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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】シール装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/80 20060101AFI20220803BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20220803BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
F16C33/80
F16C19/18
F16J15/447
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017173712
(22)【出願日】2017-09-11
(65)【公開番号】P2019049315
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100143926
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 公敏
(74)【代理人】
【識別番号】100149504
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本 周子
(72)【発明者】
【氏名】勢野 洋嗣
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137973(JP,A)
【文献】特開2017-124695(JP,A)
【文献】特開2010-096217(JP,A)
【文献】特開2006-046493(JP,A)
【文献】特開昭57-120721(JP,A)
【文献】特開2006-010055(JP,A)
【文献】特開2007-024251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/78-33/80
F16C 19/18
F16J 15/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に同軸回転する内輪及び外輪を備えた軸受装置に装着されるシール装置であって、
前記内輪の円筒状部の外周面、該内輪の円筒状部より径方向外側に延出するフランジ部、前記外輪の外周面及び該外輪の内周面からなる取付対象のうちの少なくとも2箇所に取り付けられる少なくとも3つのシール部材を備えており、
これらシール部材が装着された状態で、前記少なくとも3つのシール部材によって前記外輪の外周面よりも径方向外側において4箇所以上の非接触シール部が形成され、かつこれら少なくとも3つのシール部材を含む当該シール装置は、外部空間と当該シール装置によってシールする被シール空間とを連通させるラビリンスシールを形成する非接触型シールを構成し、当該シール装置には、対向する部位に接触するシールリップが設けられていないことを特徴とするシール装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記非接触シール部は、径方向に対向する部位同士の間及び軸方向に対向する部位同士の間に形成されることを特徴とするシール装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記非接触シール部は、対向する部位同士間の対向方向の隙間が0.4mm以上となるように形成されることを特徴とするシール装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記非接触シール部のうちの少なくとも1箇所の非接触シール部は、前記シール部材のうちの少なくとも2つのシール部材における円筒状部同士が径方向に見て互いに重なり合うように配されて形成されることを特徴とするシール装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記円筒状部は、前記内輪のフランジ部に取り付けられるシール部材の円筒状部及び前記外輪の外周面に取り付けられるシール部材の円筒状部であることを特徴とするシール装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記シール部材のうちの少なくとも1つのシール部材は、金属製の芯金と、この芯金に固着され、対向する部位とによって非接触シール部を構成する弾性部材と、を備えていることを特徴とするシール装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項において、
前記内輪のフランジ部に取り付けられるシール部材は、該フランジ部にボルトによって取り付けられることを特徴とするシール装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項において、
前記内輪のフランジ部に取り付けられるシール部材は、該フランジ部の軸方向車体側に形成された段差の外周面に嵌合される嵌合円筒状部を備えていることを特徴とするシール装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項において、
前記外輪の外周面または内周面に取り付けられるシール部材と該外輪とによって溝状のポケット部が全周に亘って形成されることを特徴とするシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等の軸受装置に適用されるシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、相対的に同軸回転する内側部材としての内輪及び外側部材としての外輪を備えた軸受装置に装着される密封装置(シール装置)が知られている。
例えば、下記特許文献1には、内方部材のハブ輪の肩部に外嵌される円筒状の嵌合部を有した金属環と、この金属環に摺接される複数のシールリップを有し外方部材の内周に嵌合される芯金を有したシール部材と、外方部材の外周に装着され、金属環とによってラビリンスシールを形成するスリンガと、を備えたシールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5676289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたシール装置は、内方部材と外方部材との間に複数のシールリップを有したシール部材を組み付ける空間が必要となる。また、金属環に摺るように接触する複数のシールリップを設けた構成であるため摺動抵抗が高くなり、軸受装置のトルクが高くなる傾向があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、内輪と外輪との間のシール組付空間が小さいような場合にも、トルクを増加させることなくシール性を向上し得るシール装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係るシール装置は、相対的に同軸回転する内輪及び外輪を備えた軸受装置に装着されるシール装置であって、前記内輪の円筒状部の外周面、該内輪の円筒状部より径方向外側に延出するフランジ部、前記外輪の外周面及び該外輪の内周面からなる取付対象のうちの少なくとも2箇所に取り付けられる少なくとも3つのシール部材を備えており、これらシール部材が装着された状態で、前記少なくとも3つのシール部材によって前記外輪の外周面よりも径方向外側において4箇所以上の非接触シール部が形成され、かつこれら少なくとも3つのシール部材を含む当該シール装置は、外部空間と当該シール装置によってシールする被シール空間とを連通させるラビリンスシールを形成する非接触型シールを構成し、当該シール装置には、対向する部位に接触するシールリップが設けられていないことを特徴とする。
本発明によれば、少なくとも3つのシール部材によってラビリンスシールを構成する4箇所以上の非接触シール部を外輪の外周面よりも径方向外側に形成することができる。従って、内輪と外輪との間のシール組付空間が小さいような場合にも、外輪の外周面よりも径方向外側において比較的に複雑な経路のラビリンスシールを構成することができ、シール性を向上させることができる。これにより、弾性的に接触するシールリップの枚数を減らすこともでき、軸受装置のトルクを低減することができる。また、仮に2つのシール部材によって多数の非接触シール部を形成しようとすれば、各シール部材の構成が複雑化したり、複雑化により組付性が低下したりする傾向があるが、本発明によれば、少なくとも3つのシール部材の構成の簡素化を図ることができる。
【0007】
本発明においては、前記非接触シール部は、径方向に対向する部位同士の間及び軸方向に対向する部位同士の間に形成されるものでもよい。
本発明によれば、互いに隣り合う非接触シール部によってラビリンスシールに略直交する経路が形成され、シール性をより向上させることができる。
【0008】
本発明においては、前記非接触シール部は、対向する部位同士間の対向方向の隙間が0.4mm以上となるように形成されるものでもよい。
本発明によれば、対向する部位同士間に、0.4mm以上の隙間が形成されるので、対向する部位同士の干渉を抑制することができる。
【0009】
本発明においては、前記非接触シール部のうちの少なくとも1箇所の非接触シール部は、前記シール部材のうちの少なくとも2つのシール部材における円筒状部同士が径方向に見て互いに重なり合うように配されて形成されるものでもよい。
本発明によれば、少なくとも2つのシール部材における円筒状部同士が径方向に見て互いに重なり合うように配されて軸方向に延びるように非接触シール部が形成される。
この場合、円筒状部は、前記内輪のフランジ部に取り付けられるシール部材の円筒状部及び前記外輪の外周面に取り付けられるシール部材の円筒状部であってもよい。これらフランジ部に取り付けられるシール部材及び外輪の外周面に取り付けられるシール部材は、内輪の外周面や外輪の内周面に取り付けられるシール部材と比べて、外輪の外周面の径方向外側の比較的に広い空間に配設される。これにより、これらフランジ部に取り付けられるシール部材及び外輪の外周面に取り付けられるシール部材の円筒状部同士の重なり幅が大きくなるように、これらの円筒状部の軸方向に沿う寸法を大きくし易くなり、これらによって形成される非接触シール部の軸方向に沿う寸法を大きくすることができる。
【0010】
本発明においては、前記シール部材のうちの少なくとも1つのシール部材は、金属製の芯金と、この芯金に固着され、対向する部位とによって非接触シール部を構成する弾性部材と、を備えていてもよい。
本発明によれば、芯金に固着された弾性部材によって非接触シール部が形成される。従って、仮に予期しない要因で接触した場合にも、非接触シール部を形成する対向部位同士を金属製としたものと比べて、異音や損傷の発生を抑制することができる。
【0011】
本発明においては、前記内輪のフランジ部に取り付けられるシール部材は、該フランジ部にボルトによって取り付けられるものでもよい。
本発明によれば、内輪のフランジ部に取り付けられるシール部材がボルトによってフランジ部に比較的に強固に固定される。
【0012】
本発明においては、前記内輪のフランジ部に取り付けられるシール部材は、該フランジ部の軸方向車体側に形成された段差の外周面に嵌合される円筒状部を備えていてもよい。
本発明によれば、内輪のフランジ部に取り付けられるシール部材を、フランジ部の段差の外周面に嵌合させて取り付けることができる。
【0013】
本発明においては、前記外輪の外周面または内周面に取り付けられるシール部材と該外輪とによって溝状のポケット部が全周に亘って形成されるものでもよい。
本発明によれば、溝状のポケット部によって被シール空間への塵埃等の異物の侵入を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るシール装置は、上述のような構成としたことで、内輪と外輪との間のシール組付空間が小さいような場合にも、トルクを増加させることなくシール性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るシール装置の一例を組み込んだ軸受装置の一例を模式的に示す概略縦断面図である。
図2】(a)は、図1におけるX部に対応させた一部破断概略拡大縦断面図、(b)は、本発明の他の実施形態に係るシール装置の一例を模式的に示し、(a)に対応させた一部破断概略拡大縦断面図である。
図3】(a)、(b)は、いずれも本発明の更に他の実施形態に係るシール装置の一例を模式的に示し、図2(a)に対応させた一部破断概略拡大縦断面図である。
図4】(a)、(b)は、いずれも本発明の更に他の実施形態に係るシール装置の一例を模式的に示し、図2(a)に対応させた一部破断概略拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
図1及び図2(a)は、第1実施形態に係るシール装置の一例及びこれを組み込んだ軸受装置の一例を模式的に示す図である。
【0017】
本実施形態に係るシール装置10は、図1に示すように、相対的に同軸回転する内側部材としての内輪3及び外側部材としての外輪2を備えた軸受装置1に装着される構成とされている。
図1では、自動車の車輪を軸回転可能に支持する軸受装置1の一例としてのハブベアリングを示している。この軸受装置1は、外輪2と、ハブ輪4と、このハブ輪4の軸L方向車体側(軸L方向一方側)に嵌合一体とされる内輪部材5と、外輪2とハブ輪4及び内輪部材5との間に介装される2列の転動体(ボール)8,8・・・と、を備えている。この例では、ハブ輪4及び内輪部材5が内輪3を構成する。ハブ輪4は、ハブ輪本体を構成する円筒状部4gと、この円筒状部4gより立上基部を介して径方向外側に延出するよう形成されたフランジ部(ハブフランジ)4cと、を有している。
外輪2は、自動車の車体に固定される。この外輪2の軸L方向車輪側(軸L方向他方側、フランジ部側)端部の外周面は、その軸L方向車体側(反フランジ部側)の部位の外周面2cとの間に段差が形成され小径外周面2dとされている。また、外輪2のフランジ部側端部の内周面2bと、その反フランジ部側の部位の内周面と、の間にも段差が形成されている。なお、外輪2は、フランジ部側端部の外周面及び内周面に上記のような段差が設けられていないものでもよい。
内輪3(ハブ輪4及び内輪部材5)は、外輪2に対して、軸L回りに回転可能とされ、外輪2と内輪3とにより、相対的に回転する2部材が構成され、これら2部材間に被シール空間6が形成される。この被シール空間6には、転動体8,8・・・の転動を円滑にするためのグリース等の潤滑剤が充填される。
【0018】
被シール空間6内には、2列の転動体8,8・・・がリテーナ7に保持された状態で、外輪2の軌道輪2a,2a、ハブ輪4及び内輪部材5の軌道輪4a,5aを転動可能に介装されている。ハブ輪4には、等速ジョイント等を介して駆動源に連結されるドライブシャフトが同軸的にスプライン嵌合される。このハブ輪4のフランジ部4cにボルト9及びナットによって車輪が取り付けられ固定される。ハブ輪4の段状に形成された立上基部の外周面4bは、フランジ部4cの車体側(軸L方向一方側)に向くフランジ面4eに向かうに従い拡開状に形成され、フランジ面4eとの隅部が周方向に見て凹湾曲面状とされている。
被シール空間6のフランジ部側端部は、本実施形態に係るシール装置10によってシールされる。つまり、シール装置10は、軸受装置1のフランジ部4c側に装着される。
被シール空間6の反フランジ部側端部は、詳細な図示は省略しているが他のシール装置20によってシールされる。これら軸L方向両側のシール装置10,20によって被シール空間6の軸L方向両端部がシールされ、被シール空間6内への異物等の侵入や被シール空間6内に充填されたグリースの外部への漏出が抑制される。
【0019】
シール装置10は、図2(a)に示すように、少なくとも3つのシール部材11~14を備え、これらが装着された状態で、外輪2の外周面2c,2dよりも径方向外側においてラビリンスシールを構成する4箇所以上の非接触シール部21~25が形成される構成とされている。これら非接触シール部21~25は、外輪2のフランジ部側端部の小径外周面2dよりも径方向外側に位置するように形成される。
本実施形態では、シール装置10は、内輪3のフランジ部4cに取り付けられる第1シール部材11と、外輪2の外周面2cに取り付けられる第2シール部材12と、内輪3の外周面4bに取り付けられる第3シール部材13と、外輪2の内周面2bに取り付けられる第4シール部材14と、を備えている。つまり、シール装置1は、4つのシール部材11~14を備えている。
【0020】
これらシール部材11~14は、軸Lと略同心状のリング状とされている。また、これらシール部材11~14は、全周に亘って略一様な断面形状とされているが、一部が異なる断面形状であってもよい。また、これらシール部材11~14は、ステンレス鋼板や冷間圧延鋼板(SPCC)などの金属材から形成された金属製とされ、板金加工されている。なお、これらシール部材11~14は、金属製に限られず、炭素繊維製や、炭素繊維等の強化繊維を含んだ繊維強化樹脂製でもよい。また、これらシール部材11~14のうちの少なくとも一つを、後記する第6実施形態において説明するような金属製の芯金と、この芯金に固着され、対向する部位とによって非接触シール部を構成する弾性部材と、によって構成した態様としてもよい。
【0021】
第1シール部材11は、内輪3のフランジ部4cのフランジ面4eに沿うように固定される円板状(リング状)部11aと、この円板状部11aの軸心側(内径側)端部から反フランジ部側に向けて延出するように設けられた円筒状部11cと、を備えている。
円板状部11aには、フランジ部4cの挿通孔4dに応じた位置となるように、当該円板状部11aの厚さ方向(軸L方向)に貫通し、ボルト9が挿通される挿通孔11bが設けられている。つまり、本実施形態では、第1シール部材11は、フランジ部4cにボルト9によって取り付けられる。このような構成とすれば、第1シール部材11を比較的に強固に固定することができる。
円筒状部11cは、外輪2のフランジ部側端部の径方向外側に位置するように配される。この円筒状部11cの基端部(円板状部11a側の端部)には、当該円筒状部11cの厚さ方向(径方向)に貫通する貫通孔11dが設けられている。この貫通孔11dの孔径は、シール性や水抜き性の観点等から適宜の径としてもよい。また、円筒状部11cに、周方向に間隔を空けて複数の貫通孔11dを設けた構成としてもよい。
【0022】
第2シール部材12は、外輪2の外周面2cに締り嵌め状に嵌合される第1円筒状部12aと、この第1円筒状部12aのフランジ部側端部から径方向外側に向けて立ち上がるように設けられた円板状部12bと、この円板状部12bの径方向外側(外径側)端部からフランジ部側に向けて延出するように設けられた第2円筒状部12cと、を備えている。
本実施形態では、第2円筒状部12cは、第1シール部材11の円筒状部11cの径方向内側(軸心側)に位置するように配される。また、この第2円筒状部12cの外周面と、この外周面に径方向に対向する第1シール部材11の円筒状部11cの内周面と、の間に第1非接触シール部21が形成される。また、本実施形態では、径方向に見て第2円筒状部12cの全体が第1シール部材11の円筒状部11cに重なり合う構成とされている。この第1非接触シール部21は、ラビリンスシールの外部空間側の開口を構成する。
また、この第2円筒状部12cの軸L方向に沿う寸法を、第1シール部材11の円筒状部11cの同方向に沿う寸法よりも小としている。この第2円筒状部12cの軸L方向に沿う寸法は、シール性等の観点から適宜の寸法としてもよい。また、この第2円筒状部12cのフランジ部側に向く端面とフランジ部4cとの間には、第1非接触シール部21の隙間(径方向に沿う寸法)よりも大とされた空間が形成され、上記した貫通孔11dは、この空間に向けて開口している。
【0023】
第3シール部材13は、内輪3(ハブ輪4)の立上基部の外周面4bに締り嵌め状に嵌合される第1円筒状部13aと、この第1円筒状部13aのフランジ部側端部から径方向外側に向けて延出するように設けられ、フランジ面4eに沿わせられる円板状部13bと、を備えている。また、第3シール部材13は、円板状部13bの径方向外側端部から反フランジ部側に向けて延出するように設けられた第2円筒状部13cと、この第2円筒状部13cの反フランジ部側端部から径方向外側に向けて突出するように設けられた鍔状突片部13dと、を備えている。この第3シール部材13の第2円筒状部13cは、第2シール部材12の第2円筒状部12cの軸心側に位置するように配される。この第3シール部材13の鍔状突片部13dの先端面(径方向外側に向く面)と第2シール部材12の第2円筒状部12cの内周面とが径方向に対向し、これらの間に第2非接触シール部22が形成される。
【0024】
また、この第3シール部材13の鍔状突片部13dは、第2シール部材12の円板状部12bのフランジ部側に位置するように配される。この第3シール部材13の鍔状突片部13dと第2シール部材12の円板状部12bとが軸L方向に対向し、これらの間に第3非接触シール部23が形成される。この第3非接触シール部23は、第3シール部材13の鍔状突片部13dの反フランジ部側に向く面と第2シール部材12の円板状部12bのフランジ部側に向く面との間に形成される。
また、この第3シール部材13の第2円筒状部13cと外輪2の反フランジ部側の外周面2cとが径方向に対向し、第4非接触シール部24が形成される。
【0025】
第4シール部材14は、外輪2の内周面2bに内嵌状に嵌合される第1円筒状部14aと、この第1円筒状部14aの反フランジ部側端部から軸心側に向けて突出するように設けられた鍔状突片部14bと、を備えている。この鍔状突片部14bは、外輪2の内周面2bの反フランジ部側に設けられた段差に当接される。
また、第4シール部材14は、第1円筒状部14aのフランジ部側端部から径方向外側に向けて延出するように設けられ、外輪2のフランジ部側に向く端面に沿わせられる第1円板状部14cを備えている。この第1円板状部14cの先端面(径方向外側に向く面)と第3シール部材13の第2円筒状部13cの内周面とが径方向に対向し、第5非接触シール部25が形成される。この第5非接触シール部25は、ラビリンスシールの被シール空間6側の開口を構成する。本実施形態では、この第5非接触シール部25は、外輪2の反フランジ部側の外周面2cよりも径方向外側に位置するように形成される。つまり、本実施形態では、外輪2の外周面2cよりも径方向外側に、5箇所の非接触シール部21~25が形成される。
【0026】
また、第1円板状部14cは、外輪2の小径外周面2dよりも径方向外側に向けて突出するように配される。この第1円板状部14cと外輪2とによって溝状のポケット部29が全周に亘って形成される。このようなポケット部29を設けた構成とすれば、被シール空間6側への塵埃等の異物の侵入を抑制することができる。
ポケット部29は、径方向外側に向けて開口するように設けられ、周方向に延びるように設けられている。溝状とされたポケット部29の溝底が外輪2の小径外周面2dによって区画され、溝幅方向フランジ部側が第1円板状部14cによって区画される。また、ポケット部29の溝幅方向反フランジ部側は、小径外周面2dと反フランジ部側の外周面2cとの段差面によって区画される。
【0027】
上記した各非接触シール部21~25は、対向する部位同士間の隙間が0.4mm以上となるように形成される。このような構成とすれば、対向する部位同士の干渉を抑制することができる。この隙間の上限は、シール性の観点等から適宜、設定するようにしてもよい。図例では、各非接触シール部21~25の隙間を、互いに略同寸法とした例を示しているが、異なる寸法としてもよい。
上記構成とされた本実施形態に係るシール装置10は、各シール部材11~14が内輪3及び外輪2に装着された状態で、外部空間と被シール空間6とを連通させるラビリンスシールを形成する構成とされている。
【0028】
本実施形態に係るシール装置10は、上述のような構成としたことで、内輪3と外輪2との間のシール組付空間が小さいような場合にも、トルクを増加させることなくシール性を向上させることができる。
つまり、少なくとも3つのシール部材11~14によってラビリンスシールを構成する4箇所以上の非接触シール部21~25を外輪2の外周面2c,2dよりも径方向外側に形成することができる。従って、内輪3と外輪2との間のシール組付空間が小さいような場合にも、外輪2の外周面2c,2dよりも径方向外側において比較的に複雑な経路のラビリンスシールを構成することができ、シール性を向上させることができる。これにより、弾性的に接触するシールリップの枚数を減らすこともでき、軸受装置1のトルクを低減することができる。また、仮に2つのシール部材によって多数の非接触シール部を形成しようとすれば、各シール部材の構成が複雑化したり、複雑化により組付性が低下したりする傾向があるが、本実施形態によれば、少なくとも3つのシール部材11~14の構造の簡略化を図ることができる。
【0029】
また、本実施形態では、弾性的に接触するシールリップを設けずに、シール部材11~14によって非接触型シールを構成している。このような構成とすれば、軸受装置のトルクをより効果的に低減することができる。また、摩耗等による劣化が生じ難くなるので、耐用寿命の長期化を図ることができる。
【0030】
また、本実施形態では、径方向に対向する部位の間に非接触シール部(第1,2,4,5非接触シール部)21,22,24,25が形成され、軸L方向に対向する部位の間に非接触シール部(第3非接触シール部)23が形成される。これにより、ラビリンスシールには、略直交する経路が形成されるので、シール性をより向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態では、第1非接触シール部21は、内輪3のフランジ部4cに取り付けられる第1シール部材11の円筒状部11cと外輪2の外周面2cに取り付けられる第2シール部材12の第2円筒状部12cとが径方向に見て互いに重なり合うように配されて形成される。これら第1シール部材11及び第2シール部材12は、内輪3の外周面4bや外輪2の内周面2bに取り付けられるシール部材13,14と比べて、外輪2の径方向外側の比較的に広い空間に配設される。これにより、これら第1シール部材11及び第2シール部材12の円筒状部11c,12c同士の重なり幅が大きくなるように、これらの円筒状部11c,12cの軸L方向に沿う寸法を大きくし易くなり、第1非接触シール部21の軸L方向に沿う寸法を大きくすることができる。
【0032】
次に、本発明に係るシール装置の他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の各実施形態では、先に説明した実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
また、以下の各実施形態に係るシール装置10A~10Eも、上記同様、相対的に同軸回転する内輪3及び外輪2を備えた軸受装置1A~1Eに装着される。
【0033】
図2(b)は、第2実施形態に係るシール装置の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係るシール装置10Aは、外輪2の外周面2cに取り付けられるシール部材(第2シール部材)を備えていない。また、第3シール部材13A及び第4シール部材14Aの構成が上記第1実施形態とは主に異なる。
本実施形態では、第3シール部材13Aは、その第1円筒状部13aの反フランジ部側となる被シール空間6側の端部に、径方向外側に向けて突出するように設けられた鍔状突片部13eを備えている。このような鍔状突片部13eを設けた構成とすれば、シール性をより向上させることができる。また、この鍔状突片部13eの先端面(径方向外側に向く面)と第4シール部材14の鍔状突片部14bの先端面(軸心側に向く面)とが径方向に対向し、これらの間に第5非接触シール部25Aが形成される。この第5非接触シール部25Aは、外輪2の外周面2c,2dよりも径方向外側に位置するように形成されるものではないが、後記する第1非接触シール部21A~第4非接触シール部24Aとともにラビリンスシールを構成し、ラビリンスシールの被シール空間6側の開口を構成する。
【0034】
また、本実施形態では、第3シール部材13Aの第2円筒状部13cの反フランジ部側端部に鍔状突片部を設けていない構成としている。また、この第2円筒状部13cは、その反フランジ部側端部が外輪2の反フランジ部側の外周面2cと小径外周面2dとの間の傾斜状の段差面の径方向外側に位置するように配される構成とされている。
第4シール部材14Aは、第1円板状部14cの径方向外側端部から反フランジ部側に向けて延出するように設けられた第2円筒状部14dと、この第2円筒状部14dの反フランジ部側端部から径方向外側に向けて延出するように設けられた第2円板状部14eと、この第2円板状部14eの径方向外側端部からフランジ部側に向けて延出するように設けられた第3円筒状部14fと、を備えている。この第4シール部材14Aの第2円筒状部14d、第2円板状部14e及び第3円筒状部14fによってフランジ部側に向けて開口する溝状の凹所が全周に亘って形成され、この凹所に、第3シール部材13Aの第2円筒状部13cが差し入れられる。
【0035】
また、第4シール部材14Aの第3円筒状部14fの外周面と第1シール部材11の円筒状部11cの内周面とが径方向に対向し、第1非接触シール部21Aが形成される。この第1非接触シール部21Aは、上記同様、ラビリンスシールの外部空間側の開口を構成する。また、第4シール部材14Aの第3円筒状部14fの内周面と第3シール部材13Aの第2円筒状部13cの外周面とが径方向に対向し、第2非接触シール部22Aが形成される。また、第4シール部材14Aの第2円板状部14eのフランジ部側に向く面と第3シール部材13Aの第2円筒状部13cの先端面(反フランジ部側に向く面)とが軸L方向に対向し、第3非接触シール部23Aが形成される。また、第4シール部材14Aの第2円筒状部14dの外周面と第3シール部材13Aの第2円筒状部13cの内周面とが径方向に対向し、第4非接触シール部24Aが形成される。この第4非接触シール部24Aは、外輪2の小径外周面2dよりも径方向外側に位置するように形成される。つまり、本実施形態では、外輪2の外周面(小径外周面)2dよりも径方向外側に、4箇所の非接触シール部21A~24Aが形成される。
【0036】
また、本実施形態では、ポケット部29Aの径方向外側の概ね全体が第4シール部材14Aの第2円筒状部14dによって覆われる構成とされている。また、この第2円筒状部14dの反フランジ部側端部と外輪2の傾斜状の段差面とが対向し、ポケット部29Aの開口が形成される構成とされている。
上記構成とされた本実施形態に係るシール装置10Aにおいても、上記した第1実施形態と概ね同様の効果を奏する。また、本実施形態では、少なくとも3つの円筒状部11c,14f,13c,14dが径方向に見て互いに重なり合うように配され、それぞれの対向する円筒状部11c,14f,13c,14d同士の間に非接触シール部21A,22A,24Aが形成される。従って、より複雑な経路のラビリンスシールを形成することができ、シール性をより向上させることができる。
【0037】
図3(a)は、第3実施形態に係るシール装置の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係るシール装置10Bは、外輪2の内周面2bに取り付けられるシール部材(第4シール部材)を備えていない。また、第2シール部材12A及び第3シール部材13Bの構成が上記第1実施形態とは主に異なる。
第2シール部材12Aは、円板状部12bが上記第1実施形態よりもフランジ部側に位置するように配され、外輪2の傾斜状の段差面の径方向外側に位置するように配される。また、第2シール部材12Aは、第2円筒状部12cの反フランジ部側端部から径方向外側に向けて突出するように設けられた鍔状突片部12dを備えている。この鍔状突片部12dの先端面(径方向外側に向く面)と第1シール部材11の円筒状部11cの内周面とが径方向に対向し、第1非接触シール部21Bが形成される。このような鍔状突片部12dを設けた構成とすれば、よりシール性を向上させることができる。第1非接触シール部21Bは、上記同様、ラビリンスシールの外部空間側の開口を構成する。
【0038】
第3シール部材13Bは、鍔状突片部13dが上記第1実施形態よりも反フランジ部側に位置するように配され、外輪2の小径外周面2dの径方向外側に位置するように配される。また、図例では、この鍔状突片部13dの突出寸法(径方向に沿う寸法)を、上記第1実施形態よりも大としている。また、上記第1実施形態と略同様、この鍔状突片部13dの先端面と第2シール部材12Bの第2円筒状部12cの内周面とが径方向に対向し、第2非接触シール部22Bが形成される。また、この鍔状突片部13dの反フランジ部側に向く面と第2シール部材12Aの円板状部12bのフランジ部側に向く面とが軸L方向に対向し、第3非接触シール部23Bが形成される。
また、この第3シール部材13Bの第2円筒状部13cと外輪2の小径外周面2dとが径方向に対向し、第4非接触シール部24Bが形成される。本実施形態では、この第4非接触シール部24Bがラビリンスシールの被シール空間6側の開口を構成する。また、本実施形態では、上記第2実施形態と同様、外輪2の外周面(小径外周面)2dよりも径方向外側に、4箇所の非接触シール部21B~24Bが形成される。
上記構成とされた本実施形態に係るシール装置10Bにおいても、上記した第1実施形態と概ね同様の効果を奏する。
【0039】
図3(b)は、第4実施形態に係るシール装置の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係るシール装置10Cは、フランジ部4cに取り付けられるシール部材(第1シール部材)を備えていない。また、第2シール部材12B及び第3シール部材13Cの構成が上記各実施形態とは主に異なる。
第2シール部材12Bは、その鍔状突片部12dとフランジ部4cのフランジ面4eとの間に第1非接触シール部21Cが形成されるように配される。図例では、この第2シール部材12Bの第2円筒状部12cの軸L方向に沿う寸法が上記第3実施形態よりも大とされて鍔状突片部12dがフランジ面4eに近接配置される構成とされている。第1非接触シール部21Cは、上記同様、ラビリンスシールの外部空間側の開口を構成するが、本実施形態では、上記各実施形態とは異なり、径方向外側に向けて開口している。
また、第2シール部材12Bは、第1円筒状部12aがポケット部29Bの径方向外側に向く開口の一部を覆うように配される構成とされている。
【0040】
また、第3シール部材13Cは、上記第1実施形態及び第3実施形態のような鍔状突片部13d及び第2実施形態のような鍔状突片部13eを備えていない。この第3シール部材13Cの第2円筒状部13cの外周面と第2シール部材12Bの第2円筒状部12cの内周面とが径方向に対向し、第2非接触シール部22Cが形成される。また、この第3シール部材13Cの第2円筒状部13cの先端面(反フランジ部側に向く面)と第2シール部材12Bの円板状部12bのフランジ部側に向く面とが軸L方向に対向し、第3非接触シール部23Cが形成される。また、この第3シール部材13Cの第2円筒状部13cの内周面と第4シール部材14の第1円板状部14cの先端面(径方向外側に向く面)とが径方向に対向し、第4非接触シール部24Cが形成される。この第4非接触シール部24Cは、上記第3実施形態と同様、ラビリンスシールの被シール空間6側の開口を構成する。また、本実施形態では、上記第2実施形態及び第3実施形態と同様、外輪2の外周面(小径外周面)2dよりも径方向外側に、4箇所の非接触シール部21C~24Cが形成される。
上記構成とされた本実施形態に係るシール装置10Cにおいても、上記した第1実施形態と概ね同様の効果を奏する。
【0041】
図4(a)は、第5実施形態に係るシール装置の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係るシール装置10Dは、内輪3の外周面4bに取り付けられるシール部材(第3シール部材)を備えていない。また、第4シール部材14Bの構成が上記各実施形態とは主に異なる。また、本実施形態では、第1シール部材11の円筒状部11cが第2シール部材12の第2円筒状部12cよりも軸心側に位置するように配される構成とされている。また、これら第1シール部材11の円筒状部11c及び第2シール部材12の第2円筒状部12cの軸L方向に沿う寸法を互いに略同寸法としている。また、第1シール部材11の円板状部11aの反フランジ部側に向く面と第2シール部材12の第2円筒状部12cの先端面(フランジ部側に向く面)とが軸L方向に対向し、第1非接触シール部21Dが形成される。この第1非接触シール部21Dは、上記第4実施形態と概ね同様、径方向外側に向けて開口し、ラビリンスシールの外部空間側の開口を構成する。
【0042】
また、第1シール部材11の円筒状部11cの外周面と第2シール部材12の第2円筒状部12cの内周面とが径方向に対向し、第2非接触シール部22Dが形成される。また、第1シール部材11の円筒状部11cの先端面(反フランジ部側に向く面)と第2シール部材12の円板状部12bのフランジ部側に向く面とが軸L方向に対向し、第3非接触シール部23Dが形成される。このように、本実施形態では、他のシール部材(第3シール部材及び第4シール部材)と比べて設計自由度が大きい第1シール部材11と第2シール部材12との間に3つの非接触シール部21D~23Dを設けた構成としているので、これらによって形成されるラビリンスシールの経路長さを大きくすることができ、シール性をより向上させることができる。
【0043】
第4シール部材14Bは、本実施形態では、第1円筒状部14Baではなく第2円筒状部14Bdが外輪2の小径外周面2dに締り嵌め状に嵌合される構成とされている。つまり、外輪2の外周面2c,2dに取り付けられる2つのシール部材(第2シール部材12及び第4シール部材14B)を備えている。また、図例では、第1円筒状部14Baを、反フランジ部側に向かうに従い軸心側に向けて傾斜する先細状としている。また、第4シール部材14Bの鍔状突片部14bは、外輪2の内周面2bの反フランジ部側に設けられた段差に当接されない構成とされている。
また、第4シール部材14Bの第2円板状部14eは、外輪2の小径外周面2dと傾斜状の段差面との境界部から径方向外側に向けて延出するように設けられている。また、第4シール部材14Bは、この第2円板状部14eの径方向外側端部から反フランジ部側に向けて延出するように設けられた第3円筒状部14Bfを備えている。ポケット部29Cは、この第3円筒状部14Bf、第2円板状部14e及び外輪2の傾斜状の段差面によって区画され、反フランジ部側に向けて開口するように設けられている。
【0044】
また、第4シール部材14Bの第3円筒状部14Bfの外周面と第1シール部材11の円筒状部11cとが径方向に対向し、第4非接触シール部24Dが形成される。この第4非接触シール部24Dは、上記第3実施形態と同様、ラビリンスシールの被シール空間6側の開口を構成する。また、本実施形態では、上記第2実施形態~第4実施形態と同様、外輪2の外周面(小径外周面)2dよりも径方向外側に、4箇所の非接触シール部21D~24Dが形成される。
上記構成とされた本実施形態に係るシール装置においても、上記した第1実施形態と概ね同様の効果を奏する。
【0045】
図4(b)は、第6実施形態に係るシール装置の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係るシール装置10Eは、第1シール部材11A及び第4シール部材14Cの構成が上記各実施形態とは主に異なる。また、第2シール部材12の円板状部12bは、軸L方向で外輪2の反フランジ部側の外周面2cと傾斜状の段差面との境界部に位置するように配される構成とされている。
第1シール部材11Aは、ハブ輪4Aのフランジ部4Acの車体側(軸L方向一方側)に形成された段差の外周面4fに嵌合される嵌合円筒状部11Abを備えている。このような構成とすれば、第1シール部材11Aを、フランジ部4Acの段差の外周面4fに嵌合させて取り付けることができる。この嵌合円筒状部11Abは、フランジ部4Acの段差よりも軸心側のフランジ面4eに沿うように固定される円板状部11Aaの径方向外側端部から車輪側(軸L方向他方側)に向けて延出するように設けられている。また、本実施形態においても上記第5実施形態と同様、第1シール部材11Aの円筒状部11cが第2シール部材12の第2円筒状部12cよりも軸心側に位置するように配される。また、上記第5実施形態と同様、第1シール部材11Aの円板状部11Aaの反フランジ部側に向く面と第2シール部材12の第2円筒状部12cの先端面とが軸L方向に対向し、第1非接触シール部21Eが形成される。また、第1シール部材11Aの円筒状部11cの外周面と第2シール部材12の第2円筒状部12cの内周面とが径方向に対向し、第2非接触シール部22Eが形成される。また、第1シール部材11Aの円筒状部11cの先端面と第2シール部材12の円板状部12bのフランジ部側に向く面とが軸L方向に対向し、第3非接触シール部23Eが形成される。
【0046】
第4シール部材14Cは、上記第5実施形態と同様、第2円筒状部14Cdが外輪2の小径外周面2dに締り嵌め状に嵌合される構成とされている。また、上記第5実施形態と同様、第4シール部材14Cの第1円筒状部14Caは、反フランジ部側に向かうに従い軸心側に向けて傾斜する先細状とされている。
また、第4シール部材14Cは、金属製の芯金15と、この芯金15に固着され、対向する部位とによって非接触シール部(第7非接触シール部)27Eを構成する弾性部材16と、を備えている。このような構成とすれば、仮に予期しない要因で接触した場合にも、第7非接触シール部27Eを形成する対向部位同士を金属製としたものと比べて、異音や損傷の発生を抑制することができる。
本実施形態では、弾性部材16は、第4シール部材14Cの鍔状突片部14bに加硫成型等によって固着一体とされている。また、この弾性部材16の軸心側に向く面と第3シール部材13Cの第1円筒状部13aの外周面とが径方向に対向し、第7非接触シール部27Eが形成される。この第7非接触シール部27Eは、外輪2の外周面2c,2dよりも径方向外側に位置するように形成されるものではないが、他の非接触シール部21E~26Eとともにラビリンスシールを構成し、ラビリンスシールの被シール空間6側の開口を構成する。この弾性部材16は、NBR、H-NBR、ACM、AEM、FKM、シリコーンゴム等のゴム材(弾性材料)からなるものでもよい。
【0047】
また、本実施形態では、第4シール部材14Cの第2円板状部14eに、上記第5実施形態のような第3円筒状部14Bfを設けていない構成としている。ポケット部29Dは、本実施形態では、この第2円板状部14e、外輪2の傾斜状の段差面及び第2シール部材12の円板状部12bによって区画され、径方向外側に向けて開口するように設けられている。また、この第2円板状部14eの先端面(径方向外側に向く面)と第1シール部材11Aの円筒状部11cの内周面とが径方向に対向し、第4非接触シール部24Eが形成される。また、この第2円板状部14eのフランジ部側に向く面と第3シール部材13Cの第2円筒状部13cの先端面(反フランジ部側に向く面)とが軸L方向に対向し、第5非接触シール部25Eが形成される。また、第3シール部材13Cの第2円筒状部13cの内周面と第4シール部材14Cの第2円筒状部14Cdの外周面とが径方向に対向し、第6非接触シール部26Eが形成される。この第6非接触シール部26Eは、外輪2の外周面2c,2dよりも径方向外側に位置するように形成される。本実施形態では、外輪2の外周面(小径外周面)2dよりも径方向外側に、6箇所の非接触シール部21E~26Eが形成される。
【0048】
上記構成とされた本実施形態に係るシール装置10Eにおいても、上記した第1実施形態と概ね同様の効果を奏する。
また、本実施形態では、上記各実施形態よりも多数の箇所に非接触シール部21E~27Eが形成されるので、よりシール性を向上させることができる。なお、本実施形態において説明した弾性部材16を、対向する部位に接触するように設けた構成としてもよい。
また、弾性部材16は、外輪2の外周面2c,2dよりも径方向外側に位置する非接触シール部を構成するように設けられていてもよい。
また、上記各実施形態に係るシール装置10,10A~10Eにおける互いに異なる構成を、適宜、組み替えたり、組み合わせたりして適用するようにしてもよい。また、上記各実施形態に係るシール装置10,10A~10Eを構成する各シール部材の具体的構成は、上記した例に限られず、その他、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1,1A~1E 軸受装置
10,10A~10E シール装置
11,11A 第1シール部材(シール部材)
11Ab 嵌合円筒状部
11c 円筒状部
12,12A,12B 第2シール部材(シール部材)
12c 第2円筒状部(円筒状部)
13,13A~13C 第3シール部材(シール部材)
13c 第2円筒状部(円筒状部)
14,14A~14C 第4シール部材(シール部材)
14d,14Cd 第2円筒状部(円筒状部)
14f,14Bf 第3円筒状部(円筒状部)
15 芯金
16 弾性部材
21,21A~21E 第1非接触シール部(非接触シール部)
22,22A~22E 第2非接触シール部(非接触シール部)
23,23A~23E 第3非接触シール部(非接触シール部)
24,24A~24E 第4非接触シール部(非接触シール部)
25,25A,25E 第5非接触シール部(非接触シール部)
26E 第6非接触シール部(非接触シール部)
27E 第7非接触シール部(非接触シール部)
29,29A~29D ポケット部
2 外輪
2b 内周面
2c 外周面
2d 小径外周面(外周面)
3 内輪
4b 外周面
4c,4Ac フランジ部
4f 外周面
4g 円筒状部
9 ボルト
図1
図2
図3
図4