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特許7116260圧延装置の運転方法並びに圧延装置の制御装置及び圧延設備
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】圧延装置の運転方法並びに圧延装置の制御装置及び圧延設備
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/28 20060101AFI20220802BHJP
   B21B 37/00 20060101ALI20220802BHJP
   B21B 37/62 20060101ALI20220802BHJP
   B21B 37/68 20060101ALI20220802BHJP
   B21B 39/14 20060101ALI20220802BHJP
   B21B 39/18 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B21B37/28 Z
B21B37/00 300
B21B37/62 A
B21B37/62 Z
B21B37/68 A
B21B39/14 J
B21B39/18
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021530479
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004004
(87)【国際公開番号】W WO2021005818
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/027488
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314017543
【氏名又は名称】Primetals Technologies Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 陽一
(72)【発明者】
【氏名】小田原 優太
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特公昭45-8780(JP,B1)
【文献】特開昭49-96955(JP,A)
【文献】特開平2-20608(JP,A)
【文献】特開2014-117743(JP,A)
【文献】特開2018-158365(JP,A)
【文献】特開昭53-95163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/28
B21B 37/00
B21B 37/62
B21B 37/68
B21B 39/14
B21B 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を挟むように設けられる一対の圧延ロールを含む圧延装置の運転方法であって、
前記金属板に加えられる出側張力がゼロの状態で、前記一対の圧延ロールにより前記金属板を圧延しながら、前記一対の圧延ロールの出側の位置において前記金属板の板幅方向の板端位置を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおける前記板端位置の検出結果が基準位置から板幅方向の一方側に外れたとき、前記圧延ロールからの前記金属板の流出方向が前記圧延装置における前記金属板の搬送方向に沿うように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行う第1レベリングステップと、
前記第1レベリングステップの後、前記圧延ロールからの前記金属板の流出方向を前記搬送方向に対して前記板幅方向の他方側にずらした後、前記金属板の前記流出方向が前記搬送方向に戻るように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行う第2レベリングステップと、
を備える圧延装置の運転方法。
【請求項2】
前記板端位置が前記基準位置から前記一方側に向かって離れてから、前記第1レベリングステップで前記板端位置が前記基準位置に戻るまでの前記金属板の前記他方側における前記一方側に対する相対的な第1伸び差を算出する伸び差算出ステップを備え、
前記第2レベリングステップでは、前記金属板の前記一方側における前記他方側に対する相対的な第2伸び差が、前記第1伸び差と等しくなるように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行う
請求項1に記載の圧延装置の運転方法。
【請求項3】
前記伸び差算出ステップでは、前記板端位置が前記基準位置から前記一方側に向かって離れてから、前記第1レベリングステップで前記板端位置が前記基準位置に戻るまでの、前記基準位置に対する前記板端位置のずれ量の時間積分に基づいて、前記第1伸び差を算出する
請求項2に記載の圧延装置の運転方法。
【請求項4】
前記金属板の先端が前記一対の圧延ロールの下流側に設けられた巻き取り装置に到達するまでの残り時間を算出する残り時間算出ステップを備え、
前記第2レベリングステップでは、前記残り時間内に前記第1伸び差と等しい大きさの前記第2伸び差を前記金属板に与えるように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行う
請求項2又は3に記載の圧延装置の運転方法。
【請求項5】
前記第1レベリングステップの開始時点における前記金属板の前記流出方向の前記搬送方向に対する前記一方側への第1ずれ角度θ1に基づいて、前記第2レベリングステップ実行中における前記流出方向の前記搬送方向に対する前記他方側への第2ずれ角度θ2を決定する
請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧延装置の運転方法。
【請求項6】
第1レベリングステップの終了後、前記第1レベリングステップに要した時間以下の時間内に、前記第2レベリングステップを開始する
請求項1乃至5の何れか一項に記載の圧延装置の運転方法。
【請求項7】
前記検出ステップの前、前記搬送方向において異なる2か所にて前記板端位置を検出し、前記2か所における前記板端位置の検出結果の差が規定範囲内であるときに、前記一対の圧延ロールによる前記金属板の圧延を開始する圧延開始ステップを備える
請求項1乃至6の何れか一項に記載の圧延装置の運転方法。
【請求項8】
前記検出ステップの前、前記一対の圧延ロールの出側の位置において前記金属板の板幅方向の板端位置を検出し、前記金属板の板幅方向における基準位置と前記板端位置との差が規定範囲内であるときに、前記一対の圧延ロールによる前記金属板の圧延を開始する圧延開始ステップを備える
請求項1乃至7の何れか一項に記載の圧延装置の運転方法。
【請求項9】
前記検出ステップの前、前記出側張力がゼロの状態で前記一対の圧延ロールによる前記金属板の圧延を開始し、少なくとも前記金属板の先端が前記一対の圧延ロールの出側の前記位置に到達するまで、前記出側張力がゼロの状態での目標圧延速度よりも低い圧延速度で前記圧延を行うステップを備える
請求項1乃至6の何れか一項に記載の圧延装置の運転方法。
【請求項10】
前記検出ステップの開始後、前記金属板の圧延速度を、前記出側張力がゼロの状態での目標圧延速度に近づくように上昇させるステップを備える
請求項1乃至9の何れか一項に記載の圧延装置の運転方法。
【請求項11】
金属板を挟むように設けられる一対の圧延ロールを含む圧延装置を制御するための制御装置であって、
前記金属板に加えられる出側張力がゼロの状態で、前記一対の圧延ロールにより前記金属板を圧延しながら、前記一対の圧延ロールの出側の位置において前記金属板の板幅方向の板端位置を検出するように構成された検出部と、
前記検出部による前記板端位置の検出結果が基準位置から板幅方向の一方側に外れたとき、前記圧延ロールからの前記金属板の流出方向が前記圧延装置における前記金属板の搬送方向に沿うように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行うように構成された第1レベリング部と、
前記第1レベリング部による前記圧下レベリング制御の後、前記圧延ロールからの前記金属板の流出方向を前記搬送方向に対して前記板幅方向の他方側にずらした後、前記金属板の前記流出方向が前記搬送方向に戻るように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行うように構成された第2レベリング部と、
を備える圧延装置の制御装置。
【請求項12】
金属板を挟むように設けられる一対の圧延ロールを含む圧延装置と、
請求項11に記載の制御装置と、
を備える圧延設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧延装置の運転方法並びに圧延装置の制御装置及び圧延装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の圧延ロールを含む圧延機を用いた金属板の圧延において、金属板の先端部分が巻き取り装置に巻き取られる前に、金属板に圧延機出側の張力が作用しない状態で金属板の圧延(先端無張力圧延)を行うことがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧延機(圧延ロール)と、該圧延機の出側に設けられたテンションリール(巻き取り装置)と、を含む圧延装置を用い、圧延材(金属板)がテンションリールに巻き取られて圧延機出側の張力が確立する前に圧延を行うことが記載されている。また、特許文献1には、圧延機の出側においてテンションリールよりも上流側に蛇行検出器を設け、蛇行検出器で検出されるオフセット量(圧延ロールの軸方向中央位置と、圧延材の板幅方向中央位置との差)に基づいて圧延機のレベリング制御を行うことが記載されている。これにより、出側張力がない状態での圧延を行うことにより生じ得る圧延材の蛇行及び片伸びを抑制して、歩留まりを改善することが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-179414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属板に出側張力が作用しない先端無張力の状態で圧延をすると、圧延される金属板の板幅方向の両端部において伸び差が発生して、圧延機の出側(下流側)にて金属板の先端部の向きが圧延機による搬送方向に対して板幅方向に曲がる現象(先端曲がり)が生じることがある。このような金属板の先端曲がりが生じた場合、圧延機出側に設けた板端位置検出器を用いて、規定位置からずれた板幅方向の板端位置が規定位置に戻るように圧延機を運転することで、金属板の流出方向を圧延機の搬送方向に沿わせることはできる。しかし、このような運転方法では、金属板の先端部の向きが搬送方向に対して曲がった状態を是正できない場合があり、このように金属板の先端部が曲がった状態では、金属板の先端縁が巻き取り装置の回転軸方向に対して傾いた状態となるため、巻き取り装置にて金属板を適切に巻き取れない場合がある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、先端無張力の状態で圧延された金属板を巻き取り装置で適切に巻き取ることが可能な圧延装置の運転方法並びに圧延装置の制御装置及び圧延設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延装置の運転方法は、
金属板を挟むように設けられる一対の圧延ロールを含む圧延装置の運転方法であって、
前記金属板に加えられる出側張力がゼロの状態で、前記一対の圧延ロールにより前記金属板を圧延しながら、前記一対の圧延ロールの出側の位置において前記金属板の板幅方向の板端位置を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおける前記金属板幅端位置の検出結果が基準位置から板幅方向の一方側に外れたとき、前記圧延ロールからの前記金属板の流出方向が前記圧延装置における前記金属板の搬送方向に沿うように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行う第1レベリングステップと、
前記第1レベリングステップの後、前記圧延ロールからの前記金属板の流出方向を前記搬送方向に対して前記板幅方向の他方側にずらした後、前記金属板の前記流出方向が前記搬送方向に戻るように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行う第2レベリングステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、先端無張力の状態で圧延された金属板を巻き取り装置で適切に巻き取ることが可能な圧延装置の運転方法並びに圧延装置の制御装置及び圧延設備が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る制御装置を備えた圧延設備の概略構成図である。
図2】一実施形態に係る制御装置を備えた圧延設備の概略構成図である。
図3】一実施形態に係る制御装置を構成するコントローラの概略構成図である。
図4】一実施形態に係る圧延装置の運転方法の一例を示すフローチャートである。
図5A】金属板の先端無張力圧延を開始時の圧延ロール及び金属板の状態を示す模式図である。
図5B】金属板の先端無張力圧延を開始時の圧延ロール及び金属板の状態を示す模式図である。
図5C】金属板の先端無張力圧延を開始時の圧延ロール及び金属板の状態を示す模式図である。
図6】判定部による先端無張力圧延の開始可否の判定について説明するための図である。
図7】判定部による先端無張力圧延の開始可否の判定について説明するための図である。
図8】一実施形態に係る圧延設備で圧延された金属板の板幅方向及び長手方向を含む部分的な断面を示す模式図である。
図9】ロール間ギャップと時間の関係を示すグラフの一例を示すグラフである。
図10】ロール間ギャップと時間の関係を示すグラフの一例を示すグラフである。
図11】一実施形態に係る圧延装置の運転方法の一例を示すフローチャートである。
図12A図11に示すフローチャートに基づき圧延装置の運転を行うときの、金属板の状態遷移を示す図である。
図12B図11に示すフローチャートに基づき圧延装置の運転を行うときの、金属板の状態遷移を示す図である。
図12C図11に示すフローチャートに基づき圧延装置の運転を行うときの、金属板の状態遷移を示す図である。
図12D図11に示すフローチャートに基づき圧延装置の運転を行うときの、金属板の状態遷移を示す図である。
図13】金属板の第1伸び差及び第2伸び差の算出方法の一例を説明するためのグラフである。
図14】一実施形態に係る圧延装置の運転方法の一例を示すフローチャートである。
図15A図14に示すフローチャートに基づき圧延装置の運転を行うときの、金属板の状態遷移を示す図である。
図15B図14に示すフローチャートに基づき圧延装置の運転を行うときの、金属板の状態遷移を示す図である。
図15C図14に示すフローチャートに基づき圧延装置の運転を行うときの、金属板の状態遷移を示す図である。
図15D図14に示すフローチャートに基づき圧延装置の運転を行うときの、金属板の状態遷移を示す図である。
図16】一実施形態に係る圧延装置の運転方法の一例を示すフローチャートである。
図17】一実施形態に係る圧延装置の運転方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
まず、幾つかの実施形態に係る圧延装置を含む圧延設備の全体構成について説明する。
図1及び図2は、それぞれ、一実施形態に係る制御装置を備えた圧延設備の概略構成図である。図1及び図2に示すように、圧延設備1は、圧延装置2と、圧延装置2を制御するための制御装置100と、を備えている。幾つかの実施形態では、圧延装置2は、例えば図1に示すように1台の圧延機10を含んでいてもよく、例えば図2に示すように2台の圧延機10(10A,10B)を含んでいてもよく、あるいは、3台以上の圧延機10を含んでいてもよい。
【0012】
図1に示す圧延装置2は、一対の圧延ロール15,16間に通された金属板90を往復させて圧延させる圧延装置(リバースミル)である。図1に示す圧延装置2は、圧延材料である金属板90を挟むように設けられる一対の圧延ロール(ワークロール)15,16を含む圧延機10と、金属板90の進行方向にて圧延ロール15,16の入側に設けられる巻き出し装置4と、金属板90の進行方向にて圧延ロール15,16の出側に設けられる巻き取り装置14と、を含み、金属板90を一対の圧延ロール15,16により圧延するように構成されている。
【0013】
図2に示す圧延装置2は、一対の第1圧延ロール15A,16A間、及び、一対の第2圧延ロール15B,16Bに通された金属板90を往復させて圧延させる圧延装置(リバースミル)である。図2に示す圧延装置2は、圧延材料である金属板90を挟むように設けられる一対の第1圧延ロール(ワークロール)15A,16Aを含む第1圧延機10Aと、金属板90を挟むように設けられる一対の第2圧延ロール(ワークロール)15B,16Bを含む第2圧延機10Bと、金属板90の進行方向にて第1圧延ロール15A,16Aの入側に設けられる巻き出し装置4と、金属板90の進行方向にて第2圧延ロール15B,16Bの出側に設けられる巻き取り装置14と、を含み、金属板90を一対の第1圧延ロール15A,16A及び一対の第2圧延ロール15B,16Bにより圧延するように構成されている。
【0014】
図示する圧延機10,10A,10Bは同様の構成を有する。以下においては圧延機10についてその構成を説明するが、圧延機10A,10Bについても同様の説明が当てはまる。なお図2において、圧延機10A,10Bの構成要素(圧延ロール等)の符号として、図1に示す圧延機10の構成要素を同様の符号に「A」又は「B」をそれぞれ付したものが記載されている。
【0015】
圧延機10は、一対の圧延ロール(ワークロール)15,16に加え、一対の圧延ロール15,16をそれぞれ挟んで、金属板90とはそれぞれ反対側に設けられる一対の中間ロール17,18及び一対のバックアップロール19,20と、を含む。中間ロール17,18及びバックアップロール19,20は、圧延ロール15,16を支持するように構成されている。また、圧延機10は、一対の圧延ロール15,16に荷重を加えて一対の圧延ロール15,16に挟まれる金属板90を圧下するための圧下装置22を備えている。圧下装置22は、油圧シリンダを含んでいてもよい。
【0016】
圧延ロール15,16には、スピンドル(不図示)等を介してモータ(不図示)が接続されており、圧延ロール5,16は、モータによって回転駆動されるようになっている。金属板90の圧延時には、圧下装置22で金属板90を圧下しながらモータにより圧延ロール15,16を回転させることで、圧延ロール15,16と金属板90との間に摩擦力が生じ、この摩擦力によって金属板90が圧延ロール15,16の出側へと送られるようになっている。
【0017】
巻き出し装置4は、圧延機10に向けて金属板90を巻き出すように構成されている。巻き取り装置14は、圧延機10からの金属板90を巻き取るように構成されている。巻き出し装置4及び巻き取り装置14は、それぞれモータ(不図示)により駆動されるようになっている。
【0018】
巻き出し装置4は、金属板90の圧延時に、金属板90に入側張力を与えるように構成されている。また、巻き取り装置14は、金属板90の圧延時に、金属板90に出側張力を与えるように構成されている。すなわち、モータによって巻き出し装置4及び巻き取り装置14を適切に駆動することにより、金属板90に入側張力及び出側張力を与えるようになっている。金属板90に適切に入側張力及び出側張力を与えることにより、圧延時における金属板90の蛇行を抑制することができる。
【0019】
なお、巻き出し装置4から巻き出される金属板90の尾端直前で圧延を止め、金属板90が圧延ロール15,16に圧下された状態で奇数回目(1パス目等)の圧延が完了したら、その次に、巻き取り装置14から金属板90を圧延機10に向けて巻き出すとともに、巻き出し装置4で金属板90を巻き取りながら、先ほどとは逆の進行方向に金属板90を進行させて偶数回目(2パス目等)の圧延を行う。すなわち、金属板90の進行方向に応じて、巻き出し装置4の役割と及び巻き取り装置14の役割とが入れ替わるようになっている。
【0020】
図1及び図2に示す圧延装置2は、巻き出し装置4から圧延機10に導入される金属板90をガイドするための入側ピンチロール6及びサイドガイド8と、圧延機10から巻き取り装置14に送られる金属板90をガイドするための出側ピンチロール12と、をさらに含む。
【0021】
図1及び図2に示すように、圧延装置2を制御するための制御装置100は、金属板90の板幅方向の板端位置を検出するための第1板端検出部32及び第2板端検出部34と、第1板端検出部32及び第2板端検出部34の検出結果に基づいて、圧延装置2の運転を制御するように構成されたコントローラ40と、を含む。
【0022】
第1板端検出部32は、金属板90の搬送方向にて一対の圧延ロール15,16の入側に設けられ、搬送方向の第1位置Y1における金属板の板幅方向の板端位置である第1板端位置x1を検出するように構成される。第2板端検出部34は、搬送方向にて一対の圧延ロール15,16の出側に設けられ、搬送方向の第2位置Y2における金属板の板幅方向の板端位置である第2板端位置x2を検出するように構成されている。
【0023】
なお、図2に示す制御装置100は、第1圧延ロール15A,16A、及び、第2圧延ロール15B,16Bのそれぞれに対し、搬送方向の入側に第1板端検出部32A,32Bが設けられ、搬送方向の出側に第2板端検出部34A,34Bが設けられている。
【0024】
コントローラ40は、第1板端検出部32及び第2板端検出部34から計測結果を示す信号を受け取り、これらの計測結果に基づいて、圧下装置22や、圧延ロール15,16を駆動するためのモータの動作を制御するように構成されている。
【0025】
コントローラ40は、CPU、メモリ(RAM)、補助記憶部及びインターフェース等を含んでいてもよい。コントローラ40は、インターフェースを介して、第1板端検出部32及び第2板端検出部34からの信号を受け取るようになっている。CPUは、このようにして受け取った信号を処理するように構成される。また、CPUは、メモリに展開されるプログラムを処理するように構成される。
【0026】
コントローラ40での処理内容は、CPUにより実行されるプログラムとして実装され、補助記憶部に記憶されていてもよい。プログラム実行時には、これらのプログラムはメモリに展開される。CPUは、メモリからプログラムを読み出し、プログラムに含まれる命令を実行するようになっている。
【0027】
図3は、一実施形態に係る制御装置100を構成するコントローラ40の概略構成図である。図3に示すように、コントローラ40は判定部42と、圧延制御部44と、を含む。判定部42は、第1板端検出部32にて検出された金属板90の第1板端位置x1、及び、第2板端検出部34にて検出された金属板90の第2板端位置x2に基づいて、金属板90の出側張力がゼロの状態での一対の圧延ロール15,16による金属板90の圧延(先端無張力圧延)の開始の可否を判定するように構成される。圧延制御部44は、一対の圧延ロール15,16の動作を制御するように構成される。より具体的には、圧延制御部44は、圧延ロール15,16のロール間ギャップや回転速度を調節すべく、圧下装置22や圧延ロール15,16を駆動するためのモータ制御するように構成される。
なお、コントローラ40の判定部42以外の各部については後述する。
【0028】
なお、制御装置100は、判定部42による判定結果を表示するための表示部(ディスプレイ等;不図示)をさらに有していてもよい。
【0029】
以下、制御装置100による圧延装置2の運転制御について説明するが、以下に説明する制御装置100による処理の一部又は全部をマニュアルで行うことにより圧延装置2を運転するようにしてもよい。
【0030】
図4及び図16は、それぞれ、一実施形態に係る圧延装置2の運転方法の一例を示すフローチャートである。なお、図4及び図16は、金属板90の先端無張力圧延を開始するまでの運転方法の一例を示すフローチャートである。金属板90の先端無張力圧延を開始後の運転方法については、図11図14及び図17のフローチャート等を参照しながら後で説明する。
図5A図5Cは、それぞれ、金属板90の先端無張力圧延を開始するときの、圧延ロール15,16及び金属板90の状態を示す模式図である。図6及び図7は、それぞれ、判定部42による先端無張力圧延の開始可否の判定について説明するための図である。
【0031】
一実施形態では、図4及び図16に示すように、まず、コントローラ40により、一対の圧延ロール15,16間のギャップ(ロール間ギャップ)が金属板90の板厚よりも大きい状態となるように一対の圧延ロール15,16の位置を調節する(ステップS102)。この際、必要に応じて圧下装置22を作動させて一対の圧延ロール15,16の位置を調節してもよい。そして、ロール間ギャップが板厚よりも大きい状態を維持したまま、金属板90の先端91を含む先端部(図5A参照)を一対の圧延ロール15,16の間に通す(ステップS104)。
【0032】
図5Aは、ステップS104が完了したときの圧延ロール15,16及び金属板90の状態を示す模式図である。図5Aに示すように、ステップS104の完了時点では、一対の圧延ロール15,16間のギャップd0が、圧延前の金属板90の板厚H0よりも大きい状態で、金属板90の先端91を含む先端部が圧延ロール15,16の間を通されている。また、金属板90その先端91を含む先端部は、圧延ロール15,16の出側に位置しており、巻き取り装置14には達していない。このため、金属板90に作用する出側張力Tdはゼロである。また、この時点では、入側張力Teを金属板90に作用させていないため、入側張力Teもゼロである。
【0033】
上述のステップS104の後、金属板90の先端無張力圧延を開始する(図4におけるステップS112、又は、図16におけるステップS122)。
【0034】
図4のフローチャートに係る実施形態では、例えば以下に説明するように、金属板90の先端無張力圧延の開始の可否を判定し(ステップS106~S108)、先端無張力圧延を開始可能であると判断されたら金属板90の先端無張力圧延を開始する。
【0035】
図4のフローチャートに沿って上述の判定について説明する。まず、第1板端検出部32を用いて、搬送方向の第1位置Y1における第1板端位置x1を検出するとともに、第2板端検出部34を用いて、搬送方向の第2位置Y2における第2板端位置x2を検出する(ステップS106)。
【0036】
ここで、図6及び図7は、それぞれ、圧延開始前における圧延ロール15,16及び金属板90を平面視した模式図である。図6及び図7に示すように、金属板90は、板幅Wを有し、板幅方向の両端縁である第1端縁92及び第2端縁93を有する。幾つかの実施形態では、第1板端検出部32及び第2板端検出部34は、それぞれ、第1板端位置x1及び第2板端位置x2として、第1位置Y1及び第2位置Y2における第1端縁92の位置を検出するように構成されていてもよい(図6及び図7参照)。あるいは、他の実施形態では、第1板端検出部32及び第2板端検出部34は、それぞれ、第1板端位置x1及び第2板端位置x2として、第1位置Y1及び第2位置Y2における第2端縁93の位置を検出するように構成されていてもよい。
【0037】
そして、ステップS106の後、判定部42により、ステップS106で検出された第1板端位置x1及び第2板端位置x2に基づいて、金属板90の先端無張力圧延の開始の可否を判定する(ステップS108)。
【0038】
ステップS108では、例えば、金属板90の長手方向が、圧延装置2による金属板90の搬送方向と略平行である場合に(図6参照)、金属板90の先端無張力圧延が開始可能と判定し、金属板90の長手方向の、金属板90の搬送方向に対する傾斜が規定程度以上である場合に(図7参照)、金属板90の先端無張力圧延が開始不可と判定する。
【0039】
より具体的には、一実施形態では、ステップS108では、第1板端位置x1と第2板端位置x2との差|x1-x2|が閾値Δxth1以下であるとき、金属板90の先端無張力圧延が開始可能であると判定し、上記差|x1-x2|が閾値Δxth1より大きいとき、金属板90の先端無張力圧延が開始不可であると判定する。
【0040】
あるいは、一実施形態では、ステップS108では、金属板90の板幅方向における基準位置xrefと第1板端位置x1との差(x1-xref)、及び、基準位置xrefと第2板端位置x2との差(x2-xref)の各々が閾値xth2以下であるとき、金属板90の先端無張力圧延が開始可能であると判定し、上記差(x1-xref)又は(x2-xref)の少なくとも一方が閾値xth2よりも大きいとき、金属板90の先端無張力圧延が開始不可であると判定する。
【0041】
ここで、上述の基準位置xrefは、金属板90の長手方向が、圧延ロール15,16(圧延機)による搬送方向と一致している場合の板幅方向(すなわち、圧延ロール15,16の軸方向(中心軸Oの方向))における規定位置である。上述の基準位置xrefは、例えば、圧延ロール15,16の軸方向における中央位置であってもよい(図6及び図7参照)。なお、図6においては、金属板90の長手方向が圧延ロールによる搬送方向と一致しており、このとき、金属板90の長手方向に沿った中心線Lcの位置は、上述の板幅方向(すなわち圧延ロール15,16の軸方向)において基準位置xrefに一致する。
【0042】
上述のステップS108にて、金属板90の先端無張力圧延の開始が可能ではないと判定されたら(ステップS108のNo)、金属板90の板幅方向位置を修正し(ステップS110)、再度ステップS106に戻って、第1板端位置x1及び第2板端位置x2の検出(ステップS106)、及び、ステップS106での検出結果に基づく金属板90の先端無張力圧延の開始可否の判定(ステップS108)を行う。
【0043】
一方、ステップS108にて、金属板90の先端無張力圧延の開始が可能であると判定されたら(ステップS108のYes)、圧延制御部44により、金属板90の先端無張力圧延を開始する(ステップS112)。
【0044】
ステップS112では、金属板90に加える出側張力Tdがゼロの状態で、一対の圧延ロール15,16により金属板90を圧下し、一対の圧延ロール15,16の回転を開始することにより、金属板90の先端無張力圧延を開始する(図5B参照)。
【0045】
一対の圧延ロール15,16により金属板90を圧下するときには、図5Bに示すように、ロール間ギャップが目標板厚に対応した値d1となるように、圧下装置22を作動させる。この時点でのロール間ギャップd1は、圧延される前の金属板90の板厚H0よりも小さい。また、圧延ロール15,16の回転開始時及び回転開始後は、圧延ロール15,16を駆動するためのモータの電流値の調節により、圧延ロール15,16の回転速度を適切な値に調節する。
【0046】
金属板90の先端張力圧延を開始すると、金属板90は、図5Bに示す矢印の方向に向かって進行する。そして、図5Cに示すように、圧延開始後、金属板90のうち、圧延ロール15、16で圧下されて圧延ロール15,16の出側に進行した部分は、圧延前の板厚H0よりも薄い板厚H1を有している。
【0047】
このように、金属板90の先端無張力圧延を行うことで、金属板の先端を巻き取り装置に巻き付けて出側張力を与えた状態で圧延を開始する場合に比べて、金属板90の先端に近い部分から圧延を開始することができ、金属板90の歩留まりを改善することができる。
【0048】
そして、上述のように、ステップS108にて金属板90先端無張力圧延の開始が可能であると判定されてから、ステップS112にて先端無張力圧延を開始することにより、先端無張力圧延された金属板90を巻き取り装置14で適切に巻き取ることが可能となる。
【0049】
仮に、圧延ロール15,16の出側の1か所にのみ板端位置検出部を設けた場合には、以下に述べる問題が生じ得る。すなわち、例えば図7に示すように、圧延開始前に金属板90の長手方向が、圧延ロール15,16(圧延機10)による金属板90の搬送方向に対して傾斜していたとしても、搬送方向における1点のみでの板端位置検出結果からは、金属板90の長手方向が上述の搬送方向に対して傾斜しているか否かは不明である。この場合に先端無張力圧延を開始すると、金属板90の圧延ロール15,16からの流出方向は、圧延機10による搬送方向に対して傾斜したままである。したがって、出側に配置された板端位置検出部により検出される板端位置(例えば、図7における第2板端位置x2)は、圧延開始後もほぼ一定となる。したがって、検出した板端位置に基づく制御をしても、金属板90の搬送方向に対する傾斜を是正することはできず、この状態で圧延を続けると、金属板90の先端部が、圧延機10による搬送ラインから板幅方向において離れてしまい、圧延後の金属板90を巻き取り装置14で適切に巻き取ることができない場合がある。
【0050】
この点、上述した実施形態によれば、ステップS106にて、一対の圧延ロール15,16の入側の第1位置Y1及び出側の第2位置Y2の各々において、金属板90の板幅方向の板端位置(第1板端位置x1及び第2板端位置x2)を検出する。したがって、これらの検出結果に基づいて、先端無張力圧延の開始前における金属板90の長手方向の搬送方向に対する傾斜の程度を把握することができ、即ち、先端無張力圧延の開始時点における金属板90の流出方向の搬送方向に対する傾斜の程度を把握することができる。そして、ステップS108において、第1板端位置x1及び第2板端位置x2の検出結果に基づいて、先端無張力圧延の開始の可否を判定するようにしたので、例えば、上述の検出結果により、金属板90の長手方向(すなわち、圧延開始時における金属板90の流出方向)が搬送方向に対してほぼ平行であると判断されたときに、金属板90の先端無張力圧延を開始可能であると判定することができる。
【0051】
よって、上述の実施形態によれば、金属板90の流出方向と搬送方向とがほぼ平行の状態で先端無張力圧延を開始できるので、金属板90の先端部が圧延機10による搬送ラインから板幅方向に外れていくのを抑制することができる。このため、圧延された金属板90を、巻き取り装置14で適切に巻き取りやすくなる。
【0052】
また、上述の実施形態によれば、金属板90の流出方向と搬送方向とがほぼ平行の状態で先端無張力圧延を開始できるので、先端無張力圧延開始時に取得された第2板端位置x2を基準として用いることで、先端無張力圧延中に検出される第2板端位置に基づいて、金属板90の蛇行制御等、圧延機10の圧下レベリング制御を適切に行うことができる。
【0053】
したがって、先端無張力圧延された金属板90を巻き取り装置14で適切に巻き取ることが可能である。
【0054】
また、図2に示す2台の圧延機10(第1圧延機10A及び第2圧延機10B)を含む圧延設備1の場合、制御装置100は、一対の第1圧延ロール15A,16A(第1圧延機10A)における金属板90の第1回目の先端無張力圧延の開始の可否を判定し、第1回目の先端無張力圧延が開始可能であると判定され、一対の第1圧延ロール15A,16Aによる先端無張力圧延が開始された後、一対の第2圧延ロール15B,16Bにおける金属板90の第2回目の先端無張力圧延開始の可否を判定するように構成される。
すなわち、第1圧延機10Aについて、上述したステップS102~ステップS112を行い、金属板90の先端無張力圧延が開始されたら、その後、第2圧延機10Bについて、上述したステップS102~ステップS112を行う。
【0055】
このように、搬送方向に並べられた第1圧延ロール15A,16A(第1圧延機10A)及び第2圧延ロール15B,16B(第2圧延機10B)の各々において、ステップS108にて先端無張力圧延の開始の可否の判定を行い、この判定結果に基づいて、ステップS112にて先端無張力圧延を開始するようにしたので、これらの圧延ロール15,16で先端無張力圧延された金属板90を巻き取り装置で適切に巻き取ることを可能としながら、一対の圧延ロール15A,16A及び一対の圧延ロール15B,16Bを用いて、より効率的に圧延を行うことができる。
【0056】
一方、図16のフローチャートに係る実施形態では、上述のステップS104の後、圧延制御部44により、金属板90の先端無張力圧延を開始する(ステップS122、図5A図5C参照)。ここで、ステップ122では、少なくとも金属板90の先端91が圧延ロール15,16の出側の第2位置Y2(一対の圧延ロール15,16の出側に設けられた第2板端検出部34による検出位置)に到達するまで、目標圧延速度よりも低い圧延速度で圧延を行う。
【0057】
このように、金属板90の圧延開始後、先端無張力圧延における目標圧延速度よりも低い速度で先端無張力圧延をすることにより、金属板90の長手方向を搬送方向に対して平行に維持しやすいため、金属板90の先端部が圧延機10による搬送ラインから板幅方向に外れていくのを抑制することができる。本実施形態では、図4のフローチャートに係る実施形態に比べ、圧延ロール15,16の出側の第2板端位置x2を検出して板端位置を修正しなくても、第2板端検出部34まで金属板90を適切に搬送することができる。
【0058】
また、上述のように金属板90の長手方向を搬送方向に対して平行に維持しやすいため、先端無張力圧延中に検出される金属板90の位置(第2板端位置等)に基づいて、金属板90の蛇行制御等、圧延機10の圧下レベリング制御を適切に行うことができる。
【0059】
したがって、先端無張力圧延された金属板90を巻き取り装置14で適切に巻き取ることが可能である。
【0060】
第1板端検出部32及び第2板端検出部34は、圧延ロール15,16による金属板90の搬送方向において、圧延ロール15,16のなるべく近くに設けることが好ましい。これにより、金属板90の先端部を圧延ロール15,16の近くに配置した状態で第1板端検出部32及び第2板端検出部34により第1板端位置x1及び第2板端位置x2を検出可能となるとともに、この検出結果に基づいて、金属板90の先端91を圧延ロール15,16の近くに配置した状態で圧延を開始することができ、金属板90の歩留まりを効果的に改善できるためである。
【0061】
幾つかの実施形態では、一対の圧延ロール15,16と巻き取り装置14との搬送方向における距離をL2(図1及び図2参照)としたとき、一対の圧延ロール15,16と第2板端検出部34との搬送方向における距離Lb(図1及び図2参照)は、0.1×L2以下である。
【0062】
ここで、一対の圧延ロール15,16と巻き取り装置14との搬送方向における距離とは、一対の圧延ロール15,16の中心軸Oと、巻き取り装置14の中心軸との搬送方向における距離である。また、一対の圧延ロール15,16と第2板端検出部34との搬送方向における距離とは、一対の圧延ロール15,16の中心軸と、第2板端検出部34の中心位置、あるいは、第2板端検出部34による板端検出位置(第2位置Y2)との搬送方向における距離である。なお、圧延ロール15,16の中心軸Oの方向と、巻き出し装置4の中心軸の方向と、巻き取り装置14の中心軸の方向とは、互いに略平行である。
【0063】
このように、搬送方向において、第2板端検出部34と圧延ロール15,16との間の距離Lbを比較的短くしたので、無張力圧延開始時における金属板90の先端91を圧延ロールの比較的近くとしながら、無張力圧延開始時及び無張力圧延中に、第2板端位置x2の検出が可能である。したがって、金属板90のうち圧延されない先端部の長さを短くしつつ、先端無張力圧延を適切に行うことができ、これにより金属板90の歩留まりを効果的に向上させることができる。
【0064】
幾つかの実施形態では、一対の圧延ロール15,16と巻き出し装置4との搬送方向における距離をL1(図1及び図2参照)としたとき、一対の圧延ロール15,16と第1板端検出部32との搬送方向における距離Laは、0.1×L1以下である。
【0065】
ここで、一対の圧延ロール15,16と巻き出し装置4との搬送方向における距離L1とは、一対の圧延ロール15,16の中心軸Oと、巻き出し装置4の中心軸との搬送方向における距離である。また、一対の圧延ロール15,16と第1板端検出部32との搬送方向における距離とは、一対の圧延ロール15,16の中心軸Oと、第1板端検出部32の中心位置、あるいは、第1板端検出部32による板端検出位置(第1位置Y1)との搬送方向における距離である。
【0066】
一対の圧延ロール15,16間に通された金属板90を往復させて圧延させる圧延装置(リバースミル)の場合、1パス目終了後の2パス目では、金属板90の搬送方向が逆転し、金属板90の後端側から圧延ロール15,16での圧延が開始される。この点、上述の実施形態によれば、2パス目における搬送方向(1パス目の搬送方向と逆向き)において、第1板端検出部32と圧延ロール15,16との間の距離を比較的短くしたので、2パス目の無張力圧延開始時における金属板90の後端位置を圧延ロールの比較的近くとしながら、無張力圧延開始時及び無張力圧延中に、第1板端位置x1の検出が可能である。したがって、金属板90のうち圧延されない後端部の長さを短くしつつ、先端無張力圧延を適切に行うことができ、これにより金属板90の歩留まりを向上させることができる。
【0067】
幾つかの実施形態では、圧延設備1は、搬送方向にて一対の圧延ロール15,16の入側又は出側の少なくとも一方に設けられ、金属板90の板厚を計測するように構成された板厚計を備える。そして、第1板端検出部32又は第2板端検出部34は、搬送方向にて一対の圧延ロール15,16と板厚計との間に位置する。
【0068】
図1及び図2に示す実施形態では、搬送方向にて一対の圧延ロール15,16の入側に板厚計36が設けられており、第1板端検出部32は、搬送方向にて一対の圧延ロール15,16と板厚計36との間に位置している。また、図1及び図2に示す実施形態では、搬送方向にて一対の圧延ロール15,16の出側に板厚計38が設けられており、第2板端検出部34は、搬送方向にて一対の圧延ロール15,16と板厚計38との間に位置している。
【0069】
金属板90の板厚を制御するために用いられる板厚計36,38は、制御の応答を良好とするため、搬送方向において圧延ロール15,16の近くに設けることが好ましい。この点、上述の実施形態によれば、金属板90の板厚を計測するための板厚計36,38よりも、搬送方向においてさらに圧延ロール15,16の近くに第1板端検出部32又は第2板端検出部34を設けたので、無張力圧延開始時における金属板90の先端位置を圧延ロール15,16により近づけながら、無張力圧延開始時及び無張力圧延中に、第1板端位置x1又は第2板端位置x2の検出が可能である。したがって、金属板のうち圧延されない先端部の長さを短くしつつ、先端無張力圧延を適切に行うことができ、これにより金属板の歩留まりを向上させることができる。
【0070】
幾つかの実施形態では、第1板端検出部32又は第2板端検出部34は、放射線(例えばX線やガンマ線)を用いて第1板端位置x1又は第2板端位置x2を検出するように構成される。
【0071】
圧延ロール15,16の近傍は、圧延油やヒュームが多量に飛散し、圧延ロール15,16の振動があり、暗い等、過酷な環境であることが多い。この点、上述の実施形態によれば、放射線を用いて板端位置を検出する第1板端検出部32または第2板端検出部34を用いるようにしたので、過酷な環境下の圧延ロール15,16の近傍に配置しても、適切に、板端位置を検出することができる。
【0072】
図8は、一実施形態に係る圧延設備1で圧延された金属板90の板幅方向及び長手方向を含む部分的な断面を示す模式図である。図8に示すように、金属板90は、板厚方向において圧延ロール15側に位置する第1表面94と、板厚方向において圧延ロール16側に位置する第2表面95と、を有する。
図9及び図10は、それぞれ、金属板90の圧延開始時を含む期間における、一対の圧延ロール15,16間のギャップ(ロール間ギャップ)と、時間の関係を示すグラフの一例を示すグラフである。
【0073】
幾つかの実施形態では、コントローラ40の圧延制御部44は、上述のステップS108で判定部42により金属板90の先端無張力圧延が開始可能であると判定されたとき、上述のステップS120にて、一対の圧延ロール15,16を金属板90に接触させる(図9の時刻t0)。この時点では、金属板90はまだ圧下されておらず、圧延ロール15,16と金属板90との接触位置(搬送方向における圧延ロール15,16の中心軸Oの位置)は、先端91よりも後流側の位置94a,95aであり(図8参照)、この位置94a,95aにおける板厚はH0(初期値)である。その後、一対の圧延ロール15,16を回転させながら、上述の位置94a,95aよりもさらに後流側の位置94b、95bまで(図8参照)、金属板90の搬送に伴い一対の圧延ロール15,16間のギャップが金属板90の目標板厚Hcに対応する管理値dcとなるまで徐々に減少するように、一対の圧延ロール15,16の回転数及び圧下量を調節する(図9の時刻t1からt2)。なお、時刻t2以後は、圧延ロール15,16を通過した金属板90の板厚が目標板厚Hcとなるように、ロール間ギャップは目標板厚Hcに対応する管理値dcに維持される。
【0074】
その結果、金属板90の先端91を含む部分は、図8中に実線で示す形状となる。すなわち、金属板90は、先端91を含み、板厚がH0である先端部90aと、板厚が目標板厚Hcに維持される後続部90cと、金属板の長手方向にて、先端部90aと後続部90cとの間に位置する遷移部90bと、を有する。遷移部90bでは、位置94a,95aから位置94b、95bにかけて、板厚がH0からHcまで徐々に減少している。
【0075】
金属板90の先端部(図8中の符号90aで示す部分)を一対の圧延ロール15,16間に通した状態で、圧延ロール15,16による金属板90の圧下及び先端無張力圧延を開始する場合、金属板90のうち、圧延ロール15,16により圧延されない先端部90aと、圧延される後続部90cとの間で板厚の差が大きくなることがある。例えば、仮に、図10に示すように、一対の圧延ロール15,16間のギャップを目標板厚Hcに対応する管理値dcまで狭くし(図10の時刻t1)、その状態で圧延ロール15,16の回転を開始すると(図10の時刻t1)、金属板90の形状は、図8中の二点鎖線で示すように、圧延が開始される位置94a,95aよりも前方の先端部90a(板厚はH0)と、上述の位置94a,95aよりも後方の後続部90c(板厚はHt)とで板厚が急激に変化する形状となる。
【0076】
この場合、巻き取り装置14で金属板90を巻き取るとき等に、上述の先端部90aと後続部90cとの境界に応力が集中し、この境界にて金属板90が切断されてしまう場合がある。
【0077】
この点、上述の実施形態では、金属板90の先端無張力圧延開始時に、一対の圧延ロール15,16を金属板90に接触させた後、圧延ロール15,16を回転させながら、金属板90の搬送に伴い圧延ロール15,16間のギャップが金属板90の目標板厚Htに対応する管理値dcとなるまで徐々に減少するように、圧延ロール15,16の回転数及び圧下量を調節する。したがって、圧延前と同じ板厚H0を有する先端部90aと、目標板厚Hcに圧延された後続部90cとの間に、板厚が徐々に減少する遷移部90b(図8参照)が形成される。よって、巻き取り装置14で金属板を巻き取るとき等における、上述の先端部90aと後続部90cとの境界に生じ得る応力集中を緩和することができる。これにより、圧延後の金属板90を巻き取り装置14でより適切に巻き取ることが可能となる。
【0078】
幾つかの実施形態では、上述のように、金属板90の搬送に伴い一対の圧延ロール15,16間のギャップが金属板90の目標板厚Hcに対応する管理値dcとなるまで徐々に減少させる際、金属板90の長手方向に対する上述の遷移部90bにおける第1表面94の傾斜角度α1、または、金属板90の長手方向に対する上述の遷移部90bにおける第2表面95の傾斜角度α2が20度以下になるように、一対の圧延ロール15,16の回転数及び圧下量を調節する。
【0079】
これにより、遷移部90b(図8参照)における板厚変化が急激になりすぎないため、巻き取り装置14で金属板を巻き取るとき等における、上述の先端部90aと後続部90cとの境界に生じ得る応力集中を効果的に緩和し、圧延後の金属板90を巻き取り装置14でより適切に巻き取ることが可能となる。
【0080】
次に、上述のようにして、金属板90の先端無張力圧延を開始した後の圧延装置2の運転方法(図4又は図16のフローチャートに続く部分)、及び、当該運転方法を実行するための圧延設備1の制御装置100の構成についてさらに説明する。
【0081】
幾つかの実施形態では、制御装置100は、金属板90に加えられる出側張力がゼロの状態で、一対の圧延ロール15,16により金属板90を圧延しながら(即ち、金属板90の先端無張力圧延を行いながら)、一対の圧延ロール15,16の出側の位置において金属板90の板幅方向の板端位置xを検出するように構成された検出部を備えている。図1及び図2に示す実施形態では、圧延ロール15,16の出側に設けられた第2板端検出部34が、上述の検出部として機能する。
【0082】
また、幾つかの実施形態では、制御装置100のコントローラ40(図3参照)は、第1レベリング部46、及び、第2レベリング部48を備えている。
【0083】
第1レベリング部46は、上述の検出部としての第2板端検出部34(以下、単に「第2板端検出部34」ともいう。)による板端位置の検出結果が基準位置から板幅方向の一方側(第1端縁92又は第2端縁93の一方側;図12A等参照)に外れたとき、圧延ロール15,16からの金属板90の流出方向が圧延装置2における金属板90の搬送方向に沿うように、一対の圧延ロール15,16の圧下レベリング制御を行うように構成される。
【0084】
第2レベリング部48は、第1レベリング部46による圧下レベリング制御の後、圧延ロール15,16からの金属板90の流出方向を搬送方向に対して板幅方向の他方側(第1端縁92又は第2端縁93の他方側;図12A等参照)にずらした後、金属板90の流出方向が搬送方向に戻るように、一対の圧延ロール15,16の圧下レベリング制御を行うように構成される。
【0085】
上述の制御装置100では、先端無張力の状態で金属板90の圧延を行いながら、第2板端検出部34(検出部)により、圧延ロール15,16の出側の位置において金属板90の板幅方向の板端位置xを検出するようにしたので、検出された板端位置xが基準位置から板幅方向の一方側に外れたことに基づいて、金属板90の流出方向の板幅方向における一方側へのずれ(金属板90の先端曲がり)が生じたことを検出することができる。そして、金属板90の先端曲がりが検出されたときには、第1レベリング部46による圧下レベリング制御により、金属板90の流出方向を圧延装置2における金属板90の搬送方向に沿わせた後、第2レベリング部48による圧下レベリング制御により、金属板90の流出方向を搬送方向に対して板幅方向の他方側にずらし、その後金属板90の流出方向が搬送方向に沿うようにしたので、金属板90の先端曲がりを是正し、金属板90の先端縁(先端91)を、巻き取り装置14の軸方向に平行に近づけた状態で、先端無張力圧延を続行することができる。したがって、上記構成によれば、先端無張力圧延された金属板90を巻き取り装置14で適切に巻き取ることができる。
【0086】
また、幾つかの実施形態では、コントローラ40は、伸び差算出部50、ずれ角度算出部52、または、残り時間算出部54の少なくとも1つを備えていてもよい。
【0087】
伸び差算出部50は、第2板端検出部34で検出した板端位置xが基準位置から前記一方側に向かって離れてから、第1レベリング部46による圧下レベリング制御により板端位置xが基準位置に戻るまでの金属板90の前記他方側における前記一方側に対する相対的な第1伸び差d1を算出するように構成される。
【0088】
ずれ角度算出部52は、第1レベリング部46による圧下レベリング制御の開始時点における金属板90の流出方向の搬送方向に対する前記一方側への第1ずれ角度θ1を取得し、該第1ずれ角度θ1基づいて、第2レベリング部による圧下レベリング制御の実行中における金属板90の流出方向の搬送方向に対する前記他方側への第2ずれ角度θ2を決定するように構成される。
【0089】
残り時間算出部54は、金属板90の先端91が一対の圧延ロール15,16の下流側に設けられた巻き取り装置14に到達するまでの残り時間Tcを算出するように構成される。
【0090】
以下、図1図3図11図15及び図17を参照して、幾つかの実施形態に係る制御装置100による圧延装置2の運転方法について説明するが、以下に説明する制御装置100による処理の一部又は全部をマニュアルで行うことにより圧延装置2を運転するようにしてもよい。
【0091】
図11図14及び図17は、それぞれ、一実施形態に係る圧延装置2の運転方法の一例を示すフローチャートである。図12A図12Dは、図11に示すフローチャートに基づき圧延装置2の運転を行うときの、金属板90の状態遷移を示す図である。図13は、金属板90の第1伸び差及び第2伸び差の算出方法の一例を説明するためのグラフであり、このグラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は後述するずれ量Δeを示す。図15A図15Dは、図14に示すフローチャートに基づき圧延装置2の運転を行うときの、金属板90の状態遷移を示す図である。
【0092】
図11及び図17に示すフローチャートに係る実施形態では、まず、金属板90に加えられる出側張力がゼロの状態で、一対の圧延ロール15,16により金属板90を圧延しながら(即ち、金属板90の先端無張力圧延を行いながら)、第2板端検出部34を用いて、一対の圧延ロール15,16の出側の位置(図12A図12Dに示す「出側板端検出位置」)において金属板90の板幅方向の板端位置xを検出する(ステップS202;検出ステップ)。また、図17に示すフローチャートに係る実施形態では、金属板90の先端無張力圧延を行いながら、第1板端検出部32を用いて、一対の圧延ロール15,16の入側の位置(図12A図12Dに示す「入側板端検出位置」)において金属板90の板幅方向の板端位置xを検出する(ステップS203)。なお、図13のグラフにおいて、時刻t20は、金属板90の先端無張力圧延を開始した時点である。
【0093】
次に、ステップS202で検出された板端位置xの、板幅方向における基準位置から板幅方向の一方側(第1端縁92又は第2端縁93の一方側)へのずれ量Δeを算出し(ステップS204)、算出したずれ量Δeと、閾値Δe_thとを比較する(ステップS206)。
【0094】
ここで、基準位置とは、金属板90の長手方向が、圧延装置2による搬送方向(圧延ロール15,16の中心軸に直交する方向)と平行であるときの、板幅方向における特定の位置である。幾つかの実施形態では、金属板90の長手方向が圧延装置2による搬送方向と平行であるときの金属板90の第1端縁92の位置を基準位置(図12A図12D参照)としてもよい。また、例えば図17のフローチャートのように、一対の圧延ロール15,16の入側の位置で板端位置を検出するステップ(図17のステップS203)を含む実施形態では、当該板端位置(例えば第1板端検出部32により検出される板端位置x)を、上述の基準位置としてもよい。なお、金属板90の長手方向が圧延装置2による搬送方向と平行であるときの金属板90の板幅方向中央位置(中心線Lcの位置)を「基準位置」としてもよい。
【0095】
図12Aに示す段階においては、板幅方向において、基準位置と板端位置xとが一致しており、ステップS204で算出されるずれ量Δeはゼロである。したがって、ステップS206では、ずれ量Δeは閾値よりも小さいと判定され(ステップS206のNO)、ステップS202に戻って、再度、第2板端検出部34により板端位置xの検出を行う。
【0096】
図12Bは、図12Aに示す状態から、何らかの外乱(例えば、金属板90の板幅方向における板厚の不均一さ)により、金属板90の先端曲がりが発生した段階を示す。図12Bに示す例では、ステップS202で検出された板端位置xが、基準位置から板幅方向の第1端縁92側(一方側)に外れている。すなわち、圧延ロール15,16からの金属板90の流出方向が、圧延ロール15,16による搬送方向に対し、板幅方向の第1端縁92側(一方側)にずれている。このときステップS204で算出されるずれ量Δeはゼロより大きくなる。なお、図13に示すグラフでは、時刻t21においてずれ量Δeがゼロより大きくなり始め、時刻t23にてずれ量Δeが極大(図12Bに示す状態)となっている。
【0097】
ステップS204で算出されるずれ量Δeが閾値Δe_th以下であるときは(ステップS206のNO)、ステップS202に戻って、再度、第2板端検出部34により板端位置xの検出を行う(なお、図17のフローチャートのS222及びS224については後述する)。一方、ステップS204で算出されるずれ量Δeが閾値Δe_thより大きくなったら(ステップS206のYES、図13のグラフの時刻t23)、ステップS208において、ずれ量Δeがゼロになるように、圧下装置22による圧延ロール15,16のレベリング制御を行う(ステップS208)。すなわち、ステップS208では、圧延ロール15,16からの金属板90の流出方向が圧延装置2における金属板90の搬送方向に沿うように、一対の圧延ロール15,16の圧下レベリング制御を行う(第1レベリングステップ)。図12Cは、ステップS208終了時(上述のずれ量Δeがゼロになったとき;図13のグラフの時刻t24)の段階を示す図である。
【0098】
次に、第2板端検出部34で検出される板端位置xが基準位置から板幅方向の前記一方側(ここでは第1端縁92側)に向かって離れてから(図12Bに示す状態)、上述の第1レベリングステップ(ステップS208)で第2板端検出部34で検出される板端位置xが基準位置に戻るまで(図12Cに示す状態になるまで)の金属板90の前記他方側(ここでは第2端縁93側)における前記一方側(第1端縁92側)に対する相対的な第1伸び差E1を算出する(ステップS210;伸び差算出ステップ)。ここで、図12B及び図12Cに示す例では、第2端縁93側における金属板90の伸びがE1であるのに対し、第1端縁92側における金属板90の伸びはゼロである。したがって、上述の第1伸び差はE1である。
【0099】
伸び差算出ステップ(ステップS210)では、第2板端検出部34で検出される板端位置xが基準位置から一方側(ここでは第1端縁92側)に向かって離れてから(図13のグラフの時刻t21)、第1レベリングステップで板端位置xが基準位置に戻る(図13のグラフの時刻t24)までの、基準位置に対する板端位置xのずれ量Δeの時間積分(グラフ図13に示す面積S1B’)に基づいて、第1伸び差E1を算出する。ここで、グラフ図13に示す面積S1B’に基づいて第1伸び差E1を算出できるのは、図12Bにおいて符号S1Aで示す三角形と、符号S1Bで示す三角形とが相似であり、図12Bにおいて符号S1Bで示す三角形と図13のグラフの面積S1B’とは、特定の相関関係があるためである。
【0100】
次に、金属板90の先端91が一対の圧延ロール15,16の下流側に設けられた巻き取り装置14に到達するまでの残り時間Tcを算出する(ステップS212;残り時間算出ステップ)。残り時間Tcの起算点は、例えば、第1レベリングステップで上述のずれ量Δeがゼロになった時点(ステップS208の終了時点;図13のグラフの時刻t24)、又は、第2レベリングステップの開始時点(後述のステップS214~S218の開始時点;図13のグラフの時刻t25)であってもよい。なお、図13のグラフでは、第2レベリングステップの開始時点(時刻t25)から、時刻t27までの時間が、残り時間Tcである。なお残り時間Tcは、金属板90の先端91と、巻き取り装置14との間の距離と、金属板90の搬送速度と、に基づいて算出することができる。
【0101】
次に、圧延ロール15,16からの金属板90の流出方向を搬送方向に対して板幅方向の他方側(ここでは第2端縁93側)にずらした後、金属板90の流出方向が搬送方向に戻るように、一対の圧延ロール15,16の圧下レベリング制御を行う(ステップS214~S218;第2レベリングステップ)。ここで、図12Dは、第2レベリングステップが終了した時点の状態(即ち、ステップS218の終了時点の状態)を示す。
【0102】
ステップS214では、残り時間Tc内に第1伸び差E2と等しい大きさの第2伸び差E2(図12D参照)を金属板90に与えるように、圧下装置22及び圧延ロール15,16の駆動モータに対する制御指令値を算出する。ここで、第2伸び差E2は、金属板90の前記一方側(ここでは第1端縁92側)における前記他方側(ここでは第2端縁93側)に対する相対的な第2伸び差である。
【0103】
すなわち、第2レベリングステップを行うことにより、図12D及び図13に示すように、第2端縁93側に板端位置xがずれてずれ量Δeが生じる。そして、この第2端縁93側におけるΔeの時間積分値(図13のグラフにおける面積S2B’)が、図13のグラフにおける面積S2A’と等しくなるように、圧延ロール15,16のレベリング制御を行うことで、図12Dにおいて符号S2Bで示す三角形が形成されるように、金属板90に対して第2伸び差E2(図12D参照)を与えることができる。これは、図12Dにおいて符号S2Bで示す三角形と図13のグラフの面積S2B’とは、特定の相関関係があるとともに、図12Dにおいて符号S2Aで示す三角形と、符号S2Bで示す三角形とが相似であるからである。
【0104】
ステップS216では、ステップS214で算出した制御指令値に基づき、圧延ロール15,16のレベリング制御を行う。なお、第1伸び差E1と第2伸び差E2との差|E1-E2|が規定範囲内とならない間はステップS216の制御を繰り返し行う(ステップS218のNO)。そして、上述の差|E1-E2|が規定範囲内となったら(ステップS218のYES)、ステップS202~S206で検出された金属板90の先端曲がりは是正されたことになるので、再度、ステップS202に戻って、次に生じ得る金属板90の先端曲がりの検出を行う。
【0105】
金属板90の先端曲がりにより生じる第1伸び差E1は、金属板90の流出方向の板幅方向おける一方側へのずれの大きさを示す。この点、上述の実施形態によれば、金属板90の先端曲がりにより生じる第1伸び差E1を算出するとともに、上述の第2伸び差E2が上述の第1伸び差E1と等しくなるように圧延ロール15,16の圧下レベリング制御を行う。すなわち、金属板90の先端曲がりにより金属板90の一端側(ここでは第1端縁92側)に生じた伸び(第1伸び差E1に対応する伸び)と同じ大きさの伸び(第2伸び差E2に対応する伸び)を、金属板90の他端側(ここでは第2端縁93側)に与えるように圧下レベリング制御を行うようにしたので、金属板90の先端曲がりを適切に是正し、金属板90の先端縁(先端91)を、巻き取り装置14の軸方向に平行に近づけることができる。よって、先端無張力圧延された金属板を巻き取り装置で適切に巻き取ることができる。
【0106】
また、金属板90の先端曲がりにより金属板90に生じる上述の第1伸び差E1は、上述の基準位置に対する板端位置xのずれ量Δeの時間積分と相関関係を有し、典型的には、第1伸び差E1と、前述のずれ量Δeの時間積分とが比例関係にある。この点、上述の実施形態によれば、前述のずれ量Δeの時間積分に基づいて、第1伸び差E1を適切に算出することができる。したがって、第2レベリングステップにおいて、このように算出した第1伸び差E1に等しい第2伸び差E2を金属板90に与えるように圧下レベリング制御を行うことにより、金属板90の先端曲がりを適切に是正することができる。
【0107】
また、上述の実施形態では、金属板90の先端曲がり発生後、金属板90の先端91が巻き取り装置14に到達するまでの残り時間Tcを算出し、算出された残り時間Tc内に第2伸び差E2を金属板90に与えるようにしたので、金属板90が巻き取り開始前に金属板90の先端曲がりを適切に是正することができる。
【0108】
一実施形態では、先端無張力圧延を行うときに、以下のようにして圧延速度を調節するようにしてもよい。圧延速度の調節は、圧延制御部44によって行ってもよい。
【0109】
例えば図17のフローチャートでは、ステップS206で、板幅方向における基準位置から板幅方向の一方側への板端位置xのずれ量Δeと閾値Δe_thとを比較した結果、ずれ量Δeが閾値Δe_th以下であるとき(ステップS206のNO;即ち、金属板90の長手方向が搬送方向と略平行であるとき)、金属板90の圧延速度を、予め設定された先端無張力圧延における目標圧延速度と比較する(ステップS222)。ここで、金属板90の圧延速度は、金属板90の搬送方向における搬送速度であってもよい。あるいは、圧延速度は、圧延ロール15,16の回転速度であってもよい。
【0110】
圧延速度が上述の目標圧延速度以上である場合(ステップS222のNO)、圧延速度を変更せずにステップS202に戻る。一方、圧延速度が上述の目標圧延速度未満である場合(ステップS222のYES)、圧延速度が目標圧延速度に近づくように圧延速度を上昇させ(S224)、その後、ステップS202に戻る。
【0111】
このような先端無張力圧延時における圧延速度の調節は、例えば、図16を参照して説明した場合、すなわち、金属板90の先端無張力圧延の開始後、目標圧延速度よりも低い圧延速度で圧延を行う場合に適用してもよい。
【0112】
このように、先端無張力圧延中に圧延速度を適切に上昇させることにより、圧延装置2による生産性を向上させることができる。
【0113】
図11及び図12に示すフローチャートに係る実施形態では、検出された板端位置xの基準位置に対するずれ量Δeの時間積分に基づいて、第1伸び差E1を算出し、この第1伸び差E1に基づいて、圧延ロール15,16の圧下レベリング制御を行った。これに対し、図14のフローチャートによる実施形態では、金属板90の先端曲がりが生じたときの、金属板90の流出方向の搬送方向に対するずれ角度に基づいて、圧延ロール15,16の圧下レベリング制御を行う。より具体的には、図14のフローチャートに係る実施形態では、第1レベリングステップの開始時点における金属板90の流出方向の搬送方向に対する一方側(ここでは第1端縁92側)への第1ずれ角度θ1(図15B参照)に基づいて、第2レベリングステップ実行中における流出方向の搬送方向に対する他方側(ここでは第2端縁93側)への第2ずれ角度θ2(図15C参照)を決定する。
【0114】
図14のフローチャートにおいて、ステップS302,S304,S306,S312,S316,S318の内容は、図11に示すステップS202,S204,S206,S212,S216,S218と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0115】
図14に示すフローチャートに係る実施形態では、ステップS302(検出ステップ)で検出された板端位置xに基づきステップS304で算出されたずれ量Δeが閾値より大きい場合(ステップS306のYES)、この時点(第1レベリングステップの開始時点;図15Bに示す段階)での、金属板90の流出方向の搬送方向に対する一方側(ここでは第1端縁92側)への第1ずれ角度θ1(図15B参照)を取得する(ステップS308)。第1ずれ角度θ1は、ずれ量Δeと、搬送方向における圧延ロール15,16の中心軸Oと第2板端検出部34による板端検出位置との距離mに基づき取得してもよい(tanθ1=Δe/m)。あるいは、撮像装置などによりキャプチャされた画像に基づいて、第1ずれ角度θ1を取得してもよい。
【0116】
次に、ステップS308で取得した第1ずれ角度θ1に基づいて、第2レベリングステップにて金属板90に与えるべき第2ずれ角度θ2、すなわち、金属板90の流出方向の搬送方向に対する他方側(ここでは第2端縁93側)への第2ずれ角度θ2を決定する(ステップS310;図15C参照)。
【0117】
そして、ステップS312で算出された残り時間Tc以内に、金属板90の他方側(ここでは第2端縁93側)へのずれ角度が上述の第2ずれ角度θ2となるような、圧下装置22及び圧延ロール15,16の駆動モータに対する制御指令値を算出する(ステップS314)。そして、このように算出した制御指令値に基づいて、圧延ロール15,16のレベリング制御(第1レベリングステップ及び第2レベリングステップ)を行う(ステップS316)。そして、金属板90の他方側(ここでは第2端縁93側)へのずれ角度が上述の第2ずれ角度θ2となったら(ステップS318のYES)、ステップS302~S306で検出された金属板90の先端曲がりは是正されたことになるので、再度、ステップS302に戻って、次に生じ得る金属板90の先端曲がりの検出を行う。
【0118】
金属板90の先端曲がりにより生じる金属板90の流出方向の搬送方向に対する一方側(ここでは第1端縁92側)への第1ずれ角度θ1は、前述の第1伸び差E1と同様に、金属板90の流出方向の板幅方向おける前記一方側(第1端縁92側)へのずれの大きさを示す。この点、上述の実施形態では、前述の第1ずれ角度θ1に基づいて、第2レベリングステップ実行中における流出方向の搬送方向に対する他方側への第2ずれ角度θ2を適切に決定することができる。したがって、このように決定された第2ずれ角度θ2を金属板90に与えるように圧下レベリング制御を行うことにより、金属板90の先端曲がりを適切に是正し、金属板90の先端縁を、巻き取り装置14の軸方向に平行に近づけることができる。よって、先端無張力圧延された金属板90を巻き取り装置14で適切に巻き取ることができる。
【0119】
なお、ステップS310で決定された第2ずれ角度θ2は、ステップS316の第2レベリングステップにて、一度に金属板90に与えてもよいし(図15C参照)、あるいは、複数回に分割して、金属板90に与えてもよい(図15D参照)。図15Dにおいては、金属板90の他方側(第2端縁93側)へのずれ角度として、1回目に角度θ2a、2回目に角度θ2b、3回目に角度θ2cを与えている。ここで、θ2a、θ2b及びθ2cの和は、θ2である(θ2a+θ2b+θ2c=θ2)。
【0120】
この場合、金属板90の他方側(第2端縁93側)に一度に大きな第2ずれ角度θ2を与える場合(図15C参照)に比べて、少量の第2ずれ角度θ2a、θ2b及びθ2cを分割して金属板90に与えることになるため、より安定的に、金属板90の先端曲がりを是正することができる。
【0121】
幾つかの実施形態では、第1レベリングステップの終了後、第1レベリングステップに要した時間以下の時間内に、第2レベリングステップを開始する。
【0122】
例えば、図11図12Dを参照して説明した実施形態では、第1レベリングステップの所要時間(図11のステップS206のYES判定から、ステップS208の終了時点まで)は、図13のグラフ中の時刻t22から時刻t24までである。そして、第1レベリングステップの終了後、第2レベリングステップ開始までの時間は、図13のグラフ中の時刻t24からt25であり、上述の第1レベリングステップの所要時間よりも、短くなっている。
【0123】
また、図14~15Dを参照して説明した実施形態では、ステップS316において第1レベリングステップ及び第2レベリングステップを区別なく(連続的に)行っており、第1レベリングステップ終了後、第2レベリングステップ開始までの時間は実質的にゼロであり、第1レベリングステップ(金属板90の流出方向が一方側(第1端縁92側)にずれてから、搬送方向と同じ方向に戻るまで)の所要時間よりも小さい。
【0124】
この場合、第1レベリングステップで金属板90の流出方向を搬送方向に沿わせた後、第1レベリングステップに要した時間以下の時間内に、第2レベリングステップを開始して、金属板90の流出方向を他方側(第2端縁93側)にずらす。即ち、第1レベリングステップ終了後に、時間をあまり空けずに金属板90の流出方向を他方側(第2端縁93側)にずらすことで、第2レベリングステップ終了時点での、金属板30の先端曲がり部における板幅方向の中心位置と、圧延ロール15,16における金属板90の板幅方向の中心位置との板幅方向におけるずれ量(図12Dに示すΔd)を小さくすることができる。(言い換えると、図12C図12Dに示される矩形部A1の面積をなるべく小さくすることができる。)例えば図15Cに示すように、第1レベリングステップと第2レベリングステップとを連続的に行うことにより、上述のずれ量Δdはほとんどゼロとなる。よって、先端無張力圧延された金属板90を巻き取り装置14でより適切に巻き取ることができる。
【0125】
以下、幾つかの実施形態に係る圧延装置の運転方法並びに圧延装置の制御装置及び圧延設備について概要を記載する。
【0126】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延装置の運転方法は、
金属板を挟むように設けられる一対の圧延ロールを含む圧延装置の運転方法であって、
前記金属板に加えられる出側張力がゼロの状態で、前記一対の圧延ロールにより前記金属板を圧延しながら、前記一対の圧延ロールの出側の位置において前記金属板の板幅方向の板端位置を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおける前記金属板幅端位置の検出結果が基準位置から板幅方向の一方側に外れたとき、前記圧延ロールからの前記金属板の流出方向が前記圧延装置における前記金属板の搬送方向に沿うように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行う第1レベリングステップと、
前記第1レベリングステップの後、前記圧延ロールからの前記金属板の流出方向を前記搬送方向に対して前記板幅方向の他方側にずらした後、前記金属板の前記流出方向が前記搬送方向に戻るように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行う第2レベリングステップと、
を備える。
【0127】
上記(1)の方法によれば、先端無張力の状態で金属板の圧延を行いながら、圧延ロールの出側の位置において金属板の板幅方向の板端位置を検出するようにしたので、検出された板端位置が基準位置から板幅方向の一方側に外れたことに基づいて、金属板の流出方向の板幅方向おける一方側へのずれ(金属板の先端曲がり)が生じたことを検出することができる。そして、金属板の先端曲がりが検出されたときには、圧下レベリング制御により、金属板の流出方向を圧延装置における金属板の搬送方向に沿わせた後、金属板の流出方向を搬送方向に対して板幅方向の他方側にずらし、その後流出方向が搬送方向に沿うように圧下レベリング制御を行うようにしたので、金属板の先端曲がりを是正し、金属板の先端縁を、巻き取り装置の軸方向に平行に近づけた状態で、先端無張力圧延を続行することができる。したがって、上記(1)の方法によれば、先端無張力圧延された金属板を巻き取り装置で適切に巻き取ることができる。
【0128】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記板端位置が前記基準位置から前記一方側に向かって離れてから、前記第1レベリングステップで前記板端位置が前記基準位置に戻るまでの前記金属板の前記他方側における前記一方側に対する相対的な第1伸び差を算出する伸び差算出ステップを備え、
前記第2レベリングステップでは、前記金属板の前記一方側における前記他方側に対する相対的な第2伸び差が、前記第1伸び差と等しくなるように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行う。
【0129】
金属板の先端曲がりにより生じる第1伸び差は、金属板の流出方向の板幅方向おける一方側へのずれの大きさを示す。この点、上記(2)の方法によれば、金属板の先端曲がりにより生じる第1伸び差を算出するとともに、上述の第2伸び差が上述の第1伸び差と等しくなるように圧延ロールの圧下レベリング制御を行う。すなわち、金属板の先端曲がりにより金属板の一端側に生じた伸び(第1伸び差に対応する伸び)と同じ大きさの伸び(第2伸び差に対応する伸び)を、金属板の他端側に与えるように圧下レベリング制御を行うようにしたので、金属板の先端曲がりを適切に是正し、金属板の先端縁を、巻き取り装置の軸方向に平行に近づけることができる。よって、先端無張力圧延された金属板を巻き取り装置で適切に巻き取ることができる。
【0130】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の方法において、
前記伸び差算出ステップでは、前記板端位置が前記基準位置から前記一方側に向かって離れてから、前記第1レベリングステップで前記板端位置が前記基準位置に戻るまでの、前記基準位置に対する前記板端位置のずれ量の時間積分に基づいて、前記第1伸び差を算出する。
【0131】
金属板の先端曲がりにより金属板に生じる上述の第1伸び差は、上述の基準位置に対する板端位置のずれ量の時間積分と相関関係を有し、典型的には、第1伸び差と、前述のずれ量の時間積分とが比例関係にある。この点、上記(3)の方法によれば、前述のずれ量の時間積分に基づいて、第1伸び差を適切に算出することができる。したがって、第2レベリングステップにおいて、このように算出した第1伸び差に等しい第2伸び差を金属板に与えるように圧下レベリング制御を行うことにより、金属板の先端曲がりを適切に是正し、金属板の先端縁を、巻き取り装置の軸方向に平行に近づけることができる。よって、先端無張力圧延された金属板を巻き取り装置で適切に巻き取ることができる。
【0132】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の方法において、
前記金属板の先端が前記一対の圧延ロールの下流側に設けられた巻き取り装置に到達するまでの残り時間を算出する残り時間算出ステップを備え、
前記第2レベリングステップでは、前記残り時間内に前記第1伸び差と等しい大きさの前記第2伸び差を前記金属板に与えるように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行う。
【0133】
上記(4)の方法によれば、金属板の先端曲がり発生後、金属板の先端が巻き取り装置に到達するまでの残り時間を算出し、算出された残り時間内に第2伸び差を金属板に与えるようにしたので、金属板が巻き取り開始前に金属板の先端曲がりを適切に是正し、金属板の先端縁を巻き取り装置の軸方向に平行に近づけることができる。よって、先端無張力圧延された金属板を巻き取り装置で適切に巻き取ることができる。
【0134】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの方法において、
前記第1レベリングステップの開始時点における前記金属板の前記流出方向の前記搬送方向に対する前記一方側への第1ずれ角度θ1に基づいて、前記第2レベリングステップ実行中における前記流出方向の前記搬送方向に対する前記他方側への第2ずれ角度θ2を決定する。
【0135】
金属板の先端曲がりにより生じる金属板の流出方向の搬送方向に対する前記一方側への第1ずれ角度θ1は、前述の第1伸び差と同様に、金属板の流出方向の板幅方向おける前記一方側へのずれの大きさを示す。この点、上記(5)の方法によれば、前述の第1ずれ角度θ1に基づいて、第2レベリングステップ実行中における流出方向の搬送方向に対する他方側への第2ずれ角度θ2を適切に決定することができる。したがって、このように決定された第2ずれ角度θ2を金属板に与えるように圧下レベリング制御を行うことにより、金属板の先端曲がりを適切に是正し、金属板の先端縁を、巻き取り装置の軸方向に平行に近づけることができる。よって、先端無張力圧延された金属板を巻き取り装置で適切に巻き取ることができる。
【0136】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
第1レベリングステップの終了後、前記第1レベリングステップに要した時間以下の時間内に、前記第2レベリングステップを開始する。
【0137】
上記(6)の構成によれば、第1レベリングステップで金属板の流出方向を搬送方向に沿わせた後、第1レベリングステップに要した時間以下の時間内に、第2レベリングステップを開始して、金属板の流出方向を他方側にずらす。即ち、第1レベリングステップ終了後に、時間をあまり空けずに金属板の流出方向を他方側にずらすことで、第2レベリングステップ終了時点での、金属板の先端曲がり部における板幅方向の中心位置と、圧延ロールにおける金属板の板幅方向の中心位置との板幅方向におけるずれ量を小さくすることができる。よって、よって、先端無張力圧延された金属板を巻き取り装置でより適切に巻き取ることができる。
【0138】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの方法において、
前記検出ステップの前、前記搬送方向において異なる2か所にて前記板端位置を検出し、前記2か所における前記板端位置の検出結果の差が規定範囲内であるときに、前記一対の圧延ロールによる前記金属板の圧延を開始する圧延開始ステップを備える。
【0139】
圧延装置による搬送方向に対して金属板の長手方向が傾斜した状態で先端無張力圧延を開始してしまうと、圧延ロールの出側にて検出される板端位置に基づいて、金属板の流出方向の板幅方向おける一方側へのずれ(金属板の先端曲がり)が生じたことを適切に検出できない場合がある。この点、上記(7)の方法によれば、搬送方向において異なる2か所にて板幅方向の板端位置を検出し、これらの検出結果の差が規定範囲内であるときに、金属板の先端無張力圧延を開始する。すなわち、2か所で検出された板端位置の差が小さく、金属板の長手方向が搬送方向に対して平行に近いことを確認してから、先端無張力圧延を開始するようにしたので、圧延開始後に、圧延ロールの出側にて検出される板端位置に基づいて、金属板の流出方向の板幅方向おける一方側へのずれ(金属板の先端曲がり)が生じたことを適切に検出することができる。
【0140】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの方法において、
前記検出ステップの前、前記一対の圧延ロールの出側の位置において前記金属板の板幅方向の板端位置を検出し、前記金属板の板幅方向における基準位置と前記板端位置との差が規定範囲内であるときに、前記一対の圧延ロールによる前記金属板の圧延を開始する圧延開始ステップを備える。
【0141】
上記(8)の構成によれば、先端無張力圧延の開始前に、金属板の板幅方向における基準位置と板端位置との差を規定範囲内とするようにしたので、金属板を板幅方向において適切な位置に配置してから先端無張力圧延を開始することができる。例えば、圧延ロールの中央位置と、金属板の板幅方向中央位置とを合わせた状態で、先端無張力圧延を開始することができる。よって、上記(8)の方法によれば、先端無張力圧延された金属板を巻き取り装置でより適切に巻き取ることができる。
【0142】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの方法は、
前記検出ステップの前、前記出側張力がゼロの状態で前記一対の圧延ロールによる前記金属板の圧延を開始し、少なくとも前記金属板の先端が前記一対の圧延ロールの出側の前記位置に到達するまで、前記金属板の圧延速度が、前記出側張力がゼロの状態での目標圧延速度よりも低い状態で前記圧延を行うステップを備える。
【0143】
上記(9)の方法によれば、少なくとも金属板の先端が圧延ロールの出側における板端検出位置に到達するまで、先端無張力圧延における目標速度よりも低い速度で先端無張力圧延をするようにしたので、金属板の長手方向を搬送方向に対して平行に維持しやすい。したがって、金属板の先端が圧延ロールの出側における板端検出位置に到達後、圧延ロールの出側にて検出される板端位置に基づいて、金属板の流出方向の板幅方向おける一方側へのずれ(金属板の先端曲がり)が生じたことを適切に検出することができる。
【0144】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの方法は、
前記検出ステップの開始後前記金属板の圧延速度を、前記出側張力がゼロの状態での目標圧延速度に近づくように上昇させるステップを備える。
【0145】
上記(10)の構成によれば、先端無張力圧延中に圧延速度を適切に上昇させることにより、圧延装置による生産性を向上させることができる。
【0146】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延装置の制御装置は、
金属板を挟むように設けられる一対の圧延ロールを含む圧延装置を制御するための制御装置であって、
前記金属板に加えられる出側張力がゼロの状態で、前記一対の圧延ロールにより前記金属板を圧延しながら、前記一対の圧延ロールの出側の位置において前記金属板の板幅方向の板端位置を検出するように構成された検出部と、
前記検出部による前記板端位置の検出結果が基準位置から板幅方向の一方側に外れたとき、前記圧延ロールからの前記金属板の流出方向が前記圧延装置における前記金属板の搬送方向に沿うように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行うように構成された第1レベリング部と、
前記第1レベリング部による前記圧下レベリング制御の後、前記圧延ロールからの前記金属板の流出方向を前記搬送方向に対して前記板幅方向の他方側にずらした後、前記金属板の前記流出方向が前記搬送方向に戻るように、前記一対の圧延ロールの圧下レベリング制御を行うように構成された第2レベリング部と、
を備える。
【0147】
上記(11)の構成によれば、先端無張力の状態で金属板の圧延を行いながら、圧延ロールの出側の位置において金属板の板幅方向の板端位置を検出するようにしたので、検出された板端位置が基準位置から板幅方向の一方側に外れたことに基づいて、金属板の流出方向の板幅方向おける一方側へのずれ(金属板の先端曲がり)が生じたことを検出することができる。そして、金属板の先端曲がりが検出されたときには、圧下レベリング制御により、金属板の流出方向を圧延装置における金属板の搬送方向に沿わせた後、金属板の流出方向を搬送方向に対して板幅方向の他方側にずらし、その後流出方向が搬送方向に沿うように圧下レベリング制御を行うようにしたので、金属板の先端曲がりを是正し、金属板の先端縁を、巻き取り装置の軸方向に平行に近づけた状態で、先端無張力圧延を続行することができる。したがって、上記(11)の構成によれば、先端無張力圧延された金属板を巻き取り装置で適切に巻き取ることができる。
【0148】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る圧延設備は、
金属板を挟むように設けられる一対の圧延ロールを含む圧延装置と、
上記(11)に記載の制御装置と、
を備える。
【0149】
上記(12)の構成によれば、先端無張力の状態で金属板の圧延を行いながら、圧延ロールの出側の位置において金属板の板幅方向の板端位置を検出するようにしたので、検出された板端位置が基準位置から板幅方向の一方側に外れたことに基づいて、金属板の流出方向の板幅方向おける一方側へのずれ(金属板の先端曲がり)が生じたことを検出することができる。そして、金属板の先端曲がりが検出されたときには、圧下レベリング制御により、金属板の流出方向を圧延装置における金属板の搬送方向に沿わせた後、金属板の流出方向を搬送方向に対して板幅方向の他方側にずらし、その後流出方向が搬送方向に沿うように圧下レベリング制御を行うようにしたので、金属板の先端曲がりを是正し、金属板の先端縁を、巻き取り装置の軸方向に平行に近づけた状態で、先端無張力圧延を続行することができる。したがって、上記(12)の構成によれば、先端無張力圧延された金属板を巻き取り装置で適切に巻き取ることができる。
【0150】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0151】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0152】
1 圧延設備
2 圧延装置
4 巻き出し装置
5 圧延ロール
6 入側ピンチロール
8 サイドガイド
10 圧延機
10A 第1圧延機
10B 第2圧延機
12 出側ピンチロール
14 巻き取り装置
15 圧延ロール
15A 第1圧延ロール
15B 第2圧延ロール
16 圧延ロール
16A 第1圧延ロール
16B 第2圧延ロール
17 中間ロール
18 中間ロール
19 バックアップロール
20 バックアップロール
22 圧下装置
30 金属板
32 第1板端検出部
32A 第1板端検出部
32B 第1板端検出部
34 第2板端検出部
34A 第2板端検出部
34B 第2板端検出部
36 板厚計
38 板厚計
40 コントローラ
42 判定部
44 圧延制御部
46 第1レベリング部
48 第2レベリング部
50 差算出部
52 ずれ角度算出部
54 時間算出部
90 金属板
90a 先端部
90b 遷移部
90c 後続部
91 先端
92 第1端縁
93 第2端縁
94 第1表面
95 第2表面
100 制御装置
A1 矩形部
Lc 中心線
O 中心軸
S2A’ 面積
S2B’ 面積
Y1 第1位置
Y2 第2位置
m 距離
x1 第1板端位置
x2 第2板端位置
板端位置
ref 基準位置
Δe ずれ量
θ1 第1ずれ角度
θ2 第2ずれ角度
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17