IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社九千部の特許一覧

特許7116508自然薯の栽培における成長案内板の設置方法及び同方法に用いる成長案内板設置器具
<>
  • 特許-自然薯の栽培における成長案内板の設置方法及び同方法に用いる成長案内板設置器具 図1
  • 特許-自然薯の栽培における成長案内板の設置方法及び同方法に用いる成長案内板設置器具 図2
  • 特許-自然薯の栽培における成長案内板の設置方法及び同方法に用いる成長案内板設置器具 図3
  • 特許-自然薯の栽培における成長案内板の設置方法及び同方法に用いる成長案内板設置器具 図4
  • 特許-自然薯の栽培における成長案内板の設置方法及び同方法に用いる成長案内板設置器具 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】自然薯の栽培における成長案内板の設置方法及び同方法に用いる成長案内板設置器具
(51)【国際特許分類】
   A01G 22/25 20180101AFI20220803BHJP
【FI】
A01G22/25 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021146614
(22)【出願日】2021-09-09
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】521399191
【氏名又は名称】株式会社九千部
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(72)【発明者】
【氏名】富田 健愛
(72)【発明者】
【氏名】富田 崇愛
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-075533(JP,A)
【文献】登録実用新案第3135429(JP,U)
【文献】特開2010-115167(JP,A)
【文献】特開2010-273641(JP,A)
【文献】特開平10-248375(JP,A)
【文献】特許第2516555(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 22/00 - 22/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の栽培土に溝を掘り、長手方向に等間隔を置いて複数の支持部材が設けられるとともに、一端には取っ手が設けられた枠体からなる成長案内板設置器具を、前記溝内に長手方向に多数連続して一列に配置し、
配置した前記多数の成長案内板設置器具の各支持部材に、前記成長案内板設置器具の幅よりも狭い幅の成長案内板の一端側を載置し、前記成長案内板の他端側は前記溝の底面上に位置させて支持部材と同数の前記成長案内板を前記多数の成長案内板設置器具に等間隔に傾斜状態で支持し、
前記成長案内板を支持した前記多数の成長案内板設置器具を連続配置してなる列に対応して畝を形成して、前記成長案内板を各成長案内板設置器具に支持した状態で畝中に埋設し、
次いで各成長案内板設置器具を畝から抜き取って前記各成長案内板を畝中に等間隔に傾斜状態で設置する
自然薯の栽培における成長案内板の設置方法。
【請求項2】
前記請求項1における成長案内板が硬質性樹脂からなり、断面が凹凸状である
自然薯の栽培における成長案内板の設置方法。
【請求項3】
一対の側枠と、
これら側枠に、これら側枠の長手方向に等間隔を置いて固定した、成長案内板の一端部をそれぞれ支持するための複数の支持部材と、
前記各側枠の長手方向一端に端部を固定した平面コ字状で上方に傾斜する取っ手と、
からなる枠体で構成される
自然薯の栽培における成長案内板の設置方法に用いる成長案内板設置器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長案内板を用いた自然薯の栽培における成長案内板の設置方法及びこの設置方法に用いる成長案内板設置器具に関する。
【背景技術】
【0002】
自然薯は地中に真っすぐに伸びて成長するものであり、真っすぐなものほど消費者に提供する際の商品価値が高い。自生する自然薯では、石などの障害物があると、これをよけて伸びるために曲がったり、捻じれてしまい、真っすぐに成長するものは少ない。また、自生する自然薯を収穫する際には、途中で折れないように、注意深く抜く必要があるので、熟練者であっても時間がかかり、極めて作業効率が悪いものである。一方、自然薯の栽培も行われているが、消費者に受け入れられる自然薯を栽培するには、自然薯を一本ずつ真っすぐ成長させることと、自然薯を破損することなく効率よく収穫することが求められる。
【0003】
従来、上述の要求に応えることを目指すものとして、主として次の三つの栽培方法が行われている。第1に、自然薯の成長を案内する断面湾曲状や断面V字状の溝を有する成長案内板を、複数枚互いに平行に栽培土中に傾斜して設置して栽培する方法(例えば特許文献1)。第2に、自然薯の成長を案内するパイプやダクトと称される管状体の断面U字状の溝内に無菌の山土を充填し、前記管状体を複数枚互いに平行に圃場の栽培土中に傾斜して設置して栽培する方法(例えば特許文献2)。第3に、自然薯を生育する栽培土を投入した円筒状の管体を、複数垂直に設置して栽培する方法(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-164223号公報
【文献】特許第3381846号公報
【文献】特許第4231542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に示された第1の方法では、容器の底板部(成長案内板に対応)を傾斜させるとともに、波形に形成し、この容器を積み重ねて、波形底板部を複数確保して栽培するものなので、一度に大量の自然薯を栽培することができず、家庭用としては良いが、業務用として自然薯を市場に提供するには十分な数量を収穫できないという問題がある。なお、成長案内板を容器の底板部としてではなく、独立した部材として圃場に多数設置する場合は、設置作業に多大な労力を要するため効率的でない、という別の問題がある。また、特許文献2に示された第2の方法では、管状体を圃場の栽培土中に所定状態で多数設置するには、設置作業に多大な労力を要するため効率的でない、という問題がある。さらに、特許文献3に示された第3の方法では、多数の管体に栽培土を投入した上、これを並列的に設置して、固定する作業や、収穫時に管体を一本ずつ分離した上、内部の栽培土を水流加圧器具を用いて排出する作業に、多大な労力を要するため効率的でないという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述の各問題点を解消することを目的とし、第1の方法を改良して、業務用の栽培に適した、成長案内板を用いた自然薯の栽培における成長案内板の設置方法及び同方法に用いる成長案内板設置器具を提供するもので、多数の成長案内板を、効率よく、圃場に設置する方法及び同方法に用いる成長案内板設置器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明の請求項1に係る自然薯の栽培における成長案内板の設置方法は、圃場の栽培土に溝を掘り、長手方向に等間隔を置いて複数の支持部材が設けられるとともに、一端には取っ手が設けられた枠体からなる成長案内板設置器具を、前記溝内に長手方向に多数連続して一列に配置し、配置した前記多数の成長案内板設置器具の各支持部材に、好適には取っ手側から順次、前記成長案内板設置器具の幅よりも狭い幅の成長案内板の一端側を載置し、前記成長案内板の他端側は溝底面上に位置させて、前記支持部材と同数の前記成長案内板を前記多数の成長案内板設置器具に等間隔に傾斜状態で支持し、前記成長案内板を支持した前記多数の成長案内板設置器具を連続配置してなる列に対応して畝を形成して、前記成長案内板を各成長案内板設置器具に支持した状態で畝中に埋設し、次いで各成長案内板設置器具を畝から抜き取って前記各成長案内板を畝中に等間隔に傾斜状態で設置するものである。
【0008】
同じく前記目的を達成するために、本発明の請求項2に係る自然薯の栽培における成長案内板の設置方法は、前記請求項1における成長案内板が硬質性樹脂からなり、断面が曲線状や直線状の凹凸状であることを特徴とする。
【0009】
同じく前記目的を達成するために、本発明の請求項3に係る自然薯の栽培における成長案内板の設置方法に用いる成長案内板設置器具は、一対の側枠と、これら側枠に、これら側枠の長手方向に等間隔を置いて固定した、成長案内板の一端部を支持するための複数の支持部材と、前記各側枠の長手方向一端に端部を固定した平面コ字状で上方に傾斜する取っ手と、からなる枠体で構成されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に係る自然薯の栽培における成長案内板の設置方法によれば、畝中に、多数の成長案内板を等間隔に傾斜状態で効率よく配置できるという効果を奏する。
【0011】
本発明の請求項2に係る自然薯の栽培における成長案内板の設置方法によれば、前記請求項1の奏する効果に加え、成長案内板の取り扱いが容易で、強度的にも優れているという効果を奏する。
【0012】
本発明の請求項3に係る成長案内板設置器具によれば、自然薯の栽培における成長案内板の設置を効率的に行うことができ、また枠体状なので畝からの抜き取り作業も容易であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の好適な実施形態における成長案内板設置器具の斜視図。
図2】同じく成長案内板の斜視図。
図3】同じく成長案内板設置器具を使用して成長案内板を設置した状態を概略的に示す側面図。
図4】同じく成長案内板設置器具を畝から抜き取って種芋を植え付けた状態を概略的に示す側面図。
図5】同じく自然薯の生育状態を概略的に示す成長案内板を断面にした側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明するが、はじめに、本発明の成長案内板設置器具について説明する。図1に示すように、成長案内板設置器具1は鉄製の棒材からなる枠体であり、一対の四角枠状の側枠2a,2bを備え、これら側枠2a,2bの長手方向中央には強度を保つために補強棒3a,3bを固定している。前記各側枠2a,2bには、これら側枠2a,2bを連結するようにその長手方向に等間隔を置いて、互いに平行に伸びる5本の支持部材たる支持棒4a,4b,4c,4d,4eを固定している。また、前記各側枠2a,2bの長手方向一端である支持棒4a連結端には、これら側枠2a,2bに端部を固定した平面コ字状で上方に傾斜する取っ手5を固定している。
【0015】
次に、成長案内板について説明する。図2に示すように、成長案内板6は硬質の合成樹脂製であり、断面が波のような曲線状に凹凸し、波板と称される。前記成長案内板6の幅は、成長案内板設置器具1の幅よりも狭く、より具体的には各側枠2a,2bの間隔よりも狭く、また、長さは前記成長案内板設置器具1の第1の支持棒4aから第5の支持棒4eまでの長さにほぼ等しい。そして、前記成長案内板6の曲線状の凹部6aの一つに沿って自然薯が成長するものである。
【0016】
続いて、成長案内板6の設置方法を図3に基づいて説明する。圃場の栽培土に溝を掘って、溝の底面G上に、上述した成長案内板設置器具1を、長手方向に多数連続して一列に配置する。そして、配置した前記多数の成長案内板設置器具1の各支持棒4a,4b,4c,4d,4e(図3では不可視)に取っ手5側の支持棒4aから順次、成長案内板6の一端側6bを載置し、これら成長案内板6の他端側6cは栽培土の溝の底面G上に位置させる。これによって、図3に示すように、支持棒4a,4b,4c,4d,4eと同数の5枚の成長案内板6を、前記一列状に多数配置した各成長案内板設置器具1に、等間隔に互いに平行に傾斜して支持する状態となる。
【0017】
次いで、それぞれ5枚の成長案内板6を支持した各成長案内板設置器具1を多数連続して配置してなる列に対して、横方向から管理機で栽培土を投入し、側枠2a,2bがほぼ埋まり、成長案内板6の一端側6bと取っ手5の上部は露出する状態にする。この状態で、前記各成長案内板6は、支持棒4a,4b,4c,4d,4eに支持された一端側6bを除いて栽培土中に位置し、傾斜状態を維持して動かないように位置決め配置される。次に、把持する水平部分を除いた取っ手5と各成長案内板6を覆うように、管理機で栽培土をかけて断面台形状の畝を形成し、これによって前記各成長案内板6を成長案内板設置器具1に支持した状態で畝中に埋設する。このとき前記各成長案内板6は、畝中にほぼ等間隔で互いに平行に傾斜した状態(図3参照)にある。
【0018】
続いて、成長案内板設置器具1を抜き取るのであるが、まず、成長案内板設置器具1の取っ手5を持って手前に引き、各支持棒4a,4b,4c,4d,4eを支持している各成長案内板6の端部6bから離反させ、前記各支持棒4a,4b,4c,4d,4eと前記各成長案内板6の端部6bが上下方向に対応しない状態とする。この状態で、前記取っ手5を斜め上方に引っ張って前記成長案内板設置器具1を畝から抜き取ると、前記各成長案内板6は畝中にほぼ等間隔で互いに平行な傾斜状態で設置される(図4参照)。
【0019】
この抜き取りの際、前記成長案内板設置器具1の前記各支持棒4a,4b,4c,4d,4eは前記各成長案内板6の間を通るので、前記成長案内板設置器具1が各成長案内板6に接触することはなく、前記各成長案内板6は位置決め配置状態を維持する。また、成長案内板設置器具1は枠体なので、畝から抜き取る際の土の抵抗はさほど大きいものではない。
【0020】
以上で、成長案内板6の設置方法は終了するが、自然薯の栽培方法としては、さらに種芋を植え付けて、自然薯を生育するものである。すなわち、図4に示すように、設置した各成長案内板6の端部6bの上方に対応して発芽点が位置するよう種芋11を畝上に載置し、この種芋11を覆うように栽培土を被せ、断面台形状の畝Mを形成する。
【0021】
図5に示すように、種芋11の発芽点からは、地上に向かってつる12が伸びる一方、地下に向かって新生芋13が伸びる。また、つる12と種芋11の付け根から複数本の主吸収根14が伸び、この主吸収根14が養分を吸収して新生芋13を成長させる。図示していないが、畝M上には雑草の繁殖を防ぐためのマルチシートを張り、支柱を立ててネットを張ってつる12を這わせる。一方、新生芋13が下方に伸びて成長案内板6にあたると、成長案内板6の凹部6aに案内されてさらに斜め下に向けて真っすぐ伸びて成長し、自然薯となる。
【0022】
自然薯の収穫にあたっては、成長案内板6を自然薯とともに掘り起こせばよい。したがって、自然薯は成長案内板6に保護されるので破損することはなく、また、収穫作業は、簡便で効率がよい。
【0023】
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、例えば、成長案内板設置器具1は、適宜形状の支持部材を有する枠体であればよく、その一部または全部をパイプで形成するなど上述した構成に限らない。また、成長案内板6はいわゆる波板ではなく、平板に断面が適宜な曲線状、あるいは多角形状などの適宜な直線状の凹部が適宜数形成されたものでもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 成長案内板設置器具
2a,2b 側枠
3a,3b 補強棒
4a,4b,4c,4d,4e 支持棒
5 取っ手
6 成長案内板
6a 凹部
6b、6c 端部
11 種芋
13 新生芋
【要約】
【課題】 成長案内板を用いた自然薯の栽培において、多数の成長案内板を、効率よく、圃場に設置する。
【解決手段】 圃場の栽培土に掘った溝内に、長手方向に等間隔を置いて複数の支持部材が設けられるとともに、一端には取っ手5が設けられた枠体からなる成長案内板設置器具1を、長手方向に多数連続して一列に配置し、各成長案内板設置器具1の各支持部材に成長案内板6の一端部6bを載置して、成長案内板6を成長案内板設置器具1に等間隔に傾斜状態で支持した後、畝を形成して、成長案内板6を成長案内板設置器具1に支持した状態で畝中に埋設し、その後、成長案内板設置器具1を畝から抜き取って各成長案内板6を畝中に等間隔に傾斜状態で設置する。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5