(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】3次元の物体を付加製造するプラント
(51)【国際特許分類】
B22F 12/10 20210101AFI20220802BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20220802BHJP
B22F 10/30 20210101ALI20220802BHJP
B22F 10/322 20210101ALI20220802BHJP
B22F 12/20 20210101ALI20220802BHJP
B22F 12/70 20210101ALI20220802BHJP
B22F 12/82 20210101ALI20220802BHJP
B22F 12/90 20210101ALI20220802BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20220802BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20220802BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20220802BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20220802BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220802BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220802BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220802BHJP
【FI】
B22F12/10
B22F10/28
B22F10/30
B22F10/322
B22F12/20
B22F12/70
B22F12/82
B22F12/90
B29C64/153
B29C64/268
B29C64/295
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2021117032
(22)【出願日】2021-07-15
(62)【分割の表示】P 2018095897の分割
【原出願日】2018-05-18
【審査請求日】2021-07-15
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506154834
【氏名又は名称】ツェーエル・シュッツレヒツフェアヴァルトゥングス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ディラー
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン・ベックマン
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・シュタムベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ティム・デーラー
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/075244(WO,A1)
【文献】特開2008-307895(JP,A)
【文献】特表2012-502178(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0193620(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/28
B22F 10/85
B22F 12/10
B22F 12/20
B22F 12/70
B22F 12/82
B22F 12/90
B29C 64/153
B29C 64/268
B29C 64/295
B29C 64/386
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元の物体(2)を付加製造するプラント(1)であって、
エネルギービーム(5)によって固化することができる粉末状の造形材料(4)の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体(2)を付加製造する少なくとも1つの造形装置(3)、及び/又は付加製造プロセスの少なくとも1つの後処理ステップを実行するように適合された少なくとも1つの後処理装置(3)、並びに、
前記少なくとも1つの造形装置(3)及び/又は後処理装置(3)の少なくとも2つの構成要素(8、17、20、21)に沿って且つ/又はそこを通って流れる流体(7、27)のパラメータを制御するように適合された少なくとも2つの温度制御ユニット(6、19、22、28)を備え、
前記少なくとも2つの構成要素(8、17、20、21)のうちの第1の要素の集合は、前記前記少なくとも2つの構成要素(8、17、20、21)のうちの第2の要素の集合から取り外し、又は取り付け可能となっており、前記第1の要素の集合に沿って且つ/又はそこを通って流れる流体(7、27)のパラメータが、前記第1の要素の集合が前記第2の要素の集合から取り外しされた状態、及び前記第1の要素の集合が前記第2の要素の集合に取り付けられた状態の両方の状態において、前記第2の要素の集合に沿って且つ/又はそこを通って流れる流体(7、27)のパラメータとは独立に制御可能であり、
前記少なくとも2つの温度制御ユニット(6、19、22、28)は、前記流体(7、27)、及び/又は前記少なくとも1つの造形装置(3)及び/又は後処理装置(3)の少なくとも2つの構成要素(8、17、20、21)を規定の温度プロファイルに関して調温するように適合されており、前記温度プロファイルは、エネルギービーム出力及び/又は露出時間に応じて規定されている
プラント。
【請求項2】
少なくとも1つの加熱デバイス(15)が、前記少なくとも2つの温度制御ユニット(6、19、22、28)に関連付けられるとともに、少なくとも1つの加熱要素を備え、且つ/又は、少なくとも1つの冷却デバイス(16)が、前記少なくとも2つの温度制御ユニット(6、19、22、28)に関連付けられるとともに、少なくとも1つの冷却要素を備える請求項1に記載のプラント。
【請求項3】
前記加熱デバイス(15)及び/又は前記冷却デバイス(16)は、少なくとも1つの熱交換器(12)及び/若しくは少なくとも1つの熱トランスフォーマ(18)であるか、又は少なくとも1つの熱交換器(12)及び/若しくは少なくとも1つの熱トランスフォーマ(18)を備える請求項2に記載のプラント。
【請求項4】
前記少なくとも1つの熱トランスフォーマ(18)がペルティエ素子を有している請求項3に記載のプラント。
【請求項5】
前記少なくとも2つの温度制御ユニット(6、19、22、28)は、少なくとも1つの規定の処理時間及び/又は少なくとも1つの処理ステップに依存する前記温度プロファイルに応じて、前記流体(7、27)の温度及び/又は前記造形装置(3)及び/又は前記後処理装置(3)の少なくとも2つの構成要素(8、17、20、21)の温度を少なくとも1つの規定の標的温度値に制御するように適合される請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項6】
前記温度プロファイルは、流体温度、及び/又は前記少なくとも1つの造形装置(3)及び/又は後処理装置(3)の少なくとも2つの構成要素(8、17、20、21)の温度に応じて規定されることを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項7】
少なくとも1つのパイプ及び/若しくはチャネル(14、23、24)並びに/又は熱交換器(12)及び/若しくは熱トランスフォーマ(18)が、基板キャリア(21)内に、及び/又は前記少なくとも1つの造形装置(3)及び/又は後処理装置(3)のチャンバ(8、20)を画定する壁内に配置される請求項6に記載のプラント。
【請求項8】
前記少なくとも1つの造形装置(3)及び/又は後処理装置(3)の少なくとも2つの構成要素(8、17、20、21)に沿って且つ/又はそこを通って流れる流体流を制御するように適合された流れデバイス(11、26)を有する請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項9】
前記流体(7、27)は、調温流体(7、27)及び/又は調温ガス、特にプロセスガスである請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項10】
前記少なくとも1つの造形装置(3)及び/又は後処理装置(3)の少なくとも2つの構成要素(8、17、20、21)の湿度を制御し、且つ/又は前記流体(7、27)の湿度を制御し、且つ/又は前記造形材料(4)の湿度を制御するように適合された湿度制御ユニット(13)を有する請求項1~請求項9のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項11】
前記少なくとも2つの温度制御ユニット(6、19、22、28)は、少なくとも1つの温度センサ(9)及び/又は少なくとも1つの湿度センサ(10)の少なくとも1つの情報を処理するように適合される請求項1~請求項10のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項12】
エネルギービーム(5)によって固化することができる粉末状の造形材料(4)の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体(2)を付加製造する方法であって、付加製造プロセスの少なくとも1つの後処理ステップを実行する少なくとも1つの造形装置(3)及び/又は後処理装置(3)の、少なくとも1つの構成要素(8、17、20、21)に沿って且つ/又はそこを通って流れる流体流、特に循環流体流が生成される方法において、
前記少なくとも1つの造形装置(3)及び/又は後処理装置(3)の少なくとも2つの構成要素(8、17、20、21)に沿って且つ/若しくはそこを通って流れる流体(7、27)、並びに/又は前記少なくとも1つの造形装置(3)及び/又は後処理装置(3)の少なくとも2つの構成要素(8、17、20、21)の温度が少なくとも2つの温度制御ユニット(6、19、22、28)によって制御され、
前記少なくとも2つの構成要素(8、17、20、21)のうちの第1の要素の集合は、前記前記少なくとも2つの構成要素(8、17、20、21)のうちの第2の要素の集合から取り外し、又は取り付け可能となっており、前記第1の要素の集合に沿って且つ/又はそこを通って流れる流体(7、27)のパラメータが、前記第1の要素の集合が前記第2の要素の集合から取り外しされた状態、及び前記第1の要素の集合が前記第2の要素の集合に取り付けられた状態の両方の状態において、前記第2の要素の集合に沿って且つ/又はそこを通って流れる流体(7、27)のパラメータとは独立に制御可能であり、
前記少なくとも2つの温度制御ユニット(6、19、22、28)が、前記流体(7、27)、及び/又は前記少なくとも1つの造形装置(3)及び/又は後処理装置(3)の少なくとも2つの構成要素(8、17、20、21)を規定の温度プロファイルに関して調温するように適合され、前記温度プロファイルは、エネルギービーム出力及び/又は露出時間に応じて規定されている方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のように構成された、3次元の物体(2)を付加製造するプラントに関して実行される請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元の物体を製造するプラントに関し、このプラントは、エネルギービームによって固化することができる粉末状の造形材料の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体を付加製造(積層造形)する少なくとも1つの装置、並びに/又は付加製造プロセスの少なくとも1つの前処理ステップを実行するように
適合された少なくとも1つの装置、及び/若しくは付加製造プロセスの少なくとも1つの後処理ステップを実行するように適合された少なくとも1つの装置を備える。
【背景技術】
【0002】
この種のプラントは、従来技術からよく知られており、少なくとも1つの装置は、エネルギービーム、たとえばレーザビームを使用して3次元の物体を付加製造するために使用される。レーザビームは、粉末状の造形材料に層ごとに選択的に放射して粉末状の造形材料を固化する。通常、装置のチャンバ内を不活性ガスが循環し、不活性ガスはまた、構成要素に沿って又はそこを通って流れている間に、製造されている物体を冷却し、装置の様々な構成要素をさらに冷却する。不活性ガスの特定のパラメータ、たとえば不活性ガス及び装置の構成要素の温度、並びに製造されている物体の温度は、製造プロセス中に変動する。また、温度の変化は特に、エネルギービームの出力又は材料内に蓄積したエネルギーにそれぞれ依存する。
【0003】
プロセスガスは通常、閉回路内を循環するため、製造プロセス中に生成される熱を放散することができない。この熱は代わりに、装置全体を通って伝達され、装置の隣接する(近辺の)構成要素へ伝達される。したがって、不活性ガス及び構成要素の温度は、製造プロセス中に変化し、且つ異なる製造プロセス間で変動する。さらに、蓄積したエネルギー及び様々な構成要素の温度上昇は特に、物体の幾何形状、露出時間に依存し、特に造形の進行中に変動する。この結果、プロセスパラメータ又はプロセス条件が不安定になり、製造された物体にずれ及び不完全性が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、製造プロセスのプロセス条件がより安定している3次元の物体を製造するプラントを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、3次元の物体を製造するプラント(plant)によって本発明で実現される。
【0006】
本発明のプラントは、装置の少なくとも1つの構成要素に沿って且つ/又はそこを通って流れる流体のパラメータを制御するように適合された少なくとも1つの制御ユニットを備える。したがって、制御ユニットを介して、装置の少なくとも1つの構成要素に沿って且つ/又はそこを通って流れる流体の特定のパラメータを制御することができる。制御ユニットは、流体の任意のパラメータを制御するように適合され、たとえば制御ユニットは、流体の流速、湿度、温度、又は流量などの(物理的)流れ特性を制御するように適合される。
【0007】
好ましい実施形態によれば、このプラントは、装置の少なくとも1つの構成要素に沿って且つ/若しくはそこを通って流れる流体の温度を制御するように適合された少なくとも1つの温度制御ユニットを備え、並びに/又はその少なくとも1つの温度制御ユニットは、装置の少なくとも1つの構成要素の温度を制御するように適合される。本発明のプラントは、装置の少なくとも1つの構成要素に沿って且つ/若しくはそこを通って流れる流体を調温することによって、又は追加若しくは別法として、装置の少なくとも1つの構成要素を調温することによって、温度制御ユニットを介して温度を制御することを提案する。
【0008】
本明細書に記載する装置は、エネルギービームによって固化することができる粉末状の造形材料(「造形材料」)の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体、たとえば技術的構成要素を付加製造する装置である。それぞれの造形材
料は、金属、セラミック、又はポリマーの粉末とすることができる。それぞれのエネルギービームは、レーザビーム又は電子ビームとすることができる。それぞれの装置は、たとえば、選択的レーザ焼結装置、選択的レーザ溶融装置、又は選択的電子ビーム溶融装置とすることができる。
【0009】
この装置は、その動作中に使用される複数の機能ユニットを備える。例示的な機能ユニットは、プロセスチャンバや、プロセスチャンバ内に配置された造形材料層を少なくとも1つのエネルギービームで選択的に照射するように適合された照射デバイスや、及び所与の流れ特性、たとえば所与の流れプロファイル、流速などでプロセスチャンバを通って少なくとも部分的に流れるガス状流体流を生成するように適合された流れ生成デバイスである。ガス状流体流は、プロセスチャンバを通って流れる間に、固化されていない粒状の造形材料、特に装置の動作中に生成される煙又は煙残留物を充填することが可能である。ガス状流体流は、典型的には不活性であり、すなわち典型的には、不活性ガス、たとえばアルゴン、窒素、二酸化炭素などの流れである。
【0010】
この装置は、3次元の物体を付加製造する造形装置、或いは付加製造プロセスの少なくとも1つの前処理ステップを実行するように適合された装置、たとえば粉末モジュール若しくは投与モジュール、又は付加製造プロセスの少なくとも1つの後処理ステップを実行するように適合された少なくとも1つの装置、たとえば取扱い(handle)ステーション若しくはフィルタモジュールである。さらに、この装置は、(固化されていない)造形材料及び/又はすでに(少なくとも部分的に)造形された物体を収容する粉末室を搬送するように適合されたモジュールとして構築することができる。特にこの装置は、投与モジュール又は造形モジュール又は溢流モジュールとして構築することができる。たとえば、この装置は、製造プロセス中に造形された少なくとも1つの物体を後処理装置へ移送するように適合することができる。それによって、装置の対応するチャンバ内の条件、特に温度及び/又は湿度を制御することができる。
【0011】
流体の温度を制御することによって、又は装置の少なくとも1つの構成要素の温度を制御することによって、製造されている3次元の物体に対するプロセス条件がプロセス全体にわたって安定していることを確実にすることが可能であり、したがって、様々な構成要素及び製造されている物体の温度を規定の温度値又は規定の温度範囲内で維持することができる。したがって、プロセス条件の変動を低減又は回避することができ、したがって、製造された物体の不完全性やずれ・逸脱を低減又は回避することができる。
【0012】
さらに、本発明のプラントは、プロセス条件、特に物体及び/又はプラントの構成要素の温度を具体的に規定及び/又は変更することができるため、3次元の物体を付加製造する新しい可能性を可能にする。加えて、装置のそれぞれの部分を調温することによって、又はたとえば前処理ステップで造形材料を事前加熱することによって、若しくは後処理ステップで造形材料を冷却することによって、特に高い融点を有する材料を処理するときの大きい温度差を補償することができる。さらに、適当な区間を適当に調温することによって、光学構成要素など、熱の影響を受けやすい構成要素上の熱伝達を低減させることができる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの加熱デバイスが、少なくとも1つの温度制御ユニットに関連付けられるとともに、少なくとも1つの加熱要素を備え、且つ/又は少なくとも1つの冷却デバイスが、少なくとも1つの温度制御ユニットに関連付けられるとともに、少なくとも1つの冷却要素を備える。加熱デバイス及び/又は冷却デバイスを介して、装置の構成要素に沿って且つ/又はそこを通って流れる流体を調温することが可能である。したがって、要求を満たし且つプロセス条件を安定した状態で維持するように、この流体を冷却及び/又は加熱することができる。温度制御ユニットは、それ
に関連する様々な加熱デバイス及び/又は様々な冷却デバイスを有することができ、それによって各加熱デバイスは様々な加熱要素を備えることができ、各冷却デバイスは様々な冷却要素を備えることができることが自明である。当然ながら、様々な冷却要素及び/又は加熱要素は、流体及び/又は装置の少なくとも1つの構成要素を、任意に、又は要求に応じて、それぞれ調温するように割り当てることができる。
【0014】
たとえば、製造プロセス前に特定の構成要素を規定の初期温度に調温することが可能である。特に、プロセス全体にわたってほとんど手間なく維持することができる規定の温度に、少なくとも1つの光学構成要素を調温することができ、たとえば光学構成要素を最初に50℃に加熱することができる。また、造形板などの装置の他の構成要素を調温することも可能である。特に、造形板を冷却すること、たとえばエネルギービームを放射するときに使われる熱エネルギーによる温度を低減させることが実行可能である。
【0015】
加熱デバイス及び/又は冷却デバイスは、少なくとも1つの熱交換器及び/若しくは少なくとも1つの熱トランスフォーマ、特にペルティエ素子であるか、又は少なくとも1つの熱交換器及び/若しくは少なくとも1つの熱トランスフォーマ、特にペルティエ素子を備えることが特に好ましい。熱交換器は、温度を変えることができ、且つ/又は熱交換器が関連する構成要素若しくは流体を調温することができる。熱交換器は、たとえば、プロセスチャンバ又はプロセスチャンバを通って流れる流体に関連することができ、したがって装置の構成要素又は流体を調温することができる。当然ながら、熱交換器を介して流体及び/又は装置の構成要素を加熱又は冷却することが可能である。したがって、熱交換器は、構成要素若しくは流体から熱を放散し、又は構成要素若しくは流体内へ熱を送る。
【0016】
さらに、加熱デバイス及び/又は冷却デバイスはまた、熱トランスフォーマ、特にペルティエ素子を備えることができるか、又は熱トランスフォーマ、特にペルティエ素子とすることができ、それによってペルティエ素子の2つの部分又は区間間に温度差を生じさせるために電流が使用される。したがって、熱トランスフォーマを使用して、熱トランスフォーマの配置に基づいて、構成要素又は流体を加熱又は冷却することができる。加熱デバイス及び/又は冷却デバイスを介してシステム内へ熱を放散し又は熱を送ることが可能であり、それによって安定したプロセス条件を保証することができる。
【0017】
好ましい実施形態によれば、本発明のプラントは、温度制御ユニットが、流体及び/又は造形材料及び/又は少なくとも1つの装置の少なくとも1つの構成要素を規定の温度プロファイルに関して調温するように適合されることから強化することができる。この実施形態によれば、流体及び/又は造形材料及び/又は少なくとも1つの装置の少なくとも1つの構成要素の温度は、温度制御ユニットによって、(事前に)規定された温度プロファイルに関して制御される。温度プロファイルは、たとえば、プロセスステップの少なくとも一部、特に製造プロセス又は前処理ステップ又は後処理ステップに対して規定することができる。したがって、温度プロファイルは、プロセス中の温度変動を考慮することができ、且つ/又は装置の単一の構成要素及び/若しくは造形材料及び/若しくは物体の温度を考慮することができる。温度プロファイルは特に、様々な連続する温度レベルからなることができたり、且つ/又は、流体及び/若しくは造形材料及び/若しくは構成要素の加熱若しくは冷却周期を交互にすることからなるようにできる。
【0018】
さらに、温度制御ユニットは、好ましくは、少なくとも1つの規定の処理時間に依存するか及び/又は少なくとも1つの処理ステップに依存する温度プロファイルに応じて、流体及び/又は造形材料及び/又は少なくとも1つの装置の少なくとも1つの構成要素の温度を少なくとも1つの規定の標的温度値に制御するように適合される。この改善形態による本発明のプラントは、好ましくは、少なくとも1つの規定の処理時間及び/又は少なくとも1つの処理ステップに対して流体及び/又は造形材料及び/又は構成要素を調温する
ように、温度プロファイルを規定することができるか、又は温度制御ユニットを使用することができることを提案する。したがって、温度プロファイル内の様々な温度値は、製造プロセス又は前処理ステップ若しくは後処理ステップに関し、それによって規定の標的温度への調温が、処理時間及び/又は処理ステップに応じて実行される。したがって、異なる処理時間及び/又は異なる処理ステップに対して、温度プロファイル内に異なる標的温度を規定することができ、したがって温度制御ユニットは、造形プロセスに相関して温度を制御し、特に特定の処理ステップ内の特有の温度変化を補償することが可能である。当然ながら、装置の異なる構成要素又は流体又は造形材料を異なる温度値に調温すること、言い換えれば異なる構成要素又は流体又は造形材料に対して異なる温度プロファイルをもたせることも可能である。
【0019】
温度値とは、温度範囲又は間隔でもあることが理解され、それによって温度制御ユニットは、上述したように温度を制御し、それによって標的温度値は、この範囲又は間隔内に入る。
【0020】
本発明のプラントは、さらに好ましくは、温度プロファイルが、エネルギービーム出力、及び/又は露出時間、及び/又は流体温度、及び/又は装置の少なくとも1つの構成要素の温度、特に基板キャリア温度、及び/又は造形材料の温度、及び/又は少なくとも1つの物体温度に応じて規定されるように改善することができる。この改善形態によれば、様々な温度を測定又は記録及び使用して、標的温度値又は温度プロファイルをそれぞれ規定することができる。様々なパラメータを考慮に入れることによって、造形材料内に蓄積したエネルギー、又はたとえばエネルギービームの散乱を介して装置の少なくとも1つの構成要素内に間接的に蓄積したエネルギーを判定又は推定し、そして、したがって少なくとも部分的に補償することができる。上述した1組のパラメータを判定することによって、プロセス条件が安定したままであることを保証するために、温度変化を推定して平衡させることができる。
【0021】
本発明のプラントの別の好ましい実施形態は、少なくとも1つの温度制御ユニットに関連付けられるとともに、装置の少なくとも1つの構成要素の少なくとも1つの区間内に配置された、少なくとも1つのパイプ若しくは少なくとも1つのパイプ構造及び/又は少なくとも1つのチャネル若しくはチャネル構造を提案する。この実施形態による温度制御ユニットは、パイプ又はチャネルを通って流れる流体を調温するように適合される。パイプ又はチャネルを通って流れる流体の温度に応じて、このパイプ又はチャネルが関連する装置の構成要素の調温が実行可能である。したがって、パイプ又はチャネルが配置され又は位置する区間から熱を放散することができ、又はこの区間内へ熱を送ることができる。
【0022】
前述の実施形態は、好ましくは、少なくとも1つのパイプ及び/若しくはパイプ構造並びに/又はチャネル並びに/又は熱交換器及び/若しくは熱トランスフォーマが、基板キャリア内及び/又は装置のチャンバを画定する壁内に配置されることから改善される。基板キャリアとは、造形チャンバの区間のうち、造形の進行中の物体の成長に対して典型的には垂直方向に可動の区間と理解することができる。前述の構造を壁又は基板キャリア内へ組み込むことによって、装置のそれぞれの構成要素若しくは隣接する区間から熱を放散し、又は装置のそれぞれの構成要素若しくは隣接する区間を加熱することが可能になり、したがって、この構造が装置内に組み込まれる厳密な位置でプラントの適当な区間を正確に調温することが可能になる。特に、パイプ若しくはパイプ構造又はチャネル若しくはチャネル構造に関して、装置のうち調温する必要のある区間の表面に近接した配置が可能である。したがって、改善された熱伝達を実現することができ、その結果、規定の構造の温度周期又は応答時間が短くなる。
【0023】
別の好ましい実施形態によれば、本発明のプラントは、少なくとも1つの装置の少なく
とも1つの構成要素に沿って且つ/又はそこを通って流れる特に循環流体流を制御するように適合された少なくとも1つの流れデバイスを備える。この流れデバイスは、装置の構成要素に沿って且つ/又はそこを通って流れる流体流を生成することが可能であり、それによって流体は、調温流体及び/又は調温ガス、特にプロセスガスとすることができる。具体的には、プロセスガス、たとえばアルゴンを使用して、少なくとも1つの構成要素及び/又は造形材料を調温することが可能である。
【0024】
したがって、流れデバイスによって生成される流体流は、温度制御ユニットを介して調温され、それによって流体の温度値は、流体がそこに沿って且つ/又はそこを通って流れる構成要素に対する標的温度値に応じて規定される。さらに、流れデバイスは、少なくとも1つのチャネル又は少なくとも1つのパイプに関連することが可能であり、それによって流れデバイスによって生成される流体流は、チャネル又はパイプを通って流れ、それによってチャネル又はパイプは、好ましくは、装置の構成要素内に、たとえばチャンバ、特にプロセスチャンバの壁内に配置される。
【0025】
さらに、本発明のプラントは、好ましくは、装置の少なくとも1つの構成要素の湿度を制御し、且つ/又は流体の湿度を制御し、且つ/又は造形材料の湿度を制御するように適合された湿度制御ユニットを備える。したがって、構成要素及び/又は流体及び/又は造形材料の湿度は、特に少なくとも1つの処理ステップに関して判定及び制御することができる。たとえば、製造プロセスをさらに改善するために、造形材料を乾燥させることができる。
【0026】
本発明のプラントは、有利には、温度制御ユニットが好ましくは、少なくとも1つの温度センサ及び/又は少なくとも1つの湿度センサの少なくとも1つの情報を処理するように適合されることから改善することができる。したがって、温度制御ユニットは、温度又は湿度に関する様々なセンサの情報又は測定値を受け取ることができる。したがって、単一の構成要素及び/又は流体及び/又は造形材料の、温度及び/又は湿度の直接制御が実行可能である。
【0027】
さらに、本発明は、エネルギービームによって固化することができる粉末状の造形材料の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体を付加製造する方法に関し、それによって少なくとも1つの造形装置の、並びに/又は少なくとも1つの前処理ステップ及び/若しくは少なくとも1つの後処理ステップを実行する少なくとも1つの装置の、少なくとも1つの構成要素に沿って且つ/又はそこを通って流れる流体流、特に循環流体流が生成され、それによって少なくとも1つの装置の少なくとも1つの構成要素に沿って且つ/若しくはそこを通って流れる流体の温度が制御され、並びに/又は装置の少なくとも1つの構成要素の温度が制御される。
【0028】
本発明のプラントに関して説明するすべての詳細、特徴、及び利点は、本発明の方法に移行することができることが自明である。特に、本発明の方法は、好ましくは、本発明のプラント上で実行される。
【0029】
本発明について、図に関して次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明のプラントの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
この図は、3次元の物体2を製造するプラント1を示し、プラント1は、エネルギービーム5、たとえばレーザビームによって固化することができる粉末状の造形材料4の層を
連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体2を付加製造する造形装置3を備える。当然ながら、付加製造プロセスの少なくとも1つの前処理ステップを実行するように適合された装置3及び/又は付加製造プロセスの少なくとも1つの後処理ステップを実行するように適合された装置3としたり、有したりすることも可能である。造形装置3に関して以下に説明するすべての詳細、特徴、及び利点は、前処理ステップ、後処理ステップを有する他の装置3にも完全に移行可能である。
【0032】
プラント1は、装置3のチャンバ8を通って流れる流体7(矢印によって示す)の温度を制御するように適合された第1の温度制御ユニット6を備え、流体は、たとえば、不活性プロセスガス、特にアルゴンである。流体7は、チャンバ8を通る任意の流路、たとえば閉プロセスガスループに沿って流れることができる。流体7は、チャンバ8全体を通って流れることができることが自明であり、図では分かりやすくするために、流体流路は、制限された区域内にのみ示されている。チャンバ8は特に、造形装置3のプロセスチャンバである。温度制御ユニット6は、流体7の流路に沿って任意の位置に配置された温度センサ9及び湿度センサ10に連結され、それによって温度制御ユニット6は、温度センサ9及び湿度センサ10によって記録又は捕捉された温度情報及び湿度情報を受け取るように適合される。流体7は、フィルタユニット29を通って案内され、フィルタユニット29は、チャンバ8内で流体7に充填された残留物、たとえば煙又は固化されていない造形材料などの粒子を流体7から分離するように適合される。プラント1は、流体7の湿度を制御するように適合された湿度制御ユニット13を備える。温度制御ユニット6は、チャンバ8を通って流れる流体7の温度を制御するようにさらに適合される。したがって、温度制御ユニット6は、チャンバ8内に循環流体流を生成するように適合された流れデバイス11に関連する。
【0033】
流体7の温度を制御するために、プラント1は、温度制御ユニット6に連結された熱交換器12を備える。熱交換器12は、たとえば流体7がフィルタユニット29を離れるときに流体7を調温、すなわち加熱又は冷却するために、様々な加熱要素及び冷却要素(図示せず)を備え、流体7は、チャンバ8内へ戻される前に調温される。当然ながら、流体7の循環流の他の位置に個々の構成要素(たとえば、温度センサ9、湿度センサ10、流れデバイス11、熱交換器12)を配置することも可能である。温度制御ユニット6は、物体2の製造プロセスの処理時間及び処理ステップに関する温度プロファイルに応じて流体7の温度を制御するように適合される。特に、温度制御ユニット6は、エネルギービーム5の出力、露出時間、物体2の幾何形状、並びに当然ながら温度センサ9及び湿度センサ10によって記録された温度及び湿度を考慮に入れる。
【0034】
図面は、プラント1が、チャンバ8を画定する壁内に配置されたチャネル14を備えることをさらに示す。チャネル14を通って流れる流体を制御するために、温度制御ユニット6は、様々な加熱要素又は冷却要素をそれぞれ備える加熱デバイス15及び冷却デバイス16に連結される。温度制御ユニット6によって送られる信号に応じて、加熱デバイス15及び冷却デバイス16は、チャネル14を通って流れる流体を調温し、したがってチャンバ8を調温するように適合される。図示のように、加熱デバイス15及び冷却デバイス16は、チャネル14を通って流れる流体を調温するように適合された温度制御ユニット32の一部である。当然ながら、別個の加熱デバイス15及び別個の冷却デバイス16を設けることも可能である。
【0035】
装置3は、エネルギービームをそれぞれ生成及び/又は案内する光学デバイス17をさらに備える。光学デバイス17は、熱トランスフォーマ18、たとえばペルティエ素子に隣接している。熱トランスフォーマ18は、第2の温度制御ユニット19に関連付けられ、第2の温度制御ユニット19はまた、温度センサ9及び湿度センサ10によって生成される情報を受け取り、当然ながら、特に光学デバイス17の温度に関するさらなる情報を
受け取るように適合される。さらに、光学デバイス17に温度センサ30が割り当てられる。温度センサ30は、光学デバイス17の温度を直接感知するように適合される。受け取った情報に応じて、温度制御ユニット19は、熱トランスフォーマ18を制御し、したがって光学デバイス17の事前定義された加熱又は冷却が実行可能になる。特に、造形材料4を溶融させるために高い融点が必要とされる製造プロセスに関して、エネルギービームに対する影響を回避するために、光学デバイス17上へ高い温度が伝達されないことを保証しなければならない。
【0036】
プラント1は、造形チャンバ20と、造形材料4及び製造されている物体2を搬送する基板キャリア21とをさらに備え、基板キャリア21は、可動の要素として構築される。造形チャンバ20は、造形チャンバ20がチャンバ8に別個に接続されることから、造形モジュールの一部と見なすことができる。したがって、造形チャンバ20は、たとえば物体2を後処理装置(図示せず)へ移送するために、造形装置3から取り外すことができる。
【0037】
造形チャンバ20には第3の温度制御ユニット22が関連し、第3の温度制御ユニット22は、基板キャリア21内に配置されたチャネル23を通って流れる流体の温度を制御し、造形チャンバ20を画定する壁内に配置されたチャネル24を通って流れる流体の温度を制御するように適合される。温度制御ユニット22は、チャンバ8内の様々なパラメータ、たとえばエネルギービーム5の出力、チャンバ8内の温度、造形材料4の温度、物体2の温度などを記録するように適合された測定デバイス25にさらに連結される。さらに、追加の温度センサ31を造形チャンバ20に割り当てることができる。温度センサ31は特に、チャネル23、24を通って流れる流体の温度を感知するように適合される。測定デバイス25及び/又は温度センサ31によって記録される情報に応じて、温度制御ユニット22は、流体の温度を制御し、したがってチャネル23及び24を通って流れる流体を調温することが可能である。したがって、温度制御ユニット22は、造形チャンバ20を調温するように適合される。温度制御ユニット22は、造形チャンバ20が取り外された状態で、すなわち造形装置3から取り外された状態で、造形チャンバ20を調温するようにさらに適合することができる。
【0038】
さらに、温度制御ユニット22、32の代わりに、又は温度制御ユニット22、32に加えて、共通の温度制御ユニットを提供することも可能であり、共通の温度制御ユニットは、たとえば、チャネル14を通って流れる流体及びチャネル23、24を通って流れる流体を調温するように適合される。加えて、共通の温度制御ユニットは、流体7の温度及び/又は湿度を制御するように適合することができる。
【0039】
現在の処理ステップに対して、特に造形材料4又は物体2を予熱又は冷却するために、造形チャンバ20を調温することが可能である。
【0040】
さらに、プラント1は、流体27の流れを生成するように適合された第2の流れデバイス26を備え、流体27は、調温流体、たとえばプラント1内の周囲の空気である。流体27は、装置3を外側から調温するために使用される。流れデバイス26には第4の温度制御ユニット28が関連し、流体27の温度を制御するように適合される。当然ながら、温度制御ユニット28はまた、プラント1及び装置3に関連するセンサの様々なパラメータ及び情報を受け取るように適合される。
【符号の説明】
【0041】
1 プラント
2 3次元の物体
3 造形装置
4 造形材料
5 エネルギービーム
6 第1の温度制御ユニット
7 流体
8 チャンバ
9 温度センサ
10 湿度センサ
11 流れデバイス
12 熱交換器
13 湿度制御ユニット
14 チャネル
15 加熱デバイス
16 冷却デバイス
17 光学デバイス
18 熱トランスフォーマ
19 第2の温度制御ユニット
20 造形チャンバ
21 基板キャリア
22 第3の温度制御ユニット
23 チャネル
24 チャネル
25 測定デバイス
26 第2の流れデバイス
27 流体
28 第4の温度制御ユニット
29 フィルタユニット
30 温度センサ
31 追加の温度センサ
32 温度制御ユニット