(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】天然ガスプラントの稼働解析方法
(51)【国際特許分類】
F25J 1/00 20060101AFI20220803BHJP
C10L 3/10 20060101ALI20220803BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20220803BHJP
【FI】
F25J1/00 B
C10L3/10
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2021530430
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2019027381
(87)【国際公開番号】W WO2021005754
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-11-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519355493
【氏名又は名称】日揮グローバル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古林 勇吾
(72)【発明者】
【氏名】内田 啓克
(72)【発明者】
【氏名】毛利 謙司
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-025481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0356151(US,A1)
【文献】国際公開第2017/154181(WO,A1)
【文献】特開2012-185743(JP,A)
【文献】特開2018-032396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00 - 5/00
G06Q 10/00 - 10/10
30/00 - 30/08
50/00 - 50/20
50/26 - 99/00
G16Z 99/00
C10L 3/00 - 3/12
8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガスから製品を生産する天然ガスプラントの稼働解析方法であって、
前記製品の単位時間当たりの生産量データと、前記天然ガスプラントを構成し、予め設定された運転制約の範囲内で
プラント制御システムにより運転制御される複数の制御対象機器について、
前記プラント制御システムによる運転制御において各制御対象機器が前記運転制約に抵触したか否かを判定するための運転データと、を時系列に対応付けて取得する工程と、
コンピュータにより、予め設定した、単位時間あたりの基準生産量と、前記生産量データとを比較し、当該生産量データが前記基準生産量未満である場合に、その生産量データを取得した時点にて、前記運転制約に抵触した制御対象機器があったか否かを判定し、前記抵触した制御対象機器があった場合には、当該制御対象機器に係る
前記抵触した前記運転制約
の内容を示す制約項目を前記生産量データに対応付けるデータ処理を行う工程と、
前
記制約項目が対応付けられた生産量データと、前記基準生産量との差分である減産量を求め、各々の前
記制約項目について、前記減産量の大きさに応じて、前記生産量データが前記基準生産量未満であった期間の長さを求める工程と、を含むことを特徴とする天然ガスプラントの稼働解析方法。
【請求項2】
前記生産量データが前記基準生産量未満であった期間の長さと、前記減産量の大きさとの対応関係を、前
記制約項目ごとのグラフとして可視化する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の天然ガスプラントの稼働解析方法。
【請求項3】
予め定めた複数の前記制約項目について、各制約項目を選択する優先順位を決めておくことと、
前記生産量データが前記基準生産量未満であった期間の長さを求める工程にて、前記生産量データに複数の前
記制約項目が対応付けられている場合には、
前記優先順位に基づき、優先順位の最も高い
制約項目
を1つ選択し、
前記選択した制約項目について、前記基準生産量未満であった期間
の長さを求めること
と、を特徴とする請求項1に記載の天然ガスプラントの稼働解析方法。
【請求項4】
前記優先順位の最も高い制約項目
として選択されなかった残りの運転制約について
前記生産量データが前記基準生産量未満であった期間を
計算し、前記選択した制約項目について前記基準生産量未満であった期間内に同時に運転制約に抵触した期間として対応付けることを特徴とする請求項3に記載の天然ガスプラントの稼働解析方法。
【請求項5】
前記天然ガスプラントは、天然ガスから液化天然ガスを製品として生産する液化天然ガスプラント、または、天然ガスからLPG(Liquefied Petroleum Gas)、重質分または軽質分の少なくとも一つを製品として分離・回収する天然ガス処理プラントであることを特徴とする請求項1に記載の天然ガスプラントの稼働解析方法。
【請求項6】
前記制御対象機器と、その
制約項目との組み合わせは、下記(i)~(v)の組み合わせ群から選択した少なくとも1つの組み合わせを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の天然ガスプラントの稼働解析方法。
(i)前記天然ガスプラントが前記天然ガスの予冷用冷媒の圧縮機を備えている場合の当該予冷用圧縮機と、前記予冷用圧縮機の吐出圧力上限値
(ii)前記天然ガスプラントが前記天然ガスの液化用冷媒の圧縮機を備えている場合の当該液化用圧縮機と、前記液化用圧縮機の駆動動力上限値
(iii)前記天然ガスプラントが前記液化用冷媒を用いて前記天然ガスを液化する場合の当該液化用冷媒の流量調節部と、前記液化用冷媒の流量上限値
(iv)前記天然ガスプラントが前記天然ガスと酸性ガスの吸収液とを接触させて、当該天然ガスに含まれる酸性ガスを除去する酸性ガス除去部を備えている場合の当該酸性ガス除去部と、前記酸性ガス除去部への前記吸収液の供給流量の上限値
(v)前記天然ガスプラントが前記天然ガスと酸性ガスの吸収液とを接触させて、当該天然ガスに含まれる酸性ガスを除去する酸性ガス除去部を備えている場合の当該酸性ガス除去部と、前記酸性ガス除去部にて処理され後の前記天然ガス中の酸性ガス含有量上限値
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガスプラントの稼働状況を解析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスの処理を行う天然ガスプラントの一種として、天然ガスの液化を行う液化天然ガスプラント(以下、「LNGプラント」ともいう)がある。LNGプラントにおいては、冷媒を用いて天然ガス(NG:Natural Gas)を冷却し、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)を得る処理が行われる。LNGプラントは、冷媒を用いて被冷却流体(NGや他の冷媒など)を冷却する熱交換器や、気化した冷媒を圧縮する冷媒圧縮機、圧縮後の冷媒の冷却を行う空冷式熱交換器(ACHE:Air-Cooled Heat Exchanger)などの多数の機器を備えている。
【0003】
LNGプラントの稼働期間中は、これらの多数の機器が同時に稼働し、各々の機器にて各種の流体(NGや冷媒、NGの前処理に用いられる流体)の処理が並行して実施されている。
一方でこれらの機器は、外気温度やNGの供給圧力、NG組成などの外乱に応じて処理流体の流量、圧力や動力機器の駆動力などの運転状態が変化する。例えば大きな外乱の影響を受け、機器の運転状態が運転制約の管理範囲を外れるおそれがある場合には、このような運転状態を解消する運転調整を行う必要がある。
【0004】
上述の運転調整の一例として、例えば特許文献1には、ACHEやガスタービン圧縮機に取り込まれる空気の温度を予測し、LNG生産量(NG処理量)の増減や冷媒の循環量の増減に係る運転調整の実施要否を判定する技術が記載されている。
一方で、LNGプラントに設けられている機器の中で、その運転状態がLNG生産量に影響を及ぼす可能性のある機器は多数に及ぶ。このため、例えば年間を通じてのLNGプラントのフル生産が達成されていなかった場合に、減産の要因となった機器やその影響度が不明な場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、天然ガスプラントの生産量に影響を及ぼす運転制約の項目とその影響度を解析する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の天然ガスから製品を生産する天然ガスプラントの稼働解析方法であって、
前記製品の単位時間当たりの生産量データと、前記天然ガスプラントを構成し、予め設定された運転制約の範囲内でプラント制御システムにより運転制御される複数の制御対象機器について、前記プラント制御システムによる運転制御において各制御対象機器が前記運転制約に抵触したか否かを判定するための運転データと、を時系列に対応付けて取得する工程と、
コンピュータにより、予め設定した、単位時間あたりの基準生産量と、前記生産量データとを比較し、当該生産量データが前記基準生産量未満である場合に、その生産量データを取得した時点にて、前記運転制約に抵触した制御対象機器があったか否かを判定し、前記抵触した制御対象機器があった場合には、当該制御対象機器に係る前記抵触した前記運転制約の内容を示す制約項目を前記生産量データに対応付けるデータ処理を行う工程と、
前記制約項目が対応付けられた生産量データと、前記基準生産量との差分である減産量を求め、各々の前記制約項目について、前記減産量の大きさに応じて、前記生産量データが前記基準生産量未満であった期間の長さを求める工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
前記天然ガスプラントの稼働解析方法は以下の特徴を備えてもよい。
(a)前記生産量データが前記基準生産量未満であった期間の長さと、前記減産量の大きさとの対応関係を、前記運転制約の項目ごとのグラフとして可視化する工程を含むこと。
(b)予め定めた複数の前記制約項目について、各制約項目を選択する優先順位を決めておくことと、前記生産量データが前記基準生産量未満であった期間の長さを求める工程にて、前記生産量データに複数の前記制約項目が対応付けられている場合には、前記優先順位に基づき、優先順位の最も高い制約項目を1つ選択し、前記選択した制約項目について、前記基準生産量未満であった期間の長さを求めること。このとき、前記優先順位の最も高い制約項目として選択されなかった残りの運転制約について前記生産量データが前記基準生産量未満であった期間を計算し、前記選択した制約項目について前記基準生産量未満であった期間内に同時に運転制約に抵触した期間として対応付けること。
(c)前記天然ガスプラントは、天然ガスから液化天然ガスを製品として生産する液化天然ガスプラント、または、天然ガスからLPG(Liquefied Petroleum Gas)、重質分または軽質分の少なくとも一つを製品として分離・回収する天然ガス処理プラントであること。
【0009】
(e)前記制御対象機器と、その制約項目との組み合わせは、下記(i)~(v)の組み合わせ群から選択した少なくとも1つの組み合わせを含んでいること。
(i)前記天然ガスプラントが前記天然ガスの予冷用冷媒の圧縮機を備えている場合の当該予冷用圧縮機と、前記予冷用圧縮機の吐出圧力上限値
(ii)前記天然ガスプラントが前記天然ガスの液化用冷媒の圧縮機を備えている場合の当該液化用圧縮機と、前記液化用圧縮機の駆動動力上限値
(iii)前記天然ガスプラントが前記液化用冷媒を用いて前記天然ガスを液化する場合の当該液化用冷媒の流量調節部と、前記液化用冷媒の流量上限値
(iv)前記天然ガスプラントが前記天然ガスと酸性ガスの吸収液とを接触させて、当該天然ガスに含まれる酸性ガスを除去する酸性ガス除去部を備えている場合の当該酸性ガス除去部と、前記酸性ガス除去部への前記吸収液の供給流量の上限値
(v)前記天然ガスプラントが前記天然ガスと酸性ガスの吸収液とを接触させて、当該天然ガスに含まれる酸性ガスを除去する酸性ガス除去部を備えている場合の当該酸性ガス除去部と、前記酸性ガス除去部にて処理され後の前記天然ガス中の酸性ガス含有量上限値
【発明の効果】
【0010】
本法は、天然ガスプラントの生産量データと運転データとを時系列に沿って対応付け、複数の運転制約の項目について、減産量の大きさに応じて、生産量データが基準生産量未満であった期間の長さを求めるので、減産に対する各運転制約の影響度を明確にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本例の稼働解析方法が適用されるLNGプラントの概要を示すブロック図である。
【
図2】前記稼働解析方法の実施手順を示す説明図である。
【
図3】LNGプラントの稼働解析の結果を示す第1の例である。
【
図5】複数の制約項目が対応付けられている場合の減産期間の算出法に係る説明図である。
【
図6】前記稼働解析の結果に対応した施策例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、天然ガスプラントの一例として、LNGプラントに対し、本例の稼働解析方法を適用した実施の形態について説明する。
図1は、LNGプラントの構成例を模式的に示したブロック図である。LNGプラントは、井戸元より産出されたNG中に含まれる液体分を気液分離部11にて分離した後、水銀除去部12にて水銀を除去する。続く酸性ガス除去部13では、二酸化炭素や硫化水素などの酸性ガスの除去を行う。本例の酸性ガス除去部13においては、アミン化合物を含む吸収液とNGとを接触させて、酸性ガスの除去を行う。さらに、水分除去部14にて天然ガス中の水分を除去することにより、液化前のNGからの不純物の除去が完了する。
【0013】
図1に示すLNGプラントは予冷部15を備え、当該予冷部15においては、液化される前のNGの予冷却を行う。NGの予冷に用いられる予冷用冷媒としては、プロパンの単体冷媒(C3冷媒)が用いられる。
【0014】
予冷部15においては、不図示の熱交換器を介してNGと予冷用冷媒との間の熱交換が行われる。さらに予冷部15には、熱交換により気化した冷媒を冷媒圧縮機31aで圧縮した後、クーラーで冷却、液化し、予冷部15へと再供給する予冷用冷媒サイクル151が設けられている。本例では、これらのクーラーとして空冷式熱交換器(ACHE)21を用いている。
【0015】
また、
図1に示すLNGプラントは、予冷用冷媒の一部を予冷用冷媒サイクル151から抜き出し、後段の液化・過冷却部16に供給される前の液化用冷媒を冷却するための冷媒冷却サイクル152を併設した構成となっている。冷媒冷却サイクル152を流れる予冷用冷媒は、冷却器33にて液化用冷媒サイクル161側の液化用冷媒を冷却した後、予冷用冷媒サイクル151側の冷媒圧縮機31aの入口に戻される。本例ではガスタービン(G/T)32を駆動機として各冷媒圧縮機31aを駆動する例を記してある(後述の液化用冷媒サイクル161の冷媒圧縮機31bにおいて同じ)。
【0016】
液化・過冷却部16は、予冷却後のNGをさらに冷却して液化する。液化・過冷却部16が混合冷媒方式を採用している場合、NGの液化・過冷却に用いられる冷媒(以下、「液化用冷媒」ともいう)には、窒素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、イソペンタンなどから選択された冷媒成分を含む混合冷媒(MR:Mixed Refrigerant)が用いられる。
【0017】
液化・過冷却部16においては、不図示の熱交換器を介してNGと上述の冷媒との間の熱交換が行われる。さらに液化・過冷却部16は、熱交換にて気化した冷媒を冷媒圧縮機31bで圧縮した後、クーラーで冷却、液化し、液化・過冷却部16へと再供給する液化用冷媒サイクル161を備えている。本例では、これらのクーラーとしてもACHE2を用いている。
【0018】
LNGプラントにて得られた製品LNGは、LNGタンク13に貯蔵された後、LNGタンカーなどを介して外部に出荷される。
なお本例では、
図1に示すLNGプラントが2系統(Aトレイン、Bトレイン)あるものとする。
【0019】
上述の構成を備えるLNGプラントには、多数の機器が設けられている。そして、これらの機器の中には、処理流体の流量、圧力や動力機器の駆動力などの運転値が、予め設定された運転制約の範囲内となるように運転制御されるものが含まれる。以下、このような運転制御の対象機器を「制御対象機器」と呼び、運転制約となる項目を「制約項目」と呼ぶ。
【0020】
本例のLNGプラントの稼働解析方法は、これらの制御対象機器の制約項目と、LNG生産量との関係に着目する。
以下、
図2も参照しながら、当該稼働解析方法の実施手順について説明する。
【0021】
はじめに、LNGプラントに設けられている制御対象機器の運転データ及びLNGの生産量データを取得する(
図2の処理P1)。
LNGプラントに設けられている各制御対象機器の運転値は、DCS(Distributed Control System)などのプラント制御システムを介して、単位時間当たり(例えば1分や5分ごと、または15分ごとなど)の運転データとして時系列に沿って取得される。また、LNGの生産量を示す単位時間当たりの生産量データについても時系列に沿って取得される。
【0022】
次いで、運転制約に抵触した制御対象機器の有無を判定する(
図2の処理P2)。
具体的には、制御対象機器の運転データと、生産データとの対応関係に着目し、生産量データが予め設定された基準生産量(例えばフル生産量)未満である場合(減産が発生している場合)に、その生産量データを取得した時点にて、運転制約に抵触した制御対象機器があったか否かを判定する。この判定により、LNGの減産の要因となった制約対象機器と、そのとき運転制約に抵触していた制約項目(ボトルネック)とを特定することができる。
【0023】
生産量データとの関連性を解析する運転制約の制約項目としては、減産の要因となり得ることが従来、知られている制約項目を選択してもよい。また、LNGプラントの運転に携わるオペレータにヒアリングを行い、減産を行う運転調整をせざるを得なかった制約項目を特定して選択してもよい。このほか、LNGプラントの全運転データを取得し、減産が行われていた期間中に運転制約との抵触が発生していた運転制約を、減産との因果関係の有無を判断せずに、一律に制約項目として抽出してもよい。
【0024】
以下に、
図1に示すLNGプラントにおける制御対象機器とその制約項目を例示する。
(i)予冷用冷媒の圧縮機(予冷用圧縮機)31aと、当該冷媒圧縮機31aの吐出圧力上限値(
図1の*1)
(ii)液化用冷媒の圧縮機(液化用圧縮機)31bと、当該冷媒圧縮機31bの駆動動力上限値(
図1の*2)。
(iii)液化用冷媒の流量調節部161aと、液化用冷媒の流量上限値(
図1の*3)。
(iv)NGと吸収液とを接触させて酸性ガスを除去する酸性ガス除去部13と、酸性ガス除去部13への吸収液の供給流量の上限値(
図1の*4)。ここで、酸性ガス除去部13がNGと吸収液とを接触させる接触塔と、吸収液から酸性ガスを放出させて吸収液を再生する再生塔とを備える場合、「吸収液の供給流量」は、再生塔から吸収塔への供給流量である「吸収液循環量」を指す。
(v)酸性ガス除去部13と、酸性ガス除去部13にて処理され後のNG中の酸性ガス含有量上限値(
図1の*5)。酸性ガス含有量は、例えば酸性ガス除去部13の出口側に配置された不図示の分析計により測定される。
【0025】
取得した運転データから、各制御対象機器が運転制約に抵触したか否かを判定する手法としては、予め設定された運転制約の範囲(例えばアラーム発報値の設定範囲)と、運転データとを比較する手法を例示できる。運転データが上記運転制約の範囲を外れている場合には、当該制御対象機器の運転制約に抵触したと判断する。
【0026】
また例えば、運転データと併せて当該運転データに対して設定されていたアラームの発報実績データを時系列に沿って取得し、アラームが発報した期間は、当該制御対象機器の運転制約に抵触したと判断してもよい。
なお、運転制約の範囲はアラーム発報値の設定範囲を用いる場合に限定されない。例えば、制御対象機器の運転変動の発生を回避するために、オペレータが自主的に減産を開始する運転値をヒアリングなどにより把握し、運転制約の範囲のしきい値としてもよい。
【0027】
以上に例示した手法により、制御対象機器の運転制約に抵触した制約項目(ボトルネック)を特定したら、抵触が発生した時点の生産データと対応付ける(
図2の処理P2)。
このとき、抵触の発生有無の判断を行っている制約項目(例えば
図1の*1~*5)にて抵触が発生していないにも係らず、減産が発生している場合は、「その他」の制約項目に対応付けてもよい。
【0028】
しかる後、ボトルネックごとに、減産量の大きさに応じて、減産を行っていた期間の長さを求める(
図2の処理P3)。
減産量の大きさは、基準生産量に対する生産量データの割合や、差分値により把握する。減産量の表現は減産の度合を把握することができれば特段の限定はない。また、各制約項目の影響度合いをまとめて把握できるように、適宜、減産量の範囲を設定してもよい。例えばフル生産を100%としたとき、「95%以上、100%未満」といった生産量割合で表現する場合や、「0トン/日超、10トン/日以下」といった日量換算の減産量で表現する場合を例示できる。
【0029】
また、減産を行っていた期間の長さは、1分ごとの生産データを用いる場合であれば、各々減産が1分間発生していたとカウントして、その期間を積算する。減産期間の長さは、運転データや生産データを取得した全期間や、1年、1ヶ月などの所定の期間に対する期間割合(%)で表現してもよいし、総時間数、総分数で表現してもよい。
【0030】
しかる後、稼働解析の結果として、減産が行われていた期間の長さと、前記減産量の大きさとの対応関係を、制約項目ごとのグラフとして可視化する(
図2の処理P4)。
図3、
図4は、
図2の処理P1~P3を実施して解析した各制約項目について、減産が発生した期間(生産量データが基準生産量未満であった期間)の長さを減産量の大きさに応じて棒グラフにまとめた結果である。
【0031】
図3はAトレイン側の稼働解析の結果を示し、
図4はBトレイン側の稼働解析の結果を示している。各図中、横軸は減産が発生した期間を示し、1年の稼働期間中の減産発生時間割合[%/年]を記載してある。また、縦軸に示す減産量は、フル生産量に対する生産量割合を5%ごとの範囲に区切って記載してある。
【0032】
図3に示す解析結果によれば、Aトレインは、生産量が75%以上~100%未満の広い範囲に亘って、予冷用冷媒の冷媒圧縮機31aの吐出圧上限値(
図3中には「C3圧縮機吐出圧上限」と記載)がボトルネックとなって、減産が発生する場合があることが分かる。
【0033】
一方、
図4に示す解析結果によれば、Bトレインは、予冷用冷媒の冷媒圧縮機31aの吐出圧上限値がボトルネックとなって減産が発生する割合は多いが、減産量は85%以上~100%未満の範囲に限定されることが分かる。またAトレインと比較して、Bトレインでは、酸性ガス含有量上限値がボトルネックとなって減産が発生する頻度は少ないことが分かる。
【0034】
ここで、上述の運転解析を行うにあたり、減産が発生している所定の期間中に、複数の制約項目にて運転制約に対する抵触が発生している場合もあり得る。
この場合には
図3、4に示す各制約項目(*1~*5)に対して優先順位を定めることができる。そして、より優先順位の高い制約項目についての減産期間算出のために用いられた生産量データは、残りの制約項目についての減産期間の算出には用いないようにしてもよい。
【0035】
例えば
図5中に「重複期間」と併記した期間は、吸収液循環量(*4)とNG中の酸性ガス含有量(*5)との2つの制約項目にて運転制約に対する抵触が発生している。そこでNG中の酸性ガス含有量よりも、吸収液循環量を優先させて生産量データとの対応付けを行うことにより、減産期間を重複カウントしないようにすることができる。
【0036】
一方で、当該重複期間においてどのような制約項目がボトルネックとなっているのかを識別できるように、ある制約項目(
図5の例では「吸収液循環量」)との対応付けが行われた生産量データに対し、残りの運転制約(同図の例では「酸性ガス含有量」)についても重複して対応付けを行い、当該重複した減産期間を計算してもよい。この結果、複数のボトルネックに対応しなければ、減産の解消を図ることが困難な制約項目を把握することができる。
【0037】
さらにこの場合は、
図5の棒グラフについて、「吸収液循環量のみ」に起因する減産期間、「吸収液循環量及び酸性ガス含有量の双方」に起因する減産期間、「酸性ガス含有量のみ」に起因する減産期間という区分を作って稼働解析を行ってもよい。
【0038】
なお、
図3~5に示すグラフは、稼働解析結果の可視化の一例であり、他の形式のグラフを用いてもよい。
図3、4に示す各棒グラフの長さに替えて、円グラフの円の大きさで減産期間を表し、各円グラフ内にボトルネックとなった制約項目の割合を示す場合を例示できる。
また、グラフによって稼働解析結果を可視化することは、必須の要件ではなく、
図2の処理P4を省略し、稼働解析のデータのみに基づいて後段の検討を行ってもよい。
【0039】
図2の説明に戻ると、以上に説明した処理P1~P4は、例えばコンピュータを用いてデータの取得やデータ処理、解析結果の可視化が行われる。特に処理P2のデータ処理は、制御対象機器の運転制約への抵触の有無の判定、抵触の発生した制約項目(ボトルネック)と生産データとの対応付けがコンピュータを用いて実施される。
そして、これらの処理の結果をまとめた解析結果に基づき、各ボトルネック解消後の増産効果を推定する(処理P5)。ボトルネックごとに、各減産量範囲と、当該減産量範囲に対応する減産期間とを乗算した結果を足し合わせることにより、当該ボトルネックを解消できた場合の増産量を特定する。そして、当該増産量から見込まれる収益の増加分を増産効果と推定できる。
【0040】
次いで、増産効果と、各ボトルネックの解消に要する費用とを比較した費用対効果に基づき、推奨するボトルネック解消手段を選定する。
図6は、各種のボトルネック解消手段を、その実施難易度と、増産効果とに対応付けてプロットした図である。横軸に示す難易度は、ボトルネックの解消に必要な費用や工期、運転やメンテナンスのしやすさなどを総合的に考慮して定められる。縦軸に示す増産効果は、上述の稼働解析の結果から求めることができる。
図3、4に示すデータ処理の結果を用いることにより、各施策についての費用対効果が明確になり、より効果的な施策を選定するための判断材料を提供することができる。
【0041】
また例えば、LNGプラントの運転において、初めに予冷用冷媒の冷媒圧縮機31aの吐出圧力上限値に係るアラームが発報し、その結果、オペレータがLNGの減産を行って、当該吐出圧力が運転管理値範囲内に復帰したとする。このため、LNGの減産が継続しているにもかかわらず、
図1に示す各制約項目(*1~*5)においては、運転制約に対する抵触は発生していない場合がある。このような場合には、
図3、4の「その他」の要因として計上される減産が発生していることになる。
【0042】
このとき、例えば
図6中に示す施策のなかで比較的、実施が容易な予冷用冷媒の凝縮器であるACHEの吸気温度低減(同図中には「C3凝縮器(ACHE)吸気温度低減」と記載してある)を行ったとする。
この場合には、
図3、4中に「C3圧縮機吐出上限(*1)」と記されたボトルネックに起因する減産の一部を解消できる。これに加えて、上述の例のような運転調整の実施に伴って「その他」の要因に計上された減産の一部を解消することもできる。
【0043】
本例の稼働解析方法によれば、LNGプラントの生産量データと運転データとを時系列に沿って対応付け、複数の運転制約の項目(制約項目)について、減産量の大きさに応じて、減産期間(生産量データが基準生産量未満であった期間)の長さを求めるので、減産に対する各運転制約項目(ボトルネック)の影響度を明確にすることができる。
【0044】
ここで
図1に示す例では、NGの予冷及びMR(液化用冷媒)の冷却を行うためにC3冷媒を用いるLNGプラントについて本例の運転解析方法を適用した例を説明した。但し、本例の運転解析方法を適用可能なLNGプラントは、
図1に示す例に限定されない。
例えば予冷用冷媒や冷媒冷却用冷媒(本例ではC3冷媒)を用いず、液化用冷媒である混合冷媒(MR)のみを用いた1段階圧力式MR方式のLNGプラントであってもよい。
【0045】
また、予冷用冷媒を用いる場合においても、単独の液化用冷媒(冷媒原料:窒素やメタン)を用いたLNGプラントでもよい。反対に、予冷用冷媒についてもプロパンやプロピレンなどの単独の冷媒原料を用いる場合に限定されず、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどの混合冷媒を用いてもよい。また、窒素やメタンを冷媒原料とする過冷却用冷媒を用いてLNGを過冷却する過冷却器を備えたLNGプラントであってもよい。
この他、プロパン冷媒、エチレン冷媒、メタン冷媒を用いて、NGを順次、冷却することによりLNGを得るカスケード方式のLNGプラントに対しても、本技術を適用することができる。
【0046】
さらに、気液分離部11、水銀除去部12、酸性ガス除去部13や水分除去部14も様々な構成例を採用することができる。例えば、NGから酸性ガスを分離する分離膜モジュールを用いて酸性ガスの除去を行ってもよい。
【0047】
この他、天然ガスからLPG(Liquefied Petroleum Gas)及び重質分の少なくとも一方を分離・回収し、軽質分はガスの状態で出荷する天然ガス処理プラントに対しても本例の稼働解析方法は適用することができる。この場合には、LPGや重質分、ガスが製品となる。
【符号の説明】
【0048】
13 酸性ガス除去部
15 予冷部
16 液化・過冷却部
31a、31b
冷媒圧縮機
32 G/T