(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】加熱調理器用トッププレート
(51)【国際特許分類】
F24C 15/10 20060101AFI20220803BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20220803BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
F24C15/10 B
H05B6/12 305
C03C17/34 A
(21)【出願番号】P 2020052018
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000244305
【氏名又は名称】鳴海製陶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 忠伸
(72)【発明者】
【氏名】鏡味 恭英
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-215018(JP,A)
【文献】特開2017-167545(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068393(WO,A1)
【文献】特開2008-016318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0373682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
F24C15/10
G09F 9/00
G03B21/56-21/64
C03C15/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光を投光するための投影装置が筐体内に内蔵された加熱調理器における上記筐体の上面に配置される加熱調理器用トッププレートであって、
透光性ガラスからなる基板と、該基板の裏面に形成されたスクリーン面とを有するガラススクリーン板を少なくとも一部に備え、
上記ガラススクリーン板は、裏面側から上記スクリーン面上に投光された投影光の映像を、上記基板の表面側から視認可能であり、
上記スクリーン面は、上記基板の裏面に積層された無機顔料を含有する顔料層を有すると共に、可視光における拡散透過率が
13.2~90%である、加熱調理器用トッププレート。
【請求項2】
上記スクリーン面は、可視光における拡散透過率が13.2~90%(ただし50%以下を除く)である、請求項1に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項3】
上記スクリーン面は焼成層からなる、請求項1又は2に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項4】
上記顔料層は、金属酸化物により上記無機顔料を被覆してなるパール調材料を含有する、請求項1
~3のいずれか一項に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項5】
上記顔料層は、ガラス組成物及び上記無機顔料を含有するマット装飾用ガラスからなる、請求項1
~3のいずれか一項に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項6】
上記基板は、低膨張ガラスセラミックスからなる、請求項1~
5のいずれか一項に記載の加熱調理器用トッププレート。
【請求項7】
上記基板の裏面には、上記スクリーン面以外の部分に、遮光層を形成してなる遮光面が設けられている、請求項1~
6のいずれか一項に記載の加熱調理器用トッププレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器用トッププレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス板よりなるトッププレートが上部に設置された、電磁調理器やガス調理器などの加熱調理器がある。加熱調理器には、例えば、特許文献1に記載されているように、火力調整量等の情報がトッププレート上にて確認できるようになっているものがある。トッププレート上にて確認できる表示は、加熱調理器の筐体内に配置された液晶等の表示装置の表示が、トッププレートを透過して表示されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、トッププレート上から十分な視認性を確保して情報を確認するためには、液晶等の表示装置をトッププレートに近付けて配置することが必要となる。その場合、加熱調理器の加熱部によって加熱されて高温となった容器等を、加熱部から表示装置に近いトッププレート上にずらして配置した場合、熱により表示装置が故障する等の不具合が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、表示装置を比較的遠くに配置しても十分に視認性を確保できる加熱調理器用トッププレートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、投影光を投光するための投影装置が筐体内に内蔵された加熱調理器における上記筐体の上面に配置される加熱調理器用トッププレートであって、
透光性ガラスからなる基板と、該基板の裏面に形成されたスクリーン面とを有するガラススクリーン板を少なくとも一部に備え、
上記ガラススクリーン板は、裏面側から上記スクリーン面上に投光された投影光の映像を、上記基板の表面側から視認可能であり、
上記スクリーン面は、上記基板の裏面に積層された無機顔料を含有する顔料層を有すると共に、可視光における拡散透過率が13.2~90%である、加熱調理器用トッププレートにある。
【発明の効果】
【0007】
上記加熱調理器用トッププレートのガラススクリーン板は、上記のごとく、透光性ガラスからなる基板の裏面に、無機顔料を含有する顔料層を有するスクリーン面を備えている。このスクリーン面に投影光を照射することにより、スクリーン面上に映像が形成される。そして、基板が透光性ガラスからなるため、スクリーン面上の映像は、基板の表面側から確認することができる。ここで、スクリーン面の可視光における拡散透過率が上記特定の範囲にある。それゆえ、スクリーン面上の映像は、高い視認性を確保したうえで基板の表面側から確認することが可能となる。
【0008】
トッププレートに、このようなガラススクリーン板を用いることにより、例えば後述するプロジェクタのようなスクリーン面から比較的遠い位置に配置してもスクリーン面上に投影光を結像させることが可能な投影装置を採用することができる。
【0009】
加熱調理器用トッププレートは、加熱装置を備えるため、トッププレート自体が高温に晒される場合があり、その近傍に表示装置を配置することが困難である。そのため、加熱調理器用トッププレートの少なくとも一部に上記ガラススクリーン板を採用することが、表示装置である投影装置の配置位置の自由度向上に効果的である。
【0010】
また、ガラススクリーン板のスクリーン面は、顔料層を有している。そのため、基板の表面側から裏面側を透視しにくくすることができる。それゆえ、スクリーン面に映像を形成していない場合において、トッププレートの表面側から筐体内部の装置類を見えにくくすることができ、投影装置の設置位置の自由度向上をさらに高めることができる。
【0011】
以上のごとく、上記態様によれば、表示装置を比較的遠くに配置しても十分に視認性を確保できる加熱調理器用トッププレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1における、トッププレートを上から見た図。
【
図2】
図1におけるII-II線矢視断面相当の断面図。
【
図3】実施形態1における、スクリーン面周辺の断面図。
【
図4】実施形態1における、スクリーン面の拡大断面図。
【
図5】評価試験1における、実施例2のスクリーン面の拡散透過率を示すグラフ。
【
図6】評価試験2における、実施例5のスクリーン面の拡散透過率を示すグラフ。
【
図7】評価試験2における、比較例3のスクリーン面の拡散透過率を示すグラフ。
【
図8】実施形態3における、トッププレートを備えた加熱調理器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記顔料層は、金属酸化物により上記無機顔料を被覆してなるパール調材料を含有するものとすることができる。この場合には、トッププレートの表面側から、投影光の映像を確実に視認することができると共に、トッププレートを明るいパール調の色合いとすることができ、外観意匠性を向上させることができる。
【0014】
パール調材料は、可視光を乱反射させることができる。そのため、スクリーン面に映像を形成していないときであっても、トッププレートの表面側から、裏面側が見えにくい。それゆえ、トッププレートを備えた加熱調理器の筐体内部が見えにくく、外観意匠性を向上させることができる。
【0015】
上記顔料層は、ガラス組成物及び上記無機顔料を含有するマット装飾用ガラスからなるものとすることができる。この場合には、トッププレートの表面側から、投影光の映像を確実に視認することができると共に、トッププレートを艶のないマットな表現とすることができ、外観意匠性を向上させることができる。
【0016】
スクリーン面の可視光における拡散透過率は、10~80%であることが好ましい。この場合には、トッププレートの表面側から、投影光の映像を明確に視認することができる。
【0017】
上記基板は、低膨張ガラスセラミックスからなるものとすることができる。この場合には、基板は、温度変化によって膨張又は収縮しにくい。その結果、加熱や冷却によって、破損しにくい。
【0018】
上記基板は、リチウムアルミノシリケートガラスからなるものとすることができる。この場合には、機械的強度及び耐熱性を十分に確保しやすい。
【0019】
ガラススクリーン板は、表面側に基板が配置されていると共に、基板の裏面にスクリーン面が形成されている。それゆえ、トッププレートの機械的強度や耐熱性を確保しやすい。
【0020】
上記基板の裏面には、上記スクリーン面以外の部分に、遮光層を形成してなる遮光面が設けられているものとすることができる。この場合には、トッププレートの表面側から、加熱調理器の筐体内部の装置類を見えにくくすることができる。
【0021】
遮光層は、顔料層と同時に焼結させることにより形成することができる。この場合には、製造時の工程合理化を図ることが可能となる。なお、遮光層は、顔料層の焼結後に別途焼結させたものとすることができる。
【0022】
トッププレートは、投影装置からの投影光の映像を視認可能となるように構成されている。それゆえ、表示の自由度を向上させることができる。
【0023】
上記トッププレートは、投影装置からの投影光をミラー部により反射させて上記スクリーン面に向かわせることにより、表面側から映像を視認できるものとすることができる。この場合には、ガラススクリーン板や投影装置の設置位置の自由度向上を一層高めることができる。
【0024】
(実施形態1)
加熱調理器用トッププレートの実施形態につき、
図1~
図4を参照して説明する。
本形態の加熱調理器用トッププレート10は、
図2に示すごとく、投影光60を投光するための投影装置6が筐体5内に内蔵された加熱調理器100における筐体5の上面に配置される。加熱調理器用トッププレート10は、透光性ガラスからなる基板3と、基板3の裏面32に形成されたスクリーン面2とを有するガラススクリーン板1を少なくとも一部に備える。ガラススクリーン板1は、裏面側からスクリーン面2上に投光された投影光60の映像を、基板3の表面31側から視認可能である。スクリーン面2は、基板3の裏面32に積層された無機顔料を含有する顔料層21を有すると共に、可視光における拡散透過率が4~90%である。
【0025】
トッププレート10は、例えば、電磁調理器やガス調理器等の加熱調理器100に設置することができる。本形態のトッププレート10は、電磁調理器に設置されている。
【0026】
本形態において、トッププレート10は、
図1に示すごとく、表示窓101と、加熱部102とを有する。
図2に示すごとく、ガラススクリーン板1におけるスクリーン面2が形成された範囲が、トッププレート10の表示窓101となっている。表示窓101において、トッププレート10の表面側から投影光の映像が視認可能となっている。また、加熱調理器100の筐体5によって囲われた内部空間50において、加熱部102の下側には加熱コイル(図示略)が設置されており、加熱部102に鍋等の被加熱物を載置することにより、加熱調理を行うことができるよう構成されている。なお、本明細書において、「上」、「下」の語は、実際に加熱調理器100のトッププレート10として使用する状態を基準として用いた。
【0027】
トッププレート10は、
図2、
図3に示すごとく、その裏面が、加熱調理器100の内部空間50に面するように配置されている。より具体的には、トッププレート10は、スクリーン面2を構成する顔料層21と、後述する遮光面4を構成する遮光層41とが、内部空間50に面するように配置されている。
【0028】
本形態において、透光性ガラスからなる基板3は、透光性の低膨張ガラスセラミックスからなる。本形態においては、トッププレート10全体が、基板3によって構成されている。また、基板3は、リチウムアルミノシリケートガラスからなる。基板3の厚みは、例えば2~6mmとすることができる。基板3は、Li2Oを16~30モル%、Al2O3を10~35モル%、及びSiO2を30~68モル%含有してなることが好ましい。
【0029】
基板3は、主結晶相にβ-石英固溶体を析出したものとすることができる。β-石英固溶体を析出した低膨張ガラスセラミックスの体積結晶化度は、約70%であり、結晶の大きさは0.1μm以下である。β-石英固溶体は負の膨張特性を示し、残存ガラス相の正の膨張特性と打ち消し合って熱膨張率がほぼゼロになる。屈折率(nD)は1.541であり、β-石英固溶体の析出結晶の大きさは0.1μm以下で可視光の波長より小さく、結晶相と残存ガラス相の屈折率もほぼ同程度であるため、光の散乱がなく、外観的には透明であり、可視光域の光をよく透過する。本明細書において、可視光とは、波長が500nm~700nmの光をいう。
【0030】
図2、
図3に示すごとく、基板3の裏面32には、スクリーン面2が形成されている。本形態においては、基板3の裏面32に、顔料層21が膜状に積層されており、その顔料層21の一部がスクリーン面2を構成している。
【0031】
スクリーン面2の拡散透過率は、10~80%であることが好ましい。スクリーン面2の拡散透過率は、UV分光光度計(JASCO社製、製品番号:V-570)を使用して測定することができる。拡散透過率とは、トッププレート10の裏面側からスクリーン面2へ入光する投影光60に対する、直進方向以外の方向にスクリーン面2を透過する投影光60の量の割合を意味する。つまり、スクリーン面2により拡散されて透過する投影光60の量の割合である。
【0032】
本形態においては、加熱部102を除く基板3の裏面32に、無機顔料221を含有する顔料層21が積層されている。本形態において、顔料層21は、
図4に示すごとく、金属酸化物222により無機顔料221を被覆してなるパール調材料22を含有する、パール調層である。顔料層21の厚みは、例えば、1μm~5μmである。顔料層21は、基板3の裏面32に、1層又は複数層積層することができる。
【0033】
顔料層21は、パール調材料22と耐熱樹脂との混合物であるパール調絵具を、パール調絵具層(図示略)として基板3に積層した後、焼成することにより、形成することができる。パール調材料22は、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化鉄(Fe2O3)等の金属酸化物222により無機顔料221を被覆してなる。また、耐熱樹脂としては、シリコーンレジンやシリカ質ゾル等がある。
【0034】
無機顔料221としては、例えば、マイカ(雲母)、カオリン、タルク、セリサイト、ピロフェライト、酸化アルミニウムなどがある。無機顔料221の色は特に限定されず、パール調材料22を含有する顔料層21は、その無機顔料221の色にパール調を加味した色を呈する。
【0035】
シリコーンレジン又はシリカ質ゾルは、パール調材料22と、基板3との間を結合する結合材として働く。シリコーンレジンとは、シロキサン結合を主骨格とする有機珪素化合物の重合体をいい、例えば、ストレートシリコンワニスKR271(信越化学製)、変性シリコンワニスKR211(同社製)などがある。必要に応じて、シリコーンレジンが溶解し得る有機溶剤を用いる。また、必要に応じてシリコーンレジンより燃焼が早く相溶性がある樹脂を増粘剤として使用することができる。また、シリカ質ゾルとしては、例えば、エチルシリケート等を加水分解して得られるシリカゾル、コロイド状シリカゾル等を用いることができる。
【0036】
焼成により顔料層21となるパール調絵具層に含まれているシリコーンレジンまたはシリカ質ゾルの有機官能基は、焼成中離脱して、
図4に示すごとく、基板3の裏面32のシラノール基(Si-OH基)との間で、シロキサン結合223を形成する。
【0037】
パール調絵具層に含まれているパール調材料22は、無機顔料221の表面に金属酸化物222の被膜を有する。金属酸化物222の被膜は表面積が非常に大きいため、表面活性が高く反応性に富む。このため、シリコーンレジンまたはシリカ質ゾルの有機官能基が焼成中離脱し、金属酸化物222が酸化チタンである場合、
図4に示すごとく、金属酸化物222の被膜の表面でSi-O-Ti結合224を形成する。Si-O-Ti結合224は、ガラスフラックスが溶融接着したときに形成される結合に比べて、やや疎であるため、基板3と顔料層21との熱収縮差を吸収する。このため、基板3と顔料層21との間で熱収縮差によってクラックが発生しにくい。ゆえに、透光性低膨張ガラスセラミックスである基板3本来の強度を劣化させることなく、耐衝撃性及び耐熱衝撃性の高いトッププレート10を得ることができると考えられる。
【0038】
図2、
図3に示すごとく、基板3の裏面32には、スクリーン面2以外の部分に、遮光層41を形成してなる遮光面4が設けられている。本形態において、遮光層41は、顔料層21の裏面に積層されている。そして、トッププレート10における遮光面4が形成された部分においては、遮光面4が可視光を遮るため、基板3の表面側から基板3の裏面側を視認することができないようになっている。
【0039】
遮光層41は、遮光性材料を、トッププレート10の裏面に塗布し、焼成することにより、形成することができる。顔料層21と遮光層41とは、同時に焼成することにより、形成したものであっても良いし、顔料層21の焼結後に、遮光層41を別途焼結させて形成したものであってもよい。
【0040】
遮光性材料としては、ラスター絵付け材料を用いることができる。また、遮光性材料としては、耐熱性を有すると共に遮光性を有する耐熱塗料などを用いることもでき、この場合、遮光層41は、遮光性材料を塗布し、乾燥・硬化することにより形成することもできる。
【0041】
ラスターとは、有機金属化合物の希釈溶液である。ラスター絵付け材料としては、例えば、Au、Pt、Pd、Rh、Ru、Bi、Sn、Ni、Fe、Cr、Ti、Ca、Si、Ba、Sr、Mg、Ag、Zr、In、Mn等の有機金属化合物の希釈溶液が挙げられる。これら有機金属化合物希釈溶液は任意の割合で複数混合することができる。
【0042】
スクリーン面2に投影光60を投光する投影装置6は、
図2、
図3に示すごとく、加熱調理器100の内部空間50において、スクリーン面2の下側に配置されている。投影装置6は、上側のスクリーン面2に向かって、投影光60を投影する。投影装置6としては、例えば、DLP方式、液晶方式、又はLCOS方式のプロジェクタとすることができる。
【0043】
投影装置6は、トッププレート10の裏面から所定距離離れて配置されている。トッププレート10の裏面から投影装置6までの上記所定距離は、例えば、1~10cmである。
【0044】
次に、本形態のトッププレート10の製造方法の一例について具体的に説明する。
まず、希薄なチタン酸水溶液中に、無機顔料221としてのマイカ粉体を懸濁させ、70~100℃に加温し、チタン塩を加水分解してマイカ粉体表面に水和酸化チタン粒子を析出させ、その後700℃~1000℃で焼成した。これにより、金属酸化物222である酸化チタンをマイカに被覆してなるパール調材料22を得た。
【0045】
次に、パール調材料22を7.0~29.5重量%と、シリコーンレジン14.5~24.5重量%と、有機溶剤3.0~8.0重量%と、増粘用樹脂38.0~75.5重量%とを混練して、ペースト状のパール調絵具を調製した。
【0046】
次に、パール調絵具を基板3の裏面にステンレス250メッシュを用いて印刷して、パール調絵具層を形成し(図示略)、その後、850℃にて焼成を行い、顔料層21を形成した。
【0047】
次に、Fe-Cr-Co黒色無機顔料を30重量%と、耐熱樹脂(有機溶剤50重量%含有)70重量%とを混合して、ペースト状の遮光性材料を調製した。これを、ステンレス250メッシュを用いて、顔料層21に積層するように印刷して遮光性材料層を形成した(図示略)。
【0048】
次に、遮光性材料層を積層した基板3を、200℃にて焼成して、
図2、
図3に示すごとく、顔料層21と遮光層41とを有するトッププレート10を得た。
【0049】
(評価試験1)
前述した実施形態1の構成において、トッププレートを作製し、表面側から映像を外観観察することにより評価を行った。具体的には、スクリーン面2の拡散透過率が異なる複数のトッププレート(実施例1~4)を作製し、評価した。また、比較例(比較例1、比較例2)のトッププレートも作製し、同様に評価を行った。詳細には、投影装置としてDLP方式のプロジェクタ(ULTIMEMS社製、HD301D1)を用意し、スクリーン面2から10cm離れた位置より投光し、スクリーン面2上に焦点距離を合わせて、トッププレートの表面側から映像を観察し、評価した。
【0050】
基板3は、透光性の低膨張ガラスセラミックスからなる、日本電気硝子(株)製の商品名「ステラシャイン(登録商標)」を用いた。スクリーン面2の拡散透過率が異なるそれぞれのトッププレートは、顔料層21となるパール調絵具の組成を変更することにより作製した。そして、作製したそれぞれのトッププレートについて、可視光における拡散透過率を測定した。
【0051】
実施例1~4及び比較例1、2のそれぞれの拡散透過率及びパール調絵具の組成を、表1に示す。各実施例及び比較例の製造方法については、前述した実施形態1と実質的に同じとした。なお、有機溶剤は3-メトキシ-3-メチル-ブタノールを使用し、増粘用樹脂はエチルセルロースを使用した。また、拡散透過率の測定結果の具体例として、実施例2の、500nm~700nmの波長範囲における拡散透過率を測定したグラフを、
図5に示した。
【0052】
【0053】
外観観察については、目視にて行い、以下の評価基準により評価した。その結果を表2に示す。
[評価基準]
◎:映像が詳細な部分まで明確に確認できた
〇:映像が明確に確認できた
×:映像が明確に確認できなかった
【0054】
【0055】
表2に示すごとく、拡散透過率が4%未満の比較例1の場合、トッププレートを表面側から見たときの映像は不鮮明であり、明確に確認できなかった。スクリーン面2を拡散透過する投影光の割合が少なく、明確に確認できる程度の映像が形成されなかったためと考えられる。
【0056】
拡散透過率が90%を超える比較例2の場合も、映像が不鮮明であり、明確に確認できなかった。投影光が過度に拡散されたことにより、形成された映像が不鮮明になったためと考えられる。また、比較例2では、スクリーン面2を滑らかな膜状に形成することが困難であった。パール調絵具の組成としてパール調材料の割合が高かったことが原因と考えられる。
【0057】
拡散透過率が4~90%の実施例1~4については、表面側から映像を明確に確認することができた。特に、拡散透過率が10~80%の実施例2及び実施例3の場合、映像の詳細な部分まで明確に確認することができた。スクリーン面2において、投影光が適度に拡散透過したことによって、映像が明確に確認できたと考えられる。
【0058】
(実施形態2)
本形態は、顔料層21を、マット装飾用ガラスとした形態である。
【0059】
本形態のトッププレート10は、基板3の裏面32に、ガラス組成物及び無機顔料を含有するマット装飾用ガラスを積層し、さらに、スクリーン面2以外の部分に、遮光層41を積層してなる。
【0060】
次に、本形態のトッププレート10の製造方法について説明する。
まず、基板3と同じ組成の低膨張ガラスフラックスを用意した。そして、この低膨張ガラスフラックス100重量部と、有機樹脂100重量部と、無機顔料とを混錬してガラスペーストを作製した。そして、加熱部102を除く基板3の裏面32に、上記ガラスペーストを、ステンレス#400メッシュを用いてスクリーン印刷法によって塗布し、850℃で熱処理として焼付けを行い、顔料層21であるマット装飾用ガラスを形成した。上記有機樹脂としては、アクリル系樹脂を用いた。
【0061】
上記ガラスペーストにおいて、無機顔料は、80重量%以下となるよう添加することが好ましい。80重量%を超えて含有する場合には、基板3との密着性が悪くなるおそれがある。
【0062】
上記無機顔料としては、例えば、白色無機顔料、黒色無機顔料、灰色無機顔料、黄色無機顔料、茶色無機顔料、緑色無機顔料、青色無機顔料、桃色無機顔料等がある。具体的には、上記白色無機顔料としては、例えば、TiO2、ZrO2、ZrSiO4、Al2O3、3Al2O3-2SiO2、Li2O・Al2O3・8SiO2等が挙げられる。
【0063】
上記黒色無機顔料としては、例えば、Cr-Fe系酸化物、Co-Mn-Cr-Fe系酸化物、Co-Ni-Cr-Fe系酸化物、Co-Ni-Cr-Fe-Mn系酸化物等が挙げられる。上記灰色無機顔料としては、例えば、Sn-Sb系酸化物、Sn-Sb-V系酸化物等が挙げられる。
【0064】
上記黄色無機顔料としては、例えば、Sn-V系酸化物、Zr-V系酸化物、Zr-Si-Pr系酸化物、Ti-Cr-Sb系酸化物等が挙げられる。上記茶色無機顔料としては、例えば、Zn-Al-Cr-Fe系酸化物、Zn-Mn-Al-Cr-Fe系酸化物等が挙げられる。
【0065】
緑色無機顔料としては、例えば、Ca-Cr-Si系酸化物、Cr-Al系酸化物、Co-Zn-Al-Cr系酸化物、Zr-Si-Pr-V系酸化物等が挙げられる。上記青色粉末としては、例えば、Co-Al-Zn系酸化物、Co-Al系酸化物、Zr-Si系酸化物等が挙げられる。上記桃色無機顔料としては、例えば、Mn-Al系酸化物、Ca-Sn-Si-Cr系酸化物、Sn-Cr系酸化物、Zr-Si-Fe系酸化物等が挙げられる。これらの顔料は、所望の色を得るように任意の割合で混合することが可能である。
【0066】
次いで、ステンレス#250メッシュを用いて、マット装飾用ガラスの裏面のスクリーン面2以外に、黒色のラスターペーストを塗布した。これを850℃にて再度焼付けし、遮光層41を形成した。ラスターペーストとしては、市販の黒色ラスターペーストを用いた。これにより、黒色で艶のない黒色マットのトッププレート10を得ることができた。
その他は、実施形態1と同様である。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0067】
(評価試験2)
前述した実施形態2の構成において、スクリーン面2の拡散透過率が異なる複数のトッププレート(実施例5、実施例6)を作製し、表面側から映像を外観観察することにより評価を行った。また、比較例3のトッププレートも作製し、同様に評価を行った。実施例5及び実施例6は、無機顔料として、(Co、Fe)(Fe、Cr)2O4(鉄、コバルト、クロムの複合酸化物)を使用し、比較例3は、ラスター絵付け材料であるAu-Pt-Siの希釈溶液を使用した。
【0068】
実施例5と実施例6との、それぞれの拡散透過率及びマット装飾用ガラスを形成するガラスペーストの組成について、表3に示す。また、比較例3では、20.6重量%のAuの希釈溶液(有機金属)と、15.3重量%のBiの希釈溶液(有機金属)と、18.7重量%のFeの希釈溶液(有機金属)と、2.3重量%のPtの希釈溶液と、10.1重量%のSiの希釈溶液と、6.0重量%のニトロセルロースと、27.0重量%の溶剤とを混錬してペーストを作製した。その他の製造方法については、実施形態2と実質的に同じとした。また、拡散透過率の測定結果の具体例として、実施例5及び比較例3の、500nm~700nmの波長範囲における拡散透過率を測定したグラフを、それぞれ
図6、
図7に示した。
【0069】
【0070】
外観観察の評価項目及び評価基準は、評価試験1と同様とした。外観観察の結果を、表4に示す。
【0071】
【0072】
表4に示すごとく、拡散透過率が4%未満の比較例3の場合、トッププレートを表面側から見たときの映像は不鮮明であり、明確に確認できなかった。評価試験1における比較例1の場合と同様、スクリーン面2を拡散透過する投影光の割合が少なく、明確に確認できる程度の映像が形成されなかったためと考えられる。
【0073】
拡散透過率が4~90%の実施例5及び実施例6については、表面側から映像を明確に確認することができた。特に、拡散透過率が10~80%の実施例5の場合、映像の詳細な部分まで明確に確認することができた。評価試験1における実施例1~4の場合と同様、スクリーン面2において、投影光が適度に拡散透過したことによって、映像が明確に確認できたと考えられる。
【0074】
(実施形態3)
本形態は、
図8に示すごとく、投影装置6からの投影光60を反射させるミラー部61を備えた形態である。
【0075】
本形態において、投影装置6及びミラー部61は、
図8に示すごとく、加熱調理器100の内部空間50内に配置されている。
【0076】
本形態において、投影装置6は、スクリーン面2に直接、投影光60を投光せず、ミラー部61を介して投影光60を投光している。ミラー部61は、スクリーン面2の下側に位置すると共に、投影装置6からの投影光60を反射させ、スクリーン面2に向かわせるよう、反射面が水平方向に対して傾斜するように配置されている。ミラー部61は、例えば、一般的なプロジェクタ用反射鏡とすることができる。また、ミラー部61は、2つ以上配置されていてもよい。つまり、投影装置6からの投影光60は、2つ以上のミラー部61によって反射され、スクリーン面2に向かうよう構成されていてもよい。
【0077】
ミラー部61と投影装置6とは、トッププレート10から所定距離離れて配置されている。また、投影装置6は、ミラー部61から所定距離離れて配置されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0078】
本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 ガラススクリーン板
10 トッププレート
100加熱調理器
2 スクリーン面
21 顔料層
221 無機顔料
3 基板
32 裏面
5 筐体
6 投影装置
60 投影光