(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】マイクロニードル貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
A61M37/00 510
(21)【出願番号】P 2018556667
(86)(22)【出願日】2017-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2017044408
(87)【国際公開番号】W WO2018110510
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2016240336
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302005628
【氏名又は名称】株式会社 メドレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【氏名又は名称】清水 尚人
(72)【発明者】
【氏名】小林 勝則
(72)【発明者】
【氏名】濱本 英利
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-521527(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129184(WO,A1)
【文献】特表2004-503341(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194260(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0198189(US,A1)
【文献】特表2010-516337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚を伸張してマイクロニードルを穿刺し、皮膚に貼付するマイクロニードル貼付剤であって、
構成a)
マイクロニードルアレイが設置された面において、当該マイクロニードルアレイを挟んで
その一両端部分に皮膚に固定されるだけの粘着力のある粘着剤層を有し、
構成b)
上記構成aに係る粘着剤層と当該マイクロニードルアレイとで形成される軸方向に対して直交する軸方向のマイクロニードルアレイの両端部分には粘着剤層がないか、又は粘着剤層があっても、次の式(1)の関係を充足することを特徴とする、マイクロニードル貼付剤。
S×F<1.85L 式(1)
(式中、Sは、貼付剤のうち、
上記構成aに係る粘着剤層と当該マイクロニードルアレイとで形成される軸方向におけるマイクロニードルアレイの外周接線と貼付剤の外周とに挟まれる粘着剤層の面積(cm
2)であり、複数箇所存在する場合には、各面積を表す。Fは、
上記構成aに係る粘着剤層と当該マイクロニードルアレイとで形成される軸方向に対して直交する軸方向のマイクロニードルアレイの両端部分における粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Lは、マイクロニードルアレイの寸法において
、上記構成aに係る粘着剤層と当該マイクロニードルアレイとで形成される軸方向の距離(cm)を表す。)
【請求項2】
貼付剤、粘着剤層、及びマイクロニードルアレイの少なくとも一つの平面形状が、多角形、四角形、円形、又は楕円形である、請求項
1に記載のマイクロニードル貼付剤。
【請求項3】
粘着剤層及びマイクロニードルアレイの平面形状が四角形であって、
請求項1における式(1)が次の式(2)である、請求項
1又は2に記載のマイクロニードル貼付剤。
(a×b)×F<1.85L 式(2)
(式中、aは、粘着剤層の寸法において、
請求項1の構成aに係る粘着剤層と当該マイクロニードルアレイとで形成される軸方向におけるマイクロニードルアレイの外周と粘着剤層の外周との間の距離(cm)を、bは、粘着剤層の寸法においてaの方向に直交する軸方向の距離(cm)を表す。Fは、
請求項1の構成aに係る粘着剤層と当該マイクロニードルアレイとで形成される軸方向に対して直交する軸方向のマイクロニードルアレイの両端部分における粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Lは、マイクロニードルアレイの寸法において
、請求項1の構成aに係る粘着剤層と当該マイクロニードルアレイとで形成される軸方向の距離(cm)を表す。)
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか一項に記載のマイクロニードル貼付剤と、皮膚を伸張しマイクロニードルアレイを皮膚に移動・貼付するためのアプリケーターとを備えることを特徴とする、マイクロニードルアレイのデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードルアレイを担持した貼付剤に関するものである。特に、皮膚への固定性に優れた当該貼付剤と、その貼付剤の貼付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロニードルアレイを用いた薬剤の経皮投与は、近年になり盛んに研究され始めた分野である。そして、これまで多くの企業からマイクロニードルアレイの実用的な製造方法が検討されている(特許文献1、2)。また、マイクロニードルアレイを皮膚に貼付する方法についても、各種のデバイスを用いた方法が検討されている(特許文献3、4)。
しかし、皮膚を穿刺し貼付されたマイクロニードルアレイは、皮膚の反発力のために、皮膚から浮き上がることが起こり、充分な薬剤の注入効果が得られなくなる現象が問題となっている。特に、マイクロニードルアレイの皮膚穿刺性を向上させるために、皮膚に張力を掛けて引っ張り、マイクロニードルアレイを貼付する場合に、より顕著に皮膚が収縮してマイクロニードルアレイを浮き上がることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-273872号公報
【文献】再表2012-128363号公報
【文献】特表2010-516337号公報
【文献】特開2014-042788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、従来、皮膚に張力を掛けて引っ張り、マイクロニードルアレイを貼付する場合、皮膚が収縮してマイクロニードルないしマイクロニードルアレイ(以下、これらを単に「マイクロニードルアレイ」ともいう。)が浮き上がるという問題があった。そのため、マイクロニードルアレイの皮膚への固定を安定に維持できる新たなマイクロニードル貼付剤とその貼付方法の開発が望まれていた。
本発明の主な課題は、マイクロニードルアレイを担持した貼付剤に関して、皮膚への固定性に優れた新たな貼付剤とその貼付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者らは、貼付剤部分の材質を検討すると共に、粘着剤層の形状、及び貼付方法について検討を行った。
【0006】
まず、皮膚を伸張させてマイクロニードルの穿刺性を高めた後に、マイクロニードルアレイを貼付すれば、
図1に示すように穿刺後の皮膚の弛緩により、マイクロニードルアレイが浮き上がることになる。そこで、本発明者らは、マイクロニードルアレイを担持した貼付剤の適切な貼付方法の検討を進めた。その結果、皮膚を拡げて貼付するマイクロニードルアレイの貼付剤においては、
図2に示すように、皮膚を伸張する方向に対して実質的に粘着力が働かないよう貼付すると、本発明の目的を達成できることを見出した。例えば、
図2(a)と(b)に示すように、横方向に皮膚が伸張される場合には、(b)のように横方向のマイクロニードルアレイの両端には殆ど粘着剤層がなく、縦方向のマイクロニードルアレイの上下には広い粘着剤層が並ぶように貼付するとよい。更に
図2(c)のように、縦横の2方向で皮膚を伸張する場合には、伸張方向と異なる中間の方向に、広い粘着剤層がマイクロニードルアレイを挟んで並ぶように貼付するとよい。このように、皮膚の伸張方向はどのようであってもよいが、伸張方向と異なる方向に、広い粘着剤層ないし十分な粘着力のある粘着剤層がマイクロニードルアレイを挟んで並ぶように貼付すれば本発明の目的を達成できることを見出した。
従って、本発明として、皮膚が伸張される方向に実質的に貼付剤の粘着力が働かないように貼付することを特徴とする、マイクロニードルアレイを担持した貼付剤の貼付方法を挙げることができる。
【0007】
また、本発明者らは、本発明の貼付方法で用いる貼付剤の粘着剤層が、皮膚が伸張される方向のマイクロニードルアレイの両端部分にないか、あるいは粘着剤層があっても、皮膚への実質的な粘着力がない粘着剤層か、又は次の式(1)の関係を充足する粘着剤層であることが好ましいことを見出した。
【0008】
S×F<1.85L 式(1)
(式中、Sは、貼付剤のうち、皮膚が伸張される軸と直交するマイクロニードルアレイの外周接線と貼付剤の外周とに挟まれる粘着剤層の面積(cm2)であり、複数箇所存在する場合には、各面積を表す。Fは、皮膚が伸張される方向の粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Lは、マイクロニードルアレイの寸法において皮膚が伸張される方向と直交する軸方向の距離(cm)を表す。)
【0009】
上記の式(1)の関係を充足する貼付剤を作製することにより、装置により皮膚を伸張する場合、あるいは装置によらずに手で皮膚を拡げる場合において、マイクロニードルアレイの貼付剤は貼付後に浮き上がることなく、マイクロニードルが皮膚内に挿入されて固定される。
【0010】
また、本発明者らは、感圧性粘着面を備えた、伸縮せず、変形しない硬質な樹脂や金属などの平板で皮膚を粘着固定すれば、貼付したマイクロニードルアレイの浮き上がりを防止することができることを見出した。更に、この平板においては、マイクロニードルアレイの担持該当部分には平板がなく、穴が開いていても良く、その穴からマイクロニードルアレイを皮膚に圧着し、貼付することによっても目的を達することを見出した。即ち、伸張された皮膚に硬質の平板状の部材を貼付し、皮膚の収縮又は弛緩を防止することにより、マイクロニードルアレイの浮き上がりが抑制できることを見出した。加えて、伸張された皮膚において穿刺部分の周囲の皮膚を硬質の平板で固定し、平板がなく開口されている皮膚の部分にマイクロニードルアレイを貼付する形状の貼付剤であっても、本発明の目的を達成できることを見出した。
【0011】
本発明者らは、上記の知見に基づき、本発明を完成した。本発明の要旨は以下の通りである。
[1]皮膚が伸張される方向に実質的に貼付剤の粘着力が働かないように貼付することを特徴とする、マイクロニードル貼付剤の貼付方法。
[2]貼付剤の粘着力が働かないように貼付することが、
a)皮膚が伸張される方向のマイクロニードルアレイの両端部分には粘着剤層がないか、又は粘着剤層があっても、皮膚が伸張される方向のマイクロニードルアレイの両端部分には皮膚に固定されるだけの粘着力のない粘着剤層であって、
b)皮膚が伸張される方向とは異なる方向に、皮膚に固定されるだけの粘着力のある粘着剤層がマイクロニードルアレイを挟んで並ぶように貼付することである、
上記[1]に記載のマイクロニードル貼付剤の貼付方法。
[3]皮膚に固定されるだけの粘着力がないことが、次の式(1)の関係を充足することである、上記[2]に記載のマイクロニードル貼付剤の貼付方法。
S×F<1.85L 式(1)
(式中、Sは、貼付剤のうち、皮膚が伸張される軸と直交するマイクロニードルアレイの外周接線と貼付剤の外周とに挟まれる粘着剤層の面積(cm2)であり、複数箇所存在する場合には、各面積を表す。Fは、皮膚が伸張される方向の粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Lは、マイクロニードルアレイの寸法において皮膚が伸張される方向と直交する軸方向の距離(cm)を表す。)
[4]貼付剤、粘着剤層、及びマイクロニードルアレイの少なくとも一つの平面形状が、多角形、四角形、円形、又は楕円形である、上記[1]~[3]いずれか一項に記載のマイクロニードル貼付剤の貼付方法。
[5]粘着剤層及びマイクロニードルアレイの平面形状が四角形であって、式(1)が次の式(2)である、上記[4]に記載のマイクロニードル貼付剤の貼付方法。
(a×b)×F<1.85L 式(2)
(式中、aは、粘着剤層の寸法において、皮膚が伸張される方向と直交するマイクロニードルアレイの外周と粘着剤層の外周との間の距離(cm)を、bは、粘着剤層の寸法においてaの方向に直交する軸方向の距離(cm)を表す。Fは、皮膚が伸張される方向の粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Lは、マイクロニードルアレイの寸法において皮膚が伸張される方向と直交する軸方向の距離(cm)を表す。)
【0012】
[6]皮膚を伸張してマイクロニードルを穿刺し、皮膚に貼付するマイクロニードル貼付剤であって、
a)マイクロニードルアレイを挟んで皮膚が伸張される方向と異なる方向に設置される粘着剤層を有し、
b)皮膚が伸張される方向のマイクロニードルアレイの両端部分には粘着剤層がないか、又は粘着剤層があっても、次の式(1)の関係を充足することを特徴とする、マイクロニードル貼付剤。
S×F<1.85L 式(1)
(式中、Sは、貼付剤のうち、皮膚が伸張される軸と直交するマイクロニードルアレイの外周接線と貼付剤の外周とに挟まれる粘着剤層の面積(cm2)であり、複数箇所存在する場合には、各面積を表す。Fは、皮膚が伸張される方向の粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Lは、マイクロニードルアレイの寸法において皮膚が伸張される方向と直交する軸方向の距離(cm)を表す。)
[7]貼付剤、粘着剤層、及びマイクロニードルアレイの少なくとも一つの平面形状が、多角形、四角形、円形、又は楕円形である、上記[6]に記載のマイクロニードル貼付剤。
[8]粘着剤層及びマイクロニードルアレイの平面形状が四角形であって、式(1)が次の式(2)である、上記[7]に記載のマイクロニードル貼付剤。
(a×b)×F<1.85L 式(2)
(式中、aは、粘着剤層の寸法において、皮膚が伸張される方向と直交するマイクロニードルアレイの外周と粘着剤層の外周との間の距離(cm)を、bは、粘着剤層の寸法においてaの方向に直交する軸方向の距離(cm)を表す。Fは、皮膚が伸張される方向の粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Lは、マイクロニードルアレイの寸法において皮膚が伸張される方向と直交する軸方向の距離(cm)を表す。)
【0013】
[9]皮膚を伸張してマイクロニードルを穿刺し、皮膚に貼付するマイクロニードル貼付剤であって、
a)マイクロニードルアレイを挟んで皮膚が伸張される方向と異なる方向に設置される粘着剤層を有し、
b)貼付剤のうち、皮膚が伸張される軸と平行するマイクロニードルアレイの外周接線と貼付剤の外周とに挟まれる粘着剤層の保持力に係る保持時間が100秒以上、
c)皮膚が伸張される方向のマイクロニードルアレイの両端部分に粘着剤層がある場合には、皮膚が伸張される軸と直交するマイクロニードルアレイの外周接線と貼付剤の外周とに挟まれる粘着剤層の保持力に係る保持時間が120秒未満、
d)上記b)、c)において、挟まれる粘着剤層が複数箇所存在する場合には、各粘着剤層の保持力に係る保持時間がそれぞれ100秒以上、又は120秒未満、
を充足することを特徴とする、マイクロニードル貼付剤。
[10]皮膚が伸張される軸と平行するマイクロニードルアレイの外周接線と粘着剤層の外周とに挟まれる粘着剤層の保持力に係る保持時間が120秒以上である、上記[9]記載のマイクロニードル貼付剤。
[11]皮膚が伸張される軸と直交するマイクロニードルアレイの外周接線と粘着剤層の外周とに挟まれる粘着剤層の保持力に係る保持時間が100秒以下である、上記[9]又は[10]に記載のマイクロニードル貼付剤。
【0014】
[12]皮膚を伸張してマイクロニードルを穿刺し、皮膚に貼付するための、マイクロニードルアレイを含む貼付剤であって、
a)感圧性粘着剤が設置された硬質平板を有し、
b)マイクロニードルアレイが当該硬質平板上に設置されているか、又は
b’)当該硬質平板が中央部で盛り上がって中空になり、その中空部分の中央部の平面上にマイクロニードルアレイが設置されていることを特徴とする、マイクロニードルアレイを含む貼付剤。
[13]前記中空部分の天面及び/又は側面が変形し、マイクロニードルアレイが皮膚側に移動可能となっている、上記[12]に記載の貼付剤。
[14]前記天面及び/又は側面には、変形を促すための折り目やエッジが形成されている、上記[12]又は[13]に記載の貼付剤。
【0015】
[15]皮膚を伸張してマイクロニードルを穿刺し、皮膚に貼付するための補助具であって、
a)感圧性粘着剤が設置された硬質平板を有し、
b)当該硬質平板は中央に開口部を有するリング状であり、
c)当該開口部の大きさが、マクロニードルアレイの通過に支障のないサイズであることを特徴とする、補助具。
[16]硬質平板が硬質樹脂である、上記[15]に記載の補助具。
【0016】
[17]上記[6]~[14]いずれか一項に記載のマイクロニードル貼付剤と、皮膚を伸張しマイクロニードルアレイを皮膚に移動・貼付するためのアプリケーターとを備えていることを特徴とする、マイクロニードルアレイのデバイス。
[19]皮膚を伸張する工程(A)、伸張された皮膚表面にマイクロニードル貼付剤を適用する工程(B)、及び皮膚の伸張を解除する工程(C)を含み、粘着剤層の粘着力は、工程(A)における伸張軸との関係において、下記式(1’)を満たす、マイクロニードル貼付剤の貼付方法。
S’×F’<1.85L’ 式(1’)
(式中、Sは、伸張軸と直角をなすマイクロニードルアレイの外周接線tにより区画される粘着剤層のうち、マイクロニードルアレイを含まない区画Tの面積(cm2)を表す。Fは区画Tの粘着剤層の単位あたりの粘着力(N/cm)を表す。L’は、マイクロニードルアレイの伸張軸に対して直角方向の長さ(cm)を表す。)
[20]下記式(3)及び/又は(4)を満たすことを特徴とする、マイクロニードル貼付剤。
P×Q<1.85R 式(3)
(式中、Pは、マイクロニードルアレイの外周接線uにより区画される粘着剤層のうち、マイクロニードルアレイを含まない区画Uの面積(cm2)を表す。ここで、上記外周接線uは、主軸に平行である。Qは、区画Uの粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Rは、マイクロニードルアレイの、主軸方向の長さを表す。)
H×I>1.85J 式(4)
(式中、Hは、マイクロニードルアレイの外周接線wにより区画される粘着剤層のうち、マイクロニードルアレイを含まない区画Wの粘着剤層の面積(cm2)を表す。ここで、外周接線wは、主軸に垂直である。Iは、区画Wの単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Jは、マイクロニードルアレイの、主軸に対して垂直方向の長さを表す。)
[21]式(3)及び式(4)をともに満たす、上記[20]に記載のマイクロニードル貼付剤。
[22]主軸に平行なマイクロニードルアレイの外周接線uにより区画される粘着剤層のうち、マイクロニードルアレイを含まない区画Uの、粘着剤層の保持力における保持時間が120秒以下である、マイクロニードル貼付剤。
[23]主軸に垂直である外周接線wにより区画される粘着剤層のうち、マイクロニードルアレイを含まない区画Wの、粘着剤層の保持力における保持時間が100秒以上である、マイクロニードル貼付剤。
[24]区画Uの粘着剤層の保持力における保持時間が120秒以下であり、区画Wの粘着剤層の保持力における保持時間が100秒以上である、マイクロニードル貼付剤。
[25]さらに、式(3)及び/又は(4)を満たす、上記[22]~[24]いずれか一項に記載のマイクロニードル貼付剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るマイクロニードルアレイの貼付方法とそれに用いられるマイクロニードル貼付剤及びその貼付ないし穿刺の補助具は、マイクロニードルの穿刺性を向上させて、マイクロニードルないしそのアレイを皮膚に付着させるのに優れている。
マイクロニードルの穿刺対象の皮膚の状態は年齢により大きく異なっている。例えば、皮膚の伸縮性と弾力性は、子供、大人、老人となるに従い、伸縮性と弾力性が乏しくなって行く。そのため、マイクロニードルの穿刺性も大きな影響を受ける。本発明によれば、マイクロニードルの安定した穿刺性と薬物投与の定量性を図りながら、皮膚の弾力性に基づく穿刺性のバラツキを回避することができる。あるいは本発明によれば、皮膚収縮に基づくマイクロニードルアレイの皮膚からの浮き上がり現象を避けることができる。その結果、マイクロニードルアレイに担持された薬物の必要量の投与が達成できる。即ち、皮膚を伸張して穿刺を向上させ、貼付した後のマイクロニードル(アレイ)の皮膚から浮き上がりを回避することができ、マイクロニードルによる定量的な薬剤投与が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】皮膚を伸張してマイクロニードル貼付剤をそのまま貼付すると、皮膚が収縮してマイクロニードルアレイが浮き上がることを表す。各図において、上部はマイクロニードル貼付剤を、下部は皮膚を、それぞれ示す。上図は、皮膚を左右の矢印方向に引っ張って張力を掛けていることを示す。中図は、皮膚を引っ張ったままマイクロニードルが穿刺され、挿入されていることを示す。下図は、皮膚の引っ張りを止め、皮膚が縮み、貼付剤も縮もうとしていることを示す。
【
図2】マイクロニードル貼付剤の設置方向を表す。図中、矢印は皮膚の伸張方向を示す。MNはマイクロニードルアレイを示す。MNの周りの黒色部分は粘着剤層を示す。〇、×は、伸張した皮膚が収縮した際に、マイクロニードルアレイが皮膚より浮き上がるか否かを示す。○は、マイクロニードルアレイが浮き上がることがほとんどないか、少ないものを示す。×は、マイクロニードルアレイが浮き上がるものを示す。
【
図3】マイクロニードル貼付剤の設置方向(a)と、その皮膚の伸張方向での断面図(b)を表す。MNはマイクロニードルアレイを示す。MNの周りの黒色部分は粘着剤層を示す。(a)図において、左右の矢印は皮膚の伸張方向を示す。上下矢印は、貼付剤の長さを示す。(b)図において、左右矢印は長さaを示す。
【
図4】マイクロニードル貼付剤の形状ないし設置方向を表す。図中、矢印は皮膚の伸張方向を示す。MNはマイクロニードルアレイを示す。MNの周りの黒色部分は粘着剤層を示す。
【
図5】硬質平板を有し、中央部が中空となった、マイクロニードルアレイを含む貼付剤の具体例を表す。(d)図以外は中空部が盛り上がった側から見た斜視図(凸図)であり、(d)図は凹んだ側から見た斜視図(凹図)である。
【
図6】マイクロニードルアレイを皮膚に貼付するための補助具の具体例を表す。
【
図7】マイクロニードル貼付剤をヒト皮膚モデルに貼付しマイクロニードルを穿刺した際のX線マイクロCT測定写真(断面写真)である。
【
図8】マイクロニードルアレイを一定の圧力で皮膚に射出するためのバネ式治具を表す。左はその全体写真を、右2図はその正面断面模式図であって、左側はピストンが押されバネが伸びた状態を、右側はピストンが一定距離引き上げられバネが縮んだ状態を、それぞれ示す。
【
図9】実施例2で使用される貼付剤の形状を表した模式図である。MNはマイクロニードルアレイを示す。上方の左右矢印は、皮膚の伸張方向を示す。
【
図10】マイクロニードルアレイのデバイスの一例を上から見た平面透視図である。(a)は、皮膚伸張用の部材が2本のもの、(b)は、皮膚伸張用の部材が4本のものを示す。
【
図11】マイクロニードルアレイのデバイスの一例を表す。(a)は正面図を、(b)は平面図を、(c)は皮膚伸張用の部材を拡げた場合の正面図を、それぞれ示す。
【
図12】マイクロニードルアレイのデバイスの一例を表す。(a)は正面図を、(b)は裏面図(マイクロニードルアレイ側から見た図)を、(c)は(b)図の上下線での断面図を、それぞれ示す。
【
図13】マイクロニードルアレイのデバイスの一例を表す。(a)左及び(b)左は正面図を、(a)右及び(b)右は各左図の平面図を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において、用語「マイクロニードル貼付剤」は、支持体と感圧性粘着剤とからなる貼付剤の感圧性粘着剤側の面に、マイクロニードルアレイが担持された貼付剤である。マイクロニードル貼付剤において、感圧性粘着剤からなる層を「粘着剤層」と称する場合がある。粘着剤層は、支持体の全面に設置されていてもよく、一部に設置されていてもよい。
【0020】
用語「マイクロニードルデバイス(以下、単に「デバイス」と略称する場合がある。)」は、マイクロニードルアレイを皮膚に穿刺し、貼付剤を貼付するための装置(アプリケーター)であって、該装置にマイクロニードル貼付剤が皮膚に適用可能な状態に設置されたものである。上記アプリケーターは、皮膚を伸張して皮膚の弛緩を解消し、皮膚に緊張状態を付与し、これを保持するための機構を少なくとも具備する。
【0021】
本発明に係る「マイクロニードルアレイ」には、高さが100~1000μmの範囲内のマイクロニードルが50~1000本/cm2設置されている。マイクロニードルの本数が多ければ薬剤担持量を上げることができる。好ましいマイクロニードルの高さは、120~800μmの範囲内、より好ましくは150~600μmの範囲内である。
【0022】
マイクロニードルアレイの材質としては、マイクロニードルを皮膚に穿刺可能で薬物を担持できるものであれば特に制限されないが、例えば、金属、プラスチック、セラミックを挙げることができる。また、例えば、ステンレス、鉄、チタン、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリオレフィン類、ポリアクリル類、ポリシクロオレフィン類、シリコンを挙げることができる。ポリエステル類の中でも、ポリグリコール酸系生分解性樹脂、ポリ乳酸系生分解性樹脂などは生体内で徐々に分解することから安全性の点で好ましい。
【0023】
マイクロニードルの先端直径は、通常、1~20μmの範囲内である。患者の皮膚表皮層になめらかに突き刺さることの効果を高めるには、先端直径が1~10μmの範囲内のものが好ましい。一方、先端直径が30μmを超えると皮膚に穿刺する際の抵抗が大きくなり皮膚に刺さり難く、先端が変形し易くなるので好ましくない。
【0024】
マイクロニードルの形状は、円錐状、角錐状、あるいは円錐台の中央に円錐が設置されているような形状のものまで、目的に応じて適宜選択することができる。
マイクロニードルアレイの平面形状は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、基本形状として、多角形(例、四角形、六角形、八角形)、円形、楕円形が挙げられる。好ましくは、四角形ないし多角形である。
【0025】
押込力は、マイクロニードルを皮膚に穿刺する際に必要な力であれば特に制限されない。大きすぎると押込む際に痛みを感じるため、好ましくは1~200Nの範囲内、より好ましくは1~100Nの範囲内である。押込力が制限されるため、少ない荷重でもなめらかに突き刺さるマイクロニードルが必要となる。例えば、マイクロニードルアレイが皮膚表面より10mm押し込まれた場合に、80%以上のマイクロニードルが穿刺性を示すことが好ましい。また直径10mmの基板に100ニュートン(N)の力を掛けて皮膚に押圧した場合、80%以上のマイクロニードルが穿刺性を示すことが好ましい。
【0026】
本発明に係るマイクロニードル(アレイ)は、公知の製造方法に準じて製造することができる。例えば、WO2012/057345公報やWO2013/162053公報に記載の製造方法に準じて、本発明に係るマイクロニードル(アレイ)を作製することができる。
【0027】
本発明で用いられる「感圧性粘着剤」(粘着剤層における粘着剤)としては、医療用のものであればよく、公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、アクリル系重合体からなるアクリル系粘着剤、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等のスチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のゴム系粘着剤、シリコンゴム、ジメチルシロキサンベース、ジフェニルシロキサンベース等のシリコン系粘着剤、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系粘着剤、酢酸ビニル-エチレン共重合体等のビニルエステル系粘着剤、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジメチルフタレート等のカルボン酸成分とエチレングリコール等の多価アルコール成分からなるポリエステル系粘着剤を挙げることができる。これらの粘着剤は、いずれか1種を使用しても2種以上を併用してもよい。
【0028】
貼付剤を構成する支持体としては、医療用に用いうるものであれば特に制限されず、例えば、繊維製、樹脂製、金属製の支持体を挙げることができる。繊維製の支持体としては不織布や織布が挙げられ、材質としては、具体的には、例えば、綿、レーヨン、絹、パルプ、ポリエステルなどの化学繊維を挙げることができる。樹脂製の支持体の材質としては、具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ウレタンなどが挙げられる。金属製の支持体の材質としては、具体的には、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタンが挙げられる。但し、下記第3の実施態様における本発明の貼付剤に関してはこの限りでない。
【0029】
マイクロニードル貼付剤の平面形状は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、基本形状として、多角形(例、四角形、六角形、八角形)、円形、楕円形が挙げられる。好ましくは、四角形ないし多角形である。
粘着剤層は、通常、貼付剤の略一面に設置しうるが、複数に分離して設置してもよい。粘着剤層が複数に分離して設置する場合、各粘着剤層の平面形状も、多角形(例、四角形、六角形、八角形)、円形、楕円形など適宜選択されるが、四角形が好ましい。
【0030】
1 マイクロニードル貼付剤の貼付方法
本発明に係る、マイクロニードル貼付剤の貼付方法(以下、「本発明貼付方法」という。)は、皮膚が伸張される方向に実質的に貼付剤の粘着力が働かないように貼付することを特徴とする。
上記「粘着力が働かない」とは、皮膚に貼付剤を固定する力が働かないことをいう。そして、「粘着力が働かないように貼付すること」とは、例えば、a)皮膚が伸張される方向のマイクロニードルアレイの両端部分には粘着剤層がないか、又は粘着剤層があっても、皮膚が伸張される方向のマイクロニードルアレイの両端部分には皮膚に固定されるだけの粘着力のない粘着剤層であって、b)皮膚が伸張される方向とは異なる方向に、皮膚に固定されるだけの粘着力のある粘着剤層がマイクロニードルアレイを挟んで並ぶように貼付することである。
【0031】
上記「皮膚に固定されるだけの粘着力がない」とは、例えば、次の式(1)の関係を充足することである。
S×F<1.85L 式(1)
(式中、Sは、貼付剤のうち、皮膚が伸張される軸と直交するマイクロニードルアレイの外周接線と貼付剤の外周とに挟まれる粘着剤層の面積(cm2)であり、複数箇所存在する場合には、各面積を表す。Fは、皮膚が伸張される方向の粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Lは、マイクロニードルアレイの寸法において皮膚が伸張される方向と直交する軸方向の距離(cm)を表す。)
【0032】
以下、図面を参照しつつ本発明貼付方法及びこれに用い得るマイクロニードル貼付剤について説明する。
図15は本発明貼付方法に用い得るマイクロニードル貼付剤の一例を示す。
図15において(a)は、マイクロニードル貼付剤の平面図であり、(b)は(a)に示されるマイクロニードル貼付剤の、Y-Y’方向における断面図である。マイクロニードル貼付剤は、支持体21と粘着剤層(感圧性粘着剤)22とからなる貼付剤24の粘着剤層側の面に、マイクロニードルアレイ23が担持される。
図16は、本発明貼付方法に用い得るマイクロニードル貼付剤の他の一例を示す。
図16において(a)は、マイクロニードル貼付剤の平面図であり、(b)は(a)に示されるマイクロニードル貼付剤の、Y-Y’方向における断面図である。マイクロニードルアレイ23は、
図15に示されるように粘着剤層22上に設置され得るし、又は粘着剤層22を介さずに支持体21上に直接設置され得る。
【0033】
貼付剤の形状に拘らず、上記式(1)の関係を充足することが好ましい。
【0034】
特に
図3、
図4及び
図17(a)に示されるような四角形の粘着剤層及びマイクロニードルアレイを使用する場合には、式(1)におけるSが(a×b)である、次の式(2)の関係を充足することが好ましい。
【0035】
(a×b)×F<1.85L 式(2)
(式中、aは、粘着剤層の寸法において、皮膚が伸張される方向と直交するマイクロニードルアレイの外周と粘着剤層の外周との間の距離(cm)を、bは、粘着剤層の寸法においてaの方向に直交する軸方向の距離(cm)を表す。Fは、皮膚が伸張される方向の粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Lは、マイクロニードルアレイの寸法において皮膚が伸張される方向と直交する軸方向の距離(cm)を表す。)
【0036】
より好ましい本発明貼付方法としては、
図3に示されるように、貼付剤を皮膚の伸張方向に対し垂直方向に貼付することが挙げられる。その場合には、aとbを測定することが容易である。また、Lは、マイクロニードルアレイの形状によって異なるが、マイクロニードルアレイが円形であれば、直径を表し、マイクロニードルアレイが
図3や
図9のような方形であれば、一辺の長さを表す。なお、方形のマイクロニードルアレイにおいて、皮膚の伸張方向が
図3や
図9のようではなく、斜めになった場合には、皮膚の伸張方向に直交するマイクロニードルアレイの距離をL(cm)とする。
【0037】
上記「粘着剤層がマイクロニードルアレイを挟んで並ぶ」とは、マイクロニードルアレイを挟んで皮膚に固定されるだけの粘着力のある粘着剤層が設置されることをいう。そして、本発明においては、この粘着剤層とマイクロニードルアレイとで形成される方向が、皮膚の伸張方向と異なっている。
【0038】
上記皮膚の伸張方向と異なる方向としては、皮膚の伸張方向に対して直交する方向が特に好ましいが、適宜、状況に応じて、異なる角度を選ぶことができる。かかる異なる角度としては、具体的には、例えば、皮膚の伸張方向に対して直交する角90°の前後45°の範囲内が適当であり、好ましくは前後30°の範囲内、より好ましくは前後15°の範囲内である。皮膚の伸張方向に対して直交する角90°の前後45°を超える角度でも、貼付剤の粘着力によっては選択することができる。
【0039】
また、例えば、2方向で皮膚の伸張を行う場合には、その中間の方向で皮膚に固定されるだけの粘着力のある粘着剤層がマイクロニードルアレイを挟んで並ぶように貼付剤を貼付することが好ましい。そして例えば当該2方向が直交する場合、その中間の方向としては、具体的には、当該2方向の間の角度(90°)において20°以上70°以下の範囲内が適当であり、好ましくは30°以上60°の範囲内であり、より好ましくは45°である。当該2方向の間の角度(90°)において20°以上70°以下を外れる角度でも、貼付剤の粘着力によっては選択することができる。
また、皮膚が伸張される方向の粘着剤の粘着力を弱めて、皮膚が収縮するときに、その方向において粘着剤層が皮膚を固定しないようにしてもよい。
【0040】
皮膚の伸張方法としては特に制限されないが、例えば、手で拡げる方法、皮膚を拡げることができる適当な治具(
図10~13のアプリケーターなど)を用いて拡げる方法、ゴムなどの弾性体で拡げる方法、皮膚が引っ張られる方向に関節を曲げて拡げる方法、マイクロニードルアレイの基盤の厚みで拡げる方法を挙げることができる。また、マイクロニードルアレイの皮膚への挿入方法としては特に制限されないが、例えば、手で押し込み方法、バネ(その形状として、コイル状、板状、ドーム状など)を使用して挿入する方法(
図8参照)を挙げることができる。
【0041】
本発明貼付方法は、ヒトに適用することができるが、その他の動物にも適用することができる。
【0042】
ある実施態様において、本発明貼付方法は、皮膚を伸張する工程(A)、伸張された皮膚表面にマイクロニードル貼付剤を適用する工程(B)、及び皮膚の伸張を解除する工程(C)を含み、粘着剤層の粘着力は、工程(A)における伸張軸との関係において、下記式(1’)を満たす。
S’×F’<1.85L’ 式(1’)
(式中、Sは、伸張軸と直角をなすマイクロニードルアレイの外周接線tにより区画される粘着剤層のうち、マイクロニードルアレイを含まない区画Tの面積(cm2)を表す。Fは区画Tの粘着剤層の単位あたりの粘着力(N/cm)を表す。L’は、マイクロニードルアレイの伸張軸に対して直角方向の長さ(cm)を表す。)
【0043】
以下、図面を参照しつつ説明する。
図17中、31は皮膚を伸張する工程(A)における伸張軸を示し、t
1及びt
2はいずれも、伸張軸と直角をなす、マイクロニードルアレイ23の外周接線を表す。T
1は、接線t
1により区画される粘着剤層の部分であって、マイクロニードルアレイを含まない区画である。同様に、T
2は、接線t
2により区画される粘着剤層の部分であって、マイクロニードルアレイを含まない区画である。
図17に示されたように、区画Tが複数個存在する場合は、そのすべての区画について式(1’)を満たす。L’は、
図18に示されるように、伸張軸31に対して直角方向のマイクロニードルアレイの長さ(cm)を表す。
【0044】
ある実施形態において、貼付剤の形状が長方形である場合は、マイクロニードル貼付剤は、貼付剤の長辺が伸張軸に対して略直角又はこれに準ずる角度をなすように貼付され得る。ある実施形態において、貼付剤の形状が楕円形である場合は、マイクロニードル貼付剤は、貼付剤の長軸が伸張軸に対して略直角又はこれに準ずる角度をなすように貼付され得る。ある実施態様において、略直角に準ずる角度は、45-135°、60-120°、65-115°、70-110°、72-108°、74-106°、76-104°、78-102°、80-100°、82-98°、84-96°、86-94°、又は88-96°であり得る。
【0045】
2 本発明に係る貼付剤
本発明に係るマイクロニードル貼付剤(以下、「本発明貼付剤」という。)は、皮膚を伸張してマイクロニードルを穿刺し、皮膚に貼付するものである。
【0046】
2.1 本発明貼付剤の第1態様
本発明貼付剤として、例えば、a)マイクロニードルアレイを挟んで皮膚が伸張される方向とは異なる方向に設置される粘着剤層を有し、b)皮膚が伸張される方向のマイクロニードルアレイの両端部分には粘着剤層がないか、又は粘着剤層があっても、次の式(1)の関係を充足することを特徴とするものを挙げることができる。
【0047】
S×F<1.85L 式(1)
(式中、Sは、貼付剤のうち、皮膚が伸張される軸と直交するマイクロニードルアレイの外周接線と貼付剤の外周とに挟まれる粘着剤層の面積(cm2)であり、複数箇所存在する場合には、各面積を表す。Fは、皮膚が伸張される方向の粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Lは、マイクロニードルアレイの寸法において皮膚が伸張される方向と直交する軸方向の距離(cm)を表す。)
【0048】
本発明貼付剤の形状に拘らず、上記式(1)の関係を充足することが好ましい。
【0049】
特に
図3や
図9に示されるような四角形の粘着剤層及びマイクロニードルアレイの場合には、式(1)におけるSが(a×b)である、次の式(2)の関係を充足するものが好ましい。
【0050】
(a×b)×F<1.85L 式(2)
(式中、aは、粘着剤層の寸法において、皮膚が伸張される方向と直交するマイクロニードルアレイの外周と粘着剤層の外周との間の距離(cm)を、bは、粘着剤層の寸法においてaの方向に直交する軸方向の距離(cm)を表す。Fは、皮膚が伸張される方向の粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Lは、マイクロニードルアレイの寸法において皮膚が伸張される方向と直交する軸方向の距離(cm)を表す。)
【0051】
<第1-2の実施態様及び第1-3の実施態様>
第1-2及び第1-3の実施態様における本発明貼付剤は、主軸を有する。主軸は、貼付剤の形状及び辺の向きに無関係に定義される概念上の軸であって、図面中のGで示される方向の軸であるが、例えば、支持体上に印刷される等の方法により表示された実在の線の方向と一致していてもよい。
【0052】
第1-2の実施態様における本発明貼付剤は、下記式(3)及び/又は下記式(4)を満たすことを特徴とする。
P×Q<1.85R 式(3)
(式中、Pは、マイクロニードルアレイの外周接線uにより区画される粘着剤層のうち、マイクロニードルアレイを含まない区画Uの面積(cm2)を表す。ここで、上記外周接線uは、主軸に平行である。Qは、区画Uの粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Rは、マイクロニードルアレイの、主軸方向の長さを表す。)
【0053】
H×I>1.85J 式(4)
(式中、Hは、マイクロニードルアレイの外周接線wにより区画される粘着剤層のうち、マイクロニードルアレイを含まない区画Wの粘着剤層の面積(cm2)を表す。ここで、外周接線wは、主軸に垂直である。Iは、区画Wの単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Jは、マイクロニードルアレイの、主軸に対して垂直方向の長さを表す。)
【0054】
以下、図面を参照しつつ、式(3)及び式(4)中で用いられる各記号について説明する。
図19~
図22中、Gは主軸の方向を示す。u
1及びu
2は、主軸に平行である、マイクロニードルアレイの外周接線を表す。w
1及びw
2は、主軸に垂直である、マイクロニードルアレイの外周接線を表す。U
1は接線u
1によって区画され、マイクロニードルアレイを含まない粘着剤層の区画を表す。U
2は接線u
2によって区画され、マイクロニードルアレイを含まない粘着剤層の区画を表す。W
1は、接線w
1によって区画され、マイクロニードルアレイを含まない粘着剤層の区画を表す。W
2は接線w
2によって区画され、マイクロニードルアレイを含まない粘着剤層の区画を表す。
【0055】
第1-3の実施態様におけるマイクロニードル貼付剤は、区画Uの粘着剤層の保持力における保持時間が120秒以下であり、及び/又は区画Wの粘着剤層の保持力における保持時間が100秒以上である。区画Uは、
図19~22に示される通り、主軸に平行であるマイクロニードルアレイの外周接線uに区画される粘着剤層のうち、マイクロニードルアレイを含まない区画を表す。区画Wは、主軸に垂直であるマイクロニードルアレイの外周接線wに区画される粘着剤層のうち、マイクロニードルアレイを含まない区画を表す。
【0056】
区画Wに設置された粘着剤層は、日本工業規格(JIS A0237)に基づき測定された1kgの重りに対する保持力(保持時間)が100秒以上、又は120秒以上である。
【0057】
区画Uに設置された粘着剤層は、日本工業規格(JIS A0237)に基づき測定された1kgの重りに対する保持力(保持時間)が120秒以下、120秒未満、又は100以下である。
【0058】
ある実施形態において、区画Uの粘着剤層の保持力における保持時間が120秒以下であり、かつ、区画Wの粘着剤層の保持力における保持時間が100秒以上である。
【0059】
第1-2の実施態様及び第1-3の実施態様における本発明貼付剤は、皮膚を伸張し、該伸張状態に皮膚に貼付するためのものであり、伸張軸に対して主軸が略直角又はこれに準ずる角度をなすように貼付されるために用いられる。上記略直角に準ずる角度は、45-135°、60-120°、65-115°、70-110°、72-108°、74-106°、76-104°、78-102°、80-100°、82-98°、84-96°、86-94°、又は88-96°であり得る。
貼付剤の形状が長方形である場合は、主軸は長辺に平行な方向であり得るがこれに限定されない。貼付剤の形状が楕円形である場合は、主軸は長軸に平行な方向であり得るがこれに限定されない。
【0060】
上記略平行に準ずる角度は、本発明貼付剤の主軸方向に対して±45°、±30°、±25℃、±20°、±18°、±16°、±14°、±12°、±10°、±8°、±6°、±4°、又は±2°であり得る。
【0061】
2.2 本発明貼付剤の第2態様
本発明貼付剤として、また、a)マイクロニードルアレイを挟んで皮膚が伸張される方向とは異なる方向に設置される粘着剤層を有し、b)貼付剤のうち、皮膚が伸張される軸と平行するマイクロニードルアレイの外周接線と貼付剤の外周とに挟まれる粘着剤層の保持力に係る保持時間が100秒以上、c)皮膚が伸張される方向のマイクロニードルアレイの両端部分に粘着剤層がある場合には、皮膚が伸張される軸と直交するマイクロニードルアレイの外周接線と貼付剤の外周とに挟まれる粘着剤層の保持力に係る保持時間が120秒未満、d)上記b)、c)において、挟まれる粘着剤層が複数箇所存在する場合には、各粘着剤層の保持力に係る保持時間が100秒以上ないし120秒未満を充足することを特徴とするものを挙げることができる。
【0062】
上記「粘着剤層の保持力」は、日本工業規格(JIS Z0237)に基づいて測定される保持力のことである。本発明貼付剤は、皮膚の伸張方向には固定されず、皮膚の伸張方向と直交する方向には皮膚に固定される粘着剤層を有する貼付剤である。その結果、皮膚が伸張されてから再度縮むときに、粘着剤層が皮膚に固定されなければ、貼付剤は浮き上がらず、マイクロニードルアレイも浮き上がらない。
【0063】
即ち、皮膚の伸張方向には貼付剤の粘着力が実質的になければ良い。具体的には、皮膚の伸張方向の粘着剤層において、日本工業規格(JIS Z0237)に基づき1kgのおもりに対する保持力(保持時間)が、120秒未満であることが好ましく、より好ましくは100秒以下である。そうすることで、皮膚の収縮に連動したマイクロニードルアレイの浮き上がりを抑えることができる。
【0064】
一方、皮膚の伸張方向と直交する方向は、マイクロニードルを皮膚にしっかりと固定する粘着力が必要である。具体的には、皮膚の伸張方向と直交する方向の粘着剤層において、日本工業規格(JIS Z0237)に基づき1kgのおもりに対する保持力(保持時間)が、100秒以上であることが好ましく、より好ましくは120秒以上である。
【0065】
所定の保持力は、感圧性粘着剤の材料、製造条件、厚み、寸法などにより適宜調整される。
上記「皮膚の伸張方向と異なる方向」としては、皮膚の伸張方向に対して直交する方向が好ましい。
【0066】
2.3 本発明貼付剤の第3態様
本発明貼付剤として、また、皮膚を伸張してマイクロニードルを穿刺し、皮膚に貼付するためのものであって、a)感圧性粘着剤が設置された硬質平板を有し、b)マイクロニードルアレイが当該硬質平板上に設置されているか、又はb’)当該硬質平板が中央部で盛り上がって中空になり、その中空部分の中央部の平面上にマイクロニードルアレイが設置されていることを特徴とするものを挙げることができる。
【0067】
上記「硬質平板」とは、例えば、容易に変形しない硬質樹脂製や金属製の平板のことをいう。硬質樹脂としては、市販のものを使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。金属としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタンが挙げられる。
【0068】
硬質平板1は、
図5に示されるように中央部2が盛り上がって中空となっていてもよい。その場合、中空部分の内面上方(中央部2の平面上)にマイクロニードルアレイ(マイクロニードルアレイ部3)を内装する。また、中空部分の内面上方(中央部2の平面上)にマイクロニードル貼付剤を内装していてもよい。そして、通常、当該中空部分の天面及び/又は側面が変形し、マイクロニードルアレイが皮膚側に移動可能となっている。
【0069】
上記「中空」は、
図5の符号2に示されるような外観であって、いわゆる「ハウジング」である。当該中空は、あらかじめ押出成形されたフィルムやシートを加熱して軟化させ、型に密着させ成形(真空成形)するか、溶融した樹脂を金型内のキャビティに射出して成形(例えば、射出成形)して作製することができる。このように中空(ハウジング)の成形に適した材質としては、金属や樹脂が挙げられ、柔軟性があり容易に曲り、変形する材質が望ましく、例えば、アルミニウムやステンレスなどの金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリスチレン、ナイロン、アクリル、シリコン、ABSなどの樹脂が挙げられる。マイクロニードルを穿刺後、中空の硬質平板とマイクロニードルを切り離さずに皮膚上に保持する場合は、中空の硬質平板は復元しないことが望ましく、金属や復元しにくい樹脂を選択される。また別途、復元を阻止する機構を備えても良い。またハウジングの各部の厚さは、人が指でハウジングを上から押したときに、後述する所望の変形が起こるように適宜選択される。
【0070】
上記中空部分の「天面」とは、中空(ハウジング)を形成する平坦な板状の周辺部分から上方に隆起した隆起部の上部の平板な部分をいう。上記中空部分の「側面」とは、隆起部の天面を囲む側壁部分をいう。なお、皮膚を固定するのは、中空部分の周辺基部を形成する平坦な板状の周辺部分である。
【0071】
当該天面及び/又は側面には、変形を促すための折り目やエッジが形成されていることが好ましい。当該「折り目やエッジ」は、
図5に示されるように、中空部2の天面部分を指等で押圧した場合には、中空部2が容易に変形して、天面内部に担持されたマイクロニードルアレイを皮膚に押し下げることができるように形成されている。また、「折り目やエッジ」は、通常、天面から側面に放射状に設置される。更には、皮膚に対して天面が垂直に移動できるように、側面に対称的に設置する等の加工が施されていることが好ましい。
なお、指等での押圧操作により、天面や平坦な板状の周辺部分に不均等な力が掛かった時の変形を防止するため、天面や平坦な板状の周辺部分の強度を増すために補強用の凹凸部が付加されていてもよい。
【0072】
マイクロニードルアレイを含むマイクロニードルアレイ部3は、中空部2に粘着剤で固定されるか、突起などによりはめ込みなどで物理的に固定されていてもよい。また硬質平板1の皮膚固定部分には感圧性粘着剤が付与される。更にマイクロニードルアレイと一体に成形されていてもよい。
【0073】
皮膚を伸張した後に、硬質平板1で皮膚を固定すると、硬質平板1の皮膚面は、硬質で容易に変形せず、皮膚が収縮されることなく固定される。また、中央部2が中空となった硬質平板1の場合(
図5の各貼付剤)、天面及び/又は側面は変形可能であり(
図5の特に(b)~(d))、変形により、天面が皮膚面に進行し、マイクロニードルを皮膚に挿入できる。
【0074】
第3態様の本発明貼付剤による場合には、本発明貼付方法のような貼付方向について特に拘る必要がない。
【0075】
2.4 その他
本発明貼付剤を皮膚に貼付するに際して、皮膚を拡げる方法としては特に制限されないが、例えば、手で拡げる方法、皮膚を拡げることができる適当な治具を用いて拡げる方法、ゴムなどの弾性体で拡げる方法、皮膚が引っ張られる方向に関節を曲げて拡げる方法を挙げることができる。また、マイクロニードルアレイの皮膚への移動・挿入方法としては特に制限されないが、例えば、手で押し込み方法、バネ(その形状として、コイル状、板状、ドーム状など)を使用して挿入する方法を挙げることができる。
【0076】
本発明貼付剤は、ヒトに適用することができるが、その他の動物にも適用することができる。本発明貼付剤の適用部位としては、特に制限されず、ヒトの場合、例えば、前腕の内側や外側、手の甲、上腕の内側や外側、肩、背、脚部、臀部、腹部、胸部などを挙げることができる。
本発明貼付剤に係るその他の用語の意義などについては、前記と同義である。
【0077】
3 本発明に係る補助具
本発明に係る補助具(以下、「本発明補助具」という。)は、皮膚を伸張してマイクロニードルを穿刺し、皮膚に貼付するための補助具であって、a)感圧性粘着剤が設置された硬質平板を有し、b)当該硬質平板は中央に開口部を有するリング状であり、c)当該開口部の大きさが、マクロニードルアレイの通過に支障のないサイズであることを特徴とする。
【0078】
上記「硬質平板」は、例えば
図6に示されるような、中央に開口部を有するリング状硬質平板4である。開口部の形状は、特に制限されず、強度やマイクロニードルアレイの穿刺操作に応じて適宜選択される。例えば、円形、楕円形、多角形(例、四角形、五角形、六角形、八角形)の形状を挙げることができ、この中、円形や四角形の形状が好ましい。その材質は、前記硬質平板と同様の硬質樹脂製のものを挙げることができ、またアルミニウム、ステンレス、チタンなどの金属製のものも挙げることができる。当該硬質平板は、皮膚を伸張した状態で皮膚面に固定することによって、皮膚の収縮を防ぐことができる。その結果、貼付したマイクロニードルアレイの皮膚からの浮き上がりを防止することができる。
【0079】
開口部の皮膚面にマイクロニードルアレイを圧着し、貼付することによって、伸張した皮膚にマイクロニードルを挿入することができる。具体的には、皮膚を一定の力で伸張した後に、伸張させた状態のまま皮膚面に粘着層を持ったリング状硬質平板4を皮膚に貼付することによって、皮膚の伸張状態を固定する。そして、固定された伸張皮膚に対して開口部からマイクロニードルアレイ部3を挿入する(
図6(g))。あるいは、マイクロニードルアレイ部3を予めリング状硬質平板4に粘着剤や固定用治具などによって固定しておき(
図6(d))、皮膚を伸張して、リング状硬質平板4を皮膚に貼付することによって皮膚の伸張状態を保ち、マイクロニードルの穿刺性を高めた後に、マイクニードルアレイ部3に圧を掛け、又はマイクニードルアレイを皮膚面に移動させて、マイクニードルを皮膚に挿入する。
【0080】
また、マイクロニードルアレイ部3とリング状硬質平板4とを一体成型されていてもよい(
図6(h)(i)(j))。その場合、マイクロニードルアレイの周辺部分は、皮膚面に移動できるように弾性部材で形成されていることが好ましい。弾性部材は、材質、形状あるいは厚みによって適宜選択することができる。
【0081】
本発明補助具を用いる場合には、本発明貼付方法のような貼付方向について特に拘る必要がない。
本発明補助具を使用するに際して、皮膚を拡げる方法としては特に制限されないが、例えば、手で拡げる方法、皮膚を拡げることができる適当な治具を用いて拡げる方法、ゴムなどの弾性体で拡げる方法、皮膚が引っ張られる方向に関節を曲げて拡げる方法を挙げることができる。また、本発明補助具を用いたマイクロニードルアレイの皮膚への移動・挿入方法としては特に制限されないが、例えば、手で押し込み方法、バネ(その形状として、コイル状、板状、ドーム状など)を使用して挿入する方法を挙げることができる。
【0082】
本発明補助具は、ヒトに適用することができるが、その他の動物にも適用することができる。本発明補助具の適用部位としては、特に制限されず、ヒトの場合、例えば、前腕の内側や外側、手の甲、上腕の内側や外側、肩、背、脚部、臀部、腹部、胸部などを挙げることができる。
本発明補助具に係るその他の用語の意義などについては、前記と同義である。
【0083】
4 本発明に係るデバイス
本発明には、本発明貼付剤と、皮膚を伸張しマイクロニードルアレイを皮膚に移動・貼付するためのアプリケーターとを備えていることを特徴とするマイクロニードルアレイのデバイス(以下、「本発明デバイス」という。)が含まれる。本発明デバイスに係るアプリケーターにより、本発明貼付剤(マイクロニードルアレイ)を効果的に皮膚に貼付することができる。当該アプリケーターは、特に、皮膚を伸張するための皮膚伸張機構部8とマイクロニードルアレイを皮膚に移動し貼付するための貼付機構部9を有する。貼付機能部9は、マイクロニードルに穿刺するための応力が掛かりやすいように、マイクロニードルアレイ側の面は、各マイクロニードルが皮膚にほぼ均等に穿刺される限りにおいて、できるだけ小さい方が好ましい。またマイクロニードルアレイ部3のマイクロニードルアレイが皮膚面側に突出するように側面に傾斜を設けるのがより好ましい(例えば、
図13(b)左参照)。
【0084】
本発明デバイスにおいて、本発明貼付剤を含むマイクロニードルアレイ部3は、皮膚が伸張される方向に実質的に貼付剤の粘着力が働かないように設置される。例えば、
図10や
図12(b)に示すように、皮膚が伸張される軸方向(
図10(a)や
図12では左右、
図10(b)では上下左右2方向)と本発明貼付剤の長手方向とが直交ないし中間の方向に設置する。
【0085】
上記マイクロニードルアレイ部3は、通常、当該アプリケーターないし皮膚伸張機構部8に、嵌めあわせなどの手段で構造的に、あるいは粘着剤等で、係合又は粘着される。
図12では、粘着剤による当該アプリケーターへのマイクロニードルアレイ部3の設置方法を例示している。マイクロニードルを穿刺後、通常、アプリケーターから本発明貼付剤が取り外され皮膚に貼付されるが、その本発明貼付剤を当該アプリケーターに固定するための粘着剤は、本発明貼付剤の裏側(マイクロニードルが突出していない面)であって、本発明貼付剤の端部より内側に塗布することが好ましい。そうすることで、皮膚への本発明貼付剤の移行性を向上させることができる。これは、マイクロニードルの穿刺後、本発明貼付剤が皮膚に貼付されアプリケーターから取り外されるとき、本発明貼付剤をアプリケーターに固定している粘着部分10の最端部に剥がされる力が大きく掛かり、きっかけ点となり本発明貼付剤が剥離されやすくなるためである。
【0086】
また、本発明デバイスは、
図13に示すような、マイクロニードルアレイ部3が皮膚伸張機構部8から分離している構造のものでもよい。その場合、マイクロニードルアレイ部3は、他の支持体に保持され、そのマイクロニードルアレイ部3を有する部分11は、当該アプリケーターないし皮膚伸張機構部8に、直接粘着又は係合されていない。そのような構造の本発明デバイスにおいては、例えば、マイクロニードルアレイ部3を有する部分11を皮膚に圧着せずに設置し、次にマイクロニードルアレイ部3を有する部分11と皮膚伸張機能部8との形状により位置を合わせ、そして皮膚伸張機構部8により伸張させた皮膚にマイクロニードルアレイを移動、挿入、貼付させる(
図14参照)。そのマイクロニードルアレイ部3を有する部分11の形状としては、両端が切れた切欠き構造や(
図13(a)右参照)、両端部分に空洞部12を有する構造(
図13(b)右参照)などが挙げられる。また単に目視により位置を合わせてもよい。
【0087】
本発明デバイスは、ヒトに適用することができるが、その他の動物にも適用することができる。本発明デバイスの適用部位としては、特に制限されず、ヒトの場合、例えば、前腕の内側や外側、手の甲、上腕の内側や外側、肩、背、脚部、臀部、腹部、胸部などを挙げることができる。
本発明デバイスに係るその他の用語の意義などについては、前記と同義である。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0089】
[実施例1]皮膚の伸張方向とマイクロニードルアレイ(MN)の浮き上がりの評価試験
前腕内側の皮膚を手で拡げて、拡げた状態で、貼付用粘着テープ(マイクロニードル貼付剤を構成する支持体及び粘着剤ないし粘着剤層に相当。以下同じ。)と共にマイクロニードルを挿入し、穿刺後、当該粘着テープでマイクロニードルアレイを皮膚に貼付した。その後、皮膚を拡げる力を解除し、マイクロニードルアレイおよび当該粘着テープの浮き上がりを目視で評価した。
【0090】
(1)貼付剤の形状:
図4の(a)
a)マイクロニードルアレイの貼付剤:
貼付用粘着テープの大きさ:30×30mm
MNの大きさ:10×10mm(マイクロニードルアレイの代用としてPET製の厚さ1mmのプレートを使用。)
【0091】
b)評価方法:
前腕内側の皮膚を指で、前腕と直交する方向に最大限に引っ張った(伸張率:20~30%)。その後、上記貼付剤(a)を指で押し付け、皮膚に粘着テープを固定した。指を皮膚から離して、皮膚が収縮し、当該粘着テープが盛り上がって、MNと皮膚の間に空間が生じるか否か(マイクロニードルアレイの浮き上がりが認められるか否か)を目視で評価した。
【0092】
c)結果:
以下の表1に示す通り、ミリオン製ポアテープのように粘着テープの材質が柔軟であれば、皮膚の収縮に伴い粘着テープがマイクロニードルアレイと共に浮き上がることを確認した(試験番号1)。一方、皮膚の収縮を抑制できる場合には、マイクロニードルアレイが浮き上がらないことを確認した(試験番号2)。
【0093】
【0094】
(2)貼付剤の形状:
図4の(b)
a)マイクロニードルアレイの貼付剤:
貼付用粘着テープの大きさ:30mmφ
MNの大きさ:10×10mm(マイクロニードルアレイの代用としてPET製の厚さ1mmのプレートを使用。)
【0095】
b)評価方法:
上記(1)と同様に実施した。
c)結果:
以下の表2に示す通り、ミリオン製ポアテープのように粘着テープの材質が柔軟であれば、皮膚の収縮に伴い粘着テープがマイクロニードルアレイと共に浮き上がることを確認した(試験番号3)。一方、粘着テープの材質が硬質であり、皮膚の収縮を抑制できる場合には、マイクロニードルアレイが浮き上がらないことを確認した(試験番号4、5)。
【0096】
【0097】
(3)貼付剤の形状:
図4の(c)
a)マイクロニードルアレイの貼付剤:
貼付用粘着テープの大きさ:10×30mm
MNの大きさ: 10×10mm(マイクロニードルアレイの代用としてPET製の厚さ1mmのプレートを使用。)
【0098】
b)評価方法:
上記(1)と同様に実施した。なお、ヒトの前腕内側の皮膚を使用する代わりとして、後述の試験例1のようにヒト皮膚モデルを作製し、このヒト皮膚モデルでも評価した。
【0099】
c)結果:
以下の表3に示す通り、ミリオン製ポアテープのように粘着テープの材質が柔軟であれば、皮膚の収縮と共に、粘着テープがマイクロニードルアレイと共に浮き上がることを確認した。
【0100】
【0101】
<注記> J:ジュール
1)バネの力で射出では、
図8の補助具の圧縮したコイルバネを一気に解放し、マイクロニードルアレイに一定の速度を与え皮膚に進行させた。その時の仕事量は0.4Jあるいは1Jとした。
【0102】
(4)貼付剤の形状:
図4の(d)
a)マイクロニードルアレイの貼付剤:
貼付用粘着テープの大きさ:10×30mm
MNの大きさ:10×10mm(マイクロニードルアレイの代用としてPET製の厚さ1mmのプレートを使用。)
【0103】
b)評価方法:
実施例1の(3)と同様に実施した。なお、上記(3)の評価とは皮膚に貼付する貼付剤の方向が異なっている。
【0104】
c)結果:
以下の表4に示す通り、ミリオン製ポアテープのように粘着テープの材質が柔軟であっても、粘着力の効果が実質的に発揮できないものであれば、粘着テープと共にマイクロニードルアレイが浮き上がることはなかった。
【0105】
【0106】
<注記> J:ジュール
1)粘着テープとマイクロニードルの浮きの有無を確認するため、外観を目視で評価するだけでなく、X線マイクロCTを測定して、穿刺したマイクロニードル(アレイ)が皮膚から浮いていないことを確認した(
図7参照)。
2)表3と同じ
図8の補助具を用いてバネの力で射出を行った。
【0107】
[実施例2]皮膚伸張方向の最大粘着力の評価
皮膚の伸張方向には、貼付剤の粘着力が実質的に働かず、そのため、皮膚が収縮する時に貼付剤が同調して引っ張られないような貼付剤を作製するために、皮膚伸張方向の粘着力の上限(許容できる最大の粘着力)を見積もることを行った。
【0108】
(1)器材
・マイクロニードルアレイを含有する貼付剤:
市販のサージカルテープにマイクロニードルアレイの代用として10×10mm×1mmhの樹脂板を固定し作製した。
【0109】
・市販のサージカルテープ:
3M製1538(粘着力3.7N/cm)、3M製1527(粘着力2.8N/cm)、3M製1525(粘着力1.7N/cm)
粘着力は、2.5cm幅の粘着テープにおいて、スチール板に対する粘着力の値を記載(カタログ値)。
【0110】
(2)方法
ヒト前腕の皮膚を手で伸張し、伸張された皮膚にマイクロニードルアレイの代用として10×10mm×1mmhの樹脂板又は20×20×1mmhの樹脂板を含有する貼付剤を直径5mmの治具で20Nの力で押圧し貼付した。
なお、貼付剤の固定を行うために、
図9に示すように皮膚伸張方向と直交する方向に固定用サージカルテープ(約5mm×約30mm)で固定した。
固定後、皮膚の伸張を解放し、収縮した後のマイクロニードルアレイの浮き上がりの有無を観察した。
【0111】
(3)結果
以下の表5に示す通り、マイクロニードルアレイの寸法において皮膚が伸張される方向と直交する軸方向の距離(cm)が1cmのとき、粘着テープと皮膚との固定力が1.85N未満であれば、マイクロニードルアレイの浮き上りがなかった。
【0112】
【0113】
<注記>
○:MNの浮きなく良好、△:MNの浮き僅か、×:MNの浮きあり不良
L=1cmのときマイクロニードルのサイズは1cm×1cm
L=2cmのときマイクロニードルのサイズは2cm×2cm
【0114】
上記の結果等から、皮膚に対する粘着テープの粘着力をF(N/cm)とすると、以下の関係式(1)が成立することを見出した。
S×F<1.85L 式(1)
【0115】
(式中、Sは、貼付剤のうち、皮膚が伸張される軸と直交するマイクロニードルアレイの外周接線と貼付剤の外周とに挟まれる粘着剤層の面積(cm2)であり、複数箇所存在する場合には、各面積を表す。Fは、皮膚が伸張される方向の粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Lは、マイクロニードルアレイの寸法において皮膚が伸張される方向と直交する軸方向の距離(cm)を表す。)
【0116】
なお、表5の実験に係る貼付剤のように、粘着剤層及びマイクロニードルアレイが四角形の場合の関係式は、上記関係式(1)におけるSが(a×b)である以下の式(2)のように示すことができる。
(a×b)×F<1.85L 式(2)
【0117】
(式中、aは、粘着剤層の寸法において、皮膚が伸張される方向と直交するマイクロニードルアレイの外周と粘着剤層の外周との間の距離(cm)、bは、粘着剤層の寸法においてaの方向に直交する軸方向の距離(cm)を表す。Fは、皮膚が伸張される方向の粘着剤層の単位当たりの粘着力(N/cm)を表す。Lは、マイクロニードルアレイの寸法において皮膚が伸張される方向と直交する軸方向の距離(cm)を表す。)
以上から、上記式(1)あるいは(2)を充足するように貼付剤の粘着力と形状を選択すれば、上記表5の結果から、皮膚貼付後において、粘着テープとマイクロニードルアレイの浮き上りを回避することができる。またマイクロニードルアレイのサイズに合わせて粘着テープの最適粘着力も選択することができる。
【0118】
[実施例3]皮膚伸張方向に設置可能な粘着剤層についての評価
実施例2で皮膚伸張方向の粘着力の上限(許容できる最大の粘着力)を評価することができたので、
図3に示す貼付剤を皮膚に貼付した場合の検証を行った。
【0119】
a)マイクロニードルアレイの貼付剤:
・貼付用粘着テープ:3M製サージカルテープ1538
・貼付用粘着テープのサイズ:(10+2a)×30mm
・マイクロニードルアレイのサイズ:10×10mm(マイクロニードルアレイの代用としてPET製の厚さ1mmのプレートを使用。)、従って、bは1mmとなる。
【0120】
b)評価方法:
貼付用粘着テープとしてa=b+2mm、b+4mm、b+9mmの3種の粘着テープを作製し、ヒトの前腕内側の皮膚を伸張させて、表6の3種の貼付剤を貼付し、粘着の程度(皮膚との連動性)を評価した。
【0121】
c)結果:
表6に示す通り、aが5mm以下であれば皮膚と連動せず、マイクロニードルアレイが浮き上がらないことが示された。
【0122】
【0123】
以上のことから、aの距離が以下の式
a < b+4
の関係を満たせば、粘着テープと皮膚の収縮は連動せず、マイクロニードルアレイが皮膚から浮き上がることはないことが示された。
【0124】
[実施例4]伸張された皮膚の収縮を抑制するために硬質な平板を皮膚接着面に有するマイクロニードルアレイの貼付剤
実施例1の試験番号5のように、硬質平板を用いた場合には皮膚の収縮を阻止できるので、マイクロニードルアレイを皮膚に密着したまま良好に維持できる。
そこで、マイクロニードルアレイの担持された箇所を中空にして、皮膚の穿刺箇所だけを平板との接触から解放した貼付剤又は補助具を作製し評価した。
【0125】
(1)皮膚の穿刺箇所が中空となった、マイクロニードルアレイを担持した貼付剤:
図5に示されるような、皮膚穿刺部分が中空となったマイクロニードルアレイを担持した貼付剤を作製した。
マイクロニードルアレイと固定用テープ(マイクロニードル部3)を内装し、硬質平板1の皮膚面側に粘着層を持った形状の貼付剤を、皮膚を伸張した上に設置した。皮膚面を硬質平板1で固定し、変形可能な天面及び/又は側面を変形させて、マイクロニードルを皮膚に穿刺した。更に押圧を行い、マイクロニードルアレイと粘着テープを皮膚に貼付した。
【0126】
(2)皮膚の伸張を固定しマイクロニードルを皮膚に穿刺し、固定する補助具:
図6に示される形状の皮膚穿刺部分が開口部であるマイクロニードルアレイの穿刺用補助具を作製した。
実施例1に記載の方法で、皮膚を伸張させた上に上記補助具でマイクロニードルアレイの穿刺部位の周りを固定し、開口部にマイクロニードルアレイを押圧し、貼付した。
【0127】
[実施例5]粘着テープの保持力試験
日本工業規格(JIS Z0237)に準じて評価した。試験片については以下の条件とした。
【0128】
(1)試験片: 幅10mm、長さ150mm、幅12mm、長さ150mm、及び幅20mm、長さ150mm
実施例2の試験番番号16、17、22、23、24、25のものについて実施した。
【0129】
(2)試験版
ステンレス板(125mm×50mm)
【0130】
(3)方法
所定の幅(b)および所定の長さ(a)を持つ面で、圧力をかけずに、試験板の一端の中央に試験片を置いた。
次に、試験片の上からローラ(日本工業規格 圧力装置 10.2.4に規定するもの)を10±0.5mm/sの速さで2往復圧着した。
圧着後1分以内に試験板の一端を止め、試験板及び試験片が垂直に垂れ下がるようにし、折り重ねた部分の端に、1kgの重りを取り付けた。
おもりを取り付けてから、試験片が完全に試験板から剥がれ落ちるまでの経過時間(保持時間)を測定した。
(4)結果
【0131】
【0132】
皮膚の伸張方向にマイクロニードルアレイが固定されると、皮膚が伸張されてから再度縮むときに、皮膚の伸張方向に皮膚に貼付されていたテープ粘着剤層が押し上げられ、それに伴いマイクロニードルアレイも浮き上がリ、薬剤等の投与効果が低減する。しかし、皮膚が収縮するときにテープ粘着剤層が固定されなければ、テープ粘着剤層は浮き上がらず、マイクロニードルアレイも浮き上がらない。
つまり、皮膚の伸張方向には粘着テープの粘着力が実質的になければよい。具体的には、上記結果から1kgのおもりに対する保持力(保持時間)が120秒未満、好ましくは100秒以下であれば、皮膚の収縮と連動してマイクロニードルアレイが浮き上がり難いことになる。
一方、皮膚の伸張方向と直交する方向のテープ粘着剤層は、マイクロニードルアレイを皮膚にしっかりと固定する程度の粘着力が必要である。具体的には、上記結果からマイクロニードルアレイの浮き上がりが見られる条件、つまり1kgのおもりに対する保持力(保持時間)が100秒以上、好ましくは120秒以上であることを挙げることができる。なお、皮膚の伸張方向と異なる方向としては、皮膚の伸張方向に直交する方向が好ましい。
【0133】
実際には、所定の保持力を充足させるために、保持力は粘着剤の材料、製造条件、厚み、寸法などにより調整される。
【0134】
[試験例1]ヒト皮膚モデルでの穿刺性実験
(1)ヒト皮膚モデルの構築
硬度5度のシリコンシートの上面にヒト腹部摘出皮膚を設置した。
【0135】
(2)穿刺方法
伸張率20%~50%で上記ヒト皮膚モデルを伸張し、上記マイクロニードルアレイを貼付用テープと共に20Nの応力で、手で挿入した。あるいはバネを用いて0.4ジュールの仕事量で挿入した。
【0136】
(3)貼付剤の形状:
図4の(c)および(d)
貼付用テープの大きさ:10×30mm
MNの大きさ:10×10mm(マイクロニードルアレイの代用としてPET製の厚さ1mmのプレートを使用。)
【0137】
(4)結果
以下の表8に示す通り、ヒト皮膚モデルでは、
図4の(d)の貼付方法を使用すると粘着テープの浮き上りが回避でき、粘着テープに連動し皮膚からマイクロニードルアレイが抜けることが回避できた。一方、
図4の(c)の貼付方法では、粘着テープ及びマイクロニードルアレイの代用であるPETプレートの浮きが見られた。
【0138】
【0139】
<注記> J:ジュール
1)バネの力で射出では、
図8の治具を用い、圧縮したコイルバネを一気に解放し、マイクロニードルアレイに一定の速度を与え皮膚に進行させ、ヒト皮膚モデルに加圧し貼付剤を貼付した。
【0140】
[試験例2]X線マイクロCTによるマイクロニードルアレイの皮膚への密着性の評価
(1)器材
・X線マイクロCT:
ヤマト科学社製のTDM1000H-II(2K)、設定管電圧:90kV、設定管電流:0.032mA、撮影視野サイズ:約11mm、スキャン時間:約17分、スライス厚:20μm
・マイクロニードルアレイ:
ポリグリコール酸樹脂製のマイクロニードルアレイ(長さ600μm、間隔800μm、120本)、約1cm2のものを使用した。
【0141】
(2)方法
上記マイクロニードルアレイを用いて皮膚を10~20%伸張させ、両面テープで設置した。試験例1のヒト皮膚モデルを使用し、粘着テープの貼付方法は、
図4(d)で行い、10Nの力で約10秒間皮膚を押圧した。
その後、押圧したマイクロニードルアレイの周辺部を瞬間接着剤でヒト皮膚モデルに接着した。
マイクロニードルを接着した皮膚を取り出し、上記マイクロCT装置に設置し、3次元CT画像を測定した。
【0142】
(3)結果
測定結果として、
図7に示すような3次元CT画像が得られた。この
図7で示されるように、マイクロニードルの約2/3が皮膚内に挿入され、マイクロニードルアレイがヒト皮膚から浮き上がった様子は見られないことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明貼付方法とそれに使用しうる本発明貼付剤、又は本発明補助具、若しくは本発明デバイスは、マイクロニードルの穿刺性を向上させるとともに、マイクロニードルアレイを皮膚にしっかり固定することができ、薬物を無駄なく、定量的に投与することができるので、医薬品等として有用である。
【符号の説明】
【0144】
1 硬質平板
2 中空部
3 マイクロニードルアレイ部
4 リング状硬質平板
5 コイルバネ
6 固定用サージカルテープ
7 皮膚伸張方向のサージカルテープ
8 皮膚伸張機構部
9 貼付機構部
10 粘着部分
11 マイクロニードルアレイ部3を有する部分
12 空洞部
21 支持体
22 粘着剤層(感圧性粘着剤)
23 マイクロニードルアレイ