(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】難治性小児固形腫瘍に対するハロゲン化キサンテンのインビトロ(in vitoro)および異種移植片での抗腫瘍活性
(51)【国際特許分類】
A61K 31/352 20060101AFI20220802BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20220802BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20220802BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20220802BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20220802BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20220802BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20220802BHJP
A61K 41/00 20200101ALI20220802BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220802BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K31/704
A61K31/7048
A61K31/475
A61K33/243
A61K31/4745
A61K31/7068
A61K41/00
A61P35/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021514306
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(86)【国際出願番号】 US2019032435
(87)【国際公開番号】W WO2019222361
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-12-25
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510293969
【氏名又は名称】プロヴェクタス ファーマテック,インク.
(73)【特許権者】
【識別番号】520446403
【氏名又は名称】ザ ガバナー オブ ザ ユニバーシティ オブ カルガリー
(74)【代理人】
【識別番号】100086368
【氏名又は名称】萩原 誠
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー シンガー
(72)【発明者】
【氏名】エリック エー. ワクター
(72)【発明者】
【氏名】ルーシー スイフト
(72)【発明者】
【氏名】チュンフェン ヂアン
(72)【発明者】
【氏名】タニャ トリペット
(72)【発明者】
【氏名】アル ナレンドラン
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-510728(JP,A)
【文献】国際公開第2017/009873(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/105993(WO,A1)
【文献】PROVECTUS BIOPHARMACEUTICALS AND PEDIATRIC ONCOLOGY EXPERIMENTAL THERAPEUTICS INVESTIGATORS’ CONSORTIUM (POETIC) ANNOUNCE ACCEPTANCE OF PV-10 POSTER PRESENTATION AT AMERICAN SOCIETY OF CLINICAL ONCOLOGY (ASCO) ANNUAL MEETING,2018年04月25日
【文献】PRVECTUS BIOPHARMACEUTICALS EXPANDS GLOBAL PATENT PORTFOLIO FOR CANCER COMBINATION THERAPY,2018年04月28日
【文献】Journal of Pediatric Nursing,Vol.18, No.2,2003年,p.96-102
【文献】Journal of Clinical & Cellular Immunology,Vol.6, No.4,2015年
【文献】Provectus AnnouncesAgreement With POETIC(Pediatric OncologyExperimentalTherapeuticsInvestigatorsConsortium) To StudyPotential Of PV-10 ForPediatric Cancer,2016年12月08日
【文献】2018 ASCO ANNUAL MEETING ,10557,2018年06月02日,DOI:10.1200/JCO.2018.36.15_supppl.10557
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍細胞のアブレーションを誘発する量の
ローズベンガルまたはその薬学的に許容される塩を含む、哺乳動物対象の小児がん性固形腫瘍を治療するための医薬組成物
であって、前記ローズベンガルまたはその薬学的に許容される塩は病巣内に投与され、前記小児がん性固形腫瘍は、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、神経上皮腫、および横紋筋肉腫からなる群の1つまたは複数から選択される、医薬組成物。
【請求項2】
前記
ローズベンガルの前記薬学的に許容される塩はローズベンガル二ナトリウムである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記哺乳動物はヒトである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ドキソルビシン、エトポシド、ビンクリスチン、シスプラチン、イリノテカン、およびシタラビンからなる群から選択される、腫瘍抑制に有効な量の小分子全身性抗がん剤を更に含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
(1)腫瘍細胞のアブレーションを誘発する量の
ローズベンガルまたはその薬学的に許容される塩、および(2)前記
ローズベンガルと相乗的な細胞毒性を提供する、腫瘍抑制に有効な量の全身性抗がん剤を含む、哺乳動物対象の小児がん性固形腫瘍を治療するための医薬組成物
であって、前記ローズベンガルまたはその薬学的に許容される塩は病巣内に投与され、前記全身性抗がん剤は、ドキソルビシン、エトポシド、およびビンクリスチンの1つまたは複数から選択され、前記小児がん性固形腫瘍は、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、神経上皮腫、および横紋筋肉腫からなる群の1つまたは複数から選択される、医薬組成物。
【請求項6】
前記ローズベンガルはローズベンガル二ナトリウムである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記哺乳動物はヒトである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
(1)腫瘍細胞のアブレーションを誘発する量のローズベンガルまたはその薬学的に許容される塩、および(2)電離放射線による、腫瘍抑制に有効な量の全身性抗がん剤を含む、哺乳動物対象の小児がん性固形腫瘍を治療するための医薬組成物であって、前記ローズベンガルまたはその薬学的に許容される塩は病巣内に投与され、前記小児がん性固形腫瘍は、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、神経上皮腫、および横紋筋肉腫からなる群の1つまたは複数から選択される、医薬組成物。
【請求項9】
前記
ローズベンガルはローズベンガル二ナトリウムである、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記哺乳動物はヒトである、請求項
8に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年5月16日に出願された米国仮特許出願第62/672,373号に基づく優先権を主張し、当該米国仮特許出願の開示内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
小児に発生するがんの種類は、成人に発生するがんの種類とは異なることが多い。小児がんは、多くの場合、生涯のうちの非常に早い時期に、時には出生よりも前に生じる細胞のDNA変化が原因となる。したがって、がんの発生を引き起こす遺伝子変異は、子宮内での胎児の発育中に生じる可能性がある。成人の多くのがんとは異なり、小児がんは生活習慣や環境的なリスク要因とは強く関連していない。
【0003】
さらに、小児は、がんの治療中、治療完了後、そしてがんの生存者として、特有の問題に直面する。たとえば、小児はより集中的な治療を受ける可能性があるが、がんとその治療は、成長途中の小児の体に対して成人の体とは異なる影響を与える可能性がある。小児は、成人の症状を抑制するために使用される薬に対して、成人とは異なる反応を示す可能性がある。
【0004】
思春期の若者および若年成人は、その下の年代の子供またはその上の年代の成人のいずれかとは異なる種類のがんと診断されることが多い。特定の種類のがんの発生率は、思春期および若年成人世代の中で大きく異なる。いくつかのエビデンスは、急性リンパ芽球性白血病の思春期および若年成人は、成人の治療レジメンを受ける場合よりも小児の治療レジメンで治療される場合の方が良い結果をもたらす可能性があることを示唆している。
【0005】
現在、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、および横紋筋肉腫などの再発または転移性固形腫瘍の小児の全生存率は、30%未満と低い[非特許文献1]。小児固形腫瘍のうち、神経芽細胞腫は小児で最も一般的な頭蓋外がんであり、1歳~4歳の小児の主要な死因である[非特許文献2]。
【0006】
神経芽細胞腫は、交感神経組織に由来する非常に不均一で複雑な疾患である[非特許文献3]。神経芽細胞腫の治療における最近の改善により、非高リスク疾患の5年生存率は90%超まで増加している[非特許文献4]。しかし、神経芽細胞腫を呈する患者の40%超が高リスクと見なされており、集中的な治療レジメンにもかかわらず、これらの患者の5年生存率は50%未満である[非特許文献2、4]。さらに、再発性神経芽細胞腫の予後は不良であり、5年生存率は10%未満である[非特許文献4]。
【0007】
特に高リスク神経芽細胞腫および再発性神経芽細胞腫の小児患者などの、再発または転移性固形腫瘍の小児患者の生存率が低いことを考慮すると、これらの悪性腫瘍を治療するための新しい治療アプローチが緊急に必要とされている。
【0008】
成人のがん性腫瘍に有用な抗がん剤グループの1つは、ハロゲン化キサンテン、またはその薬学的に許容される塩である。特許文献1、2、および3を参照されたい。これらのハロゲン化キサンテンのうち、ローズベンガル二ナトリウム(4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン二ナトリウム;RB)は特に効果的で容易に利用できることがわかっている。成人の腫瘍の動態と小児の腫瘍の動態とは大きく異なる場合が多いため、RBおよび類似のハロゲン化キサンテンを小児のがん性腫瘍に対して使用した場合に同様に有効であるかどうかは不明である。
【0009】
PV-10は、0.9%生理食塩水中の(RB)の10%無菌溶液であり、乳幼児の肝機能を測定するために臨床的に使用されている[非特許文献5]。これまでの研究では、PV-10がリソソームに蓄積し[非特許文献6]、様々な成人がんで細胞死を誘導することが示されている[非特許文献7~11]。
【0010】
難治性転移性黒色腫患者を対象とした第II相臨床試験では、PV-10の病巣内(IL)注射により腫瘍の退縮が誘導され、全奏効率は51%であった[非特許文献12]。PV-10は、in-transit黒色腫または転移性黒色腫の患者を対象とした第II相臨床試験において、放射線療法との併用でも有効性を実証し、全奏効率は86.6%であった[非特許文献13]。PV-10は、直接的ながん細胞死を誘導することに加え、マウス研究[非特許文献7、8、14]と臨床試験[非特許文献10、12、14、15、16]との両方において、腫瘍特異的免疫反応を誘導することも示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第6331286号
【文献】米国特許第7390668号
【文献】米国特許第7648695号
【文献】米国特許第5998597号
【文献】米国特許第6493570号
【文献】米国特許第8974363号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Chen X, Pappo A, Dyer MA. Pediatric solid tumor genomics and developmental pliancy. Oncogene. 2015;34:5207. doi: 10.1038/onc.2014.474.
【文献】Moreno L, Caron H, Geoerger B, Eggert A, Schleiermacher G, Brock P et al. Accelerating drug development for neuroblastoma - New Drug Development Strategy: an Innovative Therapies for Children with Cancer, European Network for Cancer Research in Children and Adolescents and International Society of Paediatric Oncology Europe Neuroblastoma project. Expert opinion on drug discovery. 2017;12(8):801-11. doi: 10.1080/17460441.2017.1340269.
【文献】Cheung N-KV, Dyer MA. Neuroblastoma: Developmental Biology, Cancer Genomics, and Immunotherapy. Nature reviews Cancer. 2013;13(6):397-411. doi: 10.1038/nrc3526.
【文献】Park JR, Bagatell R, London WB, Maris JM, Cohn SL, Mattay KK et al. Children's Oncology Group's 2013 blueprint for research: neuroblastoma. Pediatric blood & cancer. 2013;60(6):985-93. doi: 10.1002/pbc.24433.
【文献】Yvart J, Moati F, Alvarez F. Odievre M. Degrez A. 131 I Rose Bengal: Its Use in the Evaluation of Infantile Jaundice. European Journal of Nuclear Medicine. 1981; 6:355-359.
【文献】Wachter, E., Dees, C., Harkins, J., Fisher, W., Scott, T. 2002. Functional imaging of photosensitizers using multiphoton microscopy. Proceedings of SPIE, Multiphoton Microscopy in the Biomedical Sciences II, Periasamy, A. and So, P.T.C. (eds), Bellingham, Washington: 4620: 143-147.
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【文献】Zamani Taghizadeh Rabe S, Mousavi SH, Tabasi N, Rastin M, Zamani Taghizadeh Rabe S, Siadat Z et al. Rose Bengal suppresses gastric cancer cell proliferation via apoptosis and inhibits nitric oxide formation in macrophages. Journal of immunotoxicology. 2014;11(4):367-75. doi: 10.3109/1547691x.2013.853715.
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【文献】Foote M, Read T, Thomas J, Wagels M, Burmeister B, Smithers BM. Results of a phase II, open-label, non-comparative study of intralesional PV-10 followed by radiotherapy for the treatment of in-transit or metastatic melanoma. Journal of surgical oncology. 2017;115(7):891-7. doi:10.1002/jso.24580.
【文献】Liu H, Innamarato PP, Kodumudi K, Weber A, Nemoto S, Robinson JL et al. Intralesional Rose Bengal in melanoma elicits tumor immunity via activation of dendritic cells by the release of high mobility group box 1. Oncotarget. 2016;7(25):37893-905. doi: 10.18632/oncotarget.9247.
【文献】Lippey J, Bousounis R, Behrenbruch C, McKay B, Spillane J, Henderson MA et al. Intralesional PV-10 for in-transit melanoma-A single-center experience. Journal of surgical oncology. 2016;114(3):380-4. doi: 10.1002/jso.24311.
【文献】Ross MI. Intralesional therapy with PV-10 (Rose Bengal) for in-transit melanoma. Journal of surgical oncology. 2014;109(4):314-9. doi: 10.1002/jso.23554.
【文献】Jayanthan A, Ruan Y, Truong TH, Narendran A. Aurora kinases as druggable targets in pediatric leukemia: heterogeneity in target modulation activities and cytotoxicity by diverse novel therapeutic agents. PLoS One. 2014;9(7):e102741. doi: 10.1371/journal.pone.0102741.
【文献】Chou T-C. Drug Combination Studies and Their Synergy Quantification Using the Chou-Talalay Method. Cancer Research. 2010;70(2):440.
【文献】Lun X, Ruan Y, Jayanthan A, Liu DJ, Singh A, Trippett T et al. Double-deleted vaccinia virus in virotherapy for refractory and metastatic pediatric solid tumors. Molecular oncology. 2013;7(5):944-54. doi: 10.1016/j.molonc.2013.05.004.
【文献】Catalogue of Somatic Mutations in Cancer (COSMIC). https://cancer.sanger.ac.uk/cosmic. 検索日:2017年10月30日
【文献】Fennelly C, Amaravadi RK. Lysosomal Biology in Cancer. Methods in molecular biology (Clifton, NJ). 2017;1594:293-308. doi: 10.1007/978-1-4939-6934-0_19.
【発明の概要】
【0013】
本発明は、哺乳動物対象の小児がん性固形腫瘍を治療する方法を企図する。1つの方法は、投与された腫瘍の腫瘍細胞のアブレーションを誘発する量のハロゲン化キサンテンまたはその薬学的に許容される塩を病巣内に投与することを企図する。2つ目の方法は、投与された腫瘍の腫瘍細胞のアブレーションを誘発する量のハロゲン化キサンテンまたはその薬学的に許容される塩を病巣内に投与するステップを含む。ハロゲン化キサンテンと相乗的な細胞毒性を提供する、腫瘍抑制に有効な量の全身性抗がん剤もまた、哺乳動物対象に対して全身投与する。
【0014】
2つの薬剤は同時に投与することが可能であり、または、一方の薬剤を他方の薬剤の投与の約1週間から約4週間前に投与することが可能である。全身投与の約1週間から約4週間前に病巣内投与を行うことが好ましい。
【0015】
本開示の一部を構成する図面は、下記の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1A~1Eは、PV-10が小児固形腫瘍細胞株の細胞生存率を低下させることを示している。様々な小児固形腫瘍細胞株(ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、および横紋筋肉腫)、正常線維芽細胞株、および初代骨髄サンプルを、PV-10の濃度を上げながら(3.125~400μM)96時間処理した。細胞生存率はalamarBlue(登録商標)アッセイによって測定した。細胞生存率の百分率は、PBS(コントロール)による対応する処理に対して正規化された。細胞生存率の平均割合は、3つの別々の研究から計算され、平均の標準誤差が示されている。
【
図2A】PV-10が神経芽細胞腫細胞株に対して細胞毒性であることを示す顕微鏡写真である。神経芽細胞腫細胞株SK-N-AS、SK-N-BE(2)、およびIMR5、ならびに密接に関連する神経上皮腫細胞株SK-N-MCを、PBS(コントロール)、50μMのPV-10、または100μMのPV-10のいずれかで96時間処理し、位相差光学顕微鏡解析により観察した。研究は3回行われ、代表的な画像が示されている。スケールバーは100μmに相当する。
【
図2B】PV-10が神経芽細胞腫細胞株に対して細胞毒性であることを示す図である。神経芽細胞腫細胞株SK-N-AS、SK-N-BE(2)、およびIMR5、ならびに神経上皮腫細胞株SK-N-MCを、PBS(コントロール)または100μMのPV-10のいずれかで処理し、経時的顕微鏡動画解析により観察した。30分ごとに48時間撮像を行った。細胞数を計測し、0時間での細胞数に対して正規化した。各研究の各処理ごとに、少なくとも350個の細胞を計測した。3つの別々の研究から計算された細胞数の平均割合と平均の標準誤差とが示されている。
【
図3】PV-10によってがん細胞のリソソームが破壊されることを示す図である。神経芽細胞腫細胞株SK-N-AS、SK-N-BE(2)、およびIMR5を、PBS(コントロール)または100μMのPV-10のいずれかで16時間処理した。酸性の細胞小器官に濃縮されて蛍光を発する核酸染色剤であるHoechst 33342およびLysoTracker(登録商標)Green DND-26で生細胞を染色し、蛍光顕微鏡解析により観察した。スケールバーは20μmに相当する。提示されたデータは、3つの別々の研究の代表である。
【
図4A】PV-10が細胞周期のG1期にある細胞の割合を増加させることを示す図である。神経芽細胞腫細胞株SK-N-ASおよびIMR5を、PBS(コントロール)、50μMのPV-10、または100μMのPV-10のいずれかで16時間または24時間処理し、細胞周期段階を検出するために、DAPIで染色してフローサイトメトリで分析した。細胞周期のG1期、S期、またはG2/M期のいずれかにある細胞の平均割合は、3つの別々の研究から計算され、平均の標準誤差が示されている。
【
図4B】PV-10がアポトーシスによる細胞死を誘導することを示す図である。神経芽細胞腫細胞株SK-N-AS、SK-N-BE(2)、およびIMR5、ならびに神経上皮腫細胞株SK-N-MCを、PBS(コントロール)、75μMのPV-10、または100μMのPV-10のいずれかで24時間処理した。全細胞溶解液を調製し、ウエスタンブロットにより分析して、総および切断ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)、カスパーゼ3、カスパーゼ7、およびカスパーゼ9のレベルを検出した。アクチンをローディングコントロールとして使用した。分子量はキロダルトン(kDa)で示される。提示されたデータは、2つの別々の研究の代表である。
【
図5A】PV-10処理が様々な抗がん剤治療と相乗的であることを示す図である。神経芽細胞腫細胞株SK-N-AS、SK-N-BE(2)、およびIMR5、神経上皮腫細胞株SK-N-MC、ならびに正常線維芽細胞株BJを、0.1μMの7種類の各抗がん剤単独で、または50μMのPV-10との併用で処理した。細胞を96時間処理し、細胞生存率をalamarBlue(登録商標)で測定した。細胞生存率の百分率は、PBS(コントロール)での処理に対して正規化された。2つの別々の研究から計算された細胞生存率の平均割合と平均の標準誤差とが示されている。
【
図5B】PV-10処理が様々な抗がん剤治療と相乗的であることを示す図である。神経芽細胞腫細胞株SK-N-AS、SK-N-BE(2)、およびIMR5、神経上皮腫細胞株SK-N-MC、ならびに正常線維芽細胞株BJを、0.1μMの7種類の各抗がん剤単独で、または50μMのPV-10との併用で処理した。細胞を96時間処理し、細胞生存率をalamarBlue(登録商標)で測定した。細胞生存率の百分率は、PBS(コントロール)での処理に対して正規化された。2つの別々の研究から計算された細胞生存率の平均割合と平均の標準誤差とが示されている。
【
図5C】PV-10処理が様々な抗がん剤治療と相乗的であることを示す図である。神経芽細胞腫細胞株SK-N-AS、SK-N-BE(2)、およびIMR5、神経上皮腫細胞株SK-N-MC、ならびに正常線維芽細胞株BJを、0.1μMの7種類の各抗がん剤単独で、または50μMのPV-10との併用で処理した。細胞を96時間処理し、細胞生存率をalamarBlue(登録商標)で測定した。細胞生存率の百分率は、PBS(コントロール)での処理に対して正規化された。2つの別々の研究から計算された細胞生存率の平均割合と平均の標準誤差とが示されている。
【
図5D】PV-10処理が様々な抗がん剤治療と相乗的であることを示す図である。神経芽細胞腫細胞株SK-N-AS、SK-N-BE(2)、およびIMR5、神経上皮腫細胞株SK-N-MC、ならびに正常線維芽細胞株BJを、0.1μMの7種類の各抗がん剤単独で、または50μMのPV-10との併用で処理した。細胞を96時間処理し、細胞生存率をalamarBlue(登録商標)で測定した。細胞生存率の百分率は、PBS(コントロール)での処理に対して正規化された。2つの別々の研究から計算された細胞生存率の平均割合と平均の標準誤差とが示されている。
【
図5E】PV-10処理が様々な抗がん剤治療と相乗的であることを示す図である。神経芽細胞腫細胞株SK-N-AS、SK-N-BE(2)、およびIMR5、神経上皮腫細胞株SK-N-MC、ならびに正常線維芽細胞株BJを、0.1μMの7種類の各抗がん剤単独で、または50μMのPV-10との併用で処理した。細胞を96時間処理し、細胞生存率をalamarBlue(登録商標)で測定した。細胞生存率の百分率は、PBS(コントロール)での処理に対して正規化された。2つの別々の研究から計算された細胞生存率の平均割合と平均の標準誤差とが示されている。
【
図6A】PV-10処理が放射線照射の効果を増強することを示す図である。神経芽細胞腫細胞株SK-N-ASを、PBS(コントロール)または50μMのPV-10のいずれかで4時間前処理した。次に、0.5Gy、1Gy、または2Gyのいずれかの放射線を細胞に照射し、さらに92時間細胞を培養した。細胞生存率をalamarBlue(登録商標)で測定した。3つの別々の研究から計算された細胞生存率の平均割合と平均の標準誤差とが示されている。アスタリスクは、スチューデントの対応のあるt検定による、p<0.05水準での有意差を示す。
【
図6B】PV-10処理が放射線照射の効果を増強することを示す図である。神経芽細胞腫細胞株IMR5を、PBS(コントロール)または50μMのPV-10のいずれかで4時間前処理した。次に、0.5Gy、1Gy、または2Gyのいずれかの放射線を細胞に照射し、さらに92時間細胞を培養した。細胞生存率をalamarBlue(登録商標)で測定した。3つの別々の研究から計算された細胞生存率の平均割合と平均の標準誤差とが示されている。アスタリスクは、スチューデントの対応のあるt検定による、p<0.05水準での有意差を示す。
【
図7A】
図7A~7Fは、PV-10処理がインビボ(in vivo)で腫瘍退縮を誘導することを示す図である。CB17 SCIDマウス(グループあたりn=4)の右脇腹に、IMR5-mCherryFluc細胞またはSK-N-AS-mCherryFluc細胞のいずれかを皮下注射した。腫瘍サイズが少なくとも5×5mmとなった際に、50μlのPBS(コントロール)、25μlのPV-10、または50μlのPV-10のいずれかを腫瘍に注射した。
図7Aでは、ノギスを使用してIMR5-mCherryFluc腫瘍の成長を測定した。矢印は処理日(6日目)を示す。平均腫瘍サイズと平均の標準誤差とが示されている。アスタリスクは、スチューデントの対応の無いt検定による、p<0.05水準での有意差を示す。
【
図7B】
図7A~7Fは、PV-10処理がインビボ(in vivo)で腫瘍退縮を誘導することを示す図である。CB17 SCIDマウス(グループあたりn=4)の右脇腹に、IMR5-mCherryFluc細胞またはSK-N-AS-mCherryFluc細胞のいずれかを皮下注射した。腫瘍サイズが少なくとも5×5mmとなった際に、50μlのPBS(コントロール)、25μlのPV-10、または50μlのPV-10のいずれかを腫瘍に注射した。
図7Bでは、Xenogen IVIS(登録商標)200システムを使用して、D-ルシフェリンを腹腔内注射した後の生物発光シグナルを検出することによりIMR5-mCherryFluc腫瘍の成長を測定した。平均腫瘍サイズと平均の標準誤差とが示されている。
【
図7C】
図7A~7Fは、PV-10処理がインビボ(in vivo)で腫瘍退縮を誘導することを示す図である。CB17 SCIDマウス(グループあたりn=4)の右脇腹に、IMR5-mCherryFluc細胞またはSK-N-AS-mCherryFluc細胞のいずれかを皮下注射した。腫瘍サイズが少なくとも5×5mmとなった際に、50μlのPBS(コントロール)、25μlのPV-10、または50μlのPV-10のいずれかを腫瘍に注射した。
図7Cは、IMR5-mCherryFluc腫瘍を有するマウスの生存曲線を示している。アスタリスクは、ログランク(マンテル・コックス)検定による、p<0.05水準での有意差を示す。
【
図7D】
図7A~7Fは、PV-10処理がインビボ(in vivo)で腫瘍退縮を誘導することを示す図である。CB17 SCIDマウス(グループあたりn=4)の右脇腹に、IMR5-mCherryFluc細胞またはSK-N-AS-mCherryFluc細胞のいずれかを皮下注射した。腫瘍サイズが少なくとも5×5mmとなった際に、50μlのPBS(コントロール)、25μlのPV-10、または50μlのPV-10のいずれかを腫瘍に注射した。
図7Dでは、ノギスを使用してSK-N-AS-mCherryFluc腫瘍の成長を数十日間経時的に測定した。矢印は処理日(14日目)を示す。平均腫瘍サイズと平均の標準誤差とが示されている。
【
図7E】
図7A~7Fは、PV-10処理がインビボ(in vivo)で腫瘍退縮を誘導することを示す図である。CB17 SCIDマウス(グループあたりn=4)の右脇腹に、IMR5-mCherryFluc細胞またはSK-N-AS-mCherryFluc細胞のいずれかを皮下注射した。腫瘍サイズが少なくとも5×5mmとなった際に、50μlのPBS(コントロール)、25μlのPV-10、または50μlのPV-10のいずれかを腫瘍に注射した。
図7Eでは、Xenogen IVIS(登録商標)200システムを使用して、D-ルシフェリンを腹腔内注射した後の生物発光シグナルを検出することにより、処理後0日目、12日目、および15日目のSK-N-AS-mCherryFluc腫瘍の成長を測定した。平均腫瘍サイズと平均の標準誤差とが示されている。
【
図7F】
図7A~7Fは、PV-10処理がインビボ(in vivo)で腫瘍退縮を誘導することを示す図である。CB17 SCIDマウス(グループあたりn=4)の右脇腹に、IMR5-mCherryFluc細胞またはSK-N-AS-mCherryFluc細胞のいずれかを皮下注射した。腫瘍サイズが少なくとも5×5mmとなった際に、50μlのPBS(コントロール)、25μlのPV-10、または50μlのPV-10のいずれかを腫瘍に注射した。
図7Fは、SK-N-AS-mCherryFluc腫瘍を有するマウスの生存曲線を示している。
【
図8】
図7A~7Fで説明した各実験グループの一連のマウス写真を示す。生物発光画像は、各実験グループ(PBSコントロール、用量25μLのPV-10、および用量50μLのPV-10)の処理後6日目、12日目、および17日目の活動的な脇腹の腫瘍を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ローズベンガル(RB、4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン二ナトリウム)等のハロゲン化キサンテンまたはその薬学的に許容される塩を腫瘍抑制に有効な量含有する医薬組成物を、腫瘍内に(病巣内)投与することで小児固形腫瘍を治療する方法を企図する。ローズベンガル含有組成物は単独の治療薬として利用可能であるが、いくつかの好ましい実施形態では、RBは、好ましくは、小分子(非タンパク性、約1000グラム/モル未満)、抗体や酵素などのタンパク性分子、電離放射線療法、またはいわゆるチェックポイント阻害抗体療法であり得る全身性抗がん剤などの、別の抗腫瘍モダリティと組み合わされる。本明細書に示されるように、これらの組み合わせのいくつかは、小児腫瘍に対して相乗的な毒性を示している。
【0018】
ハロゲン化キサンテン
特に好適であるローズベンガル(4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン)等の企図されるハロゲン化キサンテン、または、エリスロシンB、フロキシンB、4,5,6,7-テトラブロモ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン、2’,4,5,6,7-ペンタクロロ-4’,5’,7’-トリヨードフルオレセイン、4,4’,5,6,7-ペンタクロロ-2’,5’,7’-トリヨードフルオレセイン、2’,4,5,6,7,7’-ヘキサクロロ-4’,5’-ジヨードフルオレセイン、4,4’,5,5’,6,7-ヘキサクロロ-2’,7’-ジヨードフルオレセイン、2’,4,5,5’,6,7-ヘキサクロロ-4’,7’-ジヨードフルオレセイン、4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’-トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,7’-トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7-テトラブロモ-2’,4’,5’-トリヨードフルオレセイン、および4,5,6,7-テトラブロモ-2’,4’,7’-トリヨードフルオレセインを含むその他のハロゲン化キサンテンは、適切な医薬組成物中に溶解または分散して存在する。
【0019】
好ましい形態であるローズベンガル二ナトリウムは、以下の構造式で表される:
【0020】
【0021】
この企図される組成物に関する好適な実施形態の詳細は、その開示全体が本明細書に組み込まれる特許文献1、4、5、および6に記載されている。
【0022】
企図される組成物中のハロゲン化キサンテン成分の送達は、組成物が生理学的pH(すなわち、約pH7)に近いpH値を有する場合、特に、pH値が約4より大きい場合に行われることが最も好ましく、これによりハロゲン化キサンテンは、組成物中において確実に二塩基の形態を維持する。従って、好適な実施形態において、組成物のpH値は約4~約10であり、より好ましくは約5~約9であり、最も好ましくは約pH6~約pH8である。
【0023】
ハロゲン化キサンテン成分の組織への分配性を最大化するための薬剤としては、親水性賦形剤が適している。したがって、好適な実施形態では、賦形剤中において、このような分配を妨害しうる非親水性成分の含有量は最小限である。
【0024】
したがって、組成物の好適な製剤は、親水性の、好ましくは水含有の賦形剤中に以下を含む:適切な医薬組成物中の、特に好適であるローズベンガル(4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン)等のハロゲン化キサンテン、または、エリスロシンB、フロキシンB、4,5,6,7-テトラブロモ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン、2’,4,5,6,7-ペンタクロロ-4’,5’,7’-トリヨードフルオレセイン、4,4’,5,6,7-ペンタクロロ-2’,5’,7’-トリヨードフルオレセイン、2’,4,5,6,7,7’-ヘキサクロロ-4’,5’-ジヨードフルオレセイン、4,4’,5,5’,6,7-ヘキサクロロ-2’,7’-ジヨードフルオレセイン、2’,4,5,5’,6,7-ヘキサクロロ-4’,7’-ジヨードフルオレセイン、4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’-トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,7’-トリヨードフルオレセイン、4,5,6,7-テトラブロモ-2’,4’,5’-トリヨードフルオレセイン、および4,5,6,7-テトラブロモ-2’,4’,7’-トリヨードフルオレセインを含むその他のハロゲン化キサンテン。
【0025】
好ましい形態であるローズベンガル二ナトリウムは、以下の化学式で表される:
【0026】
【0027】
この医薬組成物に関する好適な実施形態の詳細は、その開示全体が本明細書に組み込まれる特許文献1、4、5、および6に記載されている。
【0028】
企図されるハロゲン化キサンテン含有組成物は、典型的には、水性媒体中に約0.1%(w/v)から約20%(w/v)の濃度でハロゲン化キサンテンを含有する。医薬ハロゲン化キサンテン含有組成物は、好ましくは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つのカチオンと、塩化物、リン酸塩、および硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1つのアニオンとを含む水溶性電解質を含み、この電解質の濃度は約0.1%(w/v)~約2%(w/v)である。
【0029】
3番目の成分は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸塩、および硝酸塩から選択される水溶性電解質である。この電解質は、約0.1~約2重量%の濃度で存在する、または代わりに、約100mOsm/kg超~約600mOsm/kgの浸透圧を提供するのに十分なレベルで存在する。より好ましくは、薬剤組成物の浸透圧は、250mOsm/kgより大きく、最も好ましくは、約300~500mOsm/kgである。電解質は、好ましくは塩化ナトリウムである。電解質は、好ましくは約0.5~約1.5%の濃度で、さらにより好ましくは約0.8~約1.2%の濃度で、そして最も好ましくは生理食塩水中に存在するように約0.9%の濃度で存在する。
【0030】
組成物の水性媒体は、好ましくは、注射での使用の基準を満たす水のみを含有する。賦形剤の最大約20体積パーセントを、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、第2ブタノール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、エリトリトール、トレイトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの、1つ以上のC1-C61価または多価アルコールとすることができる。より好ましくは、アルコールは、賦形剤の約10体積パーセント未満、さらにより好ましくは約5体積パーセント未満で企図される組成物中に存在する。
【0031】
代替的な観点では、本発明は、下記の化学式1の化合物を使用し、化学式1中、R1は独立的にF、Cl、Br、I、H、またはC1-C4のアルキル基であり、R2、R3、R4、およびR5は独立的にCl、H、またはIであり、R2、R3、R4、およびR5から選択される少なくとも1つの置換基はIであるとともに、少なくとも1つの置換基はClまたはHであり、R6は独立的にHまたはC1-C4のアルキル基であり、R11はHまたはC1-C4のアルキル基であり、R12はHまたはC1-C7のアシル基である。また、本発明は、(a)互変異性形態、(b)アトロプ異性体、(c)下記の化学式2に示される閉鎖したラクトン形態、(d)化学式2に示されるラクトン形態の鏡像異性体、および(e)それらの薬学的に許容可能な塩の全てを使用する。
【0032】
【0033】
「生理的に許容可能な塩」および「薬学的に許容可能な塩」という語句、およびその様々な文法形態の語句は、当技術分野で公知の方法により調整可能な、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウム、およびプロタミン亜鉛塩を含め、製薬業界で一般的に使用される、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびアンモニウム塩等のあらゆる非毒性カチオンを指す。企図されるカチオンは、水溶性キサンテン塩を提供する。好ましくは、塩は一塩基塩または二塩基塩形態の、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびアンモニウムである。医薬化合物と共に生理的に許容可能な塩を形成する、一般的に使用される生理的に(または薬学的に)許容可能な酸および塩基のリストについて、読者はBerge、J. Pharm. Sci. 1977 68(1):1-19を参照されたい。
【0034】
ハロゲン化キサンテン医薬組成物のpH値は、当業者に公知のあらゆる適切な手段によって制御または調整することができる。酸や塩基等の追加により、組成物を中和するか、またはpH値を調整することができる。ハロゲン化キサンテンまたはその生理的に許容可能な塩は弱酸であるから、ハロゲン化キサンテンの濃度および/または電解質の濃度によっては、組成物のpH値のために中和剤および/またはpH値調整剤を使用せずにすむ可能性がある。しかしながら、組成物は、投与されてから生体環境に適合できるよう、いかなる中和剤も含まないことが特に好ましい。
【0035】
好ましくは、医薬組成物はいかなる防腐剤も含まない。防腐剤は、その多くが医薬組成物またはその製剤を有害にも妨害し得る、または、ハロゲン化キサンテン組成物の活性成分の送達を複雑にするか、相互作用を生じるか、または妨害する可能性のあるものである。防腐剤を用いる限りにおいては、イミド尿素が、医薬組成物中においても投与後においても、ハロゲン化キサンテンと相互作用を起こさないので好ましい防腐剤である。
【0036】
企図される治療方法は、それを必要とする哺乳動物に対して使用される。治療される哺乳動物は、ヒトなどの霊長類、チンパンジーまたはゴリラなどの類人猿、カニクイザルまたはマカクなどのサル、ラット、マウスまたはウサギなどの実験動物、犬、猫、馬などのコンパニオン動物、あるいは、雌牛または去勢雄牛、羊、子羊、ブタ、ヤギ、ラマなどの食用動物であり得る。
【0037】
企図される各組成物は、典型的には、治療された固形がん性腫瘍が検出されなくなる等の所望の程度まで縮小するまで、それを必要とする哺乳動物にインビボで繰り返し投与される。したがって、組成物を必要とする哺乳動物への投与は、治療を行う医師の指示の下で、1日に複数回、または毎日、毎週、毎月、あるいは数ヶ月から数年の期間にわたって行われ得る。
【0038】
企図されるハロゲン化キサンテン化合物は、腫瘍内に直接注射された場合、通常、がん細胞のリソソームによって取り込まれ、リソソームに蓄積し、アポトーシスまたは別のメカニズムによる細胞死を誘導する。がん細胞死を引き起こす際に、細胞は崩壊またはアブレーションされる。細胞断片のアブレーションは、哺乳動物の免疫系を、アブレーションされた細胞断片に提示される抗原に対して特異的に刺激し、その結果、腫瘍内(病巣内)注射の部位から離れた腫瘍も認識されて殺傷されると考えられている。
【0039】
上記でも述べた通り、ハロゲン化キサンテンまたはその薬学的に許容される塩の好適な企図された組成物は、PV-10(登録商標)と呼ばれる。PV-10(登録商標)は、0.9%生理食塩水中のローズベンガル(RB、4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン二ナトリウム)の10%無菌溶液である。
【0040】
ハロゲン化キサンテンとの併用で相乗的な細胞毒性を提供する、腫瘍抑制に有効な量の全身性抗がん剤は、それを必要とする哺乳動物対象に対して投与されるものであり、通常の液体、ゲル、固体、または他の形態を使用して処方することができる。したがって、全身性抗がん剤は、例示的に、錠剤または液体組成物による経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内注射、電離放射線、または有効量の抗がん剤を哺乳動物対象へ提供する任意の他の方式によって投与可能であることが理解されるべきである。
【0041】
全身性抗がん剤
小分子(非タンパク性、約1000グラム/モル未満)またはより大きなタンパク性分子である全身性抗がん剤は、ハロゲン化キサンテンの病巣内投与によって行われる局所投与と比較して、薬剤が治療対象の哺乳動物の全身に行きわたるように哺乳動物に投与される。例示的な小分子抗がん剤には、本明細書で使用したドキソルビシン、エトポシド、ビンクリスチン、シスプラチン、イリノテカン、およびシタラビンが含まれ、また、例示的なタンパク性分子はアスパラギナーゼである。これらの薬剤のうち、ドキソルビシン、エトポシド、およびビンクリスチンは、致死量以下の用量のPV-10による治療と相乗作用するようであり、好ましい。
【0042】
小分子の全身性抗がん剤の有用な有効量は、FDA、国内機関、または国際機関が承認した薬剤のラベル情報に記載されている用量である。一般的に、モノセラピーの投与計画は、早期臨床試験における最大耐性量(MTD)の決定により設定される。MTD(またはそのバリエーションである近似の量)は、有効性の評価と、安全性のより詳細な評価のために、後期臨床試験にも適用される(promulgated)。これらのMTDは、臨床試験が完了すると、確立された治療量となることが多い。しかしながら、小分子の全身性抗がん剤はPV-10との併用が企図されているため、MTDが使用される最大量であり、その量は通常の手順に従って漸減され得る。
【0043】
本発明において局所PV-10療法と組み合わせることが可能な各種の全身性抗がん剤の投与計画例を、下記の表Aに示す。なお、以下に挙げる薬剤のいくつかは、上記で定義されている「小分子」であるのに対し、他の薬剤は、抗体などの大きなタンパク性分子である。それでもなお、これらは全身投与される。
【0044】
下記のタンパク性抗がん剤は、通常、TNFファミリやインターロイキンファミリなどのケモカインによって引き起こされる炎症反応を抑制する。
【0045】
【0046】
本発明の併用療法および治療方法では、全身性薬剤を下記のような局所療法と組み合わせて使用するとき、相加的または相乗的効果によって、当該全身性薬剤を表Aに記載されているような全身性薬剤の典型的な投与計画のレベル以下で使用することが一般的に可能となる。しかしながら、表Aに示される投与計画は、治療を開始する際の有用な指針を提供するものであり、そこから、個々の患者を担当する医師が適切と考える量へ投与量を減量することが可能である。
【0047】
電離放射線治療
本明細書で報告された結果は、PV-10による治療を電離放射線と組み合わせることでも、治療全体の細胞毒性を増強したことを示している。このインビトロ研究では、まず最初に神経芽細胞腫細胞を致死量以下のPV-10と4時間接触させ、次に0.5、1、または2グレイの電離放射線を照射した。
【0048】
この治療レジメンは一例であり、この治療の組み合わせの概念を証明したものであることが理解されるべきである。通常の労働者はこれらの効果を利用し、それに応じて治療を変更することが可能である。
【0049】
チェックポイント抗体阻害剤
さらに別の併用治療レジメンでは、PV-10の投与と、特別な全身性抗がん剤と見なすことができるチェックポイント抗体阻害剤の投与とを利用する。有用なチェックポイント抗体阻害剤は、投与されることで、免疫系ががん細胞を異物として認識し、このがん細胞を体から排除する手助けを行うことを可能にする、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0050】
一部のチェックポイント阻害抗体は、T細胞表面のPD-1(プログラム細胞死タンパク質1)受容体またはその受容体のリガンドPD-L1を標的とする。これらのモノクローナル抗体の例は、PD-1を阻害するペンブロリズマブおよびニボルマブである。PD-L1を標的とする2つの抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブである。チェックポイント阻害モノクローナル抗体の別のグループには、免疫系を下方制御するタンパク質受容体であるCTLA-4を標的とする、イピリムマブおよびトレメリムマブが含まれる。
【0051】
これらの抗がん剤も通常、全身的に使用される。これらの薬剤のパッケージラベルに記載されているMTDも、前述のように、試験中に漸減されることが一般的な開始用量であり得る。
【0052】
投薬
PV-10併用全身性薬剤は、受容対象者によって必要とされるかまたは耐容される回数だけ投与することができる。小分子薬は通常、インビボ半減期が比較的短く、数分から数日である。一方、チェックポイント阻害抗体のインビボ半減期は、多くの場合1週間~3週間である。
【0053】
ローズベンガルのインビボでの生物学的耐用期間は、ラットでは数分であると理解されている。ただし、病巣内PV-10投与は、T細胞性免疫の増強を誘導することが知られているため、PV-10投与の効果は、メモリーT細胞を介して数ヶ月以上持続する可能性がある。
【0054】
組成薬剤の半減期が様々であることから、最初にPV-10で治療し、次に1つまたは複数の併用薬剤で治療することが好ましい。併用薬剤は、誘導性免疫活性化が少なくとも開始し得るように、PV-10投与の約1週間~約4週間後に投与することが好ましい。
【0055】
全身性抗がん剤による前治療も有用となり得る。この場合、全身性抗がん剤は、後のPV-10による治療によって増強される免疫反応を開始することができる。この時、最初の2つの治療の間の期間は、約1週間から約4週間であることも好ましい。
【0056】
2つの薬剤は、ほぼ同時期に並行して投与することも可能であり、互いの約1週間以内に同時に投与することが可能である。
【0057】
結果
PV-10は小児固形腫瘍細胞株の成長を阻害する
ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、正常線維芽細胞株、および正常初代骨髄サンプルを、様々な濃度のPV-10(3.125~400μM)で96時間処理し、alamarBlue(登録商標)を使用して細胞生存率を測定することで(
図1A~1E)、小児固形腫瘍に対するPV-10の効果を判定した。PV-10は、試験を行ったすべての細胞株で濃度依存的に細胞生存率を低下させた。検査したすべての固形腫瘍細胞株についてIC
50値を算出した。以下の表1は、処理後96時間のPV-10処理小児固形腫瘍細胞株の値を示す。表1に示される通り、値は45~108μMの範囲であり、平均は70μMであった。
【0058】
【0059】
一方で、正常線維芽細胞株および正常初代骨髄サンプルのIC50値はより高く、73~143μMの範囲であり、平均は104μMであった(下記の表2)。表2は、処理後96時間のPV-10処理正常線維芽細胞株およびPV-10処理正常初代骨髄サンプルの半数阻害濃度(IC50)値を示す。
【0060】
【0061】
PV-10は神経芽細胞腫細胞株に対して細胞毒性である
PV-10が小児固形腫瘍細胞株に対して細胞毒性であることを特定した後、小児で最も一般的な頭蓋外がんであることから、神経芽細胞腫に着目した。PV-10が神経芽細胞腫細胞株に対して細胞毒性または細胞増殖抑制性であるかを調べた。次の4つの異なる細胞株を研究のために選択した;すなわち、異なる変異を有するとともに、IC50値に基づいてPV-10に対する感受性が異なる3つの神経芽細胞腫細胞株[SK-N-AS、SK-N-BE(2)、およびIMR5]と、IC50値に基づいてPV-10に対する感受性が非常に高い神経上皮腫細胞株[SK-N-MC]1つとを選択した。
【0062】
細胞をPBS(コントロール)、50μMのPV-10、または100μMのPV-10のいずれかで96時間処理し、位相差光学顕微鏡解析により観察した(
図2A)。PBSで処理した細胞はコンフルエントになるまで成長した。50μMのPV-10で処理した細胞はコンフルエントになるまで成長しなかったが、死細胞はほとんど観察されなかった。
【0063】
対照的に、100μMのPV-10による処理後には、プレートに付着した細胞はほとんどなく、100μMのPV-10がすべての細胞株に対して細胞毒性であったことを示している。ただし、PV-10に対する感受性は細胞株によって異なるようであり、SK-N-AS細胞は処理に対して最も耐性があり、SK-N-MC細胞は処理に対して最も感受性が高かった。
【0064】
神経芽細胞腫細胞株は、PV-10に対して異なる感受性を示す
経時的顕微鏡動画解析を使用して、100μMのPV-10による処理の12時間後、24時間後、36時間後、および48時間後にプレートに付着していた細胞の割合を定量化することで、4つの細胞株(SK-N-AS、SK-N-BE(2)、IMR5、およびSK-N-MC)のPV-10に対する感受性の違いを調べた。処理後に付着していた細胞の数は、ゼロ時間での細胞数に対して正規化された(
図2B)。
【0065】
SK-N-AS細胞は処理に対して最も耐性があり、12時間後に細胞の89%、48時間後に細胞の41%が付着していた。SK-N-MC細胞は処理に対して最も感受性が高く、12時間後に細胞の3.5%、48時間後に細胞の0%が付着していた。IMR5細胞は、12時間後および24時間後の時点(それぞれ細胞の16%および7%が付着)では、SK-N-BE(2)細胞(細胞の54%および14%が付着)よりも処理に対する感受性が高かったが、36時間後の時点までには、両方の細胞株において同様の割合の細胞が付着していた(SK-N-BE(2)細胞の3%、IMR5細胞の2%)。
【0066】
これらのデータは、処理後の早い時期には、SK-N-MC細胞が処理に対して最も感受性が高く、IMR5細胞はSK-N-BE(2)細胞よりも処理に対して感受性が高く、SK-N-AS細胞は処理に対して最も耐性があったことを示した。
【0067】
PV-10による処理はリソソームを破壊する
以前に、PV-10はリソソームの完全性の喪失を誘導することが示されていた[非特許文献6]。したがって、SK-N-AS細胞、SK-N-BE(2)細胞、およびIMR5細胞を、PBS(コントロール)または100μMのPV-10のいずれかで16時間処理した。酸性の細胞小器官に濃縮されて蛍光を発する核酸染色剤であるHoechst 33342およびLysoTracker(登録商標)Green DND-26で生細胞を染色し、これらの細胞を蛍光顕微鏡解析により観察した(
図3)。
【0068】
PBS処理細胞およびPV-10処理SK-N-AS細胞では、リソソームが明確な病巣として視認された。しかし、PV-10処理SK-N-BE(2)細胞およびPV-10処理IMR5細胞では、これらの病巣はもはや視認されなかった。
【0069】
PV-10処理は、細胞周期のG1期にあるIMR5細胞の割合を増加させる
細胞周期に対するPV-10の効果をフローサイトメトリにより解析し(
図4A)、PV-10による標的調節をさらに解明した。最も耐性のある神経芽細胞腫細胞株(SK-N-AS)および最も感受性の高い神経芽細胞腫細胞株(IMR5)を、PBS(コントロール)、50μMのPV-10、または100μMのPV-10のいずれかで16時間または24時間処理した。
【0070】
PV-10は、SK-N-AS細胞の細胞周期に影響を与えなかった。対照的に、100μMのPV-10は、G1期のIMR5細胞の割合を増加させた。16時間処理を行った群では、100μMのPV-10で処理した後のG1期のIMR5細胞の割合が、PBSで処理した細胞と比較して28%増加した。同様に、24時間処理を行った群では、100μMのPV-10で処理した後のG1期の細胞が、未処理の細胞と比較して30%増加した。
【0071】
PV-10による処理はアポトーシスを誘導する
次に、ウエスタンブロット分析を実施して、PV-10処理細胞がアポトーシスを起こしているかどうかを調べた。SK-N-AS細胞、SK-N-BE(2)細胞、IMR5細胞、およびSK-N-MC細胞を、PBS(コントロール)、75μMのPV-10、または100μMのPV-10のいずれかで24時間処理した。全細胞抽出物をウエスタンブロットで分析して、総および切断ポリADPリボース(PARP)、総および切断カスパーゼ3、総および切断カスパーゼ7、およびアクチン(ローディングコントロール)のレベルを検出した(
図4B)。
【0072】
PV-10処理は、濃度依存的なPARPの切断を示した。100μMのPV-10による処理は、すべての細胞株でPARPの切断を誘導し、SK-N-MC細胞(PV-10に対する感受性が最も高い細胞株)では総タンパク質のレベルおよび総PARPのレベルがより低かった。75μMのPV-10で処理したSK-N-AS細胞およびSK-N-BE(2)細胞では、100μMのPV-10で処理した細胞よりもPARPの切断が少なかったのに対し、IMR5細胞は、75μMおよび100μMのPV-10で処理した場合に、同様のレベルのPARPの切断を示した。75μMのPV-10で処理したSK-N-MC細胞では、100μMで処理した細胞と比較して、より多くの総PARPが存在していた。
【0073】
カスパーゼ3、7、および9の活性化は、PV-10の濃度と細胞株に依存していた。切断カスパーゼ3は、100μMのPV-10で処理したIMR5細胞中に存在していた。総カスパーゼ7のレベルは、SK-N-BE(2)細胞でより低かった。
【0074】
IMR5細胞およびSK-N-MC細胞を75μMのPV-10および100μMのPV-10の両方で処理し、切断カスパーゼ7は、100μMのPV-10で処理したSK-N-AS細胞およびSK-N-BE(2)細胞、ならびに75μMおよび100μMのPV-10で処理したIMR5細胞で検出された。総カスパーゼ9のレベルは、75μMおよび100μMのPV-10で処理したSK-N-BE(2)細胞でより低く、切断カスパーゼ9は、75μMおよび100μMのPV-10で処理したIMR5細胞で検出された。これらのデータは、PV-10がアポトーシスによる細胞死を誘導していたことを示した。
【0075】
PV-10は様々な抗がん剤と相乗的である
一般的に使用される小分子全身性抗がん剤のうち、PV-10と組み合わせることで細胞毒性を高めることができるものを解明するために、まず、神経芽細胞腫細胞株SK-N-AS、SK-N-BE(2)、およびIMR5、神経上皮腫細胞株SK-N-MC、ならびに正常線維芽細胞株BJを、異なる作用機序を有する7つの従来の化学療法剤のパネルに対してスクリーニングした(
図5)。すべての薬剤は、0.1μMの単独で、および細胞毒性以下の濃度である50μMのPV-10との併用でスクリーニングされた。処理の96時間後に、alamarBlue(登録商標)アッセイを使用して細胞生存率を判定した。
【0076】
これらの結果に基づいて、組み合わせたときに細胞毒性が最も増加し、かつBJ細胞への影響がより少なかった薬剤を、組み合わせ指数(CI)と相乗効果を判定するためのさらなる研究のために選択した[非特許文献18]。SK-N-AS細胞、SK-N-BE(2)細胞、IMR5細胞、およびSK-N-MC細胞においてCI研究のために評価された薬剤は、ドキソルビシン、エトポシド、およびビンクリスチンであった。
【0077】
以下の表3は、ドキソルビシン、エトポシド、またはビンクリスチンのいずれか単独で、または50μMのPV-10との併用で96時間処理した神経芽細胞腫細胞株(SK-N-AS、SK-N-BE(2)、およびIMR5)および神経上皮腫細胞株SK-N-MCについての組み合わせ指数を示す。
【0078】
【0079】
測定を行った各細胞株において、すべての薬剤が50μMのPV-10との相乗作用を示した。表3に示される通り、CI値の範囲はドキソルビシンで0.42~0.77、エトポシドで0.17~0.66、ビンクリスチンで0.1~0.43であった。
【0080】
PV-10は神経芽細胞腫細胞株において放射線感受性を誘導する
一般的に使用される化学療法に加えて、PV-10がSK-N-AS細胞(
図6A)およびIMR5細胞(
図6B)において電離放射線(IR)による治療の効果を増強するかどうかを調べた。細胞をPBS(コントロール)または50μMのPV-10のいずれかで4時間前処理し、次に0.5、1、または2グレイ(Gy)のいずれかの放射線を細胞に照射した。最初の処理の96時間後に、細胞生存率をalamarBlue(登録商標)で測定した。
【0081】
50μMのPV-10による前処理は、SK-N-AS細胞とIMR5細胞の両方でIRの効果を増強した。SK-N-AS細胞の場合、細胞をPV-10で4時間前処理した後に0.5Gy、1Gy、または2Gyのいずれかの放射線を照射すると、細胞生存率はそれぞれ54.8%、58.7%、および60%低下した。IMR5細胞の場合、細胞をPV-10で4時間前処理した後に0.5Gy、1Gy、または2Gyのいずれかの放射線を照射すると、細胞生存率はそれぞれ24%、21%、および13%低下した。
【0082】
PV-10はインビボで腫瘍退縮を誘導する
PV-10がインビボでも活性であるかどうかを判断するために、CB17 SCIDマウスの皮下SK-N-AS腫瘍および皮下IMR腫瘍に対するPV-10腫瘍内注射の効果を特徴づけた。25μlまたは50μlのPV-10を腫瘍に1回注射し[非特許文献8]、毎日観察した。
【0083】
IMR5腫瘍は、PV-10による処理に対して非常に感受性が高かった(
図7Aおよび7B)。コントロール腫瘍の場合、腫瘍サイズは、処理後である6日目の25.6mm
2から処理後である23日目の172.9mm
2まで増大した。一方で、25μlのPV-10で処理した腫瘍は、26.6mm
2から41.2mm
2まで増大し、50μlのPV-10で処理した腫瘍は、27.9mm
2から47.3mm
2まで増大した。D-ルシフェリンの腹腔内注射後に腫瘍から放出される生物発光シグナルを測定するXenogen IVIS(登録商標)200システムを使用して、腫瘍の成長の定量化も行った。
【0084】
腫瘍サイズは、25μlおよび50μlのPV-10による処理後に縮小し、処理後17日目の時点で小さいままであった。PV-10による処理は、生存率も用量依存的に向上させた(
図7C)。
【0085】
コントロール処理マウスの生存期間中央値は25.5日であったのに対し、25μlのPV-10処理マウスは中央値として41.5日生存し、50μlのPV-10処理マウスは中央値として76日生存した。さらに、50μlのPV-10で処理したマウスのうちの2匹は完全な腫瘍退縮を起こし、処理後120日間腫瘍がないままであった。
【0086】
SK-N-AS腫瘍もPV-10による処理に反応した(
図7Dおよび7E)。コントロール腫瘍の場合、腫瘍サイズは、処理後6日目の28.9mm
2から処理後18日目の179.3mm
2まで増大した。一方で、25μlのPV-10で処理した腫瘍は、25.3mm
2から92.1mm
2まで増大し、50μlのPV-10で処理した腫瘍は、29.3mm
2から57.5mm
2まで増大した。Xenogen IVIS(登録商標)200システムを使用して測定したところ、腫瘍サイズは25μlおよび50μlのPV-10による処理後に縮小し、処理後15日目の時点でコントロール処理腫瘍よりも小さいままであった。
【0087】
PV-10による処理は生存率も向上させた(
図7F)。コントロール処理マウスの生存期間中央値は29日であったのに対し、25μlのPV-10処理マウスは中央値として37日生存し、50μlのPV-10処理マウスは中央値として36日生存した。さらに、50μlのPV-10で処理したマウスのうちの1匹は完全な腫瘍退縮を起こし、処理後80日間腫瘍がないままであった。
【0088】
考察
小児固形腫瘍の小児の全生存率は、血液悪性腫瘍の小児の全生存率よりも低い[非特許文献1]。再発または転移性のユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、および横紋筋肉腫の小児の全生存率は、30%未満である[非特許文献1]。
【0089】
これらのがんのうち、神経芽細胞腫は最も一般的であり、1歳~4歳の小児の主要な死因である[非特許文献2]。小児固形腫瘍患者の生存率が低いこと、および、高リスク患者ならびに再発患者に投与される集中的な治療レジメンに関連する副作用(morbidity)を考慮すると、これらのがん患者のための新しい治療アプローチおよび初期段階の臨床試験の開発が緊急に必要とされている。
【0090】
PV-10は、0.9%生理食塩水中のローズベンガル(RB、4,5,6,7-テトラクロロ-2’,4’,5’,7’-テトラヨードフルオレセイン二ナトリウム)の10%無菌溶液であり、様々な成人がんで細胞死を誘導するが、小児がんでの使用についてはこれまで検討されていない[非特許文献7~11]。PV-10は様々な成人がんで細胞死を誘導し、いくつかの臨床試験で評価されているため[非特許文献10、12、14、15、16]、様々な小児固形腫瘍細胞株(ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、および横紋筋肉腫)に対するPV-10の効果を調べた。
【0091】
PV-10は、濃度依存的に小児固形腫瘍細胞株の細胞生存率を低下させた。予想通り、正常線維芽細胞株および初代骨髄サンプルは、PV-10に対する感受性がより低かった。これらのデータは、以前に発表された成人がんに関するデータ[非特許文献7、9、11]と類似しており、PV-10が複数の小児固形腫瘍に対して効果的な治療法となり得ることを示している。
【0092】
PV-10による標的調節を特徴づけるために、これらの研究では、小児に見られる最も一般的な頭蓋外固形悪性腫瘍である神経芽細胞腫、および密接に関連する神経上皮腫に焦点を合わせた。位相差顕微鏡解析により、PV-10は神経芽細胞腫細胞に対して細胞毒性であることがわかり、また、IC50値と合致して、SK-N-AS細胞がPV-10処理に対して最も耐性があり、SK-N-MC細胞がPV-10処理に対して最も感受性が高いことが確認された。これらの発見は、経時的顕微鏡動画解析によって検証され、SK-N-AS細胞が処理に対して最も耐性があり、SK-N-MCが処理に対して最も感受性が高いことが再び示された。
【0093】
さらに、IMR5細胞は、12時間後および24時間後の時点ではSK-N-BE(2)細胞よりも処理に対する感受性が高いことがわかったが、36時間後の時点までには、どちらのタイプの細胞もほとんど残っていなかった。初期においては100μMのPV-10に対する感受性に違いがあるものの、この濃度は96時間後の時点でほとんどのSK-N-AS細胞に対して依然として細胞毒性であり、200μMに用量を増やすことでSK-N-AS細胞死がさらに増加した。これらのデータは、一部のサブタイプに対しては用量を増やす必要があり得るものの、PV-10はすべての神経芽細胞腫に対して効果的な治療法となり得ることを示唆している。
【0094】
PV-10に対する感受性の違いは、細胞株の遺伝的背景の違い、および細胞株が単離された腫瘍の過程の違い(患者に対する治療の違い、および原発性であるか再発性であるか)に起因する可能性がある。神経芽細胞腫は遺伝的に不均一な疾患であり、その不均一性を反映するために様々な細胞株を選択した。
【0095】
神経芽細胞腫で最も一般的な発がん原因は、患者の約25%に見られるMYCN増幅、患者の約10%~15%に見られる未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)変異および増幅、ならびに再発時に獲得したTP53の変異である[非特許文献2]。がん関連体細胞変異データベース(COSMIC)の細胞株プロジェクト[非特許文献20]を使用して、以下のことが決定された:SK-N-AS細胞はNRASおよびFLT3に変異を有していた;SK-N-BE(2)のクローンは、TP53のホモ接合変異とともに、ALK、AKT、およびMYCNを過剰発現していた;IMR5細胞は、mTORのホモ接合変異とともにAKTおよびMYCNの過剰発現を示した;SK-N-MCのクローンは、MYCNの過剰発現およびTP53のヘテロ接合変異を示した。さらに、SK-N-AS細胞株、SK-N-BE(2)細胞株、およびSK-N-MC細胞株はすべて、治療歴の異なる転移性腫瘍に由来していた一方で、IMR5細胞株は原発性腫瘍に由来していた。
【0096】
PV-10はリソソームを破壊することによって作用し、細胞死を引き起こすことがこれまでに示されている[非特許文献6]。がん細胞では代謝が変化しており、急速な成長および分裂の産物である凝集タンパク質や損傷した細胞小器官などの除去、および栄養素のリサイクルをリソソームに依存している可能性があるため、リソソームの破壊は、がん細胞の生存に特に影響を及ぼす[非特許文献21]。さらに、リソソームの破壊により、壊死またはアポトーシスの誘導を引き起こし得るカテプシンプロテアーゼが放出される[非特許文献21]。
【0097】
神経芽細胞腫でのリソソームに対するPV-10の効果を調べるために、酸性の細胞小器官に濃縮されて蛍光を発するLysoTracker(登録商標)Green DND-26で染色された細胞を観察した。以前の結果と同様に、リソソームはPBS処理細胞では明確な病巣として現れたが、PV-10で処理したSK-N-BE(2)細胞およびIMR5細胞ではリソソームは存在しないことが確認された。興味深いことに、より耐性のあるSK-N-AS細胞では、リソソームは処理後でも破壊されずに明確な病巣として現れた。
【0098】
100μMのPV-10による処理は、IMR5細胞ではG1期の細胞周期停止を誘導したが、SK-N-AS細胞では誘導せず、また用量依存的および細胞株依存的にアポトーシスを誘導した。成人のがんでは、PV-10はアポトーシスまたは壊死のいずれかによって細胞死を誘導することが以前に示されている[非特許文献7、9、11、14]。細胞が壊死によって死ぬことを確認した研究では、PV-10は細胞死の前にG2期/M期の細胞周期停止を誘導しており[非特許文献7]、PV-10は異なるがん由来の細胞株に対して異なる作用機序を有している可能性があることを示唆している。
【0099】
単剤PV-10による治療は、成人腫瘍を対象とした臨床試験および前臨床試験で有効性が実証されているが、高リスク神経芽細胞腫患者は、再発後は複数の化学療法および放射線療法で治療されている[非特許文献2]。したがって、一般的に使用される化学療法剤との併用治療レジメンにおけるPV-10の使用可能性を調べた。
【0100】
最初のスクリーニングの後、細胞毒性以下の用量のPV-10(50μM)は、研究を行ったすべての細胞株において、ドキソルビシン、エトポシド、およびビンクリスチンと相乗的であることが判明した。さらに、放射線照射前にPV-10で前処理を行ったところ、SK-N-AS細胞およびIMR5細胞の両方において放射線治療の有効性が向上した。これらのデータは、第II相臨床試験において、悪性黒色腫患者に対するPV-10での前治療およびその後の放射線療法が、細胞毒性を大幅に増加させることなく腫瘍退縮を誘導したという以前のデータと一致している[非特許文献13]。これらの結果は、PV-10を様々な一般的に使用される治療法と効果的に組み合わせることで、再発性神経芽細胞腫を有する高リスクの患者に利益をもたらすことができることを示している。
【0101】
PV-10がインビトロで小児固形腫瘍細胞株に対して細胞毒性であることを確認した後、マウスの皮下神経芽細胞腫異種移植片を使用して、インビボでのPV-10の活性を調べた。薬理学的に適切な用量[非特許文献12、13、16]のPV-10は、用量依存的および腫瘍依存的に腫瘍の退縮を誘導し、生存率を向上させることが判明した。25μlおよび50μlのPV-10の病巣内注射は、早期腫瘍退縮を誘導し、50μlのPV-10は、SK-N-AS腫瘍またはIMR5腫瘍のいずれかを有するマウスの全生存率を向上させた。これらのデータは、PV-10の腫瘍内注射が皮下同系結腸腫瘍[非特許文献7]、同系皮下乳房腫瘍および悪性黒色腫[非特許文献14、8]の退縮を誘導した、動物モデルを使用した以前の研究のデータと類似している。
【0102】
要約すると、本研究は、小児固形腫瘍(ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、および横紋筋肉腫)を良好に治療する際のPV-10の有効性に関する前臨床概念実証データを提供する。神経芽細胞腫に焦点を当てることにより、PV-10はリソソームを破壊し、細胞周期のG1期で細胞を停止させ、アポトーシスを誘導することによって作用することが判明している。一般的に使用される治療法のうち、PV-10が相乗作用を示す治療法がいくつか特定されている。さらに、神経芽細胞腫異種移植マウス研究を使用して、インビボでのPV-10治療の有効性が実証されている。
【0103】
代表的な細胞株およびインビボ免疫不全マウスで得られた発見により、直接的な細胞毒性の可能性に関する証拠がもたらされるとともに、この薬剤ががん細胞において標的調節効果を誘導することができるメカニズムが解明されている。組み合わせることで治療の相乗効果を生み出すことができる薬剤も特定されており、初期段階の臨床試験を策定するための枠組みを提供している。これは、前述の予期された免疫刺激効果に加えて、PV-10中心レジメンを免疫チェックポイント阻害剤などの薬剤と組み合わせることで、再発または難治性の小児固形腫瘍の患者における薬剤の活性をさらに高めることができるという潜在的なアプローチの根拠を提供している。
【0104】
材料および方法
細胞株および組織の培養
細胞株(SK-N-AS、SK-N-BE(2)、IMR5、LAN1、SK-N-MC、SK-N-SH、SHEP、BJ、BJ hTERT、WI38、WI38 hTERT、Hs68 hTERT、RD、RH30、143B、HOS、SK-ES、およびSK-PN-DW)は、5%(v/v)熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)(Gibco、オンタリオ州、カナダ)、100ユニット/mlペニシリン、および100ユニット/mlストレプトマイシン(Gibco)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco)で培養した。細胞培養物は、5%CO2の加湿インキュベータ内で37℃に維持した。初代骨髄サンプルは、地域の研究倫理委員会(REB)による承認および書面によるインフォームドコンセントを得た後に採取した(倫理ID#17184)。これまでに記載されているように[非特許文献17]、Ficoll-Paque Plus(GEヘルスケアライフサイエンス、オンタリオ州、カナダ)を使用した密度勾配遠心分離により、骨髄サンプルからリンパ球を分離した。
【0105】
材料および試薬
PV-10(0.9%生理食塩水中のローズベンガル二ナトリウムの10%溶液)は、プロヴェクタス バイオファーマスーティカルズ インク.(ノックスヴィル、テネシー州、USA)から提供を受けて、室温で暗所に保管した。ドキソルビシン、エトポシド、ビンクリスチン、シスプラチン、PEGアスパラギナーゼ、イリノテカン、およびシタラビンのストック溶液は、アルバータ州立小児病院の薬局(カルガリー、アルバータ州、カナダ)から入手し、室温で暗所に保管した。その後の研究のために、薬品は添加剤含有DMEMで適切な濃度に希釈した。
【0106】
細胞毒性アッセイ
96ウェルプレート(Greiner Bio-One、ノースカロライナ州、USA)の各ウェルに、100μlのDMEM中の5×103細胞を播種し、24時間培養した。単独のPV-10またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS;137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4、pH 7.25)(コントロール)をDMEMで希釈し、100μlを各ウェルに添加して処理を行った。各処理で添加した薬剤の最終濃度は3.125~400μMの範囲であり、各処理は3回ずつ行われた。
【0107】
プレートを96時間培養した。ウェルをPBSで2回洗浄し、200μlの新鮮なDMEMを各ウェルに添加し、alamarBlue(登録商標)(Invitrogen、オンタリオ州、カナダ)を製造元の指示に従って使用して細胞毒性アッセイを行い、細胞生存率を評価した。CompuSynソフトウェア(ComboSyn Inc.)を使用して、半数阻害濃度(IC50)を算出した。
【0108】
光学顕微鏡解析
6ウェルプレート(Corning Inc.、ニューヨーク州、USA)の各ウェルに2×105細胞を播種し、24時間培養した。細胞をPBS(コントロール)またはPV-10のいずれかで処理し、96時間培養した。Zeiss AxioVision Se64ソフトウェアを使用して、Zeiss AxioCam MRm Rev.3 FireWireカメラを備えたZeiss Axiovert 200M顕微鏡で位相差画像を撮像した。Adobe Photoshop(Adobe Creative Cloud 2017)を使用して画像の処理を行った。
【0109】
経時的顕微鏡動画解析
96ウェルプレート(Greiner Bio-One)の各ウェルに5×103細胞を播種し、24時間培養した。細胞をPBS(コントロール)またはPV-10のいずれかで処理した。IncuCyte(登録商標)Zoom顕微鏡およびIncuCyte(登録商標)Zoomソフトウェア(エッセンバイオサイエンス、ミシガン州、USA)を使用して、37℃、5%CO2の加湿インキュベータ内で、ウェルあたり3枚の画像を30分ごとに48時間撮像した。ImageJソフトウェアを使用して各ウェルの細胞数を計測し、0時間での細胞数に対して正規化した。各実験の各処理ごとに、少なくとも350個の細胞を計測した。
【0110】
リソソームの検出および蛍光顕微鏡解析
6ウェルプレート(Corning)内の滅菌カバースリップ上に、未処理細胞の場合は2×105細胞/ウェル、処理細胞の場合は6×105細胞/ウェルで細胞を播種し、24時間培養した。細胞をPBS(コントロール)またはPV-10のいずれかで16時間処理した。 ウェルをPBSで2回洗浄し、2.5μg/mlのHoechst 33342染色剤(Invitrogen)を含む2mlのDMEMを各ウェルに添加した。細胞を37℃で10分間インキュベートした後、LysoTracker(登録商標)Green DND-26(Invitrogen)を最終濃度500nMで培地に添加した。細胞を37℃で15分間インキュベートし、撮像時にカバースリップをスライドガラス上に載せ、Zeiss AxioVision Se64ソフトウェアを使用して、Zeiss AxioCam MRm Rev.3 FireWireカメラを備えたZeiss Axiovert 200M顕微鏡で撮像を行った。Adobe Photoshop(Adobe Creative Cloud 2018)を使用して画像の処理を行った。
【0111】
フローサイトメトリ
細胞周期の変化を分析するために、細胞を100mmディッシュ(Corning)に播種して、処理後に最低2×106細胞を収集できるようにした。細胞を24時間培養し、PBS(コントロール)またはPV-10のいずれかで処理し、16時間または24時間培養した。細胞をトリプシン処理によって収集し、PBSで洗浄し、40μmナイロンセルストレーナ(Falcon、Corning、ニューヨーク州、USA)でろ過し、トリパンブルー染色を使用して血球計算盤により細胞数を計測し、0.9%(w/v)滅菌NaClに再懸濁し、氷冷90%(v/v)エタノールで固定した。サンプルを室温で30分間インキュベートした後、-20℃で保管した。
【0112】
分析のために、サンプルを1400rpm、4℃で5分間遠心分離し、氷冷PBSで2回洗浄した。次に、細胞を300μlの標識緩衝液(0.1%Triton X-100含有PBS中に、10μg/ml DAPI(Sigma、オンタリオ州、カナダ)および200μg/ml RNase A(Sigma)を含有)中、37℃で20分間インキュベートした。Diva 6.1.3ソフトウェア(BD Bioscience)を使用して、BD Bioscience LSR IIサイトメータでサンプルを解析した。ModFitLT(登録商標)3.3ソフトウェア(Verity Software House)を使用して結果を分析した。
【0113】
細胞抽出物の調製
細胞を100mmディッシュ(Corning)に1×106で播種し、24時間培養した。次に、細胞をPBS(コントロール)またはPV-10のいずれかで処理し、24時間培養した。細胞培養物から培地を回収し、細胞をPBSで洗浄して、トリプシン処理後に収集した。細胞を氷冷PBSで洗浄し、1200rpm、4℃で5分間遠心分離した。上清を除去し、1%(v/v)ホスファターゼ阻害剤(Sigma)および1%(v/v)プロテアーゼ阻害剤(Sigma)を添加した放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)緩衝液(50mM Tris-HCl(pH8)、150mM NaCl、1%(v/v)NP-40、0.5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム、0.1%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))にペレットを再懸濁した。サンプルを1.5mlチューブに移し、氷上で10分間インキュベートし、ボルテックスし、12,000rpmで10分間遠心分離した。上清を全細胞溶解液として収集し、すぐに使用するか、または-20℃で保管した。
【0114】
ウエスタンブロット
これまでに記載された通りの方法で[非特許文献17]ウエスタンブロットを行った。簡単に説明すると、Trans-Blot(登録商標)Turbo(商標)Transfer System(BioRad、ケベック州、カナダ)を使用してタンパク質をニトロセルロース膜に転写し、ポンソーS染色液(5%(v/v)酢酸中0.1%(w/v))を使用して転写を確認し、0.1%(v/v)Tween(登録商標)-20を含むトリス緩衝生理食塩水(TBS-T;50mM Tris-HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.1%(v/v)Tween(登録商標)-20)中の5%脱脂粉乳で、膜を室温で2時間ブロッキングした。次に、TBS-T中の5%(w/v)脱脂粉乳で希釈した下記の一次抗体とともに、膜を4℃で一晩(約18時間)インキュベートした:抗PARP抗体(1:3000、Cell Signaling、9542S)、抗カスパーゼ3抗体(1:500、Cell Signaling、9662S)、抗カスパーゼ7抗体(1:1000、Cell Signaling、9492S)、抗カスパーゼ9抗体(1:1000、Cell Signaling、9502S)、および抗βアクチン抗体(1:5000、Cell Signaling、8457L)。膜をTBS-Tで3回洗浄し、抗ウサギ二次抗体(1:3000、Cell Signaling、7074S)と共にインキュベートし、TBS-Tで3回洗浄し、Western Lightning Plus-ECL試薬(Perkin-Elmer、MA、USA)で2分間インキュベートし、ChemiDoc MP Imaging System(BioRad)の化学発光設定を使用して現像した。
【0115】
組み合わせスクリーニング
細胞毒性アッセイの項目で記載した方法にて細胞を培養した。試験薬剤(ドキソルビシン、エトポシド、ビンクリスチン、シスプラチン、PEGアスパラギナーゼ、イリノテカン、シタラビン)を、PBS(コントロール)またはPV10(最終50μM)のいずれかを含む培地で最終濃度0.1μMにて調製した。細胞に対し3回処理を行った。細胞毒性アッセイの項目で記載した方法にて、プレートを培養し、洗浄し、細胞生存率をalamarBlue(登録商標)で解析した。
【0116】
組み合わせ研究
細胞毒性アッセイの項目で記載した方法にて細胞を培養した。3つの試験薬剤(ドキソルビシン、エトポシド、ビンクリスチン)の希釈系列を、PBS(コントロール)またはPV10(最終50μM)のいずれかを含むDMEMで調製し、細胞に3回添加した。細胞毒性アッセイの項目で記載した方法にて、プレートを培養し、洗浄し、細胞生存率をalamarBlue(登録商標)で解析した。CompuSynソフトウェア(ComboSyn Inc.)を使用して、50μMのPV-10と組み合わせた試験薬剤のIC50に基づく組み合わせ指数(CI)を算出した。CI値を以下の基準に従って評価した:CI<1は相乗的活性を示し、CI=1は相加的活性を示し、CI>1は相乗的活性を示した[非特許文献18]。
【0117】
放射線感受性アッセイ
細胞を60mmディッシュ(Corning)に5×104で播種し、24時間インキュベートし、PBS(コントロール)または50μMのPV-10のいずれかで処理し、37℃で4時間インキュベートした。Gammacell(登録商標)1000 Elite(MDS Nordion、オンタリオ州、カナダ)を使用して、細胞に0.5、1、または2グレイ(Gy)のいずれかの放射線を照射し、92時間培養した。処理は3回行った。細胞毒性アッセイの項目で記載したように、ディッシュをPBSで2回洗浄し、細胞生存率をalamarBlue(登録商標)で解析した。
【0118】
インビボ異種移植モデル
動物に対するすべての処置は、カナダ動物管理協会のガイドライン、および実験動物の管理および使用に関するNIHガイドラインに従って行われた。すべての実験計画は、カルガリー大学の動物管理委員会によって検討および承認された(計画承認番号:AC16-0243)。
【0119】
本動物実験では、IMR5-mCherryFluc細胞およびSK-N-AS-mCherryFluc細胞を使用した。これらの細胞株は、マウス幹細胞ウイルス(mscv)由来の内部U3領域、増強ホタルルシフェラーゼ(effLuc)、脳心筋炎ウイルス(emcv)由来の内部リボソーム侵入部位(IRES)要素、およびmCherryをコードする自己不活化レンチウイルスベクター上の増強ホタルルシフェラーゼおよびmCherryを安定して発現した。
【0120】
6~8週齢の雌CB17 SCIDマウス(Charles River Laboratories、ケベック州、カナダ)の右脇腹に、0.1mlのMatrigel(登録商標)Matrix(Fischer Scientific、オンタリオ州、カナダ)に懸濁した2.5×106細胞(SK-N-ASmCherryFlucまたはIMR5mCherryFluc)を皮下注射した(0日目)。腫瘍注射の7日後、少なくとも5×5mmの検出可能な腫瘍成長を示した動物を無作為に複数の処理グループに分けた。以前に確立されたプロトコル[非特許文献8]に従って、各グループを50μlのPBS(コントロール)、50μlのPV-10、または25μlのPV-10のいずれかで腫瘍内(病巣内)注射により処理した。動物を毎日観察し、腫瘍面積をノギスで測定した。腫瘍が既定のエンドポイントである15×15mmに達した時点で、マウスを安楽死させた。腫瘍のないままであった動物は、処理後120日間飼育された。
【0121】
Xenogen IVIS(登録商標)200システム(Xenogen Corporation、カリフォルニア州、USA)を使用した腫瘍の成長の観察も行われた。D-ルシフェリン(Gold Biotechnology、ミズーリ州、USA)の腹腔内注射後、腫瘍から放出される生物発光シグナルを記録するためにマウスを画像化した。データは、確立された方法[非特許文献19]に従って、対象領域の総放射光子束(光子/秒)を特定することによって分析した。
【0122】
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