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特許7116169乳酸-グリコール酸共重合体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】乳酸-グリコール酸共重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/08 20060101AFI20220802BHJP
   C08G 63/87 20060101ALI20220802BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20220802BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
C08G63/08
C08G63/87
A61L27/18
C08L101/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020525741
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2019024050
(87)【国際公開番号】W WO2019244875
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2018117907
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】藻寄 陽子
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 潤一
(72)【発明者】
【氏名】東根 潤
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-026790(JP,A)
【文献】特開平06-065360(JP,A)
【文献】特表2017-500401(JP,A)
【文献】特開2009-144127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0309366(US,A1)
【文献】特表2005-519654(JP,A)
【文献】特開2002-358829(JP,A)
【文献】特開平11-255869(JP,A)
【文献】特開平06-256492(JP,A)
【文献】国際公開第97/012926(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が100,000~250,000であり、金属成分を含まず、グリコール酸単位の平均連鎖長が4以下であり、ラクチド及びグリコリドを原料とグリコール酸単位が前記共重合体の繰り返し単位中の10~35mol%を占める、医療材料用乳酸-グリコール酸共重合体。
【請求項2】
請求項1に記載の乳酸-グリコール酸共重合体を含む、医療材料用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の乳酸-グリコール酸共重合体、又は請求項に記載の樹脂組成物を含む医療材料用成形品。
【請求項4】
請求項1に記載の乳酸-グリコール酸共重合体、又は請求項に記載の樹脂組成物を含む医療材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子量を有する乳酸-グリコール酸共重合体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はこれらの共重合体に代表される、ヒドロキシカルボン酸から製造される脂肪族ポリエステルは、生分解性の高分子として注目され、例えば、縫合糸等の医用材料、医薬、農薬、肥料等の徐放性材料等多方面に利用されている。
【0003】
生体吸収性材料に用いることのできるポリヒドロキシカルボン酸の製造方法は既に幾例かが知られている。これらは一般的に、乳酸やグリコール酸等のヒドロキシカルボン酸を重縮合させる方法と、ラクチドやグリコリド等の環状エステルを開環重合させる方法とに分けられる。
【0004】
重縮合による方法として、特許文献1には、ヒドロキシカルボン酸及びそのオリゴマ-からの直接脱水法によって、ポリヒドロキシカルボン酸を得る方法が開示されている。この方法は金属成分を使用しないが、直接脱水による重合法ではエステル化の際の生成水を系外へ速やかに除去することが高分子量ポリマーを得るために必要であり、そのため、高い減圧度でなおかつ150℃以上の高温の反応条件が必要となる。しかしながら、高温の条件では分解反応も促進されるため、高分子量のポリヒドロキシカルボン酸とするのに非常に長い処理時間を要し、実用的に有用な高分子量の製品を得ることが困難である。
【0005】
また、特許文献2には、乳酸とグリコール酸の脱水縮合によって、乳酸-グリコール酸共重合体を得る方法が開示されているが、重量平均分子量は最大で30,000であるため、成形加工には不向きであり用途が限定される。
【0006】
一方、開環重合により生体吸収性材料に適したポリヒドロキシカルボン酸を得る方法としては、例えば無毒安定製剤としてアメリカ食品薬品局で認可されているオクチル酸スズを触媒とする方法が知られている(非特許文献1)。この方法は、高分子量のポリヒドロキシカルボン酸が比較的容易に得られるという長所があるが、触媒として特によく用いられているオクチル酸スズはその除去が困難であるため、最終的な製品に触媒は残存している。このような触媒の残存は、ポリヒドロキシカルボン酸の熱安定性に影響を及ぼす。
【0007】
オクタン酸スズ等の金属触媒を用いずに環状エステルを開環重合させる方法として、アミジン系触媒を用いた手法が知られている(特許文献3)。この手法では、高分子量体のポリ乳酸やポリグリコール酸が得られることが開示されているが、乳酸-グリコール酸のランダム共重合体は開示されておらず、PEG1000によって機能化された乳酸-グリコール酸ジブロック共重合体が開示されているのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平6-65360号公報
【文献】特開平11-1443号公報
【文献】特許第04503860号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Polymer Vol.20(1979)1459-1464頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は上記従来の問題を解消し、特定の条件により反応を制御することによって得られる、高分子量でありながら有機溶媒への溶解性が高い乳酸-グリコール酸共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、乳酸-グリコール酸共重合体の反応において、ラクチドの重合反応を開始した直後からグリコリドを逐次添加することにより、グリコール酸単位の平均連鎖長が4以下になるよう反応制御することで、金属成分を含まない高分子量の乳酸-グリコール酸共重合体を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、即ち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]重量平均分子量が50,000~300,000であり、金属成分を含まず、グリコール酸単位の平均連鎖長が4以下である、乳酸-グリコール酸共重合体。
[2]グリコール酸単位が、前記共重合体の繰り返し単位中の1~50mol%を占める、[1]に記載の乳酸-グリコール酸共重合体。
[3]前記重量平均分子量が70,000~250,000である、[2]に記載の乳酸-グリコール酸共重合体。
[4]前記重量平均分子量が100,000~250,000である、[3]に記載の乳酸-グリコール酸共重合体。
[5]グリコール酸単位が、前記共重合体の繰り返し単位中の1~35mol%を占める、[1]~[4]のいずれかに記載の乳酸-グリコール酸共重合体。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の乳酸-グリコール酸共重合体を含む樹脂組成物。
[7][1]~[5]のいずれかに記載の乳酸-グリコール酸共重合体、又は[6]に記載の樹脂組成物を含む成形品。
[8][1]~[5]のいずれかに記載の乳酸-グリコール酸共重合体、又は[6]に記載の樹脂組成物を含む医療材料。
[9]ラクチドを含む溶液に、アミジン系触媒及び重合開始剤を接触させて反応を開始する工程と、
反応開始直後から、グリコリドを含む溶液を反応溶液に逐次添加する工程とを含む、乳酸-グリコール酸共重合体の製造方法。
[10]グリコリドを含む溶液を、反応開始直後から0.3~12g/分で逐次添加する、[9]に記載の乳酸-グリコール酸共重合体の製造方法。
[11]ラクチドを含む溶液の濃度が10~35重量%であり、グリコリドを含む溶液の濃度が15~35重量%である、[9]又は[10]に記載の乳酸-グリコール酸共重合体の製造方法。
[12]アミジン系触媒が、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ-5-エン、1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカーエン又はN’-tert-ブチル-N,N-ジメチルホルムアミジンジアザビシクロウンデセンである、[9]~[11]のいずれかに記載の乳酸-グリコール酸共重合体の製造方法。
[13]ラクチド又はグリコリドを含む溶液の溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、N,N’-ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドからなる群より選択される1種又はそれらの組み合わせである、[9]~[12]のいずれかに記載の乳酸-グリコール酸共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
一般的に、乳酸-グリコール酸共重合反応は、グリコリドやグリコール酸ポリマーが有機溶媒に対して溶解性が低く、また、ラクチドとグリコリドの開環重合速度が異なるため反応制御が難しい。本発明によれば、特定の条件下で反応を行うことで、ポリマーが析出することなく、重合反応が溶液中で均一に進行するため、高分子量であるにも関わらず有機溶媒への溶解性が高い乳酸-グリコール酸共重合体を得ることができる。そのため、成形品等への加工にも適している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
[乳酸-グリコール酸共重合体]
本発明の乳酸-グリコール酸共重合体(以下「本発明の共重合体」とも称す)は乳酸単位とグリコール酸単位とからなり、乳酸単位とは、L-乳酸及び/又はD-乳酸を主成分とする重合体である。乳酸単位を構成する原料として用いられるラクチドの光学純度は、特に限定されるものではなく、Lーラクチド単体もしくはD-ラクチド単体又はそれらの混合物でもよい。
【0014】
本発明の共重体は、後述するように有機触媒であり除去可能なアミジン系触媒を用いて製造されるため、触媒由来の金属成分を含まないという特徴がある。金属成分は、ポリマー樹脂の変色や安定性、生体中での安全性の点で含まない方がよく、この点から、本発明の共重合体は、医療材料に好適に適用することができる。本発明において「金属成分を含まず」又は「金属成分を含まない」とは、金属触媒由来の金属原子を含まないことを意味する。具体的には、ICP発光分析法、原子吸光分析法あるいは比色法等の公知の分析手法で、ポリマー中の金属原子の検出を試みた場合に、検出限界以下であるときに金属触媒由来の金属原子を含まないと言える。金属触媒由来の金属原子としては、スズ、アルミ、チタン、ジルコニウム、アンチモン等が挙げられる。
【0015】
本発明の共重合体において、重量平均分子量は所望される物性や用途に応じて選択すればよく、下限としては、50,000以上、60,000以上、70,000以上、80,000以上、90,000以上、100,000以上、110,000以上又は120,000以上を採用することができる。上限としては、300,000以下、250,000以下、200,000以下、180,000以下又は160,000以下を採用することができる。機械物性や耐加水分解性の観点からは、10万以上の範囲であると加工用途が広がる。なお、重量平均分子量とは、溶媒としてクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量の値である。
【0016】
本発明の共重合体は、グリコール酸単位の平均連鎖長が4以下であることが重要であり、4を超えると反応が均一に進行しないため高分子量の重合体が得られなくなる。より好ましい平均連鎖長は3.5以下である。下限は特に限定されないが、通常1以上であり、反応制御の点からは2以上であってもよい。
【0017】
本発明の共重合体は、機械物性に優れるという点で、分子量分布が1以上4以下であることが好ましく、ポリマー物性が均一となる点からは、1以上3以下がより好ましい。分子量分布が4を超える場合、ポリマー物性にばらつきが生じるため好ましくない。分子量分布が1未満である場合、溶融粘度が低く、成形加工性に劣るため好ましくない。なお、分子量分布とは、溶媒としてクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算の数平均分子量に対する重量平均分子量の比である。
【0018】
本発明の共重合体は、乳酸単位(x)とグリコール酸単位(y)の構成比がx/y=99/1~1/99(モル比)である。高分子量及び溶解性に優れる共重合体を効率的に得ることができるという点で、グリコール酸単位が、共重合体の繰り返し単位中で1~50モル%含むことが好ましく、より好ましくは1~40モル%含み、更に好ましくは1~35モル%含む。
【0019】
本発明の共重合体は、より均一な特性が得られる点から、ランダム構造を有することが好ましい。ブロック共重合体である場合、グリコール酸単位の特性が溶解性に影響するため好ましくない。
【0020】
本発明の共重合体において、ガラス転移温度は40~65℃であることが好ましい。65℃以上の場合、乳酸-グリコール酸共重合体のポリ乳酸セグメントが大きく、溶解性の点で好ましくない。なお、ガラス転移温度とは、T・A・インスツルメント社製示差走査型熱量計(Q20)により試料10mgを窒素雰囲気下中、30℃から速度20℃/分で250℃まで昇温、250℃で3分間保持、250℃から速度20℃/分で30℃まで降温、30℃で1分間保持した後、30℃から速度20℃/分で250℃まで昇温することによって測定される温度である。
【0021】
本発明において、乳酸-グリコール酸共重合体の性能を損なわない範囲で、他の共重合成分単位を含んでいてもよく、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が挙げられ、具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等の多価カルボン酸類又はそれらの誘導体、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した多価アルコール、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類又はそれらの誘導体、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類、及びグリコリド、ε-カプロラクトングリコリド、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、δ-ブチロラクトン、β-又はγ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。
【0022】
本発明の共重合体は、目的に応じてその他の物質を加えた組成物として用いることもできる。その他の物質としては、例えば樹脂(ポリマー)としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、乳酸とカプロラクトンの共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシブチレイト吉草酸、ポリリンゴ酸、ポリ-α-アミノ酸、ポリオルソエステル、セルロース、コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、桂皮酸、桂皮酸誘導体等の生分解性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(エチレン-2,6-ナフタレート)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ABS樹脂が挙げられ、その他、金属や金属塩等の無機化合物、酸化防止剤やその他の添加剤、有機溶媒等が挙げられる。
【0023】
本発明の共重合体は高分子量であるため、様々に成形加工することができ、フィルム状、シート状、繊維状、テープ状、板状等の任意の形状に加工することができる。具体的な態様としては、不織布や織編物、フィルム、パッキング、ケース、ボトル、ディスポーザブル包装用材料等の日用品、地表被覆用フィルム、肥料用袋、徐放性農薬材料等の農林業材料、漁網、釣り糸等の漁業用材料、レジャーバッグ、釣り用品包装材料等のレジャー用品及びドラッグデリバリーシステム材料、医療材料等が挙げられる。これらのうち、本発明の共重合体は、金属成分を含まないため、特に医療材料に適している。医療材料としては、ステント、プラグ、ネジ又はピン等の体内埋込用(インプラント)基材、糸、クリップ、ステープル又は外科用ガーゼ等の外科用縫合基材、接合材や組織置換材料(骨接合剤、歯周病手術時等の組織再生材料)等が挙げられる。
[製造方法]
本発明の共重合体は、予めラクチドとグリコリドとを含む溶液を準備した後に反応を開始する方法でも製造できるが、ラクチドを含む溶液に触媒及び重合開始剤を添加して反応を開始した後に、グリコリドを逐次的に添加して重合することがより好ましい。後者の方法(以下「逐次添加」又は「逐次添加方法」とも称す)では、ポリマーが析出せずに均一に反応を進めることができ、また、所望する共重合体の乳酸及びグリコール酸のポリマー組成が、反応前に仕込んだラクチド及びグリコール酸の割合と大きく相違しないように製造することができるため優れている。
【0024】
本発明において、ラクチドを出発原料とし、既知の重合触媒を用いる開環重合法では、原料であるラクチドは、特に純度など限定されることなく、工業的に入手できるものを使用する。純度は高いほうが好ましいが、若干の不純物が含まれているのが通常であり、これらが含まれていてもかまわない。
【0025】
開環重合法としては、ポリ乳酸を製造するための従来公知の製造装置を用いればよく、例えば撹拌翼を備え、内部を不活性ガス雰囲気に置換することが出来る縦型反応容器を使用することができる。開環重合には、触媒としてアミジン系化合物と、重合開始剤としてヒドロキシ系化合物と、ラクチドやグリコリド等のモノマーとを溶解することが可能な有機溶媒が使用される。かかる有機溶媒に例としてはジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、N,N’-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのような非プロトン性極性溶媒が好適に使用されるが、後処理の簡便性を考慮した場合ジクロロメタン、ジクロロエタンが最も好ましい。有機溶媒は脱水することで、重合反応がより進み、高分子量の共重合体が得られることから好ましい。有機溶媒の添加量はラクチド等の反応基質を完全に溶解させることができる量であれば良く、通常、ラクチドの重量に対して1倍~10倍が好ましい。
【0026】
開環重合温度に制限はないが、好ましくは0℃以上150℃未満、更に好ましくは25℃以上120℃未満である。0℃未満で重合を行った場合は重合速度が極端に遅くなり、150℃以上で重合を行った場合にはアミジン系化合物自身が分解し、効率的な重合が進行しない。重合雰囲気は、高分子量のポリ乳酸組成物を得ようとする場合、水分が開始剤とならないよう、良く乾燥させた窒素やアルゴンの様な不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0027】
アミジン系触媒としては、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(ジアザビシクロウンデセン)(以下、DBU(登録商標)と略記することがある。)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ-5-エン(ジアザビシクロノネン)(DBN)、1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカーエン、N’-tert-ブチル-N,N-ジメチルホルムアミジン等が例示でき、重合終了後の減圧操作で容易に除去されるためには、その沸点が133.32Pa(1.0mmHg)において150℃未満、更に好ましくは100℃未満であることが好ましい。
【0028】
アミジン系触媒の添加量としては、ヒドロキシ系化合物に対するモル比で1~10、好ましくは2~5である。添加量を上記範囲外にした場合、重合時間が長期化するか、低分子量化の原因になる。
【0029】
ヒドロキシ系化合物としては、通常、脂肪族一級アルコール又はフェノール系化合物が採用され、具体的には、炭素数1~20の脂肪族一級アルコール、炭素数2~20の脂肪族一級ジオール、フェノール、p-クレゾール、p-tert-ブチルフェノール、ヒドロキノン等が好ましい。立体障害や水酸基の酸性度を考慮すると、上記例中のなかでも炭素数1~20の脂肪族一級アルコール、フェノールが好ましい。
【0030】
ヒドロキシ系化合物の添加量としては、ラクチドに対するモル比で5×10-4~0.01、好ましくは7×10-4~0.001である。添加量を上記範囲外にした場合、最終的に得られる共重合体の収率が低下するか、或いは得られる共重合体の分子量が低下する。
【0031】
反応時間としては、15分間~3時間、好ましくは30分~2時間である。
【0032】
添加の雰囲気は特に限定しないが、好ましくは窒素やアルゴンのような不活性ガス気流下で行う。
【0033】
このような方法を採ることによって、ポリ乳酸セグメントとポリグリコール酸セグメントがランダム構造に近い構造を採る、乳酸-グリコール酸共重合体が得られる。
[逐次添加方法]
本発明において、逐次添加により乳酸-グリコール酸共重合体を製造する方法は、(1)ラクチドを含む溶液に、アミジン系触媒及び重合開始剤を含む溶液を接触させて反応を開始する工程と、(2)反応開始直後から、ラクチド及びアミジン系触媒を含む溶液に、グリコリドを含む溶液を逐次添加する工程とを含む。
【0034】
本発明において「反応開始直後」とは、ラクチドを含む溶液にアミジン系触媒及び重合開始剤を含む溶液を接触させた直後、ハンドリングにもよるが約1~3秒後程度の時間を意味する。「逐次添加」とは、グリコリドを含む溶液を一定量ずつ滴下することを意味し、滴下に際しては、通常の微量滴下ポンプ等を使用すればよい。
【0035】
グリコリドの添加方法としては、紛体、溶液、懸濁が好ましい。反応性や撹拌効率を考慮すると、有機溶媒に溶解した状態による添加が最も好ましい。
【0036】
ラクチドを含む溶液のラクチド濃度は、通常10~35重量%であり、好ましくは15~30重量%である。グリコリドを含む溶液は、通常10~35重量%であり、好ましくは15~30重量%である。反応が均一に進む範囲内で、モノマーの濃度を上げることで、より高分子量の共重合体が得られる。
【0037】
グリコリドを含む溶液を逐次添加する際の添加速度は、反応溶媒にもよるが、通常0.05~16g/分であり、好ましくは0.3~12g/分である。特に、モノマー添加量のモル比が、ラクチド:グリコリド=90:10の時は、0.3~12g/分が好ましく、ラクチド:グリコリド=80:20の時は0.5~2.6g/分が好ましく、ラクチド:グリコリド=70:30の時は、1.5~2.4g/分が好ましく、ラクチド:グリコリド=60:40の時は、2~2.3g/分が好ましい。より好ましくは、グリコリド添加モル比(仕込みモル比)(X)及びグリコリドの添加速度(g/分)(Y)が、直交座標系(X,Y)において、以下の頂点:点A=(1,16)、点B=(10,12)、点C=(20,2.6)、点D=(30,2.4)、点E=(40,2.3)、点F=(40,2)、点G=(30,1.5)、点H=(20,0.5)、点I=(10,0.3)、点J=(1,0.05)、を有する多角形の線状及びその内部領域の値を有することができる。
【実施例
【0038】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
〈重量平均分子量、分子量分布〉
重量平均分子量、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量、数平均分子量の値であり、分子量分布とは数平均分子量に対する重量平均分子量の比で表される値である。GPCの測定は、検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、ポンプにMODEL510高速液体クロマトグラフィーを用い、カラムにShodex GPC HFIP-806Lを2本直列に接続したものを用いて行った。測定条件は、流速1.0mL/minとし、溶媒にクロロホルムを用い、試料濃度0.2mg/mLの溶液を0.1mL注入した。
〈ポリマー組成比〉
乳酸-グリコール酸共重合の組成比は、重クロロホルムとヘキサフルオロイソプロパノールの混合溶液中、日本電子製核磁気共鳴装置JNM-ECA600スペクトルメーターを使用して、1H-NMRを測定し、得られたスペクトルから乳酸由来の四重線ピーク(5.10~5.20ppm)並びに、グリコール酸由来のピーク(4.70~4.80ppm)の面積比を用いて算出した。
〈平均連鎖長〉
平均連鎖長は、重クロロホルムとヘキサフルオロイソプロパノールの混合溶液中、日本電子製核磁気共鳴装置JNM-EX270スペクトルメーターを使用して、13C-NMRを測定し、得られたスペクトルから乳酸連鎖由来のピーク(171.5~172.0ppm)、グリコール酸連鎖由来のピーク(168.5~169.0ppm)、乳酸-グリコール酸連鎖由来のピーク(172.0~172.5ppm)、グリコール酸-乳酸連鎖由来のピーク(168.5ppm)の面積比を用いて算出した。
〈ガラス転移温度〉
ガラス転移温度は、T・A・インスツルメント社製示差走査型熱量計(Q20)により試料10mgを窒素雰囲気下中で、30℃から速度20℃/minで250℃まで昇温、250℃で3分間保持、250℃から速度20℃/minで30℃まで降温、30℃で1分間保持した後、30℃から速度20℃/minで250℃まで昇温して測定した。
〈金属成分量〉
オクチル酸スズを用いた溶融重合の反応終了後、ポリマー1gに対し10倍量のジクロロメタンで溶解し、ジクロロメタン量の20倍量のメタノールに、ポリマーのジクロロメタン溶液を1回再沈殿し、乳酸-ポリグリコール酸共重合体の固体を得た。得られたポリマーの固体0.2gを硝酸8mlで溶解し、Agilent-ICP-OES-5100にて金属分析を行った。
[実施例1]
プランジャーポンプを取り付けた反応装置内を3回窒素置換し、コービオン製L-ラクチド(光学純度100%)50g、ジクロロメタン133g、アセトニトリル15gを添加しラクチドを25℃にて溶解した。ここに1-オクタデカノール0.001g、DBU0.03gを加えて重合を開始した。その直後にグリコリド4gをアセトニトリル12gに溶解したものを、反応容器に0.6g/分の速度で追加した。DBUを加えてから60分後に酢酸1gを入れて重合を停止した。得られたポリマー溶液は均一で透明であった。得られたポリマー溶液をメタノールに再沈殿して、乳酸-グリコール酸共重合体の白色固体を得た。得られた白色固体はジクロロメタンに可溶であった。
[実施例2]
グリコリドとアセトニトリルの混合物の滴下速度を9.0g/分にした以外は実施例1と同様に実施した。得られたポリマー溶液は均一で透明であった。得られたポリマー溶液をメタノールに再沈殿して、乳酸-グリコール酸共重合体の白色固体を得た。得られた白色固体はジクロロメタンに可溶であった。
[実施例3]
プランジャーポンプを取り付けた反応装置内を3回窒素置換し、コービオン製L-ラクチド(光学純度100%)50g、ジクロロメタン133g、アセトニトリル15gを添加しラクチドを25℃にて溶解した。更に、グリコリド4gをアセトニトリル12gに溶解したものを、反応容器に追加し、ここに1-オクタデカノール0.001g、DBU0.03gを加えて重合を開始した。DBUを加えてから60分後に酢酸1gを入れて重合を停止した。得られたポリマー溶液は均一で透明であった。得られたポリマー溶液をメタノールに再沈殿して乳酸-グリコール酸共重合体の白色固体を得た。得られた白色固体はジクロロメタンに可溶であった。
[実施例4]
L-ラクチドを42g、ジクロロメタン133g、アセトニトリル15gを添加しラクチドを25℃にて溶解した。ここに1-オクタデカノール0.001g、DBU0.03gを加えて重合を開始した。その直後にグリコリド8gをアセトニトリル24gに溶解したものを、反応容器に0.6g/分の速度で追加した。DBUを加えてから60分後に酢酸1gを入れて重合を停止した。得られたポリマー溶液は均一で透明であった。得られたポリマー溶液をメタノールに再沈殿してポリ乳酸-グリコール酸共重合体の白色固体を得た。得られた白色固体はジクロロメタンに可溶であった。
[実施例5]
グリコリドとアセトニトリルの混合物の滴下速度を0.9g/分にした以外は実施例4と同様に実施した。得られたポリマー溶液は均一で透明であった。得られたポリマー溶液をメタノールに再沈殿してポリ乳酸-グリコール酸共重合体の白色固体を得た。得られた白色固体はジクロロメタンに可溶であった。
[実施例6]
L-ラクチドを37g、ジクロロメタン133g、アセトニトリル15gを添加しラクチドを25℃にて溶解した。ここに1-オクタデカノール0.001g、DBU0.03gを加えて重合を開始した。その直後にグリコリド13gをアセトニトリル39gに溶解したものを、反応容器に2.6g/分の速度で追加した。DBUを加えてから60分後に酢酸1gを入れて重合を停止した。得られたポリマー溶液は均一で透明であった。得られたポリマー溶液をメタノールに再沈殿して乳酸-グリコール酸共重合体の白色固体を得た。得られた白色固体はジクロロメタンに可溶であった。
[実施例7]
グリコリドとアセトニトリルの混合物の滴下速度を2.0g/分にした以外は実施例6と同様に実施した。得られたポリマー溶液は均一で透明であった。得られたポリマー溶液をメタノールに再沈殿して乳酸-グリコール酸共重合体の白色固体を得た。得られた白色固体はジクロロメタンに可溶であった。
参考例8]
ジクロロメタンを160gにする以外は実施例7と同様に実施した。得られたポリマー溶液は均一で透明であった。得られたポリマー溶液をメタノールに再沈殿して乳酸-グリコール酸共重合体の白色固体を得た。得られた白色固体はジクロロメタンに可溶であった。
[比較例1]
グリコリドの添加速度を9.0g/分にした以外は実施例1と同様に実施した。得られたポリマー溶液は白濁しており固体が析出していた。得られたポリマー溶液をメタノール溶液に再沈殿して白色固体のポリマーを得たが、得られた白色固体のポリマーはジクロロメタンに不溶であった。
[比較例2]
L-ラクチドを42g、ジクロロメタン133g、アセトニトリル15gを添加しラクチドを25℃にて溶解した。ここに1-オクタデカノール0.001g、DBU0.03gを加えて重合を開始した。その直後にグリコリド8gをアセトニトリル24gに溶解したものを、反応容器に2.8g/分の速度で追加した。DBUを加えてから60分後に酢酸1gを入れて重合を停止した。得られたポリマー溶液は白濁しており固体が析出していた。得られたポリマー溶液をメタノール溶液に再沈殿して白色固体のポリマーを得たが、得られた白色固体のポリマーはジクロロメタンに不溶であった。
[比較例3]
L-ラクチド42g、ジクロロメタン133g、アセトニトリル15gを添加しラクチドを25℃にて溶解した。更に、グリコリド8gをアセトニトリル24gに溶解したものを、反応容器に追加し、ここに1-オクタデカノール0.001g、DBU0.03gを加えて重合を開始したが、反応開始後から反応溶液が白濁し始めた。DBUを加えてから60分後に酢酸1gを入れて重合を停止した。得られたポリマー溶液は白濁しており固体が析出していた。得られたポリマー溶液をメタノール溶液に再沈殿して白色固体のポリマーを得たが、得られた白色固体のポリマーはジクロロメタンに不溶であった。
[比較例4]
Lラクチドを42g、グリコリド8gを反応容器に入れ、200℃で加熱溶融し、1-オクタデカノール0.001gとオクチル酸スズ0.004gを入れ、200℃で120分反応させた。得られたポリマーをメタノールに再沈殿し、白色固体を得た。得られた白色固体はジクロロメタンに可溶であった。
[比較例5]
グリコリドとアセトニトリルの混合物の滴下速度を4.3g/分にした以外は実施例6と同様に実施した。得られたポリマー溶液は白濁しており固体が析出していた。得られたポリマー溶液をメタノール溶液に再沈殿して白色固体のポリマーを得たが、得られた白色固体のポリマーはジクロロメタンに不溶であった。
[比較例6]
グリコリドとアセトニトリルの混合物の滴下速度を1.3g/分にした以外は実施例6と同様に実施した。得られたポリマー溶液は白濁しており固体が析出していた。得られたポリマー溶液をメタノール溶液に再沈殿して白色固体のポリマーを得たが、得られた白色固体のポリマーはジクロロメタンに不溶であった。
[比較例7]
L-ラクチド37g、ジクロロメタン133g、アセトニトリル15gを添加しラクチドを25℃にて溶解した。更に、グリコリド13gをアセトニトリル39gに溶解したものを、反応容器に追加し、ここに1-オクタデカノール0.001g、DBU0.03gを加えて重合を開始したが、反応開始後から反応溶液が白濁し始めた。DBUを加えてから60分後に酢酸1gを入れて重合を停止した。得られたポリマー溶液は白濁しており固体が析出していた。得られたポリマー溶液をメタノール溶液に再沈殿して白色固体のポリマーを得たが、得られた白色固体のポリマーはジクロロメタンに不溶であった。
[比較例8]
Lラクチドを37g、グリコリド13gを反応容器に入れ、200℃で加熱溶融し、1-オクタデカノール0.001gとオクチル酸スズ0.004gを入れ、200℃で120分反応させた。得られたポリマー溶液をメタノールに再沈殿し、白色固体を得た。得られた白色固体はジクロロメタンに可溶であった。
[比較例9]
Lラクチドを33g、グリコリド17gを反応容器に入れ、200℃で加熱溶融し、1-オクタデカノール0.001gとオクチル酸スズ0.004gを入れ、200℃で120分反応させた。得られたポリマー溶液をメタノールに再沈殿し、白色固体を得た。得られた白色固体のポリマーはジクロロメタンに不溶であった。
[比較例10]
L-ラクチドを28g、ジクロロメタン133g、アセトニトリル15g、グリコリド22gを添加し、ラクチド、グリコリドを25℃にて溶解した。ここに1-オクタデカノール0.001g、DBU0.03gを加えて重合を開始した。DBUを加えてから60分後に酢酸1gを入れて重合を停止した。得られたポリマー溶液は白濁し固体が析出していた。得られたポリマー溶液をメタノールに再沈殿してポリ乳酸グリコール酸共重合体の白色固体を得たが、得られた白色固体のポリマーはジクロロメタンに不溶であった。
[比較例11]
Lラクチドを28g、グリコリド22gを反応容器に入れ、200℃で加熱溶融し、1-オクタデカノール0.001gとオクチル酸スズ0.004gを入れ、200℃で120分反応させた。得られたポリマーをメタノールに再沈殿し、白色固体を得たが、得られた白色固体のポリマーはジクロロメタンに不溶であった。
以上の実施例及び比較例で得られた乳酸-グリコール酸共重合体について、ポリマー組成、平均連鎖長、ガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量、分子量分布を測定した結果を、以下の表1にまとめる。なお、比較例1~3、比較例5~7及び比較例9~11は、乳酸-グリコール酸共重合体の白色固体は得られたものの、GPCの測定溶媒であるクロロホルムには溶解しなかったため、重量平均分子量及び分子量分布は測定できなかった。表1中、「全モノマー濃度」とは、ラクチドを含む溶液とグリコリドを含む溶液を合わせた全溶液中のラクチドモノマー及びグリコリドモノマーの合計の濃度である。「ラクチド濃度」とは、上記逐次添加方法における、グリコリドを含む溶液を添加する前の、ラクチドを含む溶液中のラクチドモノマー濃度である。「グリコリド濃度」とは、同様に、上記逐次添加における、添加前のグリコリドを含む溶液中のグリコリドモノマー濃度である。「n.d.」とは、検出限界以下であったことを意味する。
【0039】
以上の実施例及び比較例で得られた乳酸-グリコール酸共重合体について、ポリマー組成、平均連鎖長、ガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量、分子量分布を測定した結果を、以下の表1にまとめる。なお、比較例1~3、比較例5~7及び比較例9~11は、乳酸-グリコール酸共重合体の白色固体は得られたものの、GPCの測定溶媒であるクロロホルムには溶解しなかったため、重量平均分子量及び分子量分布は測定できなかった。表1中、「全モノマー濃度」とは、ラクチドを含む溶液とグリコリドを含む溶液を合わせた全溶液中のラクチドモノマー及びグリコリドモノマーの合計の濃度である。「ラクチド濃度」とは、上記逐次添加方法における、グリコリドを含む溶液を添加する前の、ラクチドを含む溶液中のラクチドモノマー濃度である。「グリコリド濃度」とは、同様に、上記逐次添加における、添加前のグリコリドを含む溶液中のグリコリドモノマー濃度である。「n.d.」とは、検出限界以下であったことを意味する。
【0040】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、金属成分を含まない高分子量の乳酸-グリコール酸共重合体が得られ、医療材料等の成形品に利用できる。