(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】ラック列給電システム
(51)【国際特許分類】
H05K 7/18 20060101AFI20220803BHJP
G06F 1/18 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
H05K7/18 E
H05K7/18 J
G06F1/18 D
(21)【出願番号】P 2017229408
(22)【出願日】2017-11-29
【審査請求日】2020-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000162135
【氏名又は名称】共同カイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 建
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸彦
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-062379(JP,A)
【文献】特開2015-216262(JP,A)
【文献】特開平07-274360(JP,A)
【文献】特開2006-353004(JP,A)
【文献】特開2010-255886(JP,A)
【文献】実開平05-025785(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/18
G06F 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を収納したラックを列設したラック列に対して、当該ラックの上方に配設されたバスダクトからラック内の電子機器に電源を供給するラック列給電システムであって、
前記ラック列の上部
であって前記ラックの天板に、前記バスダクトを吊り下げて支持する吊り下げ手段
が設置され、当該吊り下げ手段に前記バスダクトが吊り下げられて成り、
前記バスダクトの適宜部位には、前記ラック内の電子機器に電源を供給する引き込み線を、バスダクト内の電源線に接続するための開口部が設けられて成ることを特徴とするラック列給電システム。
【請求項2】
前記吊り下げ手段は、少なくとも前記ラック列の列設方向の両端に位置するラックの上部に設けられており、
前記バスダクトは、前記吊り下げ手段によってラック列上部でラック列設方向に掛け渡されていることを特徴とする請求項1記載のラック列給電システム。
【請求項3】
前記吊り下げ手段は、前記ラックの天板上でラック前後方向に対となって起立配置した支柱部を有すると共に、
前記支柱部の上部は折り曲げられて下方に向けられ、その端部に装着したフックを有し、
前記フックに係止された紐状部材によって前記バスダクトが吊り下げられることを特徴とする請求項1又は2記載のラック列給電システム。
【請求項4】
前記吊り下げ手段は、前記ラックの天板上でラック前後方向に対となって立設した立設部と、前記立設部間に掛け渡される掛け渡し部とからなると共に、
前記掛け渡し部に懸下された懸下手段を介して前記バスダクトが吊り下げられることを特徴とする請求項1又は2記載のラック列給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバ等の電子機器を収納したラックを列設したラック列に対して電源を供給するラック列給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーバを収納したラックが多数列設されたデータセンタ等では、電源線をダクトに収容したバスダクトをラック列に沿って配設し、バスダクトから分岐した引き込み線により各ラックに給電する配電構造が普及している。
例えば、特許文献1では、列設されたラック上において個々のラックに固定部材を配置し、この固定部材を介してバスダクトがラックに固定され、個々のラックに電源を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ラック上にバスダクトを固定した構造は、各ラックに連結されるため、ラックの増設や交換に対して自由度がなく、その都度バスダクトを取り外すこととなった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、バスダクトをラック上に配設する構造であっても、ラックの増設や交換がし易いラック列給電システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、電子機器を収納したラックを列設したラック列に対して、当該ラックの上方に配設されたバスダクトからラック内の電子機器に電源を供給するラック列給電システムであって、ラック列の上部であってラックの天板に、バスダクトを吊り下げて支持する吊り下げ手段が設置され、当該吊り下げ手段にバスダクトが吊り下げられて成り、バスダクトの適宜部位には、ラック内の電子機器に電源を供給する引き込み線を、バスダクト内の電源線に接続するための開口部が設けられて成ることを特徴とする。
この構成によれば、バスダクトはラック上で吊り下げ支持されるため、ラックを動かし易く増設や交換等がし易い。また、バスダクトの設置は吊り下げる作業で済み、ダクトの設置作業は簡易で済む。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、吊り下げ手段は、少なくともラック列の列設方向の両端に位置するラックの上部に設けられており、バスダクトは、吊り下げ手段によってラック列上部でラック列設方向に掛け渡されていることを特徴とする。
この構成によれば、バスダクトは、少なくとも左右2箇所が吊り下げ支持されてラック列の上方に配設されるため、安定して支持できる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、吊り下げ手段は、ラックの天板上でラック前後方向に対となって起立配置した支柱部を有すると共に、支柱部の上部は折り曲げられて下方に向けられ、その端部に装着したフックを有し、フックに係止された紐状部材によってバスダクトが吊り下げられることを特徴とする。
この構成によれば、バスダクトはラックの前後方向から紐状部材で吊り下げ支持されるため、安定した状態で支持できる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、吊り下げ手段は、ラックの天板上でラック前後方向に対となって立設した立設部と、立設部間に掛け渡される掛け渡し部とからなると共に、掛け渡し部に懸下された懸下手段を介してバスダクトが吊り下げられることを特徴とする。
この構成によれば、バスダクトはゲート状部材から吊り下げ支持されるため、安定した状態で堅牢に支持できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バスダクトはラック上で吊り下げ支持されるため、ラックを動かし易く増設や交換等がし易い。また、バスダクトの設置は吊り下げる作業で済み、ダクトの設置作業は簡易で済む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るラック列給電システムの一例を示す説明図であり、ラック列の斜視図を示している。
【
図6】ラック列給電システムの他の例を示す説明図であり、ラック列の斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1~4は本発明に係るラック列給電システムの一例を示すラック列の説明図であり、
図1は斜視図、
図2は正面図、
図3は平面図、
図4は右側面図である。それぞれの図において、1はサーバ等の電子機器を収納するラック、2はバスダクト、4はバスダクト2を吊り下げて支持する吊り下げ部材(吊り下げ手段)、5はラック1の中への引き込み線(図示せず)をバスダクト2に接続する際に使用される分岐ボックス、6は吊り下げ部材4とバスダクト2との間に掛け渡されているワイヤである。ここでは、ラック列が4つのラック1を列設して形成されている状態を示している。
【0013】
ラック1は、前面及び背面にそれぞれ扉(前面扉1a,背面扉1b)を備え、前後から開閉可能に構成されている。また天板1c、左右側板1dを備えてラック1は個々に閉塞できるよう構成されている。そして、天板1cにはバスダクト2から電源を引き込むための引き込み口11が開口形成されている。
尚、ラック1に収納されている電子機器に接続される通信線等は、ラック1の底部に設けられている開口部(図示せず)から導入される。
【0014】
バスダクト2は、金属製の四角形筒体から成るダクト2aに、電源線としての複数の導体バー3を収容して構成され、ラック列全体の幅に合わせた長さを有している。
図1ではラック1の幅の4倍の長さを有して4つのラック1を列設した幅と等しい長さとなっている。導体バー3は、帯状の金属板から成り、幅方向が縦向きに配置されて前後方向に重なるように複数の導体バー3がダクト2aに収容されている。
尚、各導体バー3は、適宜部位が絶縁部材により支持されているし、製造時のダクト2aの長さは任意であり、列設されたラック1の全体の幅より短ければ連結すれば良い。
【0015】
図5はA部の拡大図を示し、この
図5に示すようにバスダクト2の上面にはラック1内に導入される引き込み線を接続するための開口部22が設けられている。ただし、開口部22は埃等が入らないように閉塞部材23で閉塞されている。この閉塞部材23は、分岐ボックス5の導体バー3への接続操作により、分岐ボックス5の端子部(図示せず)の押圧により閉塞部材23が開扉し、ダクト2a内の導体バー3との接続が可能となる。
尚、バスダクト2の一方の端部は、天井等から配設された電源線の接続に使用されるし、使用しない他方の端部は、エンドキャップ等で施蓋される。
【0016】
吊り下げ部材4は、
図5に示すように上部がU字状に折り曲げられて下方に向けられた支柱部4aと、この支柱部4aの先端に取り付けられたフック4bとから成り、支柱部4aの基部はラック1の天板1cに固定されている。
具体的に、ラック1の天板1cの裏面となるラック1内に補強部材(図示せず)が配置され、補強部材を介して支柱部4aの基端部がボルト等で固着され、支柱部4aが起立配置される。こうしてラック列の左右に2本ずつ、計4本の吊り下げ部材4が取り付けられ、天板1cの前後位置に配置された吊り下げ部材4は互いに向き合わせて配置されている。
【0017】
吊り下げ部材4に対応するバスダクト2の吊り下げ位置には、ワイヤ6を取り付けるための連結部材7が取り付けられている。連結部材7は、
図5に示すようにダクト2aを上下から把持する2枚の把持片7a,7bにより構成され、上側の把持片7aの両端にワイヤ6を挿通して連結するための孔7cが穿設されている。
この孔7cと吊り下げ部材4のフック4bとの間にワイヤ6が掛け渡され、バスダクト2は空中に配置される。尚、ここでは2枚の把持片7a,7bは同一の部材が使用されている。
【0018】
分岐ボックス5は、内部に分岐ブレーカ(図示せず)が組み込まれており、下部にバスダクト2の導体バー3に接続するための接続部5a(
図4に示す)を有し、側部に引き込み線を接続するための端子5bを有している。この分岐ボックス5のバスダクト2への装着操作により、下方に突設された接続部5aが導体バー3に接続され、端子5bに接続された引き込み線が導体バー3に接続される。
【0019】
このように、バスダクト2はラック1上で吊り下げ支持されるため、ラック1を動かし易く増設や交換等がし易い。また、バスダクト2の設置は吊り下げる作業で済み、バスダクト2の設置作業は簡易で済む。
更に、バスダクト2は、左右2箇所が吊り下げ支持されてラック列の上方に配設されるため、安定して支持できるし、バスダクト2はラック1の前後方向からワイヤ6で吊り下げ支持されるため、安定した状態で支持できる。
尚、バスダクト2をワイヤ6で吊り下げているが、これに限定されるもので無く、堅牢な紐状部材であれば他の部材が使用できる。
【0020】
図6,7はラック列給電システムの他の例を示し、
図6はラック列の斜視図、
図7はB部拡大図である。上記実施形態とはバスダクト2を吊り下げる構造が異なり、以下相違点を説明する。尚、上記形態と共通する構成要素には同一の符号を付与して説明を省略する。
ラック列の左右端部に配置されたラック1の天板1c上には、天板1cから立設した立設部14aと立設部14a間に掛け渡した水平な掛け渡し部14bとから成るコ字状に形成されたゲート状部材(吊り下げ手段)14が設けられ、このゲート部材14にバスダクト2が懸下されている。
【0021】
具体的に、立設部14aと掛け渡し部14bから成るコ字状に形成されたゲート状部材14は、金属棒を溶接して形成され、上記形態の支柱部4aと同様に天板1cにボルト等で固着し、ラック列上でラック列方向である左右から対向するように起立配置されている。そして、このゲート状部材14の水平な掛け渡し部にバスダクト2の幅に合わせて縦穴が穿設され、棒片であるボルト16を挿通して垂下させている。
こうして垂下させたボルト16の下端に、上記形態と同様にバスダクト2を挟んでいる2枚の把持片7a,7bから成る連結部材7を連結してゲート状部材14から吊り下げてバスダクト2が配置されている。
【0022】
このように、バスダクト2はゲート状部材14から吊り下げ支持されるため、安定した状態で堅牢に支持できる。
【0023】
尚、上記実施形態では、バスダクト2の前後2カ所(ラック列の左右2カ所)を吊り下げ手段4で支持しているが、吊り下げる部位はバスダクト2の左右2カ所に加えて、中間位置等他の部位も加えて支持しても良い。
また、分岐ボックス5を装着する部位をバスダクト2の上面としたが、ダクト2aの下面に開口部11を形成して下面に装着しても良い。
更に、ゲート状部材14に垂下させる形態は、ゲート状部材14とバスダクトの間に空間を設けているが、ゲート状部材14とバスダクト2を密着させても良い。
【符号の説明】
【0024】
1・・ラック、2・・バスダクト、2a・・ダクト、3・・導体バー(電源線)、4・・吊り下げ部材(吊り下げ手段)、4a・・支柱部、4b・・フック、5・・分岐ボックス、6・・ワイヤ(紐状部材)、7・・連結部材、11・・開口部、14・・ゲート状部材(吊り下げ手段)、16・・棒片(懸下手段)。