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  • 特許-電気二重層キャパシタの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】電気二重層キャパシタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/36 20130101AFI20220803BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20220803BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20220803BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20220803BHJP
【FI】
H01G11/36
H01G11/86
H01G11/24
H01G11/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018034479
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019149505
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】397029873
【氏名又は名称】株式会社大木工藝
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】大木 武彦
(72)【発明者】
【氏名】大木 達彦
(72)【発明者】
【氏名】多田 晃浩
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-005722(JP,A)
【文献】国際公開第2017/216960(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/013051(WO,A1)
【文献】特開2006-245386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/36
H01G 11/86
H01G 11/24
H01G 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非酸化性雰囲気における熱処理により炭化可能なポリマを含むポリマ含有材料を準備する工程と、
1つの第1噴射口と、噴射方向が前記第1噴射口の噴射方向と同じ向きであり且つ前記第1噴射口の噴射方向における下流側に設けられた複数の第2噴射口と、を有するナノファイバ形成用ノズルヘッドを使用して、前記複数の第2噴射口それぞれから噴射されるポリマ含有材料を、前記第1噴射口からポリマ含有材料の噴射速度よりも高速で噴射され且つ前記ポリマ含有材料の温度よりも高温に加熱された空気の流れに巻き込ませて空気の流れ方向へ延伸させることにより、前記ポリマを含むカーボンナノファイバの前駆体繊維を作製する工程と、
前記前駆体繊維に対して不融化処理工程を行った後、炭化させることにより前記カーボンナノファイバを生成する工程と、
活性炭と前記カーボンナノファイバとバインダとを混合および攪拌することによりスラリーを形成する工程と、
前記スラリーを集電体上に形成された中間層上に塗工する工程と、
前記中間層上に塗工された前記スラリーを乾燥させた後、圧縮して分極性電極の前駆体を得る工程と、
前記前駆体を真空乾燥させた後、前記前駆体に電解液を含浸させる工程と、を含む、
電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項2】
前記カーボンナノファイバは、長さが100μm以上であり且つ径が1μm以下である、
請求項1に記載の電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項3】
前記カーボンナノファイバは、平均直径が250nm以下である、
請求項1または2に記載の電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項4】
前記中間層は、ダイヤモンドライクカーボンから形成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電気二重層キャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各々活性炭を含む一対の分極性電極と、これらの分極性電極の間に介在するセパレータと、を備え、一対の分極性電極とセパレータとに電界液が含浸されている電気二重層キャパシタが提案されている(例えば特許文献1参照)。この電気二重層キャパシタでは、分極性電極が導電補助剤としてカーボンナノチューブを含むことにより、分極性電極の内部抵抗が低く、大電流を取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-124079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分極性電極中の導電補助剤の割合が高くなると、内部抵抗は低下するが、活性炭の割合が低下するため、その分、電気二重層キャパシタの容量が低下してしまう。そこで、電気二重層キャパシタには、その分極性電極中に含まれる導電補助剤の割合を低減しつつ、容量を大きくできるような導電補助剤が要請されている。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、内部抵抗が低く且つ容量が大きい電気二重層キャパシタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電気二重層キャパシタの製造方法は、
非酸化性雰囲気における熱処理により炭化可能なポリマを含むポリマ含有材料を準備する工程と、
1つの第1噴射口と、噴射方向が前記第1噴射口の噴射方向と同じ向きであり且つ前記第1噴射口の噴射方向における下流側に設けられた複数の第2噴射口と、を有するナノファイバ形成用ノズルヘッドを使用して、前記複数の第2噴射口それぞれから噴射されるポリマ含有材料を、前記第1噴射口からポリマ含有材料の噴射速度よりも高速で噴射され且つ前記ポリマ含有材料の温度よりも高温に加熱された空気の流れに巻き込ませて空気の流れ方向へ延伸させることにより、前記ポリマを含むカーボンナノファイバの前駆体繊維を作製する工程と、
前記前駆体繊維に対して不融化処理工程を行った後、炭化させることにより前記カーボンナノファイバを生成する工程と、
活性炭と前記カーボンナノファイバとバインダとを混合および攪拌することによりスラリーを形成する工程と、
前記スラリーを集電体上に形成された中間層上に塗工する工程と、
前記中間層上に塗工された前記スラリーを乾燥させた後、圧縮して分極性電極の前駆体を得る工程と、
前記前駆体を真空乾燥させた後、前記前駆体に電解液を含浸させる工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電気二重層キャパシタの内部抵抗を低減しつつ、大容量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
図2】実施の形態に係る電気二重層キャパシタの製造方法を示すフローチャートである。
図3】実施の形態に係る電気二重層キャパシタの内部抵抗の分極性電極の厚さに対する依存性を示す図である。
図4】実施の形態に係る電気二重層キャパシタについて交流インピーダンス測定を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る電気二重層キャパシタは、分極性電極に導電補助剤としてカーボンナノファイバを含むものである。
【0010】
図1に示すように、本実施の形態に係る電気二重層キャパシタ1は、一対の分極性電極11、12と、分極性電極11、12の間に介在する板状のセパレータ13と、を備える。また、電気二重層キャパシタ1は、各分極性電極11、12におけるセパレータ13側とは反対側に配置された板状の集電体21、22を備える。そして、分極性電極11と集電体21との間および分極性電極12と集電体22との間それぞれには、中間層31、32が介在している。
【0011】
分極性電極11、12は、活性炭と導電補助剤とバインダとを含み、電解液が含浸されている。導電補助剤には、カーボンナノファイバが含まれる。活性炭は、例えば粒径1μm乃至10μmの粒状活性炭である。活性炭は、天然ポリマまたは人工合成高分子ポリマを前駆体としたものが採用できる。具体的には、フェノール樹脂系活性炭、アクリル樹脂系活性炭、やしがら系活性炭、石油コークス系活性炭等が挙げられる。或いは、ポリエチレンテレフタラート(PET)繊維のようなポリエステル繊維を前駆体とする活性炭を採用してもよい。バインダとしては、例えばテトラフルオロエチレン樹脂、カルボキシメチルセルロース等が採用される。分極性電極11、12は、活性炭が90%乃至95%、導電補助剤が2%乃至3%、バインダが3%乃至8%の割合で配合されてなるスラリーを集電体21、22の一面に塗布して乾燥させた後、圧縮することにより形成される。また、分極性電極11、12の厚さは、245μm以下に設定される。
【0012】
導電補助剤は、カーボンナノファイバの他に、フラーレン(C60)、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック等を含むものであってもよい。導電補助剤に含まれるカーボンナノファイバには、長さが100μm以上であり且つ平均直径が1μm以下であるカーボンナノファイバが含まれる。なお、カーボンナノファイバの平均直径は、分極性電極11、12中の導電補助剤の割合を低減して容量を増大させる観点から短いほうが好ましく、例えば250nm以下であることが好ましい。
【0013】
電解液は、例えばテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TEABF4)、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート等の電解質をプロピレンカーボネート(PC)に溶解することにより調整される。集電体21、22は、アルミニウム、リチウム、銅等の金属から形成される。
【0014】
中間層31、32は、炭素原子のSP3結合(ダイヤモンド結合)とSP2結合(グラファイト結合)が混在したアモルファス(非晶質)構造を有するダイヤモンドライクカーボン(以下、「DLC」と称する。)から形成されている。中間層31、32は、例えば集電体21、22にイオン化した炭素を注入することにより形成される。この中間層31、32と分極性電極11、12とは、前述のバインダを介して接着されている。セパレータ13は、例えばセルロース系材料から形成される。
【0015】
次に、本実施の形態に係る電気二重層キャパシタ1の製造方法について図2を参照しながら説明する。まず、分極性電極11、12の材料である活性炭、カーボンナノファイバおよびバインダを準備する(ステップS1)。活性炭は、例えば特許文献:特開2004-352595号公報に記載の「マイクロ波加熱による活性炭の製造方法」により作製される。具体的には、マイクロ波直接加熱および間接加熱を利用したハイブリッド加熱装置を用いて有機質原料と強アルカリの混合物を反応炉内で加熱することにより作製することができる。
【0016】
また、カーボンナノファイバは、例えば特許文献:国際公開第2016/013051号に記載の「ナノファイバの製造装置」を使用して、非酸化性雰囲気における熱処理により炭化可能なポリマを含むポリマ含有材料から、ポリマを含む前駆体繊維を作製する。具体的には、1つの第1噴射口と、噴射方向が第1噴射口の噴射方向と同じ向きであり且つ第1噴射口の噴射方向における下流側に設けられた複数の第2噴射口と、を有するナノファイバ形成用ノズルヘッドを使用して、複数の第2噴射口それぞれから噴射されるポリマ含有材料を、第1噴射口からポリマ含有材料の噴射速度よりも高速で噴射され且つポリマ含有材料の温度よりも高温に加熱された空気の流れに巻き込ませて空気の流れ方向へ延伸させることにより、ポリマを含むカーボンナノファイバの前駆体繊維を作製する。ここで、第2噴射口の開口径は、例えば0.2mmに設定される。また、ポリマとしては、ポリアクリロニトリル(PAN)、フェノール樹脂、ピッチ類、セルロース系ポリマ、ポリイミド、ポリベンジルイミダゾール、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリビニルアルコール(PVA)等を採用することができる。
【0017】
そして、作製された前駆体繊維を酸化性雰囲気において200℃乃至300℃の温度範囲内の温度に加熱することにより前駆体繊維に対して不融化処理工程を施す。その後、不融化処理が施された前駆体繊維を炭化させることによりカーボンナノファイバが作製される。
【0018】
次に、活性炭、カーボンナノファイバおよびバインダを混練することにより、分極性電極11、12の基となるスラリーを作製する(ステップS2)。ここで、活性炭が90%乃至95%、カーボンナノファイバが2%乃至3%、バインダが3%乃至8%の割合となるように活性炭、カーボンナノファイバおよびバインダを混合して攪拌することにより、集電体21、22に形成された中間層31、32に塗工し易い粘度に調整する。
【0019】
また、スラリーの作製と並行して、集電体21、22上に中間層31、32を形成する(ステップS3)。ここでは、例えば真空雰囲気のチャンバ内に集電体21、22を配置し、集電体21、22の厚さ方向における一面へ炭素原子をイオン化したものを注入することにより中間層31、32を形成する。
【0020】
続いて、作製したスラリーを集電体21、22上に形成された中間層31、32に塗工し(ステップS4)、その後、スラリーを乾燥させるとともに、スラリーを乾燥させて得られた分極性電極11、12の前駆体を加圧して圧縮する(ステップS5)。ここでは、プレス機、ロール圧延機等を使用して前駆体をその厚さ方向から加圧して圧縮する。これにより、前駆体表面を平滑化するとともに前駆体の密度を高めることができる。続いて、前駆体およびセパレータ13を真空乾燥させた後(ステップS6)、電解液を前駆体およびセパレータ13に含浸させる(ステップS7)。ここでは、例えば真空含浸技術を利用して、電解液を前駆体およびセパレータ13に含浸させる。これにより、中間層31、32上に分極性電極11、12が形成される。
【0021】
その後、セパレータ13の厚さ方向における両面に分極性電極11、12を重ね合わせてから外装体(図示せず)内に収納することにより電気二重層キャパシタ1を組み立てる(ステップS8)。以上、ステップS1乃至S8の一連の工程を行うことにより電気二重層キャパシタ1が完成する。
【0022】
以上説明したように、本実施の形態に係る電気二重層キャパシタ1によれば、一対の分極性電極11、12に含まれる導電補助剤が、長さが100μm以上であり且つ平均直径が1μm以下であるカーボンナノファイバを含む。これにより、例えば導電補助剤としてカーボンナノチューブを採用した場合に比べて、集電体21、22と分極性電極11、12との間の内部抵抗を同一にしつつ、分極性電極11、12中に含まれる導電補助剤の割合を低減することができる。従って、電気二重層キャパシタ1の内部抵抗を低減しつつ、大容量化を図ることができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、実施の形態で説明した電気二重層キャパシタ1において中間層31、32を備えない構成であってもよい。
【0024】
実施の形態では、分極性電極11、12の両方の導電補助剤がカーボンナノファイバを含む例について説明したが、これに限らず、例えば分極性電極11、12のいずれか一方の導電補助剤のみがカーボンナノファイバを含むものであってもよい。
【0025】
実施の形態におけるカーボンナノファイバの前駆体の作製方法は、前述の作製方法に限定されるものではなく、例えば電解紡糸法(エレクトロスピニング法)が採用されてもよい。
【0026】
以上、本発明の各実施の形態および変形例(なお書きに記載したものを含む。以下、同
様。)について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施
の形態及び変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【実施例
【0027】
以下、本発明について実施例および比較例に基づいて具体的に説明する。ここで、実施例1、2は、分極性電極にカーボンナノファイバが含まる構成であり、比較例は、分極性電極にカーボンナノファイバが含まれない構成である。まず、実施例1、2および比較例に係る電気二重層キャパシタの作製方法について説明する。
【0028】
まず、真空脱泡装置(株式会社シンキー製:ARV-310)を使用して、活性炭、カーボンナノファイバおよびバインダを混合して攪拌することによりスラリーを得た。活性炭は、PET繊維に対して前述のハイブリッド加熱により炭化および賦活することにより得た。カーボンナノファイバは、前述のナノファイバ製造装置を使用して得られる前駆体繊維を不融化、炭化することにより得た。バインダは、テトラフルオロエチレン樹脂とカルボキシメチルセルロースとを混合、攪拌することにより得た。
【0029】
ここで、実施例1では、スラリーに対するカーボンナノファイバの濃度を2重量%とし、実施例2では、スラリーに対するカーボンナノファイバの濃度を5重量%とし、比較例では、カーボンナノファイバを添加しなかった。なお、活性炭の含有量は、実施例1、2および比較例で同じとした。また、カーボンナノファイバとしては、長さが100μm以上であり且つ径が200nm以下であるものを含むものを採用した。
【0030】
次に、実施例1、2について、自動塗工装置(株式会社宝泉製:MC-20)を使用して、前述のスラリーを3mm/sec乃至10mm/secの範囲の一定の塗工速度で、アルミニウム製の板材である集電体表面に形成されたDLCからなる中間層に塗工することにより分極性電極の前駆体を得た。また、比較例について、前述の自動塗工装置を使用して、前述のスラリーを3mm/sec乃至10mm/secの範囲の一定の塗工速度で、アルミニウム製の板材である集電体に直接塗工することにより分極性電極の前駆体を得た。続いて、分極性電極の前駆体を乾燥させた後、プレス機を使用して前駆体をその厚さ方向から加圧して前駆体を圧縮した。その後、電極打ち抜き機(株式会社宝泉製)を使用して、集電体上に中間層と分極性電極の前駆体とが積層された板材と、集電体上に分極性電極の前駆体が積層された板材とを、電気二重層キャパシタのサイズに応じた大きさに打ち抜き実施例1、2および比較例に係る中間構造体を得た。
【0031】
次に、前述の中間構造体とセパレータとを真空乾燥した後、分極性電極の前駆体およびセパレータに電解液を真空含浸させた。電解液として、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TEABF4)をプロピレンカーボネート(PC)に溶解したものを採用した。また、セパレータとしてはセルロース系セパレータを採用した。その後、2つの中間構造体とセパレータとを重ね合わせてから、コインカシメ機(株式会社宝泉製)を使用して、2つの中間構造体とセパレータとを外装体内に密封して実施例1、2および比較例に係る電気二重層キャパシタを得た。以上の作製方法により、実施例1、2および比較例に係る分極性電極の厚さが異なる複数の電気二重層キャパシタを作製した。
【0032】
次に、実施例1、2および比較例に係る電気二重層キャパシタの充放電特性を評価した結果について説明する。充放電特定の評価には、東洋テクニカ製の585型充放電測定装置を使用した。実施例1、2および比較例の容量を測定した結果を図3(A)に示し、実施例1、2および比較例の内部抵抗を測定した結果を図3(B)に示す。ここで、測定時の電流密度は、2.5mA/cmとした。図3(A)に示すように、実施例1、2および比較例についての分極性電極の厚さの増加に対する容量の増加率は同じであった。これに対して、図3(B)に示すように、実施例1、2についての分極性電極の厚さの増加に対する内部抵抗の増加率は比較例に係るそれに比べて緩やかな傾向を示すことが判った。このことから、分極性電極の厚さを増加して電気二重層キャパシタの容量を増加させる場合、電流の取り出し特性の観点から、導電補助材にカーボンナノファイバが添加されているほうが有利であることが判った。なお、実施例1、2とで分極性電極の厚さの増加に対する内部抵抗の増加率は略同様であった。このことから、内部抵抗低減の観点からすれば、分極性電極に含まれるカーボンナノファイバの濃度は、2重量%で十分であることが判った。
【0033】
また、実施例1、2および比較例の充電状態における交流インピーダンス測定を行った結果を図4に示す。図4は、交流インピーダンス測定結果をCole-Coleプロットで示したものである。横軸は抵抗成分の大きさ(Z’)、縦軸は容量成分の大きさ(-Z")を示している。図4に示すように、比較例に比べて実施例1、2の場合、抵抗成分が小さくなる方向へシフトすることが判った。この結果から、分極性電極中にカーボンナノファイバを含ませることにより、分極性電極と中間層との間の接触抵抗が低減することが判った。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば携帯端末、ノートパソコン等のバックアップ電源、瞬間停電補償用またはハイブリッド自動車用の電源として好適である。
【符号の説明】
【0035】
1:電気二重層キャパシタ、11,12:分極性電極、13:セパレータ、21,22:集電体、31,32:中間層
図1
図2
図3
図4