(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】多管式熱交換器、管基部、その密閉方法
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20220802BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20220802BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20220802BHJP
F28F 21/04 20060101ALI20220802BHJP
F28F 19/00 20060101ALI20220802BHJP
F28F 19/04 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
F28F9/02 C
F28D7/16 Z
F28F21/08 Z
F28F21/04
F28F19/00 511Z
F28F19/04 Z
(21)【出願番号】P 2020545300
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2019054870
(87)【国際公開番号】W WO2019166493
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】102018001548.4
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514194886
【氏名又は名称】エスジーエル・カーボン・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・アネツエダー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン・ファーベル
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・バルダーマン
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・シュプラー
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102010005216(DE,A1)
【文献】実開昭60-086792(JP,U)
【文献】特開昭58-213197(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0035591(US,A1)
【文献】特開昭62-108999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 13/00
F28F 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多管式熱交換器(1)用の管基部(10)であって、
コア(22)及び該コアを囲むプラスチック被膜(24)を有する第一管板(20)と、
少なくとも200℃までの温度に対して実質的な流動性を有さず、-50℃から200℃の間の温度に対して実質的な熱膨張性を有さない耐温度材製の第二管板(30)と、
コア(42)及び該コアを囲むプラスチック被膜(44)を有する第三管板(40)と、を備え、
前記第一管板と前記第二管板と前記第三管板が積層体を形成するように積層され、前記第二管板(30)が前記第一管板(20)と前記第
三管板(40)との間の中間板として配置され、前記第二管板の第一面(32)が前記第一管板(20)に向けられ、反対側の前記第二管板の第二面(36)が前記第三管板(40)に向けられ、
前記積層体が、多管式熱交換器の各管(50)を受けるための少なくとも一つの貫通孔(14)を備え、
前記管基部が、各貫通孔(14)について、
各管(50)を密閉するための少なくとも一つの密閉リング(52)と、
前記少なくとも一つの密閉リング(52)をそれぞれ受けるための少なくとも一つの密閉収容部(34、38、39)と、を更に備え、
前記密閉収容部が、各貫通孔をリング状に直接囲む前記第二管板(30)の凹みである、管基部。
【請求項2】
前記第一管板のコア(22)及び/又は前記第三管板のコア(42)が金属と繊維複合材のうち少なくとも一方を備える、請求項1に記載の管基部。
【請求項3】
前記第一管板(20)の構成が前記第三管板(40)の構成と同じである、請求項1又は2に記載の管基部。
【請求項4】
前記第二管板(30)がグラファイト又はセラミックの板である、請求項1から3のいずれか一項に記載の管基部。
【請求項5】
前記少なくとも一つの貫通孔(14)が複数の貫通孔であり、前記第二管板(30)が一体であり、前記第二管板(30)のモノリシックな物質が前記複数の貫通孔に隣接する、請求項1から4のいずれか一項に記載の管基部。
【請求項6】
前記少なくとも一つの密閉リング(52)が、矩形、台形、錐形、テーパ状、又はオーバル状の部分の断面で設計されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の管基部。
【請求項7】
前記少なくとも一つの密閉リング(52)が少なくとも二つの密閉リングであり、前記少なくとも一つの密閉収容部が少なくとも第一密閉収容部(34)と第二密閉収容部(38)を備え、前記第一密閉収容部(34)が前記第二管板(30)の第一面(32)の凹みとして配置され、前記第二密閉収容部(38)が前記第二管板(30)の第二面(36)の凹みとして配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の管基部。
【請求項8】
各密閉収容部(34、38)の密閉リング(52)が前記第二管板(30)と前記第一管板(20)の間と、前記第二管板(30)と前記第三管板(40)の間でそれぞれ押され、前記密閉リングが各プラスチック被膜(24、44)と一面において接する、請求項1から7のいずれか一項に記載の管基部。
【請求項9】
前記密閉収容部(39)が前記第二管板(30)の第一面(32)と第二面(36)から離れた前記貫通孔(14)の側壁の凹みとして配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の管基部。
【請求項10】
前記第一管板(20)と前記第二管板(30)と前記第三管板(40)が締め付けによって互いに押されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の管基部。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の管基部(10)と、前記少なくとも一つの貫通孔(14)の各々用の管(50)と、を備える多管式熱交換器(1)であって、前記管(50)が、各貫通孔を通り、前記少なくとも一つの密閉収容部(34、38、39)内に存在する前記少なくとも一つの密閉リング(52)を用いて密閉されている、多管式熱交換器。
【請求項12】
前記管(50)がグラファイト、SiC又はガラスの管である、請求項11に記載の多管式熱交換器。
【請求項13】
前記多管式熱交換器が腐食性媒体用であって、前記プラスチック被膜(24、44)が前記腐食性媒体に対する耐化学性を有する、請求項11又は12に記載の多管式熱交換器。
【請求項14】
多管式熱交換器(1)を密閉するための方法であって、
請求項1から10のいずれか一項に記載の管基部(10)を用意することと、
多管式熱交換器の少なくとも一つの管(50)を対応の貫通孔(14)に通して、少なくとも一つの密閉収容部(34、38、39)内に存在する少なくとも一つの密閉リング(52)を用いて密閉することと、を備える方法。
【請求項15】
多管式熱交換器(1)を密閉するための請求項1から10のいずれか一項に記載の管基部(10)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器用の管基部に関する。管基部は、特に、多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器の各管を受けるための少なくとも一つの貫通孔を有する複数の管板の積層体を備える。貫通孔は、少なくとも一つの密閉リングを用いて密閉される。更なる態様は、その管基部を備える多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器に関し、また、多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器を特に管基部の領域において密閉する(シーリングする)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高腐食性環境用の熱交換器は、典型的には、耐腐食材(例えば、グラファイト、炭化シリコン、ガラス、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等)製の管で構成される。管は、第一流体を含み、筐体内部領域に存在する第二流体によって囲まれて、第一流体と第二流体との間の熱交換が管壁を通して行われ得るようになっている。管の入口と出口は、管基部によって筐体内部領域から離隔されていて、管を出入りする第一流体が第二流体と混合しないようになっている。これには管基部の優れた密閉性が重要である。
【0003】
こうした熱交換器の典型的な管基部は、プラスチック被覆金属コアを有する一つ以上の管板で構成される。プラスチック被膜は、腐食性媒体(第一流体及び/又は第二流体)と共に使用することを可能にするために、例えば、PFA(ペルフルオロアルコキシアルカン)やPTFE等の耐化学材を備え得る。
【0004】
金属製の熱交換器では、溶接や同様の方法で管が管基部に流体密閉性で接続されるが、これは、ガラスや炭化シリコンの管を用いる場合には不可能である。代わりに、管を管基部の貫通孔に通して(完全に又は部分的に)、複雑な方法で密閉しなければならない。
【0005】
例えば、特許文献1に開示されている多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器は、プラスチック材製で二つの部分に分割された管基部を備え、その中に金属板が入れられている。孔の中に配置された管は、各管基部の間においてそれぞれОリングを用いて密閉される。しかしながら、こうした熱交換器では、密閉機能が時間と共に劣化し得る。従って、密閉機能を改善することが望ましい。
【0006】
更なる例として、特許文献2に開示されている多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器は、プラスチック材製で二つの部分に分割された管基部を備え、その間に中間板が配置されている。化合物スリーブを中間板の貫通孔に挿入することができる。
【0007】
既知の解決策は、設計が極めて複雑であるのに、必ずしも密閉部の長期安定性が保証されている訳ではないという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許発明第19714423号明細書
【文献】独国特許出願公開第102010005216号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、上記欠点の少なくとも一部が軽減された多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器を実現可能とすることである。特に、可能な限り単純な設計で可能な限り信頼性のある密閉機能を実現することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、請求項1に係る管基部、請求項11に係る多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器、請求項14に係る方法、請求項15に係る使用が提案される。更なる有利な態様は従属請求項、図面、及び以下の説明に与えられている。
【0011】
本発明の一態様によると、多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器用の管基部が実現される。管基部は、コア及びそのコアを囲むプラスチック被膜を有する第一管板と、耐温度材(例えば、グラファイトやセラミックの板)製の第二管板と、コア及びそのコアを囲むプラスチック被膜を有する第三管板とを備える。
【0012】
第一管板と第二管板と第三管板は、積層体を形成するように積層され、第二管板は、第一管板(20)と第三管板(40)との間の中間板として配置され、第二管板の第一面が第一管板に向けられ、その反対側の第二管板の第二面が第三管板に向けられるようにする。
【0013】
積層体は、多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器の各管を受けるための少なくとも一つの貫通孔を有する。管基部は、少なくとも一つの貫通孔の各々について、各管を密閉するための少なくとも一つの密閉リングと、少なくとも一つの密閉リングを受けるための少なくとも一つの密閉収容部とを更に有し、密閉収容部は、リング状に各貫通孔を直接囲む第二管板の凹みである。
【0014】
本発明の態様は、耐温度材製の第二管板が実現され、密閉リングを収容するための密閉収容部がそこに設けられるので、そのような密閉収容部が信頼性があり長期間安定な管板の密閉を可能にするという利点を有する。
【0015】
更に、第二管板が、二枚のプラスチック被覆管板(第一管板と第二管板)の間において積層体に配置されることによって、機械的負荷に対して保護される。この配置構成に起因して、管基部の安定性が向上する。積層体としてのこの配置構成に起因して、特に、各管板の有利な特性を組み合わせた管基部を実現することができる。
【0016】
第二管板が、全体として耐温度材から構成され、好ましくは耐温度材から成るので、密閉収容部の信頼性が更に向上する。更に、結果として、チューブ基部の特に単純な構造を達成することができる。
【0017】
[本発明の更なる態様の説明]
以下更に、本発明の好ましい(任意選択的な)態様を説明する。参照番号は、以下でより詳細に説明される図面を例示のために指称するものであるが、図示されている実施形態にその態様を限定するものではない。特に断らない限り、あらゆる態様は、本願で説明される他のあらゆる態様や、本願で説明される他のあらゆる実施形態と組み合わせ可能である。
【0018】
一態様によると、第二管板の耐温度材は、少なくとも250℃までの温度に対して実質的な流動性を有さない物質として定義される。プラスチック材について、この条件は、250℃を超える撓み温度によって定められ、その撓み温度は、DIN EN ISO 75-2:2013(方法Bによる0.45MPaの負荷)で決定される。PFAやPTFE等の従来のプラスチック材はこの条件を満たさない。撓み温度が250℃を超える例外の一つは、プラスチック材のPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)である。寸法安定性の充填材を多く充填したプラスチック材もこの条件を満たし得る。上記基準は非プラスチック材にも同様に当てはまる。この場合、鋼鉄、セラミック、グラファイト、ガラス、250℃において同様の低い流動性を有する他の物質は、上記条件にかかわらず、常に耐温度性とみなされる。より好ましくは、第二管板の物質はセラミックである。
【0019】
更なる一態様によると、第二管板の耐温度材は、鋼鉄、セラミック、ガラス、上述のとおりに250℃を超える撓み温度を有するプラスチック材、特に、PEEK、そして、これらの混合物(例えば、複合材)から選択される物質である。
【0020】
更なる一態様によると、第二管板の物質は、-50℃から200℃の間のあらゆる温度について20μm/mK未満の線熱膨張率αを有する。これは、温度変動の場合であっても信頼性のある密閉収容部を保証する。
【0021】
更なる一態様によると、第二管板の物質は、300GPaを超える弾性率を有する。これは、第二管板の優れた曲げ強度を保証する。
【0022】
更なる一態様によると、第一管板及び/又は第三管板のコア(22、42)は、金属(金属合金)と繊維複合材とのうち少なくとも一方を備えるか、又はそれから成る。繊維複合材は、例えば、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)及び/又はCFC(炭素繊維強化炭素材)等の炭素系繊維複合材であり得る。第一管板及び/又は第三管板のプラスチック被膜(24、44)は、例えば、PFA及び/又はPTFE等の少なくとも一種のフルオロポリマーを備え得る。一態様に係るプラスチック被膜(24、44)は、耐温度性が無い又は限定的な物質(例えば、上記の耐温度材の定義を満たさない)製である。
【0023】
更なる一態様によると、第一管板(20)と第三管板(40)は同一構成のものであり、その結果として、異なる部品の数を減らすことができる。
【0024】
更なる一態様によると、第二管板(30)は、グラファイト又はセラミックの板であり、セラミックは、好ましくは、非酸化物セラミック、例えば、SSiC、SiSiC、及び/又はSNである。第二管板はグラファイト又はセラミックを備えるか、又はそれから成り得る。これら物質の利点は、耐温度性、耐腐食性、また、積層時の有利な機械的特性である。
【0025】
更なる一態様によると、少なくとも一つの貫通孔(14)は複数の貫通孔である。更なる一態様によると、第二管板(30)は一体であり、第二管板(30)の同じモノリシックな物質、例えば、グラファイトやセラミックが、複数の貫通孔(14)と隣接する。
【0026】
更なる一態様によると、少なくとも一つの密閉収容部(34、38、39)及び/又は少なくとも一つの密閉リング(52)は、矩形(特に、正方形)、台形、錐形、テーパ状、又はオーバル状の部分の断面で設計される。こうした密閉収容部の断面は、各貫通孔(14)の内側に向けて開いている。更に、密閉収容部の面はそれぞれ第一管板と第三管板の表面部によって形成され得る。一態様によると、密閉収容部の少なくとも二面は、第二管板の(凹んだ)表面部によって形成される。
【0027】
更なる一態様によると、少なくとも一つの密閉リング(52)は少なくとも二つの密閉リングである。従って、少なくとも一つの密閉収容部(34、38)は、少なくとも第一密閉収容部と第二密閉収容部を備える。第一密閉収容部(34)は、例えば、第二管板(30)の第一面(32)の凹みとして配置され得て、第二密閉収容部(38)は、第二管板(30)の第二面(36)の凹みとして配置され得る。
【0028】
更なる一態様によると、各密閉収容部(34、38)の密閉リング(52)は、第二管板(30)と第一管板(20)の間と、第二管板(30)と第三管板(40)の間でそれぞれ押されて、密閉リングが各プラスチック被膜(24、44)とせいぜい一面において接触するが、好ましくは、第二管板の物質と少なくとも二面(そのうちの一面は貫通孔の反対側の面である)において接触するようにする。
【0029】
更なる一態様によると、密閉収容部(39)は、第二管板(30)の第一面(32)と第二面(36)から離れた貫通孔(14)の側壁の凹みとして配置される。
【0030】
更なる一態様によると、第一管板(20)と第二管板(30)と第三管板(40)は、締め付けによって、例えば、フランジ及び/又は貫通ボルトによって、互いに押さえられる。管板を互いに押さえるための力は、例えばフランジによって、管板(20、30、40)の縁領域のみから与えられる。それ以外では、管板(20、30、40)は好ましくは機械的に接続されていない。十分な締め付け作用が、第二管板の剛性によって与えられ得る。
【0031】
更なる一態様によると、本開示の管基部(10)を備える多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器(1)が実現される。多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器(1)は、少なくとも一つの貫通孔(14)の各々について、管(50)を備え、その管(50)は、各貫通孔を完全に又は部分的に(少なくとも第二管板まで)通り抜け、少なくとも一つの密閉収容部(34、38、39)内に存在する少なくとも一つの密閉リング(52)を用いて密閉される。これは、更なる貫通孔(例えば、貫通ボルト用の貫通孔)の存在を排除するものではない。
【0032】
更なる一態様によると、管(50)は、グラファイト、SiC、又はガラスの管であり、つまり、これらの物質を備えるか、これらの物質から成る。
【0033】
更なる一態様によると、多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器は、強腐食性媒体(例えば、フッ酸(HF)、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)等の強酸や、強苛性アルカリ溶液)用である。プラスチック被膜(24、44)は腐食性媒体に対して耐化学性を有する。
【0034】
更なる一態様によると、多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器(1)を密閉するための方法が提案される。本方法は、請求項1から10のいずれか一項に記載の管基部(10)を用意するステップと、多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器の少なくとも一つの管(50)を対応の貫通孔(14)に通して、少なくとも一つの密閉収容部(34、38、39)内に存在する少なくとも一つの密閉リング(52)を用いて密閉するステップとを備える。本方法は、多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器の製造方法の一部、又は、多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器の保守点検や修理のための方法の一部であり得る。
【0035】
以下、図面に示される実施形態を参照して本発明を説明するが、これから更なる利点と変更が明らかとなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態に係る管基部を備える多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器の断面図である。
【
図2】本発明の更なる実施形態に係る管基部の拡大断面図である。
【
図3】本発明の更なる実施形態に係る管基部の第二管板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器1を説明する。多管式(シェルアンドチューブ式)熱交換器1は、筐体6と、貫通孔14を有する管基部10と、各貫通孔14を通る管50とを有する。
【0038】
動作時には、管50は、第一流体を含み、筐体内部領域(
図1の管基部10の右側)に位置する第二流体によって囲まれて、第一流体と第二流体との間の熱交換を管壁を介して行うことができるようになっている。管50の入口と出口(
図1の管基部10の左側)は、管基部10によって、管基部10の右側の筐体内部領域から離隔され、以下で説明するように密閉される。
【0039】
管基部10は、コア22及びそのコアを囲むプラスチック被膜24を備える第一管板20と、上述の耐温度材製の第二管板30と、コア42及びそのコアを囲むプラスチック被膜44を備える第三管板40と、を備える。
【0040】
三枚の管板20、30、40は、積層体を形成するように積層され、第二管板30は第一管板20と第三管板40との間の中間板として配置される。つまり、第二管板の第一面32は第一管板20に向けられ、その反対側の第二管板の第二面36は第三管板40に向けられる。
【0041】
各貫通孔14に二つの密閉収容部34、38が形成され、その中に密閉リング52が収容されて、各管50を密閉する。より正確には、密閉収容部34,38は、第二管板30の凹みとして設計され、リング状に貫通孔14を直接囲む。貫通孔14の反対側に位置する密閉収容部34、38の背面と、密閉収容部34、38の側面は、第二管板30によって形成され、密閉収容部34、38の他の側面は、それぞれ第一管板20、第三管板40によって形成され、より正確にはそれらのプラスチック被膜24、44によって形成される。
【0042】
密閉収容部34、38が温度安定性の第三管板30の凹みとして設計されているので、安定で信頼性のある密閉機能が実現される。
【0043】
三枚の管板20、30、40は、筐体6の一対のフランジによって互いに押され、締め付けられる。締め付けは、図示されていない締め付け素子(例えば、ネジ等の固定素子)を用いて行われ、その素子は、フランジを貫通し、また、三枚の管板20、30、40の積層体を貫通して、フランジ同士を押し付けて、積層体を圧縮する。締め付け素子は、フランジを貫通するフランジ貫通孔16と三枚の管板20、30、40の積層体を通って延在する。
【0044】
締め付け素子は、管基部の縁領域(フランジ領域)のみに配置される。筐体6の内部では、管板20、30、40は機械的に接続されていない。管基部、特に第二管板30の耐撓み性に起因して、更に内部に位置する締め付け素子や接続素子を省くことができ、それでも、三枚の管板20、30、40が互いに十分に押されることを保証できる。
【0045】
図2は、本発明の更なる実施形態に係る管基部の拡大断面図である。本実施形態は
図1の実施形態と大部分対応していて、
図1の対応する説明が当てはまる。
【0046】
異なるのは、密閉リング52と、それに付随する密閉収容部34、38の断面形状のみである。密閉リング52と密閉収容部34、38は、
図1では矩形(正方形)の断面を有しているが、
図2では台形の断面を有する。上述の更なる断面も可能である。
【0047】
図3は、本発明の更なる実施形態に係る管基部の第二管板30の断面図である。図示されている第二管板30の構成以外は(特に、密閉収容部とそれに付随する密閉リング以外は)、本実施形態は
図1に示される構造に対応している。
【0048】
図1~
図2に示される二つの密閉収容部34、38の代わりに、
図3の第二管板30には一つの密閉収容部39のみが形成される。密閉収容部39は、第二管板30の軸方向中心部の貫通孔14の側壁に形成されるので、第一管板と第三管板からは離隔されている。従って、
図3では、貫通孔毎に一つの密閉リングのみが設けられる。密閉収容部39の全ての面は、第二管板30の耐熱材によって形成される。
【0049】
特に断らない限り、
図1~
図3の実施形態は、上述の更なる態様を全て有することができる。実施形態と態様は単に例示目的のものであって、保護範囲を限定するものではない。保護範囲は添付の特許請求の範囲によって定められる。
【符号の説明】
【0050】
1 多管式熱交換器
6 フランジ
10 管基部
20 第一管板
22 コア
24 プラスチック被膜
30 第二管板
34、38、39 密閉収容部
40 第三管板
42 コア
44 プラスチック被膜
50 管
52 密閉リング