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特許7116224低侵襲性脊椎手術を実行するためのシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】低侵襲性脊椎手術を実行するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20220802BHJP
   A61F 2/46 20060101ALI20220802BHJP
   A61B 17/90 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
A61F2/44
A61F2/46
A61B17/90
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021116499
(22)【出願日】2021-07-14
(62)【分割の表示】P 2018513808の分割
【原出願日】2016-09-23
(65)【公開番号】P2021164809
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】62/222,552
(32)【優先日】2015-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507280675
【氏名又は名称】アルファテック スパイン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】コスタビル,ジョナサン,ティ.
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5554191(US,A)
【文献】米国特許第6309421(US,B1)
【文献】米国特許第5609636(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0143822(US,A1)
【文献】国際公開第2015/134195(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2012-51129(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
A61F 2/46
A61B 17/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低侵襲性脊椎手術を実行するためのシステムであって、
上面及び下面を有し、該上面に溝が設けられ、前記下面にも溝が設けられたインプラント本体を有するインプラントと、
一組のガイド部材を有するガイドとを備え、
該一組のガイド部材は夫々、外科進入路を規定する内面を夫々有する細長部材を含み、
前記一組のガイド部材は夫々、前記細長部材に沿って長さ方向に延び、前記インプラント本体の上面及び下面に設けられた溝に対し係合摺動するようにしてあるリブを有し、
前記ガイドは、該ガイドの近位端に設けられた係合機構を備え、
該係合機構は、一組の係合部材を備えて前記ガイド部材の近位端を一体に固定するようにしてあり、
前記一組の係合部材は夫々、該一組の係合部材が係合した場合に貫通孔を形成するように半分の同心ボアを備える
システム。
【請求項2】
前記上面に設けられた溝は、相互に離れて平行に、前記上面に設けられた一対の溝であり、
前記一組のガイド部材の内の一方のガイド部材は、前記インプラント本体の上面に設けられた前記一対の溝に係合摺動するようにしてある一組のリブを有している
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記インプラント本体の下面に設けられ、相互に離れて平行に設けられた一対の溝を更に備え、
前記一組のガイド部材の内の他方のガイド部材は、前記インプラント本体の下面に設けられた前記一対の溝に係合摺動するようにしてある一組のリブを有している
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記一組の係合部材は、第1貫通孔部分を有する筒体の略半分を既定する第1の筒体部分と、
第2貫通孔部分を有する前記筒体の残りの略半分を既定する第2の筒体部分とを備える
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記一組の係合部材は更に夫々、第1及び第2の筒体部分の内側の凹部から延びるスペーサを備え、
該スペーサは夫々、ガイド部材の近位端同士が相互に間隔を設けて維持されるように、遠位端が互いに近接することができるように、前記第1及び第2の筒体部分の対向面に対して当接するようにしてある
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記リブは夫々、溝夫々の深さよりも長い寸法であり、前記インプラント本体の外面を前記一組のガイド部材の内面から離して位置決めする
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記溝は、筒状の窪みにより形成されている
請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記溝は、対となった溝である
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記溝は二対の溝であり、
該二対の溝の内の一対の溝は、前記インプラント本体の上面に設けられており、
他の一対の溝は、前記インプラント本体の下面に設けられている
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記一対の溝は夫々、前記インプラント本体の上面及び下面夫々における両側部に設けられている
請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
患者の回復期間を短縮することを可能とするインプラント、該インプラントの挿入ガイド、並びに外科進入路(Surgical corridor)にインプラントを挿入するシステムを提供する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲性脊椎外科手術という手法が知られている。このような手法は、隣り合う椎骨の間に直接的に挿入するインプラントを用いる。このインプラントの挿入は、外科進入路を通じて行なわれる。外科進入路は、ブレードを有するレトラクタ等の器具により生成される。この外科進入路は、インプラントが手術部位へ到達するように、インプラントが通る寸法としてある。そしてレトラクタのブレードはインプラント処理中、筋肉組織間が離れるように筋肉を保持する。
【0003】
しかしながら、この手術部位における筋肉の長期間の緊張が、患者の回復期間に直接的に関係することが知られている。特に、レトラクタが筋肉を、離して保持している時間が長い程、回復期間が長くなる。筋肉は、インプラントを手術部位へ挿入するために必要な時間中のみならず、インプラント本体の空隙内を骨補填材で満たすための時間中も、外科進入路を生成するために、筋肉組織間に隙間を設けて保持される。回復期間を短縮するために、筋肉の緊張期間を削減するガイドが備えられることが依然として望まれる。
【0004】
更に、現状のレトラクタはインプラントが挿通可能な外科進入路を提供する。このような外科進入路では、レトラクタのブレードの内面と、インプラント外面との間の所定量の隙間が設けられている。そして外科医は、インプラントをその外科進入路内を手作業で通過させる。したがって、手術部位へ外科進入路の軸方向に沿ってインプラントを保持するガイドが備えられることも依然として望まれる。
【発明の概要】
【0005】
上面及び下面に対となる溝が設けられたインプラント本体を備えるインプラントが提供される。該インプラントは、ガイドを用いた使用に適合する。このガイドは、一組のガイド部材及び係合機構を含む。各ガイド部材は、細長部材を含む。前記係合機構は細長部材の近位端に設けられている。前記係合機構は、一組のガイド部材に夫々含まれる前記細長部材を一体に保持するようにしてあり、前記細長部材の近位端が所定の間隔を設けて互いに離れるように配置されている。
【0006】
前記細長部材はその両側辺部に、長さ方向に延びる一組のリブを備える。これらのリブは夫々、ガイド部材の内面に形成されており、インプラントの上面及び下面に設けられている対応する溝に係合するようにしてある。
【0007】
前記係合機構は、一組の係合部材を備え、該係合部材は対で、ガイド部材夫々の近位端間の間隔を維持するように作用する。この一組の係合部材は、挿入体が挿通可能な貫通孔を形成するような形状としてある。
【0008】
外科進入路を通じて手術部位にインプラントを挿入するためのシステム及び挿入方法が更に提供される。このシステムは、一対の溝が設けられた本体を有するインプラントを備える。該一対の溝は、インプラントの上面及び下面の両方に一本ずつ設けられる構成としてもよい。前記システムは更にガイドを備える。前記インプラントは該ガイドを用いた使用に適合する。このガイドは、一組のガイド部材及び係合機構を備える。各ガイド部材は、細長部材を備える。係合機構は、前記細長部材の近位端夫々に設けられている。前記係合機構は、一組のガイド部材に夫々含まれる前記細長部材を一体に保持するようにしてあり、前記細長部材の近位端が所定の間隔を設けて互いに離れるように配置されている。
【0009】
前記細長部材はその両側辺部に、長さ方向に対して伸びる一組のリブを備える。これらのリブは夫々、ガイド部材の内面に形成されており、インプラントの上面及び下面に設けられている対応する溝に係合するようにしてある。
【0010】
前記係合機構は、互いに係合するようにしてある一組の係合部材を含み、該係合部材は対で、ガイド部材夫々の近位端間の間隔を維持するように作用する。この一組の係合部材は、挿入体が挿通可能な貫通孔を形成するような形状としてある。
【0011】
挿入方法は、レトラクタにより生成される外科進入路へ前記ガイド部材を挿入する処理を含む。前記レトラクタは、筋肉組織が前記ガイド部材の遠位端で締まることが可能に、外科進入路から引き出されてもよい。これにより、手術部位周辺での筋肉組織の緊張を削減することができる。前記インプラントはガイド部材間の前記ガイドの近位端に、ガイド部材のリブが夫々インプラントの上面及び下面に設けられた溝に揃うようにして配置される。
【0012】
前記挿入方法は、挿入体に係合部材の貫通孔内を挿通させ、手術部位へ向けて外科進入路内にインプラントを押し込む処理を含む。手術部位では、インプラント自身が手術部位へ移動することでインプラントが外科進入路を拡開し、これにより緊張した状態で筋肉を露出させることを削減する。これにより回復期間を短縮することが可能となる。
【0013】
なお図面と共に以下に開示される実施の形態は、例示であって特許請求の範囲により定義される本願趣旨を限定するものではない。実施の形態における説明は、同様の構成部には同様の符号を付した以下の図面を参照して解読されることで容易に理解が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】インプラントの上面を示す斜視図である。
図2図1に示したインプラントの上面図である。
図3図1に示したインプラントの前面図である。
図4図1に示したインプラントの側面図である。
図5】一組のガイド部材の内の一方の内部を示す図である。
図6図5に示したガイド部材の外面を示す図である。
図7図5に示したガイド部材の内面を示す上面図である。
図8図7の8-8線でのガイド部材の断面図である。
図9】一組のガイド部材により生成された外科進入路を通じて押し込まれたインプラントの側面図である。
図9A】外科進入路を生成するレトラクタを示す図である。
図9B】レトラクタにより生成された外科進入路内でレトラクタのブレードの間に挿入された一組のガイド部材によるガイドと、一組のガイド部材の間のインプラントとを示す図である。
図9C】外科進入路から取り除かれた図9Bのレトラクタ、及び、手術部位へ向けてガイドによって生成された外科進入路へ更に押し進むインプラントを示す図である。
図9D図9Cに関し手術部位へ向けて外科進入路内を進行するインプラントを示す図である。
図9E】手術部位に移植されたインプラントを示す図である。
図10A】近位端側を向く一組のガイド部材を遠位端から示す図である。
図10B図9に示した一組のガイド部材を遠位端から示す図である。
図11】係合機構の他の実施例を示す図である。
図12図11に示した係合機構の部分拡大図である。
図13】手術部位へインプラントを挿入する挿入方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
外科進入路に沿ってガイドされるようにしてあるインプラントを提供する。このインプラントは、上面及び下面、1対の側壁、近位端及び反対側の遠位端を有するインプラント本体を備える。前記上面及び下面は、遠位端及び近位端に夫々テーパ面を有していてもよい。
【0016】
インプラントは、隣接する椎骨に対してインプラントを係合させるようにしてあるキャッチ構造を備える。一実施形態では、該キャッチ構造は、インプラント本体の上面及び下面の両面に形成された複数のリッジにより構成される。インプラント本体の側面は、概ね滑らかである。一実施形態では、インプラント本体の上面及び下面の側辺部に一対の溝が備えられている。これらの溝は、インプラント本体上面及び下面の対応する二辺に沿って長さ方向に延びている。
【0017】
インプラントは、生体骨の成長材料を保持するようにしてある少なくも1つの生体腔を備える。この生体腔は、インプラント本体の両側辺の間に延びる内壁により分割されていてもよい。隣接する椎骨間の位置にインプラントが保たれるよう、一連の脊椎手術中に、骨の移植材料が該生体腔内に挿入されてもよい。
【0018】
以下では、遠位という用語は、インプラント又は器具の手術部位へ進む側の端のことをいい、近位端は遠位端の反対側の端をいう。また以下では、手術部位は、インプラントが挿入される場所のことをいう。説明においてインプラントは、低侵襲性脊椎外科手術で使用されるものとする。この場合手術部位は、隣接する椎骨の間の空間のことである。外科進入路は、身体内での手術部位への通路となるように身体内に生成される細長い孔のことをいう。
【0019】
一組のガイド部材を有するガイドが提供される。この一組のガイド部材は、間隔を設けて配置されるように近位端で組み合わされ、外科進入路を生成するようにしてある。ガイド部材は夫々、概ね細長い部材であるガイド本体を備える。ガイド部材は夫々、外面及び内面を有している。内面は、外科進入路に空間として連通している。一実施形態では、一組のガイド部材夫々の内面には、ガイド部材の両側面に沿って長さ方向に延びる一組のリブが備えられている。
【0020】
係合機構は、ガイドの近位端に設けられている。係合機構は、ガイド部材の近位端を一体に固定するようにしてある。係合機構は、一組の係合部材を備える。係合部材は夫々、係合部材が係合したときに貫通孔を形成するように、半分の同心ボアを備える。なおその貫通孔は、挿入体のロッドが内部で摺動が可能に配置してある。
【0021】
図1に示すように、インプラント10が例示されている。インプラント10は、上面14及び該上面14の反対面である下面16、近位端18及び該近位端18の反対側の遠位端20、並びに、互いに反対面となる一対の側壁22a,22bを有するインプラント本体12を備える。インプラント本体12の近位端18及び遠位端20には、隣接する椎骨(図9C-9E)の間へのインプラント10の挿入を容易にするように、テーパ面が形成されていてもよい。インプラント10は更に、骨補填材のような生体材料を保持する生体腔24を備える。
【0022】
図1は、インプラント10の上面14を示している。なおインプラント10の下面16もインプラント10の上面14と同様であると認識されるべきである。インプラント10の上面14には、インプラント本体12の遠位端20から近位端18へ延びる軸に沿って一対の溝28が設けられている。これらの溝28は、インプラント本体12の上面14及び下面16の夫々に形成された複数の概ね管状の窪み28aにより形成されている。これらの概ね管状の窪み28aは夫々、互いに長さ方向に沿って並列しており、インプラント10の上面14及び下面16の夫々の側辺部に溝28を形成している。溝28は、インプラント本体12の長さ全体に亘って形成されている。
【0023】
図示するインプラント10は、各々に骨の成長材料が充填された3つの生体腔24を備えている。なおインプラント10は、1又は複数の生体腔24を備えてもよいと認識されるべきである。この3つの生体腔24は、互いに間隔を設けて配置され、側壁22a,22bの間に架け渡された2つの内壁26a,26bによって区分けされている。内壁26a,26bは、骨の成長材料の供給を受けるための貫通孔26cを備えてもよい。
【0024】
インプラント10は更に、隣接する椎骨に対してインプラント10を係合させるようにしてあるキャッチ構造30を備える。一実施形態では、キャッチ構造30は、複数のリッジ30aを備える。リッジ30aは上面14及び下面16の両面に、インプラント本体12の幅方向に亘って設けられている。リッジ30aは図示するように、手術部位200(図4参照)へ、インプラント10を容易に導入させるためのスロープ面を有している。リッジ30aは、更に隣接するように椎骨100の間にインプラント10を維持させる牽引力をもたらす。
【0025】
インプラント10の近位端18は、インプラント10を外科進入路320に沿って押し込み易くするために、挿入体400(図8B参照)のヘッド402が嵌る寸法としてあるキャッチャ32を備える。キャッチャ32は図示するように、インプラント本体12の側壁22a,22bの間に延びるスロット状であり、インプラント本体12の上面14及び下面16の間に、それらから概ね等距離の位置に設けられている。
【0026】
図2は、図1に示した上面14の上面図である。図2に示すように、溝28は、インプラント10の側壁22a,22bに夫々沿うようにして形成されている。溝28はまた、インプラント本体12の内壁26a,26bにも形成されている。図3は、インプラント本体12の上面14及び下面16に沿って形成されている溝28を示すインプラント10の前面図である。図3はまた、溝28がどのようにして概ね均一な径を持つ断面C字(円弧)状に形成されているかを示している。なお図2では、溝28を形成する管状の窪み28a夫々の周面が、インプラント本体12の上面14及び下面16夫々の輪郭における長手方向でどのように変化しているかが示されている。
【0027】
図4は、インプラント10の近位端18に設けられたキャッチャ32を示すインプラント10の側面図である。図4はまた、インプラント10を全体として概ね弾丸形状とならしめているテーパ面がインプラント10の遠位端20にてどのように形成されているかを示している。テーパ面が形成されていることにより、隣接する椎骨100(図9E)の間にインプラント10が割り込んでいくことが容易になる。リッジ30aは、インプラント10の上面14及び下面16の両方に現れている。
【0028】
図5図6図7図8A及び図8B図9図9A-9E、並びに図10を参照して、ガイド34の実施形態を示し説明する。ガイド34は、一組のガイド部材36a,36bを備える。ガイド部材36a,36bは夫々、概ね細長い部材である。図5は、一組のガイド部材36a,36bの内の一方であるガイド部材36aを示し、図6は、他方のガイド部材36bを示している。ガイド部材36a,36bは、弾性を有し耐久性が高いチタン等の材料製であってもよい。またガイド部材36a,36bは、内面38及び外面40を有している。なお内面38は、外科進入路320(図8B)を生成する。
【0029】
内面38の形状は図5に示す通りであり、外面40についても図6に示す通りである。ガイド部材36a,36bは、細長部材42を備え、該細長部材42の両側辺部には、細長半割型角筒部材44cをなすように一組のリブ44a,44bが設けられている。リブ44a,44bは、細長部材42の長さ方向に延びている。
【0030】
ガイド34は更に、ガイド34の近位端に設けられた係合機構46を備える。係合機構46は、ガイド部材36a,36bの近位端を結合するようにしてあり、また、挿入体が挿通可能な孔を形成するようにしてある。一実施形態において係合機構46は、貫通孔52(図9C及び図10a参照)が設けられた概ね筒体50を形成するように一体に結合されるか又は係合する一組の係合部材48a,48bを備える。係合機構46は、ガイド34の近位端を一体に保持するようにしてあり、挿入体400(例えば、図8B及び図9Cを参照)の通路を提供するようにしてある。ガイド34の遠位端はいずれも自由端である。特に、ガイド部材36a,36bの遠位端は相互に自由に動くことができる。ガイド部材36a,36bの遠位端は、隣接する椎骨100の間にガイド34を挿入する手掛かりを探しやすくするように尖らせてあってもよい。
【0031】
図5はまた、一組の係合部材48a,48bの内の一方である係合部材48aを示すように、一組のガイド部材36a,36bの内の一方であるガイド部材36aの内面38を示す図である。係合部材48aは、筒体50の略半割体を規定する第1の筒体部分50aと、貫通孔52の半分を形成する第1の貫通孔部分52aとを備える。係合部材48bは、係合部材48aと係合するように構成されていると認識されるべきであり、これにより2つで、内部に貫通孔52を有する概ね筒体50を形成するようにしてある。即ち係合部材48bは、筒体50のもう片方の略半割体を形成する第2の筒体部分50bと、貫通孔52のもう片方の半分を形成する第2の貫通孔部分52bとを備える。つまり、第1の筒体部分50aは半分の同心ボアを形成し、第2の筒体部分50bはもう一方の半分の同心ボアを形成し、2つの半割の同心ボアが貫通孔52を形成する。
【0032】
係合部材48a,48bは更に、第1及び第2の筒体部分50a,50b夫々の内側の凹部から延びるスペーサ54a,54bを備える。スペーサ54bは、図5に示したスペーサ54aと貫通孔52(図10A参照)を介して反対側に位置している。係合部材48a,48bが共に配置されて係合した場合、外科進入路320を生成するために、互いに離れるように配置されるガイド部材36a,36b夫々の細長部材42が、所定の間隔を設けて配置される。スペーサ54aは第2の筒体部分50bの、スペーサ54bは第1の筒体部分50aの対向面に対して当接するようにしてある。これによりガイド部材36a,36bの近位端が相互に間隔を設けて維持されるように作用し、ガイド部材36a,36bの遠位端が互いに近接することができるように作用する。
【0033】
図10Aでは、互いに組み合わされた一組のガイド部材36a,36bのガイド34の遠位端側からの図が示されている。図10Aは、係合部材48a,48bが共に固定され、外科進入路320が生成されている状態での一組のガイド部材36a,36bを示している。図10Aに示すように、4つのリブ44a,44bが示されている。一組のリブ44a,44bは、第1のガイド部材36aに設けられており、もう一組のリブ44a,44bは、第2のガイド部材36bに設けられている。図10Aはまた、貫通孔52も示している。
【0034】
図10Bは、図9に示したインプラント及びガイド部材を、一組のガイド部材36a,36bの遠位端側から見た図である。図10Bは、リブ44a,44b夫々がインプラント10の溝28(窪み28a)に係合していることが示されている。各リブ44a,44bは、溝28(窪み28a)夫々の深さよりも長い寸法である。一実施形態では、リブ44a,44bは、各溝28(窪み28a)の深さよりも長い半径Rの凸状外面を有し、これによりインプラント10の外面(上面14及び下面16)と、ガイド部材36a,36b夫々の細長部材42の内面38との間に隙間が設けられている。これにより、外科進入路320に沿うインプラント10の移動は、リブ44a,44bの溝28(窪み28a)に対して係合摺動により実現される。換言すれば、上面14及び下面16は、ガイド部材36a,36b夫々の内面38に対して摺動することなく、インプラント10は外科進入路320内に押し込まれる。
【0035】
本実施の形態の説明においてリブ44a,44bは、各ガイド部材36a,36bの外縁に設けられており、インプラント10はガイド部材36a,36bよりも幅広であるが、インプラント10はガイド部材36a,36bよりも幅狭となる形状であってもよいと認識されるべきである。
【0036】
図11及び図12は、係合部材48a,48bの他の実施形態を示す。第1及び第2の筒体部分50a,50b(図11及び図12では第1の筒体部分50aのみ図示している)の内面の嵌合には、ペグ56及び開口58が用いられる。ペグ56は磁石であって、筒体50は磁場を形成する材料製であってもよい。この場合ペグ56は、対応する開口58に磁気的に係合する。なおここでは係合機構46の半分のみ、即ち係合部材48aのみが示されていると理解されるべきであり、図示されていない係合部材48bは、係合部材48aと対称な形状を有しているので、係合部材48aについての説明が、係合部材48bについての説明に充分である。
【0037】
図9A-9Eでは、手術部位300へインプラント10が導入される低侵襲性脊椎手術を実施するためのシステム60が示されている。システム60は、図9Aに示すように、外科進入路310を生成する器具500を備える。この器具500は既存のものであり、例えばレトラクタを備える。以下の説明において器具500はレトラクタ500ともいう。
【0038】
システム60は更に、図9B-9E、そして図1-4で図示するようなインプラント10を備える。インプラント10は、上面14及び下面16を有するインプラント本体12を備える。上面14及び下面16の両面に夫々、一対の溝28が設けられている。溝28は互いに略平行であり、インプラント本体12の長さ方向に延びている。インプラント10の遠位端では、手術部位300の隣接する椎骨100の間にインプラント10を挿入し易くなるように、テーパ面が形成されていてもよい。
【0039】
システム60は更に、一組のガイド部材36a,36bを有するガイド34を備える。ガイド部材36a,36bは夫々、細長部材42を有する。細長部材42の内面38は、外科進入路320を規定する。細長部材42の内面38には、両側辺部に長さ方向に延びる一組のリブ44a,44bが設けられている。このリブ44a,44bは、インプラント10の溝28夫々に対し係合摺動するようにしてある。
【0040】
図9Bでは、ガイド34がインプラント10と共に、器具500により生成された外科進入路310へ挿入されている。インプラント10は、リブ44a,44b夫々がその溝28に係合するようにして、ガイド部材36a,36bの間に配置されている。器具500はその後身体から除去されてもよい。これにより筋肉が開放され、ガイド部材36a,36bの遠位端が、ガイド部材36a,36bによってガイド34で生成される外科進入路320と共に、互いに近接する。
【0041】
システム60は更に、挿入体400を備えてもよい。挿入体400は、図9B-9Eに示すように、ガイド部材36a,36bの間の外科進入路320内で手術部位300へインプラント10を押し込むようにしてある。図9Bは、ガイド部材36a,36bの間に配置されたインプラント10に係合する挿入体400を示している。インプラント10の溝28には、ガイド部材36a,36b夫々のリブ44a,44bが嵌っており、外科進入路320を手術部位300へ向けて押し進むインプラント10が軸方向に移動するように作用する。
【0042】
図9C-9Eでは、手術部位300から器具500が除去された後の態様を示しており、外科進入路310(図9及び図9B参照)のサイズが、外科進入路320の大きさまで減少していることを示している。特に、図9A及び図9Bで示したレトラクタ500は、レトラクタブレードが耐久性及び剛性が高いチタン等の材料で形成され、ブレードは両端部で互いに押し付け合っているから、略筒状体である外科進入路310を維持する。レトラクタ500が除去されると、ガイド34に接している部分の筋肉が内側に締まる。特に、筋肉組織により掛かる力がガイド部材36a,36bを一体に押し包んで外科進入路320の大きさを最小化する。インプラント10が手術部位300へ向けて押し込まれるにつれてガイド部材36a,36bが筋肉組織により掛かる力に勝り、図9C-9Eに示すように、インプラント10が手術部位300へ移動する程に、外科進入路320が押し開かれる。
【0043】
図13では、インプラント10の手術部位300への挿入方法62が示されている。手術部位300は、2つの隣接する椎骨100の間である。外科進入路310がレトラクタ500等の器具500により生成される。挿入方法62は、インプラント10を用いる。インプラント10は、上面14及び下面16を有するインプラント本体12を備える。上面14及び下面16の両面に夫々、一対の溝28が設けられている。溝28は互いに略平行であり、インプラント本体12の長さ方向に延びている。インプラント10の遠位端では、手術部位300の隣接する椎骨100の間にインプラント10を挿入し易くするように、テーパ面が形成されていてもよい。
【0044】
挿入方法62は更に、一組のガイド部材36a,36bを有するガイド34を用いる。ガイド部材36a,36bは夫々、細長部材42を有する。細長部材42の内面38は、外科進入路320を規定する。細長部材42の内面38には、両側辺部に長さ方向に延びる一組のリブ44a,44bが設けられている。このリブ44a,44bは、インプラント10の溝28夫々に対し係合摺動するようにしてある。
【0045】
挿入方法62は、ステップ100において、器具500を用いて外科進入路310を生成することから開始される。外科進入路310に器具500が挿入されるまで徐々に拡張される初期的な開口を生成するために拡張器等の他の器具が用いられてもよいと認識されるべきである。挿入方法62は次に、一組のガイド部材36a,36bを外科進入路310に挿入する。このときガイド部材36a,36bの係合部材48a,48bは、ガイド部材36a,36bの近位端を、ガイド部材36a,36bの遠位端が離れて配置されるように一体に保持し、長さ方向に沿って均一な寸法とした外科進入路310を生成する。
【0046】
挿入方法62では、次のステップ110において、対向するガイド部材36a,36bの間である外科進入路320にインプラント10を配置する。このとき、インプラント10の上面14及び下面16の溝28に夫々、リブ44a,44bを嵌めるようにして配置する。ガイド34は、ガイド部材36a,36bの間に配置されたインプラント10と共に、レトラクタ500により生成された外科進入路310内に設置されてもよいと認識されるべきである。又は、インプラント10は、ガイド34が外科進入路310に挿入された後に、ガイド部材36a,36bの間に挿入されてもよい。挿入方法62では、次のステップ120において、器具(レトラクタ)500を外科進入路310から除去する。これにより筋肉組織が開放されてガイド部材36a,36bの遠位端を一体に押し包み、レトラクタ500により生成された外科進入路310を狭める。つまり、器具500の除去により、外科進入路310は、ガイド部材36a,36bにより生成される外科進入路320へ縮小される。
【0047】
挿入方法62では、次のステップ130において、インプラント10を外科進入路320内に押し込む。インプラント10は、外科進入路320内へロッド状の挿入体400によって押し込まれてもよい。ここでロッド状の挿入体400は、係合機構46にて形成される貫通孔52に挿通される。ここで図9Eに示すように、インプラント10が押し込まれてガイド部材36a,36bを通過すると、筋肉組織から掛かる力は、ガイド部材36a,36bにより生成される外科進入路320を狭める。インプラント10は、図9Eに示すように手術部位300に導入される。挿入方法62は、次のステップ140において生体骨の成長材料をインプラント10へ導入する処理を含む。このようにして、挿入方法62は、レトラクタ500を除去し、ガイド34を使用してインプラント10を挿入することにより、レトラクタを使用して長い期間、筋肉を緊張状態としたままとすることがない。これにより、患者の回復期間を短縮することができる。
【0048】
上述したように特定の実施形態について説明したが、本願の発明の意図及び範囲に反することなしに、他の多様な変更及び修正が適用可能であると理解されるべきである。また、本願発明の多様な側面について説明を行なったが、組み合わせられるとは限らない。例えば、インプラントは、インプラントの上面及び下面夫々に対になる溝を有さない場合、上面及び下面の対応する二辺の長さ方向に沿って延びる1つの溝を有していてもよい。このような実施形態では、ガイドは夫々、対応する溝に沿って手術部位へ向けてインプラントをガイドする1つのリブを持つガイド部材を有している構成であってもよい。また他の実施形態では、インプラントは1つの溝のみを有する構成としてもよく、この場合、ガイドは一組のガイド部材を有するが、一方のガイド部材のみが、インプラントを手術部位へ向けてガイドするために溝に嵌合するリブを有する構成であってもよい。本実施の形態では器具、システム及び方法は前方向で説明したが、本実施の形態で説明した器具、システム及び方法は側方又は後方へ向けた他の外科手術で使用されてもよいものとする。
【0049】
本特許出願は、2015年9月23日出願の米国出願62/222,552号に基づく優先権を主張し、前記出願明細書の記載内容を引用により組み込む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図11
図12
図13