(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び射出成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20220803BHJP
C08K 7/08 20060101ALI20220803BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20220803BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20220803BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20220803BHJP
B29C 70/12 20060101ALI20220803BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20220803BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20220803BHJP
B29K 105/12 20060101ALN20220803BHJP
【FI】
C08L23/10
C08K7/08
C08K5/098
C08K3/34
B29C45/00
B29C70/12
B29C70/42
B29K101:12
B29K105:12
(21)【出願番号】P 2019015609
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】593119527
【氏名又は名称】白石カルシウム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 淳匡
(72)【発明者】
【氏名】南野 裕
(72)【発明者】
【氏名】江口 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖昭
(72)【発明者】
【氏名】内田 均
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-311018(JP,A)
【文献】特開平05-279526(JP,A)
【文献】特開2011-144278(JP,A)
【文献】特開平01-165643(JP,A)
【文献】特開平08-134321(JP,A)
【文献】特開2010-090199(JP,A)
【文献】特開2013-112718(JP,A)
【文献】特開2017-088742(JP,A)
【文献】特開2018-104673(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0175790(US,A1)
【文献】特開2019-019289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
B29C45/00
B29C70/00- 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂と、
オレフィン系エラストマーと、
アスペクト比が、35~60の範囲内にある、タルクと、
平均繊維径が0.1μm~2μmであり、平均繊維長が8μm~30μmである、繊維状硫酸マグネシウムと、
脂肪酸マグネシウム塩及び脂肪酸アルミニウム塩のうち少なくとも一方である、金属石鹸と、
を含み、
前記オレフィン系エラストマーの含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.2重量部~2重量部の範囲内にあり、
前記タルクの含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、2重量部~5重量部の範囲内にあり、
前記繊維状硫酸マグネシウムの含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、2重量部~5重量部の範囲内にあり、
前記金属石鹸の含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.01重量部~1重量部の範囲内にある、樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂肪酸マグネシウム塩及び脂肪酸アルミニウム塩のうち少なくとも一方が、極性基を含む脂肪酸塩である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記金属石鹸が、脂肪酸マグネシウム塩である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
結晶核剤をさらに含み、
前記結晶核剤の含有量が、前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.005重量部~1重量部の範囲内にある、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物のJIS K7210に準拠して測定されたMFRが、15g/10分~60g/10分の範囲内にある、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物により構成されている、射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂を含む樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた射出成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の内装部品や外装部品等の用途においては、燃費向上等を目的として、更なる軽量化が求められており、熱可塑性樹脂の使用割合を増やす検討がなされている。
【0003】
下記の特許文献1には、ポリプロピレン樹脂を40~50質量%、オレフィン系熱可塑性エラストマーを20~30質量%、50%粒子径(D50)が11~15μmであるタルクを25~35質量%、長さが100μm以下の繊維状充填剤を1質量%以上2質量%未満、含有することを特徴とする樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、プロピレン-エチレンブロック共重合体100重量部に、平均粒径1~10μmのタルク1~20重量部、平均繊維径0.1~1.5μmで平均繊維長10~30μmの繊維状硫酸マグネシウム1~20重量部、及びエラストマー1~100重量部を含有してなるポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2では、タルクと繊維状硫酸マグネシウムの重量比が3:1~1.5:1の範囲であり、樹脂組成物の密度が0.950~1.000g/cm3であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-132929号公報
【文献】特開2013-112718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2では、軽量化を図りつつ、剛性及び耐衝撃性を向上させる試みがなされている。しかしながら、曲げ弾性などの剛性と耐衝撃性とは相反する物性であることから、両立を図ることが困難である。また、たとえ剛性及び耐衝撃性の双方を高められたとしても、それによって重量が重くなるという問題がある。そのため、特許文献1や特許文献2の樹脂組成物を用いても、軽量化を図りつつ、剛性及び耐衝撃性の双方を高めることは、なお困難であった。
【0007】
本発明の目的は、軽量化を図りつつ、しかも剛性及び耐衝撃性の双方を高めることを可能とする、樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた射出成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂と、オレフィン系エラストマーと、アスペクト比が、35~60の範囲内にある、タルクと、平均繊維径が0.1μm~2μmであり、平均繊維長が8μm~30μmである、繊維状硫酸マグネシウムと、脂肪酸マグネシウム塩及び脂肪酸アルミニウム塩のうち少なくとも一方である、金属石鹸と、を含み、オレフィン系エラストマーの含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.2重量部~2重量部の範囲内にあり、タルクの含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、2重量部~5重量部の範囲内にあり、繊維状硫酸マグネシウムの含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、2重量部~5重量部の範囲内にあり、金属石鹸の含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.01重量部~1重量部の範囲内にあることを特徴としている。
【0009】
本発明においては、脂肪酸マグネシウム塩及び脂肪酸アルミニウム塩のうち少なくとも一方が、極性基を含む脂肪酸塩であることが好ましい。
【0010】
本発明においては、金属石鹸が、脂肪酸マグネシウム塩であることが好ましい。
【0011】
本発明においては、結晶核剤をさらに含み、結晶核剤の含有量が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.005重量部~1重量部の範囲内にあることが好ましい。
【0012】
本発明においては、樹脂組成物のJIS K7210に準拠して測定されたMFR(230℃)が、15g/10分~60g/10分の範囲内にあることが好ましい。
【0013】
本発明の射出成型品は、本発明に従って構成される樹脂組成物により構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軽量化を図りつつ、高いレベルで剛性及び耐衝撃性の両立を図ることを可能とする、樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた射出成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂と、オレフィン系エラストマーと、タルクと、繊維状硫酸マグネシウムと、金属石鹸とを含む。上記タルクのアスペクト比は、35~60の範囲内にある。繊維状硫酸マグネシウムの平均繊維径は、0.1μm~2μmである。繊維状硫酸マグネシウムの平均繊維長は、8μm~30μmである。また、金属石鹸は、脂肪酸マグネシウム塩及び脂肪酸アルミニウム塩のうち少なくとも一方である。
【0017】
また、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、オレフィン系エラストマーの含有量は0.2重量部~2重量部の範囲内にあり、タルクの含有量は2重量部~5重量部の範囲内にあり、繊維状硫酸マグネシウムの含有量は2重量部~5重量部の範囲内にあり、金属石鹸の含有量は、0.01重量部~1重量部の範囲内にある。
【0018】
本発明者らは、ポリプロピレン系樹脂と、オレフィン系エラストマーと、上記特定のタルクと、上記特定の繊維状硫酸マグネシウムと、上記特定の金属石鹸とを、上記特定の含有量で含む樹脂組成物が、軽量化を図りつつ、しかも剛性及び耐衝撃性の双方を高め得ることを見出した。
【0019】
以下、本発明の樹脂組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0020】
(ポリプロピレン系樹脂)
本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂を含んでいる。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、プロピレンの単独重合体や、プロピレンと他のオレフィンモノマーとの共重合体を用いることができる。上記他のオレフィンモノマーとしては、特に限定されないが、エチレンやブテン等を用いることができる。上記共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0022】
なかでも、剛性をより一層高める観点からは、上記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体であることが好ましい。一方、耐衝撃性をより一層高める観点からは、上記ポリプロピレン系樹脂は、例えば、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体などの共重合体であることが好ましい。
【0023】
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、好ましくは5g/10分以上、より好ましくは10g/10分以上、好ましくは120g/10分以下、より好ましくは100g/10分以下である。ポリプロピレン系樹脂のMFRが上記下限値以上である場合、成形性をより一層高めることができる。ポリプロピレン系樹脂のMFRが上記上限値以下である場合、剛性をより一層高めることができる。本明細書において、MFRは、JIS K7210に準拠して230℃、21.2Nの条件で測定することができる。
【0024】
樹脂組成物100重量%中におけるポリプロピレン系樹脂の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。ポリプロピレン系樹脂の含有量が上記下限値以上である場合、剛性をより一層高めることができる。ポリプロピレン系樹脂の含有量が上記上限値以下である場合、耐衝撃性や成形性をより一層高めることができる。
【0025】
(オレフィン系エラストマー)
本発明の樹脂組成物は、オレフィン系エラストマーを含んでいる。
【0026】
オレフィン系エラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-へキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体等のエチレン-α-オレフィン共重合体;エチレン-プロピレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-イソプレン共重合体等のエチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体;エチレン-エチレン-ブチレン-エチレン共重合体などのエラストマーを用いることができる。これらは、ランダム共重合体であってもよいが、ブロック共重合体であることが望ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0027】
オレフィン系エラストマーの含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.2重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、2重量部以下、好ましくは1.8重量部以下である。オレフィン系エラストマーの含有量が上記下限値以上である場合、耐衝撃性をより一層高めることができる。オレフィン系エラストマーの含有量が上記上限値以下である場合、剛性をより一層高めることができる。
【0028】
(タルク)
本発明の樹脂組成物は、タルクを含んでいる。
【0029】
タルクのアスペクト比は、35以上、好ましくは40以上、60以下、好ましくは55以下である。タルクのアスペクト比が上記範囲内にある場合、耐衝撃性を高めつつ、剛性をより一層高めることができる。なお。アスペクト比(長さ/厚み)は、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した300個の粒子の平均値とすることができる。
【0030】
タルクの平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。タルクの平均粒子径が上記範囲内にある場合、耐衝撃性を維持しつつ、剛性をより一層高めることができる。なお、タルクの平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した300個の粒子の平均値とすることができる。
【0031】
タルクの含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、2重量部以上、好ましくは3重量部以上、5重量部以下、好ましくは4重量部以下である。タルクの含有量が上記下限値以上である場合、剛性をより一層高めることができる。タルクの含有量が上記上限値以下である場合、耐衝撃性をより一層高めることができ、より一層軽量化を図ることができる。
【0032】
(繊維状硫酸マグネシウム)
本発明の樹脂組成物は、繊維状硫酸マグネシウムを含んでいる。
【0033】
繊維状硫酸マグネシウムの平均繊維径は、0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、2μm以下、好ましくは1.5μm以下である。繊維状硫酸マグネシウムの平均繊維径が上記範囲内にある場合、剛性を高めつつ、耐衝撃性をより一層高めることができる。
【0034】
繊維状硫酸マグネシウムの平均繊維長は、8μm以上、好ましくは10μm以上、30μm以下、より好ましくは25μm以下である。繊維状硫酸マグネシウムの平均繊維長が上記範囲内にある場合、剛性を高めつつ、耐衝撃性をより一層高めることができる。
【0035】
なお、繊維状硫酸マグネシウムの平均繊維径及び平均繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した300個の繊維の平均値とすることができる。
【0036】
繊維状硫酸マグネシウムの含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、2重量部以上、好ましくは2.5重量部以上、5重量部以下、好ましくは4.5重量部以下である。繊維状硫酸マグネシウムの含有量が上記範囲内にある場合、剛性を高めつつ、耐衝撃性をより一層高めることができる。
【0037】
(金属石鹸)
本発明の樹脂組成物は、金属石鹸を含んでいる。
【0038】
金属石鹸は、脂肪酸マグネシウム塩又は脂肪酸アルミニウム塩である。また、金属石鹸は、脂肪酸マグネシウム塩及び脂肪酸アルミニウム塩の双方であってもよい。もっとも、剛性及び耐衝撃性の双方をより一層高める観点から、金属石鹸は、脂肪酸マグネシウム塩であることが好ましい。
【0039】
金属石鹸としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。なかでも、剛性及び耐衝撃性の双方をより一層高める観点から、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウムや、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウムのように、ヒドロキシル基などの極性基を有する脂肪酸塩であることが好ましい。12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウムのように、ヒドロキシル基などの極性基を有する脂肪酸マグネシウム塩であることがより好ましい。
【0040】
金属石鹸の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.01重量部以上、好ましくは0.02重量部以上、1重量部以下、好ましくは0.8重量部以下である。金属石鹸の含有量が上記範囲内にある場合、剛性及び耐衝撃性の双方をより一層高めることができる。
【0041】
(結晶核剤)
本発明の樹脂組成物は、さらに結晶核剤を含んでいてもよい。結晶核剤をさらに含む場合、耐衝撃性を高めつつ、剛性をより一層高めることができる。
【0042】
結晶核剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム等のカルボン酸金属塩、メチレンビス(2,4-ジ-t-Bu-フェニル)ホスフェートナトリウム等のリン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール等の多価アルコール誘導体、1,3,5-トリ(ジメチルイソプロピルアミノ)ベンゼン等のアミド化合物等を用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0043】
結晶核剤の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.002重量部以上、さらに好ましくは0.005重量部以上、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.8重量部以下である。結晶核剤の含有量が上記範囲内にある場合、耐衝撃性を高めつつ、剛性をより一層高めることができる。
【0044】
(その他の添加剤)
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分以外の他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、炭酸カルシウム、カオリンクレー、マイカ等の充填剤や、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、繊維状強化剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤などが挙げられる。その他の添加剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物100重量%に対して10重量%以下であることが好ましい。
【0045】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物のMFRは、15g/10分以上、好ましくは20g/10分以上、60g/10分以下、好ましくは50g/10分以下である。樹脂組成物のMFRが上記範囲内にある場合、成形性をより一層高めることができる。樹脂組成物のMFRは、JIS K7210に準拠して測定することができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物の比重は、好ましくは0.96g/cm3以下、より好ましくは0.95g/cm3以下である。樹脂組成物の比重が上記範囲内にある場合、より一層軽量化を図ることができる。
【0047】
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物は、上述した各成分を、従来公知の方法により、混合・混練して得ることができる。混合・混練方法としては、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機などを用いる方法が挙げられる。混練時の加熱温度は、各成分の融点を基準に決定される。
【0048】
[射出成形品]
本発明の射出成形品は、上述の樹脂組成物を従来公知の射出成形法によって成形することにより得ることができる。本発明の射出成型品は、上述の樹脂組成物を射出成形することにより得られるので、軽量化を図りつつ、しかも剛性及び耐衝撃性の双方を高めることができる。
【0049】
射出成形品としては、特に限定されないが、自動車の内装部品や外板を含む外装部品、鉄道車両や建築物の内装部品や外板を含む外装部品、電気製品の筐体や部品などを挙げることができる。自動車の内装部品や外装部品としては、例えば、ボンネットフード、フェンダー、バンパー、ドア、トランクリッド、ルーフ、ラジエータグリル、ホイールキャップ、インストルメントパネル、ピラーガーニッシュ、コンソール、グラブボックス、ドアトリムなどを挙げることができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明に従う具体的な実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
以下に、実施例及び比較例で用いた配合成分を示す。
【0052】
ポリプロピレン系樹脂:ポリプロピレン、日本ポリプロ社製、品番「NEWCON NBX03GH」、MFR:23g/10分
オレフィン系エラストマー:エチレン-オクテン共重合体、ダウ・ケミカル社製、品番「ENGAGE8842」
タルク:タルクA(日本タルク社製、品番「PAOG-2」、アスペクト比:50、平均粒子径:5μm)、タルクB(日本タルク社製、品番「RA-3」、アスペクト比:35、平均粒子径:5μm)、タルクC(日本タルク社製、品番「L-1」、アスペクト比:20、平均粒子径:5μm)、タルクD(日本タルク社製、品番「M-3」、アスペクト比:20、平均粒子径:10μm)
繊維状硫酸マグネシウム:宇部マテリアルズ社製、品番「モスハイジ」、平均繊維長:8μm~30μm、平均繊維径:0.5μm~1μm
金属石鹸:12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(日東化成工業社製、品番「MS-6」)、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム(日東化成社工業製、品番「AS-6」)、ステアリン酸マグネシウム(日東化成社工業社製、品番「MS-7」)、ステアリン酸ナトリウム(日東化成社工業社製、品番「CS-3」)
結晶核剤:メチレンビス(2,4-ジ-t-Bu-フェニル)ホスフェートナトリウム、ADEKA社製、品番「アデカスタブNA-11」
【0053】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂 100重量部と、ポリオレフィン系エラストマー 1.1重量部と、タルクA 3.8重量部と、繊維状硫酸マグネシウム 3.8重量部と、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム 0.043重量部とを混合し、二軸押出混練機を用いて、220℃、スクリュー回転速度300rpmで溶融混練して、樹脂組成物を調製した。
【0054】
次に、得られた樹脂組成物を射出成形機を用いて成形し、射出成形品を得た。射出成形の条件は、温度200℃、金型温度40℃とした。成形の前には、樹脂組成物を加熱乾燥機を用いて110℃で4時間乾燥した。
【0055】
(実施例2~6及び比較例1~6)
ポリプロピレン系樹脂の配合量、ポリオレフィン系エラストマーの配合量、タルクの種類若しくは配合量、繊維状硫酸マグネシウムの配合量、金属石鹸の種類、又は結晶核剤の配合量を下記の表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及び射出成形品を得た。
【0056】
(評価)
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物又は射出成形品につき、以下の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
【0057】
流動性(MFR);
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物について、JIS K7210に準拠して、230℃、21.2Nの条件で測定した。
【0058】
曲げ弾性率;
実施例及び比較例で得られた射出成形品について、JIS K7171に準拠して23℃で測定した。
【0059】
シャルピー衝撃強さ;
実施例及び比較例で得られた射出成形品について、JIS K7111に準拠して23℃で測定した。試験片は、ノッチ付きとした。
【0060】
比重;
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物について、JIS K7112に準拠して測定した。
【0061】