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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】ノンダイアフラムブレース構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20220802BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20220802BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
E04B1/58 508S
E04B1/24 F
E04B1/24 L
E04H9/02 311
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022040667
(22)【出願日】2022-03-15
【審査請求日】2022-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 愛実
(72)【発明者】
【氏名】中川 治彦
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-076208(JP,A)
【文献】特開2002-038586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/24
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形鋼管柱と鉄骨の梁を剛結したラーメン構造の骨組に加え、斜材であるブレースを設けて水平力を負担させるブレース構造において、
同一構面内の前記角形鋼管柱と前記梁との接合部は、全て前記角形鋼管柱の他の部位より厚肉な中空断面の角形鋼管からなるノンダイアフラム厚肉角形鋼管であり、
且つ、前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管は、ブレースが接続される接合部も、ブレースが接続されない接合部も、いずれも同一断面形状であり、
前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の外径Dと肉厚tとの幅厚比D/tは、次式(5)を満たすこと
を特徴とするノンダイアフラムブレース構造。
D/t<10.90・・・式(5)
【請求項2】
角形鋼管柱と鉄骨の梁を剛結したラーメン構造の骨組に加え、斜材であるブレースを設けて水平力を負担させるブレース構造において、
同一構面内の前記角形鋼管柱と前記梁との接合部は、全て前記角形鋼管柱の他の部位より厚肉な中空断面の角形鋼管からなるノンダイアフラム厚肉角形鋼管であり、
前記梁から作用する軸力を考慮した場合の前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の梁端接合部の降伏曲げ耐力jcMyは、次式(1)を満たし、
前記梁から作用する軸力を考慮した場合の前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の梁端接合部の全塑性曲げ耐力jcMpは、次式(2)を満たすとともに、
前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の梁端接合部の降伏曲げ耐力jMyは、次式(3)を満たし、
前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の梁端接合部の全塑性曲げ耐力jMpは、次式(4)を満たし、
前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の外径Dと肉厚tとの幅厚比D/tは、次式(5)を満たすこと
を特徴とするノンダイアフラムブレース構造。
jcMy≧α×bcMy・・・式(1)
jcMp≧β×bcMp・・・式(2)
jMy≧γ×bMy・・・式(3)
jMp≧δ×bMp・・・式(4)
jcMy:ノンダイアフラム梁端接合部の降伏曲げ耐力(梁から作用する軸力を考慮したもの)
jcMp:ノンダイアフラム梁端接合部の全塑性曲げ耐力(梁から作用する軸力を考慮したもの)
bcMy:梁の降伏曲げ耐力(梁に作用する軸力を考慮したもの)
bcMp:梁の全塑性曲げ耐力(梁に作用する軸力を考慮したもの)
jMy:ノンダイアフラム梁端接合部の降伏曲げ耐力
jMp:ノンダイアフラム梁端接合部の全塑性曲げ耐力
bMy:梁の降伏曲げ耐力
bMp:梁の全塑性曲げ耐力
α:接合部係数1.0以上
β:接合部係数1.0以上
γ:接合部係数1.0以上
δ:接合部係数1.0以上
D/t<10.90・・・式(5)
【請求項3】
前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の断面形状は、入隅に近づく程厚くなるように内面にテーパー面が形成されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載のノンダイアフラムブレース構造。
【請求項4】
前記角形鋼管柱の柱せん断スパン比(L/2D)は、2.5以上であり、
且つ、前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の長さLは、1500mm以下であること
を特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のノンダイアフラムブレース構造。
ここで、L:前記角形鋼管柱の長さ、D:前記角形鋼管柱の外径
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨のブレース構造に関し、詳しくは、ブレース構造において柱梁接合部に通しダイアフラム形式や内ダイアフラム形式を採用せず、ダイアフラム不要の中空断面のノンダイアフラム形式としたノンダイアフラムブレース構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物の鉄骨構造は、角形鋼管からなる柱とH形鋼からなる梁の接合部を剛接合とした(剛結した)ラーメン構造が一般的である。しかし、部材断面を合理的に設計できることから、柱と梁のラーメン構造に加え、『ブレース』と呼ばれる鋼材からなる斜材を設け、ブレースに地震力を負担させるブレース構造も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、左接合部に接合の第1左ブレースと上部梁に接合の第2左ブレースが、互いに端部接合された左端部接合部を有するV字状の左ブレース体を構成し、その左端部接合部に接合の左連結ブレースが、前記左柱の下端部に接合されるとともに、前記右接合部に接合の第1右ブレースと前記上部梁に接合の第2右ブレースが、互いに端部接合された右端部接合部を有するV字状の右ブレース体を構成し、その右端部接合部に接合の右連結ブレースが、前記右柱の下端部に接合されるとともに、左連結ブレースと右連結ブレースが、それぞれ座屈補剛ブレースで構成される柱梁架構の補強構造が開示されている(特許文献1の請求項1、明細書の段落[0015]~[0018]、図面の図1図2等参照)。
【0004】
一方、ラーメン構造の角形鋼管からなる柱とH形鋼からなる梁の接合部は、中空である角形鋼管の柱が接合部で梁から伝達される応力で押し潰されないように、通しダイアフラム形式や内ダイアフラム形式として角形鋼管柱の中空断面内にダイアフラムを設け、柱と梁が一体化されている。しかし、このような通しダイアフラム形式や内ダイアフラム形式の柱梁接合部は、溶接や接合部形状が複雑で加工やUT検査及び品質管理に手間がかかり、製造コストが嵩むという問題があった。そこで、角形鋼管柱に接続する梁との接合部分に角形鋼管柱より厚肉な厚肉角形鋼管をノンダイアフラム部材として設け、角形鋼管柱内の中空部のダイアフラムを不要としたノンダイアフラム形式の柱梁接合部が提案されるに至った。
【0005】
例えば、特許文献2には、本願の出願人が提案した角形鋼管柱、H形鋼梁およびブレースの間に形成される接合構造において、前記角形鋼管柱の端部に接合された厚肉鋼管を備え、少なくとも前記H形鋼梁が前記厚肉鋼管に接合されるノンダイアフラム形式の柱梁接合構造が開示されている(特許文献2の請求項1、明細書の段落[0009]~[0015]、図面の図1等参照)。
【0006】
しかし、ブレース構造では、ブレースの軸力が梁の軸方向に作用することにより、梁の降伏曲げ耐力及び全塑性曲げ耐力が低下することとなる。それに伴い、ブレース構造にノンダイアフラム形式の柱梁接合部を採用した場合、梁からブレースの軸力が作用することによりノンダイアフラム形式の柱梁接合部の梁端接合部分も、同様に、降伏曲げ耐力及び全塑性曲げ耐力が低下してしまう。このため、ブレース構造において、ブレースが接合されていない柱梁接合部には、ノンダイアフラム形式の接合部とすることはできないという問題があった。
【0007】
また、鉄骨のブレース構造の同一構面において、仕口(接合部)によりノンダイアフラム形式と従来形式(通しダイアフラム形式又は内ダイアフラム形式)を都度判断して使い分けるのは非常に設計手間がかかり現実的ではない。その上、前述のように、従来形式の柱梁接合部とすることは、複雑で加工やUT検査及び品質管理に手間がかかり、製造コストが嵩むという問題がある。加えて、ノンダイアフラム形式のメリットである左右やX方向Y方向の直交方向に接続する2つの梁の梁成を変えたりすることに手間がかかるという問題がある。
【0008】
また、ノンダイアフラム形式の接合部の設計方法が示されている日本建築学会「鋼構造接合部設計指針」では、現状、梁から柱のノンダイアフラム厚肉角形鋼管に作用する軸力の取り扱いが示されていない。そのため、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の耐力を計算することができず、梁の耐力に対して安全率を確保できるか確認することができない状況である。
【0009】
それに加え、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管に対してX方向Y方向の直交方向に接続する2つの梁のうちの一方がブレースが接続されないため従来形式の接合部が採用され、他方がブレースが接続されるためノンダイアフラム形式の接合部が採用された場合は、2つの梁のサイズ(梁成)を合わせる必要がある。梁のサイズを合わせない場合は、ノンダイアフラム形式を採用することができず、接合部にダイアフラムを設ける従来形式の接合部とする必要があるからである。そのため、2つの梁のサイズを大きい方に合わせることとなり、オーバースペックとなり不経済となる。
【0010】
また、ブレースが取り付く角度によりブレースから梁に作用する軸力が変化する。その大きさは梁の軸力比0.1~0.3程度である。ここで、軸力比とは、梁の降伏軸力耐力に対する作用する軸力の比、即ち、軸力比=(作用する軸力)/(梁の降伏軸力耐力)を指している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2020-76208号公報
【文献】実用新案登録第3232594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、オーバースペックとならずに経済的にブレース構造の同一構面において全ての柱梁接合部をノンダイアフラム形式の接合部とすることができるノンダイアフラムブレース構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係るノンダイアフラムブレース構造は、角形鋼管柱と鉄骨の梁を剛結したラーメン構造の骨組に加え、斜材であるブレースを設けて水平力を負担させるブレース構造において、同一構面内の前記角形鋼管柱と前記梁との接合部は、全て前記角形鋼管柱の他の部位より厚肉な中空断面の角形鋼管からなるノンダイアフラム厚肉角形鋼管であり、且つ、前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管は、ブレースが接続される接合部も、ブレースが接続されない接合部も、いずれも同一断面形状であり、前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の外径Dと肉厚tとの幅厚比D/tは、次式(5)を満たすことを特徴とする。
D/t<10.90・・・式(5)
【0014】
第2発明に係るノンダイアフラムブレース構造は、角形鋼管柱と鉄骨の梁を剛結したラーメン構造の骨組に加え、斜材であるブレースを設けて水平力を負担させるブレース構造において、同一構面内の前記角形鋼管柱と前記梁との接合部は、全て前記角形鋼管柱の他の部位より厚肉な中空断面の角形鋼管からなるノンダイアフラム厚肉角形鋼管であり、前記梁から作用する軸力を考慮した場合の前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の梁端接合部の降伏曲げ耐力jcMyは、次式(1)を満たし、前記梁から作用する軸力を考慮した場合の前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の梁端接合部の全塑性曲げ耐力jcMpは、次式(2)を満たすとともに、前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の梁端接合部の降伏曲げ耐力jMyは、次式(3)を満たし、前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の梁端接合部の全塑性曲げ耐力jMpは、次式(4)を満たし、前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の外径Dと肉厚tとの幅厚比D/tは、次式(5)を満たすことを特徴とする。
jcMy≧α×bcMy・・・式(1)
jcMp≧β×bcMp・・・式(2)
jMy≧γ×bMy・・・式(3)
jMp≧δ×bMp・・・式(4)
jcMy:ノンダイアフラム梁端接合部の降伏曲げ耐力(梁から作用する軸力を考慮したもの)
jcMp:ノンダイアフラム梁端接合部の全塑性曲げ耐力(梁から作用する軸力を考慮したもの)
bcMy:梁の降伏曲げ耐力(梁に作用する軸力を考慮したもの)
bcMp:梁の全塑性曲げ耐力(梁に作用する軸力を考慮したもの)
jMy:ノンダイアフラム梁端接合部の降伏曲げ耐力
jMp:ノンダイアフラム梁端接合部の全塑性曲げ耐力
bMy:梁の降伏曲げ耐力
bMp:梁の全塑性曲げ耐力
α:接合部係数1.0以上
β:接合部係数1.0以上
γ:接合部係数1.0以上
δ:接合部係数1.0以上
D/t<10.90・・・式(5)
【0016】
発明に係るノンダイアフラムブレース構造は、第1発明又は発明において、前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の断面形状は、入隅に近づく程厚くなるように内面にテーパー面が形成されていることを特徴とする。
【0017】
発明に係るノンダイアフラムブレース構造は、第1発明ないし第発明のいずれかにおいて、前記角形鋼管柱の柱せん断スパン比(cL/2cD)は、2.5以上であり、且つ、前記ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の長さLは、1500mm以下であることを特徴とする。ここで、cL:前記角形鋼管柱の長さ、cD:前記角形鋼管柱の外径
【発明の効果】
【0018】
第1発明~第発明によれば、オーバースペックとならずに経済的にブレース構造の同一構面において全ての柱梁接合部をノンダイアフラム形式の接合部とすることができる。このため、第1発明~第発明によれば、仕口によりノンダイアフラム形式と従来形式(通しダイアフラム形式又は内ダイアフラム形式)のいずかをその都度判断して使い分ける必要がなく設計手間を省力化することができる。その上、第1発明~第発明によれば、ブレースが接続されない仕口もノンダイアフラム形式とすることができ、傾斜梁や段差梁にもノンダイアフラム形式を適用し易くなり、設計の自由度が増す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(a)は、第1実施形態に係る右下がり形のノンダイアフラムブレース構造の構面を模式的に示す立面図であり、図1(b)は、ノンダイアフラム形式と従来形式(通しダイアフラム形式又は内ダイアフラム形式)の仕口が混在する従来の右下がり形のブレース構造の構面を模式的に示す立面図である。
図2図2は、図1(a)の仕口A付近を拡大して示す部分拡大立面図である。
図3図3は、図1(a)の仕口B付近を拡大して示す部分拡大立面図である。
図4図4は、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管を示す水平断面図であり、(a)が、552mm≧D≧250mmの断面形状を表し、(b)が、252mm≧D≧150mmの断面形状を表している。また、図4(c)は、4枚の平鋼板を溶接して成形された四面BOXのノンダイアフラム厚肉角形鋼管の断面形状を表している。
図5図5は、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管と角形鋼管柱及び鉄骨梁との接合部分を模式的に示す鉛直断面図である。
図6図6は、鉄骨梁400N級(F=235N/mm)のときのD/tとD/B(B:梁幅)の関係を表すグラフである。
図7図7(a)は、第2実施形態に係る右上がり形のノンダイアフラムブレース構造の構面を模式的に示す立面図であり、図7(b)は、ノンダイアフラム形式と従来形式(通しダイアフラム形式又は内ダイアフラム形式)の仕口が混在する従来の右上がり形のブレース構造の構面を模式的に示す立面図である。
図8図8は、図7(a)の仕口A付近を拡大して示す部分拡大立面図である。
図9図9は、図7(a)の仕口B付近を拡大して示す部分拡大立面図である。
図10図10(a)は、第3実施形態に係るV形のノンダイアフラムブレース構造の構面を模式的に示す立面図であり、図10(b)は、ノンダイアフラム形式と従来形式(通しダイアフラム形式又は内ダイアフラム形式)の仕口が混在する従来のV形のブレース構造の構面を模式的に示す立面図である。
図11図11は、図10(a)の仕口A付近を拡大して示す部分拡大立面図である。
図12図12は、図10(a)の仕口C付近を拡大して示す部分拡大立面図である。
図13図13(a)は、第4実施形態に係るK形のノンダイアフラムブレース構造の構面を模式的に示す立面図であり、図13(b)は、ノンダイアフラム形式と従来形式(通しダイアフラム形式又は内ダイアフラム形式)の仕口が混在する従来のK形のブレース構造の構面を模式的に示す立面図である。
図14図14は、図13(a)の仕口A付近を拡大して示す部分拡大立面図である。
図15図15は、図13(a)の仕口C付近を拡大して示す部分拡大立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るノンダイアフラムブレース構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1図6を用いて、本発明の第1実施形態に係るノンダイアフラムブレース構造11について説明する。図1(a)は、第1実施形態に係る右下がり形のノンダイアフラムブレース構造11の構面を模式的に示す立面図であり、図1(b)は、ノンダイアフラム形式と従来形式(通しダイアフラム形式又は内ダイアフラム形式)の仕口が混在する従来の右下がり形のブレース構造の構面を模式的に示す立面図である。また、図2は、図1(a)の仕口A付近を拡大して示す部分拡大立面図であり、図3は、図1(a)の仕口B付近を拡大して示す部分拡大立面図である。
【0022】
図1(a)に示すように、本発明の第1実施形態に係るノンダイアフラムブレース構造11(以下、単に「ノンダイアフラムブレース構造11」ともいう。)は、左右一対の角形鋼管柱2,2と、上下一対の鉄骨梁3,3とが、剛結された矩形枠状のラーメン構造の骨組に、右下がりの斜材である1本のブレース4を設けて水平力を負担させる右下がり形のブレース構造である。
【0023】
そして、ノンダイアフラムブレース構造11は、角形鋼管柱2と鉄骨梁3との柱梁接合部である仕口A~仕口Dの4カ所の仕口が全てノンダイアフラム形式の接合部である同一断面形状のノンダイアフラム厚肉角形鋼管1(ノンダイアフラム部材)となっている。
【0024】
これに対して、図1(b)に示すように、従来の右下がり形のブレース構造101では、ブレース4が接続されない仕口Bや仕口Cは、背景技術で述べたように、「鋼構造接合部設計指針」で梁から柱のノンダイアフラム厚肉角形鋼管1に作用する軸力の取り扱いが示されていないこともあり、通しダイアフラム形式や内ダイアフラム形式などのダイアフラムを設ける従来形式の柱梁接合部1’とせざるを得なかった。
【0025】
(角形鋼管柱)
角形鋼管柱2は、BCR(登録商標:建築構造用冷間ロール成形角形鋼管)、BCP(登録商標:建築構造用冷間プレス成形角形鋼管)、又はSTKR(一般構造用炭素鋼鋼管)からなる中空鋼管であり、異方性がないことから一般に正方形断面のものが採用されている(図4も参照)。本実施形態に係るノンダイアフラムブレース構造11では、柱サイズが外径cD=400mm×肉厚ct=16mm(□400×16)のUコラムを例示して説明する。なお、柱部材のσyは245~445N/mm2となっている。
【0026】
勿論、本発明に係る角形鋼管柱は、構造設計に応じて適宜定められるもので、長方形断面としてもよく、柱サイズも□400×16に限られない。但し、一般的な設計範囲としては、角形鋼管柱2は、□400×16、□350×12、□300×12、□250×9、□200×9、□175×9、□150×9程度のものが採用されている。また、BCRやBCPは識別を意味する記号であり、その他の記号のものを用いても問題ない。
【0027】
(鉄骨の梁)
鉄骨梁3は、一般構造用圧延鋼材、溶接構造用圧延鋼材、建築構造用圧延鋼材、溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材などからなるH形鋼であり、図2に示すように、上フランジ31と、下フランジ32と、これらを繋ぐウェブ33を有している。本実施形態に係るノンダイアフラムブレース構造11では、細幅H形鋼(HY-600×200×12×19)を例示して説明する。なお、符号34は、後述のガセットプレート5の縁沿いに形成された補強リブに対応する上フランジ31と下フランジ32との間に形成されたウェブ33が座屈しないように補強する補剛リブ34である。梁部材のσyは245~445N/mm2となっている。
【0028】
勿論、本発明に係る鉄骨の梁も、本発明に係る角形鋼管柱と同様に、構造設計に応じて適宜定められるものである。但し、一般的な設計範囲としては、鉄骨梁3は、HY-600×200×12×19、H-500×200×10×16、H-500×200×10×16、H-500×200×10×16、H-450×200×9×14、H-350×175×7×11、H-300×150×6.5×9、H-300×150×6.5×9、H-300×150×6.5×9程度である。なお、鉄骨梁3は、スプライスプレートを介して分割されていても構わない。
【0029】
(ブレース)
ブレース4は、鉄骨梁3と同様に、一般構造用圧延鋼材、溶接構造用圧延鋼材、建築構造用圧延鋼材、溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材などからなるH形鋼である(図2参照)。但し、本発明に係るブレースは、H形鋼に限られず、山形鋼などの他の形鋼としてもよいことは云うまでもない。要するに、本発明に係るブレースは、ブラケット、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1、又は鉄骨梁3に接合可能な鋼材であればよい。
【0030】
図2に示すように、このブレース4は、ガセットプレート5を介して、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1及び鉄骨梁3に溶接より一体化されて接合され、剛結(剛接合)されている。図示形態では、ブレース4とガセットプレート5に溶接されて一体化されたものを例示したが、スプライスプレートを介して角度変形不能にボルト接合されていても構わない。また、ブレース4は、スプライスプレートを介して分割されていても構わない。
【0031】
(ノンダイアフラム厚肉角形鋼管)
次に、図4図5を用いて、本発明の特徴部分であるノンダイアフラム厚肉角形鋼管についてさらに説明する。図4は、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1を示す水平断面図であり、(a)が、552mm≧D≧250mmの断面形状を表し、(b)が、252mm≧D≧150mmの断面形状を表している。また、図5は、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1と角形鋼管柱2及び鉄骨梁3との接合部分を模式的に示す鉛直断面図である。
【0032】
ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1は、建築構造用圧延鋼材(SN490B)からなる角形鋼管であり、図4(a)、図5に示すように、角形鋼管柱2の肉厚ct=16mmより厚肉な中空断面となっている。具体的には、本実施形態に係るノンダイアフラム厚肉角形鋼管1は、外径D=402mm×肉厚t=36.9mmのダイアフラムの無い中空の厚肉角形鋼管である。
【0033】
勿論、本発明に係るノンダイアフラム厚肉角形鋼管も、構造設計に応じて適宜定められるもので、水平断面も□402×36.9に限られない。但し、一般的な設計範囲としては、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1の外径Dは、402mm、352mm、302mm、252mm、202mm、177mm、152mm程度である。また、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1の断面は、肉厚tも変化するため外径Dが402mm、352mm、302mm、252mmのときが溝形鋼同士を溶接した図4(a)に示すものとなり、外径Dが202mm、177mm、152mmのときが山形鋼同士を溶接した図4(b)に示すものとなる。
【0034】
なお、溶接個所が増えて製造に手間がかかるが、図4(c)に示すように、厚肉角形鋼管1は、角形鋼管柱2を構成する鋼管の板厚よりも厚い4枚の矩形状の平鋼板を、単純に突き合わせて完全溶け込み溶接して接合することにより成形された四面BOX形状の断面とすることもできる。
【0035】
また、図4(a)に示すように、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1の断面形状は、外径Dが252mm以上となる場合、溶接ビード1aが形成される辺には、中央から入隅に近づく程厚くなるように内面にテーパー面1bが形成されている。テーパーを設けることにより補剛効果が見込める。そのため、テーパーの有無でD/tを算出する際の有効外径が変化し、D’を用いてD/tを算出することができる。
【0036】
また、図5に示すように、ノンダイアフラムブレース構造11の柱梁接合部は、全てノンダイアフラム形式の接合部としており、完全溶け込み溶接個所が最大で12辺となる。このため、ノンダイアフラムブレース構造11は、従来のブレース構造101の通しダイアフラム形式や内ダイアフラム形式などのダイアフラムを設ける従来形式の柱梁接合部1’と相違して、完全溶け込み溶接個所を大幅に削減することができる。そのため、UT検査(超音波探傷検査:Ultrasonic Testing)の検査数も大幅に削減することもでき、図5に示すように、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1に接合する鉄骨梁3の梁成に差がある場合でも、継手の食い違いが発生しない。それに加え、通しダイアフラムが存在しないため、ダイアフラムの飛び出しがなく、ノンスカラップ工法への対応が容易である。
【0037】
なお、背景技術で述べたように、従来のブレース構造101の仕口Bと仕口Cは、背景技術で述べたように、従来形式のダイアフラムを設ける柱梁接合部1’とするしかなかった。しかし、ノンダイアフラムブレース構造11では、仕口Bと仕口Cの接合部をノンダイアフラム形式とするために、鉄骨梁3から作用する軸力を考慮した場合の梁端接合部の降伏曲げ耐力jcMyが、次式(1)を満たすとともに、全塑性曲げ耐力jcMpが、次式(2)を満たす必要がある。
【0038】
jcMy≧α×bcMy・・・式(1)
jcMp≧β×bcMp・・・式(2)
jcMy:ノンダイアフラム梁端接合部の降伏曲げ耐力(梁から作用する軸力を考慮したもの)
jcMp:ノンダイアフラム梁端接合部の全塑性曲げ耐力(梁から作用する軸力を考慮したもの)
bcMy:梁の降伏曲げ耐力(梁に作用する軸力を考慮したもの)(注1)
bcMp:梁の全塑性曲げ耐力(梁に作用する軸力を考慮したもの)(注1)
α:接合部係数1.0以上
β:接合部係数1.0以上
なお、各鉄骨梁3の耐力にはσy=259N/mm(梁400N級),σy=330N/mm(梁490N級)を用いて計算した。また、ここで接合部係数α、βは、梁に作用する応力を安全に伝達し、梁の塑性変形が生じるまでノンダイアフラム梁端接合部が全塑性状態にならないよう設計するための安全率のことであり、材料強度のばらつき等に応じて変動するものとする。梁の軸力比は0.3とした。なお、降伏曲げ耐力は各部材の荷重-変形関係グラフにおける接線剛性が初期剛性の1/3となるときの荷重、全塑性曲げ耐力は1/6となるときの荷重とした。
注1:日本建築学会「鋼構造塑性設計指針」より引用
【0039】
また、ノンダイアフラムブレース構造11の仕口Aと仕口Dは、特許文献2に記載のノンダイアフラム形式の柱梁接合構造と同様に、ノンダイアフラム形式とする。そのためには、ノンダイアフラムブレース構造11では、仕口Aと仕口Dのノンダイアフラム厚肉角形鋼管1は、梁端接合部の降伏曲げ耐力jMyが、次式(3)を満たすとともに、全塑性曲げ耐力jMpが、次式(4)を満たす必要がある。
【0040】
jMy≧γ×bMy・・・式(3)
jMp≧δ×bMp・・・式(4)
jMy:ノンダイアフラム梁端接合部の降伏曲げ耐力
jMp:ノンダイアフラム梁端接合部の全塑性曲げ耐力
bMy:梁の降伏曲げ耐力(注1)
bMp:梁の全塑性曲げ耐力(注1)
γ:接合部係数1.0以上
δ:接合部係数1.0以上
なお、各鉄骨梁3の耐力にはσy=259N/mm(梁400N級),σy=330N/mm(梁490N級)を用いて計算した。また、ここで接合部係数γ、δは、接合部係数α、βと同様に、梁に作用する応力を安全に伝達し、梁の塑性変形が生じるまでノンダイアフラム梁端接合部が全塑性状態にならないよう設計するための安全率のことであり、材料強度のばらつき等に応じて変動するものとする。なお、降伏曲げ耐力は各部材の荷重-変形関係グラフにおける接線剛性が初期剛性の1/3となるときの荷重、全塑性曲げ耐力は1/6となるときの荷重とした。
注1:日本建築学会「鋼構造塑性設計指針」より引用
【0041】
【表1】
注1:日本建築学会「鋼構造塑性設計指針」より引用
【0042】
そして、ノンダイアフラムブレース構造11では、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1を、仕口A~仕口Dの4カ所の仕口が全て同一断面形状とする。このため、ブレースが接続される接合部も、ブレースが接続されない接合部も、いずれも同一断面形状となる。つまり、ノンダイアフラムブレース構造11では、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1は、前述の式(1)~(4)を全て満たす必要がある。
【0043】
さらに、後述の表2、表3に示す計算結果から幅厚比D/tが10.90以上となると建物全体の変形性能の確保が難しくなることから、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1の幅厚比D/tは、次式(5)を満たすことが好ましい。なお、幅厚比D/tの下限値の現実的な値は、表2、表3から8.00以上と考えれる。
D/t<10.90・・・式(5)
【0044】
それに加え、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1は、角形鋼管柱2より剛性が大きく、層に占めるノンダイアフラム厚肉角形鋼管1の全長Lの割合が大きい場合、曲げとせん断力の比率に応じ、柱変形性能が変わってしまう(図5等参照)。そのため、前述の角形鋼管柱2の柱せん断スパン比(cL/2cD)は、2.5以上で、且つ、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1の全長Lは、1500mm以下であることが好ましい。
【0045】
つまり、次式(6)及び次式(7)を満たすことが好ましい。
cL/2cD≧2・・・式(6)
ここで、cL:角形鋼管柱2の長さ、cD:角形鋼管柱2の外径
L≦1500mm・・・式(7)
ここで、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1の全長Lは、接合する鉄骨梁3の最大の梁の梁成以上であることは云うまでもない。
【0046】
(ノンダイアフラム厚肉角形鋼管の幅厚比D/tによる構造計算の合否判定)
次に、前述のノンダイアフラム厚肉角形鋼管1の外径Dが、一般的な使用範囲である152mm~402mmの範囲内において、肉厚tを種々変化させて、前述の式(1)~(4)を利用し、接合部係数α=jMy/bMy=1.0、接合部係数β=jcMp/bcMp=1.3のときに鉄骨梁に軸力(軸力比0.3)が作用する場合を考慮して構造計算上合格(OK)か否かを計算したものを次表2,次表3に示す。表2は、鉄骨梁が400N(F=235N/mm)のときの計算例(α=1.0、β=1.3、γ=1.0、δ=1.3)であり、表3は、鉄骨梁が490N(F=325N/mm)のときの計算例(α=1.0、β=1.3、γ=1.0、δ=1.3)である。表の中の新規という記載が合格となった本発明の実施形態である。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
表2及び表3のNo.23とNo.24を比較すると、接合部係数αとγが1.00以下、βとδが1.30以下となっている。これは、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1の梁端接合部の降伏が鉄骨梁3の降伏に先行することを示しており、鉄骨梁3の変形性能を十分に発揮できないことを示している。また、外径Dが異なる場合についても同様の傾向となっている。よって、表2、表3に示す計算結果から幅厚比D/tが10.90以上となると建物全体の変形性能の確保が難しくなることから、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1の幅厚比D/tは、10.90未満とすることが好ましい。
【0050】
また、表2の結果をグラフにすると、即ち、鉄骨梁400N級(F=235N/mm)のときのD/tとD/B(B:梁幅)の関係は、図6のグラフとなり、幅厚比D/tの10.90が臨界的な意義を有することが分かる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、図7図9を用いて、本発明の第2実施形態に係るノンダイアフラムブレース構造12(以下、単に「ノンダイアフラムブレース構造12」ともいう。)について説明する。ノンダイアフラムブレース構造12が、前述のノンダイアフラムブレース構造11と相違する点は、主に、ブレース4の取り付け方が相違する点だけなので、その点を主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0052】
なお、図7(a)は、第2実施形態に係る右上がり形のノンダイアフラムブレース構造11の構面を模式的に示す立面図であり、図7(b)は、ノンダイアフラム形式と従来形式(通しダイアフラム形式又は内ダイアフラム形式)の仕口が混在する従来の右上がり形のブレース構造の構面を模式的に示す立面図である。また、図8は、図7(a)の仕口A付近を拡大して示す部分拡大立面図であり、図9は、図7(a)の仕口B付近を拡大して示す部分拡大立面図である。
【0053】
図7(a)に示すように、ノンダイアフラムブレース構造12は、左右一対の角形鋼管柱2,2と、上下一対の鉄骨梁3,3とが、剛結された矩形枠状のラーメン構造の骨組に、右上がりの斜材である1本のブレース4を設けて水平力を負担させるから右上がり形のブレース構造である。
【0054】
図7図9に示すように、このノンダイアフラムブレース構造12も、前述のノンダイアフラムブレース構造11と同様に、角形鋼管柱2と鉄骨梁3との柱梁接合部である仕口A~仕口Dの4カ所の仕口が全てノンダイアフラム形式の接合部である同一断面形状のノンダイアフラム厚肉角形鋼管1(ノンダイアフラム部材)となっている。
【0055】
これに対して、図7(b)に示すように、従来の右上がり形のブレース構造102では、ブレース4が接続されない仕口Aや仕口Dは、背景技術で述べたように、「鋼構造接合部設計指針」で梁から柱のノンダイアフラム厚肉角形鋼管1に作用する軸力の取り扱いが示されていないこともあり、通しダイアフラム形式や内ダイアフラム形式などのダイアフラムを設ける従来形式の柱梁接合部1’とせざるを得ず、オーバースペックにならざるをえなかった。
【0056】
しかし、ノンダイアフラムブレース構造12によれば、ブレースが接続されない仕口A,仕口Dもノンダイアフラム形式とすることができ、傾斜梁や段差梁にもノンダイアフラム形式を適用し易くなり、設計の自由度が増す。
【0057】
[第3実施形態]
次に、図10図12を用いて、本発明の第3実施形態に係るノンダイアフラムブレース構造13(以下、単に「ノンダイアフラムブレース構造13」ともいう。)について説明する。ノンダイアフラムブレース構造13が、前述のノンダイアフラムブレース構造11と相違する点は、主に、ブレース4の本数及びその取り付け方が相違する点だけなので、その点を主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0058】
なお、図10(a)は、第3実施形態に係るV形のノンダイアフラムブレース構造11の構面を模式的に示す立面図であり、図10(b)は、ノンダイアフラム形式と従来形式(通しダイアフラム形式又は内ダイアフラム形式)の仕口が混在する従来のV形のブレース構造の構面を模式的に示す立面図である。また、図11は、図10(a)の仕口A付近を拡大して示す部分拡大立面図であり、図12は、図10(a)の仕口C付近を拡大して示す部分拡大立面図である。
【0059】
図10(a)に示すように、ノンダイアフラムブレース構造13は、左右一対の角形鋼管柱2,2と、上下一対の鉄骨梁3,3とが、剛結された矩形枠状のラーメン構造の骨組に、V字形状の斜材である2本のブレース4,4を設けて水平力を負担させるV形のブレース構造である。
【0060】
図10図12に示すように、このノンダイアフラムブレース構造13も、前述のノンダイアフラムブレース構造11と同様に、角形鋼管柱2と鉄骨梁3との柱梁接合部である仕口A~仕口Dの4カ所の仕口が全てノンダイアフラム形式の接合部である同一断面形状のノンダイアフラム厚肉角形鋼管1(ノンダイアフラム部材)となっている。なお、2本のブレース4,4と鉄骨梁3との接合は、従来の通り、ガセットプレートを介して接合されている(図示せず)。
【0061】
これに対して、図10(b)に示すように、従来のV形のブレース構造103では、ブレース4が接続されない仕口Cや仕口Dは、背景技術で述べたように、「鋼構造接合部設計指針」で梁から柱のノンダイアフラム厚肉角形鋼管1に作用する軸力の取り扱いが示されていないこともあり、通しダイアフラム形式や内ダイアフラム形式などのダイアフラムを設ける従来形式の柱梁接合部1’とせざるを得なかった。
【0062】
しかし、ノンダイアフラムブレース構造13によれば、ブレースが接続されない仕口C,仕口Dもノンダイアフラム形式とすることができ、傾斜梁や段差梁にもノンダイアフラム形式を適用し易くなり、設計の自由度が増す。
【0063】
[第4実施形態]
次に、図13図15を用いて、本発明の第4実施形態に係るノンダイアフラムブレース構造14(以下、単に「ノンダイアフラムブレース構造14」ともいう。)について説明する。ノンダイアフラムブレース構造14が、前述のノンダイアフラムブレース構造13と相違する点は、主に、ブレース4の取り付け方が相違する点だけなので、その点を主に説明し、同一構成は同一符号を付し、説明を省略する。
【0064】
なお、図13(a)は、第4実施形態に係るK形のノンダイアフラムブレース構造14の構面を模式的に示す立面図であり、図13(b)は、ノンダイアフラム形式と従来形式(通しダイアフラム形式又は内ダイアフラム形式)の仕口が混在する従来のK形のブレース構造の構面を模式的に示す立面図である。また、図14は、図13(a)の仕口A付近を拡大して示す部分拡大立面図であり、図15は、図14(a)の仕口C付近を拡大して示す部分拡大立面図である。
【0065】
図13(a)に示すように、ノンダイアフラムブレース構造14は、左右一対の角形鋼管柱2,2と、上下一対の鉄骨梁3,3とが、剛結された矩形枠状のラーメン構造の骨組と、K字形状の斜材である2本のブレース4,4を設けて水平力を負担させるK形のブレース構造である。
【0066】
図13図15に示すように、このノンダイアフラムブレース構造14も、前述のノンダイアフラムブレース構造13と同様に、角形鋼管柱2と鉄骨梁3との柱梁接合部である仕口A~仕口Dの4カ所の仕口が全てノンダイアフラム形式の接合部である同一断面形状のノンダイアフラム厚肉角形鋼管1(ノンダイアフラム部材)となっている。なお、ノンダイアフラムブレース構造13と同様に、2本のブレース4,4と鉄骨梁3との接合は、従来の通り、ガセットプレートを介して接合されている(図示せず)。
【0067】
これに対して、図13(b)に示すように、従来のK形のブレース構造104では、ブレース4が接続されない仕口Aや仕口Bは、背景技術で述べたように、「鋼構造接合部設計指針」で梁から柱のノンダイアフラム厚肉角形鋼管1に作用する軸力の取り扱いが示されていないこともあり、通しダイアフラム形式や内ダイアフラム形式などのダイアフラムを設ける従来形式の柱梁接合部1’とせざるを得なかった。
【0068】
しかし、ノンダイアフラムブレース構造14によれば、ブレースが接続されない仕口A,仕口Bもノンダイアフラム形式とすることができ、傾斜梁や段差梁にもノンダイアフラム形式を適用し易くなり、設計の自由度が増す。
【0069】
以上説明した本発明の実施形態に係るノンダイアフラムブレース構造11~14によれば、オーバースペックとならずに経済的にブレース構造の同一構面において全ての柱梁接合部を同一断面形状のノンダイアフラム形式の接合部とすることができる。
【0070】
また、ノンダイアフラムブレース構造11~14によれば、仕口によりノンダイアフラム形式と従来形式(通しダイアフラム形式又は内ダイアフラム形式)のいずかをその都度判断して使い分ける必要がなく設計手間を省力化することができる。
【0071】
その上、ノンダイアフラムブレース構造11~14によれば、ブレース4が接続されない柱梁接合部を全てノンダイアフラム形式とすることができ、傾斜梁や段差梁にもノンダイアフラム形式を適用し易くなり、設計の自由度が増す。
【0072】
以上、本発明の実施形態に係るノンダイアフラムブレース構造11~14について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、例示した実施形態によって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0073】
11~14:ノンダイアフラムブレース構造
101~104:従来のブレース構造
1:ノンダイアフラム厚肉角形鋼管
1a:溶接ビード
1b:テーパー面
2:角形鋼管柱
3:鉄骨梁(鉄骨の梁)
31:上フランジ
32:下フランジ
33:ウェブ
34:補剛リブ
4:ブレース
5:ガセットプレート
【要約】
【課題】オーバースペックとならずに経済的に ブレース構造の同一構面において全ての柱梁接合部をノンダイアフラム形式の接合部とすることができるノンダイアフラムブレース構造を提供する。
【解決手段】角形鋼管柱2と鉄骨の梁(鉄骨梁3)を剛結したラーメン構造の骨組に加え、斜材であるブレース4を設けて水平力を負担させるブレース構造において、同一構面内の角形鋼管柱2と梁(鉄骨梁3)との接合部 は、全て角形鋼管柱1の他の部位より厚肉な中空断面の角形鋼管からなるノンダイアフラム厚肉角形鋼管1とし、且つ、ノンダイアフラム厚肉角形鋼管1をブレース4が接続される接合部も、ブレース4が接続されない接合部も、いずれも同一断面形状とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15