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特許7116442分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G16C 10/00 20190101AFI20220803BHJP
【FI】
G16C10/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021526433
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 CN2020078298
(87)【国際公開番号】W WO2021031550
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】521205032
【氏名又は名称】シェンヂェン ジンタイ テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Shenzhen Jingtai Technology Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】Floor 3, SF Industrial Plant, No.2 Hongliu Road, Fubao Community, Fubao Street, Futian District, Shenzhen, Guangdong 518000 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン シァォ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ミンジュン
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン リー
(72)【発明者】
【氏名】スン グゥァンシュ
(72)【発明者】
【氏名】リィゥ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】マー ジィェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン シュハオ
(72)【発明者】
【氏名】ライ リーポン
【審査官】塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/029385(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0018635(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16C 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
与えられた分子に隣り合う二面角があるかどうかを判定する隣り合う二面角判定ステップ、
隣り合う二面角があると判定した場合、QM計算を介して隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定するQM結合判定ステップ、
QM計算で結合していないと判定した場合に行うステップであって、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得る1次元ポテンシャルエネルギースキャンステップ、
QM計算で結合すると判定した場合に行うステップであって、MM計算で前記隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定するMM結合判定ステップ、
MM計算で前記隣り合う二面角が結合していないと判定した場合に行うステップであって、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得る1次元ポテンシャルエネルギースキャンステップ、
MM計算で前記隣り合う二面角が結合していないと判定した場合に行うステップであって、MMスキャン結果に基づいて2次元ポテンシャルエネルギー曲面上の極値点に対する2つの二面角のそれぞれ1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンで得られた極値点の組み合わせのカバレッジを計算し、異なるカバレッジまたはカバレッジ率によってカバレッジレベル(良い、普通、悪い)に区分されるカバレッジ計算ステップ、及び、
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対する計算された1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが良い場合に行うステップであって、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得る1次元ポテンシャルエネルギースキャンステップ、
を有することを特徴とする、分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法。
【請求項2】
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対するカバレッジ計算ステップで計算された1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが悪い場合、
2つの隣り合う二面角を同時に制限して、-180°から+180°までの2つのすべての組み合わせを得る包括的2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンステップに進む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法。
【請求項3】
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対するカバレッジ計算ステップで計算された1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが普通の場合、
2つの隣り合う二面角に対し、1つの角度のみを制限して、-180°から+180°に変化させ、同時に、もう1つの二面角は、各々2つの角度値を開始構造とし、2つが同じ二面角のポテンシャルエネルギー曲面に沿ってスキャンする疑似2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンステップに進む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法。
【請求項4】
前記QM結合判定は、隣り合う二面角を有する分子について、x°などの間隔で、点(φ1,φ2)、(φ1+x,φ2)、(φ1,φ2+x)、(φ1+x,φ2+x)等の立体配座を選択し、QMエネルギーを計算し、理想的な結合状況において、E(φ1+x,φ2+x)=E(φ1,φ2+x)+E(φ1+x,φ2)-E(φ1,φ2)となり、E(φ1+x,φ2+x)理想値と実際の計算値の差を標準として、カットオフ値を設定して、隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法。
【請求項5】
前記MM結合判定ステップにおけるMM計算による結合判定は、各々φ1およびφ2の二面角について1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンのMM計算をすることで、1つの二面角を制限する時、別の二面角の角度変化幅を基準としてカットオフ値を設定し、隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法。
【請求項6】
前記QM結合判定ステップで設定されたカットオフ値または前記MM結合判定ステップで設定されたカットオフ値の絶対偏差を2kcal/molに制御するか、または相対偏差を5%以内に制御し、間隔の変化は20~40°の値を選択し、カバレッジが80%以上に達した場合、良いと判定し、カバレッジが60%~80%の範囲にある場合、普通と判定し、カバレッジが60%以下の場合、悪いと判定することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法。
【請求項7】
隣り合う二面角判定モジュールと、QM結合判定モジュールと、1次元ポテンシャルエネルギースキャンモジュールと、MM結合判定モジュールと、カバレッジ計算モジュールと、を備え、
前記隣り合う二面角判定モジュールは、与えられた分子に隣り合う二面角があるかどうかを判定するために用いられ;
前記QM結合判定モジュールは、隣り合う二面角があると判定した場合、QM計算を介して隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定するために用いられ;
QM計算で結合していないと判定した場合、
前記1次元ポテンシャルエネルギースキャンスモジュールは、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得;
QM計算で結合すると判定した場合、
前記MM結合判定モジュールは、MM計算で前記隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定し;
MM計算で前記隣り合う二面角が結合していないと判定した場合、
前記1次元ポテンシャルエネルギースキャンスモジュールは、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得;
MM計算で前記隣り合う二面角が結合していないと判定した場合、
前記カバレッジ計算モジュールは、MMスキャン結果に基づいて2次元ポテンシャルエネルギー曲面上の極値点に対する2つの二面角のそれぞれ1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンで得られた極値点の組み合わせのカバレッジを計算し、異なるカバレッジまたはカバレッジ率によってカバレッジレベル(良い、普通、悪い)に区分され;
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対する計算された1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが良い場合、
前記1次元ポテンシャルエネルギースキャンスモジュールは、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得る、
ことを特徴とする、分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャンシステム。
【請求項8】
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対する前記カバレッジ計算モジュールが計算した1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが悪い場合、
包括的2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンモジュールは、2つの隣り合う二面角を同時に制限して、-180°から+180°までの2つのすべての組み合わせを得る、
ことを特徴とする、請求項7に記載の分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャンシステム。
【請求項9】
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対するカバレッジ計算モジュールが計算した1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが普通の場合、
疑似2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンモジュールは、2つの隣り合う二面角に対し、1つの角度のみを制限して、-180°から+180°に変化させ、同時に、もう1つの二面角は、各々2つの角度値を開始構造とし、2つが同じ二面角のポテンシャルエネルギー曲面に沿ってスキャンする、
ことを特徴とする、請求項7に記載の分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャンシステム。
【請求項10】
前記QM結合判定モジュールは、隣り合う二面角を有する分子について、x°などの間隔で、点(φ1,φ2)、(φ1+x,φ2)、(φ1,φ2+x)、(φ1+x,φ2+x)等の立体配座を選択し、QMエネルギーを計算し、理想的な結合状況において、E(φ1+x,φ2+x)=E(φ1,φ2+x)+E(φ1+x,φ2)-E(φ1,φ2)となり、E(φ1+x,φ2+x)理想値と実際の計算値の差を標準として、カットオフ値を設定して、隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定し;
前記MM結合判定モジュールは、各々φ1およびφ2の二面角について1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンのMM計算をすることで、1つの二面角を制限する時、別の二面角の角度変化幅を基準としてカットオフ値を設定し、隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定し;
前記QM結合判定モジュールで設定されたカットオフ値または前記MM結合判定モジュールで設定されたカットオフ値の絶対偏差を2kcal/molに制御するか、または相対偏差を5%以内に制御し、間隔の変化は20~40°の値を選択し、カバレッジが80%以上に達した場合、良いと判定し、カバレッジが60%~80%の範囲にある場合、普通と判定し、カバレッジが60%以下の場合、悪いと判定する、
ことを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体配座解析分野に関し、特に、分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体配座解析の目的は、力場のパラメーター化に必要な小分子の重要な立体配座、すなわち、小分子のエネルギーが比較的低い極小点立体配座および、これらの立体配座をつなぐ経路(すなわち、ポテンシャルエネルギー曲面)を生成することである。複数の連続する二面角を含む小分子について、その立体配座空間は、二面角の数とともに指数関数的に増大する。
【0003】
力場の開発は、無数の小分子のQM構造とエネルギーを計算する必要があるため、各小分子に割り当てられた計算資源は限られている。1Dスキャンは比較的高速で、計算量も少ないが、隣り合う二面角が結合されていない分子の場合、いくつかの重要な立体配座が遺漏される。2Dスキャンはより包括的であるが、計算量が多く、大量の分子の計算を実現することが難しい。小分子の隣り合う二面角の数が増えると、2次元または多次元のスキャンを実行することは実現しそうもない。したがって、ここでの難点は、限られた計算資源を利用して、特定の小分子について、どのようにして最も多くの重要な立体配座を得るかにある。異なる小分子のポテンシャルエネルギー曲面は完全に同じでなく、いくつかの比較的高速で正確な方法を指標として利用して、異なる分子について、どのようなポテンシャルエネルギー曲面スキャンがより多くの重要な立体配座を得るか、および分子全体の立体配座空間をより適切に反映できるかを判定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故に、効率と正確さの両方に配慮できる分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法を提供する必要がある。同時に、効率と正確さの両方に配慮できる分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー表面スキャンシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法は、
与えられた分子に隣り合う二面角があるかどうかを判定する隣り合う二面角判定ステップ、
隣り合う二面角があると判定した場合、QM計算を介して隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定するQM結合判定ステップ、
QM計算で結合していないと判定した場合に行うステップであって、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得る1次元ポテンシャルエネルギースキャンステップ、
QM計算で結合すると判定した場合に行うステップであって、MM計算で前記隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定するMM結合判定ステップ、
MM計算で前記隣り合う二面角が結合していないと判定した場合に行うステップであって、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得る1次元ポテンシャルエネルギースキャンステップ、
MM計算で前記隣り合う二面角が結合していないと判定した場合に行うステップであって、MMスキャン結果に基づいて2次元ポテンシャルエネルギー曲面上の極値点に対する2つの二面角のそれぞれ1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンで得られた極値点の組み合わせのカバレッジを計算し、異なるカバレッジまたはカバレッジ率によってカバレッジレベル(良い、普通、悪い)に区分されるカバレッジ計算ステップ、及び、
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対する計算された1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが良い場合に行うステップであって、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得る1次元ポテンシャルエネルギースキャンステップを有する。
【0006】
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対するカバレッジ計算ステップで計算された1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが悪い場合、
2つの隣り合う二面角を同時に制限して、-180°から+180°までの2つのすべての組み合わせを得る包括的2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンステップに進む。
【0007】
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対するカバレッジ計算ステップで計算された1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが普通の場合、
2つの隣り合う二面角に対し、1つの角度のみを制限して、-180°から+180°に変化させ、同時に、もう1つの二面角は、各々2つの角度値を開始構造とし、2つが同じ二面角のポテンシャルエネルギー曲面に沿ってスキャンする疑似2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンステップに進む。
【0008】
好ましい実施例において、前記QM結合判定ステップで使用される方法は、隣り合う二面角を有する分子について、x°などの間隔で、点(φ1,φ2)、(φ1+x,φ2)、(φ1,φ2+x)、(φ1+x,φ2+x)等の立体配座を選択し、QMエネルギーを計算し、理想的な結合状況において、E(φ1+x,φ2+x)=E(φ1,φ2+x)+E(φ1+x,φ2)-E(φ1,φ2)となり、E(φ1+x,φ2+x)理想値と実際の計算値の差を標準として、カットオフ値を設定して、隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定する。
【0009】
好ましい実施例において、MM結合判定ステップで使用される方法は、各々φ1およびφ2の二面角について1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンのMM計算をすることで、1つの二面角を制限する時、別の二面角の角度変化幅を基準としてカットオフ値を設定し、隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定する。
【0010】
好ましい実施例において、前記QM結合判定ステップで設定されたカットオフ値または前記MM結合判定ステップで設定されたカットオフ値の絶対偏差を2kcal/molに制御するか、または相対偏差を5%以内に制御し、間隔の変化は20~40°の値を選択し、カバレッジが80%以上に達した場合、良いと判定し、カバレッジが60%~80%の範囲にある場合、普通と判定し、カバレッジが60%以下の場合、悪いと判定する。
【0011】
分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャンシステムは、隣り合う二面角判定モジュールと、QM結合判定モジュールと、1次元ポテンシャルエネルギースキャンモジュールと、MM結合判定モジュールと、カバレッジ計算モジュールと、を備え、
隣り合う二面角判定モジュールは、与えられた分子に隣り合う二面角があるかどうかを判定するために用いられ;
QM結合判定モジュールは、隣り合う二面角があると判定した場合、QM計算を介して隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定するために用いられ;
QM計算で結合していないと判定した場合、
1次元ポテンシャルエネルギースキャンスモジュールは、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得;
QM計算で結合すると判定した場合、
MM結合判定モジュールは、MM計算で前記隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定し;
MM計算で前記隣り合う二面角が結合していないと判定した場合、
1次元ポテンシャルエネルギースキャンスモジュールは、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得;
MM計算で前記隣り合う二面角が結合していないと判定した場合、
カバレッジ計算モジュールは、MMスキャン結果に基づいて2次元ポテンシャルエネルギー曲面上の極値点に対する2つの二面角のそれぞれ1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンで得られた極値点の組み合わせのカバレッジを計算し、異なるカバレッジまたはカバレッジ率によってカバレッジレベル(良い、普通、悪い)に区分され;
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対する計算された1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが良い場合、
1次元ポテンシャルエネルギースキャンスモジュールは、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得る。
【0012】
好ましい実施例において、2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対するカバレッジ計算モジュールが計算した1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが悪い場合、
包括的2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンモジュールは、2つの隣り合う二面角を同時に制限して、-180°から+180°までの2つのすべての組み合わせを得る。
【0013】
好ましい実施例において、2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対するカバレッジ計算モジュールが計算した1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが普通の場合、
疑似2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンモジュールは、2つの隣り合う二面角に対し、1つの角度のみを制限して、-180°から+180°に変化させ、同時に、もう1つの二面角は、各々2つの角度値を開始構造とし、2つが同じ二面角のポテンシャルエネルギー曲面に沿ってスキャンする。
【0014】
好ましい実施例において、前記QM結合判定モジュールは、隣り合う二面角を有する分子について、x°などの間隔で、点(φ1,φ2)、(φ1+x,φ2)、(φ1,φ2+x)、(φ1+x,φ2+x)等の立体配座を選択し、QMエネルギーを計算し、理想的な結合状況において、E(φ1+x,φ2+x)=E(φ1,φ2+x)+E(φ1+x,φ2)-E(φ1,φ2)となり、E(φ1+x,φ2+x)理想値と実際の計算値の差を標準として、カットオフ値を設定して、隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定する。
【0015】
好ましい実施例において、MM結合判定モジュールは、各々φ1およびφ2の二面角について1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンのMM計算をすることで、1つの二面角を制限する時、別の二面角の角度変化幅を基準としてカットオフ値を設定し、隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定する。
【0016】
好ましい実施例において、前記QM結合判定モジュールで設定されたカットオフ値または前記MM結合判定モジュールで設定されたカットオフ値の絶対偏差を2kcal/molに制御するか、または相対偏差を5%以内に制御し、間隔の変化は20~40°の値を選択し、カバレッジが80%以上に達した場合、良いと判定し、カバレッジが60%~80%の範囲にある場合、普通と判定し、カバレッジが60%以下の場合、悪いと判定する。
【0017】
上記分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法およびシステムは、状況に応じて異なる分子に対して最終的に異なる立体配座スキャン方法を用い、柔軟性が高く、計算効率に配慮しながら正確さを保証でき、分子の立体配座空間内の重要な立体配座を最大限に保持し、スキャン結果は分子の立体配座空間をより正確に反映できる。多数の複雑な基準を導入並びに採用して隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定し、比較的高速なQM点選択とMM計算を利用して、その後の比較的時間のかかるQMポテンシャルエネルギー曲面スキャンの決定のために根拠を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例に係る分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法のフローチャートである。
図2】本発明の一実施例に係る隣り合う二面角を示す図である。
図3】本発明の好ましい実施例に係る隣り合う二面角を示す図である。
図4】本発明の好ましい実施例に係る1次元ポテンシャルエネルギー曲面のMMスキャン曲線である。
図5】本発明の好ましい実施例に係る2次元ポテンシャルエネルギー曲面のMMスキャン曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1および図2に示すように、本発明の一実施例に係る分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャン方法は、
与えられた分子に隣り合う二面角(図2)があるかどうかを判定する隣り合う二面角判定S101ステップ、
隣り合う二面角があると判定した場合、QM(Quantum Mechanics、量子力学)計算を介して隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定するQM結合判定ステップS103、
QM計算で結合していないと判定した場合に行うステップであって、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得る1次元ポテンシャルエネルギースキャンステップS105、
QM計算で結合すると判定した場合に行うステップであって、MM計算で前記隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定するMM結合判定ステップS107、
MM計算で前記隣り合う二面角が結合していないと判定した場合に行うステップであって、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得る1次元ポテンシャルエネルギースキャンステップS105、
MM計算で前記隣り合う二面角が結合していないと判定した場合に行うステップであって、MMスキャン結果に基づいて2次元ポテンシャルエネルギー曲面上の極値点に対する2つの二面角のそれぞれ1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンで得られた極値点の組み合わせのカバレッジを計算し、異なるカバレッジまたはカバレッジ率によってカバレッジレベル(良い、普通、悪い)に区分されるカバレッジ計算ステップS109、及び、
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対する計算された1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが良い場合に行うステップであって、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得る1次元ポテンシャルエネルギースキャンステップS105を有する。
【0020】
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対するカバレッジ計算ステップS109で計算された1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが悪い場合、
2つの隣り合う二面角を同時に制限して、-180°から+180°までの2つのすべての組み合わせを得る包括的2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンステップS111に進む。
【0021】
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対するカバレッジ計算ステップS109で1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが普通の場合、
2つの隣り合う二面角に対し、1つの角度のみを制限して、-180°から+180°に変化させ、同時に、もう1つの二面角は、各々2つの角度値を開始構造とし、2つが同じ二面角のポテンシャルエネルギー曲面に沿ってスキャンする疑似2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンステップS113に進む。
【0022】
QM(Quantum Mechanics、量子力学)計算は、量子化学ソフトウェアで計算し、分子座標などの情報を入力し、量子力学の原理を介して分子のエネルギーなどの情報を算出できる。分子立体配座空間上の点を選択し、いくつかの立体配座のエネルギーを計算する。
【0023】
例えば2つの隣り合う二面角の角度値について、初期値(-120°,20°)、20°の間隔で点を選択する場合、実際の点選択は、(-120°,0°)、(-100°,20°)、(-120°,40°)、(-100°,40°)であり得、QMによってこの4つの立体配座のエネルギーを計算し、それぞれE1、E2、E3、E4として表され、ΔE=E4+E1-E2-E3を結合判定基準とすることができる。結合を判定するためのカットオフ値は、経験に基づいて設定できるか、またはビッグデータ統計や解析による大量の法則要約に基づいて設定することもできる。
【0024】
MM(Molecular Mechanics、分子力学)の計算は、分子力学ソフトウェアで分子座標などの情報を入力し、分子力学の原理を介して分子のエネルギーなどの情報を算出できる。間隔変化の間隔は、実際の使用に応じて自由かつ柔軟に設定でき、間隔の度数が小さいほど、計算量が多くなり(時間と計算資源が多く消費される)、得られる結果もより正確である。対照的に、間隔の度数が大きいほど計算量が少なくなり、得られる結果は比較的不正確である。例えば好ましくは、20~40°程度に設定でき、より好ましくは30°程度に設定することができる。
【0025】
さらに、本実施例のQM結合判定ステップで設定されたカットオフ値または前記MM結合判定ステップで設定されたカットオフ値の絶対偏差を2kcal/molに制御するか、または相対偏差を5%以内に制御する。カバレッジが80%以上に達した場合、良いと判定し、カバレッジが60%~80%の範囲にある場合、普通と判定し、カバレッジが60%以下の場合、悪いと判定する。
【0026】
さらに、本実施例のQM結合判定ステップは、隣り合う二面角を有する分子について、x°などの間隔で、点(φ1,φ2)、(φ1+x,φ2)、(φ1,φ2+x)、(φ1+x,φ2+x)等の立体配座を選択し、QMエネルギーを計算し、理想的な結合状況において、E(φ1+x,φ2+x)=E(φ1,φ2+x)+E(φ1+x,φ2)-E(φ1,φ2)となり、E(φ1+x,φ2+x)理想値と実際の計算値の差を標準として、カットオフ値を設定して、隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定する。
【0027】
さらに、本実施例のMM結合判定ステップは、各々φ1およびφ2の二面角について1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンのMM計算をすることで、1つの二面角を制限する時、別の二面角の角度変化幅を基準としてカットオフ値を設定し、隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定する。
【0028】
本実施例の1次元(1D)ポテンシャルエネルギー曲面スキャンステップは、1つの二面角を制限して、一定の間隔で-180°から+180°に変化させ、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得る。
【0029】
本実施例の包括的2次元スキャン(2D)の時、2つの隣り合う二面角を同時に制限して、-180°から+180°までの2つのすべての組み合わせを得た。例えばポテンシャルエネルギー曲面スキャンの間隔が30°を取る場合、2つの隣り合う二面角に対して1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンを採用する場合、24つの立体配座を計算する必要があり、包括的スキャンが144つの立体配座を計算する必要がある。
【0030】
2つの隣り合う二面角について、1つの二面角が変更され、別の二面角のポテンシャルエネルギー曲面上の極大点と極小点の位置は、これに伴って変更されない場合、2つの二面角は結合せず、これとは逆に結合する。2つの隣り合う二面角が結合していない場合、2つの二面角の1次元ポテンシャルエネルギー曲面の組み合わせを組み合わせることにより、近似の2次元ポテンシャルエネルギー曲面を得ることができる。結合した場合、1次元ポテンシャルエネルギー曲面の組み合わせは実の2次元ポテンシャルエネルギー曲面の状況を反映できないため、2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンが必要になる。
【0031】
図3乃至図5に示すように、さらに具体的な実施例では、QMによる結合判定のカットオフ値を経験的に4に設定した場合、MMによる結合判定のカットオフ値は(20,20)であり、2次元ポテンシャルエネルギー曲面に対する1次元ポテンシャルエネルギー曲面組み合わせの極値点のカバレッジは、80%をカットオフ値とする。図3に示すように、この分子の例として、点φ1とφ2を20°間隔で(-120,20)、(-100,20)、(-120,40)、(-100,40)として選択し、対応する立体配座QMエネルギー計算の結合値が6.7であることを算出したため、QMは結合していると判定した。再度2つの1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンを通じて計算されたMM結合値が(7,24)であるため、結合していないと判定した。一次元ポテンシャルエネルギー曲面のMM計算スキャンと二次元ポテンシャルエネルギー曲面計算をそれぞれ実行し、図4の2本のポテンシャルエネルギー曲面曲線および図5の二次元ポテンシャルエネルギーを得た。図4のポテンシャルエネルギー曲面曲線は、2つの二面角が-140°、20°、-160°、-180°および-20°に極小点を有することを示している、1次元ポテンシャルエネルギー曲面の組み合わせを通じて2つの二面角の(-140°,-180°)、(-140°,-20°)、(20°,-180°)、(20°,-20°)、(-160°,-180°)、(-160°,-20°)などの6箇所における小さな極値点を得ることができる。図5の2次元ポテンシャルエネルギー曲面図に6箇所の極小点が示され、上記と一致している。前記2次元ポテンシャルエネルギー曲面に対する分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面組み合わせのカバレッジは、6/6=100%であるため、疑似2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンを実行した。カバレッジ状況の判定も比較的柔軟に、合理的に設定できる。好ましくは、実際では80%、60%をそれぞれカバレッジが良いおよび普通であると判定されたカットオフ値として使用することができる。
【0032】
本実施例のスキャン方法は、分子の二面角を回転して、異なる角度に固定させ、前記分子の異なる立体配座を得て、これらの立体配座のエネルギーを各々計算した。本実施例のMM計算ソフトウェアは、AMBERである。本実施例の機能を実現できれば、実際のニーズに応じて他のソフトウェアを用いることができ、社内で開発したソフトウェアを用いることもできる。
【0033】
本発明の一実施例に係る分子の立体配座空間解析のためのポテンシャルエネルギー曲面スキャンシステムは、隣り合う二面角判定モジュールと、QM結合判定モジュールと、1次元ポテンシャルエネルギースキャンモジュールと、MM結合判定モジュールと、カバレッジ計算モジュールと、を備え、
隣り合う二面角判定モジュールは、与えられた分子に隣り合う二面角があるかどうかを判定するために用いられ;
QM結合判定モジュールは、隣り合う二面角があると判定した場合、QM計算を介して隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定するために用いられ;
QM計算で結合していないと判定した場合、
1次元ポテンシャルエネルギースキャンスモジュールは、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得;
QM計算で結合すると判定した場合、
MM結合判定モジュールは、MM計算で前記隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定し;
MM計算で前記隣り合う二面角が結合していないと判定した場合、
1次元ポテンシャルエネルギースキャンスモジュールは、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得;
MM計算で前記隣り合う二面角が結合していないと判定した場合、
カバレッジ計算モジュールは、MMスキャン結果に基づいて2次元ポテンシャルエネルギー曲面上の極値点に対する2つの二面角のそれぞれ1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンで得られた極値点の組み合わせのカバレッジを計算し、異なるカバレッジまたはカバレッジ率によってカバレッジレベル(良い、普通、悪い)に区分され;
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対する計算された1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが良い場合、
1次元ポテンシャルエネルギースキャンスモジュールは、1つの二面角を制限して、設定された間隔で-180°から+180°に変化するようにスキャンし、他の二面角を制限せず、分子の1次元ポテンシャルエネルギー曲面を得る。
【0034】
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対するカバレッジ計算モジュールが計算した1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが悪い場合、
包括的2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンモジュールは、2つの隣り合う二面角を同時に制限して、-180°から+180°までの2つのすべての組み合わせを得る。
【0035】
2次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点に対するカバレッジ計算モジュールが計算した1次元ポテンシャルエネルギー曲面の極値点の組み合わせのカバレッジが普通の場合、
疑似2次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンモジュールは、2つの隣り合う二面角に対し、1つの角度のみを制限して、-180°から+180°に変化させ、同時に、もう1つの二面角は、各々2つの角度値を開始構造とし、2つが同じ二面角のポテンシャルエネルギー曲面に沿ってスキャンする。
【0036】
さらに、本実施例のQM結合判定モジュールは、隣り合う二面角を有する分子について、x°などの間隔で、点(φ1,φ2)、(φ1+x,φ2)、(φ1,φ2+x)、(φ1+x,φ2+x)等の立体配座を選択し、QMエネルギーを計算し、理想的な結合状況において、E(φ1+x,φ2+x)=E(φ1,φ2+x)+E(φ1+x,φ2)-E(φ1,φ2)となり、E(φ1+x,φ2+x)理想値と実際の計算値の差を標準として、カットオフ値を設定して、隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定する。
【0037】
MM結合判定モジュールは、各々φ1およびφ2の二面角について1次元ポテンシャルエネルギー曲面スキャンのMM計算をすることで、1つの二面角を制限する時、別の二面角の角度変化幅を基準としてカットオフ値を設定し、隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定する。
【0038】
好ましい実施例において、前記QM結合判定モジュールで設定されたカットオフ値または前記MM結合判定モジュールで設定されたカットオフ値の絶対偏差を2kcal/molに制御するか、または相対偏差を5%以内に制御し、間隔の変化は20~40°の値を選択し、カバレッジが80%以上に達した場合、良いと判定し、カバレッジが60%~80%の範囲にある場合、普通と判定し、カバレッジが60%以下の場合、悪いと判定する。
【0039】
本発明に係る階層的ポテンシャルエネルギー曲面スキャン決定木は、状況に応じて異なる分子に対して最終的に異なる立体配座スキャン方法を用い、柔軟性が高く、計算効率に配慮しながら正確さを保証でき、分子の立体配座空間内の重要な立体配座を最大限に保持し、スキャン結果は分子の立体配座空間をより正確に反映できる。前記決定木を導入し、多数の複雑な基準を採用して隣り合う二面角が結合しているかどうかを判定し、比較的高速なQM点選択とMM計算を利用して、その後の比較的時間のかかるQMポテンシャルエネルギー曲面スキャンの決定のために根拠を提供する。
【0040】
本出願に基づく上記の理想的な実施例を啓蒙として、上記の説明内容を通じて、当業者は、本出願の技術的思想の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができる。 本出願の技術的範囲は、明細書の内容に限定されず、特許請求の範囲に従って技術的範囲を決定しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5