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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】ZSM‐5系ゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/38 20060101AFI20220802BHJP
【FI】
C01B39/38
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020565839
(86)(22)【出願日】2019-05-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 KR2019005992
(87)【国際公開番号】W WO2019235754
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0065795
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514266091
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ ケミカル テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】カン ナヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨンキ
(72)【発明者】
【氏名】キム チャンファン
(72)【発明者】
【氏名】リー ユジン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-508253(JP,A)
【文献】特開昭63-025214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ源、アルミナ源、中和剤、および結晶性ZSM‐5核を含む混合物を加熱し、溶液状態の第1溶液を製造するステップと、
前記第1溶液に、硫酸ナトリウム(Na SO )、硝酸ナトリウム(NaNO )、トリナトリウムホスフェート(Na PO )、またはこれらの組み合わせを含む塩を含む第2溶液を混合し、反応母液を製造するステップと、
前記反応母液を水熱合成反応器に連続して供給し、連続結晶化するステップとを含み、
下記式1を満たす、ZSM‐5系ゼオライトの製造方法。
[式1]
0.20≦W/W≦0.40
(前記式1中、Wは、前記反応母液内の塩の含有量であり、Wは、前記反応母液内のシリカの含有量である。)
【請求項2】
前記第1溶液を製造するステップにおける加熱温度は30~60℃であり、加熱時間は1~3時間である、請求項1に記載のZSM‐5系ゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記水熱合成反応器は、連続撹拌槽型反応器(Continuous Stirred‐Tank Reactor、CSTR)、またはプラグフロー反応器(Plug Flow Reactor、PFR)である、請求項1に記載のZSM‐5系ゼオライトの製造方法。
【請求項4】
前記第2溶液は、前記水熱合成反応器の未反応の残りの液である、請求項1に記載のZSM‐5系ゼオライトの製造方法。
【請求項5】
前記反応母液を製造するステップにおいて、前記第2溶液が前記水熱合成反応器の前端に再循環し、前記第1溶液と混合される、請求項に記載のZSM‐5系ゼオライトの製造方法。
【請求項6】
前記連続結晶化するステップにおける反応温度は150~200℃である、請求項1に記載のZSM‐5系ゼオライトの製造方法。
【請求項7】
前記反応母液の粘度は1000~2700cPである、請求項1に記載のZSM‐5系ゼオライトの製造方法。
【請求項8】
前記式1は、下記式2を満たす、請求項1に記載のZSM‐5系ゼオライトの製造方法。
[式2]
0.22≦W/W≦0.32
(前記式1中、Wは、前記反応母液内の塩の含有量であり、Wは、前記反応母液内のシリカの含有量である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ZSM‐5系ゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、アルミノ‐シリケート(alumino‐silicate)の三次元的な特異な構造からなっており、他のアルミノ‐シリケート結晶に比べて細孔が大きく、イオン交換性に優れ、触媒、吸着剤、分子体およびイオン交換剤などとして広く使用されている。
【0003】
天然ゼオライトは、構造的な制約などで用途が制限されているが、合成ゼオライトは、その用途が徐々に拡大している。ゼオライトの用途を多様化するためには、経済的な合成方法だけでなく、ゼオライトの結晶サイズ、粒度分布および形態などを任意に調節することが求められる。
【0004】
ZSM‐5ゼオライトは、10‐四面体環(tetrahedron ring)から構成された三次元気孔を形成し、そのサイズは、ゼオライトA、XとゼオライトYの中間程度になる。また、独特の吸着および拡散特性を示す形状選択性触媒であるペンタシル(pentasil)ゼオライトの一種として、SiO/Al比が高くて一般的に熱安定性が良く、疎水性があり、ルイス酸点が大きい一方、ブレンステッド酸点は小さい。
【0005】
従来、ZSM‐5ゼオライト(zeolite)の製造は、回分式反応器を用いていた。すなわち、シリカ源およびアルミナ源を含む原料およびアルカリ水溶液を含む反応物スラリーを撹拌翼が備えられた回分式反応器に供給し、飽和蒸気を投入して、加圧および加熱条件下で、接触混合によってゼオライト化反応を誘導する方法が用いられていた。
【0006】
しかし、回分式反応器を用いた製造方法は、反応物スラリーのゼオライト化反応が完了する前には次の工程へ移行することが不可能である。そのため、回分式反応器の体積によって生産量が決定され、全体的な生産性が低下するという問題がある。
【0007】
したがって、従来の回分式反応器を用いた製造方法の限界を乗り越えるために、連続式合成によりZSM‐5ゼオライトを製造する方法の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一様態は、連続式合成により製造が可能なZSM‐5系ゼオライトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一様態は、シリカ源、アルミナ源、中和剤、および結晶性ZSM‐5核を含む混合物を加熱し、溶液状態の第1溶液を製造するステップと、前記第1溶液に塩を含む第2溶液を混合し、反応母液を製造するステップと、前記反応母液を水熱合成反応器に連続して供給し、連続結晶化するステップとを含み、下記式1を満たすZSM‐5系ゼオライトの製造方法を提供する。
[式1]
0.20≦W/W≦0.40
前記式1中、Wは前記反応母液内の塩の含有量であり、Wは前記反応母液内のシリカの含有量である。
【0010】
前記第1溶液を製造するステップにおける加熱温度は30~60℃であり、加熱時間は1~3時間であってもよい。
【0011】
前記塩は、硫酸ナトリウム(NaSO)、硝酸ナトリウム(NaNO)、トリナトリウムホスフェート(NaPO)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0012】
前記水熱合成反応器は、連続撹拌槽型反応器(Continuous Stirred‐Tank Reactor、CSTR)、またはプラグフロー反応器(Plug Flow Reactor、PFR)であってもよい。
【0013】
前記第2溶液は、前記水熱合成反応器の未反応の残りの液であってもよい。
【0014】
前記反応母液を製造するステップにおいて、前記第2溶液が前記水熱合成反応器の前端に再循環し、前記第1溶液と混合されてもよい。
【0015】
前記連続結晶化するステップにおける反応温度は150~200℃であってもよい。
【0016】
前記反応母液の粘度は1000~2700cPであってもよい。
【0017】
前記式1は、下記式2を満たしてもよい。
[式2]
0.22≦W/W≦0.32
前記式1中、Wは前記反応母液内の塩の含有量であり、Wは前記反応母液内のシリカの含有量である。
【0018】
本発明の一様態は、前記本発明の一様態のZSM‐5系ゼオライトの製造方法により製造されたZSM‐5系ゼオライトを提供する。
【0019】
本発明の一様態は、前記本発明の一様態のZSM‐5系ゼオライトを用いて、炭化水素、酸素含有有機化合物、またはこれらの混合物から軽質オレフィンを製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一様態のZSM‐5系ゼオライトの製造方法によると、反応母液のゲル化によって生じ得る反応器の詰まり現象が防止され、長期間連続式合成によってZSM‐5系ゼオライトを製造することができる。
【0021】
また、本発明の一様態のZSM‐5系ゼオライトの製造方法によると、均一なサイズの高結晶化度を有する単相のZSM‐5系ゼオライトを短時間で連続して容易に製造することができる。
【0022】
これにより、本発明の一様態のZSM‐5系ゼオライトの製造方法により、ゼオライトの生産性が極大化して工程経済性が向上し、ZSM‐5系ゼオライト触媒生産技術の産業上の適用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1~3で製造されたZSM‐5のX線回折分析データである。
図2】実施例1~3で製造されたZSM‐5の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)写真である。
図3】比較例1~6で製造されたZSM‐5のX線回折分析データである。
図4】比較例1~6で製造されたZSM‐5の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)写真である。
図5】実施例1~3のZSM‐5の製造の後、連続合成反応器に付着されたmeshを光学顕微鏡を介して観察した写真である。
図6】比較例1~6のZSM‐5の製造の後、連続合成反応器に付着されたmeshを光学顕微鏡を介して観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
他の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が共通して理解し得る意味として使用可能である。明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」としたときに、これは、特に逆の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、単数型は、文章において特に言及しない限り複数型も含む。
【0025】
本明細書の全体において、他の特別な定義がない限り、「A~B」は、「A以上B以下」を意味する。
【0026】
本発明の一様態は、シリカ源、アルミナ源、中和剤、および結晶性ZSM‐5核を含む混合物を加熱し、溶液状態の第1溶液を製造するステップと、前記第1溶液に塩を含む第2溶液を混合し、反応母液を製造するステップと、前記反応母液を水熱合成反応器に連続して供給し、連続結晶化するステップとを含み、下記式1を満たすZSM‐5系ゼオライトの製造方法を提供する。
【0027】
[式1]
0.20≦W/W≦0.40
【0028】
前記式1中、Wは、前記反応母液内の塩の含有量であり、Wは、前記反応母液内のシリカの含有量である。
【0029】
ZSM‐5系ゼオライトの連続式反応による製造のためには、連続してゼオライト合成のための反応母液が供給されるとともに、高温の水熱合成反応器を経て結晶化したゼオライトケーキ(cake)が連続して回収される過程が行われ続けなければならない。
【0030】
一例として、ZSM‐5系ゼオライト製造のためのシリカ源として、最も安価で頻繁に使用される水ガラスを使用する場合、水ガラス内の過量の塩基成分を除去するために追加された酸成分によって急激な酸‐塩基反応が起こり、次いで、混合物の粘度も急激に増加するため、固まったゲルが形成される。
【0031】
従来の回分式反応器を用いた合成の場合には、固まった形態のゲルを満たしてから、合成が完了するまでさらに満たす過程がないため、運転上の問題が発見されないが、連続式合成の場合には、高圧注入ポンプを用いて、高温の水熱合成反応器の中に固まったゲルを連続注入する作業は不可能であるため、粘度が低い溶液形態の合成母液が製造されなければならない。これと同時に、長期間の連続合成が行われ得るように、反応器内の詰まり現象が防止される必要がある。
【0032】
本発明の一様態は、かかる問題を解決し、均一なサイズの高結晶化度を有する単相のZSM‐5系ゼオライトを短時間で連続して容易に製造することができる製造方法を提供する。
【0033】
具体的には、シリカ源、アルミナ源、中和剤、および結晶性ZSM‐5核を含む混合物を加熱して溶液状態で得られた第1溶液と塩を含む第2溶液を混合したものを反応母液とすることで、均一なサイズの高結晶化度を有する単相のZSM‐5系ゼオライトを連続式合成で製造することができる。
【0034】
前記シリカ源、アルミナ源、中和剤、および結晶性ZSM‐5核を含む混合物は、シリカ源と中和剤の酸‐塩基反応によって常温でゲル化するが、この状態のまま反応母液として使用する場合、このように固まったゲルを連続して反応器に注入し難いという問題がある。
【0035】
そのため、シリカ源、アルミナ源、中和剤、および結晶性ZSM‐5核を含む混合物を加熱して底粘度の溶液状態にすることで、連続注入を可能にすることができる。かかる溶液状態で溶媒は水を使用することができ、加熱後、底粘度の水溶液を製造して使用することができる。
【0036】
より具体的には、シリカ源、アルミナ源、中和剤、および結晶性ZSM‐5核を含む混合物を水溶液状態に製造するための加熱温度は、30~60℃であってもよい。また、加熱時間は、1~3時間であってもよい。
【0037】
上記のような加熱条件で、シリカ源、アルミナ源、中和剤、および結晶性ZSM‐5核を含む混合物が不均一な状態のゲルが形成され、後工程で塩を含む第2溶液と混合する際、混合が困難で、均一な状態の水溶液が得られ難いという問題と、過剰なエネルギーが供給されて粒子が凝集したアルミノシリケート塊が発生するという問題なく、容易に水溶液状態の第1溶液を製造し、連続式合成に用いることができ、好ましい。
【0038】
また、前記第1溶液には、有機構造誘導物質が含まれず、シリカ源は、シリカゾル、水ガラス(Water glass)、またはナトリウムシリケートであってもよく、より具体的には、水ガラスであってもよい。
【0039】
前記アルミナ源は、ナトリウムアルミネート、アルミニウムナイトレート、アルミニウムサルフェート、アルミニウムクロライドおよびこれらの組み合わせであってもよく、好ましくは、ナトリウムアルミネート、アルミニウムナイトレート、アルミニウムサルフェートおよびこれらの組み合わせであってもよい。
【0040】
前記中和剤は、シリカ源およびアルミナ源がアルカリ成分を多量含有しており、反応物組成制御の困難性を解消するために入れる物質であり、硝酸、リン酸、硫酸または硫酸アルミニウムであってもよく、具体的には、硫酸であってもよい。
【0041】
本発明の一様態のZSM‐5系ゼオライトの製造方法において、前記第1溶液に塩を含む第2溶液を混合し、反応母液を製造するステップにより最終の反応母液が製造されるが、この際、反応母液が下記式1を満たすように、第1溶液および第2溶液を混合することができる。
【0042】
[式1]
0.20≦W/W≦0.40
【0043】
前記式1中、Wは、前記反応母液内の塩の含有量であり、Wは、前記反応母液内のシリカの含有量である。
【0044】
前記式1は、より具体的には、下記式2を満たすことができる。
【0045】
[式2]
0.22≦W/W≦0.32
【0046】
最終の反応母液内のシリカの含有量に対する塩の含有量比が小さすぎる場合、最終の反応母液が、粘度が急激に増加し、水熱合成反応器内への連続注入が不可能な問題が生じ得、大きすぎる場合、連続注入は可能であるが、他の結晶相のゼオライトがともに成長するか、短い連続反応が行われた後にZSM‐5の結晶化度が低下し、長期間連続反応を行って単結晶および高結晶のZSM‐5を製造し難いという問題が生じ得る。
【0047】
第2溶液の溶媒も水を使用することができる。
【0048】
また、第2溶液内の塩およびシリカの含有量が前記関係を満たすことで、反応器にゼオライトがくっ付いて成長する現象を抑制して反応器内の詰まり現象を防止し、連続式合成による均一なサイズの高結晶化度を有する単相のZSM‐5系ゼオライトの製造ができ、後述する実施例からも確認することができる。
【0049】
塩を含む第2溶液において、塩は、硫酸ナトリウム(NaSO)、硝酸ナトリウム(NaNO)、トリナトリウムホスフェート(NaPO)、またはこれらの組み合わせを含むことができ、好ましくは、硫酸ナトリウムを含むことができる。
【0050】
塩を含む第2溶液において、前記塩は、前記反応母液の総量に対して1~5重量%で含まれ得るが、必ずしもこれに制限されない。
【0051】
本発明の一様態のZSM‐5系ゼオライトの製造方法において、前記反応母液は、1000~2700cPの範囲の低い粘度を有することができ、これにより、大きいせん断力を介さずに撹拌され得、連続して反応器に投入して連続式合成が可能になる。
【0052】
本発明の一様態のZSM‐5系ゼオライトの製造方法において、前記反応母液を水熱合成反応器に連続して供給し、連続結晶化するステップは、150~200℃の温度で行われ得る。
【0053】
また、反応母液の水熱合成反応器内の滞留時間は、6時間~300時間であってもよいが、特にこれに制限されない。
【0054】
また、前記水熱合成反応器は、連続撹拌槽型反応器(Continuous Stirred‐Tank Reactor、CSTR)、またはプラグフロー反応器(Plug Flow Reactor、PFR)であってもよい。
【0055】
本発明の一様態のZSM‐5系ゼオライトの製造方法において、前記反応母液の製造および反応器への投入様態についてより詳細に説明すると、前記反応母液は、第1溶液と第2溶液が別に製造された後、反応器への投入の前に混合されて反応器に連続投入され得る。
【0056】
他の様態としては、水熱合成反応の後、残りの液を用いることで、水熱合成反応器内の未反応の残りの液の一部を水熱合成反応器の前端に再循環し、第1溶液と残りの液を混合して反応器に投入することができる。
【0057】
水熱合成反応器内の未反応の残りの液には、上述の塩が含まれていてもよく、かかる残りの液を反応器の前端に再循環して第1溶液と混合および反応母液を製造し、反応器内に連続して投入することで、別の第2溶液の製造なしに工程の運転が可能になる。
【0058】
これにより、工程の単純化が可能になるため、かかる様態がより好ましい。
【0059】
本発明の一様態のZSM‐5系ゼオライトの製造方法は、前記反応母液を水熱合成反応器に連続して供給し、連続結晶化するステップと、以降、結晶化したZSM‐5を濾過および洗浄するステップと、120℃の温度で10時間~15時間乾燥するステップとをさらに含むことができる。
【0060】
これにより、最終的に均一なサイズの高結晶化度を有する単相のZSM‐5系ゼオライトを取得することができる。
【0061】
本発明の一様態の製造方法で製造されたZSM‐5系ゼオライトは、炭化水素、酸素含有有機化合物、またはこれらの混合物から軽質オレフィンを製造する触媒として使用可能である。
【0062】
この際、ZSM‐5系ゼオライトは、それ自体で、または表面改質などの特定の処理後に触媒として使用可能であり、本発明において具体的な様態は、特に限定されない。
【0063】
また、前記炭化水素は、通常入手可能なナフサを含むことができ、酸素含有有機化合物は、メタノールを含むことができるが、これも本発明において特に限定されるものではない。
【0064】
また、前記軽質オレフィンは、エチレンおよび/またはプロピレンを含むことができるが、これに限定されない。
【0065】
以下、本発明の好ましい実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は、本発明の好ましい一実施例であって、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
(ステップ1)シリカ源である水ガラス(SiO=20wt%、NaO=6wt%)29kgに蒸留水23kgを添加して30分間撹拌した後、結晶性ZSM‐5核を0.4kgを添加した溶液に、アルミニウム塩(Al=8wt%)3.1kg、硫酸0.9kgおよび蒸留水23kgを30分間撹拌して混合した溶液を添加し、1時間維持して第1溶液を製造した。この際、前記第1溶液のゲル化を防ぐために、第1溶液を60℃に加熱して水溶液状態に製造した。
【0067】
(ステップ2)前記ステップ1で製造された第1溶液40kgに塩を含有した第2溶液(NaSO=2wt%、NaO=2wt%、SiO=4wt%)60kgを添加して1時間撹拌した後、一日間、室温で熟成して反応母液を製造した。このように製造された反応母液の粘度の分析結果は、表1に示した。
【0068】
反応母液の粘度は、粘度計(BROOKFIELD DV‐II+Pro)を用いて、25℃での粘度を測定した。
【0069】
(ステップ3)前記ステップ2で製造された反応母液を150℃に加熱されたオートクレーブ(autoclave)反応器に20g/minの速度で注入して結晶化した。かかる水熱合成反応が行われる間に連続して反応母液を供給し、30日以上結晶化反応を延長して行い、連続合成後に得られたゼオライトの結晶構造と形状は、XRD(Rigaku Model D/Max III)と走査電子顕微鏡を介して分析され、その結果は、表1、図1および図2に示した。
【0070】
得られたゼオライトの結晶構造と結晶化度は、X‐線回折分析装置(Rigaku Model D/Max III)を用いて、ZSM‐5の特性ピークに相当する2θ7~9゜および22~25゜のデータを収集することで分析し、結晶化度は、以下のように計算した(商業用ZSM‐5は、Albemarle社製のACZeo‐ZN030(SiO/Alモル比=30)を使用した)。
【0071】
【数1】
【0072】
また、反応器内の詰まり現象を確認するために、反応器内に付着された45μmのサイズの篩目開きを有するメッシュ(mesh)を光学顕微鏡を介して観察し、その結果は図5に示した。
【0073】
[実施例2]
実施例1のステップ2で第1溶液50kgに第2溶液50kgを添加した以外は、実施例1と同じ方法でゼオライトを製造した。
【0074】
反応母液の粘度の分析結果は表1に示した。連続合成後に得られたゼオライトの結晶構造と形状はXRDとSEMを介して分析され、その結果は表1、図1および図2に示した。
【0075】
また、反応器内に付着された45μmサイズの篩目開きを有するメッシュは光学顕微鏡を介して分析され、その結果は図5に示した。
【0076】
[実施例3]
実施例1のステップ2で第1溶液60kgに第2溶液40kgを添加した以外は、実施例1と同じ方法でゼオライトを製造した。
【0077】
1次連続合成母液の粘度の分析結果は表1に示した。連続合成後に得られたゼオライトの結晶構造と形状はXRDとSEMを介して分析され、その結果は表1、図1および図2に示した。
【0078】
反応器内に付着された45μmサイズの篩目開きを有するメッシュは光学顕微鏡を介して分析され、その結果は図5に示した。
【0079】
[比較例1]
実施例1のステップ2で第1溶液5kgに第2溶液95kgを添加した以外は、実施例1と同じ方法でゼオライトを製造した。
【0080】
反応母液の粘度の分析結果は表1に示した。
【0081】
連続合成期間は3日間維持され、その後には、詰まり現象によって連続注入と回収が不可能であった。
【0082】
連続合成後に得られたゼオライトの結晶構造と形状はXRDとSEMを介して分析され、その結果は表1、図3および図4に示した。
【0083】
反応器内に付着された45μmサイズの篩目開きを有するメッシュは光学顕微鏡を介して分析され、その結果は図6に示した。
【0084】
[比較例2]
実施例1のステップ2で第1溶液10kgに第2溶液90kgを添加した以外は、実施例1と同じ方法でゼオライトを製造した。
【0085】
反応母液の粘度の分析結果は表1に示した。
【0086】
連続合成期間は5日間維持され、その後には、詰まり現象によって連続注入と回収が不可能であった。
【0087】
連続合成後に得られた分子体の結晶構造と形状はXRDとSEMを介して分析され、その結果は表1、図3および図4に示した。
【0088】
反応器内に付着された45μmサイズの篩目開きを有するメッシュは光学顕微鏡を介して分析され、その結果は図6に示した。
【0089】
[比較例3]
実施例1のステップ2で第1溶液20kgに第2溶液80kgを添加した以外は、実施例1と同じ方法でゼオライトを製造した。
【0090】
反応母液の粘度の分析結果は表1に示した。
【0091】
連続合成期間は8日間維持され、その後には、詰まり現象によって連続注入と回収が不可能であった。
【0092】
連続合成後に得られたゼオライトの結晶構造と形状はXRDとSEMを介して分析され、その結果は表1、図3および図4に示した。
【0093】
反応器内に付着された45μmサイズの篩目開きを有するメッシュは光学顕微鏡を介して分析され、その結果は図6に示した。
【0094】
[比較例4]
実施例1のステップ2で第1溶液70kgに第2溶液30kgを添加した以外は、実施例1と同じ方法でゼオライトを製造した。
【0095】
反応母液の粘度の分析結果は表1に示した。
【0096】
連続合成期間は約12時間維持され、その後には、詰まり現象によって連続注入と回収が不可能であった。
【0097】
連続合成後に得られたゼオライトの結晶構造と形状はXRDとSEMを介して分析され、その結果は表1、図3および図4に示した。
【0098】
反応器内に付着された45μmサイズの篩目開きを有するメッシュは光学顕微鏡を介して分析され、その結果は図6に示した。
【0099】
[比較例5]
実施例1のステップ2で第1溶液80kgに第2溶液20kgを添加した以外は、実施例1と同じ方法でゼオライトを製造した。
【0100】
反応母液の粘度の分析結果は表1に示した。
【0101】
連続合成期間は約8時間維持され、その後には、詰まり現象によって連続注入と回収が不可能であった。
【0102】
連続合成後に得られたゼオライトの結晶構造と形状はXRDとSEMを介して分析され、その結果は表1、図3および図4に示した。
【0103】
反応器内に付着された45μmサイズの篩目開きを有するメッシュは光学顕微鏡を介して分析され、その結果は図6に示した。
【0104】
[比較例6]
実施例1のステップ2で残りの液を添加することなく、第1溶液100kgを使用した以外は、実施例1と同じ方法でゼオライトを製造した。
【0105】
反応母液の粘度の分析結果は表1に示した。
【0106】
連続合成期間は約2時間維持され、その後には、詰まり現象によって連続注入と回収が不可能であった。
【0107】
連続合成後に得られたゼオライトの結晶構造と形状はXRDとSEMを介して分析され、その結果は表1、図3および図4に示した。
【0108】
反応器内に付着された45μmサイズの篩目開きを有するメッシュは光学顕微鏡を介して分析され、その結果は図6に示した。
【0109】
【表1】
【0110】
前記表1から分かるように、連続合成反応によりZSM‐5分子体を合成する場合、本発明による反応母液を使用することで、反応器内の詰まり現象なしに反応母液の連続注入とZSM‐5分子体の連続回収が可能であり、均一な粒子サイズと単相の高結晶性を有する高品質のZSM‐5分子体が合成された。
【0111】
製造された反応母液内の塩の添加量による効果を確認したところ、製造された最終の反応母液内のNaSO/SiO重量比が0.20~0.40の範囲、より具体的には、0.22~0.32の値を有する場合には、30日以上連続合成が可能であるだけでなく、単相の高結晶性ZSM‐5分子体が得られた。しかし、最終の反応母液内のNaSO/SiO重量比が低い場合には、単相のZSM‐5分子体が得られたにもかかわらず、反応器内の詰まり現象によって連続可能な合成期間が非常に短かく、最終の反応母液内のNaSO/SiO重量比が高い場合には、一部の所望しなかった他の結晶構造のモルデナイト(mordenite)相がともに成長した分子体が得られた。
【0112】
それだけでなく、図5図6から分かるように、連続合成反応器内に付着されていた金属メッシュを確認したところ、母液内の塩の含有量によってゼオライトがくっ付いて成長する程度が変わることが分かり、比較例の場合、実施例に比べ、ゼオライトがくっ付いて成長する程度がひどく、連続合成可能な期間が非常に短くなることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6