、及び上記第1の主面と上記第2の主面とを接続する副面を有するガラス基板を含む、車両内装システムに関し、上記第2の主面は上記ベースに取り付けられ、第1の曲率半径を有する。上記設置機構は、設置用ブラケット又はクランプを含むことができる。1つ以上の実施形態では、質量が6.8kgのインパクタが衝突速度5.35m/s~6.69m/sで上記第1の主面に衝突するとき、上記インパクタの減速は120g(g力)以下である。1つ以上の実施形態によると、上記ベースと上記ガラス基板との組み合わせは第1の剛度K1を有し、上記設置機構は、上記車両内装システムの侵入を所望の最大侵入(intrusion)レベルに制限する第2の剛度K2を有する。上記車両内装システムは、Ks=(K1×K2)/(K1+K2)として定義されるシステム剛度Ksを有する。1つ以上の実施形態によると、上記システム剛度Ksは、上記ガラス基板が上記インパクタの上記衝突によって破断されない範囲内である。
【0009】
更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、またその一部は、「発明を実施するための形態」から当業者には容易に明らかになるか、又は以下の「発明を実施するための形態」、特許請求の範囲、及び添付の図面を含む本明細書に記載されているような実施形態を実践することにより、当業者には容易に理解されるだろう。
【0010】
上述の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」は単なる例示であり、請求項の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。図面は1つ以上の実施形態を図示しており、本説明と併せて、様々な実施形態の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】1つ以上の実施形態による、車両内装システムを用いた車両内装の斜視図
【
図2】1つ以上の実施形態による、車両内装システムの正面平面図
【
図3】1つ以上の実施形態による、湾曲ガラス基板の図
【
図4】
図3の湾曲ガラス基板の、湾曲させられる前の側面図
【
図5】1つ以上の実施形態による、湾曲ガラス基板の斜視図
【
図6】1つ以上の実施形態による、積層構造体の側面図
【
図7A】1つ以上の実施形態による、ディスプレイユニットのヘッドフォーム衝突試験に関する実験セットアップの斜視図
【
図7B】1つ以上の実施形態による、ディスプレイユニットのヘッドフォーム衝突試験に関する実験セットアップの斜視図
【
図7C】1つ以上の実施形態による、ディスプレイユニットのヘッドフォーム衝突試験に関する実験セットアップの斜視図
【
図8】1つ以上の実施形態による、ディスプレイユニットのヘッドフォーム衝突試験に関する別の実験セットアップの斜視図
【
図9】ある実施形態による、強化縁部を有するガラス基板を形成するプロセスのフローチャート
【
図10】別の実施形態による、強化縁部を有するガラス基板を形成するプロセスのフローチャート
【
図11】別の実施形態による、強化縁部を有するガラス基板を形成するプロセスのフローチャート
【
図12】別の実施形態による、強化縁部を有するガラス基板を形成するプロセスのフローチャート
【
図13】別の実施形態による、強化縁部を有するガラス基板を形成するプロセスのフローチャート
【
図14】衝突時に破損する組立体のガラス基板の縁部に対するHITの断面図
【
図15】本開示のいくつかの実施形態による、ガラス基板の縁部に対するHITの断面図
【
図16】
図15の組立体の縁部に対して実施したHITの実験セットアップの等角図
【
図17】組立体の(a)ガラス基板の中央、及び(b)ガラス基板の縁部に対してボール落下試験を実施するための実験セットアップの等角図
【
図19】1つ以上の実施形態による、低摩擦コーティングを有する基板の側面図
【
図20】ある実施形態による、異なる複数のタイプのガラス基板の破壊パターンの写真
【
図21】1つ以上の実施形態による、ヘッドフォーム衝突試験で使用した2片のクロスの裂けを示す写真
【
図22A】1つ以上の実施形態による、車両内装組立体の側面図
【
図22B】1つ以上の実施形態による、車両内装組立体の側面図
【
図22C】1つ以上の実施形態による、車両内装組立体の側面図
【
図22D】1つ以上の実施形態による、車両内装組立体の側面図
【
図22E】1つ以上の実施形態による、車両内装組立体の側面図
【
図23】1つ以上の実施形態による、ガラス基板のイオン交換プロファイルのグラフ
【
図24】1つ以上の実施形態による、ヘッドフォーム衝突試験による粒子の放出を観察するための実験の図、並びにこのような実験の結果の表及び写真
【
図25】車両内装ディスプレイの異なる複数の視野角の例
【
図26A】1つ以上の実施形態による、破断された、曲率半径が1000mmのガラス基板の1つの斜視図を示す写真
【
図26B】1つ以上の実施形態による、破断された、曲率半径が1000mmのガラス基板の別の斜視図を示す写真
【
図26C】1つ以上の実施形態による、破断された、曲率半径が1000mmのガラス基板のさらに別の斜視図を示す写真
【
図27A】1つ以上の実施形態による、破断された、曲率半径が500mmのガラス基板の1つの斜視図を示す写真
【
図27B】1つ以上の実施形態による、破断された、曲率半径が500mmのガラス基板の別の斜視図を示す写真
【
図27C】1つ以上の実施形態による、破断された、曲率半径が500mmのガラス基板のさらに別の斜視図を示す写真
【
図28A】1つ以上の実施形態による、破断された、曲率半径が250mmのガラス基板の1つの斜視図を示す写真
【
図28B】1つ以上の実施形態による、破断された、曲率半径が250mmのガラス基板の別の斜視図を示す写真
【
図28C】1つ以上の実施形態による、破断された、曲率半径が250mmのガラス基板のさらに別の斜視図を示す写真
【
図29】1つ以上の実施形態による、破断されたガラス基板による潜在的な読み取り可能性及び裂傷のリスクを示す一連の図
【
図30A】1つ以上の実施形態による、異なる複数のガラス基板の破断パターンを示す実験の結果の写真
【
図30B】1つ以上の実施形態による、異なる複数のガラス基板の裂傷可能性を示す実験の結果の写真
【
図31A】1つ以上の実施形態による、異なる複数のガラス基板の破断パターンを示す実験の結果の写真
【
図31B】1つ以上の実施形態による、異なる複数のガラス基板の裂傷可能性を示す実験の結果の写真
【
図32A】1つ以上の実施形態による、異なる複数のガラス基板の破断パターンを示す実験の結果の写真
【
図32B】1つ以上の実施形態による、異なる複数のガラス基板の裂傷可能性を示す実験の結果の写真
【
図33】1つ以上の実施形態による、厚さ0.7mmの様々なガラス基板の貯蔵エネルギ値の表
【
図34】1つ以上の実施形態による、厚さ0.55mmの様々なガラス基板の貯蔵エネルギ値の表
【
図35】1つ以上の実施形態による、厚さ0.4mmの様々なガラス基板の貯蔵エネルギ値の表
【
図36】1つ以上の実施形態による、厚さ0.7mmの様々なガラス基板の二乗応力積分の表
【
図37】1つ以上の実施形態による、厚さ0.55mmの様々なガラス基板の二乗応力積分の表
【
図38】1つ以上の実施形態による、厚さ0.4mmの様々なガラス基板の二乗応力積分の表
【
図39】1つ以上の実施形態による、ガラス基板の貯蔵引張エネルギ及び二乗応力積分の例示的な計算
【
図40】1つ以上の実施形態による、車両内装組立体のための実験セットアップの側面図
【
図41】1つ以上の実施形態による、車両内装組立体の剛度を示す概略図
【
図42】1つ以上の実施形態による、ヘッドフォーム衝突試験からのデータのグラフ
【
図43】1つ以上の実施形態による、車両内装組立体の異なる剛度値間の関係のグラフ
【
図44】1つ以上の実施形態による、車両内装組立体の異なる剛度値間の関係の別のグラフ
【
図45】1つ以上の実施形態による、車両内装組立体に関する剛度の好ましい範囲のグラフ
【
図46】1つ以上の実施形態による、車両内装組立体の設計方法のフローチャート
【
図47A】1つ以上の実施形態による、ヘッドフォーム衝突試験中の裂傷に関する実験から得られた写真及び結果のデータ
【
図47B】1つ以上の実施形態による、ヘッドフォーム衝突試験中の裂傷に関する実験から得られた写真及び結果のデータ
【
図47C】1つ以上の実施形態による、ヘッドフォーム衝突試験中の裂傷に関する実験から得られた写真及び結果のデータ
【
図47D】1つ以上の実施形態による、ヘッドフォーム衝突試験中の裂傷に関する実験から得られた写真及び結果のデータ
【発明を実施するための形態】
【0012】
これより、様々な実施形態を詳細に参照する。これらの実施形態の例は、添付の図面に図示されている。一般に、車両内装システムは、透明となるように設計された多様な異なる湾曲面、例えば湾曲ディスプレイ表面を含んでよく、本開示は、これらの湾曲面をガラス材料から形成するための物品及び方法に関する。湾曲した車両の表面をガラス材料から形成すると、従来の車両の内装に見られる典型的な湾曲プラスチックパネルに比べて多数の利点を提供できる。例えば、ガラスは典型的には、ディスプレイ用途及びタッチスクリーン用途といった多数の湾曲カバー材料の用途に関して、プラスチックカバー材料に比べて改善された機能性及びユーザ体験を提供すると考えられる。
【0013】
ガラスはこれらの利点を提供しながら、車両内装のガラス表面はまた、乗客の安全及び使用の容易さの両方に関して、性能基準を満たさなければならない。例えば、ある特定の規制(例えばECE R 21及びFMVSS201)は、車両内装がヘッドフォーム衝突試験(ヘッドフォーム Impact Test:HIT)に合格することを要求している。HITは、ディスプレイといった車両内装の構成部品を、ある特定の具体的条件下において、ある質量による衝突に供することを含む。使用する質量は、人体の頭部を模したヘッドフォームである。HITは、車両内装の構成部品に対する運転手又は乗客の頭部の衝突をシミュレートすることを意図したものである。試験の合格基準としては、ヘッドフォームの減速の力が、3msを超える期間にわたって80g(g力)を超えないこと、及びヘッドフォームのピーク減速が120g未満であることが挙げられる。HITの文脈で使用される場合、「減速(deceleration)」は、ヘッドフォームが車両内装の構成部品によって停止させられる際の、ヘッドフォームの減速を指す。これらの規制の要件の他に、これらの条件下でガラスを使用する場合には更なる懸念事項が存在する。例えば、HITによる衝突に供する際、ガラスは無傷のまま破断されないことが望ましい。場合によっては、ガラスの破断が許容される場合もあるが、破断されたガラスは、実物の人間の頭を切り裂く可能性を低減するような挙動を示す必要がある。HITでは、裂傷の可能性は、人間の皮膚を表現する代替材料、例えば布地、皮革、又は他の材料でヘッドフォームを包むことでシミュレートできる。このようにして、この代替材料に形成された裂け又は孔に基づいて、裂傷の可能性を推定できる。よって、ガラスが破断される場合には、ガラスがどのように破断されるかを制御することによって、裂傷の可能性を低減することが望ましい。
【0014】
出願人の知る限り、平坦なガラスが曲げられた(これ以降、冷間曲げ(cold bending)、冷間形成(cold formed)、及び/又は冷間曲げ(cold bent)と呼ばれる)状態で所定の位置に保持される自動車内装用途で、このような製品は販売されていない。車両内部のガラスに関する現在の状況は、平坦なガラス、又は複数の欠点を有する熱間形成プロセスを用いて極めて大きな曲げ半径(>1000mm)まで曲げられたガラスに限られていた。例えばソーダライムガラスはHITの結果破断されることがあり、従って裂傷を引き起こす恐れがある。プラスチックは破断又は裂傷を発生させない可能性があるものの、擦過傷を容易に発生させ、ディスプレイの品質を劣化させる。現行の湾曲ガラス物品は典型的には、これらの熱間形成プロセスを用いて形成され、これらは複数の欠点を有する。例えば、熱間形成プロセスはエネルギ集約的であり、本明細書に記載の冷間曲げプロセスに比べて、湾曲ガラス構成部品の形成のコストを増大させる。更に、典型的には、熱間形成プロセスにより、反射防止コーティングといったガラスコーティング層の適用が大幅に困難になる。例えば、多くのコーティング材料は、熱間形成プロセスの前にガラス材料の平坦な辺に適用できない。というのは、コーティング材料は典型的には、熱間形成プロセスの高温に耐えられないためである。更に、熱間曲げの後でコーティング材料を湾曲ガラス基板の表面に適用するのは、平坦なガラス基板に対する適用よりも大幅に困難である。更に、出願人は、熱形成に必要な上述の追加の高温加熱ステップを回避することにより、本明細書に記載の冷間形成プロセス及びシステムによって製造されるガラス物品は、熱成形プロセスで作製された同様の形状のガラスに比べて改善された光学特性及び/又は改善された表面特性を有すると考えている。しかしながら、本明細書に記載の実施形態の特定の態様は、熱間形成されたガラスにも同様に適用可能となり得る。
【0015】
本出願の第1の態様は、車両内装システムに関する。車両内装システムの様々な実施形態は、列車、自動車(例えば乗用車、トラック、バス等)、船舶(ボート、船、潜水艦等)、及び航空機(例えばドローン、飛行機、ジェット機、ヘリコプター等)といった車両に組み込むことができる。
【0016】
図1は、車両内装システム100、200、300の3つの異なる実施形態を含む例示的な車両内装10を示す。車両内装システム100は、湾曲ディスプレイ130を含む湾曲面120を有する中央コンソールベース110を含む。車両内装システム200は、湾曲ディスプレイ230を含む湾曲面220を有するダッシュボードベース210を含む。ダッシュボードベース210は典型的には機器パネル215を含み、これもまた湾曲ディスプレイを含んでよい。車両内装システム300は、湾曲面320と、湾曲ディスプレイ330と有する、ダッシュボードステアリングホイールベース310を含む。1つ以上の実施形態では、車両内装システムは、アームレスト、ピラー、背もたれ、床板、ヘッドレスト、ドアパネル、又は湾曲面を含む車両の内装のいずれの部分である、ベースを含んでよい。
【0017】
本明細書に記載の湾曲ディスプレイの実施形態は、車両内装システム100、200、及び300それぞれにおいて相互交換可能に使用できる。更に、本明細書に記載の湾曲ガラス物品は、車両内装システム100、200、及び/又は300で使用するためのものを含む、本明細書に記載の湾曲ディスプレイの実施形態のうちのいずれのための湾曲カバーガラスとして使用できる。
【0018】
図2に示すように、1つ以上の実施形態では、湾曲ディスプレイ130は、ガラス基板140とディスプレイモジュール150との間の接着剤又は接着層160を含む。接着剤は光学的に透明であってよい。いくつかの実施形態では、接着剤は、ガラス基板140及び/又はディスプレイモジュール150の一部分に配置される。例えば、ガラス基板は、内部部分を画定する、副面に隣接する外周を含んでよく、接着剤はこの外周の少なくとも一部分に配置できる。接着剤の厚さを調整することで、ディスプレイモジュール150(より詳細には第2のガラス基板)とガラス基板140との間の積層を保証できる。例えば、接着剤の厚さは約1mm以下であってよい。いくつかの実施形態では、接着剤の厚さは、約200μm~約500μm、約225μm~約500μm、約250μm~約500μm、約275μm~約500μm、約300μm~約500μm、約325μm~約500μm、約350μm~約500μm、約375μm~約500μm、約400μm~約500μm、約200μm~約475μm、約200μm~約450μm、約200μm~約425μm、約200μm~約400μm、約200μm~約375μm、約200μm~約350μm、約200μm~約325μm、約200μm~約300μm、又は約225μm~約275μmである。
【0019】
図4を参照すると、ガラス基板150は、第1の主面152、及び上記第1の主面の反対側の第2の主面154を含む。副面156は、第1の主面152と第2の主面154とを接続し、ガラス基板150の厚さtは、第1の主面152と第2の主面154との間の距離として定義される。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「冷間曲げ(cold‐bent、cold‐bending)」、「冷間形成された(cold‐formed)」又は「冷間形成(cold‐forming)」は、ガラス基板を、(本明細書に記載の)ガラスの軟化点未満の冷間形成温度で湾曲させることを指す。冷間形成されたガラス基板の特徴は、第1の主面152と第2の主面154との間の非対称な表面圧縮応力である。1つ以上の実施形態では、冷間形成プロセスの前又は冷間形成の前、ガラス基板の第1の主面152及び第2の主面154それぞれの圧縮応力は略等しい。ガラス基板が強化されていない1つ以上の実施形態では、第1の主面152及び第2の主面154は、冷間形成の前には明らかな圧縮応力を示さない。ガラス基板が(本明細書に記載されているように)強化されている1つ以上の実施形態では、第1の主面152及び第2の主面154は、冷間形成の前に、互いに略等しい圧縮応力を示す。1つ以上の実施形態では、冷間形成後、曲げの後で凹状の形状を有する表面の圧縮応力が増大する。換言すれば、凹面の圧縮応力は、冷間形成前よりも冷間形成後の方が大きい。理論によって束縛されるものではないが、冷間形成プロセスは、成形されているガラス基板の圧縮応力を増大させることにより、曲げ及び/又は形成操作中に付与される引張応力を補償する。1つ以上の実施形態では、冷間形成プロセスにより凹面は圧縮応力を受けるが、冷間形成後に凸状の形状を形成する表面は引張応力を受ける。凸面が冷間形成の後に受ける引張応力は、表面圧縮応力の正味量の低減をもたらし、これにより、冷間形成の後の強化済みガラスシートの凸面の圧縮応力は、ガラスシートが平坦であるときの該表面の圧縮応力未満となる。
【0021】
強化ガラス基板を利用する場合、第1の主面及び第2の主面(152、154)は既に圧縮応力下であるため、第1の主面は曲げ中に、破断のおそれなしに、より強い引張応力を受けることができる。これにより、強化ガラス基板は、よりきつい湾曲面に順応できる。
【0022】
図5に示すように、ガラス基板400は、ディスプレイを示すことを目的とした1つ以上の領域410を含むことができる。更に、いくつかの実施形態によるガラス基板は、ガラス基板の複数の領域において複数の方向に湾曲させることができる(即ちガラス基板は、平行であってもなくてもよい異なる複数の軸に関して湾曲させることができる)。従って、可能な実施形態の形状及び形態は、本明細書で図示されている例に限定されない。これは、本明細書に記載の複数の実施形態と共に使用できる湾曲カバーガラス基板の例である。これらの実施形態のガラス基板400は、複雑で柔軟な表面を有することができ、1つ以上の平坦面、円錐面、円筒面を含んでよく、またユーザとの接点となる面上に機能性コーティング(例えば防眩性及び/又は反射防止、並びに清掃容易化)を有してよい。ガラス基板はまた、装飾のためのコーティング(例えば黒色インク、1色及び/又は多色の色インク(これらはパターン及びイメージの形成に使用できる))を有することもできる。
【0023】
図6は、1つ以上の実施形態による車両内装システムの積層構造体420の断面図を示す。積層構造体は、ガラス基板422、追加の基板又は支持面426、及びガラス基板422と支持面426との間に配置された接着剤を含む。
図6では積層体420は平坦な構成で図示されているが、積層体420の複数の領域が湾曲していてもよいことを理解されたい。そのような場合、ガラス基板422の曲率半径は、支持面426の曲率半径に対応し得る。場合によっては、ガラス基板422の曲率半径は、支持面の曲率半径の約10%以内である。
【0024】
図7A~7Cを参照すると、ヘッドフォーム衝突試験(HIT)の設備及び構成の例が図示されている。この設備を用いて、本明細書に記載の実施形態の例を試験した。
図7A~7Cに示すように、ヘッドフォーム428を用いて、平坦面430、凹面432、又は凸面434を試験できる。
図8は、HIT設備及びセットアップの拡大図を示す。
図8では、ヘッドフォームは、ガラス基板が人間の皮膚に裂傷を引き起こす可能性を試験するために使用される布地材料436で包まれている。
【0025】
HITに使用されるガラス基板の1つの脆弱性は、縁部衝突性能である。縁部衝突性能とは、カバーガラスの縁部にヘッドフォームが当たったときに、車両内装の構成部品がHITに合格できる能力を指す。典型的なカバーガラスの縁部の強度は表面に比べて本来的に低いが、これは、縁部を形成する切断及び研削プロセス中に傷が形成されることを少なくとも部分的な理由とする。よって、車両内装のガラス材料のための既存の縁部加工方法は、十分な縁部強度を提供できない。縁部の性能によるこのような安全性に関する懸念を緩和するために、縁部は通常保護されているか、又は隠されている。しかしながらこれにより、ベゼルレスの(又はベゼルが最小限の)カバーガラスディスプレイのようなスタイリッシュなデザインの導入が制限される。ガラスの縁部の性能に関するこれらの課題にもかかわらず、規制及び車両製造は、安全性能を要求する。本開示の他の部分に記載されているように、関連する安全規制としては、米国運輸省の高速道路交通安全局が発行した連邦自動車安全基準(FMVSS)201、及び国連のECE‐R21が挙げられる。FMVSS201及びECE R21の規制には、衝突事故中の自動車内装の構成部品に関する要件が記載されている。これらの規制によると、「ヘッドフォーム衝突エリア内のある点に、15ポンド(6.80389kg)、直径6.5インチ(16.51cm)のヘッドフォームを、時速15マイル(24.1402km)の速度で衝突させる。ヘッドフォームの減速は、3ミリ秒(ms)超にわたって継続して80gを超えてはならない」。
【0026】
規制機関が採用する安全規制以外に、車両及び車両の構成部品設計者及び製造元は、追加の設計仕様又は試験を有する場合がある。これらの試験としては、例えば局所的な衝突をシミュレートするための、ガラス縁部に対するボール落下試験が挙げられる。また、関連する設計仕様としては、衝突事故中にカバーレンズが破壊されないようにすること、ただし破壊される場合(即ち壊滅的な破損の場合)には、車両の乗員を傷つける恐れがある大きな破片が生成されないようにすること、という自動車会社からの要望が挙げられる。
【0027】
消費者がより多くの、そしてより大型の車両内ディスプレイ及びガラス表面を望むことにより、HIT及び縁部衝突性能の改善の重要性は増しており、また増し続けるだろう。この要求は、自律走行車の出現によって更に大きくなる可能性がある。というのは、乗客が、対話式の表面や、移動中の外界との接続性を求めるようになるためである。更に、ディスプレイにおいては、ベゼルをより薄くする、又はベゼルを無くすというトレンドが既に存在しており、これはガラスの縁部の露出につながる。それにもかかわらず、これらの課題への既存の解決策は不十分である。例えば、カバーガラスに適用される保持フィルム(例えば粉砕防止フィルム)を用いて、破断中にガラスの粒子を一体に維持する。しかしながらこのようなフィルムの有効性は、縁部衝突試験中には低下する。その理由の一部は、保持フィルムがガラス縁部の厚さにわたって設けられていないことである。よって、縁部衝突性能の改善のためのシステム、方法、及び材料に対する需要は存在し続けている。従って、本明細書に記載の1つ以上の実施形態では、縁部衝突性能が改善された車両内装システムの製造方法を説明する。本明細書に記載のシステム及び方法は、湾曲した若しくは平坦なカバーガラス内装、及び/又は車両内装用途に使用される湾曲した若しくは平坦なディスプレイ組立体に関する。
【0028】
湾曲ガラス基板の場合、ガラスに、1つの軸に関する冷間曲げ(円筒状の曲げ)、又は複数の軸に関する冷間曲げを施し、また基板への接着または結合によって所定の形状に保持することが好ましく、その縁部は、強度の改善のために、本明細書に記載されるように加工される。縁部強度が改善されたこの湾曲カバーガラスアイテムは、縁部が強度の改善のために同様に加工された、熱間形成されたガラスとすることもできる。
【0029】
これらの方法のある実施形態の一例を
図9に示す。この方法によると、ガラスシートを提供し(S1)、所望のサイズに切断する(S2)。その後、研削ツールで縁部を研削する。研削のタイプは、ステップS3a~S3cに示されている異なる複数の選択肢から選択できる。ステップS3aでは、#400グリットの研削ツールを使用する。ステップS3aを選択する場合、プロセスは次にステップS5へと進むが、これはガラスシートのイオン交換プロセスである。最後に、ステップS6において縁部コーティングを適用できる。ステップS3bを選択する場合、#400グリットの研削ツールで縁部を研削した後、ガラスシートを、#600又は#800グリットを用いた縁部の更なる研削に供する。この更なる研削ステップの後、プロセスはステップS5及びS6に進む。ステップS3cを選択する場合、#400グリットの研削ツールで縁部を研削した後、ガラスシートを、#1000又は#1500グリットを用いた縁部の更なる研削に供する。この更なる研削ステップの後、プロセスは、上記と同様にステップS5及びS6に進む。
【0030】
図10及び11は、縁部性能を増強する方法の更なる実施形態を示す。
図10では、ステップS11~S13は、
図9のステップS1~S3に対応する。続いて、#1000グリット以上(例えば#1500又は#2000)を用いて更なる研削ステップを実施する。S14に続いて、ガラスシートをウェット酸エッチング(S15)に供し、その後イオン交換プロセス(S16)に供する。同様に、
図11では、ステップS21~S23は
図9のステップS1~S3に対応し、ステップS24は
図10のステップS14に対応する。次に、プラズマエッチングステップS25を実施する。最後にイオン交換ステップS26を実施する。
図10及び11の方法に、
図12及び13のステップS37及びS47が示すようなポリマー縁部コーティングを補足することもできる。
図12及び13のこれら以外のステップは、それぞれ
図10及び11のステップに対応する。1つ以上の実施形態では、縁部衝突性能を増強するこれらの方法は、カバーガラス/ディスプレイ組立体に剛性の接着剤を使用することを含むことができる。このような接着剤は、硬化後、例えば300MPa以上、又は800MPa以上のヤング率を有してよい。上述のウェット酸エッチングは、例えばHF、又はHF及びH
2SO
4を用いて実施できる。
【0031】
縁部衝突性能を改善するための上述の方法を用いて形成された車両内装システムが、HIT中に受ける衝突力は、比較的低くなる。従って、システム内で発生する応力が低減される。例えば使用される接着剤の剛度が高いほど、HITのヘッドフォームとの機械的接触中のガラス又は車両内装システムの曲げ応力は小さくなる。
【0032】
いくつかの実施形態では、高弾性率接着剤を用いて下層の基板に接着されたカバーガラスを含むシステムは、HITに合格でき、また車両内装に関する他の車両安全要件(例えば製造元による上述のガラス破壊安全性要件、又は他の規制)を満たすことができる。本明細書中で使用される場合、「高弾性率(high modulus)」は、高いヤング率、即ち車両内装内のガラスの用途において従来使用されているものよりも高いヤング率を指す。上述のように、このような接着剤は、硬化後、例えば300MPa以上、又は800MPa以上のヤング率を有してよい。「高弾性率」の意味は、以下で説明される実施例及び実施形態によって更に定義される。高弾性率接着剤を用いたこのようなシステムは、ガラス縁部に対する衝突が懸念事項である場合、例えばカバーガラスの縁部がベゼル又は他の何らかの手段で保護されていない場合に、有用かつ有効である。カバーガラスと基板との間に高弾性率接着剤を使用することにより、従来のシステムに比べて、縁部衝突性能の改善がもたらされる。例えば、本明細書に記載の高弾性率接着剤を使用することにより、ガラスの縁部に45°の角度で衝突が発生するHIT中のガラスの破断を防止しながら、3ms減速が80g未満であるという規制の基準を満たすことができる。高弾性率接着剤により、ガラスの傷の成長及び伝播が制限されるという予期せぬ良好な結果が達成されると考えられる。
【0033】
図14は、従来の接着剤を用いた従来のガラス‐接着剤‐基板に対して45°の角度で実施したヘッドフォーム衝突試験(HIT)の概略側面図である。具体的には、ガラス500は接着剤501によって、アルミニウムプレート等の基板502に接着される。基板はブラケット504に設置される。ヘッドフォーム506は、衝突点508においてガラス500の縁部に衝突する。衝突は、ヘッドフォーム506の方向Dが、ガラスの外側を向いた主面に対して45°となるように実施される。
図14は、ヘッドフォーム506による衝突時点、又はその直後のシステムを示す。図示されているように、ガラス500は衝突下で歪み(509)、これにより、ガラス500の縁部又はいずれかの主面に破断が生じる。ヘッドフォーム506の衝突前のブラケットアームの角度θは、90°である。低弾性率接着材料は、例えばVHBテープであってよい。低弾性率VHBテープとは対照的に、本開示の実施形態は、高弾性率接着剤又は高弾性率エポキシを使用する。
図16は、
図14の概略図に対応する実験セットアップの写真である。
図16のガラス表面のサイズは6インチ(15.74cm)×6インチ(15.74cm)であり、アルミニウムプレートのサイズは6インチ(15.74cm)×8インチ(20.32cm)である。
【0034】
対照的に、
図15は、高弾性率接着剤を用いた本開示のある実施形態を示す。
図14の従来の接着剤501は、接着剤511に比べて相対的に低い弾性率を有する。
図15では、ブラケット514上に設置された、ガラス510、高弾性率接着剤511、及び基板512(例えばアルミニウムプレート)には、衝突点518において、ガラス510の主面に対して45°である方向Dに移動するヘッドフォーム516が衝突する。しかしながら、ガラス510は
図14のように歪まず、ガラスの破損なしにHITに合格する。
【0035】
高弾性率接着剤を用いたシステムの例
高弾性率接着剤を用いた上述の実施形態の一例では、モジュールシステムを、厚さ1.1mmのカバーガラスを用いて開発した。使用したカバーガラスは、強化済みのアルカリアルミノシリケートガラス(例えばCorning Incorporated製のGorilla(登録商標)ガラス)であった。モジュールは、厚さ0.19インチ(4.826mm)のアルミニウムプレート(Al6061)も含んでいた。ハウジング組立体は、低炭素鉄鋼(厚さ0.125インチ(3.175mm))で作製された設置用ブラケットを内包していた。ガラス表面のサイズは6インチ(15.74cm)×6インチ(15.74cm)であり、アルミニウムプレートのサイズは6インチ(15.74cm)×8インチ(20.32cm)であった。モジュール及びハウジング組立体の剛度は、HIT中の3ms減速が80g未満となるように選択された。カバーガラスを、弾性率1.55GPaの高弾性率接着剤(例えばMasterbond EP21TDCHT‐LO Epoxy)を用いて、アルミニウムプレート上に積層した。カバーガラスの縁部を、アルミニウムプレートの縁部に対して面一になるように整列させた。これにより、ヘッドフォーム衝突試験を、ガラスの縁部に対して、45°の角度で実施することが可能となる。試験は、試験中にヘッドフォームがガラスの縁部に衝突するように実施した。結果は、3ms減速、最大減速、及び侵入がそれぞれ46.3g、101.7g、及び45.7mmであった。更に、カバーガラスは試験中に破壊されなかった。理論によって束縛されることを望むものではないが、高弾性率構造接着剤は、傷の成長又は伝播を強く制限し、これによって予想外に良好な縁部衝突性能がもたらされると考えられる。更に、接着剤は、ガラスの歪みの最小化を支援することにより、ガラス縁部及びガラスのいずれかの主面における破断を回避する。
【0036】
表1は、
図16中の上述のセットアップに対応するセットアップでの、例1~6に関する構成及び実験結果をまとめたものである。試験基準はFMVSS201及びECE‐R21に従った。これらの規制によると、「ヘッドフォーム衝突エリア内のある点に、15ポンド(6.80389kg)、直径6.5インチ(16.51cm)のヘッドフォームを、時速15マイル(24.1402km)の速度で衝突させる。ヘッドフォームの減速は、3ミリ秒(ms)超にわたって継続して80gを超えてはならない」。
【0037】
【0038】
表1では、実施例1(比較例)は、標準的な縁部仕上げ(#400グリット)を施した「Gorilla」ガラスと、カバーガラスを0.19インチ(4.826mm)Alプレートに積層するための3M VHB 4952(厚さ1.1mm)構造接着剤とを使用した。3ms減速、ピーク減速、及び侵入は、それぞれ45.1g、65.5g、及び49.5mmであった。カバーガラスは試験中に破断した。
【0039】
実施例2(比較例)では、より微細な縁部仕上げ(#1500)を施した「Gorilla」ガラスを使用し、3M VHB 4952(厚さ1.1mm)構造接着剤を利用して、カバーガラスを0.125インチ(3.175mm)Alプレートに積層した。3ms減速、ピーク減速、及び侵入は、それぞれ42.1g、49.5g、及び59.4mmであった。カバーガラスは試験中に破断した。
【0040】
実施例3(比較例)では、標準的な縁部仕上げ(#400)を施した「Gorilla」ガラスを使用し、3M VHB 5909(厚さ0.3mm)構造接着剤を利用して、カバーガラスを0.19インチ(4.826mm)Alプレートに積層した。3ms減速、ピーク減速、及び侵入は、それぞれ45.5g、90.8g、及び48.2mmであった。カバーガラスは試験中に破断した。この例は実施例1及び2と比較でき、接着剤又は縁部仕上げの厚さが、45°HIT性能に対する有意な因子ではないことを示す。
【0041】
本開示のある実施形態による実施例4は、標準的な縁部仕上げ(#400グリット)を施した「Gorilla」ガラスを使用する。厚さ0.3mmのMasterbond EP21TDCHT‐LO Epoxy(1.55GPa)を構造接着剤として用いて、カバーガラスを0.19インチ(4.826mm)Alプレートに積層した。3ms減速、ピーク減速、及び侵入は、それぞれ46.3g、101.7g、及び45.7mmであった。カバーガラスは試験中に破断しなかった。この例は、高弾性率エポキシ接着剤による性能の改善を示している。
【0042】
本開示の別の実施形態による実施例5は、標準的な縁部仕上げ(#400グリット)を施した「Gorilla」ガラスを使用する。厚さ0.3mmのMasterbond EP21TDCHT‐LO Epoxy(1.55GPa)を構造接着剤として用いて、カバーガラスを0.125インチ(3.175mm)Alプレートに積層した。3ms減速、ピーク減速、及び侵入は、それぞれ45.7g、67.3g、及び51.5mmであった。カバーガラスは試験中に破断しなかった。この例は、高弾性率エポキシ接着剤による性能の改善を示している。
【0043】
実施例6(本発明):この例は、標準的な縁部仕上げ(#400グリット)を施した「Gorilla」ガラスを利用した。幅5mmの3M VHB 5909(厚さ0.3mm)をガラスの縁部に適用した。残りの部分は、厚さ0.3mmのMasterbond EP21TDCHT‐LO Epoxy(1.55GPa)を利用した。そして、二重の接着剤を有するガラスを、0.19インチ(4.826mm)Alプレートに積層した。3ms減速、ピーク減速、及び侵入は、それぞれ43.0g、95.3g、及び47.8mmであった。カバーガラスは試験中に破断しなかった。この例は、高弾性率エポキシ接着剤による性能の改善を示し、また同時に、性能の改善に関して、ガラスの縁部は恐らくエポキシよりも寄与が小さい因子であることを示唆している。理論によって束縛されることを望むものではないが、高弾性率エポキシの使用により、ガラスの歪みが回避され、これにより、ガラスの縁部又は主面の破断が回避される。
【0044】
図17は、(a)平坦な組立体、及び(b)ボール落下方向に対して45°の角度に配設された組立体に対する、ボール落下試験の実験セットアップを示す。具体的には、
図17(a)では、組立体520は、
図14に示されているようなガラス‐接着剤‐基板構成からなる。ボール522を点524から落下させた後でも、組立体520のガラスは破損しない。しかしながら、
図17(b)に示すように、ボールがガラスの縁部に45°の角度で当たると、ガラスは破損し、これは縁部衝突に関する課題を例示している。
図18は、異なる縁部仕上げ及び構造接着剤を用いた場合の、ガラスの中央及び縁部(即ち縁部試験では、ガラスの主面はボールの落下方向に対して45°であった)に対して実施したボール落下試験の実験結果を示す。実施例7は、表面衝突に関するベースラインとなるケースを示す。実施例8は、標準的な縁部仕上げ(400グリット)及びガラスとベース基板との間のVHB構造テープを伴う、45°での縁部衝突に関するベースラインとなるケースを示す。実施例9及び10は、条件が実施例8と同様であるが、縁部仕上げが異なる。実施例11は実施例8と同様であるが、VHBテープの代わりに高弾性率エポキシ接着剤を利用する点が異なる。
【0045】
図19は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態に従って使用できるガラス基板を示す。ガラス基板422は、乗客又はユーザ側を向く表面に低摩擦コーティング438を有する。一実施形態では、
図19に示すガラス基板422は例えば、厚さ1mm未満、圧縮応力700MPa超、及び圧縮深さ約40μmの強化ガラスとすることができる。ガラス基板422は、コーティングされていないガラス基板よりも摩擦係数が低下するように設計された1つ以上のコーティング438(例えば反射防止、防眩性、及び清掃容易化コーティング)を有することができる。低摩擦コーティング438は、乗客がガラス基板422との衝突によって受ける外傷を低減できる。これは、ガラス基板の表面上での摩擦によって引き起こされる減速力を低減することによって達成される。
【0046】
更に、ガラス基板422は破断する恐れがあるため、実施形態は、人間の皮膚を切り裂く可能性を低下させるための特徴を含む。このような裂傷の可能性の低減は例えば、ガラス基板422の残留応力プロファイルを操作して、ガラス基板422が高い曲げ応力によって破断した場合にガラスが裂傷を発生させにくい小さな又は微細な粒子へと破壊されることを保証することにより、達成できる。その例は、
図20に示されているアニーリング済みガラス440及び化学強化ガラス442の破断パターンの比較において確認できる。化学強化ガラスの比較的微細な破壊パターンは、裂傷を発生させにくい比較的微細なガラス粒子をもたらす。
図21は、それぞれアニーリング済みガラス440及び化学強化ガラス442に使用されるHITのヘッドフォームを被覆するために使用されるカバー441、443を示す。この例では、カバー441及び443はセーム革である。カバー441、443の背後のバックライトを利用すると、アニーリング済みガラスに使用したカバー441は、化学強化ガラスに使用したカバー443に比べて、より多数の及び/又はより大きな裂けを有する。従って、化学強化ガラス442は、破壊時に乗客に対して裂傷を発生させにくい。
【0047】
図22A~22Eを全体的に参照すると、本明細書に記載の実施形態による様々な車両内装システムの例が断面図で示されている。これらのシステムは、車両に恒久的に取り付けられる機械的フレーム又は固定物1を含む。設置用ブラケット2を用いて、ユーザ側を向いた車両内装の構成部品、例えば装飾用ダッシュ構成部品又はディスプレイを、車両の機械的フレーム又は固定物1に取り付ける。これらの例では、設置用ブラケット2を、ディスプレイハウジング3及び/又はディスプレイ積層体4の裏側に取り付ける。ディスプレイ積層体4は、電子基板、バックライトユニット、導光板、拡散フィルム等を含むことができる。ディスプレイ積層体4の前側には、例えば:液体光学透明樹脂(LOCR)又は光学透明接着剤(OCA)フィルム5;タッチパネル6;追加のLOCR又はOCAフィルム7;(特に空隙設計のための)粉砕防止コーティング、又はデッドフロント効果若しくは他の装飾のために使用されるインクとすることができる、コーティング8;反射防止(AR)コーティング10、及び他の可能なコーティング11を含んでよいカバーガラス9が存在してよい。
図22A~22Eはまた、平坦な組立体(
図22A)、凹状組立体(
図22B)、凸状組立体(
図22C)、並びにS字型屈曲組立体(
図22D及び22E)といった、車両内装システムに関する様々な形状を示す。
【0048】
上述のように、実施形態は、粉砕防止コーティングとすることができるコーティング8を含むことができる。しかしながら、ガラス基板が強化(例えば本明細書に記載されているように化学強化)されているいくつかの実施形態では、粉砕防止フィルムをガラス基板に取り付けない。化学強化ガラス基板を用いた実施形態は、粉砕防止フィルムを用いなくても、本明細書に記載の衝突耐性及び改善された破砕特性を示すことができることが分かっている。従って1つ以上の実施形態では、カバーガラス9は、粉砕防止コーティング、又は衝突後若しくは破壊後に粉砕を防止することを目的とした他のコーティングを実質的に備えなくてよい。
【0049】
車両内装システムの安全性の改善に加えて、1つ以上の実施形態の態様は、ディスプレイ上のカバーガラスが破壊された後でも、ディスプレイの読み取り可能性の改善をもたらすことができる。これは、事故によるカバーガラスの破壊後に、又は外傷を伴う車両事故の後の非常時にディスプレイへのアクセスが必要な場合に、運転手又は乗客がディスプレイの使用を継続できるようにすることにより、有益となり得る。これらの実施形態のうちの1つ以上では、車両内装システム用のカバーガラスは、車両内装システム内へと冷間形成されたガラス基板を使用し、上記冷間形成は、冷間曲げが、S字型の曲げを含む円筒状の曲げに一致し、またガラス基板の凹状又は凸状湾曲面における1000mm以上の曲げ半径に一致するように行われる。1つ以上の実施形態によると、よりきつい曲げ(即ち1000mm未満の曲げ半径目標)は、化学強化によってもたらされる圧縮応力(CS)及び層深さ(DOL)を、破砕性、中央張力(CT)、及び/又は貯蔵引張エネルギの限界内に調整することによって、達成できる。結果として得られる車両内装システムは、破壊後の安全性及び読み取り可能性の向上を示すことができる。
【0050】
特に、車両内装システムの破壊パターンは、標準的な化学強化された平坦なガラス基板の曲げ限界を、破砕性、CT、又は貯蔵引張エネルギ限界内に閉じ込めることで制御できる。更に、車両内装システムの破壊パターンは、CS/DOLが調整された、化学強化された平坦なガラス基板の曲げ限界を、破砕性、CT、又は貯蔵引張エネルギ限界内に閉じ込めることで制御できる。
図23は、ガラス基板の厚さを通したイオン交換プロファイル応力の変化を示し、ここでイオン交換プロファイル応力の変化は、ガラスの湾曲によるものである。
図23の左側は凸面及びガラス基板であり、右側は凹面である。
図23に使用したガラス基板の厚さは0.7mmであり、CSは700MPaであり、DOLは46μmであり、
図23に示すように曲率半径250mmまで曲げられている。元のプロファイル応力は、凸側において比較的低い値で始まり、結果として得られるプロファイル応力に向かって増大するが、凹側における元のプロファイル応力は、結果として得られるプロファイル応力より高い。0MPaにおける下側の破線は、プロファイル応力が圧縮から引張に変化する場所を示し、上側の破線は、最高張力レベルを指す。
【0051】
図24~37は、破断の結果の例を示す。例えば
図24は、様々な曲げ半径による、ガラス基板から反射されて戻るフラグメントを測定するための実験を示す。表から分かるように、フラグメントの個数は半径の減少に伴って増加し、またフラグメントの直径もまた曲げ半径の減少に伴って増大することが多少示されている。
図26A~28Cは、左側(運転手側)の視野角、中央の視野角、及び右側(乗客側)の視野角から見た、様々な半径のガラス基板に関する視認性に対する影響を示す。図面から解るように、一般に曲線が平坦であるほど(即ち半径が大きいほど)、破損後の視認性が改善される。
【0052】
同様に、
図29に示すように破損パターンが複雑になって半径が小さくなるほど、タッチディスプレイの使用は困難になり得る。この効果、及び裂傷のリスクを実験で測定し、その結果を
図30A~32Bに示す。
図30Aは、厚さが0.4mm、CSが685MPa、DOLが38μmのガラス基板に関する破断パターンを示す。ガラス基板を、(1つの基板を除いて)冷間曲げに供し、1000mm、800mm、600mm、500mm、及び250mmの曲げ半径を得た。平坦な基板の曲げ半径は示されていない。HITでの破断後、裂傷のリスクを評価するために、タオルを破断面にこすりつけた。
図30Bに示すように、曲げ半径が小さな基板に使用したタオルほど、大きな損傷を示した。同様に、
図31Aは、厚さが0.55mm、CSが707MPa、DOLが39μmのガラス基板を用いた同様の実験の結果を示す。ガラス基板を、
図30Aと同一の曲げ半径へと冷間形成した。ここでもまた、
図31Bに示すように、径が小さなガラスに使用したタオルほど、大きな摩耗及び/又は裂けを示した。最後に、厚さが0.7mm、CSが719MPa、DOLが40μmのガラス基板を用いて、同一の実験を繰り返した。この実験の結果は
図32A及び32Bに示されており、これもまた、半径が小さいほど、破壊パターンが複雑になり、タオルの裂けが大きくなることを示している。
【0053】
しかしながら、所与の貯蔵内部引張エネルギ目標に関して、CS及びDOLを調整することで、より小さな曲げ半径を安全に達成できる。例えば、貯蔵内部引張エネルギが、ガラス厚さ0.7mmに対して10.5J/m
2、ガラス厚さ0.55mmに対して13J/m
2、及びガラス厚さ0.4mmに対して21J/m
2である場合、これらのエネルギを用いて各ガラス厚さに関するCS及びDOLを調整することにより、所望の曲げ半径を達成できる。このような計算の結果の例を
図33~35に示す。別の例として、所与の二乗応力積分目標に関して、CS及びDOLを調整することで、より小さな曲げ半径を安全に達成できる。例えば、二乗応力積分が、ガラス厚さ0.7mmに対して0.7MPa^2‐m、ガラス厚さ0.55mmに対して0.7MPa^2‐m、及びガラス厚さ0.4mmに対して0.85MPa^2‐mである場合、これらの値を用いて各ガラス厚さに関するCS及びDOLを調整することにより、所望の曲げ半径を達成できる。このような計算の結果の例を
図36~38に示す。
図32~38に示した表に使用した計算を
図39に示す。特に、二乗応力積分(1)及び近似貯蔵引張エネルギ(2)に関して、以下の式を用いる:
【0054】
【0055】
【0056】
1つ以上の実施形態では、厚さ0.4、0.55、及び0.7mmのガラスに関して、上述の最大エネルギの限界(即ちそれぞれ21、13、及び10.5J/m2)並びに二乗応力積分(即ちそれぞれ0.85、0.7、及び0.7MPa^2‐m)の限界が、車両内装システムに最適となる。しかしながら、これらは単なる例として使用されており、様々なガラス基板の異なるCS及びDOL値に好適な半径を決定するために、他の限界を使用することもできると考えられる。上述の限界の主な理由は、車両の乗員の安全である。破断粒子の放出、破断後の読み取り可能性、及び破断後の裂傷リスクに関してガラス基板を調査した。上記限界は、これら3つの基準の評価後に、車両の乗員の安全に対するリスクを防止するために提案されている。なお、このリスクの原因は、ガラス内の貯蔵エネルギの量であり、これは、厚さ、CS、DOL、及び曲げ半径の関数である。よって、貯蔵エネルギ限界(エネルギ又はKf^2)を定量化できる場合、本明細書中で既に示したように、これを用いて様々な厚さのガラスのCS及びDOLを変更してよりきつい曲げ半径を達成するためにこれを使用でき、かつ依然として粒子の放出、読み取り可能性、及び裂傷リスクの安全限界内とすることができる。
【0057】
安全な車両内装システムの設計には、ガラス、積層体、又は積層構造体、及び場合によってはディスプレイを含むことができるシステム全体だけでなく、これらの構成部品を車両に取り付ける方法を考慮する視点からアプローチすることもできる。これらの要素全てが一体となって、システム全体がHIT又は実際の車両の事故においてどのように機能するかを決定できる。上述のように、自動車内装のヘッドフォーム衝突試験では、ヘッドフォーム衝突エリア内のある点に、6.8kg、直径165mmのヘッドフォームを、速度6.68m/sで衝突させる。規制(FMVSS201)によると、ヘッドフォームの最高速度は、3ms以上の期間にわたって80gを超えてはならない。これらの要件に加えて、衝突事故中にカバーガラスが破壊されないことが要求されることが多い。試験結果における一因子は、システムの剛度であり、これは個々の構成部品及びシステム全体の剛度を含む。従って、1つ以上の実施形態は、前面がガラスの車両内装システム又はディスプレイ、及びシステムを車両に取り付ける設置用ブラケット等の設置用ハードウェアの、個々の剛度を決定することを対象とする。このような方法を用いて、全体的なモジュールの設計に関する設計ガイドラインを生成でき、これは、設計の反復を削減でき、また性能試験時のリソースの浪費を削減できる。
【0058】
モジュールを設計する上記方法の1つ以上の実施形態によると、前面がガラスのモジュール又はディスプレイ、及び設置用ハードウェア、ブラケット又はクランプのための設計ウィンドウが提供される。この分析方法に従って設計すると、得られる製品はHITに合格する。更に、得られる製品は、カバーガラスの破壊を伴わずにHITに合格できる。
図40は、HITのヘッドフォームの、システムに衝突しようとする際の概略図を示す。この例では、システムは、剛度K1のカバーガラス及びディスプレイ(又は他の基板)と、剛度K2の設置機構(例えばクランプ又はバネ)とを含む。K1とK2との組み合わせにより、システムの剛度Ksが得られる。
図41は、システムの剛度Ks並びに個々の剛度K1及びK2に関する最適な範囲を示す図の例である。この例では、「1」は、許容可能な侵入の最大量による下限を示す。侵入は、システムが後方に、即ち設置用ハードウェアの方向に移動できる量を指す。この例では、最大侵入は2インチ(5.08cm)と考えられるが、車両の設計によって増減し得る。「2」は、ガラスの破壊のリスクによって制限される、Ksの上限を示す。「3」は、HITの基準によって要求される最大加速(又は減速)を示す。網掛け領域は、設計のための剛度の最適な範囲を示す。実際の車両内装システムは複雑で、多くの構成部品を含むことができるが、この例は、ディスプレイ又は基板とカバーガラスとを剛度K1の1つの構成部品(モジュール)とみなし、支持構造体(設置用ブラケット、クランプ)が剛度K2を有する、簡略化された分析モデルである。そして、システム剛度はKs=(K1xK2)/(K1+K2)として定義される。いくつかの実施形態によると、この方法の背後にある原理を拡張することにより、車両内装システム内の更に複雑な構成に対応できる。
【0059】
上述の方法のある例として、ミリ秒を単位とする時間の関数として減速及び侵入(偏向)を示す
図42を考察する。この例では、3ms減速、最大減速、及び侵入は、それぞれ63.3g、66g、及び52.4mmである。そして、システム剛度Ksを実験データから計算する。最大侵入値に基づき、Ksは、ある特定の値、この例では120kN/mより大きい必要がある。システム剛度(Ks)がこの要件を満たすための、モジュール剛度(K1)と設置用ブラケット剛度(K2)との間の相関を、
図43(線1)に示す。
図43の線より上のK1とK2とのいずれの組み合わせは、50.8mm未満のシステム侵入値を提供する。
【0060】
ここで、モジュール内のカバーガラスを破壊しないという更なる制限について考える。一般に、ある構成部品の貯蔵歪みエネルギがその臨界エネルギより高い場合、この構成部品は破壊される。カバーガラスの貯蔵歪みエネルギEは:
E=F
2/(2×K)
によって計算され、従って
E(K1)=エネルギ
合計×K2/(K1+K2)=152×K2/(K1+K2);
E(K1)<Ec(k1);
よってK1>(152/エネルギ(K1 break)-1)×K2
である。
この相関は、
図44の赤色の線(線2)によって表される。K1及びK2がこの赤色の線より上の値を有する場合、カバーガラスは破壊されない。
【0061】
第3の制限は、最大減速が120g以下であるというものである。従って:
エネルギ
合計=F
2
max/(2×K
s)=152J;
減速
max<120g;
Ks<(120×g×質量)
2/(2×152)=210.35KN/m(パネルの質量を含まない場合)
Ks<(120×g×質量)
2/(2×152)=280.47KN/m(パネルの質量が1.0kgである場合)
この第3の制限を満たすために、K1とK2との相関を、パネルの質量=0又はパネルの質量=1kgに関して
図45に描画する。一般に、パネルの質量は0~1kgであるため、K1とK2との相関が
図45の破線(線3)より下に留まると、第3の制限が満たされる。
【0062】
これら3つの制限を組み合わせると、
図45の(斜線による)網掛け領域は、モジュール剛度(K1)及び設置用ブラケット剛度(K2)の許容可能な範囲を強調したものである。他の製品設計にも同様のアプローチを利用できる。一般に、このような方法は、初期製品設計の反復において極めて有用であることが判明している。
【0063】
図46は、HITの要件を満たすようにモジュール組立体を設計するための上述の方法を示すフローチャートである。ステップとしては、モジュールの偏向を制限することによって設置用ブラケットを試験して、K2を得るステップが挙げられる。次にK2を、
図45の目標領域を示すグラフに入力できる。次のステップは、
図45からモジュール剛度K1を計算することである。設置用ブラケットの偏向を制限することによって、モジュール剛度K1を試験できる。この場合、設置用ブラケットの剛度を、
図45の目標領域内に調整できる。この方法で達成された結果を確認するために、確認試験を実行してもよい。
【0064】
本明細書中で提示される1つ以上の実施形態の別の態様は、HITに合格するように設計された車両内装システムである。このような車両内装システムは、ダッシュボード、機器パネル、コックピット、中央機器クラスタ、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、後部座席エンターテインメントシステム(RSE)、及び自動車又は車両の内装に関連する他の表面に使用できる。システムは、3D冷間形成ガラス及びハウジング組立体を含む。1つ以上の実施形態では、カバーガラスは、700MPa超の圧縮応力及び35μm超の層深さを達成するためにイオン交換された、アルカリアルミノシリケートガラス組成物であってよい。カバーガラスは、半径約100mmまで冷間曲げを施されてハウジング組立体に組み込まれ、これにより、自動車内装に要求される安全性試験の全てに合格する冷間形成モジュールが形成される。
【0065】
ヘッドフォーム衝突試験の実施例
以下は、例示を目的とする例である。
図7A~7Cは、平坦形状、凸状、及び凹状の場合の、HITにおけるこのようなモジュールのサンプルのセットアップを示す。これらのサンプルに対して試験を実施して、自動車内装におけるCorning「Gorilla」ガラスの安全性を評価した。ガラスサンプルのサイズは、3.1インチ(7.874cm)×6.7インチ(17.018cm)×0.027インチ(0.7mm)であった。VHB構造テープ(3M VHB 4952)を用いて、ガラスサンプルをプレート(アセタールデルリン又はアルミニウム6061)に取り付けた。プレートはディスプレイモジュールの代理であり、プレートの剛度はその厚さを変更することで変化させた。各場合に関するプレートの剛度を表2に示す。このガラスを有するベースプレートを、エネルギ吸収性の設置用ブラケット(C字型クランプ)(材料SS304)に取り付けた。設置用ブラケットは、
図1に示すように、プレートの短い方の各辺に取り付けられる。ここでもまた、設置用ブラケットの剛度を、その厚さを変更することによって変化させ、表2に示す。プレート及び積層されたカバーガラスを伴うC字型クランプは、車両内装内のモジュール組立体を表す。組立体の代理(C字型クランプ、プレート、及び積層されたガラス)を、衝突の角度がガラス表面に対して垂直(90°)となるように、HIT装置に設置した。各実験に関して、リアルタイム減速データ及び高速ビデオを記録した。3ms減速、ピーク減速、及び侵入を報告した。侵入(又は偏向)は、減速‐時間データを2回積分することによって計算した(最初の積分は速度‐時間を提供し、2回目の積分は侵入‐時間を提供する)。
【0066】
【0067】
実施例1‐9:デルリンプレート(ディスプレイモジュール)及び設置用ブラケットに関するある範囲の剛度を用いて、ヘッドフォーム衝突試験を実施した。ディスプレイモジュールの剛度は、58kN/m~1070kN/mの範囲内で変化させた。設置用ブラケットの剛度は、63kN/m~864kN/mの範囲内で変化させた。この範囲の内の複数の組み合わせに関するデータ(3ms減速、ピーク減速、及び侵入)を、表2に提示する。最も剛度が高い設置用ブラケット(0.19インチ(4.826mm)C字型クランプ、864kN/m)に関して、3ms減速は80g超であった。ピーク減速は、120g未満という仕様を満たしている。侵入は34~46mmであった。その結果、これらの構成は、ヘッドフォーム衝突試験の動作ウィンドウから外れていた。「Gorilla」ガラス(0.7mm)は、これらの実験のいずれについても破壊されなかった。
【0068】
中程度の剛度の設置用ブラケット(0.12インチ(3.048mm)C字型クランプ、258kN/m)に関して、3ms減速は51~73gの範囲内であり、80gの仕様未満であった。各場合に関するピーク減速は、120gの仕様未満であった。更に侵入は44mm~54mmであった。その結果、これらの構成は、ヘッドフォーム衝突試験の動作ウィンドウ内であった。「Gorilla」ガラスは、これらの実験のいずれについても破壊されなかった。
【0069】
低剛度の設置用ブラケット(0.08インチ(2.032mm)C字型クランプ、63kN/m)に関して、3ms減速は21~33gの範囲内であり、80gの仕様未満であった。各場合に関するピーク減速は、120gの仕様未満であった。更に侵入は131mm~139mmであった。侵入の値が高いにもかかわらず、これらの構成はヘッドフォーム衝突試験の動作ウィンドウ内であった。「Gorilla」ガラスは、これらの実験のいずれについても破壊されなかった。
【0070】
実施例1~9は、設置用ブラケットの剛度が3ms減速に影響し、プレート(ディスプレイモジュール)の剛度がピーク減速に影響したことも示す。
【0071】
実施例10~12:これらの例は、ディスプレイモジュールの代理として、デルリンプレートの代わりにアルミニウム6061プレートを利用する。厚さ0.12インチ(3.048mm)のアルミニウムプレートの剛度は128kN/mであり、これは0.25インチ(6.35mm)のデルリンプレート(剛度134kN/m)と同等であった。設置用ブラケットの剛度を258kN/m(0.12インチ(3.048mm)C字型クランプ)に固定した。これらの実験それぞれに関して、厚さ0.7mmの「Gorilla」ガラスを利用した。平坦プレート構成(実施例10)に関して、3ms減速、ピーク減速、及び侵入は、それぞれ63.9g、67.3g、及び50.9mmであった。これらの値は、実施例4で得られたものと同等であった。実施例11及び12は、実施例10と同様であるものの湾曲構成(R100凹状‐実施例11、R200凸状‐実施例12)である構成を用いる。これらの例それぞれに関して、3ms減速及びピーク減速は、それぞれ80g未満及び120g未満であった。R100凹状に関して、侵入は56.4mmであり、R200凸状に関して、侵入は61.6mmであった。その結果、これらの構成は全て、ヘッドフォーム衝突試験の動作ウィンドウ内であった。「Gorilla」ガラスは、これらの実験のいずれについても破壊されなかった。
【0072】
裂傷試験の実施例
図8は、裂傷試験のためのヘッドフォーム衝突試験セットアップを示す。この試験を実施することにより、イオン交換済みソーダライムガラス(SLG‐IOXed)と比較したCorning「Gorilla」ガラスの安全性を評価した。ガラスサンプルのサイズは、3.1インチ(7.874cm)×6.7インチ(17.018cm)×0.043インチ(1.0922mm)であった。ガラスの裂傷特性を評価するためには、試験中にガラスが破断することが重要であった。従って、表面2をSiC粒子で摩耗させて、破損を開始させた。サンプルに対して2つの異なる摩耗条件(2psi‐5秒、及び5psi‐5秒)を利用した。ガラスサンプルを、125μmのE3ディスプレイ液体光学透明接着剤(LOCA)を用いて、アセタールデルリンプレート(4.2インチ(10.668cm)×7.7インチ(19.558cm)×0.25インチ(6.35mm)、剛度134kN/mm)に取り付けた。ガラスを有するアセタールデルリンプレートを、エネルギ吸収性のC字型クランプ(材料SS304、剛度258kN/m)に取り付けた。デルリンプレート及び積層されたカバーガラスを有するC字型クランプは、車両内装内のモジュール組立体を表すと考えられる。組立体の代理(C字型クランプ、デルリンプレート、及び積層されたガラス)を、衝突の角度が45°となるように、HIT装置に設置した。頭部(インパクタ)を、二重層剛性セーム革(McMaster製PFA fabric、17インチ(43.18cm)×27インチ(68.58cm))に包んだ。各実験に関して、高速ビデオ(写真)、減速データ、試験後の合成セーム革の状態、及び試験後のガラスサンプルの状態を記録した(
図47A~47D)。表3は、
図47A~47Dに示したセーム革片を評価するための、「セーム革裂傷スケール(Chamois Laceration Scale:CLS)」を示す。
【0073】
【0074】
比較例13、SLG‐IOXed(90グリットSiC、2psi‐5秒):上述のセットアップを用いてヘッドフォーム衝突試験を実施した。3ms減速、最大減速、及び侵入は、それぞれ43.7g、48.2g、77.3mmであった。カバーガラスは試験中に破断し、合成セーム革の外側層に穿孔が生じた(CLS1)。
【0075】
実施例14、「Gorilla」ガラス(90グリットSiC、2psi‐5秒):上述のセットアップを用いてヘッドフォーム衝突試験を実施した。3ms減速、最大減速、及び侵入は、それぞれ44.1g、46.0g、79.3mmであった。カバーガラスは試験中に破断せず、合成セーム革の外側層上に表面的な損傷のみが観察された(CLS0)。
【0076】
比較例15、SLG‐IOXed(90グリットSiC、5psi‐5秒):上述のセットアップを用いてヘッドフォーム衝突試験を実施した。3ms減速、最大減速、及び侵入は、それぞれ39.9g、44.7g、80.2mmであった。カバーガラスは試験中に破断し、合成セーム革の外側層に穿孔が生じた(CLS1)。
【0077】
実施例16、「Gorilla」ガラス(90グリットSiC、5psi‐5秒):上述のセットアップを用いてヘッドフォーム衝突試験を実施した。3ms減速、最大減速、及び侵入は、それぞれ39.7g、51.1g、81.2mmであった。カバーガラスは試験中に、SLG‐IOXedに比べて極めて小さな片へと破断した。従って、片が小さいことにより、合成セーム革の外側層に表面的な損傷のみが観察された(CLS0)。
【0078】
ガラス破片の実施例
ガラス破片実験を実施して、異なる厚さ及び接着剤を用いたCorning「Gorilla」ガラスの安全性を評価した。ガラスサンプルのサイズは3.1インチ(7.874cm)×6.7インチ(17.018cm)であり、厚さは1.1mm~0.4mmであった。なお、「Gorilla」ガラスはヘッドフォーム衝突試験中に破壊されない。しかしながら、壊滅的な事故中のガラスの破壊の影響を研究するためには、ガラスを試験中に破断することが重要であった。150グリットのガーネット摩耗材(負荷1kg、引掻き1インチ(2.54cm)、試行1回)を利用して、サンプルの表面B上に深さ11μmの傷を導入した。ガラスサンプルを、125μmのE3ディスプレイ液体光学透明接着剤(LOCA)及び3M VHB 4952構造接着剤を用いて、アセタールデルリンプレート(4.2インチ(10.668cm)×7.7インチ(19.558cm)×0.25インチ(6.35mm)、剛度134kN/mm)に取り付けた。ガラスを有するアセタールデルリンプレートを、エネルギ吸収性の設置用ブラケット(C字型クランプ)(材料SS304、剛度258kN/m)に取り付けた。デルリンプレート及び積層されたカバーガラスを有するC字型クランプは、車両内装内のモジュール組立体を表すと考えられる。次に、組立体の代理(C字型クランプ、デルリンプレート、及び積層されたガラス)を、衝突の角度が90°となるように、HIT装置に設置した。各実験に関して、サンプルを試験の前後に計量した。差(試験前の重量から試験後の重量を引いたもの)を、HIT中のガラスの破片の損失とみなし、パーセンテージで報告する。
【0079】
実施例17~20、「Gorilla」ガラス1.1mm~0.4mm‐E3ディスプレイLOCA(125μm):各厚さに関する破片の量は、16.4%(1.1mm)、7.3%(0.7mm)、2.9%(0.55mm)、及び0.7%(0.4mm)であった。これらの例は、破片生成量に対するガラスの厚さの影響を示す。厚さが小さいほど、壊滅的な破損中に生成されるガラスの破片の量が少なかった。
【0080】
実施例21~24、「Gorilla」ガラス1.1mm~0.4mm‐3M VHB 4952(1.1mm):各厚さに関する破片の量は、7.3%(1.1mm)、3.7%(0.7mm)、1.5%(0.55mm)、及び1.1%(0.4mm)であった。これらの例は、破片生成量に対するガラスの厚さの影響を示す。厚さが小さいほど、壊滅的な破損中に生成されるガラスの破片の量が少なかった。更に、これらの例を上述のものと比較でき、これらの例は、接着剤の保持特性の効果を示す。3M VHBは、E3ディスプレイLOCA(低弾性率)に比べて高いガラス破片保持力(高弾性率)を有する。以上の実験は単なる例である。
【0081】
本明細書中で使用される場合、用語「配置する(dispose)」は、当該技術分野で公知のいずれの方法を用いて、材料を表面上にコーティングする、堆積させる、及び/又は形成することを指す。配置された材料は、本明細書中で定義されるような層を構成できる。本明細書中で使用される場合、句「…の上に配置される(disposed on)」は、ある材料をある表面上に、該材料が該表面と直接接触するように形成する例を含み、また、ある材料をある表面上に、配置される該材料と該表面との間に1つ以上の介在材料が存在する状態で、形成する例を含む。1つ以上の介在材料は、本明細書中で定義されるような層を構成してよい。用語「層(layer)」は、単層を含んでよく、又は1つ以上の副層を含んでよい。このような副層は、互いに直接接触していてよい。副層は、同一の材料から形成されていても、2つ以上の異なる材料から形成されていてもよい。1つ以上の代替実施形態では、このような副層は、間に配置された異なる材料の介在層を有してよい。1つ以上の実施形態では、層は、1つ以上の連続した中断されていない層、及び/又は1つ以上の不連続な中断された層(即ち互いに隣接して形成された異なる材料を有する層)を含んでよい。層又は副層は、個別堆積又は連続堆積プロセスを含む、当該技術分野で公知のいずれの方法で形成してよい。1つ以上の実施形態では、層は、連続堆積プロセスのみを用いて形成してよく、あるいは個別堆積プロセスのみを用いて形成してよい。
【0082】
1つ以上の実施形態では、ガラス基板の厚さ(t)は約1.5mm以下である。例えば上記厚さは、約0.1mm~約1.5mm、約0.15mm~約1.5mm、約0.2mm~約1.5mm、約0.25mm~約1.5mm、約0.3mm~約1.5mm、約0.35mm~約1.5mm、約0.4mm~約1.5mm、約0.45mm~約1.5mm、約0.5mm~約1.5mm、約0.55mm~約1.5mm、約0.6mm~約1.5mm、約0.65mm~約1.5mm、約0.7mm~約1.5mm、約0.1mm~約1.4mm、約0.1mm~約1.3mm、約0.1mm~約1.2mm、約0.1mm~約1.1mm、約0.1mm~約1.05mm、約0.1mm~約1mm、約0.1mm~約0.95mm、約0.1mm~約0.9mm、約0.1mm~約0.85mm、約0.1mm~約0.8mm、約0.1mm~約0.75mm、約0.1mm~約0.7mm、約0.1mm~約0.65mm、約0.1mm~約0.6mm、約0.1mm~約0.55mm、約0.1mm~約0.5mm、約0.1mm~約0.4mm、又は約0.3mm~約0.7mmであってよい。
【0083】
1つ以上の実施形態では、ガラス基板の幅(W)は、約5cm~約250cm、約10cm~約250cm、約15cm~約250cm、約20cm~約250cm、約25cm~約250cm、約30cm~約250cm、約35cm~約250cm、約40cm~約250cm、約45cm~約250cm、約50cm~約250cm、約55cm~約250cm、約60cm~約250cm、約65cm~約250cm、約70cm~約250cm、約75cm~約250cm、約80cm~約250cm、約85cm~約250cm、約90cm~約250cm、約95cm~約250cm、約100cm~約250cm、約110cm~約250cm、約120cm~約250cm、約130cm~約250cm、約140cm~約250cm、約150cm~約250cm、約5cm~約240cm、約5cm~約230cm、約5cm~約220cm、約5cm~約210cm、約5cm~約200cm、約5cm~約190cm、約5cm~約180cm、約5cm~約170cm、約5cm~約160cm、約5cm~約150cm、約5cm~約140cm、約5cm~約130cm、約5cm~約120cm、約5cm~約110cm、約5cm~約110cm、約5cm~約100cm、約5cm~約90cm、約5cm~約80cm、又は約5cm~約75cmである。
【0084】
1つ以上の実施形態では、ガラス基板の長さ(L)は、約5cm~約250cm、約10cm~約250cm、約15cm~約250cm、約20cm~約250cm、約25cm~約250cm、約30cm~約250cm、約35cm~約250cm、約40cm~約250cm、約45cm~約250cm、約50cm~約250cm、約55cm~約250cm、約60cm~約250cm、約65cm~約250cm、約70cm~約250cm、約75cm~約250cm、約80cm~約250cm、約85cm~約250cm、約90cm~約250cm、約95cm~約250cm、約100cm~約250cm、約110cm~約250cm、約120cm~約250cm、約130cm~約250cm、約140cm~約250cm、約150cm~約250cm、約5cm~約240cm、約5cm~約230cm、約5cm~約220cm、約5cm~約210cm、約5cm~約200cm、約5cm~約190cm、約5cm~約180cm、約5cm~約170cm、約5cm~約160cm、約5cm~約150cm、約5cm~約140cm、約5cm~約130cm、約5cm~約120cm、約5cm~約110cm、約5cm~約110cm、約5cm~約100cm、約5cm~約90cm、約5cm~約80cm、又は約5cm~約75cmである。
【0085】
1つ以上の実施形態では、ガラス基板は強化されていてよい。1つ以上の実施形態では、ガラス基板は、表面からある圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力を含むように強化してよい。圧縮応力領域は、引張応力を呈する中央部分によってバランスが取られている。DOCでは、応力が正の(圧縮)応力から負の(引張)応力へと移行する。
【0086】
1つ以上の実施形態では、ガラス基板は、物品の複数の部分間の熱膨張係数の不一致を利用して機械的に強化でき、これにより圧縮応力領域と、引張応力を呈する中央領域とを生成する。いくつかの実施形態では、ガラス基板は、ガラス転移温度を超える温度までガラスを加熱した後急速に冷却することによって、熱的に強化できる。
【0087】
1つ以上の実施形態では、ガラス基板は、イオン交換によって化学強化できる。イオン交換プロセスでは、ガラス基板の表面又はその付近のイオンを、価数又は酸化状態が同一の、比較的大きなイオンで置換(即ち交換)する。ガラス基板がアルカリアルミノシリケートガラスを含む実施形態では、物品の表面層のイオン、及び比較的大きなイオンは、1価のアルカリ金属陽イオン、例えばLi+、Na+、K+、Rb+、及びCs+である。あるいは、表面層の1価陽イオンを、Ag+等の、アルカリ金属陽イオン以外の1価陽イオンで置換してよい。このような実施形態では、交換によってガラス基板内に入る1価イオン(又は陽イオン)が応力を生成する。
【0088】
イオン交換プロセスは典型的には、ガラス基板中の比較的小さなイオンと交換されることになる比較的大きなイオンを含有する溶融塩浴(又は2つ以上の溶融塩浴)中にガラス基板を浸漬することによって実施される。なお、水性溶融塩浴も利用してよい。更に、1つ以上の浴の組成は、2つ以上のタイプの比較的大きなイオン(例えばNa+及びK+)を含んでいても、又は単一の比較的大きなイオンを含んでいてもよい。浴の組成及び温度、浸漬時間、1つ以上の塩浴中に浸漬するガラス基板の個数、複数の塩浴の使用、アニーリングや洗浄等の追加のステップを含むがこれらに限定されない、イオン交換プロセスに関するパラメータは、一般に、デッドフロント構造体のガラス基板の組成(上記物品及び存在するいずれの結晶相の構造を含む)、並びに強化によって得られるガラス基板の所望のDOC及びCSによって決定されることは、当業者には理解されるだろう。例示的な溶融塩浴の組成は、比較的大きなアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、及び塩酸塩を含んでよい。典型的な硝酸塩としては、KNO3、NaNO3、LiNO3、NaSO4、及びこれらの組み合わせが挙げられる。溶融塩浴の温度は、典型的には約380℃~約450℃であり、浸漬時間は、ガラス基板の厚さ、浴の温度、及びガラス(又は1価イオン)の拡散性に応じて約15分~約100時間である。しかしながら、上述のものとは異なる温度及び浸漬時間も使用可能である。
【0089】
1つ以上の実施形態では、ガラス基板を、約370℃~約480℃の、100%のNaNO3、100%のKNO3、又はNaNO3とKNO3との組み合わせの溶融塩浴に浸漬してよい。いくつかの実施形態では、ガラス基板を、約5%~約90%のKNO3及び約10%~約95%のNaNO3を含む溶融混合塩浴に浸漬してよい。1つ以上の実施形態では、ガラス基板を、第1の浴に浸漬した後で第2の浴に浸漬してよい。第1及び第2の浴は、互いに異なる組成及び/又は温度を有してよい。第1及び第2の塩浴中での浸漬時間は様々であってよい。例えば、第1の浴中での浸漬は、第2の浴中での浸漬より長くてよい。
【0090】
1つ以上の実施形態では、ガラス基板を、温度が約420℃未満(例えば約400℃又は約380℃)の、NaNO3及びKNO3(例えば49%/51%、50%/50%、51%/49%)を含む溶融混合塩浴に、約5時間未満、又は約4時間以下にわたって浸漬してよい。
【0091】
イオン交換条件を調整することにより、結果として得られるガラス基板の表面又はその付近の応力プロファイルの「スパイク(spike)」を提供する、又は勾配を増大させることができる。スパイクは、より高いCS値をもたらすことができる。このスパイクは、本明細書に記載のガラス基板に使用されるガラス組成物の独特な特性により、単一の浴又は複数の浴によって達成でき、ここで上記1つ以上の浴は単一の組成又は混合組成を有する。
【0092】
ガラス基板内に2つ以上の1価イオンが交換によって入る1つ以上の実施形態では、異なる複数の1価イオンを、ガラス基板内の異なる複数の深さまで交換してよい(そして、ガラス基板内の異なる複数の深さにおいて異なる複数の大きさの応力を生成してよい)。その結果として、複数の応力生成イオンの相対的な深さを決定して、異なる複数の応力プロファイルの特徴を得ることができる。
【0093】
CSは、株式会社折原製作所(日本)製のFSM‐6000等の市販の機器を用いた表面応力測定(FSM)によるもの等の、当該技術分野で公知の手段を用いて測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光係数(stress optical coefficient:SOC)の精密測定に依存する。SOCは、「ガラスの応力光係数の測定のための標準試験法(Standard Test Method for Measurement of ガラス Stress‐Optical Coefficient)」というタイトルのASTM規格C770‐98(2013)(その内容は、参照によりその全体が本出願に援用される)に記載されるファイバ法及び4点曲げ法、並びにバルクシリンダ法によって測定される。本明細書中で使用される場合、CSは、圧縮応力層内で測定された最高圧縮応力値である「最大圧縮応力(maximum compressive stress)」であってよい。いくつかの実施形態では、最大圧縮応力は、ガラス基板の表面に位置する。他の実施形態では、最大圧縮応力は、表面下の深さにおいて発生してもよく、これにより圧縮応力は「埋没したピーク(buried peak)」のようになる。
【0094】
DOCは、強化方法及び条件に応じて、FSMで、又は散乱光偏向鏡(SCALP)(エストニアのタリンにあるGlasstress Ltdから入手可能なSCALP‐04散乱光偏光器等)で測定してよい。ガラス基板をイオン交換処理によって化学強化する場合、どのイオンが交換によってガラス基板内に入るかに応じて、FSM又はSCALPを用いてよい。ガラス基板内の応力が、ガラス基板内へのカリウムイオンの交換によって生成される場合は、FSMを用いてDOCを測定する。上記応力が、ガラス基板内へのナトリウムイオンの交換によって生成される場合は、SCALPを用いてDOCを測定する。ガラス基板品内の応力が、ガラス内へのカリウム及びナトリウム両方のイオンの交換によって生成される場合は、ナトリウムイオンの交換深さがDOCを示し、カリウムイオンの交換深さが圧縮応力の大きさの変化(ただし圧縮応力から引張応力への応力の変化ではない)を示すと考えられるため、DOCはSCALPで測定され、上記ガラス基板内でのカリウムイオンの交換深さはFSMで測定される。中心張力又はCTは最大引張応力であり、SCALPで測定される。
【0095】
1つ以上の実施形態では、ガラス基板は、(本明細書に記載されているように)上記ガラス基板の厚さtの小部分として記載されるDOCを呈するよう強化してよい。例えば、1つ以上の実施形態では、DOCは、約0.05t以上、約0.1t以上、約0.11t以上、約0.12t以上、約0.13t以上、約0.14t以上、約0.15t以上、約0.16t以上、約0.17t以上、約0.18t以上、約0.19t以上、約0.2t以上、約0.21t以上であってよい。いくつかの実施形態では、DOCは、約0.08t~約0.25t、約0.09t~約0.25t、約0.18t~約0.25t、約0.11t~約0.25t、約0.12t~約0.25t、約0.13t~約0.25t、約0.14t~約0.25t、約0.15t~約0.25t、約0.08t~約0.24t、約0.08t~約0.23t、約0.08t~約0.22t、約0.08t~約0.21t、約0.08t~約0.2t、約0.08t~約0.19t、約0.08t~約0.18t、約0.08t~約0.17t、約0.08t~約0.16t、又は約0.08t~約0.15tであってよい。いくつかの例では、DOCは、約20μm以下であってよい。1つ以上の実施形態では、DOCは、約40μm以上(例えば約40μm~約300μm、約50μm~約300μm、約60μm~約300μm、約70μm~約300μm、約80μm~約300μm、約90μm~約300μm、約100μm~約300μm、約110μm~約300μm、約120μm~約300μm、約140μm~約300μm、約150μm~約300μm、約40μm~約290μm、約40μm~約280μm、約40μm~約260μm、約40μm~約250μm、約40μm~約240μm、約40μm~約230μm、約40μm~約220μm、約40μm~約210μm、約40μm~約200μm、約40μm~約180μm、約40μm~約160μm、約40μm~約150μm、約40μm~約140μm、約40μm~約130μm、約40μm~約120μm、約40μm~約110μm、又は約40μm~約100μm)であってよい。
【0096】
1つ以上の実施形態では、強化ガラス基板は、200MPa以上、300MPa以上、400MPa以上、約500MPa以上、約600MPa以上、約700MPa以上、約800MPa以上、約900MPa以上、約930MPa以上、約1000MPa以上、又は約1050MPa以上のCS(これはガラス基板の表面又はある深さにおいて認められ得る)を有してよい。
【0097】
1つ以上の実施形態では、強化強化ガラス基板は、約20MPa以上、約30MPa以上、約40MPa以上、約45MPa以上、約50MPa以上、約60MPa以上、約70MPa以上、約75MPa以上、約80MPa以上、又は約85MPa以上の最大引張応力又は中心張力(CT)を有してよい。いくつかの実施形態では、上記最大引張応力又は中心張力(CT)は、約40MPa~約100MPaであってよい。
【0098】
ガラス基板中での使用に好適なガラス組成物は、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、ボロアルミノシリケートガラス、アルカリ含有アルミノシリケートガラス、アルカリ含有ボロシリケートガラス、及びアルカリ含有ボロアルミノシリケートガラスを含む。
【0099】
特段の指定がない限り、本明細書で開示されているガラス組成物は、酸化物ベースで分析したモルパーセント(モル%)で記述される。
【0100】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約66モル%~約80モル%、約67モル%~約80モル%、約68モル%~約80モル%、約69モル%~約80モル%、約70モル%~約80モル%、約72モル%~約80モル%、約65モル%~約78モル%、約65モル%~約76モル%、約65モル%~約75モル%、約65モル%~約74モル%、約65モル%~約72モル%、又は約65モル%~約70モル%、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲内の量のSiO2を含んでよい。
【0101】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約4モル%超、又は約5モル%超のAl2O3を含む。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約7モル%超かつ約15モル%まで、約7モル%超かつ約14モル%まで、約7モル%~約13モル%、約4モル%~約12モル%、約7モル%~約11モル%、約8モル%~約15モル%、9モル%~約15モル%、約9モル%~約15モル%、約10モル%~約15モル%、約11モル%~約15モル%、又は約12モル%~約15モル%、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲内の量のAl2O3を含む。1つ以上の実施形態では、Al2O3の上限は約14モル%、14.2モル%、14.4モル%、14.6モル%、又は14.8モル%であってよい。
【0102】
1つ以上の実施形態では、ガラス物品は、アルミノシリケートガラス物品として、又はアルミノシリケートガラス組成物を含むものとして記載される。このような実施形態では、ガラス組成物又はガラス組成物から形成された物品は、SiO2及びAl2O3を含み、ソーダライムシリケートガラスではない。これに関して、ガラス組成物又はガラス組成物から形成された物品は、約2モル%以上、2.25モル%以上、2.5モル%以上、約2.75モル%以上、約3モル%以上のAl2O3を含む。
【0103】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物はB2O3(例えば約0.01モル%以上)を含む。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0モル%~約5モル%、約0モル%~約4モル%、約0モル%~約3モル%、約0モル%~約2モル%、約0モル%~約1モル%、約0モル%~約0.5モル%、約0.1モル%~約5モル%、約0.1モル%~約4モル%、約0.1モル%~約3モル%、約0.1モル%~約2モル%、約0.1モル%~約1モル%、約0.1モル%~約0.5モル%、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲内の量のB2O3を含む。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物はB2O3を略含まない。
【0104】
本明細書中で使用される場合、組成物の成分に関する句「略含まない(substantially free)」は、該成分が、初期バッチ生成中に能動的又は意図的に該組成物に添加されないものの、不純物として約0.001モル%未満の量で存在し得ることを意味する。
【0105】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は任意にP2O5(例えば約0.01モル%以上)を含む。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、2モル%以下、1.5モル%以下、1モル%以下、又は0.5モル%以下の、ゼロでない量のP2O5を含む。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物はP2O5を略含まない。
【0106】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約8モル%以上、約10モル%以上、又は約12モル%以上のR2Oの総量(これは、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、及びCs2Oといったアルカリ金属酸化物の総量である)を含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約8モル%~約20モル%、約8モル%~約18モル%、約8モル%~約16モル%、約8モル%~約14モル%、約8モル%~約12モル%、約9モル%~約20モル%、約10モル%~約20モル%、約11モル%~約20モル%、約12モル%~約20モル%、約13モル%~約20モル%、約10モル%~約14モル%、又は11モル%~約13モル%、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲内の、R2Oの総量を含む。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、Rb2O、Cs2O、又はRb2O及びCs2Oの両方を略含まなくてよい。1つ以上の実施形態では、R2Oは、Li2O、Na2O、及びK2Oだけの総量を含んでよい。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、Li2O、Na2O、及びK2Oから選択された少なくとも1つのアルカリ金属酸化物を含んでよく、ここで該アルカリ金属酸化物は、約8モル%以上の量で存在する。
【0107】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約8モル%以上、約10モル%以上、又は約12モル%以上のNa2Oを含む。1つ以上の実施形態では、上記組成物は、約8モル%~約20モル%、約8モル%~約18モル%、約8モル%~約16モル%、約8モル%~約14モル%、約8モル%~約12モル%、約9モル%~約20モル%、約10モル%~約20モル%、約11モル%~約20モル%、約12モル%~約20モル%、約13モル%~約20モル%、約10モル%~約14モル%、又は11モル%~約16モル%、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲内のNa2Oを含む。
【0108】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約4モル%未満のK2O、約3モル%未満のK2O、又は約1モル%未満のK2Oを含む。いくつかの例では、ガラス組成物は、約0モル%~約4モル%、約0モル%~約3.5モル%、約0モル%~約3モル%、約0モル%~約2.5モル%、約0モル%~約2モル%、約0モル%~約1.5モル%、約0モル%~約1モル%、約0モル%~約0.5モル%、約0モル%~約0.2モル%、約0モル%~約0.1モル%、約0.5モル%~約4モル%、約0.5モル%~約3.5モル%、約0.5モル%~約3モル%、約0.5モル%~約2.5モル%、約0.5モル%~約2モル%、約0.5モル%~約1.5モル%、又は約0.5モル%~約1モル%、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲内の量のK2Oを含んでよい。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物はK2Oを略含まなくてよい。
【0109】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物はLi2Oを略含まない。1つ以上の実施形態では、上記組成物中のNa2Oの量は、Li2Oの量より多くてよい。いくつかの例では、Na2Oの量は、Li2O及びK2Oの合計量より多くてよい。1つ以上の代替実施形態では、上記組成物中のLi2Oの量は、Na2Oの量、又はNa2O及びK2Oの合計量より多くてよい。
【0110】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0モル%~約2モル%の、ROの総量(これはCaO、MgO、BaO、ZnO、及びSrO等のアルカリ土類金属酸化物の総量である)を含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約2モル%以下のゼロではない量のROを含む。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0モル%~約1.8モル%、約0モル%~約1.6モル%、約0モル%~約1.5モル%、約0モル%~約1.4モル%、約0モル%~約1.2モル%、約0モル%~約1モル%、約0モル%~約0.8モル%、約0モル%~約0.5モル%、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲内の量のROを含む。
【0111】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約1モル%未満、約0.8モル%未満、又は約0.5モル%未満のCaOを含む。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物はCaOを略含まない。
【0112】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約0モル%~約7モル%、約0モル%~約6モル%、約0モル%~約5モル%、約0モル%~約4モル%、約0.1モル%~約7モル%、約0.1モル%~約6モル%、約0.1モル%~約5モル%、約0.1モル%~約4モル%、約1モル%~約7モル%、約2モル%~約6モル%、又は約3モル%~約6モル%、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲内の量のMgOを含む。
【0113】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0.2モル%以下、約0.18モル%未満、約0.16モル%未満、約0.15モル%未満、約0.14モル%未満、約0.12モル%未満のZrO2を含む。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0.01モル%~約0.2モル%、約0.01モル%~約0.18モル%、約0.01モル%~約0.16モル%、約0.01モル%~約0.15モル%、約0.01モル%~約0.14モル%、約0.01モル%~約0.12モル%、又は約0.01モル%~約0.10モル%、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲内のZrO2を含む。
【0114】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0.2モル%以下、約0.18モル%未満、約0.16モル%未満、約0.15モル%未満、約0.14モル%未満、約0.12モル%未満のSnO2を含む。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0.01モル%~約0.2モル%、約0.01モル%~約0.18モル%、約0.01モル%~約0.16モル%、約0.01モル%~約0.15モル%、約0.01モル%~約0.14モル%、約0.01モル%~約0.12モル%、又は約0.01モル%~約0.10モル%、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲内のSnO2を含む。
【0115】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、ガラス物品に色又は色合いを付与する酸化物を含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、ガラス物品を紫外線照射に暴露したときにガラス物品の脱色を防止する酸化物を含む。このような酸化物の例としては、限定するものではないが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ce、W、及びMoの酸化物が挙げられる。
【0116】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、Fe2O3として表されるFeを含み、ここでFeは、約1モル%以下の量で存在する。いくつかの実施形態では、ガラス組成物はFeを略含まない。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0.2モル%以下、約0.18モル%未満、約0.16モル%未満、約0.15モル%未満、約0.14モル%未満、約0.12モル%未満のFe2O3を含む。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0.01モル%~約0.2モル%、約0.01モル%~約0.18モル%、約0.01モル%~約0.16モル%、約0.01モル%~約0.15モル%、約0.01モル%~約0.14モル%、約0.01モル%~約0.12モル%、又は約0.01モル%~約0.10モル%、並びにこれらの間の全ての範囲及び部分範囲内のFe2O3を含む。
【0117】
ガラス組成物がTiO2を含む場合、TiO2は、約5モル%以下、約2.5モル%以下、約2モル%以下、又は約1モル%以下の量で存在してよい。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物はTiO2を略含まなくてよい。
【0118】
ある例示的なガラス組成物は、約65モル%~約75モル%のSiO2、約8モル%~約14モル%のAl2O3、約12モル%~約17モル%のNa2O、約0モル%~約0.2モル%のK2O、及び約1.5モル%~約6モル%のMgOを含む。任意に、SnO2は、本明細書の他の箇所で開示されている量で含まれていてよい。
【0119】
本開示の態様(1)は、車両内装システムであって、上記車両内装システムは:湾曲面を備えるベースと;第1の主面、第2の主面、上記第1の主面と上記第2の主面とを接続する副面、及び0.05mm~2mmの厚さを備えるガラス基板とを備え、上記第2の主面は、500mm以上である第1の曲率半径を有し、質量が6.8kgのインパクタが衝突速度5.35m/s~6.69m/sで上記第1の主面に衝突するとき、上記インパクタの減速は120g(g力)以下である、車両内装システムに関する。
【0120】
態様(2)は、上記インパクタの上記減速が、上記衝突の時間全体にわたるいずれの3msの間隔に関して80g以下である、態様(1)の車両内装システムに関する。
【0121】
態様(3)は、上記ディスプレイがタッチパネルディスプレイであり、上記ディスプレイモジュールがタッチパネルを備える、態様(1)又は(2)の車両内装システムに関する。
【0122】
態様(4)は、上記ガラス基板の上記第1の主面と上記第2の主面との間で測定された最大厚さが1.5mm以下である、態様(1)~(3)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0123】
態様(5)は、上記ガラス基板の上記第1の主面と上記第2の主面との間で測定された上記最大厚さが0.3mm~0.7mmである、態様(1)~(4)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0124】
態様(6)は、上記ガラス基板が化学強化ガラスを含む、態様(1)~(5)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0125】
態様(7)は、防眩性コーティング、反射防止コーティング、及び清掃容易化コーティングのうちの少なくとも1つが、上記ガラス基板の上記第1の主面上に配置される、態様(1)~(6)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0126】
態様(8)は、上記湾曲面上に配置されたディスプレイを更に備え、上記ディスプレイが、上記ガラス基板の上記第2の主面に取り付けられたディスプレイモジュールを備える、態様(1)~(7)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0127】
態様(9)は、上記ガラス基板の少なくとも1つの縁部領域が、縁部衝突性能の改善のために強化される、態様(1)~(8)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0128】
態様(10)は、上記縁部領域が研削された縁部を備える、態様(9)の車両内装システムに関する。
【0129】
態様(11)は、上記研削された縁部が、#400グリットより微細なグリットサイズの研削ツールによって達成される、態様(10)の車両内装システムに関する。
【0130】
態様(12)は、上記研削された縁部が、#600グリットより微細なグリットサイズの研削ツールによって達成される、態様(11)の車両内装システムに関する。
【0131】
態様(13)は、上記研削された縁部が、#1000グリットより微細なグリットサイズの研削ツールで更に研削することによって達成される、態様(11)又は(12)の車両内装システムに関する。
【0132】
態様(14)は、上記研削された縁部が、#1500グリットより微細なグリットサイズの研削ツールで更に研削することによって達成される、態様(11)又は(12)の車両内装システムに関する。
【0133】
態様(15)は、上記研削された縁部がイオン交換によって更に強化される、態様(10)~(14)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0134】
態様(16)は、上記イオン交換後に、強化ポリマー層が上記研削された縁部上に形成される、態様(15)の車両内装システムに関する。
【0135】
態様(17)は、上記研削された縁部が、ウェット酸エッチングで縁部損傷を除去することにより更に強化され、またイオン交換によって更に強化される、態様(10)~(14)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0136】
態様(18)は、上記縁部が強化ポリマー層を更に備える、態様(17)の車両内装システムに関する。
【0137】
態様(19)は、上記研削された縁部が、ドライエッチングプロセスでのエッチングによって更に強化され、またイオン交換によって更に強化される、態様(10)~(14)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0138】
態様(20)は、上記縁部が強化ポリマー層を更に備える、態様(19)の車両内装システムに関する。
【0139】
態様(21)は、上記ガラス基板を上記ベースに接着する接着剤を更に含む、態様(1)~(20)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0140】
態様(22)は、上記接着剤のヤング率が300MPa以上である、態様(21)の車両内装システムに関する。
【0141】
態様(23)は、上記接着剤のヤング率が800MPa以上である、態様(22)の車両内装システムに関する。
【0142】
態様(24)は、上記第1の主面に上記インパクタが衝突した場合に、上記ガラス基板が破壊されない、又は破断しない、態様(1)~(23)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0143】
態様(25)は、上記第1の主面が、約40μmの層深さ(DOL)で700MPa超の圧縮応力を有する、態様(1)~(24)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0144】
態様(26)は、低摩擦コーティングが上記ガラス基板の上記第1の主面上に配置される、態様(1)~(25)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0145】
態様(27)は、上記ガラス基板の上記第1の主面及び上記第2の主面が、粉砕防止フィルムを実質的に有しない、態様(6)の車両内装システムに関する。
【0146】
本開示の態様(28)は、態様(1)~(27)のいずれか1つに記載の車両内装システムを作製する方法であって、ガラス基板を上記ガラス基板のガラス転移温度未満の温度で湾曲させるステップを含む、方法に関する。
【0147】
態様(29)は、基板を上記ガラス基板で湾曲させるステップを更に含む、態様(28)の方法に関する。
【0148】
本開示の態様(30)は、態様(1)~(26)のいずれか1つに記載の車両内装システムを作製する方法であって、ガラス基板を上記ガラス基板のガラス転移温度より高い温度で湾曲させるステップを含む、方法に関する。
【0149】
本開示の態様(31)は、車両内装システムであって、上記車両内装システムは:湾曲面を備えるベースと;第1の主面、第2の主面、上記第1の主面と上記第2の主面とを接続する副面、及び0.05mm~2mmの厚さを備えるガラス基板と;上記ベースと上記ガラス基板との間の接着層とを備え、上記ガラス基板は、上記ガラス基板のガラス転移温度未満の温度で、上記ベースに一致するように冷間形成された状態であり、上記第2の主面は、上記接着剤によって上記ベースに取り付けられ、上記第2の主面は、上記ベースの上記湾曲面に対応する第1の曲率半径を有し、上記冷間形成された状態において、上記ガラス基板は、上記ガラス基板の破砕性の改善のための所定の値未満の貯蔵内部引張エネルギを有する、車両内装システムに関する。
【0150】
態様(32)は、上記ガラス基板の厚さが0.4mm~1.1mmである、態様(31)の車両内装システムに関する。
【0151】
態様(33)は、上記化学強化ガラス基板の厚さが0.4mm~0.7mmである、態様(32)の車両内装システムに関する。
【0152】
態様(34)は、上記第2の主面の曲率半径が1000mm以上である、態様(31)~(33)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0153】
態様(35)は、上記第2の主面の曲率半径が1000mm未満である、態様(31)~(33)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0154】
態様(36)は、上記接着剤が光学的に透明の接着剤である、態様(31)~(34)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0155】
態様(37)は、上記ベースが、上記ベースの少なくとも1つの領域に、ディスプレイユニットを備える、態様(31)~(35)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0156】
態様(38)は、上記第1の主面が、上記貯蔵内部引張エネルギが上記所定の値未満となるような、圧縮応力及び層深さ(DOL)を有する、態様(31)~(36)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0157】
態様(39)は、上記貯蔵内部引張エネルギが、上記ガラス基板の上記第1の曲率半径を備える領域において、上記所定の値未満である、態様(37)の車両内装システムに関する。
【0158】
態様(40)は、上記貯蔵内部引張エネルギの上記所定の値未満において、上記ガラス基板の破断後に、上記ディスプレイが視聴者によって読み取り可能な状態のままである、態様(36)~(38)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0159】
態様(41)は、上記ガラス基板が化学強化されている、態様(31)~(40)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0160】
態様(42)は、粉砕防止フィルムが上記ガラス基板に取り付けられていない、態様(41)の車両内装システムに関する。
【0161】
本開示の態様(43)は、車両内装システムを作製する方法であって、上記方法は:第1の曲率半径を有する表面を備えるベースを提供するステップ;ガラス基板を化学強化して、上記ガラス基板の厚さ及び上記ガラス基板の所望の最小曲率半径に基づく、所望のイオン交換プロファイルを達成するステップ;並びに上記ベースの上記表面に一致するように上記ガラス基板を曲げるステップを含み、上記曲げるステップは、上記ガラス基板のガラス転移温度未満の温度で実施され、上記ガラス基板は、上記ガラス基板の上記所望の最小曲率半径より大きな曲率半径を有し、上記ガラス基板は、上記曲げるステップの後、所定のエネルギ量未満の貯蔵内部引張エネルギを有し、上記所定のエネルギ量は、上記ガラス基板の上記厚さ、上記ガラス基板の圧縮応力、上記ガラス基板の層深さ、及び上記所望の最小曲率半径の関数であり、上記所定のエネルギ量未満において、上記ガラス基板は改善された破砕性を有する、方法に関する。
【0162】
本開示の態様(44)は、車両内装システムであって、上記車両内装システムは:湾曲面を備えるベースと;車両内に上記ベースを設置するための設置機構と;第1の主面、第2の主面、及び上記第1の主面と上記第2の主面とを接続する副面を備えるガラス基板とを備え、上記第2の主面は上記ベースに取り付けられ、また第1の曲率半径を有し、質量が6.8kgのインパクタが衝突速度5.35m/s~6.69m/sで上記第1の主面に衝突するとき、上記インパクタの上記減速は120g(g力)以下である、車両内装システムに関する。
【0163】
態様(45)は、上記設置機構が設置用ブラケット又はクランプを備える、態様(44)の車両内装システムに関する。
【0164】
態様(46)は、上記ベースと上記ガラス基板との組み合わせが第1の剛度K1を有する、態様(44)又は(45)の車両内装システムに関する。
【0165】
態様(47)は、上記設置機構が、上記車両内装システムの侵入を所望の最大侵入レベルに制限する第2の剛度K2を有する、態様(44)~(46)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0166】
態様(48)は、上記車両内装システムが、以下:
Ks=(K1×K2)/(K1+K2)
として定義されるシステム剛度Ksを有する、態様(46)又は(47)の車両内装システムに関する。
【0167】
態様(49)は、上記システム剛度Ksが、上記ガラス基板が上記インパクタの衝突によって破断しない範囲内である、態様(48)の車両内装システムに関する。
【0168】
態様(50)は、上記ガラス基板の厚さが0.05mm~2mmである、態様(44)の車両内装システムに関する。
【0169】
態様(51)は、上記第2の主面が500mm以上の第1の曲率半径を備える、態様(44)~(50)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0170】
態様(52)は、上記インパクタの上記減速が、上記衝突の時間全体にわたるいずれの3msの間隔に関して80g以下である、態様(44)~(51)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0171】
態様(53)は、上記湾曲面上に配置されたディスプレイを更に備え、上記ディスプレイが、上記ガラス基板の上記第2の主面に取り付けられたディスプレイモジュールを備える、態様(44)~(52)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0172】
態様(54)は、上記ディスプレイがタッチパネルディスプレイである、態様(53)の車両内装システムに関する。
【0173】
態様(55)は、上記第1の主面と上記第2の主面との間で測定される上記ガラス基板の最大厚さが1.5mm以下である、態様(44)~(54)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0174】
態様(56)は、上記第1の主面と上記第2の主面との間で測定される上記ガラス基板の上記最大厚さが0.3mm~0.7mmである、態様(44)~(55)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0175】
態様(57)は、上記ガラス基板が化学強化ガラスを含む、態様(44)~(56)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0176】
態様(58)は、上記第1の主面及び上記第2の主面が粉砕防止フィルムを実質的に含まない、態様(57)の車両内装システムに関する。
【0177】
態様(59)は、防眩性コーティング、反射防止コーティング、及び清掃容易化コーティングのうちの少なくとも1つが、上記ガラス基板の上記第1の主面上に配置される、態様(44)~(58)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0178】
態様(60)は、上記第1の主面が、約40μmの層深さ(DOL)で700MPa超の圧縮応力を有する、態様(44)~(59)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0179】
態様(61)は、低摩擦コーティングが上記ガラス基板の上記第1の主面上に配置される、態様(44)~(60)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0180】
態様(62)は、質量が6.8kgのインパクタが、上記第1の主面又は上記副面に対して90°未満の角度で、衝突速度5.35m/s~6.69m/sで上記ガラス基板に対して移動しながら、上記ガラス基板の縁部に衝突するとき、上記インパクタの上記減速が120g(g力)以下である、態様(1)~(27)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0181】
態様(63)は、上記角度が上記第1の主面に対して約45°である、態様(62)の車両内装システムに関する。
【0182】
態様(64)は、上記縁部に衝突する上記インパクタの上記減速が、衝突の時間全体にわたるいずれの3msの間隔に関して80g以下である、態様(62)又は(63)の車両内装システムに関する。
【0183】
態様(65)は、上記ガラス基板の上記縁部が、上記第1の主面と上記副面との交線を含む、態様(62)~(64)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0184】
態様(66)は、上記ガラス基板が、上記縁部に上記角度で衝突する上記インパクタによって破壊されない又は破断しない、態様(62)~(65)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0185】
態様(67)は、上記ガラス基板を上記ベースに接着する接着剤を更に備え、上記接着剤が構造接着剤又はエポキシである、態様(62)~(66)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0186】
態様(68)は、上記接着剤が比較的高いヤング率を有する、態様(67)の車両内装システムに関する。
【0187】
態様(69)は、上記接着剤のヤング率が300MPa以上である、態様(67)又は(68)の車両内装システムに関する。
【0188】
態様(70)は、上記ヤング率が800MPa以上である、態様(69)の車両内装システムに関する。
【0189】
態様(71)は、上記ガラス基板の上記縁部が、車両内装の乗客の環境に露出している、態様(62)~(70)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0190】
態様(72)は、上記ガラス基板の上記副面が、上記車両内装の乗客の環境に露出している、態様(62)~(71)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0191】
態様(73)は、上記縁部に上記角度で衝突する際の上記インパクタの上記減速が、衝突の時間全体にわたるいずれの3msの間隔に関して80g以下である、態様(62)~(72)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0192】
態様(74)は、上記縁部に上記角度で衝突する際の上記インパクタの上記減速が、衝突の時間全体にわたるいずれの3msの間隔に関して50g以下である、態様(73)の車両内装システムに関する。
【0193】
態様(75)は、上記縁部に上記角度で衝突する際の上記インパクタのピーク減速が、衝突の時間全体にわたって105g以下である、態様(62)~(74)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0194】
態様(76)は、上記縁部に上記角度で衝突する際の上記インパクタのピーク減速が、衝突の時間全体にわたって100g以下である、態様(75)の車両内装システムに関する。
【0195】
態様(77)は、上記縁部に上記角度で衝突する際の上記インパクタのピーク減速が、衝突の時間全体にわたって70g以下である、態様(76)の車両内装システムに関する。
【0196】
態様(78)は、上記縁部に上記角度で衝突する際の、上記車両内装システムの後方の空間への上記車両内装システムの侵入が、60mm以下である、態様(64)~(77)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0197】
態様(79)は、上記縁部に上記角度で衝突する際の、上記車両内装システムの後方の空間への上記車両内装システムの侵入が、55mm以下である、態様(78)の車両内装システムに関する。
【0198】
態様(80)は、上記縁部に上記角度で衝突する際の、上記車両内装システムの後方の空間への上記車両内装システムの侵入が、50mm以下である、態様(79)の車両内装システムに関する。
【0199】
態様(81)は、上記ヤング率が1GPa以上である、態様(70)の車両内装システムに関する。
【0200】
態様(82)は、上記ヤング率が1.5GPa以上である、態様(81)の車両内装システムに関する。
【0201】
態様(83)は、上記ヤング率が約1.55GPaである、態様(82)の車両内装システムに関する。
【0202】
態様(84)は、38.1mmの直径を有する222gの質量が、上記第1の主面又は上記副面に対して90°未満の角度で上記ガラス基板に向かって移動しながら、ある落下高さから上記ガラス基板の縁部に落下するとき、上記落下高さが15cm以下である場合に上記ガラス基板が破壊されない又は破断しない、態様(1)~(27)及び態様(62)~(83)のいずれか1つの車両内装システムに関する。
【0203】
態様(85)は、上記落下高さが25cm以下である場合に、上記ガラス基板が破壊されない又は破断しない、態様(84)の車両内装システムに関する。
【0204】
態様(86)は、上記落下高さが35cm以下である場合に、上記ガラス基板が破壊されない又は破断しない、態様(85)の車両内装システムに関する。
【0205】
態様(87)は、上記落下高さが45cm以下である場合に、上記ガラス基板が破壊されない又は破断しない、態様(86)の車両内装システムに関する。
【0206】
本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
【0207】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0208】
実施形態1
車両内装システムであって、
上記車両内装システムは:
湾曲面を備えるベースと;
第1の主面、第2の主面、上記第1の主面と上記第2の主面とを接続する副面、及び0.05mm~2mmの厚さを備えるガラス基板と
を備え、
上記第2の主面は、500mm以上である第1の曲率半径を有し、
質量が6.8kgのインパクタが衝突速度5.35m/s~6.69m/sで上記第1の主面に衝突するとき、上記インパクタの減速は120g(g力)以下である、車両内装システム。
【0209】
実施形態2
上記インパクタの上記減速は、上記衝突の時間全体にわたるいずれの3msの間隔に関して80g以下である、実施形態1に記載の車両内装システム。
【0210】
実施形態3
上記ディスプレイはタッチパネルディスプレイであり、上記ディスプレイモジュールはタッチパネルを備える、実施形態1又は2に記載の車両内装システム。
【0211】
実施形態4
上記ガラス基板の上記第1の主面と上記第2の主面との間で測定された最大厚さは1.5mm以下である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0212】
実施形態5
上記ガラス基板の上記第1の主面と上記第2の主面との間で測定された上記最大厚さは0.3mm~0.7mmである、実施形態1~4のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0213】
実施形態6
上記ガラス基板は化学強化ガラスを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0214】
実施形態7
防眩性コーティング、反射防止コーティング、及び清掃容易化コーティングのうちの少なくとも1つが、上記ガラス基板の上記第1の主面上に配置される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0215】
実施形態8
上記湾曲面上に配置されたディスプレイを更に備え、上記ディスプレイは、上記ガラス基板の上記第2の主面に取り付けられたディスプレイモジュールを備える、実施形態1~7のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0216】
実施形態9
上記ガラス基板の少なくとも1つの縁部領域は、縁部衝突性能の改善のために強化される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0217】
実施形態10
上記縁部領域は研削された縁部を備える、実施形態9に記載の車両内装システム。
【0218】
実施形態11
上記研削された縁部は、#400グリットより微細なグリットサイズの研削ツールによって達成される、実施形態10に記載の車両内装システム。
【0219】
実施形態12
上記研削された縁部は、#600グリットより微細なグリットサイズの研削ツールによって達成される、実施形態11に記載の車両内装システム。
【0220】
実施形態13
上記研削された縁部は、#1000グリットより微細なグリットサイズの研削ツールで更に研削することによって達成される、実施形態11又は12に記載の車両内装システム。
【0221】
実施形態14
上記研削された縁部は、#1500グリットより微細なグリットサイズの研削ツールで更に研削することによって達成される、実施形態11又は12に記載の車両内装システム。
【0222】
実施形態15
上記研削された縁部はイオン交換によって更に強化される、実施形態10~14のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0223】
実施形態16
上記イオン交換後に、強化ポリマー層が上記研削された縁部上に形成される、実施形態15に記載の車両内装システム。
【0224】
実施形態17
上記研削された縁部は、ウェット酸エッチングで縁部損傷を除去することにより更に強化され、またイオン交換によって更に強化される、実施形態10~14のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0225】
実施形態18
上記縁部は強化ポリマー層を更に備える、実施形態17に記載の車両内装システム。
【0226】
実施形態19
上記研削された縁部は、ドライエッチングプロセスでのエッチングによって更に強化され、またイオン交換によって更に強化される、実施形態10~14のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0227】
実施形態20
上記縁部は強化ポリマー層を更に備える、実施形態19に記載の車両内装システム。
【0228】
実施形態21
上記ガラス基板を上記ベースに接着する接着剤を更に含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0229】
実施形態22
上記接着剤のヤング率は300MPa以上である、実施形態21に記載の車両内装システム。
【0230】
実施形態23
上記接着剤のヤング率は800MPa以上である、実施形態22に記載の車両内装システム。
【0231】
実施形態24
上記第1の主面に上記インパクタが衝突した場合に、上記ガラス基板は破壊されない、又は破断しない、実施形態1~23のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0232】
実施形態25
上記第1の主面は、約40μmの層深さ(DOL)で700MPa超の圧縮応力を有する、実施形態1~24のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0233】
実施形態26
低摩擦コーティングが上記ガラス基板の上記第1の主面上に配置される、実施形態1~25のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0234】
実施形態27
上記ガラス基板の上記第1の主面及び上記第2の主面は、粉砕防止フィルムを実質的に有しない、実施形態6に記載の車両内装システム。
【0235】
実施形態28
実施形態1~27のいずれか1つに記載の車両内装システムを作製する方法であって、ガラス基板を上記ガラス基板のガラス転移温度未満の温度で湾曲させるステップを含む、方法。
【0236】
実施形態29
基板を上記ガラス基板で湾曲させるステップを更に含む、実施形態28に記載の方法。
【0237】
実施形態30
実施形態1~26のいずれか1つに記載の車両内装システムを作製する方法であって、ガラス基板を上記ガラス基板のガラス転移温度より高い温度で湾曲させるステップを含む、方法。
【0238】
実施形態31
車両内装システムであって、
上記車両内装システムは:
湾曲面を備えるベースと;
第1の主面、第2の主面、上記第1の主面と上記第2の主面とを接続する副面、及び0.05mm~2mmの厚さを備えるガラス基板と;
上記ベースと上記ガラス基板との間の接着層と
を備え、
上記ガラス基板は、上記ガラス基板のガラス転移温度未満の温度で、上記ベースに一致するように冷間形成された状態であり、
上記第2の主面は、上記接着剤によって上記ベースに取り付けられ、
上記第2の主面は、上記ベースの上記湾曲面に対応する第1の曲率半径を有し、
上記冷間形成された状態において、上記ガラス基板は、上記ガラス基板の破砕性の改善のための所定の値未満の貯蔵内部引張エネルギを有する、車両内装システム。
【0239】
実施形態32
上記ガラス基板の厚さは0.4mm~1.1mmである、実施形態31に記載の車両内装システム。
【0240】
実施形態33
上記化学強化ガラス基板の厚さは0.4mm~0.7mmである、実施形態32に記載の車両内装システム。
【0241】
実施形態34
上記第2の主面の曲率半径は1000mm以上である、実施形態31~33のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0242】
実施形態35
上記第2の主面の曲率半径は1000mm未満である、実施形態31~33のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0243】
実施形態36
上記接着剤は光学的に透明の接着剤である、実施形態31~34のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0244】
実施形態37
上記ベースは、上記ベースの少なくとも1つの領域に、ディスプレイユニットを備える、実施形態31~35のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0245】
実施形態38
上記第1の主面は、上記貯蔵内部引張エネルギが上記所定の値未満となるような、圧縮応力及び層深さ(DOL)を有する、実施形態31~36のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0246】
実施形態39
上記貯蔵内部引張エネルギは、上記ガラス基板の上記第1の曲率半径を備える領域において、上記所定の値未満である、実施形態37に記載の車両内装システム。
【0247】
実施形態40
上記貯蔵内部引張エネルギの上記所定の値未満において、上記ガラス基板の破断後に、上記ディスプレイは視聴者によって読み取り可能な状態のままである、実施形態36~38のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0248】
実施形態41
上記ガラス基板は化学強化されている、実施形態31~40のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0249】
実施形態42
粉砕防止フィルムは上記ガラス基板に取り付けられていない、実施形態41に記載の車両内装システム。
【0250】
実施形態43
車両内装システムを作製する方法であって、
上記方法は:
第1の曲率半径を有する表面を備えるベースを提供するステップ;
ガラス基板を化学強化して、上記ガラス基板の厚さ及び上記ガラス基板の所望の最小曲率半径に基づく、所望のイオン交換プロファイルを達成するステップ;並びに
上記ベースの上記表面に一致するように上記ガラス基板を曲げるステップ
を含み、
上記曲げるステップは、上記ガラス基板のガラス転移温度未満の温度で実施され、上記ガラス基板は、上記ガラス基板の上記所望の最小曲率半径より大きな曲率半径を有し、
上記ガラス基板は、上記曲げるステップの後、所定のエネルギ量未満の貯蔵内部引張エネルギを有し、上記所定のエネルギ量は、上記ガラス基板の上記厚さ、上記ガラス基板の圧縮応力、上記ガラス基板の層深さ、及び上記所望の最小曲率半径の関数であり、
上記所定のエネルギ量未満において、上記ガラス基板は改善された破砕性を有する、方法。
【0251】
実施形態44
車両内装システムであって、
上記車両内装システムは:
湾曲面を備えるベースと;
車両内に上記ベースを設置するための設置機構と;
第1の主面、第2の主面、及び上記第1の主面と上記第2の主面とを接続する副面を備えるガラス基板と
を備え、
上記第2の主面は上記ベースに取り付けられ、また第1の曲率半径を有し、
質量が6.8kgのインパクタが衝突速度5.35m/s~6.69m/sで上記第1の主面に衝突するとき、上記インパクタの上記減速は120g(g力)以下である、車両内装システム。
【0252】
実施形態45
上記設置機構は設置用ブラケット又はクランプを備える、実施形態44に記載の車両内装システム。
【0253】
実施形態46
上記ベースと上記ガラス基板との組み合わせは、第1の剛度K1を有する、実施形態44又は45に記載の車両内装システム。
【0254】
実施形態47
上記設置機構は、上記車両内装システムの侵入を所望の最大侵入レベルに制限する第2の剛度K2を有する、実施形態44~46のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0255】
実施形態48
上記車両内装システムは、以下:
Ks=(K1×K2)/(K1+K2)
として定義されるシステム剛度Ksを有する、実施形態46又は47に記載の車両内装システム。
【0256】
実施形態49
上記システム剛度Ksは、上記ガラス基板が上記インパクタの衝突によって破断しない範囲内である、実施形態48に記載の車両内装システム。
【0257】
実施形態50
上記ガラス基板の厚さは0.05mm~2mmである、実施形態44に記載の車両内装システム。
【0258】
実施形態51
上記第2の主面は500mm以上の第1の曲率半径を備える、実施形態44~50のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0259】
実施形態52
上記インパクタの上記減速は、上記衝突の時間全体にわたるいずれの3msの間隔に関して80g以下である、実施形態44~51のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0260】
実施形態53
上記湾曲面上に配置されたディスプレイを更に備え、上記ディスプレイは、上記ガラス基板の上記第2の主面に取り付けられたディスプレイモジュールを備える、実施形態44~52のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0261】
実施形態54
上記ディスプレイはタッチパネルディスプレイである、実施形態53に記載の車両内装システム。
【0262】
実施形態55
上記第1の主面と上記第2の主面との間で測定される上記ガラス基板の最大厚さは1.5mm以下である、実施形態44~54のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0263】
実施形態56
上記第1の主面と上記第2の主面との間で測定される上記ガラス基板の上記最大厚さは0.3mm~0.7mmである、実施形態44~55のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0264】
実施形態57
上記ガラス基板は化学強化ガラスを含む、実施形態44~56のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0265】
実施形態58
上記第1の主面及び上記第2の主面は、粉砕防止フィルムを実質的に含まない、実施形態57に記載の車両内装システム。
【0266】
実施形態59
防眩性コーティング、反射防止コーティング、及び清掃容易化コーティングのうちの少なくとも1つは、上記ガラス基板の上記第1の主面上に配置される、実施形態44~58のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0267】
実施形態60
上記第1の主面は、約40μmの層深さDOLで700MPa超の圧縮応力を有する、実施形態44~59のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0268】
実施形態61
低摩擦コーティングは上記ガラス基板の上記第1の主面上に配置される、実施形態44~60のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0269】
実施形態62
質量が6.8kgのインパクタが、上記第1の主面又は上記副面に対して90°未満の角度で、衝突速度5.35m/s~6.69m/sで上記ガラス基板に対して移動しながら、上記ガラス基板の縁部に衝突するとき、上記インパクタの上記減速は120g(g力)以下である、実施形態1~27のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0270】
実施形態63
上記角度は上記第1の主面に対して約45°である、実施形態62に記載の車両内装システム。
【0271】
実施形態64
上記縁部に衝突する上記インパクタの上記減速は、衝突の時間全体にわたるいずれの3msの間隔に関して80g以下である、実施形態62又は63に記載の車両内装システム。
【0272】
実施形態65
上記ガラス基板の上記縁部は、上記第1の主面と上記副面との交線を含む、実施形態62~64のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0273】
実施形態66
上記ガラス基板は、上記縁部に上記角度で衝突する上記インパクタによって破壊されない又は破断しない、実施形態62~65のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0274】
実施形態67
上記ガラス基板を上記ベースに接着する接着剤を更に備え、上記接着剤は構造接着剤又はエポキシである、実施形態62~66のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0275】
実施形態68
上記接着剤は比較的高いヤング率を有する、実施形態67に記載の車両内装システム。
【0276】
実施形態69
上記接着剤のヤング率は300MPa以上である、実施形態67又は68に記載の車両内装システム。
【0277】
実施形態70
上記ヤング率は800MPa以上である、実施形態69に記載の車両内装システム。
【0278】
実施形態71
上記ガラス基板の上記縁部は、車両内装の乗客の環境に露出している、実施形態62~70のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0279】
実施形態72
上記ガラス基板の上記副面は、上記車両内装の乗客の環境に露出している、実施形態62~71のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0280】
実施形態73
上記縁部に上記角度で衝突する際の上記インパクタの上記減速は、衝突の時間全体にわたるいずれの3msの間隔に関して80g以下である、実施形態62~72のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0281】
実施形態74
上記縁部に上記角度で衝突する際の上記インパクタの上記減速は、衝突の時間全体にわたるいずれの3msの間隔に関して50g以下である、実施形態73に記載の車両内装システム。
【0282】
実施形態75
上記縁部に上記角度で衝突する際の上記インパクタのピーク減速は、衝突の時間全体にわたって105g以下である、実施形態62~74のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0283】
実施形態76
上記縁部に上記角度で衝突する際の上記インパクタのピーク減速は、衝突の時間全体にわたって100g以下である、実施形態75に記載の車両内装システム。
【0284】
実施形態77
上記縁部に上記角度で衝突する際の上記インパクタのピーク減速は、衝突の時間全体にわたって70g以下である、実施形態76に記載の車両内装システム。
【0285】
実施形態78
上記縁部に上記角度で衝突する際の、上記車両内装システムの後方の空間への上記車両内装システムの侵入は、60mm以下である、実施形態64~77のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0286】
実施形態79
上記縁部に上記角度で衝突する際の、上記車両内装システムの後方の空間への上記車両内装システムの侵入は、55mm以下である、実施形態78に記載の車両内装システム。
【0287】
実施形態80
上記縁部に上記角度で衝突する際の、上記車両内装システムの後方の空間への上記車両内装システムの侵入は、50mm以下である、実施形態79に記載の車両内装システム。
【0288】
実施形態81
上記ヤング率は1GPa以上である、実施形態70に記載の車両内装システム。
【0289】
実施形態82
上記ヤング率は1.5GPa以上である、実施形態81に記載の車両内装システム。
【0290】
実施形態83
上記ヤング率は約1.55GPaである、実施形態82に記載の車両内装システム。
【0291】
実施形態84
38.1mmの直径を有する222gの質量が、上記第1の主面又は上記副面に対して90°未満の角度で上記ガラス基板に向かって移動しながら、ある落下高さから上記ガラス基板の縁部に落下するとき、上記落下高さが15cm以下である場合に上記ガラス基板が破壊されない又は破断しない、実施形態1~27及び実施形態62~83のいずれか1つに記載の車両内装システム。
【0292】
実施形態85
上記落下高さが25cm以下である場合に、上記ガラス基板が破壊されない又は破断しない、実施形態84に記載の車両内装システム。
【0293】
実施形態86
上記落下高さが35cm以下である場合に、上記ガラス基板が破壊されない又は破断しない、実施形態85に記載の車両内装システム。
【0294】
実施形態87
上記落下高さが45cm以下である場合に、上記ガラス基板が破壊されない又は破断しない、実施形態86に記載の車両内装システム。
【符号の説明】
【0295】
1 機械的フレーム又は固定物
2 設置用ブラケット
3 ディスプレイハウジング
4 ディスプレイ積層体
5 液体光学透明樹脂(LOCR)又は光学透明接着剤(OCA)フィルム
6 タッチパネル
7 追加のLOCR又はOCAフィルム
8 コーティング
9、11 カバーガラス
10 反射防止(AR)コーティング
10 車両内装
100、200、300 車両内装システム
110 中央コンソールベース
120、220、320 湾曲面
130、230、330 湾曲ディスプレイ
140 ガラス基板
150 ディスプレイモジュール
152 第1の主面
154 第2の主面
156 副面
160 接着剤、接着層
210 ダッシュボードベース
215 機器パネル
310 ダッシュボードステアリングホイールベース
400 ガラス基板
420 積層構造体、積層体
422 ガラス基板
426 追加の基板又は支持面
428 ヘッドフォーム
430 平坦面
432 凹面
434 凸面
436 布地材料
438 低摩擦コーティング、コーティング
440 アニーリング済みガラス
441、443 カバー
442 化学強化ガラス
500、510 ガラス
501 接着剤
502、512 基板
504、514 ブラケット
506、516 ヘッドフォーム
508、518 衝突点
509 歪み
511 接着剤、高弾性率接着剤
520 組立体
522 ボール
524 点