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  • 特許-気体を媒介した作物への養分供給装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】気体を媒介した作物への養分供給装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20220803BHJP
【FI】
A01G31/00 601C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021540428
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 TH2020000004
(87)【国際公開番号】W WO2020218981
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】1901002389
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(73)【特許権者】
【識別番号】518415141
【氏名又は名称】ムアンチャート マンカエー
【氏名又は名称原語表記】Muanchart,Mankaew
【住所又は居所原語表記】55/1 Saboran Road, Muang Surin, Surin 32000 THAILAND
(74)【代理人】
【識別番号】100180482
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 将隆
(72)【発明者】
【氏名】ムアンチャート マンカエー
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-022122(JP,A)
【文献】特開2014-036636(JP,A)
【文献】特開平03-224420(JP,A)
【文献】特開昭63-188332(JP,A)
【文献】特開2019-165659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォーターポンプ(1)・ソレノイドバルブ(6)を経由して、水滴(droplets)形態や霧(mist)形態により液状の養分を供給するための空中栽培(aeroponics)と、
前記ウォーターポンプ(1)・ソレノイドバルブ(6)を経由することなく、前記空中栽培(aeroponics)よりも細かい液状のエアロゾル形態により養分を供給するための霧栽培(fogponics)と、
の2系統による交番作物養分供給をおこなう、気体を媒介した作物への養分供給装置であって、

(A)空中栽培(aeroponics)を実現するための構成要素として、
溶液タンク(2)から液状の養分を汲み取って加圧することにより、当該液状の養分をソレノイドバルブ(6)へと流すウォーターポンプ(1)と、
作物の種(species)に適合する一連の周期的データを用いて当該空中栽培(aeroponics)のタイミングを分割し、栽培する作物のタイプに応じた動作手順により断続的な間隔でスイッチオン・オフの指示を送ることで、前記ソレノイドバルブ(6)を調節する自動制御システムのコンピュータ(5)と、
栽培する作物のタイプに応じた動作手順により断続的な間隔で前記自動制御システムのコンピュータ(5)から送られるスイッチオン・オフの指示に応じて、溶液が前記水噴霧ノズル(8)に到達する前に、液状である溶液の取込口の開閉をする前記ソレノイドバルブ(6)と、
溶液を、粒径7ミクロン以上に形成された水滴へと変えて、鉢(7)の内部にて空中に吊られた作物の根に付着させるために、当該作物根のまわりに前記水滴を噴霧する水噴霧ノズル(8)と、
を備えるとともに、

(B)霧栽培(fogponics)を実現するための構成要素として、
溶液の状態を、液状のエアロゾルであって粒径3~7ミクロンの状態に変化させる、超音波ノズルを備えたコロイド発生器(4)と、
浮遊した状態にある前記コロイド発生器(4)からのコロイドガスを前記鉢(7)の内部を漂わせて作物の根に付着させるべく、当該鉢(7)における密度が均一になるまで同コロイドガスを鉢(7)まで運ぶためのパイプと、
を備え、

前記自動制御システムのコンピュータ(5)は、
前記動作の開始指示を送るステップ(101)と、
前記鉢(7)内部において根が空中に吊られている作物がどの科(family)に属するか分類するステップ(102)と、
当該作物が属する科(family)を決定したときに、その科(family)のデータを、鉢の中で使用される分類グループ(緑色葉作物・花をつける作物など)から選択するステップと、
さらに詳細に、作物の種(species)(グラジオラス、バラ型など)を特定するステップと、

前記特定した作物の種(species)に適合する一連の周期的データであって同作物による養分の吸収が促進される相対湿度が臨界となるように水噴霧ノズル(8)から養分を噴霧する時間量を用いて、水滴(droplets)形態や霧(mist)形態により液状の養分を供給する空中栽培(aeroponics)のタイミングを分割する時間分類ステップ(103)と、
時間分類ステップ(103)において、周期的データが前記特定した作物の種と適合しない場合に、操作(201)を追加して予定を立ててから、作物の種(species)に適合する一連の周期的データを用いて空中栽培のタイミングを分割する前記時間分類ステップ(103)に再帰するステップと、

時間分類ステップ(103)において、前記周期的データが前記特定した作物の種と適合した場合、前記ウォーターポンプ(1)に指示するステップ(104)とともに、当該指示するステップ(104)の間、経過時間を計時して表示するステップと、

前記ウォーターポンプ(1)に指示したステップ(104)の後、養分の液滴を噴霧する反転ステップ(202)と、

噴霧開放時間を設定するステップ(105)と、
タイミングが正しいか確認するステップと、
同タイミングが正しくない場合に、動作状況の表示と通知を行うステップ(203)と、
当該タイミングが正しい場合、噴霧閉鎖を開始するステップ(106)と、さらにタイミングが正しいか確認するステップと、

同タイミングが正しくない場合に、動作状況の表示と通知を行うステップ(204)と、
当該タイミングが正しい場合、生産予定を開始するステップ(107)と、さらに予定が正しいか確認するステップと、
前記予定が正しくない場合に、実行ステータスの表示と通知を行うステップ(205)と、
当該予定が正しい場合、処理ステータスを報告するステップ(108)と、
を備え、

前記処理ステータスの報告は周期的に行われるよう設定可能であり、さらに必要な場合には、終了ステップ(109)において処理が完了していることを確認可能であり、

処理が完了するまで、ステップ(104)・(105)・(106)・(107)・(108)の個々のチェックを再帰的に実行し、
その後、処理が完了すると、終了ステップ(109)のための終了コマンドを送る
ことを特徴とする、気体を媒介した作物への養分供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の、気体を媒介した作物への養分供給装置であって、

前記コロイド発生器(4)は、
音の周波数よりも高い1MHz~6MHzの周波数帯の高周波を放出する超音波発振器からな、コロイドが適温であるようにす
ことを特徴とする、気体を媒介した作物への養分供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー・装置・方法に関し、とりわけ作物の養分に関する。
【背景技術】
【0002】
作物の養分は、固体状・液体状・気体状の3つに区分される。
固体状の養分は、人間が元々植えた作物に、撒かれる。
作物の養分は、土壌中では固体状であり、水を用いても、このような養分は作物の根にわずかしか吸収されない。
これによる問題としては、土壌の肥沃さが不均一となり、土壌の劣化をもたらし、さらには土壌からの伝染病をももたらすことにある。
したがって、液体を介して作物に養分を与えることのモデル化は、水源中に浮遊している作物が良好に育つか観察したあとに行われる。
その後、作物の根を水に浸しておき、当該作物の成長に必要な養分やミネラルを水に溶かしておいて用いる「水栽培」(hydroponic plants)が発展した。
水栽培における問題は、大量に水を消費することである。
資源を無駄にする問題については、水の使用量を減らすための一定の試みが行われている。
また、空中に吊るしてある作物の根に対し、気体を媒介して、養分を混ぜた水滴を噴霧する「気体を媒介した作物への養分供給」(plant nutrition through the air)が発展している。
この方法は、「空中栽培」(aeroponics)へと発展した。
そののち、霧状の水(water mist)の粒径を改良し、さらに長時間、水滴を空気中に漂わせることが可能となったことで、「霧栽培」(fogponics)へと発展した。
【0003】
国際公開第2018/172947号は、栽培時における作業の問題を解決する、水栽培(hydroponics)と空中栽培(aeroponics)のための養分供給を自動で行う装置を開示する。
この装置は、水栽培(hydroponics)・空中栽培(aeroponics)の両方のタイプの作物に対し、使用可能である。
当該発明は、水栽培(hydroponics)や空中栽培(aeroponics)による栽培システムにおいて、どのように自動化を図るかを示す例である。
【0004】
国際公開第2017/217941号は、閉じられた栽培システムとして、霧栽培(fogponics)において、環境(たとえば、照明・空気・栽培エリア)を制御する作物への養分供給システムを開示する。
このシステムは、鉢の中に作物根(roots of plants)を吊るしておくために、箱を使ってタワー形状の鉢(タワーポット)を構成することで、垂直栽培における問題を解決している。
そして、作物の養分を通じて、溶液の蒸気を解放している。
【0005】
ウィキペディア(Wikipedia.org)(登録商標)によれば、空中栽培(aeroponics)に関し、歴史や定義、液滴の粒径を含めた空中栽培(aeroponics)の段階について説明がなされている。
空中栽培(aeroponics)では、液滴の粒径が20~50ミクロンであり、これよりも小さな粒径を使用する霧栽培(fogponics)とは相違している。
【0006】
中国特許第107493874号明細書は、点滴灌漑(drip irrigation)システムと、照明システムと、照明光の色の比(作物の成長と、作物に与える水滴量と、作物に与える継続時間の関係性に影響を与える)を備えた栽培システムの応用方法を開示する。
この発明は、栽培に用いる資源を節約し、生産品質を向上させ、栽培期間を短縮させる。
【0007】
作物に養分を与える時間量を決定することで、現代の農業において、資源やエネルギを削減できることが散見される。
しかし、これは固体状の養分に基づいたものであり、気体状の養分を使用したときの養分供給時間については見出すことができない。
なぜなら、空中に吊られており且つ水分のない状態の根は、最終的に枯れてしまうからである。
【0008】
作物に養分を与える時間の削減は、一般に、作物に当てる照明により行われる。
作物が昼夜のサイクルを認識でき、作物の成長を促進させることができるからである。
作物の成長促進は、養分供給システム単体では成し遂げることはできず、養分供給システムに一般照明や天然光を組合せることで達成される。
【0009】
農業の問題は、労働力不足にある。
栽培システムに組込まれた自動補助装置には、とりわけ、栽培期間を通じて作物への養分供給を定期的に停止する自動補助装置がある。
この装置は、人手による労力に取って代わるものであり、最適である。
それゆえに、上述した手法が、農業システムにおいて用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2018/172947号
【文献】国際公開第2017/217941号
【文献】中国特許第107493874号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、作物栽培方法を創出することであり、異なる相の作物の養分を用いる空中栽培(aeroponics)システムと霧栽培(fogponics)システムの間における、集積的な作物養分供給手順を創出する。
養分の供給は、別々の養分分配器から行われる。
栽培における「栽培時間を短縮」することを補助し、「エネルギ資源と農業用資源を節約」できる、農業用の自動システムを提供する。
【0012】
本願に基づく栽培手法は、国際公開第2017/217941号や、ウィキペディア(Wikipedia.org)(登録商標)からの空中栽培(aeroponics)の定義とは異なるものである。
本発明は、異なる形態の作物用養分を組合せている。
なぜなら、国際公開第2017/217941号やウィキペディア(Wikipedia.org)(登録商標)の空中栽培の両栽培手法は、栽培期間の短縮は図れないからである。
【0013】
中国特許第107493874号明細書とは異なり、本願発明では、照明手法を採用する必要がない。
特定の照明のスペクトルは、作物栽培における栽培時間を短縮させることができる。
【0014】
本発明の技術は、空中栽培(aeroponics)システムと霧栽培(fogponics)システムによる作物への養分供給を交番的に(alternation)実施する。
空中栽培(aeroponics)システム・霧栽培(fogponics)システム両者は、気体を媒介して作物への養分供給が行われる。
空中栽培(aeroponics)システム・霧栽培(fogponics)システムの両手法を組合せ、空中フォトニック(aero-photonic)システムの養分分配器から、周期的に、粒径レベルがそれぞれ異なる養分を作物に噴霧する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、気体を媒介した作物への養分供給装置と方法を示す概観図である。
図2図2は、ソレノイドバルブ(6)の自動制御システムの操作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[発明の詳細な説明]
気体を媒介した作物への養分供給は、図1を参照して、以下説明する。
ウォーターポンプ(1)は、溶液タンク(2)から、液状の養分を汲み取る。
液状の養分は、上記のウォーターポンプ(1)により加圧される。これにより、養分が、パイプを通ってソレノイドバルブ(6)へと流れる。
ソレノイドバルブ(6)は、開閉することで、それぞれの鉢(7)の内部にあるパイプへと流れる溶液を制御する。
制御コンピュータ(5)が、ソレノイドバルブ(6)を開放するための信号を送ると、鉢の内側に設けられた水噴霧ノズル(8)により、鉢の内側に養分が流入する。
鉢の始点から鉢の終端まで到達すると、噴霧ノズル(8)が、当該ノズル周辺に養分の液滴(droplets)を噴霧する。
この養分の液滴(droplets)は、霧(mist)よりも粒径が大きく、作物(9)の根に付着する。
作物(9)の根に付着しなかった水滴は、鉢の底部にむかって降下していき、再度、液体に戻る。
さらに、液滴は、他のパイプと比べて最も低い位置にある「鉢の内部に設けられたパイプ」を通って流出する。
それから、液状の養分は、パイプに沿って当該鉢の外部へと流れ、「液体・コロイドガス分離タンク」(3)へと流れ込む。
この分離タンク(3)は、液体と気体の分離器として動作する。
液体・コロイドガス分離タンク(3)から流れた液体は、パイプに沿って、溶液タンク(2)へと流れる。
【0017】
「液体状の養分を供給」するとともに、本願発明のシステムでは、同時に「コロイドガス状の養分の供給」も開始する。
コロイド発生器(4)は、溶液タンク(2)から、液体状の養分を受取る。
液体状の養分は、コロイド発生器(4)において、コロイドガスに変化する。
それから、コロイドガスは、パイプを通って鉢(7)へと流入する。
なお、コロイドガスは、鉢(7)における密度が均一になるまで流れ込む。
コロイドガスは、鉢の内部を漂い、作物の根に付着する。
余剰なものは、当該鉢の底部にて凝集し合って、液体となる。

そして、コロイドガスは、パイプのうちで最も低い位置にある「鉢の内部に設けられたパイプ」に向けて流出する。
液状の養分が通っている他のパイプとは異なり鉢の外部を通っているパイプを通って、鉢の内部に設けられたパイプを浮遊しているコロイドの一部が、液体・コロイドガス分離タンク(3)へと回帰する。
液体状の養分およびコロイド状の養分が、液体・コロイドガス分離タンク(3)に流入すると、当該タンクの内部では、固体シート(solid sheet)がトラップとして機能する。
この固体シートは、コロイドが浮遊して当該トラップに付着するよう、10°~89°の範囲で傾斜させてある。
その後、コロイドガスは、液体・コロイドガス分離タンク(3)の底部へと沈降していき液体に取込まれる。
また、コロイドの一部は、4ミクロンの粒径を有する精製されたコロイドまたは精製された霧(mist)となって、さらにナノメートルレベルまで細粒化される。
これらの精製されたコロイドまたは精製された霧(mist)は、液体・コロイドガス分離タンク(3)上部のパイプを通って、再度、コロイド発生器(4)に回帰する。
液体・コロイドガス分離タンク(3)下部に溜まった液体は、パイプを通って、溶液タンク(2)へと流れ、次の養分供給サイクルに使用される。
【0018】
本発明では、自動制御システムのコンピュータ(5)によるソレノイドバルブ(6)の制御において、特別な技術的特徴を有している。
自動制御システムのコンピュータ(5)は、栽培する作物のタイプ(type)に応じて、ソレノイドバルブ(6)を調節する。
環境制御システムにおける作物を成長させる試みは、作物の成長に影響を与える。
空中栽培(aeroponics)や霧栽培(fogponics)のような気体を媒介した作物への養分供給システム、水栽培(hydroponics)のような液体状の養分供給システム、土壌栽培(soil cultivation)のような固体・液体状の養分供給システムなどがある。
「交番実施栽培方法」(alternating cultivation)は、どんな種類の栽培手法よりも良好に作物を育成できる養分を供給可能である。
たとえば、点滴灌漑(drip irrigation)システムを使用して作物の土壌栽培をしている場合、「交番実施栽培方法」(alternating cultivation)により、固体状の養分と液体状の養分を供給する。
水を噴霧する土壌栽培をしている場合、「交番実施栽培方法」(alternating cultivation)により、固体状の養分と気体状の養分を供給する。
上述した両手法の間には、養分のサイズがあることが分かる。
【0019】
本願発明によれば、空中栽培(aeroponics)と霧栽培(fogponics)システムを交互に切替えた「交番作物養分供給」(alternating plant nutrition)により、より高度に発展させる。
空中栽培(aeroponics)と霧栽培(fogponics)は、どちらも気体を媒介して作物への養分供給を行うが、異なる大きさの養分を利用している。
空中栽培(aeroponics)は、水滴(water droplets)や霧(mist)を生成する。
霧栽培(fogponics)は、マクロンもしくはナノメートルレベルの、溶液の蒸気や、空中栽培(aeroponics)よりも細かい霧を利用する。
「交番作物養分供給」(alternating plant nutrition)とは異なる他の制御環境による、複数の科(families)の作物を用いた試行によれば、養分供給時間と養分のサイズが、作物の成長期間に影響することが分かった。
加えて、大きさ(magnitudes)の異なる養分を作物に与える量により、空中栽培(aeroponics)では、大電力を消費し、システム規模も大きくなってしまった。
空中栽培(aeroponics)システムにおいて水噴霧期間を決定する手法は、これとは異なる形態の養分を用いる栽培方法と比較して、栽培期間が短くなった。
【0020】
水噴霧ノズル(8)から養分を噴霧する時間量を決定するには、それぞれのタイプの作物に対して繰返し行った結果を基に、鉢(7)の中の相対湿度にとって最良の距離を決定する。
作物は、相対湿度が臨界となるところで、養分の吸収が促進されるからである。
その結果、成長期間は、削減される。
試行によれば、湿気を増してやることで、作物による養分の吸収がより早まった。
その後、吸収量は一定に収束した。
定常的に、充分に養分を供給したり、養分を充分に与えないことを交互に繰返して栽培していると、律動的に(in rhythm)、作物による養分吸収が促進される。
その結果、収穫時期において標準的な大きさの作物が育つ栽培期間が短縮され、収穫時期も早めることができる。
【0021】
ソレノイドバルブ制御装置もしくは制御コンピュータ(5)の自動制御システムの手順は、図2のごとく、以下に示すとおりである。
ステップ(101)では、動作の開始指示を送る。

自動制御システムは、ステップ(102)において、作物がどの科(family)に属するか分類する。
自動制御システムは、当該作物が属する科(family)を決定したときに、その科(family)のデータを、鉢の中で使用される分類グループ(緑色葉作物・花をつける作物など)から選択する。
さらに、自動制御システムは、詳細に、作物の種(species)(グラジオラス、バラ型など)を特定する。

自動制御システムは、時間分類ステップ(103)において、作物の種(species)に適合する一連の周期的データを用いて、空中栽培(aeroponics)のタイミングを分割する。
時間分類ステップ(103)において、周期的データが作物の種と適合しない場合、当該システムは、操作(201)を追加して予定を立ててから、時間分類ステップ(103)へと再帰する。
時間分類ステップ(103)において周期的データが作物の種と適合した場合、自動制御システムは、ステップ(104)において、ウォーターポンプに指示する。

また同システムは、当該ステップ(104)の指示がされている間、経過時間を計時して表示する。
ウォーターポンプに指示したステップ(104)の後、反転ステップ(202)において、養分の液滴を噴霧する。
そして、自動制御システムは、ステップ(105)において、噴霧開放時間を設定する。

続いて、自動制御システムは、タイミングが正しいか確認する。
同タイミングが正しくない場合、自動制御システムは、ステップ(203)において、処理状況(work situation)の表示と通知を行う。
当該タイミングが正しい場合、自動制御システムは、噴霧閉鎖を開始するステップ(106)を実行し、さらに、タイミングが正しいか確認する。

このタイミングが正しくない場合、同システムは、ステップ(204)において、動作状況の表示と通知を行う。
一方、タイミングが正しい場合、自動制御システムは、生産予定を開始するステップ(107)を実行し、さらに予定が正しいか確認する。

この予定が正しくない場合、自動制御システムは、ステップ(205)において、実行ステータスの表示と通知を行う。
一方、この予定が正しい場合、自動制御システムは、ステップ(108)において、処理ステータスを報告する。なお、処理ステータスの報告は、間隔を空けて行うように設定されている。

さらに、自動制御システムは、終了ステップ(109)において、処理が完了していることを確認する。
処理が完了していなければ、自動制御システムは、処理が完了するまで、ステップ(104)・(105)・(106)・(107)・(108)の個々のチェックを再帰的に実行する。
その後、処理が完了すると、自動制御システムは、終了ステップ(109)のための終了コマンドを送る
【0022】
本発明によれば、以下のような構成要素を備えた「気体を媒介した作物への養分供給装置と方法」を開示する。
【0023】
コロイド発生器(4)は、溶液の状態を、コロイド状態に変化させる役割を果たす。
エアロゾルは、粒径3~7ミクロンの大きさが好適である。
コロイド発生器(4)の種類は、超音波ノズルを備えたものである。
コロイド発生器(4)は、音の周波数よりも高い「1MHz~6MHz」の周波数帯の高周波を放出する。コロイドが適温であるようにするためである。
【0024】
噴霧ノズル(8)は、溶液を、霧状の水滴(solution spray)に変化させる。
同噴霧ノズル(8)は、溶液を、粒径7ミクロン以上に形成された水滴に変え、作物の根に付着させるために当該水滴を作物根のまわりに噴霧する。
【0025】
ソレノイドバルブ(6)は、液状である溶液の取込口の開閉を行う。
噴霧ノズル(8)は、特別な技術的特徴として、自動制御システムを有している。
自動制御システムのコンピュータ(5)は、栽培する作物の種類に応じた処理手順にしたがって、断続的に、スイッチオン・オフの指示を送信する。
【0026】
本発明は、以下の作物に適した特徴を備えている。
【0027】
1.ウォーターポンプ(1)は、システム中にある各パイプの隅々まで溶液が行き渡るよう、溶液を加圧する役割を果たす。
加圧する圧力は、どれくらいの量の作物を栽培するかに依る。
【0028】
2.溶液タンク(2)は、溶液を貯留する役割を果たす。
溶液タンク(2)は、強固で、防錆で、耐腐食性を有し、清掃容易である。
これに適した材料としては、ポリ塩化ビニル・ポリエチレンやポリプロピレン・ステンレス鋼316Lなどが挙げられる。
最も好適な材料は、ステンレス鋼316Lである。
【0029】
3.液体・コロイドガス分離タンク(3)は、シート状・網目状(grid)のトラップを有している。
トラップは、固体材料から構成されている。
同トラップは、液体・コロイドガス分離タンク(3)の1つの壁面に対し、10°~89°の範囲で傾斜させてある
液体・コロイドガス分離タンク(3)は、少なくとも1つのトラップを有している。
トラップは、コロイドが浮遊するか、コロイドが当該トラップに付着するように機能する。
コロイドガスは、液体・コロイドガス分離タンク(3)の底部へと沈降していき、結集して液体となる。
液体・コロイドガス分離タンクの底部には、溶液を溶液タンク(2)に輸送するための分岐パイプ、が設置されている。
分岐パイプの上方には、コロイドをコロイド発生器(4)に輸送するための個別パイプが設けられている。
液体・コロイドガス分離タンク(3)に適した構成材料は、ポリ塩化ビニル・ポリエチレンやポリプロピレン・ステンレス鋼316Lである。
これらのうち最も好適な材料は、ステンレス鋼316Lである。
【0030】
4.鉢(7)には、2つの適した形態がある。
【0031】
第1形態の鉢:当該鉢(7)の内部に設置された一体成型されてなるパイプであって、一定間隔ずつ間を空けて水噴霧ノズル(8)が設けられたパイプ、を備えている。
また、当該鉢の上部には、作物を収容する仕切区画(compartments)が設けられている。
作物の根は、当該鉢の内部において空中に吊られている。
当該鉢に適した構成材料は、ポリ塩化ビニル・ポリエチレン・ポリプロピレン・ステンレス鋼316Lである。
第1形態の鉢の形状は、例えば、アキノノゲシ属(Lactuca sativa)やトケイソウ属(Passeiflora foetida Linn)等のような、周囲に葉を広げるような作物が成長するのに適したものである。
【0032】
第2形態の鉢:鉢は、蓋と容器から構成されており、当該鉢の中には多種類の装置が組込まれている。
この容器は、以下のような特徴を備えている。
【0033】
当該「容器」は、側壁で囲まれてなり、上部は風通しが良くなっており、底部は壁に固着された床板で構成される。
同容器は、側壁により、内部に液体を収容可能となっている。
側壁には、少なくとも3つの穴(hole)もしくは空孔(cavities)が設けられている。
これらの穴の高さは、以下のようになっている。

「第1の穴」は、容器の開口部からの位置が最も低くなっているものの、容器の設置面よりは上に位置している。
第1の穴は、霧(mist)が凝集したり、容器内部のガスが当該容器の底部へと降下してなる液体を輸送する役割を果たす。
液体が第1の穴の高さに達するまで貯留されると、第1の穴に取付けられているパイプの先にある液体・コロイドガス分離タンク(3)へと、液体が流出する。
【0034】
第1の穴よりも高い位置にある「第2の穴」は、通抜け穴である。
第2の穴には、パイプもしくはホースが挿通される。
第2の穴に挿通されたパイプまたはホースには、水噴霧ノズル(8)が設けられる。
当該パイプを流れてきた液体は、噴霧器(sprayer)の圧力により、水噴霧ノズル(8)へと微細な霧になって侵入し、吊下げられて浮かんでいる作物へと液滴(droplets)が送られる。
作物の根に付着しなかった液滴(droplets)は、上述した容器の底部にむかって降下し、凝集して液体となる。
【0035】
第3の穴は、導管(channel)であって、パイプが溶接されるか、パイプもしくは管が挿入される。
これらのパイプを通じて、コロイド発生器(4)からのコロイドガスが、当該パイプに沿って浮遊して鉢(7)まで運ばれる。
コロイドガスは、ガス濃度が一定になるまで輸送される。
それぞれの作物についての相対湿度は、概ね、鉢にコロイドガスが流入しなくなるような湿度である。
しかし、これは一時的な条件である。
なぜなら、作物は、常時、養分の液滴や養分のコロイドガスから、養分を吸収しているので、養分の物質量が減少する。
コロイドガスの濃度が減少すると、コロイド発生器(4)は、元通り、コロイドガスを放出する。
【0036】
上述した容器の「蓋」は、作物の根が通り抜けられるように穴が空いた材料、たとえば、穴を空けた堅い材質のもの・織物(textile)・布地(fabric)からなる。
【0037】
蓋に適した材料は、ポリ塩化ビニル・ポリエチレン・ポリプロピレン・ステンレス鋼316L・ステンレス鋼304・ステンレス鋼308・軟木材(softwood)・硬木材(hardwood)である。
最適の材料は、腐食に耐えうり、軽量かつ廉価な、ポリ塩化ビニルである。
【0038】
織物(textile)は、繊維・編物用糸(yarns)・繊維製品である。
織物(textile)は、平らなシート状である必要はない。
好適な織物は、天然の編物用糸(yarns)である。
編物用糸(yarns)は、合成繊維でもよい。
最も適切な織物(textile)繊維は、天然の編物用糸(yarns)、とりわけ亜麻布(linen)・麻(hemp)である。
なぜなら、亜麻布(linen)・麻(hemp)は、植物の根のような植物繊維である。
このように亜麻布や麻を採用することは、セロリやコリアンダー等のように、料理に際して根も食用とする作物の収穫に適している。
なぜなら、亜麻布や麻は、作物をきれいにしたり、作物の根を混ぜるときに、安全だからである。
織物(textile)の容器を使った栽培方法は、編物用糸(yarns)を伸長させる。
布地(fabric)のように編んだり、織ったりすることなく、織物(textile)には、種子を置いたり、伸長可能な縫糸に吊すことができる。
そして、織物(textile)には、種子を置いたり、散水する両手法を用いることができ、小さな鉢にも苗木を置くことができる。
また、織物(textile)では、縫糸に種子を入れたり、縫糸の中に鉢を挿通して当該鉢を空中に浮かせることができる。
【0039】
布地(fabric)とは、平らなシート状に構成され、重合材料で形成されたスラリ(slurry)・繊維・編物用糸(yarns)で作られている。
布地(fabric)には、当該布地を作物の根が突抜けられるような空間が必要である。
また、適した布地(fabric)は、天然繊維から作られた布地、合成繊維から作られた布地、天然繊維と合成繊維を混合して作られた布地が含まれる。
最適な布地は、以下の理由により、綿・亜麻布・麻などの天然繊維から作られた布地である。
綿や亜麻布は、高価でない材料であるため入手しやすく、また清掃も容易である。
柔軟性の高い麻の布地は、強くて、長持ちするため、他の種類の布地と比べて長寿命である。
さらに、麻の布地は、熱導電性が低く、他の種類の布地と比べて多孔性である。
そのため、麻の布地は、より多くの酸素が通気可能である。
酸素は、作物の成長に影響を及ぼすものであり、作物のストレスを軽減する。
作物に対するストレスは、作物の外見(とりわけ、葉)に影響する。
したがって、麻の容器や蓋により栽培された作物は、作物の外見が良好で、他の材料により育てた作物よりも葉が柔らかくなる。
また、麻の布地は熱導電性が低いことから、作物の外見不良が少なくなり、さらに損傷も少なくなる。
そのため、麻の容器や蓋を使用する本願発明によれば、鉢と外気との間で起こる熱伝導が妨げられる。
作物の根による養分吸収の適温は20℃~30℃であるが、作物の種類によっては、15℃~20℃が適温の作物も存在する。
【0040】
気体を媒介して作物に養分を供給する装置と方法により、作物の栽培を試みた。
本発明によれば、様々な状態の養分により作物に養分供給した場合との比較を行った。
【0041】
異なった形態の養分を供給する各栽培方法における、各成長段階の成長期間を、表にまとめて比較する。
標準的な収穫量を保つようにして、収穫サイクルを、以下の段階に分割した。

段階1は、作物の種子から、当該種子が発芽して双子葉などになるまでである。
双子葉は、柔らかく、地面からの高さが1cm~4cmの範囲であり、茎は真っ直ぐでしっかりしている。

段階2では、作物が、苗木に成長する。苗木は、3~4枚の葉をつけ、茎は直立しており強固である。

段階3では、作物の苗木が成長して、標準的な収穫量まで成長する。

以下は、それぞれの栽培方法における、水菜(Japanese mustard)の成長を示した表である。
【0042】
【表1】
【0043】
水噴霧ノズル(8)による噴霧時間は、5分間である。
【0044】
気体を媒介して養分供給する処理により、作物を栽培する手法を示した。
本発明によれば、とりわけ土壌栽培と比べて、作物が成長するすべての段階において、作物の成長期間を短縮できた。
上記の段階1では、作物の成長期間を54%短縮できた。
上記の段階2では、作物の成長期間を79%短縮できた。
上記の段階3では、作物の成長期間を54%短縮できた。
なお、算出にあたっては、各成長期間の平均値を用いた。
図1
図2