(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】ミキサー
(51)【国際特許分類】
A47J 43/046 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
A47J43/046
(21)【出願番号】P 2018101609
(22)【出願日】2018-05-28
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 洋史
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-121440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0248111(US,A1)
【文献】特開平03-237945(JP,A)
【文献】特開2002-058975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 42/00-44/02
B02C 13/00-13/31
B02C 18/00-18/38
B01F 27/00-27/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収容可能な中空円筒状の円筒部と、
前記円筒部の内周面から半径方向内側に突設されるリブ部と、を有するカップと、
前記カップの内部に配置され、回転軸によって回転可能に支持されるカッター刃と、
を有する容器部と、
前記円筒部の軸芯を上下に向けた姿勢で前記容器部を支持するとともに、前記回転軸を駆動する本体部と、
を備えるミキサーであって、
前記カップは、
前記円筒部の下端部より半径方向内側に延設される底部を備え、
前記円筒部の内周面と前記底部が、
内R形状を有する曲面部で接続されており、
前記リブ部は、
前記カッター刃の回転方向における上手側の側部に傾斜面を有し、
前記傾斜面は、
前記底部側から前記円筒部側へ向かうにつれて、前記カッター刃の回転方向における下手側へ傾倒されている、
ことを特徴とするミキサー。
【請求項2】
前記リブ部
は、
前記底部側から前記円筒部側へ向かうにつれて前記回転軸に直交する平面による断面積が縮小する略三角錐状の形態を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のミキサー。
【請求項3】
前記リブ部の前記底部からの高さが、
前記カッター刃の直径の1.0倍を超え、かつ、1.5倍未満の高さである、
ことを特徴とする請求項1~2の何れか一項に記載の
ミキサー。
【請求項4】
前記リブ部の前記底部からの高さが、
前記円筒部の内径寸法の0.5倍を超え、かつ、0.8倍未満の高さである、
ことを特徴とする
請求項1~2の何れか一項に記載のミキサー。
【請求項5】
前記容器部は、
前記容器部を前記本体部に連結する部位であり、前記回転軸に垂直な面を備えた支持部をさらに有し、
前記支持部は、
前記カップ部の前記底部の下方に位置する、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のミキサー。
【請求項6】
前記リブ部が、
前記底部から前記曲面部を経て前記円筒部へ至る範囲に形成されている、
ことを特徴とする
請求項1~5の何れか一項に記載のミキサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサーの技術に関し、より詳しくは、ミキサーを静音化するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ライフスタイルや住宅環境の変化に伴って、家電製品の静音化に対するニーズが高まっている。家庭で使用される調理用のミキサーは、モータの回転力によって、カップ内に配置したカッター刃を回転駆動し、カップ内に投入した食材等を切削する装置であるが、運転時には、モータの運転音、モータを冷却するためのファンの風切り音、食材とカップとの衝突音等、様々な音が発生する。
【0003】
従来のミキサーでは、カップ内部に突出する複数のリブ部を形成することで、撹拌性能を向上させている。
図7に従来のミキサーの容器部110を例示している。なお、容器部110は、
図7に示す矢印の方向に上下方向を規定している。
【0004】
図7(a)(b)に示すように、従来のミキサーの容器部110は、カップ111と容器台112と刃部113とを備えている。
カップ111は、調理物を収容可能なカップ状の部位であり、略円筒状の部位である側周部111aを備えている。
【0005】
容器台112は、容器部110を本体部(図示せず)に連結する部位であり、略円筒状の部材により構成され、その円筒の内部において、軸方向に垂直な支持面を備えた支持部112aが形成されている。
【0006】
刃部113は、カッター刃114と軸受ケース115と従動軸116と上部カップリング117を備えている。刃部113は、カップ111の内部で回転するカッター刃114を回転可能に支持する部位である。
【0007】
軸受ケース115は、従動軸116を回転自在に支持する部位であり、カップ111の孔部111cの内径に対応する略円柱状の基台部115aと、基台部115aの中心軸上に形成された略円柱状の軸受部115bと、基台部115aから半径方向外側に突設された鍔部115cを備えている。
【0008】
そして、カップ111の内面には、側周部111aの内周面から半径方向内側へ突出する凸部であるリブ部111dが形成されている。リブ部111dは、側周部111aの高さ方向の略全長に亘る範囲に形成されている。また、リブ部111dは、従動軸116に対して略平行に形成されている。
【0009】
図7で示したようなカップ内部にリブ部を備えたミキサーとしては、例えば、特許文献1に示されたものがある。切削性能の向上のためにリブ部を形成したミキサーでは、リブ部によって食材とカッター刃との接触回数を増大させているため、その結果、調理時の騒音が大きくなる傾向があった。ミキサーにおいて、食材の切削性能向上と静音性向上という各ニーズは背反するものであるが、近年では、切削性能と静音性の両立を図ったミキサーが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、斯かる現状の課題に鑑みてなされたものであり、切削性能の向上を図りつつ、静音化が図られたミキサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
即ち、本発明に係るミキサーは、食材を収容可能な中空円筒状の円筒部と、前記円筒部の内周面から半径方向内側に突設されるリブ部と、を有するカップと、前記カップの内部に配置され、回転軸によって回転可能に支持されるカッター刃と、を有する容器部と、前記円筒部の軸芯を上下に向けた姿勢で前記容器部を支持するとともに、前記回転軸を駆動する本体部と、を備えるミキサーであって、前記カップは、前記円筒部の下端部より半径方向内側に延設される底部を備え、前記円筒部の内周面と前記底部が、内R形状を有する曲面部で接続されており、前記リブ部は、前記カッター刃の回転方向における上手側の側部に傾斜面を有し、前記傾斜面は、前記底部側から前記円筒部側へ向かうにつれて、前記カッター刃の回転方向における下手側へ傾倒されているものである。
【0014】
また、本発明に係るミキサーは、前記リブ部は、前記底部側から前記円筒部側へ向かうにつれて前記回転軸に直交する平面による断面積が縮小する略三角錐状の形態を有するものである。
【0015】
また、本発明に係るミキサーにおいて、前記リブ部の前記底部からの高さが、前記カッター刃の直径の1.0倍を超え、かつ、1.5倍未満の高さであるものである。
【0016】
また、本発明に係るミキサーにおいて、前記リブ部の前記底部からの高さが、前記円筒部の内径寸法の0.5倍を超え、かつ、0.8倍未満の高さであるものである。
【0017】
また、本発明に係るミキサーは、前記容器部は、前記容器部を前記本体部に連結する部位であり、前記回転軸に垂直な面を備えた支持部をさらに有し、前記支持部は、前記カップ部の前記底部の下方に位置するものである。
【0018】
また、本発明に係るミキサーは、前記リブ部が、
前記底部から前記曲面部を経て前記円筒部へ至る範囲に形成されているものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
本発明に係るミキサーによれば、カップの底部において、調理物を含む流体を曲面部に沿って流動させることで、カップと調理物の衝突音の発生を抑制することができる。これにより、ミキサーから発せられる騒音を低減することができる。
【0021】
また、本発明に係るミキサーによれば、リブ部によって、調理物を含む流体を確実にカッター刃へ導く流れを形成することができる。これにより、ミキサーから発せられる騒音を低減しつつ、切削性能を向上させることができる。
【0022】
また、本発明に係るミキサーによれば、リブ部によって、調理物を含む流体の流れを整流し、騒音の発生を抑制することができる。
【0023】
また、本発明に係るミキサーによれば、調理物を含む流体の上下への移動距離を抑制し、落差を低減することで、調理物を含む流体とカッター刃との衝突音を抑制するとともに、調理物とカッター刃との接触頻度を増大させて、切削性能を向上させることができる。
【0024】
また、本発明に係るミキサーによれば、調理物の上下への移動距離を抑制し、落差を低減することで、調理物を含む流体とカッター刃との衝突音を抑制するとともに、調理物とカッター刃との接触頻度を増大させて、切削性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るミキサーの全体構成を示す正面図。
【
図2】本発明の一実施形態に係るミキサーの全体構成を示す断面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係るミキサーの容器部を示す図、(a)平面図、(b)正面断面図。
【
図4】容器部を構成するカップを示す図、(a)平面図、(b)底面図。
【
図7】従来のミキサーの容器部を示す図、(a)平面図、(b)正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明では、
図1、
図2、
図3、
図5、
図6において矢印で示すように、ミキサーの上下方向を規定している。
【0027】
(ミキサーの全体構成)
図1および
図2に示すミキサー1は、本発明に係るミキサーの一実施形態であり、容器部10と本体部20を備えている。
容器部10は、ミキサー1による調理物(果物、野菜等の食材)を収容可能な容器状の部位であり、本体部20の上方に配置される。
本体部20は、容器部10を着脱自在に支持する部位であるとともに、容器部10を駆動する手段となる部位であり、卓上等の水平面に配置した状態で使用される。
【0028】
(容器部)
図1~
図3に示すように、容器部10は、カップ11と容器台12と刃部13とを備えている。そして、容器部10は、カップ11と容器台12と刃部13に分解して洗浄を行うことが可能であり、手入れが容易である。
【0029】
カップ11は、
図3~
図6に示すように、調理物を収容可能なカップ状の部位であり、略円筒状の部位である側周部11aと、側周部11aの下端に連続する略円形の底部11bを備えている。カップ11は、底部11bの中心において、孔部11cが形成されている。また、側周部11aと底部11bは、曲面部11dによって連続されている。曲面部11dは、側周部11aと底部11bの境界の隅部を段差なく内R曲面によって接続する部位である。また、カップ11は、外周面において取手部11eを備えており、食材を投入するための上端開口は蓋部11fによって開閉可能に構成されている。
【0030】
さらに、カップ11の内面には、底部11bから曲面部11dを経て側周部11aに至る範囲において、側周部11aの内周面から半径方向内側へ突出する凸部であるリブ部19が形成されている。リブ部19は、底部11bから離間するほど、側周部11a内面からの高さおよび平面視における幅が小さくなる形状を有している。
【0031】
即ち、ミキサー1では、リブ部19が、底部11bから曲面部11dを経て側周部11aへ至る範囲に形成されている。このような構成のミキサー1によれば、リブ部19によって、調理物を確実にカッター刃14へ導く流れを形成することができる。これにより、ミキサー1から発せられる騒音を低減しつつ、切削性能を向上させることができる。
【0032】
図1~
図3に示すように、容器台12は、容器部10を本体部20に連結する部位であり、略円筒状の部材により構成され、その円筒の内部において、軸方向に垂直な支持面を備えた支持部12aが形成されている。また、容器台12は、支持部12aの軸心上に孔部12bが形成されている。
【0033】
刃部13は、カッター刃14と軸受ケース15と従動軸16と上部カップリング17を備えている。刃部13は、カップ11の内部で回転するカッター刃14を回転可能に支持する部位である。
【0034】
軸受ケース15は、従動軸16を回転自在に支持する部位であり、カップ11の孔部11cの内径に対応する略円柱状の基台部15aと、基台部15aの中心軸上に形成された略円柱状の軸受部15bと、基台部15aから半径方向外側に突設された鍔部15cを備えている。
【0035】
従動軸16は、軸受部15bにおいて、軸受部材15dを介して、軸受ケース15の中心軸上で回転可能に支持されている。従動軸16の上端部には、カッター刃14が固定されており、従動軸16の下端部には、上部カップリング17が固定されている。
【0036】
容器台12の上端内周部には、カップ11の下端部に形成された雄ネジ11gに対応する雌ネジ12cが形成されており、雌ネジ12cと雄ネジ11gを螺合させることによって、カップ11と容器台12を一体化することができるように構成している。容器台12の支持部12a上には、刃部13を位置決めするための凸状の位置決め部12dを形成している。
【0037】
また、カップ11と容器台12を一体化するに際し、容器台12の支持部12aの上に刃部13を位置決め部12dで位置決めして配置しておき、軸受ケース15の基台部15aをカップ11の孔部11cに挿入させながら、カップ11の底部11bと支持部12aによって、鍔部15cを狭圧することで、カップ11と容器台12と刃部13を一体化する構成としている。なお、カップ11と刃部13の間にはパッキン18が介設されている。
【0038】
このように、容器部10では、カップ11と容器台12の間が、底部11bとパッキン18と鍔部15cと支持部12aによって、4重の層からなる構成としている。
【0039】
一方、
図7(a)(b)に示すように、従来のミキサーの容器部110では、カップ111に底部がないため、カップ111と容器台112の間は、パッキン118と鍔部115cと支持部112aによって、3重の層からなる構成としている。
【0040】
即ち、本発明の一実施形態に係るミキサー1では、容器部10に底部11bを設け、容器部10の下方をより多層化して厚みを増すことで、カップ11内で生じた騒音が容器部10の下部から外部に漏れ出ることを抑制することが可能になっている。
【0041】
また、容器部10では、底部11bの厚みに比して支持部12aの厚みを薄くしている。容器部10では、底部11bを設けることで、支持部12aの厚みを薄くすることが可能になり、これにより、ミキサー1を上下方向におけるコンパクト化を図ることが可能になっている。
【0042】
また、容器部10では、
図5、6に示すように、カップ11の略円筒状の側周部11aの形状を、下方に向かうにつれて肉厚となるように内周面側に若干傾斜を設けている。容器部10における主な騒音の発生場所はカッター刃14の周囲であるため、カッター刃14に近い部分の側周部11aをより肉厚にすることで、カップ11の外部への騒音の漏出を抑制できる。
【0043】
(リブ部)
ここで、リブ部19の形状について、さらに詳細に説明する。
図4~
図6に示すように、カップ11に形成されるリブ部19は、底部11b側を底面とする略三角錐状の形状を有しており、第一傾斜面19aと第二傾斜面19bを備えている。即ち、リブ部19は、三角錐において底面以外に三つ存在する面のうち、第一の面を側周部11aの内周面側に向け、第一傾斜面19aを第二の面とし、第二傾斜面19bを第三の面とした形態を有している。第一傾斜面19aは、カッター刃14の回転方向におけるリブ部19の上手側の側部に形成された面部である。即ち、第一傾斜面19aは、リブ部19におけるカッター刃14の刃先に対面する側の側部に設けられている。このような構成においては、カッター刃14の刃先によって付勢された調理物は、第一傾斜面19aに沿って流れる。
【0044】
即ち、ミキサー1のリブ部19は、底部11b側から側周部11a側へ向かうにつれて従動軸16に直交する平面による断面積が縮小する略三角錐状の形態を有している。このような構成のミキサー1によれば、リブ部19によって、調理物を含む流体の流れを整流し、撹拌音の発生を抑制することができる。
【0045】
また、第二傾斜面19bは、リブ部19のカッター刃14の回転方向における下手側の側部に形成された面部である。なお、第一傾斜面19aおよび第二傾斜面19bは、平面状であってもよいし、曲面状であってもよい。
【0046】
また、リブ部19は、第一傾斜面19aと第二傾斜面19bの境界において、稜線19cが形成されている。本実施形態で示したリブ部19では、第一傾斜面19aと第二傾斜面19bは、側周部11aに対して、適宜曲面や平面を介して滑らかに接続されている。
【0047】
リブ部19の稜線19cは、底部11b側(下端側)から側周部11a側(上端側)側に向かうにつれて、カッター刃14の回転方向における下手側に傾倒されている。これにより、第一傾斜面19aは、底部11b側(下端側)から側周部11a側(上端側)に向かうにつれて、先上がりとなる面を構成している。このような構成においては、カッター刃14の刃先によって付勢された調理物は、第一傾斜面19aに沿って、下方から上方に向けて流れる。
【0048】
即ち、ミキサー1のリブ部19は、カッター刃14の回転方向における上手側の側部に第一傾斜面19aを有し、第一傾斜面19aは、底部11b側から側周部11a側へ向かうにつれて、カッター刃14の回転方向における下手側へ傾倒されている。このような構成のミキサー1によれば、リブ部19によって、調理物を含む流体の流れを整流し、撹拌音の発生を抑制することができる。
【0049】
また、ミキサー1では、リブ部19の高さ(底部11bから側周部11a側(上端側)端部までの距離)を、カッター刃14の直径を基準に設定している。具体的には、ミキサー1では、リブ部19の高さを、カッター刃14の直径の1.0倍を超え、かつ、1.5倍未満の高さとしている。その結果、ミキサー1では、リブ部19の高さが、カップ11の側周部11aの高さの1/2未満となっており、従来のリブ(
図7(b)参照)に比べて、カップの高さに対するリブ部の高さの割合が低く抑えられている。なお、ミキサー1において、カッター刃14の直径と側周部11aの内径には所定の相関関係があるため、カッター刃14の直径を基準とする代わりに、側周部11aの内径を基準としてリブ部19の高さを設定してもよい。
【0050】
即ち、ミキサー1では、リブ部19の底部11bからの高さを、カッター刃14の直径の1.0倍を超え、かつ、1.5倍未満の高さとしている。また、ミキサー1では、リブ部19の底部11bからの高さを、側周部11aの内径寸法の0.5倍を超え、かつ、0.8倍未満の高さとしている。このような構成のミキサー1によれば、調理物を含む流体の上下への移動距離を抑制し、落差を低減することで、調理物とカッター刃14の衝突音の発生を抑制するとともに、調理物とカッター刃14との接触頻度を増大させて、切削性能を向上させることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、リブ部19を2本備えた容器部10を例示しているが、リブ部19の本数はこれに限定されるものではなく、1本でも3本以上でもよい。しかしながら、容器部10の静音化の観点においては、リブ部19の本数を2本とすることが好ましい。
【0052】
(本体部)
図1、2に示すように、本体部20は、容器部10を下方より支持する部位であるとともに、容器部10の刃部13を駆動する駆動機構を備えるものであり、本体ケース21とモータ22とモータケース23と消音ケース24を備えている。
【0053】
本体ケース21は、本体部20の外殻を構成する中空円筒状の筐体であり、上端部21aは蓋状に封止されており、下端部21bは開放されている。上端部21aには、上方に向けて突出する爪状の位置決め部21cが複数形成されている。また、上端部21aの円筒軸心上には、孔部21dが形成されている。そして、本体ケース21は、その内部にモータケース23および消音ケース24を収容可能な空間が確保されている。なお、本体ケース21は、外殻内に吸音材からなる層を備えている。吸音材としては、例えば、アルミニウム等の金属製のメッシュ層で構成され、層内に多数の気泡部を有したものを用いることができる。
【0054】
モータ22は、容器部10の刃部13を駆動する駆動源であり、モータブラケット22aに対して、コア22b、ロータ22c、駆動軸22d等が組み付けられている。モータ22は、所謂両軸モータであり、コア22bおよびロータ22cを挟んで軸方向の両側に駆動軸22dが突出されている。モータ22は、家庭用コンセント(図示せず)にプラグ40を差し込むことで電源が供給され、本体部20の外周面に配置されたスイッチ41の操作によって、モータ22のON-OFFやモード選択(回転数の変更)を行うことができるように構成されている。モータ22に接続されるプラグ40の配線は、本体ケース21内に配置された図示しないリールによって巻取りおよび巻出し可能に構成されている。
【0055】
また、モータ22の駆動軸22dの上端には、下部カップリング25が固定されている。下部カップリング25は、刃部13の上部カップリング17に係合される部材である。そして、モータ22の駆動軸22dの下端には、モータ22を冷却するための冷却ファン26が固定されている。
【0056】
そして、モータ22および冷却ファン26は、モータケース23に収容されている。また、モータ22は、モータケース23ごと消音ケース24に収容された状態で、本体ケース21の内部に収容されている。
【0057】
モータケース23はモータ22を覆う中空円筒状の筐体であり、円筒部23aと底部23bと蓋部23cを備えている。平面視において略円形である底部23bの中心上には吸気孔23dが形成されている。即ち、モータケース23は、円筒部23aの上端部は、蓋部23cによって封止され、円筒部23aの下端部は、底部23bに形成された吸気孔23dによって開放されている。円筒部23aと蓋部23cとの嵌合部分には、半径方向に貫通する複数の排気孔23fが形成されている。排気孔23fにより、モータケース23の内部と外部とが連通されている。
【0058】
モータ22は、モータブラケット22aをモータケース23の蓋部23cに対してネジで固定することによって、モータケース23の内部に吊設されている。モータ22は、円筒部23aの円筒軸心に対して駆動軸22dの軸心を一致させた姿勢で、モータケース23内に配置されている。
【0059】
消音ケース24は、モータケース23を収容可能な中空円筒状の筐体であり、円筒状の隔壁部24aと、隔壁部24a内において該隔壁部24aの円筒軸に直交する支持面を構成する支持部24bを備えている。また、消音ケース24は、下端部を略外側へ折り返した部位である折り返し部24cを備えている。折り返し部24cは、消音ケース24を覆うように配置した本体ケース21の下端部21bに当接され、本体ケース21とともに本体部20の外殻を構成している。折り返し部24cには、本体ケース21の内部と外部を連通する排気孔27が形成されている。排気孔27は、長穴状の孔部であり、円周方向に等間隔で複数(本実施形態では12箇所)形成されている。また、消音ケース24の支持部24bには、円筒軸方向に貫通する吸気孔24d・24eが形成されている。吸気孔24dは、平面視において円形である支持部24bの中心に形成された円形の孔部であり、吸気孔24eは、吸気孔24dの周囲に等間隔で形成された長穴状の孔部である。
【0060】
モータケース23と消音ケース24は、いずれも中空円筒状で、消音ケース24がモータケース23に対して一回り大きい大きさを有しており、消音ケース24の内部にモータケース23を挿通可能に構成されている。モータケース23は、底部23b側の軸方向端面が消音ケース24の支持部24bに対面するように消音ケース24内に配置されており、底部23bと支持部24bの間には、モータケース23の振動を吸収するためのバネ部材28が介設されている。モータケース23を、弾性体(バネ部材28)を介して支持する構造とすることで、モータ22の駆動軸22dと刃部13の従動軸16を調心することができ、駆動軸22dと従動軸16の芯ずれに起因する振動の発生を抑制することができる。そして、このような振動は騒音の発生原因ともなるため、振動の発生を抑制することによって、モータケース23からの騒音の発生を抑制することができる。
【0061】
モータケース23の外周部には、周方向に凹部23eが形成されており、該凹部23eにOリング29が嵌め入れられている。そして、モータケース23を消音ケース24に挿入した状態で、モータケース23と消音ケース24の間に弾性部材たるOリング29が介設されるように構成している。なお、本実施形態では、弾性部材として、モータケース23と消音ケース24の間にOリング29を介設する構成を例示しているが、他の形態の弾性部材を用いる構成としてもよく、板状のゴム部材を巻きつけたり、あるいは、スポンジ状の部材を隙間に充填したりしてもよい。さらに、本実施形態では、モータケース23と消音ケース24の間における上部の空間にOリング29を配置する構成を例示しているが、弾性部材の配置場所は、排気を堰き止める(完全に封止する)ことがない場所であればよく、また複数の場所に配置してもよい。
【0062】
また、本体部20は、消音ケース24の下方において、フード部30を備えている。そして、本体部20は、フード部30の下端において、複数の脚部31を備えている。
【0063】
(フード部)
フード部30は、モータ22の駆動軸22dの回転半径方向における、吸気経路の外部に対する開口である吸気孔24d・24eと排気経路の外部に対する開口である排気孔27との間において、本体部20から突設される部位である。フード部30は、排気孔27より排気された熱気を帯びた空気が、再び吸気孔24d・24eへ侵入するのを遮る壁を構成している。このように、ミキサー1においては、排気孔27から排気された空気が吸気孔24d・24eに直接吸気されることが抑制でき、モータ22の冷却性能を確保しつつ、ミキサー1の静音化を図ることができる。
【0064】
また、排気孔27は、駆動軸22dの軸心方向および駆動軸22dに直交する方向に対して傾斜して方向に開口されている。即ち、本体部20では、排気孔27から発せられた音がユーザーに直達しない向きに排気孔27を形成しているため、ユーザーの感覚としても静音化が感じられる構成としている。
【0065】
(調理物の流動状況について)
ここでは、ミキサー1における調理物を含む流体の流動状況について、説明する。
なお以下では、説明の便宜上、「調理物を含む流体」を単に「流体」とも呼ぶものとする。
【0066】
図7(b)に示すように、従来のミキサーにおける容器部110では、カップ111内の底周辺に段差や隙間が存在しているため、流体が段差に衝突したり、調理物が隙間に引っかかったりして、カップの底周辺で流体が乱雑に流動することによって騒音が発生している。
【0067】
一方、
図3(a)(b)に示すように、ミキサー1における容器部10では、カップ11の曲面部11dによって、カップ11の底周辺がすり鉢状となっているため、流体が曲面部11dの内R形状に沿って滑るように流動する。このため、容器部10では、カップ11の底周辺で流体が滑らかに流動し、カップ11と流体が衝突するときに発生する騒音が従来に比して抑制されている。
【0068】
さらに、ミキサー1における容器部10では、刃部13の軸受ケース15が略円錐状であり、従動軸16側から底部11b側に向けて先下がりとなる傾斜面を有している。このため容器部10では、底部11bからカッター刃14へ向かう流体が、軸受ケース15に沿って滑るように流動するため、曲面部11dから軸受ケース15を経てカッター刃14へ向かう流体の流れがより滑らかになっている。
【0069】
また、
図7(b)に示す従来の容器部110では、カッター刃114の回転時において、流体は、リブ部111dに沿ってカップ111の最上部まで上昇された後に、カップ111の中央をカッター刃114に向かって落下するように流動する。このとき流体は、およそカップ111の高さ分だけ落下されてカッター刃114に衝突するため、カッター刃114に激しく衝突することで、騒音となる衝突音が発生している。
【0070】
一方、
図3(a)(b)に示す容器部10では、カッター刃14の回転時において、流体は、リブ部19の第一傾斜面19aに沿って滑らかに上昇された後、カップ11の中央に向かって落下するように流動する。容器部10では、カップ11の高さの1/2未満にリブ部19の高さが抑えられているため、従来に比して、流体の上昇する高さが低く抑えられており、カッター刃14に向けて落下するときの落差が小さいため、流体とカッター刃14との衝突が従来に比して穏やかであり、衝突音の発生が抑制されている。
【0071】
また、容器部10では、リブ部19に第一傾斜面19aを形成することで、第一傾斜面19aに沿って緩やかにカップ11の上部まで流体を導くことができるため、リブ部19と流体が衝突するときの衝突音の発生が抑制されている。
【0072】
さらに、容器部10では、流体の上昇する高さが低く抑えられていることから、カップ11内における流体の移動距離が低減されている。このため、流体とカッター刃14の接触間隔が短くなり、かつ、接触頻度が高まることによって、調理物の切削性能が向上されている。即ち、容器部10では、調理性能を向上させながら、静音化を図ることが可能になっている。
【0073】
さらに、
図7(a)(b)に示すような従来の容器部110では、リブ部111dが、カップ111の下端まで到達していないため、カップ111の底周辺では、カッター刃114の下刃114aは、リブ部111dよりも下側(即ち、リブ部111dが存在しないところ)で調理物を切削する。そして、リブ部111dが存在しないところでは、流体が乱雑に流動するため、従来の容器部110においては、カップ111の底周辺で流体とカッター刃114との衝突音が大きくなる傾向があった。
【0074】
一方、
図3(a)(b)に示す容器部10では、底部11bから側周部11aに至る範囲にリブ部19を設けているため、カッター刃14の下刃14aより下方にリブ部19が存在し、カッター刃14全体がリブ部19の下端よりも上方に位置している。このため、容器部10では、カッター刃14は、リブ部19によって整流され、規則的に導かれてくる調理物を切削することとなるため、従来の構成に比して調理物とカッター刃14との衝突音の発生が抑制されている。
【0075】
また、容器部10では、底部11bの周囲に曲面部11dを形成することによって、カップ11とカッター刃14との距離を従来の容器部(
図7(b)参照)に比して近づけた構成としている。このような構成では、カップ11の底周辺の空間を狭めることで、調理物をカッター刃14の届く範囲に自然と集めることができるため、カップ11の底周辺に存在する調理物のカッター刃14への切削頻度をより高めることができ、これによりミキサー1の切削能力の向上が図られている。
【0076】
(静音化の確認結果)
本発明の一実施形態に係るミキサー1に対して、音の大きさ(ラウドネス)の低減効果の確認を行った。「音の大きさ(ラウドネス)」は、騒音値(dB)とは異なり、人の聴覚が感じる音の強さを表す感覚量であり、ユーザーがミキサー1の音をどのように感じるか、という観点で評価を行った。
【0077】
ミキサー1は、カップ11において、底部11bと曲面部11dを有するとともに、第一傾斜面19aが形成されたリブ部19を備えている。また、ミキサー1は、リブ部19の高さが67mm、カッター刃14の直径が64mm、円筒部11aの内径が110mmである。つまり、ミキサー1では、リブ部19の高さを、カッター刃14の直径の1.0倍を超え、かつ、1.5倍未満の高さとしている。また、ミキサー1では、リブ部19の高さを、円筒部11aの内径の0.5倍を超え、かつ、0.8倍未満の高さとしている。なお、
図7に示すような従来のミキサーでは、撹拌能力の向上を図るべくリブ部の長大化が図られており、リブ部の高さが、カッター刃の直径の2.0倍を超え、かつ、カップの円筒内径の1.0倍を超えるほどの高さとなっている。
【0078】
このような構成を採用したミキサー1では、従来の構成(
図7(b)参照)のミキサーに比べ、音の大きさ(ラウドネス)が約7(sone)低減されることが確認できた。ミキサー1は、ユーザーにとって、静音化が図られていると感じられる構成であることが確認できた。
【0079】
即ち、本発明の一実施形態に係るミキサー1は、食材を収容可能な中空円筒状の円筒部である側周部11aと、側周部11aの内周面から半径方向内側に突設されるリブ部19と、を有するカップ11と、カップ11の内部に配置され、従動軸16によって回転可能に支持されるカッター刃14と、を有する容器部10と、側周部11aの軸芯を上下に向けた姿勢で容器部10を支持するとともに、従動軸16を駆動する本体部20と、を備えるものであって、カップ11は、側周部11aの下端部より半径方向内側に延設される底部11bを備え、側周部11aの内周面と底部11bが、内R形状を有する曲面部11dで接続されている。このような構成のミキサー1によれば、カップ11の底部11bにおいて、調理物を含む流体を曲面部11dに沿って流動させることによって、カップ11と調理物を含む流体の衝突音の発生を抑制することができる。これにより、ミキサー1から発せられる騒音を低減することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ミキサー
10 容器部
11 カップ
11a 側周部
11b 底部
11d 曲面部
14 カッター刃
19 リブ部
19a 第一傾斜面
20 本体部