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特許7116388積層圧電素子、圧電振動装置、及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】積層圧電素子、圧電振動装置、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/047 20060101AFI20220803BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20220803BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20220803BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20220803BHJP
   H01L 41/273 20130101ALI20220803BHJP
【FI】
H01L41/047
H01L41/083
H01L41/09
H01L41/187
H01L41/273
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018045558
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019021901
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2017141140
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(72)【発明者】
【氏名】岸本 純明
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛之
(72)【発明者】
【氏名】原田 智宏
(72)【発明者】
【氏名】小西 幸宏
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-103977(JP,A)
【文献】特開2012-174981(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052582(WO,A1)
【文献】特開2001-250740(JP,A)
【文献】特開2016-100760(JP,A)
【文献】特開2015-103744(JP,A)
【文献】特開2000-049034(JP,A)
【文献】特開2012-080121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/047
H01L 41/083
H01L 41/09
H01L 41/187
H01L 41/273
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電セラミックスで形成され、長手方向に対向する一対の端面と、前記長手方向に直交する厚さ方向に対向する一対の主面と、を有するセラミック素体と、
前記一対の端面を覆う一対の外部電極と、
前記セラミック素体の内部に前記厚さ方向に沿って積層され、前記一対の外部電極に対して前記厚さ方向に沿って交互に接続された複数の内部電極と、
前記一対の主面にそれぞれ設けられ、前記厚さ方向に隣接する前記内部電極とは異なる前記外部電極に接続された表面電極と、
を具備し、
前記一対の外部電極及び前記表面電極はいずれもポーラスな導電体で構成され、
前記一対の外部電極は、前記表面電極よりもポア率が高い
積層圧電素子。
【請求項2】
請求項1に記載の積層圧電素子であって、
前記一対の外部電極のポア率は、5%以上15%以下である
積層圧電素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層圧電素子であって、
前記一対の外部電極は、前記一対の端面から前記一対の主面に沿って延出する
積層圧電素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の積層圧電素子と、
前記積層圧電素子に対して前記厚さ方向に対向する振動板と、
前記積層圧電素子と前記振動板との間に配置された接着層と、
を具備する圧電振動装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の積層圧電素子と、
前記積層圧電素子が前記厚さ方向に対向した状態で接着されたパネルと、
前記パネルを保持する筐体と、
を具備する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電横効果を利用した積層圧電素子、圧電振動装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
積層圧電素子では、積層方向に直交する方向の寸法の大きい細長い形状とすることにより、圧電横効果を有効に利用可能となる。このような積層圧電素子では、長手方向の両端部に設けられた一対の外部電極間に電圧を印加することにより、長手方向に大きく収縮させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-100760号公報
【文献】国際公開2016/052582号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような積層圧電素子が変形する際には、一対の外部電極が長手方向に相対的に移動する。一対の外部電極は、比重の大きい金属で形成される。このため、一対の外部電極の重量によって積層圧電素子の長手方向の変形が妨げられやすい。これにより、積層圧電素子では、大きい変形量が得られにくくなる。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、大きい変形量を確保可能な積層圧電素子、圧電振動装置、及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層圧電素子は、セラミック素体と、一対の外部電極と、複数の内部電極と、表面電極と、を具備する。
上記セラミック素体は、圧電セラミックスで形成され、長手方向に対向する一対の端面と、上記長手方向に直交する厚さ方向に対向する一対の主面と、を有する。
上記一対の外部電極は、上記一対の端面を覆っている。
上記複数の内部電極は、上記セラミック素体の内部に上記長手方向に直交する厚さ方向に沿って積層され、上記一対の外部電極に対して上記厚さ方向に沿って交互に接続されている。
上記表面電極は、上記一対の主面にそれぞれ設けられ、上記厚さ方向に隣接する上記内部電極とは異なる上記外部電極に接続されている。
上記一対の外部電極は、上記表面電極よりもポア率が高い。
【0007】
この積層圧電素子の一対の外部電極は、ポーラスな導電体からなるため、軽量である。したがって、この積層圧電素子では、一対の外部電極の重量によって長手方向の変形が妨げられにくい。このため、この積層圧電素子では、大きい変形量を確保可能である。
【0008】
上記一対の外部電極のポア率は、5%以上15%以下であってもよい。
この積層圧電素子では、一対の外部電極における電極としての機能を損なうことなく、効果的に大きい変形量を確保可能である。
【0009】
上記一対の外部電極は、上記一対の端面から上記一対の主面に沿って延出していてもよい。
この構成では、一対の外部電極が一対の主面に沿って延出しているため、一対の外部電極と表面電極との特に良好な接続が得られる。また、一対の外部電極は、ポーラスな導電体からなるため、柔軟性を有する。このため、一対の外部電極が一対の主面に沿って延出していても、積層圧電素子の変形が妨げられにくい。
【0010】
本発明の一形態に係る圧電振動装置は、上記積層圧電素子と、振動板と、接着層と、を具備する。
上記振動板は、上記積層圧電素子に対して上記厚さ方向に対向する。
上記接着層は、上記積層圧電素子と上記振動板との間に配置されている。
【0011】
本発明の一形態に係る電子機器は、上記積層圧電素子と、パネルと、筐体と、を具備する。
上記パネルは、上記積層圧電素子が上記厚さ方向に対向した状態で接着されている。
上記筐体は、上記パネルを保持する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大きい変形量を確保可能な積層圧電素子、圧電振動装置、及び電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る積層圧電素子の斜視図である。
図2】上記積層圧電素子の図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3】上記積層圧電素子の図1のB-B'線に沿った断面図である。
図4】上記積層圧電素子の図2の領域Dを拡大して示す部分断面図である。
図5】上記積層圧電素子の製造方法を示すフローチャートである。
図6】上記積層圧電素子の製造過程を示す斜視図である。
図7】上記積層圧電素子の製造過程を示す斜視図である。
図8】上記積層圧電素子を用いた圧電振動装置の断面図である。
図9A】上記積層圧電素子を用いた電子機器の平面図である。
図9B】上記電子機器の図9AのC-C'線に沿った断面図である。
図10】上記積層圧電素子の変形例の斜視図である。
図11】上記積層圧電素子の図10のD-D'線に沿った断面図である。
図12】上記積層圧電素子の図10の領域Eを拡大して示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0015】
[積層圧電素子10の基本構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層圧電素子10の基本構成を模式的に示す図である。図1は、積層圧電素子10の斜視図である。図2は、積層圧電素子10の図1のA-A'線に沿った断面図である。図3は、積層圧電素子10の図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0016】
積層圧電素子10は、X軸に沿った長手方向と、Y軸に沿った幅方向と、Z軸に沿った厚さ方向と、を有する。つまり、積層圧電素子10は、X軸方向に細長く形成されている。これにより、積層圧電素子10では、圧電縦効果によるZ軸方向の変形よりも、圧電横効果によるX軸方向の変形が支配的になる。
【0017】
積層圧電素子10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を具備する。セラミック素体11は、X軸方向を向いた第1及び第2端面11a,11bと、Y軸方向を向いた第1及び第2側面11c,11dと、Z軸方向を向いた第1及び第2主面11e,11fと、を有する。
【0018】
なお、セラミック素体11の形状は、図1~3に示すような直方体形状に限定されない。例えば、セラミック素体11の各面を接続する稜部は面取りされていてもよい。また、セラミック素体11の各面は曲面であってもよく、セラミック素体11は全体として丸みを帯びた形状であってもよい。
【0019】
第1外部電極14は、セラミック素体11の第1端面11aを覆っている。第2外部電極15は、セラミック素体11の第2端面11bを覆っている。外部電極14,15は、図1,2に示すように端面11a,11bの全体を覆っていても、端面11a,11bを部分的に露出させていてもよい。
【0020】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0021】
セラミック素体11は、圧電定数d31の絶対値が大きい圧電セラミックスで形成される。非鉛系の材料としては、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)系やタンタル酸リチウム(LiTaO)系が挙げられる。鉛系の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO-PbTiO)系が挙げられる。
【0022】
セラミック素体11の内部には、第1内部電極12及び第2内部電極13が設けられている。内部電極12,13は、いずれもXY平面に沿って延びるシート状であり、Z軸方向に沿って交互に間隔をあけて配置されている。つまり、各内部電極12,13は、圧電セラミックスによって覆われている。
【0023】
したがって、内部電極12,13の間には、圧電セラミックスの層であるセラミック層18が形成されている。第1内部電極12は、セラミック素体11の第1端面11aに引き出され、第1外部電極14に接続されている。第2内部電極13は、セラミック素体11の第2端面11bに引き出され、第2外部電極15に接続されている。
【0024】
図3に示すように、内部電極12,13は、側面11c,11dから間隔をあけて配置されている。つまり、セラミック素体11には、内部電極12,13と側面11c,11dとの間に間隔を形成するサイドマージン部が設けられている。これにより、側面11c,11dにおける内部電極12,13の絶縁性が確保されている。
【0025】
セラミック素体11では、第1主面11eに第1表面電極16が設けられ、第2主面11fに第2表面電極17が設けられている。これにより、Z軸方向の最上部の第2内部電極13と第1表面電極16との間、及びZ軸方向の最下部の第1内部電極12と第2表面電極17との間にもそれぞれセラミック層18が形成されている。
【0026】
表面電極16,17は、内部電極12,13よりもZ軸方向に厚く形成されている。これにより、表面電極16,17のXY平面に沿った連続性を確保することができる。また、表面電極16,17の強度が高くなるため、外部環境の影響によって表面電極16,17が損傷を受けにくくなる。
【0027】
また、表面電極16,17は、ポーラスな導電体で構成され、柔軟性を有する。これにより、表面電極16,17は、内部電極12,13より厚くても、積層圧電素子10の変形を妨げにくくなる。なお、表面電極16,17に分散するポアPの量は、後述する外部電極14,15に分散するポアPの量より少ない(図4参照)。
【0028】
第1表面電極16は、第1内部電極12と同様に、セラミック素体11の第1端面11aに引き出され、第1外部電極14に接続されている。また、第2表面電極17は、第2内部電極13と同様に、セラミック素体11の第2端面11bに引き出され、第2外部電極15に接続されている。
【0029】
内部電極12,13及び表面電極16,17はそれぞれ、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13及び表面電極16,17を形成する電気の良導体としては、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0030】
上記の構成により、積層圧電素子10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、すべてのセラミック層18にZ軸方向の電圧が加わる。これにより、各セラミック層18が圧電横効果によってX軸方向に収縮するため、積層圧電素子10が全体としてX軸方向に収縮する。
【0031】
積層圧電素子10は、圧電横効果によってX軸方向に動作する圧電アクチュエータとして広く利用可能である。積層圧電素子10の用途の一例として、圧電振動装置が挙げられる。圧電振動装置は、典型的には、積層圧電素子10に、金属で形成された振動板を組み合わせて構成される。
【0032】
より詳細に、圧電振動装置では、例えば、振動板の実装面に対して、積層圧電素子10の第1主面11e側又は第2主面11f側が接着される。圧電振動装置では、外部電極14,15間に所定の周波数の電圧を印加して積層圧電素子10を長手方向に伸縮させることによって、振動板を振動させることができる。
【0033】
なお、本実施形態に係る積層圧電素子10の基本構成は、図1~3に示す構成に限定されず、適宜変更可能である。例えば、内部電極12,13の枚数やセラミック層18の厚さは、積層圧電素子10の用途などに応じて、適宜決定可能である。また、表面電極16,17の構成は、内部電極12,13の構成に応じて変更可能である。
【0034】
具体的に、Z軸方向の最上部に第1内部電極12が配置されている場合には、第1表面電極16が、第2端面11bに引き出され、第2内部電極13に接続される。また、Z軸方向の最下部に第2内部電極13が配置されている場合には、第2表面電極17が、第1端面11aに引き出され、第1内部電極12に接続される。
【0035】
[外部電極14,15の詳細構成]
積層圧電素子10の外部電極14,15は、ポーラスな導電体からなる。この一方で、表面電極16,17は、XY平面に沿った連続性を確保するために、外部電極14,15よりもポアPの量が少ない導電体からなる。つまり、外部電極14,15を構成する導電体は、表面電極16,17を構成する導電体よりもポーラスである。
【0036】
図4は、図3の一点鎖線で囲んだ領域Dを拡大して示す部分断面図である。図4には、第1外部電極14及び第1表面電極16が模式的に示されている。なお、第2外部電極15は、第1外部電極14と同様に構成されている。また、第2表面電極17は、第1表面電極16と同様に構成されている。
【0037】
外部電極14,15を構成する導電体には、空隙を形成する微細なポアPが、表面電極16,17を構成する導電体よりも多く分散している。外部電極14,15は、ポアPの存在によって軽量となっている。これにより、積層圧電素子10では、外部電極14,15の重量によってX軸方向の変形が妨げられにくくなる。
【0038】
このため、積層圧電素子10では、X軸方向に大きい変形量が得られる。更に、軽量の外部電極14,15には、慣性力が働きにくい。このため、外部電極14,15は、セラミック素体11の変形に追従してX軸方向に相対移動しやすくなる。このため、積層圧電素子10では、高速の応答性能が得られる。
【0039】
外部電極14,15及び表面電極16,17に分散しているポアPの量は、ポア率で評価することができる。ポア率は、外部電極14,15及び表面電極16,17の断面を撮像した写真中の所定の領域におけるポアPの占める面積の割合として求めることができる。外部電極14,15及び表面電極16,17の断面は、例えば、走査型電子顕微鏡などを用いて撮像可能である。
【0040】
積層圧電素子10では、より効果的にX軸方向の変形量を大きくするために、外部電極14,15のポア率が5%以上であることが好ましい。この一方で、外部電極14,15における電極としての機能が損なわれないようにするために、外部電極14,15のポア率を15%以下に留めることが好ましい。
【0041】
[積層圧電素子10の製造方法]
図5は、積層圧電素子10の製造方法を示すフローチャートである。図6,7は、積層圧電素子10の製造過程を示す図である。以下、積層圧電素子10の製造方法について、図5に沿って、図6,7を適宜参照しながら説明する。
【0042】
(ステップS01:セラミック素体作製)
ステップS01では、セラミック素体11を作製する。ステップS01では、まず、図6に示すセラミックシート101,102,103,104を準備する。セラミックシート101,102,103,104は、圧電セラミックスを主成分とする圧電体グリーンシートである。
【0043】
圧電体グリーンシートは、圧電セラミックスの仮焼粉末と、有機高分子からなるバインダと、可塑剤と、を混合して得られるセラミックスラリーをシート状に成形することにより得られる。圧電体グリーンシートの成形には、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いることができる。
【0044】
各セラミックシート101,102,103,104には、所定のパターンで導電性ペーストが塗布され、未焼成の内部電極12,13及び表面電極16,17が形成されている。導電性ペーストの塗布には、例えば、スクリーン印刷法やグラビア印刷法などを用いることができる。
【0045】
具体的に、セラミックシート101には、第1内部電極12が形成されている。セラミックシート102には、第2内部電極13が形成されている。セラミックシート103には、第1表面電極16が形成されている。セラミックシート104には、第1内部電極12及び第2表面電極17が形成されている。
【0046】
そして、セラミックシート101,102,103,104を図6に示す順番でZ軸方向に積層して熱圧着することにより、未焼成のセラミック素体11が得られる。セラミックシート101,102,103,104の熱圧着には、例えば、一軸加圧や静水圧加圧などを用いることができる。
【0047】
続いて、未焼成のセラミック素体11を、例えば300~500℃に加熱することにより脱バインダ処理を行う。そして、脱バインダ処理後のセラミック素体11を、例えば900~1200℃に加熱することにより焼結させる。これにより、図7に示すセラミック素体11が得られる。
【0048】
表面電極16,17のポア率は、例えば、導電性ペーストにおけるバインダや溶剤などの各成分の量や、導電性ペーストの塗布の条件によって調整することができる。また、表面電極16,17のポア率は、導電性ペーストに含まれる気泡の量を変化させることによって調整することもできる。
【0049】
(ステップS02:外部電極形成)
ステップS02では、ステップS01で得られたセラミック素体11に外部電極14,15を形成することにより、図1~3に示す積層圧電素子10を作製する。ステップS02では、例えば、セラミック素体11の端面11a,11bに塗布した導電性ペーストを焼き付けることにより外部電極14,15を形成することができる。
【0050】
導電性ペーストは、セラミック素体11の端面11a,11bに、例えば、各種印刷法やディップ法を用いて塗布することができる。そして、セラミック素体11の端面11a,11bに塗布された導電性ペーストを加熱することにより焼き付ける。これにより、外部電極14,15が形成された積層圧電素子10が得られる。
【0051】
外部電極14,15のポア率は、例えば、導電性ペーストにおけるバインダや溶剤などの各成分の量や、導電性ペーストの塗布の条件によって調整することができる。また、外部電極14,15のポア率は、導電性ペーストに含まれる気泡の量を変化させることによって調整することもできる。
【0052】
なお、ステップS02における処理を、ステップS01で行うこともできる。例えば、未焼成のセラミック素体11のX軸方向の端面11a,11bに未焼成の導電性ペーストを塗布してもよい。これにより、セラミック素体11の焼成と外部電極14,15の焼き付けとを同時に行うことができる。
【0053】
また、外部電極14,15の形成方法は、上記に限定されず、適宜公知の方法を採用可能である。例えば、外部電極14,15は、スパッタリング法によって形成してもよい。この場合、スパッタレートを充分に遅くすることによって、ポーラスな導電体からなる外部電極14,15が得られる。
【0054】
(ステップS03:分極処理)
ステップS03では、積層圧電素子10に分極処理を行う。具体的に、分極処理では、積層圧電素子10にZ軸方向の直流高電界を加えることにより、セラミック層18を構成する圧電セラミックスの自発分極の向きを揃える。これにより、圧電セラミックスに圧電活性が付与され、積層圧電素子10がその機能を発揮可能となる。
【0055】
[圧電振動装置20]
積層圧電素子10は、圧電横効果によってX軸方向に動作する圧電アクチュエータとして広く利用可能である。積層圧電素子10の用途の一例として、振動を発生させる圧電振動装置が挙げられる。以下、積層圧電素子10を用いて構成されたユニモルフ型の圧電振動装置20について説明する。
【0056】
図8は、圧電振動装置20の断面図である。圧電振動装置20は、積層圧電素子10と、振動板21と、接着層22と、を備える。振動板21は、XY平面に沿って延びる平板として構成され、積層圧電素子10の第1主面11eに対向して配置されている。接着層22は、積層圧電素子10と振動板21との間に配置されている。
【0057】
振動板21は、例えば、金属やガラスなどで形成され、Z軸方向に可撓性を有する。接着層22は、樹脂材料などによって形成され、積層圧電素子10と振動板21とを接合している。接着層22は、積層圧電素子10のZ軸方向下部に密着し、振動板21のZ軸方向上面に密着している。
【0058】
接着層22は、セラミック素体11の第1主面11eと振動板21との間に充填され、セラミック素体11と振動板21とを広範囲で接合している。これにより、圧電振動装置20では、積層圧電素子10と振動板21との間における接着層22を介した高い接合強度が得られる。
【0059】
圧電振動装置20では、接着層22による積層圧電素子10と振動板21との接合強度が高いため、積層圧電素子10を大きく伸縮させた場合であっても、積層圧電素子10が振動板21から剥がれにくい。このため、圧電振動装置20では、振動板21の大きい振動が維持される。
【0060】
[電子機器30]
図9A,9Bは、積層圧電素子10を用いた電子機器30を模式的に示す図である。図9Aは、電子機器30の平面図である。図9Bは、電子機器30の図9AのC-C'線に沿った断面図である。電子機器30は、一般的にスマートフォンと呼ばれる多機能型の携帯通信端末として構成される。
【0061】
電子機器30は、積層圧電素子10と、筐体31と、パネル32と、を有する。筐体31は、XY平面に沿って矩形に延びる底板31aと、底板31aの周縁からZ軸方向上方に延びる枠体31bと、を有し、Z軸方向上方に開放された箱型に形成されている。パネル32は、XY平面に沿って矩形に延び、筐体31をZ軸方向上方から閉塞している。
【0062】
筐体31は、電子機器30の様々な機能を実現するための回路基板や電子部品などの各構成(不図示)を収容する。パネル32は、タッチパネルとして構成されている。つまり、パネル32は、画像を表示する画像表示機能と、ユーザの手指などによる入力操作を検出する入力機能と、を兼ね備えている。
【0063】
なお、パネル32は、タッチパネルに限定されず、上記のような構成を有さなくてもよい。例えば、パネル32は、画像表示機能を有さず、入力機能のみを有するタッチパッドであってもよい。また、パネル32は、電子機器30に別途設けられたタッチパネルを保護する保護パネルであってもよい。
【0064】
積層圧電素子10は、パネル32のZ軸方向下面に接着され、筐体31内において底板31aに対向している。パネル32のZ軸方向下面における積層圧電素子10の位置は任意に決定可能である。電子機器30では、パネル32が、図8に示す圧電振動装置20における振動板21の機能を果たす。
【0065】
つまり、電子機器30は、積層圧電素子10のX軸方向への伸縮により、パネル32を振動させることができる。このため、パネル32は、良好に振動可能なガラスやアクリル樹脂などを主原料とすることが好ましい。また、積層圧電素子10とパネル32とを接着する接着層は、圧電振動装置20の接着層22と同様の構成であることが好ましい。
【0066】
電子機器30は、パネル32を振動させて、気導や骨伝導などによって音を発生させることによって、ユーザに音声情報を提供することができる。また、電子機器30は、パネル32を振動させることによって、例えばパネル32に対して入力操作を行うユーザに対して、触覚を提示することもできる。
【0067】
なお、パネル32のZ軸方向上面は、典型的には平面であるが、例えば、湾曲面などであってもよい。また、電子機器30は、スマートフォンに限定されず、例えば、タブレット端末、ノートパソコン、携帯電話、腕時計、フォトスタンド、各種機器のリモコンや操作部などとして構成されていてもよい。
【0068】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。以下、その一例として、上記実施形態の変形例に係る積層圧電素子10について説明する。
【0069】
図10,11は、上記実施形態の変形例に係る積層圧電素子10を示す図である。図10は、積層圧電素子10の斜視図である。図11は、積層圧電素子10の図10のD-D'線に沿った断面図である。変形例に係る積層圧電素子10では、外部電極14,15の構成が上記実施形態とは異なる。
【0070】
変形例に係る積層圧電素子10では、第1外部電極14が、セラミック素体11の第1端面11aから側面11c,11d及び主面11e,11fに沿って延出し、第1主面11e上で第1表面電極16に重なっている。これにより、第1外部電極14と第1表面電極16との良好な接続性が得られる。
【0071】
また、変形例に係る積層圧電素子10では、第2外部電極15が、セラミック素体11の第2端面11bから側面11c,11d及び主面11e,11fに沿って延出し、第2主面11f上で第2表面電極17に重なっている。これにより、第2外部電極15と第2表面電極17との良好な接続性が得られる。
【0072】
図12は、図11の一点鎖線で囲んだ領域Eを拡大して示す部分断面図である。外部電極14,15は、ポアPが分散されているため、柔軟性を有する。したがって、外部電極14,15における側面11c,11d及び主面11e,11fに沿って延出する部分は、セラミック素体11と一体としてX軸方向に変形することができる。
【0073】
つまり、外部電極14,15における側面11c,11d及び主面11e,11fに沿って延出する部分は、セラミック素体11をX軸方向に拘束することなく、セラミック素体11のX軸方向の変形を妨げない。このため、この積層圧電素子10では、外部電極14,15によって、X軸方向の変形量が損なわれにくい。
【0074】
変形例に係る積層圧電素子10の外部電極14,15は、例えば、ディップ法を用いることにより、容易に形成することができる。なお、変形例に係る積層圧電素子10では、外部電極14,15が、主面11e,11fに延出していればよく、側面11c,11dの少なくとも一方には延出していなくてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…積層圧電素子
11…セラミック素体
11a,11b…端面
11c,11d…側面
11e,11f…主面
12,13…内部電極
14,15…外部電極
16,17…表面電極
18…セラミック層
20…圧電振動装置
21…振動板
22…接着層
30…電子機器
31…筐体
32…パネル
P…ポア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12