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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】顆粒剤、並びに錠剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/58 20060101AFI20220803BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220803BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220803BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A61K31/58
A61K9/16
A61K9/20
A61K47/14
A61K47/04
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/10
A61P17/14
A61P13/08
A61P35/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019525413
(86)(22)【出願日】2018-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2018022242
(87)【国際公開番号】W WO2018230504
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】P 2017114922
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011877
【氏名又は名称】富士化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 満二
(72)【発明者】
【氏名】杉坂 健太
(72)【発明者】
【氏名】小山 晴樹
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/076516(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/114521(WO,A1)
【文献】特開平10-279475(JP,A)
【文献】特開2000-016934(JP,A)
【文献】特開平11-302157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 13/00
A61P 17/00
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュタステリドを可溶化剤に溶解させ溶液を調製する工程と、
前記溶液に吸着剤を加えて粉末化し粉末を調製する工程と、
前記粉末に結合剤、第1の賦形剤および練合液を加えて練合し乾燥させ る工程と、
を含み、
前記可溶化剤が、脂肪酸のモノグリセリド、脂肪酸のジグリセリド、脂肪酸のモノ・ジグリセリド、脂肪酸のトリグリセリド、及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種であり、
前記吸着剤が、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択される少なくとも1種であり、
前記結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポビドン、カルボキシビニルポリマー、及びアラビアゴムから選択される少なくとも1種であり、
前記第1の賦形剤が、乳糖、乳糖の水和物、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、及び結晶セルロースから選択される少なくとも1種であり、
前記練合液が、エタノール水溶液である
ことを特徴とする顆粒剤の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の顆粒剤の製造方法において、
前記可溶化剤の添加量が前記デュタステリド1重量部に対して50~300重量部である、顆粒 剤の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の顆粒剤の製造方法において、
前記吸着剤の添加量が前記可溶化剤1重量部に対して0.5~3.0重量部である、顆粒 剤の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の顆粒剤の製造方法において、
前記練合液が30~99.5%エタノール水溶液である、顆粒 剤の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の顆粒剤の製造方法において、
前記結合剤の量が、前記顆粒剤1重量部中、0.005~0.1重量部である、顆粒 の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の顆粒剤の製造方法 で得られた顆粒剤に崩壊剤、第2の賦形剤および必要に応じて滑沢剤を加えて混合し打錠用粉末を調製する工程と、
前記打錠用粉末を打錠し錠剤を製造する工程と、
を含み、
前記崩壊剤が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン、クロスポビドンから選択される少なくとも1種であり、
前記第2の賦形剤が、マンニトール、還元麦芽糖水アメ、乳糖、乳糖の水和物、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、及び結晶セルロースから選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする錠剤の製造方法。
【請求項7】
(i)主薬としてのデュタステリド並びに(ii)製剤添加剤として吸着剤可溶化剤、結合剤、及び第1の賦形剤を含有する(1)顆粒剤、及び
(2)崩壊剤及び第2の賦形剤を含有する錠剤 であって、
前記吸着剤が、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択される少なくとも1種であり、
前記可溶化剤が、脂肪酸のモノグリセリド、脂肪酸のジグリセリド、脂肪酸のモノ・ジグリセリド、脂肪酸のトリグリセリド、及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種であり、
前記結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポビドン、カルボキシビニルポリマー、及びアラビアゴムから選択される少なくとも1種であり、
前記第1の賦形剤が、乳糖、乳糖の水和物、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、及び結晶セルロースから選択される少なくとも1種であり、
前記崩壊剤が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン、クロスポビドンから選択される少なくとも1種であり、
前記第2の賦形剤が、マンニトール、還元麦芽糖水アメ、乳糖、乳糖の水和物、トウモロコシデンプン、及びバレイショデンプンから選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする錠剤。
【請求項8】
前記吸着剤の量が、前記可溶化剤1重量部に対して、0.5~3.0重量部である請求項7に記載の錠剤。
【請求項9】
前記結合剤の量が、前記顆粒剤1重量部中、0.005~1重量部である請求項7から8のいずれかに記載の錠剤。
【請求項10】
前記顆粒剤が、崩壊剤を含まない請求項7から9のいずれかに記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュタステリドを有効成分として含む顆粒剤、錠剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の式(I)によって表わされるデュタステリド(化学式:17β-N-(2,5-ビス(トリフルオロメチル))フェニルカルバモイル-4-アザ-5-α-アンドロスト-1-エン-3-オン))は、ジヒドロテストステロン(DHT)へのテストステロンの転化を抑制する二重5-α還元酵素阻害剤である。デュタステリドは、良性前立腺肥大症、前立腺がん、男性型脱毛症などの治療に有用であることが知られている(特許文献1)。
【0003】
【化1】
【0004】
当該デュタステリドは上記のような薬理活性を少量の投与量で示す所謂高薬理活性の化合物であり且つ水への溶解性の低い難溶性の薬剤として広く知られている。そのような特質から、当該薬物を経口製剤にしようとすると、製造過程での薬物粉体の飛散による製造作業者への防曝や環境への汚染防止、また水難溶性といった性質から、当該化合物の錠剤への展開は容易ではなかった。そのような観点から、特許文献2では、デュタステリドを有効成分として含む軟カプセル製剤に言及しており、特にデュタステリドの溶解を最適化して保管またはパッケージ条件にかかわらず、一貫した溶解安定性に優れる軟カプセル製剤を提供しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2904310号公報
【文献】特許第6051334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2の技術を含め、現状では、デュタステリドを有効成分として含む製剤としてカプセル製剤のみが市場に流通している。しかしながら、当該軟カプセル剤は、一般的軟カプセルの問題点に加え、サイズが「全長約19.3mm、厚さ約6.6mm」と大きくて服用しにくいという難点があった。特に、本剤が使用される前立腺癌の患者は嚥下が困難な高齢患者が多く、服用の容易性等といった観点から、服用し易いサイズの錠剤の開発が強く望まれてきた。
本発明の主な目的は、デュタステリドを有効成分として含む顆粒剤、錠剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明のデュタステリド含有錠剤は、当該有効成分の上記特性から、その製造方法が重要であり、当該方法は、
デュタステリドを可溶化剤に溶解させ溶液を調製する工程と、
前記溶液に吸着剤を加えて粉末化し粉末を調製する工程と、
前記粉末に結合剤、第1の賦形剤および練合液を加えて練合し乾燥させ顆粒剤を調製する工程と、
前記顆粒剤に崩壊剤、第2の賦形剤および必要に応じて滑沢剤を加えて混合し打錠用粉末を調製する工程と、
前記打錠用粉末を打錠し錠剤を製造する工程と、
を含んでいる。
本方法により、目的の錠剤が製造でき、その錠剤の構成も製造方法に依存するところが大きいものである。
【0008】
また、本発明の錠剤は、(i)主薬としてのデュタステリド並びに(ii)製剤添加剤として吸着剤及び可溶化剤を含有する(1)顆粒剤、及び(2)崩壊剤を含有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の顆粒剤は、(i)主薬としてのデュタステリド並びに(ii)製剤添加剤として吸着剤及び可溶化剤を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、デュタステリドを有効成分として含む顆粒剤及び錠剤を提供することが可能である。本発明の錠剤は、製造過程において製造作業者への曝露や製造現場の汚染といった問題点を最小化することができ且つ現在医療現場に提供されている軟カプセルに比べると小さく服用し易い製剤を提供することができる。また、本発明の顆粒剤は、本発明の錠剤を製造する上で極めて重要な製造中間製剤であり、且つ顆粒剤としてそのまま患者に投与或いは硬カプセル剤とすることによって患者に投与することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[顆粒剤、錠剤及びその製造方法]
本発明は、デュタステリドを有効成分として含む錠剤及びその製造方法を提供するものである。
かかる錠剤の製造方法では、デュタステリドを可溶化剤に溶解させ溶液を調製する第1の工程と、前記溶液に吸着剤を加えて粉末化し粉末を調製する第2の工程と、前記粉末に結合剤、第1の賦形剤および練合液を加えて練合し乾燥させ顆粒剤を調製する第3の工程と、前記顆粒剤に崩壊剤、第2の賦形剤および必要に応じて滑沢剤を加えて混合し打錠用粉末を調製する第4の工程と、前記打錠用粉末を打錠し錠剤を製造する第5の工程と、を含んでいる。以下、各工程について説明すると共に、本発明の顆粒剤及び錠剤についても併せて説明する。
【0012】
[第1の工程]
第1の工程ではデュタステリドを可溶化剤に溶解させ溶液を調製する。
可溶化剤の例としては、脂肪酸のモノグリセリド、脂肪酸のジグリセリド、脂肪酸のモノ・ジグリセリド、脂肪酸のトリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。可溶化剤はこれら化合物のうち1種単独で使用されてもよいし、2種以上が混合され使用されてもよい。可溶化剤は好ましくは脂肪酸のモノ・ジグリセリドである。
可溶化剤の添加量はデュタステリド1重量部に対して50~300重量部が好ましい。
本工程の溶解工程では、可溶化剤と主薬にエタノールを添加すると、溶解をより効率的に行うことができる。
【0013】
[第2の工程]
第2の工程では、第1の工程で調製された溶液に吸着剤を加えて撹拌混合し粉末化する。具体的には、一定量の吸着剤を秤量しこれに溶液を加えて粉末状になるまで混合する。
吸着剤の例としては、二酸化ケイ素(軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、微粒二酸化ケイ素)、ケイ酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。吸着剤はこれら化合物のうち1種単独で使用されてもよいし、2種以上が混合され使用されてもよい。吸着剤は好ましくは二酸化ケイ素またはメタケイ酸アルミン酸マグネシウムである。
吸着剤の添加量は可溶化剤1重量部に対して好ましくは0.5~3.0重量部であり、より好ましくは1.2~2.0重量部である。
【0014】
[第3の工程]
第3の工程では、第2の工程で調製された粉末に、第1の賦形剤および練合液を、並びに適宜必要に応じて結合剤を添加して練合する。連合物を乾燥させ顆粒(「顆粒剤」と称することもある。)を調製する。好ましくは、粉末に結合剤、第1の賦形剤および練合液を加えて練合し、その練合物を整粒した後、一定温度で一定時間乾燥させ、その乾燥物を再度整粒し、打錠に使用可能な粒状物、即ち顆粒剤を製造することができる。
結合剤の例としてはヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポビドン、カルボキシビニルポリマー、アラビアゴム等の通常のものが挙げられる。結合剤の使用量は、造粒部1重量部の中で好ましくは0.005~0.1重量部であり、より好ましくは0.005~0.03重量部である。
第1の賦形剤の例としては、乳糖やその水和物、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、結晶セルロースなど通常使用するものが挙げられる。第1の賦形剤はこれらの化合物のうち1種単独で使用されてもよいし、2種以上が混合され使用されてもよい。第1の賦形剤の使用量は特に限定はなく、錠剤の目標質量に合わせて適当量を配合することでよい。
練合液の例としてはエタノール、水などが挙げられ、好ましくは30~99.5%エタノール水溶液が使用され、より好ましくは50~95%エタノール水溶液が使用される。
練合液の使用量は、特に限定されず、練合工程の中で適度な粘性が得られる程度の使用量でよい。
このようにして得られる顆粒、即ち粒状組成物は、目的とする錠剤の製造工程の中間組成物として重要であり、また、このままの形で例えば顆粒剤或いは細粒剤として又は当該顆粒剤を硬カプセルに充填し硬カプセル剤として服用することも可能である。
【0015】
[第4の工程]
第4の工程では、第3の工程で調製された粒状物、即ち顆粒剤に崩壊剤、第2の賦形剤および必要に応じて滑沢剤を加えて混合し打錠用粉末を調製する。好ましくは、顆粒剤に崩壊剤および第2の賦形剤を加えて混合し、その混合物に必要に応じて滑沢剤を加えて混合する。
崩壊剤の例としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、ポビドン、クロスポビドンなどが挙げられる。崩壊剤はこれら化合物のうち1種単独で使用されてもよいし、2種以上が混合され使用されてもよい。
第2の賦形剤の例としては、好ましくはマンニトール、還元麦芽糖水アメなどが挙げられる。第2の賦形剤はこれら化合物のうち1種単独で使用されてもよいし、2種以上が混合され使用されてもよい。また、第2の賦形剤は第1の賦形剤と同じものが使用されてもよく、又、異なるものが使用されていてもよい。適宜、目的に応じて第2の賦形剤を使用すればよい。
滑沢剤の例としてはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
上記の崩壊剤、第2の賦形剤および滑沢剤の使用量は、特に限定はなく、錠剤の製造の際に通常使用される量と同程度で十分である。
【0016】
[第5の工程]
第5の工程では、第4の工程で調製された打錠用粉末を打錠し錠剤を製造する。
打錠機としては汎用の打錠機が使用可能であり、たとえばロータリー打錠機が使用される。打錠の条件(杵のサイズ、打錠圧、回転数など)は製造しようとする錠剤のサイズや硬度などに合わせて適宜設定すればよい。
【0017】
[錠剤および用途]
かかる製造方法によれば、少なくとも、デュタステリド、可溶化剤、吸着剤、崩壊剤を含む錠剤を製造することができ、また当該錠剤は所望により結合剤、賦形剤、滑沢剤を追加配合して製造することができる。
かかる製造方法による本発明の錠剤は、従来の軟カプセル剤に比べ小さく服用しやすいものであり、軟カプセル剤と同等の薬物溶出効果を有し、十分な良性前立腺肥大症、前立腺がんまたは男性型脱毛症の治療効果を有するものである。
【0018】
さらに、本発明の錠剤は長期保存下において十分な安定性を有し且つ一般的な製造設備で製造することが可能であり、従来の軟カプセル剤に比べると製造コストも廉価である。
一般に液状の可溶化剤を吸着した固形製剤は熱(温度)によって不安定なものが多く、これを錠剤とした場合には、崩壊試験の崩壊時間や硬度の変動が激しく製剤品質の維持が難しい。この点、本錠剤の製造方法によれば、第3の工程の練合液、第4の工程の外部添加剤(崩壊剤、第2の賦形剤)を特定的に選択することにより、熱(温度)に耐えうる錠剤を製造することができる。
【実施例
【0019】
以下、本発明の実施例について説明する。
ただし、本発明の範囲は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0020】
なお、服用しやすさに加え錠剤は次の条件を満足することが好ましい。
(1)溶出挙動は既存の軟カプセル剤に類似させるため錠剤の崩壊時間は2~10分。
(2)上記崩壊時間を満たす錠剤を打錠圧が2000kgf以下で打錠できる。
(3)耐熱試験(50℃密閉、1週間)において崩壊時間や溶出性の変化が可能な限り少ない。
【0021】
[サンプルの作製]
(1)実施例1
下記(1.1)~(1.9)の手順に従いデュタステリド錠剤を製造した。
(1.1)デュタステリド0.5gを中鎖脂肪酸モノ・ジグリセリド(太陽化学社製サンソフトNo.707)25gに加え溶解させ溶液A1を得た。
(1.2)ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製NISSO HPC-L)2gを95%エタノール水溶液38gに撹拌溶解させ溶液B1を得た。
(1.3)軽質無水ケイ酸(フロイント産業社製アドソリダー101)35gを乳鉢に秤量し、これに溶液A1を加えて乳棒で粉末状になるまで混合し混合物C1を得た。
(1.4)混合物C1に対し溶液B1を加えて乳棒で全体が均一状態になるまで混合し混合粉末D1を得た。
(1.5)混合粉末D1に対し乳糖水和物(DFEファーマ社製Pharmatose 200M)45.5gと結晶セルロース(旭化成ケミカルズ社製セオラスUF711)122gとを加え乳棒で混合した後、95%エタノール水溶液100gを加えて練合し造粒末E1を得た。
(1.6)造粒末E1を目開き500μm篩で篩過した後、ステンレス製トレーに移し70℃で60分間乾燥させ乾燥物F1を得た。
(1.7)乾燥物F1を目開き500μm篩で篩過し、顆粒G1(整粒末)とした。
(1.8)顆粒G1を207g秤量し、これに低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製L-HPC)40.5gとD-マンニトール(ロケットジャパン社製ペアリトール100SD)24.3gとを加えポリ袋内で2分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム(日油社製ステアリン酸マグネシウムS)2.7gを加え更に1分間混合した後、目開き500μm篩で篩過して打錠用粉末H1を得た。
(1.9)打錠用粉末H1をロータリー打錠機(畑鉄工所製HT-AP18SS-II型)で打錠した。当該打錠工程では、直径9mm、曲率半径10mmの杵を用い、回転数毎分30回転で1錠305mg、硬度約110Nとなるよう打錠機のパラメーターを設定し錠剤(サイズ:直径9mm、厚さ4.84mm)を得た。
【0022】
(2)実施例2
下記(2.1)、(2.2)の手順に従いデュタステリド錠剤を製造した。
(2.1)実施例1と同様に調製した顆粒G1(整粒末)207gにカルメロースカルシウム(ニチリン化学工業社製ECG505)40.5gと還元麦芽糖水アメ(三菱商事フードテック社製アマルティMR-50)55.8gとを加えポリ袋内で2分間混合後、ステアリン酸マグネシウム(日油社製ステアリン酸マグネシウムS)2.7gを加え更に1分間混合した後、目開き500μm篩を通して打錠用粉末H2を得た。
(2.2)打錠用粉末H2をロータリー打錠機(畑鉄工所製HT-AP18SS-II型)で打錠した。当該打錠工程では、直径9mm、曲率半径10mmの杵を用い、回転数毎分30回転で1錠340mg、硬度約105Nとなるよう打錠機のパラメーターを設定し錠剤(サイズ:直径9mm、厚さ5.16mm)を得た。
【0023】
(3)実施例3
下記(3.1)~(3.9)の手順に従いデュタステリド錠剤を製造した。
(3.1)デュタステリド0.5gを中鎖脂肪酸モノ・ジグリセリド(太陽化学社製サンソフトNo.707)25gに加え溶解させ溶液A3を得た。
(3.2)ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製NISSO HPC-L)2gを95%エタノール水溶液38gに撹拌溶解させ溶液B3を得た。
(3.3)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業社製ノイシリンUFL2)40gを乳鉢に秤量し、これに溶液A3を加えて乳棒で粉末状になるまで混合し混合粉末C3を得た。
(3.4)混合粉末C3に対し溶液B3を加えて乳棒で全体が均一状態になるまで混合し混合粉末D3を得た。
(3.5)混合粉末D3に対し乳糖水和物(DFEファーマ社製Pharmatose 200M)45.5gと結晶セルロース(旭化成ケミカルズ社製セオラスUF711)122gとを加え乳棒で混合した後、95%エタノール水溶液80gを加えて練合し造粒末E3を得た。
(3.6)造粒末E3を目開き500μm篩で篩過した後、ステンレス製トレーに移し70℃で60分間乾燥させ乾燥物F3を得た。
(3.7)乾燥物F3を目開き500μm篩で篩過し、顆粒G3(整粒末)とした。
(3.8)顆粒G3を211.5g秤量し、これにデンプングリコール酸ナトリウム(ロケットジャパン社製グリコリス)13.5gとD-マンニトール(ロケットジャパン社製ペアリトール100SD)24.3gとを加えポリ袋内で2分間混合後、ステアリン酸マグネシウム(日油社製ステアリン酸マグネシウムS)2.7gを加え更に1分間混合した後、目開き500μm篩で篩過して打錠用粉末H3を得た。
(3.9)打錠用粉末H3をロータリー打錠機(畑鉄工所製HT-AP18SS-II型)で打錠した。当該打錠工程では、直径9mm、曲率半径10mmの杵を用い、回転数毎分30回転で1錠280mg、硬度約190Nとなるよう打錠機のパラメーターを設定し錠剤(サイズ:直径9mm、厚さ4.17mm)を得た。
【0024】
(4)実施例4
下記(4.1)~(4.9)の手順に従いデュタステリド錠剤を製造した。
(4.1)デュタステリド0.5gを中鎖脂肪酸モノ・ジグリセリド(太陽化学社製サンソフトNo.707)50gに加え溶解させ溶液A4を得た。
(4.2)ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製NISSO HPC-L)3gを50%エタノール水溶液57gに撹拌溶解させ溶液B4を得た。
(4.3)軽質無水ケイ酸(フロイント産業社製アドソリダー101)75gを乳鉢に秤量し、これに溶液A4を加えて乳棒で粉末状になるまで混合し混合物C4を得た。
(4.4)混合物C4に対し溶液B4を加えて乳棒で全体が均一状態になるまで混合し混合粉末D4を得た。
(4.5)混合粉末D4に対し乳糖水和物(DFEファーマ社製Pharmatose 200M)44.5gと結晶セルロース(旭化成ケミカルズ社製セオラスUF711)122gとを加え乳棒で混合した後、50%エタノール水溶液120gを加えて練合し造粒末E4を得た。
(4.6)造粒末E4を目開き500μm篩で篩過した後、ステンレス製トレーに移し70℃で60分間乾燥させ乾燥物F4を得た。
(4.7)乾燥物F4を目開き500μm篩で篩過し、顆粒G4(整粒末)とした。
(4.8)顆粒G4を265.5g秤量し、これに低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製L-HPC)54gとD-マンニトール(ロケットジャパン社製ペアリトール100SD)24.3gとを加えポリ袋内で2分間混合した後、ステアリン酸マグネシウム(日油社製ステアリン酸マグネシウムS)2.7gを加え更に1分間混合した後、目開き500μm篩で篩過して打錠用粉末H4を得た。
(4.9)打錠用粉末H4をロータリー打錠機(畑鉄工所製HT-AP18SS-II型)で打錠した。当該打錠工程では、直径10mm、曲率半径13mmの杵を用い、回転数毎分30回転で1錠385mg、硬度約90Nとなるよう打錠機のパラメーターを設定し錠剤(サイズ:直径10mm、厚さ4.85mm)を得た。
【0025】
(5)実施例5
下記(5.1)~(5.9)の手順に従いデュタステリド錠剤を製造した。
(5.1)デュタステリド1gを中鎖脂肪酸モノ・ジグリセリド(ABITEC社製CAPMUL MCM EP/NF)80g及び95%エタノール水溶液144gに加え溶解させ溶液A5を得た。
(5.2)ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製NISSO HPC-L)6gを95%エタノール水溶液114gに撹拌溶解させ溶液B5を得た。
(5.3)軽質無水ケイ酸(フロイント産業社製アドソリダー101)140gを高速攪拌造粒機(奈良機械社製NMG-5L)に入れ、これに溶液A5を加えて粉末状になるまで混合し混合物C5を得た。
(5.4)混合物C5に対し乳糖水和物(DFEファーマ社製Pharmatose 200M)39gと結晶セルロース(旭化成ケミカルズ社製セオラスUF711)164gとを加え混合し混合粉末D5を得た。
(5.5)混合粉末D5に対し溶液B5を加えて練合し造粒末E5を得た。
(5.6)造粒末E5を整粒機(パウレック社製コーミル197S)で整粒した後、ステンレス製トレーに移し60℃で90分間乾燥させ乾燥物F5を得た。
(5.7)乾燥物F5を整粒機(パウレック社製コーミル197S)で整粒し、顆粒G5(整粒末)とした。
(5.8)顆粒G5を387g秤量し、これに低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業社製L-HPC)99gとD-マンニトール(ロケットジャパン社製ペアリトール100SD)54gとを加えポリ袋内で2分間混合し、打錠用粉末H5を得た。
(5.9)打錠用粉末H4をロータリー打錠機(畑鉄工所製HT-AP18SS-II型)で打錠した。当該打錠工程では、直径9mm、曲率半径13mmの杵を用い、回転数毎分30回転で1錠300mg、硬度約90Nとなるよう打錠機のパラメーターを設定し錠剤(サイズ:直径9mm、厚さ4.58mm)を得た。
【0026】
(6)実施例6
下記(6.1)~(6.9)の手順に従いデュタステリド錠剤を製造した。
(6.1)デュタステリド0.5gをプロピレングリコール脂肪酸エステル(日光ケミカルズ社製NIKKOL Sefsol-218)25gに加え溶解させ溶液A6を得た。
(6.2)ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製NISSO HPC-L)2gを精製水38gに撹拌溶解させ溶液B6を得た。
(6.3)軽質無水ケイ酸(フロイント産業社製アドソリダー101)25gを乳鉢に秤量し、これに溶液A5を加えて乳棒で粉末状になるまで混合し混合物C6を得た。
(6.4)混合物C6に対し溶液B6を加えて乳棒で全体が均一状態になるまで混合し混合粉末D6を得た。
(6.5)混合粉末D6に対し乳糖水和物(DFEファーマ社製Pharmatose 200M)57.5gと結晶セルロース(旭化成ケミカルズ社製セオラスUF711)125gとを加え乳棒で混合した後、精製水80gを加えて練合し造粒末E6を得た。
(6.6)造粒末E6を目開き500μm篩で篩過した後、ステンレス製トレーに移し70℃で60分間乾燥させ乾燥物F6を得た。
(6.7)乾燥物F5を目開き500μm篩で篩過し、顆粒G6(整粒末)とした。
(6.8)顆粒G6を211.5g秤量し、これにデンプングリコール酸ナトリウム(ロケットジャパン社製グリコリス)3.15gを加えポリ袋内で2分間手混合後、ステアリン酸マグネシウム(日油社製ステアリン酸マグネシウムS)2.25gを加え更に1分間混合した後、目開き500μm篩で篩過して打錠用粉末H6を得た。
(6.9)打錠用粉末H6をロータリー打錠機(畑鉄工所製HT-AP18SS-II型)で打錠した。当該打錠工程では、直径8mm、曲率半径9mmの杵を用い、回転数毎分30回転で1錠241mg、硬度約125Nとなるよう打錠機のパラメーターを設定し錠剤(サイズ:直径8mm、厚さ4.44mm)を得た。
【0027】
(7)実施例7
実施例6のプロピレングリコール脂肪酸エステル(日光ケミカルズ社製NIKKOL Sefsol-218)を中鎖脂肪酸モノ・ジグリセリド(太陽化学社製サンソフトNo.707)に変更した。その他は実施例6と同様の方法で調製し錠剤(サイズ:直径8mm、厚さ4.58mm)を得た。
【0028】
実施例1~7の処方を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
[サンプルの評価]
実施例1~7の錠剤につき下記の測定および試験を行った。
(1)打錠圧の測定
錠剤5錠の打錠時の本圧を測定し各測定値の平均値を算出した。
(2)錠剤硬度の測定
錠剤5錠をサンプリングして硬度を測定し各測定値の平均値を算出した。硬度の測定には錠剤硬度計(岡田精機製PC-30型)を使用した。
(3)崩壊試験
錠剤6錠をサンプリングして崩壊試験を実施し(崩壊時間を測定し)各測定値の平均値を算出した。崩壊試験は日局崩壊試験法に準じて実施し、崩壊試験では崩壊試験器(富山産業製NTR-6300A型)を使用した。
その後、錠剤を耐熱試験に供し、その錠剤に対し再度崩壊試験を実施した。耐熱試験では、錠剤をガラス製9ccスクリュー管に入れこれをポリプロピレン製蓋で密栓し、50℃の恒温機に1週間静置した。
(4)溶出試験
錠剤6錠をサンプリングして溶出試験を実施し(溶出率を測定し)試験時間60分における各測定値の平均値を算出した。溶出試験では溶出試験器(富山産業製NTR-6300A型)を使用した。溶出試験では、錠剤を、0.5%(W/V)ポリソルベート80を添加したpH4.0のMcIlvaine緩衝液900ml中に浸漬させ、パドルの回転数を50回転に設定した。
その後、錠剤を上記崩壊試験での耐熱試験と同様の耐熱試験に供し、その錠剤に対し再度溶出試験を実施した。
【0031】
実施例1~7の評価結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
[まとめ]
表2に示すとおり、実施例1~7のいずれでも打錠圧2000kgf以下で一定の硬度を有し服用しやすいサイズの錠剤を製造することができた。
なお、実施例1~5では耐熱試験の前後で崩壊時間が2~10分以内に収まるのに対し、実施例6~7では耐熱試験後で崩壊時間が10分を超えた。
また、表2に示すとおり、実施例の中でも、実施例1~5では耐熱試験の前後で溶出率の低下が10%以内に収まるのに対し、実施例6~7では耐熱試験の後で溶出率の低下が10%を超えた。
特に実施例1~5と実施例6~7との比較から、練合液を50%エタノール水溶液または95%エタノール水溶液から精製水に変更すると、耐熱試験:1週間で崩壊時間の遅延や溶出率の低下が起きた。実施例1~5では、練合液として50%エタノール水溶液または95%エタノール水溶液を用いているため打錠圧が高くなる傾向にあるが、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウムを、第2の賦形剤としてD-マンニトール、粉末還元麦芽糖水アメを、それぞれ選択することにより、成型性の改善に成功し、熱(温度)に耐えうる、錠剤を製造することができた。