(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】バッテリ、及びバッテリへの導電線の接続、取り外し方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/296 20210101AFI20220803BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20220803BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20220803BHJP
H01M 50/597 20210101ALI20220803BHJP
【FI】
H01M50/296
H01M50/249
H01M50/588
H01M50/597
(21)【出願番号】P 2018219039
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】坂上 翔
(72)【発明者】
【氏名】間 泰佑
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勝正
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/068896(WO,A1)
【文献】特開2001-256963(JP,A)
【文献】特開2018-142571(JP,A)
【文献】特開2011-138685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載して使用するバッテリであって、
導電体で形成され、上記車両の車体に取り付けられるバッテリケースと、
このバッテリケースに設けられ、車載電気機器に電力を供給する導電線が接続されるプラス端子と、
上記バッテリケースに設けられたマイナス端子と、
上記マイナス端子と上記バッテリケースを電気的に接続するように上記マイナス端子に取り付けられたグランド部材と、
上記プラス端子を覆うプラス端子カバーと、を有し、
上記グランド部材が上記マイナス端子に取り付けられた状態では、上記グランド部材が上記プラス端子カバーと当接することにより、上記プラス端子の露出が上記プラス端子カバーによって規制されることを特徴とするバッテリ。
【請求項2】
さらに、上記マイナス端子を覆うマイナス端子カバーを有し、上記マイナス端子カバーが上記マイナス端子を覆っている状態では、上記マイナス端子カバーが上記プラス端子カバーと当接することにより、上記プラス端子の露出が上記プラス端子カバーによって規制される請求項1記載のバッテリ。
【請求項3】
上記バッテリケースは、上記バッテリケースを上記車両の車体に固定するための、導電性のバッテリブラケットを介して上記車両の車体に電気的に接続される請求項1又は2に記載のバッテリ。
【請求項4】
上記バッテリブラケットは、上記車両の前後方向に並べて2つ以上設けられている請求項3記載のバッテリ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のバッテリのプラス端子に導電線を接続する方法であって、
上記プラス端子に導電線を接続する工程と、
導電線が接続された上記プラス端子をプラス端子カバーで覆う工程と、
グランド部材を上記バッテリのマイナス端子に取り付け、上記マイナス端子と上記バッテリのバッテリケースを電気的に接続すると共に、上記プラス端子の露出を規制する工程と、
を有することを特徴とするバッテリへの導電線の接続方法。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のバッテリのプラス端子から導電線を取り外す方法であって、
グランド部材を上記バッテリのマイナス端子から取り外すことにより、上記バッテリのバッテリケースと上記マイナス端子の接続を解除すると共に、上記プラス端子を露出可能にする工程と、
上記バッテリのプラス端子カバーを操作して、上記プラス端子を露出させる工程と、
上記プラス端子から導電線を取り外す工程と、
を有することを特徴とするバッテリからの導電線の取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリに関し、特に、車両に搭載して使用するバッテリ、及びバッテリへの導電線の接続、取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2003-157828号公報(特許文献1)には、車載用バッテリの端子短絡防止装置が記載されている。この端子短絡防止装置では、バッテリの正端子と負端子の間に、両端子に工具が同時に接触するのを阻止する短絡防止部を介在させ、バッテリの端子間に短絡が発生するのを防止している。また、同文献には、正端子及び負端子を覆う端子保護部を設けておき、この端子保護部を択一的に開放可能に構成することにより、バッテリの端子間の短絡を防止する構造も記載されている。
【0003】
一方、車載用バッテリのマイナス端子(負端子)は、一般に、ハーネスによって車両の車体に電気的に接続されており、マイナス端子がアース電位にされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バッテリのマイナス端子をハーネスにより車体に接続すると、ハーネスの接続忘れや、接続したハーネスが偶発的に外れることにより、マイナス端子がアース電位から浮いてしまい、車載電気機器に種々の不具合が発生する場合がある。また、バッテリのマイナス端子をハーネスで車体に接続すると、接続すべきハーネスの数が増えると共に、コスト増に繋がるという問題がある。
【0006】
この問題を解決するために、バッテリのマイナス端子を金属等の導電体で形成されたバッテリケースに接続しておき、このバッテリケースを車体に取り付けるための導電体のブラケット等により、バッテリケースを車体に電気的に接続することが考えられる。このように、バッテリのマイナス端子を、バッテリケースを介して車体に電気的に接続することにより、マイナス端子を車体に接続するハーネスが不要となると共に、ハーネスの接続忘れや、偶発的な外れに起因する不具合を回避することができる。
【0007】
しかしながら、バッテリのマイナス端子を、バッテリケースを介して車体に電気的に接続すると、特許文献1記載の発明のように、プラス端子(正端子)とマイナス端子の間の短絡を防止する機構が備えられていたとしても、プラス端子とバッテリケースの間で短絡が発生してしまう、という新たな問題が生じる。
【0008】
従って、本発明は、バッテリのバッテリケースを、マイナス端子を車体に接続するための導電体として利用しながら、プラス端子とマイナス端子の間の短絡の発生を防止することができるバッテリ、及びバッテリへの導電線の接続、取り外し方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、車両に搭載して使用するバッテリであって、導電体で形成され、車両の車体に取り付けられるバッテリケースと、このバッテリケースに設けられ、車載電気機器に電力を供給する導電線が接続されるプラス端子と、バッテリケースに設けられたマイナス端子と、マイナス端子とバッテリケースを電気的に接続するようにマイナス端子に取り付けられたグランド部材と、プラス端子を覆うプラス端子カバーと、を有し、グランド部材がマイナス端子に取り付けられた状態では、グランド部材がプラス端子カバーと当接することにより、プラス端子の露出がプラス端子カバーによって規制されることを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明によれば、マイナス端子とバッテリケースがグランド部材によって電気的に接続され、マイナス端子がバッテリケースを介して車両の車体に電気的に接続されるので、特別なハーネスを使用することなく、マイナス端子を車体に接続することができる。これにより、ハーネスのコストを低減することができると共に、車体への接続忘れや、接続の偶発的な外れを防止することができる。また、マイナス端子がバッテリケースに接続されている状態においては、グランド部材がプラス端子カバーと当接することにより、プラス端子の露出がプラス端子カバーによって規制されるので、プラス端子とマイナス端子のバッテリケースを介した短絡を防止することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、さらに、マイナス端子を覆うマイナス端子カバーを有し、マイナス端子カバーがマイナス端子を覆っている状態では、マイナス端子カバーがプラス端子カバーと当接することにより、プラス端子の露出がプラス端子カバーによって規制される。
【0012】
このように構成された本発明によれば、マイナス端子カバーがマイナス端子を覆っている状態では、プラス端子が露出されないように、プラス端子カバーが規制されるので、マイナス端子がバッテリケースに接続されている状態におけるプラス端子の露出を、より確実に防止することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、バッテリケースは、バッテリケースを車両の車体に固定するための、導電性のバッテリブラケットを介して車両の車体に電気的に接続される。
【0014】
このように構成された本発明によれば、バッテリケースが、これを車体に固定するための、導電性のバッテリブラケットを介して車体に接続されるので、バッテリケースと車体を電気的に接続するための特別な部材を設けることなく、バッテリケースを車体に接続することができる。また、バッテリケースの車体への接続忘れを確実に防止することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、バッテリブラケットは、車両の前後方向に並べて2つ以上設けられている。
このように構成された本発明によれば、バッテリブラケットが車両の前後方向に並べて2つ以上設けられているので、バッテリブラケットとバッテリケースの間や、バッテリブラケットと車体との間に接触不良があったとしても、確実にバッテリケースを車体に電気的に接続することができる。
【0016】
また、本発明は、本発明によるバッテリのプラス端子に導電線を接続する方法であって、プラス端子に導電線を接続する工程と、導電線が接続されたプラス端子をプラス端子カバーで覆う工程と、グランド部材をバッテリのマイナス端子に取り付け、マイナス端子とバッテリのバッテリケースを電気的に接続すると共に、プラス端子の露出を規制する工程と、を有することを特徴としている。
【0017】
このように構成された本発明によれば、グランド部材をバッテリのマイナス端子に取り付けることにより、プラス端子の露出が規制されるので、導電線をプラス端子に接続する作業において、プラス端子が露出されたまま、グランド部材によりマイナス端子とバッテリケースが接続されるのを防止することができる。これにより、バッテリのプラス端子に導電線を接続する作業において、プラス端子とマイナス端子が短絡するのを防止することができる。
【0018】
また、本発明は、本発明によるバッテリのプラス端子から導電線を取り外す方法であって、グランド部材をバッテリのマイナス端子から取り外すことにより、バッテリのバッテリケースとマイナス端子の接続を解除すると共に、プラス端子を露出可能にする工程と、バッテリのプラス端子カバーを操作して、プラス端子を露出させる工程と、プラス端子から導電線を取り外す工程と、を有することを特徴としている。
【0019】
このように構成された本発明によれば、グランド部材をバッテリのマイナス端子から取り外すことにより、プラス端子が露出可能になるので、マイナス端子とバッテリケースが接続されたまま、プラス端子が露出されるのを防止することができる。これにより、バッテリのプラス端子から導電線を取り外す作業において、プラス端子とマイナス端子が短絡するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のバッテリによれば、バッテリケースを、マイナス端子を車体に接続するための導電体として利用しながら、プラス端子とマイナス端子の間の短絡の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態によるバッテリを搭載した車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態によるバッテリを搭載した車両の底面図である。
【
図3】本発明の実施形態によるバッテリを、車体から取り外した状態で示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態によるバッテリに、ワイヤーハーネスを接続する手順を説明する図である。
【
図5】本発明の実施形態によるバッテリに、ワイヤーハーネスを接続する手順を説明する図である。
【
図6】本発明の実施形態によるバッテリに、ワイヤーハーネスを接続する手順を説明する図である。
【
図7】本発明の実施形態によるバッテリに、ワイヤーハーネスを接続する手順を説明する図である。
【
図8】本発明の実施形態によるバッテリへの導電線の接続方法の各工程を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態によるバッテリからの導電線の取り外し方法の各工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるバッテリを搭載した車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。
図2は、本発明の実施形態によるバッテリを搭載した車両の底面図である。
【0023】
図1に示すように、車両1は、主に、エンジン11と、ギヤ駆動式スタータ12と、ISG(Integrated Starter Generator)13と、バッテリであるリチウムイオン電池14と、DC-DCコンバータ17と、鉛蓄電池19と、高電圧電気負荷20と、低電圧電気負荷21と、を有する。
【0024】
エンジン11は、車両1の駆動力を発生する内燃機関(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン)である。エンジン11の駆動力は、出力軸9、トランスミッション2、減速機3及び駆動軸4を介して、車輪5に伝達される。エンジン11の出力軸9には、ギヤを介してギヤ駆動式スタータ12が連結されている。ギヤ駆動式スタータ12は、ユーザによりイグニッションスイッチ(図示省略)がオンにされると、鉛蓄電池19から供給される電力を用いて、エンジン11を始動する。
【0025】
ISG13は、エンジン11により駆動されて発電する発電機能と、車両1の駆動力を発生する電動機能とを備えるモータジェネレータである。ISG13は、ベルト8を介してエンジン11の出力軸9に連結されている。また、ISG13は、抵抗器6a及びスイッチ素子6b、6cを含むリレー回路6を介して、リチウムイオン電池14に電気的に接続されるようになっている。このリレー回路6は、DC-DCコンバータ17にも接続されている。ISG13及びDC-DCコンバータ17とリチウムイオン電池14とを最初に接続する際には、抵抗器6aが設けられた側のスイッチ素子6bをオンにして、突入電流による電子部品などの破損を防止している。そして、この後にスイッチ素子6bをオフにする一方でスイッチ素子6cをオンにして、ISG13及びDC-DCコンバータ17とリチウムイオン電池14との接続を維持するようになっている。基本的には、イグニッションスイッチ(図示省略)がオンにされると、ISG13及びDC-DCコンバータ17とリチウムイオン電池14とが接続され、イグニッションスイッチがオフにされると、ISG13及びDC-DCコンバータ17とリチウムイオン電池14との接続が解除(遮断)される。
【0026】
リチウムイオン電池14は、直列接続された複数のリチウムイオン電池セルを含み、鉛蓄電池19は、直列接続された複数の鉛蓄電池セルを含む。例えば、リチウムイオン電池14の公称電圧はDC24Vであり、鉛蓄電池19の公称電圧はDC12Vである。また、リチウムイオン電池14のプラス端子14aは、導電線であるワイヤーハーネス22により、リレー回路6に接続される。また、リチウムイオン電池14のマイナス端子14bは、高電圧電気負荷20、低電圧電気負荷21のマイナス側の端子に電気的に接続すべく、車両1の車体にも電気的に接続されている。
【0027】
図2に示すように、リチウムイオン電池14は、車両1底面の、フロアパネル24の下側に取り付けられている。なお、
図2は、車両1の底面に取り付けられたアンダーカバー(図示せず)を取り外した状態を示している。また、本実施形態においては、車両1の前部にエンジン11が配置されており、このエンジン11から延びる排気管26が、車両1の底部中央を車両1の後方に向けて延びている。排気管26は、フロアパネル24の車幅方向中央に車両1の前後方向に延びるように形成されたトンネル部28内に収容されている。
【0028】
また、トンネル部28の両側には、車両1の前後方向に延びるようにトンネルサイドフレーム30a、30bが設けられている。さらに、トンネルサイドフレーム30a、30bの両外側には、車両1の前後方向に延びるように、概ねハの字形に配置されたフロアフレーム32a、32bが夫々設けられている。さらに、車両1の両側に沿って、サイドシル34a、34bが夫々設けられている。これらのトンネルサイドフレーム30a、30b、フロアフレーム32a、32b、及びサイドシル34a、34bは、フロアパネル24の下側に固定され、フロアパネル24を補強すると共に、車両1全体の剛性を高めている。
【0029】
さらに、2本のトンネルサイドフレーム30a、30bの間には、トンネル部28を横断するように、車幅方向に延びる第1トンネルクロスメンバ36a及び第2トンネルクロスメンバ36bが取り付けられている。第1トンネルクロスメンバ36aは細長い板状の部材であり、第2トンネルクロスメンバ36bはX字型の板状の部材であり、トンネル部28内に収容された排気管26等を下側から支持している。また、トンネル部28を横断するように第1トンネルクロスメンバ36a及び第2トンネルクロスメンバ36bを取り付けることにより、車両1の側面衝突時においてトンネル部28の変形を抑制している。
【0030】
また、トンネルサイドフレーム30bとフロアフレーム32bの間の、車両1の前後方向に延びる細長い凹部38内には、細長い直方体状のリチウムイオン電池14が収容されている。この細長い凹部38を横断するように、トンネルサイドフレーム30b及びフロアフレーム32bには、クロスメンバである第1凹部クロスメンバ40a及び第2凹部クロスメンバ40bが取り付けられている。これら第1凹部クロスメンバ40a及び第2凹部クロスメンバ40bは、夫々長方形板状の部材であり、車両1の側面衝突時において凹部38の変形を抑制する。
【0031】
さらに、凹部38を横断するように、リチウムイオン電池14をフロアパネル24に固定する固定用ブラケットが、トンネルサイドフレーム30b及びフロアフレーム32bに取り付けられている。この固定用ブラケットは、第1固定用ブラケット42、及び第2固定用ブラケット44からなり、リチウムイオン電池14の底面にボルト止めすることにより、リチウムイオン電池14をフロアパネル24に固定している。
【0032】
第1固定用ブラケット42は、車両1の前後方向で第1凹部クロスメンバ40aよりも前側に配置され、第2固定用ブラケット44は、車両1の前後方向で第1凹部クロスメンバ40aと第2凹部クロスメンバ40bの間に配置されている。従って、これらの部材は、車両1の前側から前後方向に、第1固定用ブラケット42、第1凹部クロスメンバ40a、第2固定用ブラケット44、第2凹部クロスメンバ40bの順に並べて配置されている。
【0033】
次に、
図3乃至
図7を参照して、本発明の実施形態によるバッテリであるリチウムイオン電池14の構造を説明する。
図3は、本発明の実施形態によるバッテリを、車体から取り外した状態で示す斜視図である。
図4乃至
図7は、本発明の実施形態によるバッテリに、導電線であるワイヤーハーネス22を接続する手順を説明する図である。
【0034】
図3に示すように、本発明の実施形態によるバッテリであるリチウムイオン電池14は、導電体である金属製のバッテリケース46を有する。このバッテリケース46は細長い直方体状のケースであり、内部に複数のリチウムイオン電池セル(図示せず)が収容されている。また、バッテリケース46の、車両1の前方側の端部底面には、ワイヤー接続部48が設けられており、ここにワイヤーハーネス22が接続される。バッテリケース46は、バッテリブラケットである第1固定用ブラケット42及び第2固定用ブラケット44によって下側から支持され、車両1の車体に取り付けられている。これら第1固定用ブラケット42及び第2固定用ブラケット44は導電性の部材であり、バッテリケース46は、第1、第2固定用ブラケットを介して車両1の車体に電気的に接続される。
【0035】
さらに、バッテリケース46のワイヤー接続部48と第1固定用ブラケット42の間には、第1シール部材46aが取り付けられている。この第1シール部材46aにより、ワイヤー接続部48に水等が侵入するのを防止している。また、バッテリケース46底面の、第1固定用ブラケット42と第2固定用ブラケット44の間には、2本の第2シール部材46bが取り付けられ、車両1のクロスメンバ(図示せず)との間の隙間が埋められている。
【0036】
次に、
図4乃至
図7を参照して、バッテリケース46の端部に設けられたワイヤー接続部48の構成を説明する。
図4乃至
図7に示すように、バッテリケース46のワイヤー接続部48には、端子板50と、ワイヤーハーネス22が接続されるプラス端子14aと、マイナス端子14bと、グランド部材であるグランドプレート52(
図6)と、プラス端子14aを覆うプラス端子カバー54aと、マイナス端子14bを覆うマイナス端子カバー54bと、が設けられている。
【0037】
端子板50は、細長いバッテリケース46の一方の端部に取り付けられた電気絶縁性材料で形成された板であり、プラス端子14a及びマイナス端子14bは、端子板50の上に並べて取り付けられている。
図4に示すように、端子板50は、バッテリケース46の一方の端部に形成された凹部の中に取り付けられており、
図7に示すように、プラス端子カバー54a及びマイナス端子カバー54bによって端子板50が覆われた状態で、各カバーとバッテリケース46の底面がほぼ面一になる。
【0038】
プラス端子14a及びマイナス端子14bは、リチウムイオン電池14の正極及び負極を夫々構成する長方形板状の金属製端子であり、ワイヤーハーネス22の接続端子22aや、グランドプレート52をねじ固定できるように、雌ねじが形成されている。
図4に示すように、本実施形態においては、プラス端子14aには、ワイヤーハーネス22の接続端子22aがねじ56aで固定される。
【0039】
図6に示すように、グランドプレート52は、導電性金属の概ね長方形の板状部材であり、マイナス端子14bにねじ56bで固定するように形成されている。グランドプレート52はマイナス端子14bに固定されると、マイナス端子14b及びバッテリケース46の双方に接触するので、グランドプレート52によってマイナス端子14bとバッテリケース46が電気的に接続される。また、グランドプレート52には、プラス端子14aに向けて延びる舌部52aが設けられており、後述するように、舌部52aは閉位置にあるプラス端子カバー54aと係合するように構成されている。
【0040】
プラス端子カバー54a及びマイナス端子カバー54bは、長辺が隣接して配置された長方形板状のカバーであり、隣接していない方の長辺が端子板50によって回動可能に支持され、所謂「観音開き」できるように構成されている。即ち、プラス端子カバー54a及びマイナス端子カバー54bは、
図4に示す開位置と、
図7に示す閉位置の間で回動可能に構成されている。プラス端子カバー54aが閉位置にされた状態(
図5、
図6)では、プラス端子14a及びワイヤーハーネス22の接続端子22aが覆われ、これらへの偶発的な接触が阻止される。また、マイナス端子カバー54bが閉位置にされた状態(
図7)では、マイナス端子14b及びグランドプレート52が覆われ、これらへの偶発的な接触が阻止される。
【0041】
さらに、隣接する長辺において、マイナス端子カバー54bはプラス端子カバー54aの上に重なるように構成されている。このため、
図7に示すように、マイナス端子カバー54bが閉位置にある状態では、マイナス端子カバー54bと当接して、プラス端子カバー54aを開位置に回動させることができないようになっている。即ち、マイナス端子カバー54bは、マイナス端子14bを覆っている状態ではプラス端子14aが露出されないように、プラス端子カバー54aを規制する。また、マイナス端子カバー54bに隣接している、プラス端子カバー54aの長辺には、突出部58(
図5)が形成されている。この突出部58は、プラス端子カバー54aの長辺の一端部からマイナス端子14bの側に突出するように形成されている。プラス端子カバー54aを閉位置にした状態(
図5)で、マイナス端子14bにグランドプレート52を固定すると(
図6)、プラス端子カバー54aの突出部58の上にグランドプレート52の舌部52aが当接する。このように、マイナス端子14bにグランドプレート52が固定された状態では、突出部58と舌部52aが係合して、プラス端子カバー54aを開位置に回動させることができなくなる。
【0042】
次に、
図8を新たに参照して、本発明の実施形態によるバッテリへの導電線の接続方法を説明する。
図8は、本発明の実施形態によるバッテリへの導電線の接続方法の各工程を示すフローチャートである。
【0043】
バッテリであるリチウムイオン電池14にワイヤーハーネス22が取り付けられていない状態では、プラス端子カバー54a及びマイナス端子カバー54bは開位置にされると共に、グランドプレート52も取り付けられていない。この状態では、バッテリケース46はマイナス端子14bに電気的に接続されておらず、仮に、プラス端子14aとバッテリケース46に金属製の工具等を同時に接触させたとしても、プラス端子14aとマイナス端子14bの間で短絡が発生することはない。
【0044】
まず、
図8のステップS1においては、
図4に示すように、リチウムイオン電池14のプラス端子14aに、ワイヤーハーネス22の接続端子22aをねじ56aで固定して、ワイヤーハーネス22を接続する。これにより、リチウムイオン電池14のプラス端子14aとワイヤーハーネス22の導体が電気的に接続される。なお、
図4に示す状態では、グランドプレート52が取り付けられていないので、ワイヤーハーネス22の接続時において、誤って接続端子22aをプラス端子14aとバッテリケース46に同時に接触させたとしても、プラス端子14aとマイナス端子14bの間で短絡が発生することはない。
【0045】
次に、ステップS2においては、
図5に示すように、プラス端子カバー54aを閉位置に回動させ、ワイヤーハーネス22が接続されたプラス端子14aがプラス端子カバー54aで覆われる。このように、プラス端子14aがプラス端子カバー54aで覆われた状態では、プラス端子14a及び接続端子22aの金属部分は露出されておらず、偶発的にこれらに触れてしまうことはない。
【0046】
さらに、ステップS3においては、
図6に示すように、グランドプレート52をマイナス端子14bにねじ56bで固定する。このように、グランドプレート52がマイナス端子14bに固定された状態では、プラス端子カバー54aの突出部58がグランドプレート52の舌部52aによって押さえられ、プラス端子カバー54aが閉位置に固定される。これにより、マイナス端子14bがバッテリケース46に電気的に接続された状態におけるプラス端子14aの露出が規制される。
【0047】
また、グランドプレート52をマイナス端子14bに固定することによりマイナス端子14bはバッテリケース46に電気的に接続される。これにより、マイナス端子14bは、バッテリケース46を介して車両1の車体に接続される。即ち、バッテリケース46は、第1固定用ブラケット42及び第2固定用ブラケット44によって、車体のトンネルサイドフレーム30b及びフロアフレーム32bに固定されている。このため、これら第1、第2固定用ブラケット及びこれらを固定するためのボルト等(図示せず)を介して、バッテリケース46が車体(トンネルサイドフレーム30b、フロアフレーム32b等)に電気的に接続される。
【0048】
さらに、グランドプレート52をマイナス端子14bに固定することによりマイナス端子14bはバッテリケース46に電気的に接続されるが、この状態ではプラス端子カバー54aが閉位置に固定されている。このため、マイナス端子14bとバッテリケース46が接続されていても、プラス端子14aをバッテリケース46に偶発的に短絡させてしまうことはない。
【0049】
次に、ステップS4においては、
図7に示すように、マイナス端子カバー54bが閉位置に回動され、マイナス端子14b及びグランドプレート52がマイナス端子カバー54によって覆われる。これにより、ワイヤーハーネス22のリチウムイオン電池14への接続作業が完了する。
【0050】
次に、
図9を新たに参照して、本発明の実施形態によるバッテリからの導電線の取り外し方法を説明する。
図9は、本発明の実施形態によるバッテリからの導電線の取り外し方法の各工程を示すフローチャートである。
【0051】
上述したように、リチウムイオン電池14にワイヤーハーネス22が取り付けられた状態では、プラス端子カバー54a及びマイナス端子カバー54bが閉位置にされ、これらに覆われたプラス端子14a、マイナス端子14bは露出していない(
図7)。このため、グランドプレート52によりマイナス端子14bがバッテリケース46に接続されていても、バッテリケース46(マイナス端子14b)とプラス端子14aの間で短絡が発生することはない。
【0052】
まず、
図9のステップS11においては、
図6に示すように、マイナス端子カバー54bを開位置に回動させ、グランドプレート52を露出させる。この状態では、プラス端子カバー54aはグランドプレート52によって押さえられているため、開位置に回動させることはできない。
【0053】
次に、ステップS12においては、ねじ56bを取り外し、
図5に示すように、グランドプレート52を取り外す。この状態では、プラス端子カバー54aは開位置に回動可能になり、プラス端子14aは露出可能となるが、グランドプレート52が取り外されているので、マイナス端子14bとバッテリケース46の接続も解除される。
【0054】
さらに、ステップS13においては、
図4に示すように、プラス端子カバー54aを開くように操作して開位置に移動させる。これにより、プラス端子14aは露出されるが、マイナス端子14bとバッテリケース46の接続が解除されているので、誤ってプラス端子14aとバッテリケース46に金属製の工具等を同時に接触させても、プラス端子14aとマイナス端子14bの間が短絡されることはない。
【0055】
最後に、ステップS14においては、ねじ56aを取り外して、接続端子22aをプラス端子14aから取り外し、ワイヤーハーネス22の取り外し作業が完了する。このように、本実施形態のバッテリによれば、導電体で形成されたバッテリケース46を介して、マイナス端子14bを車両1の車体に接続しながら、プラス端子14aとマイナス端子14bの間の短絡の発生を防止することができる。
【0056】
本発明の実施形態のバッテリであるリチウムイオン電池14によれば、マイナス端子14bとバッテリケース46がグランドプレート52によって電気的に接続され(
図6)、マイナス端子14bがバッテリケース46を介して車両1の車体に電気的に接続されるので、特別なハーネスを使用することなく、マイナス端子14bを車体に接続することができる。これにより、ハーネスのコストを低減することができると共に、車体への接続忘れや、接続の偶発的な外れを防止することができる。また、マイナス端子14bがバッテリケース46に接続されている状態においては、グランドプレート52の舌部52aがプラス端子カバー54aの突出部58と当接することにより、プラス端子14aの露出がプラス端子カバー54aによって規制されるので、プラス端子14aとマイナス端子14bのバッテリケース46を介した短絡を防止することができる。
【0057】
また、本実施形態のバッテリによれば、マイナス端子カバー54bがマイナス端子14bを覆っている状態では、プラス端子14aが露出されないように、プラス端子カバー54aが規制される(
図7)ので、マイナス端子14bがバッテリケース46に接続されている状態におけるプラス端子14aの露出を、より確実に防止することができる。
【0058】
さらに、本実施形態のバッテリによれば、バッテリケース46が、これを車体に固定するための、導電性の第1固定用ブラケット42、及び第2固定用ブラケット44を介して車体に接続される(
図2)ので、バッテリケース46と車体を電気的に接続するための特別な部材を設けることなく、バッテリケース46を車体に接続することができる。また、バッテリケース46の車体への接続忘れを確実に防止することができる。
【0059】
また、本実施形態のバッテリによれば、バッテリブラケットとして、第1固定用ブラケット42、及び第2固定用ブラケット44が前後方向に並べて2つ設けられている(
図3)ので、何れかのブラケットとバッテリケース46の間や、ブラケットと車体との間に接触不良があったとしても、確実にバッテリケース46を電気的に車体に接続することができる。
【0060】
さらに、本実施形態によるバッテリのプラス端子14aにワイヤーハーネス22を接続する方法(
図8)によれば、グランドプレート52をリチウムイオン電池14のマイナス端子14bに取り付けることにより、プラス端子14aの露出が規制される。このため、ワイヤーハーネス22をプラス端子14aに接続する作業において、プラス端子14aが露出されたまま、グランドプレート52によりマイナス端子14bとバッテリケース46が接続されるのを防止することができる。これにより、リチウムイオン電池14のプラス端子14aにワイヤーハーネス22を接続する作業において、プラス端子14aとマイナス端子14bが短絡するのを防止することができる。
【0061】
また、本実施形態によるバッテリのプラス端子14aからワイヤーハーネス22を取り外す方法(
図9)によれば、グランドプレート52をリチウムイオン電池14のマイナス端子14bから取り外すことにより、プラス端子14aが露出可能になる。このため、マイナス端子14bとバッテリケース46が接続されたまま、プラス端子14aが露出されるのを防止することができる。これにより、リチウムイオン電池14のプラス端子14aからワイヤーハーネス22を取り外す作業において、プラス端子14aとマイナス端子14bが短絡するのを防止することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、バッテリとしてリチウムイオン電池に本発明が適用されていたが、ニッケル水素電池等、任意の電池に本発明を適用することができる。
【0063】
また、上述した実施形態においては、プラス端子カバー54aとマイナス端子カバー54bが、観音開きになるように構成されていたが、プラス端子カバー及び/又はマイナス端子カバーは、任意の形態をとることができる。例えば、プラス端子カバーをバッテリケースに対して着脱可能に構成しておき、グランドプレート(グランド部材)をマイナス端子に取り付けることにより、プラス端子カバーが取り外し不能となるように本発明を構成することもできる。或いは、プラス端子カバーをバッテリケースに対してスライド可能に構成しておき、グランドプレート(グランド部材)をマイナス端子に取り付けることにより、プラス端子カバーが閉位置からスライド不能となるように本発明を構成することもできる。一方、マイナス端子カバーは、プラス端子カバーとは異なる形態をとることもでき、省略することもできる。
【0064】
また、上述した実施形態においては、グランド部材として、板状のグランドプレートが使用されていたが、グランド部材は板状の部材でなくても良く、任意の形態にすることができる。さらに、上述した実施形態においては、導電線としてワイヤーハーネスが使用されていたが、任意の電気伝導体を導電線として使用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 車両
2 トランスミッション
3 減速機
4 駆動軸
5 車輪
6 リレー回路
6a 抵抗器
6b、6c スイッチ素子
8 ベルト
9 出力軸
11 エンジン
12 ギヤ駆動式スタータ
13 ISG
14 リチウムイオン電池(バッテリ)
14a プラス端子
14b マイナス端子
17 DC-DCコンバータ
19 鉛蓄電池
20 高電圧電気負荷
21 低電圧電気負荷
22 ワイヤーハーネス(導電線)
22a 接続端子
24 フロアパネル
26 排気管
28 トンネル部
30a、30b トンネルサイドフレーム
32a、32b フロアフレーム
34a、34b サイドシル
36a 第1トンネルクロスメンバ
36b 第2トンネルクロスメンバ
38 凹部
40a 第1凹部クロスメンバ
40b 第2凹部クロスメンバ
42 第1固定用ブラケット(バッテリブラケット)
44 第2固定用ブラケット(バッテリブラケット)
46 バッテリケース
46a 第1シール部材
46b 第2シール部材
48 ワイヤー接続部
50 端子板
52 グランドプレート(グランド部材)
52a 舌部
54a プラス端子カバー
54b マイナス端子カバー
56a ねじ
56b ねじ
58 突出部