(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】ゴーグル
(51)【国際特許分類】
A61F 9/02 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
A61F9/02 320
A61F9/02 310
(21)【出願番号】P 2019203804
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】511080328
【氏名又は名称】株式会社 GLASSART
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】山下 昌幸
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特許第5889843(JP,B2)
【文献】特表2010-500123(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0179554(US,A1)
【文献】特開2017-027030(JP,A)
【文献】特開2005-211259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主としてスポーツ選手が着用するゴーグルにおいて、フロント部は硬質樹脂
から成る正面部と、軟質樹脂から成るインナーゴム部とから構成され、正面部の背面側にはインナーゴム部を着脱可能に取付け、正面部の両側端にゴーグルを着用する場合に頭部に巻き付けるバンドを連結し、正面部の両側端部のヨロイ部に
は側方の視界を拡張する為の
インナーゴム部篏合穴を貫通して設け、上記軟質樹脂製のインナーゴム部には
複数の通気穴、複数の凹溝、両側には篏合部、中央正面には嵌入片を設け、上記嵌入片は水平断面が概略T形を成し、篏合部は先端縁を一回り大きくした筒状を有し、上記嵌入片は正面部中央背面に設けた
水平断面が概略T形を成し
て下方を開口している嵌入溝に嵌り、
そして、篏合部は正面部に設けたヨロイ部のインナーゴム部篏合穴に嵌
まると共に先端縁はインナーゴム部篏合穴を通過して正面部の表面側に押し出されたことを特徴とするゴーグル。
【請求項2】
上記バンドに代わって
正面部の両側端にはツルを取付けた請求項1記載のゴーグル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主としてスポーツ選手が安全に着用することが出来るゴーグルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スポーツ選手は、運動中にそれぞれのスポーツに適したゴーグルを着用して運動することが多い。
例えば、水泳選手の場合には、競泳中に水から目を保護するためのスイミング用ゴーグルを使用する。長距離ランナーの場合には、ランニング中に強い太陽光線から目を保護する為にサングラス型ゴーグルを使用する。
また、オートバイレーサーの場合には、練習走行やレース中に風圧や塵埃などから目を保護するためにオートバイ用のゴーグルを着用している。
【0003】
このように、ゴーグルにもその形態は色々あり、各種スポーツに適したゴーグルが使用されている。しかし基本的な形態はフロント部と該フロント部から延びるバンドを取付け、フロント部が顔に密着することが出来るような構造としている。
したがって、視界は正面に限られて側方の視界は遮られ、少なくとも側方は見え難い。
【0004】
また、フロント部の内面は常に顔に接する為に、運動する際に発生する汗が付着して汚れが発生する。一般的なメガネのフロント部の場合には、該メガネを着用する際にフロント部の中央部に取付けた鼻当てパットが鼻の両脇に接するだけであり、その他の部分は顔に接していない。
しかし、ゴーグルを着用する場合にはフロント部周辺の内面が広範囲に亘って接することで汗が付着して細菌が発生し、不衛生である。
【0005】
また、フロント部の全周が顔に接することで内部が密閉され、その為に空気の出入りが閉ざされてフロント部のレンズが曇ることになる。ゴーグルの曇り止めに関しては特開2002-330990号に係る「スポーツ用ゴーグル」が知られている。該スポーツ用ゴーグルはフィット感に優れ、換気効率が良いのはいうまでもなく、換気用ファンシステムのスイッチ操作がし易く、しかもゴーグルを着用した場合に重量バランスが崩れることもなく、装着感が良いようにして構成している。
【0006】
すなわち、ゴーグル枠とこのゴーグル枠に嵌め込まれたゴーグルレンズと、ゴーグル枠の左右に連結されたヘッドバンドから成り、前記ゴーグル枠の上部に換気用ファンシステムの換気ファンユニットを取り付け、ゴーグル枠の左右のヘッドバンドの連結位置下方寄りの一端部に換気用ファンシステムの電源ユニットを取り付け、同他端部に換気用ファンシステムのスイッチユニットを取り付けたものとしている。しかし、このように構成されるゴーグルの構造は複雑化し、コストも高く換気用ファンシステムが故障する虞もある。
【0007】
出願人は平成25年7月24日付けで「ゴーグル」に関して特許出願を行い、平成28年2月26日付けで登録されました「特許第5889843号」。
この「ゴーグル」は主としてスポーツ選手が着用し、衝撃に対して安全であり、側方の視界を拡張するように構成している。
すなわち、フロント部は硬質樹脂で構成する正面部3の背面側には軟質樹脂から成る層を着脱可能に取付け、そして、正面部の両側端にゴーグルを着用する場合に頭部に巻き付けるバンドを連結し、正面部の両側端部のヨロイ部に穴を貫通して設け、上記軟質樹脂製の層には複数の切欠き部を形成している。
【文献】特開2002-330990号に係る「スポーツ用ゴーグル」
【文献】特許第5889843号に係る「ゴーグル」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように従来から色々なゴーグルが開発され、また市販もされている。本発明が解決しようとする課題は、上記特許第5889843号に係る「ゴーグル」が有している問題を解決することを目的としている。
すなわち、着用したゴーグルのフロント部に衝撃が作用した場合に、この衝撃を緩和することが出来ると共に、フロント部を構成する正面部の内側に取付けられる軟質樹脂層(インナーゴム部)が外れることなく安定して取付けたゴーグルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るゴーグルを着用した場合に顔に馴染むようにそのフロント部は滑らかに湾曲し、2層構造としている。
すなわち、フロント部は硬質樹脂から成る正面部と軟質樹脂製のインナーゴム部を有し、インナーゴム部は正面部の内側(背面)に取付けられている。そしてインナーゴム部は柔らかいゴム質から成って一体成形され、上下方向に貫通する穴(通気穴)や凹溝を複数個所に形成している。
正面部に形成しているリム部にはレンズ又はサングラスを嵌り、そして、上記正面部の内側に取付けられるインナーゴム部の外形は正面部に沿った形状としている。
【0010】
ところで、インナーゴム部は正面部内側に取付けられるが、外れにくい篏合構造としている。
上記正面部の中央背面(内面)には下方を開口して水平断面が概略T型の嵌入溝が設けられ、インナーゴム層の中央正面には、水平断面が概略T型の嵌入片を設けている。
一方、正面部の両側部(ヨロイ部)には貫通穴(インナーゴム部篏合穴)を設け、この貫通穴にインナーゴム部の両側部に形成した篏合部が嵌入して取付けられる。該篏合部はその先端外周となる縁を突出した形状としている。すなわち、先端縁を形成することで先端を太くしている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴーグルのフロント部は内側にクッション性に優れたインナーゴム部を有しており、その為にフロント部に衝撃が加わった場合であっても、顔が受ける衝撃は緩和される。
そして、インナーゴム部には上下に貫通する穴が設けられ、これら穴は通気穴として機能する為に、ゴーグル内部の空気は出入りすることが出来、フロント部のレンズが曇ることはない。
【0012】
インナーゴム部の中央には嵌入片が、両側部には篏合部を突出しており、嵌入片及び篏合部は正面部に設けた嵌入溝及び貫通穴(インナーゴム部篏合穴)に篏合することで安定して取付けられる。
このように、インナーゴム部は嵌入片及び嵌合部が嵌入溝及び貫通穴に嵌ることで取付けることが出来る。勿論、インナーゴム部の嵌入片及び嵌合部は嵌入溝及び貫通穴から抜き取ることは出来る。
【0013】
したがって、インナーゴム部が汗などで汚れた場合には取外して交換することが出来る。一方、正面部の側方(ヨロイ部)にはインナーゴム部篏合穴が設けられている為に、この穴を通して側方を見ることが出来る。よって、激しい運動をする選手が着用する場合、側方の視界も目に入ることで視界が大きくなり、他の選手の動きやボールの動きを素早くとらえることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るゴーグルの外観写真で、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図。
【
図2】本発明に係るゴーグルを示す図面で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【
図3】本発明に係るゴーグルのフロント部を構成する正面部で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【
図4】本発明に係るゴーグルのフロント部を構成するインナーゴム部で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係るゴーグルの外観写真を示す実施例であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図をそれぞれ表している。同図の1はフロント部、2はバンドを示し、該バンド2は伸縮性を有してフロント部1の両側端に連結している。そして、フロント部1は大きく湾曲した形状とし、顔に掛けた場合には顔との間に隙間なく密着することが出来るようにしている。
該ゴーグルを着用するには、フロント部1を顔の正面に配置し、バンド2は後頭部に巻き掛けすることが出来る。
【0016】
ところで、上記フロント部1は2層構造とし、正面部3とインナーゴム部4から構成している。正面部3は硬質樹脂製で、インナーゴム部4はクッション性に優れた軟質樹脂製としている。
正面部3は連結部5にて繋がれた両リム部6,6を有し、リム部6,6にはレンズ又はサングラスが嵌り、リム部6,6の外側にはヨロイ部7,7を形成している。正面部3は連結部5にて繋がれた両リム部6,6、及びヨロイ部7,7を有し、硬質樹脂を用いて一体成形されている。
【0017】
上記バンド2はヨロイ部7,7の先端に繋がれて連結している。そして、インナーゴム部4はその形状を正面部3と同じようにリム部を有し、両リム部は中央の連結部にて繋がれた形状としている。ただし、インナーゴム部4のリム部にはレンズやサングラスは嵌らない。あくまでも正面部3のリム部6,6に積層されるだけの形態と成っている。
ここで、インナーゴム部4の外形は正面部3より僅かに大きな形状としており、その為に、該インナーゴム部4の周辺部は正面部3から僅かにはみ出している。
【0018】
図2は前記
図1と同じゴーグルを図面で表している実施例であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図をそれぞれ示している。フロント部1の両先端にはバンド2が連結し、フロント部1を顔の正面に配置すると共に、伸縮自在なバンド2を後頭部に巻き掛けする。バンド2の張力にてフロント部1のインナーゴム部4の内面は顔に密着することが出来る。インナーゴム部4の中央には鼻パット8,8が対を成して設けられ、該鼻パット8,8が鼻に当たって位置決めされる。
【0019】
ところで、ゴーグルを着用するならばフロント部1は顔に配置されて、インナーゴム部4は顔肌に密着する。その為に、ゴーグル内部は密閉空間となり、正面のガラスに曇りを発生する。そこで、本発明のゴーグルでは上記密閉空間を解消する為に、上記インナーゴム部4には上下方向に通気穴9,9・・・を貫通しており、これら通気穴9,9・・・を介して空気が流れ、ゴーグル内部の密閉空間は解放される。したがって、ガラス面(レンズ面)に曇りが発生することはない。
【0020】
また、インナーゴム部4が正面部3と当接する側には凹溝10,10・・・が設けられ、該正面部3とは部分的に接している。その為に、これら凹溝10,10・・・を介して空気が流れ、ガラス面の曇り止め効果が得られる。同時に、これら凹溝10,10・・・、及び通気穴9,9・・・を設けることで、インナーゴム部4は一段と柔らかくなって、クッション性を備えることが出来る。
【0021】
図3はフロント部1を構成する正面部3を表し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図をそれぞれ示している。該正面部3は硬質樹脂を用いて射出成形され、中央の連結部5の両側にはレンズが嵌るリム部6,6が形成され、また両側部にはヨロイ部7,7を設けている。
上記ヨロイ部7の先端にはバンド2を連結する為のバンド挿通穴を設け、またヨロイ部7にはインナーゴム部篏合穴11,11を貫通して設けている。
【0022】
図4は上記正面部3の背面側に取付けられてフロント部1を構成するインナーゴム部4を表している実施例で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図をそれぞれ示している。インナーゴム部4は軟質樹脂製で、クッション性に優れている。
内面12は滑らかな曲面をなし、中央部には鼻パット8,8が対を成して形成され、正面側には複数の凹溝10,10・・・を有している。また、リム部を上下方向に貫通する通気穴9,9・・・を複数設けている。
【0023】
ところで、該インナーゴム部4は
図3に示す上記正面部3の背面側に取付けられるが、取付け手段として嵌入片13と篏合部14,14を有している。
嵌入片13は正面中央に突出して設けられ、また篏合部14,14は側部に突出して設けられている。
嵌入片13は、同図に示すように先端幅Ma、基部幅Mbとし、概略T形断面を成している。そして、篏合部14は筒型を成して、先端縁15は一回り大きくしている。
【0024】
正面部3の背面中央には嵌入溝16を形成し、この嵌入溝16に嵌入片13が嵌入して取付けられる。嵌入溝16はその水平断面を概略T形とし、T形断面の嵌入片13が嵌入することが出来る形状としている。そして、該嵌入溝16は下方を開口し、その為に嵌入片13は下側から嵌入溝16に嵌めることが出来、一旦嵌った嵌入片13は簡単に外れることはなく、インナーゴム部4の中央部が正面部3に安定して取付けられる。
【0025】
インナーゴム部4の側部に設けている篏合部14は、正面部3のヨロイ部7に形成したインナーゴム部篏合穴11に篏合する。筒型をした篏合部14はその先端に外形を一回り大きくした先端縁15を形成し、インナーゴム部篏合穴11に該篏合部14を嵌めることが出来る。
インナーゴム部篏合穴11に篏合部14は篏合するが、先端縁15は前記
図2に表しているように、正面部3の表面に配置される。すなわち、先端縁15はインナーゴム部篏合穴11を通過して正面側に押し出される。
先端縁15はインナーゴム部篏合穴11より僅かに大きくなっていることで、先端縁15は簡単に抜けることはなく、インナーゴム部4の側部は篏合部14を介して正面部3に安定して取付けられる。
【0026】
本発明のゴーグルは、ヨロイ部7,7に設けているインナーゴム部篏合穴11,11はフロント部1の視界が側部まで拡張され、スポーツ選手にとって側方の視界が得られることは便利である。例えば、サッカー選手、野球選手などは、他の選手の動きやボールの動きをヨロイ部7,7に設けたインナーゴム篏合穴11,11を通して側方からとらえることが出来る。
【0027】
一方、この実施例ではゴーグルを着用する為にフロント部1にバンド2を連結しているが、一般的なメガネのようにツルを取付けることも可能である。ただし、ツルの先端部は耳に完全に係止しる形状とし、激しい動きに対してフロント部1が位置ズレすることなく、フロント部1が顔から外れ落ちることがないようにすることが必要となる。
【符号の説明】
【0028】
1 フロント部
2 バンド
3 正面部
4 インナーゴム部
5 連結部
6 リム部
7 ヨロイ部
8 鼻パット
9 通気穴
10 凹溝
11 インナーゴム部篏合穴
12 内面
13 嵌入片
14 篏合部
15 先端縁
16 嵌入溝