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特許7116517磁性コア、およびこれを用いたコモンモ―ドチョークコイル
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  • 特許-磁性コア、およびこれを用いたコモンモ―ドチョークコイル 図1
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  • 特許-磁性コア、およびこれを用いたコモンモ―ドチョークコイル 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】磁性コア、およびこれを用いたコモンモ―ドチョークコイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/245 20060101AFI20220803BHJP
   H01F 27/25 20060101ALI20220803BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20220803BHJP
   H01F 1/153 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
H01F27/245
H01F27/25
H01F41/04 A
H01F1/153 133
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022018906
(22)【出願日】2022-02-09
【審査請求日】2022-03-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日刊工業新聞 令和4年2月1日付朝刊
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511070592
【氏名又は名称】株式会社ウエノ
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】上野 隆一
(72)【発明者】
【氏名】武田 陽志
(72)【発明者】
【氏名】三浦 忠彦
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-135533(JP,A)
【文献】特開平03-125404(JP,A)
【文献】特開昭59-082709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/245
H01F 27/25
H01F 41/04
H01F 1/153
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンモードチョークコイルに使用される磁性コアであって、
ナノ結晶磁性材料を用いて形成されており、
断面形状における幅をa、高さをb、コア内径をID、コアの有効断面積をAeとしたときに、b/a=1.0~1.3、ID/√Ae=4.0~5.3である、磁性コア。
【請求項2】
請求項1に記載の磁性コアと、当該磁性コアに捲回した銅線とからなるコモンモードチョークコイル。
【請求項3】
請求項2に記載のコモンモードチョークコイルの製造方法であって、
ノ結晶合金箔を積層させて環状体に形成した積層コアからなる磁性コアに対して、銅線を自動巻線機によって巻線することを特徴とするコモンモードチョークコイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性コアと、これを用いたコモンモ―ドチョークコイルに関し、特に巻線長を減じながらも性能を維持することのできる磁性コアと、これを用いたコモンモ―ドチョークコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コモンモ―ドチョークコイルは、ノイズ対策用部品としてACアダプタ、家電等の電源機器に広く使用されている。かかるコモンモ―ドチョークコイルには、トロイダル状のフェライトコアが多く使用されており、これはコストと性能のバランスが優れていることが理由となっている。但し、このフェライトコアは、インダクタンス値が大きく、直流電流が重畳しても磁気飽和しないことが要求される場合には、その要求を満たすために大型化せざるを得ないものとなっていた。
【0003】
そこで特許文献1(特開2001-68364号公報)では、磁性体の材質を変更することにより、小型なリングコアを用いた小型のトロイダルコイルが提案されている。即ちこの文献では、予め導線を捲回してなる筒状コイルをリング状に撓めながら、分割されたリングコアのそれぞれを該筒状コイル空芯部に挿入し、分割面を接合してリングコアを形成するトロイダルコイルの製造方法が提案されている。特にこの文献において、筒状コイルは平角線を捲回した角筒状コイルであることも開示している。
【0004】
また従前においては磁性コアに対する巻線時におけるワイヤの欠陥についても検討されている。例えば特許文献2(実開平1-153606号公報)では、従来のコア用ケースの断面形状が正方形であり、その外周面にワイヤを捲回した場合には、四角形の過度の部分においてワイヤに無理な聴力が架かり、ピンホールやクラックなどの欠陥部が生じやすいとの課題に着目して、ケース外周面に捲回されるワイヤとケース外周面との当接部の断面形状を円形または5角形以上の頂点形状とすることが提案されている。
【0005】
更に、近年では優れた特性を有するナノ結晶磁性コアを使用した磁心も開発され、実用化されている。ナノ結晶磁性コアは高透磁率、高飽和磁束密度、温度特性に優れ、軽量などの特徴を有する。これらの特徴から、ナノ結晶磁性コアを使用することにより、コモンモ―ドチョークコイルの高性能化、小型化が可能となる。例えば特許文献3(特開2020-141041号公報)では、コイルおよび磁性コアを含むコイル部品であって、前記磁性コアは複数の軟磁性層が積層されている積層体を有し、前記軟磁性層の厚みが10μm以上30μm以下であり、Fe基ナノ結晶からなる構造が前記軟磁性層に観察されるコイル部品を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-68364号公報
【文献】実開平1-153606号公報
【文献】特開2020-141041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の通り特許文献1では磁性コアを構成する材料を変更する事で、トロイダルコイルの小型化を提案している。しかしながら、この文献は製造方法の改良によって当該課題を解決するものであり、磁性コア自体の形状を考慮するものではなかった。そこで本発明は磁性コアの形状を再考することにより、トロイダルコイルの小型化を実現すると共に、更に捲回する銅線の量を減じる事のできる磁性コアと、これを用いたトロイダルコイルを提供することを課題の1つとする。
【0008】
また、前記特許文献2では磁性コアに対するワイヤ(銅線など)の捲回時における欠陥について検討されているが、インダクタンスなどの特性については未だ十分に検討されていなかった。そこで本発明では、小型化を実現し、更に使用する銅線の量を減じながらも、十分な特性を確保することのできる磁性コアと、これを用いたトロイダルコイルを提供することも別の課題とする。
【0009】
また、特許文献3ではナノ結晶からなるコイル部品も提案されているが、当該ナノ結晶磁性コアは、優れた特徴を有する反面、製法上の理由等でコストが高く、汎用機器での採用は小規模にとどまっている。そこで本発明では、コモンモ―ドチョークコイル用の磁性コアとしてナノ結晶磁性コアを使用しながらも低コストであり、更にフェライトコアを使用したコモンモ―ドチョークコイルと同じ性能でありながらも、小型化することができるコモンモ―ドチョークコイルと、これに使用する磁性コアを提供することも更に別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために本発明者らは、鋭意検討を行い、磁気飽和特性、コアの体積、インダクタンス、さらに銅線量に着目し課題の解決を図った。
【0011】
すなわち本発明では、コモンモードチョークコイルに使用される磁性コアであって、ナノ結晶磁性材料を用いて形成されており、断面の有効断面積をAe、断面形状における幅をa、高さをb、コア内径をIDとしたときに、aとbの比がb/a=1.0~1.3、であり、かつ、IDと√Aeの比がID/√Ae=4.0~5.3である磁性コアを提供する。
【0012】
また本発明では、当該磁性コアに捲回した銅線とからなるコモンモードチョークコイルを提供する。磁性コアに捲回す銅線は丸線または平角線であって良く、特に平角線を使用する場合には、前記磁性コアに対してエッジワイズ方向に巻かれているコモンモードチョークコイルとすることができる。
【0013】
そして本発明では、前記本発明のコモンモードチョークコイルの製造方法であって、前記ナノ結晶合金箔を積層させて環状体に形成した積層コアからなる磁性コアに対して、銅線を自動巻線機によって巻線するコモンモードチョークコイルの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るコモンモードチョークコイルに使用される磁性コアは、ナノ結晶磁性材料を用いて形成されており、断面形状における幅をa、高さをb、コア内径をID、コアの有効断面積をAeとしたときに、b/a=1.0~1.3、ID/√Ae=4.0~5.3としている。これにより、小型化を実現し、更に使用する銅線の量を減じながらも、十分な特性を確保することのできる磁性コアと、これを用いたコモンモードチョークコイルを提供することができる。特に当該磁性コアは、ナノ結晶磁性コアを使用しながらも小型化によって低コストを実現することができ、更にフェライトコアを使用したコモンモ―ドチョークコイルと同じ性能でありながらも、小型化することができるコモンモ―ドチョークコイルと、これに使用する磁性コアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態に係る磁性コアを示す(A)斜視図、(B)正面図、(C)C-C断面図
図2図1の磁性コアを使用し、(A)平角線、(B)丸線を捲回して形成したコモンモ―ドチョークコイルの斜視図
図3】実施例2における√Ae-ID」のグラフ
図4】実施例3の結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる磁性コアとこれを用いて形成したコモンモードチョークコイルを具体的に説明する。特に本実施の形態において、磁性コアはナノ結晶磁性材料を用いて形成している。
【0017】
図1は本実施の形態に係る磁性コア10を示す(A)正面図、(B)斜視図、(C)C-C断面図である。特にこの実施の形態に係る磁性コア10は、トロイダル形状に形成しており、その断面形状(C-C断面形状)はほぼ正方形に形成している。かかる磁性コア10における厚さをa、円環形状の径方向を高さbとしたときに、厚さaと高さbの比(b/a)は、1.0~1.3とすることができる。
【0018】
また、当該磁性コアを構成するナノ結晶磁性材料は、ナノクリスタル、超微結晶合金、超微結晶軟磁性合金などとも呼ばれ、アモルファス(非晶質)合金中にナノサイズの結晶を有する軟磁性材料として提供されている。
【0019】
かかるナノ結晶磁性コア10には、銅線を巻線することにより、図2に示す様にコモンモードチョークコイル20とすることができる。かかる銅線は各種断面形状の銅線を使用することができるが、望ましくは断面が矩形に形成されている平角銅線を使用する。平角銅線を使用する事により銅線の占積率を上げることができ、コモンモードチョークコイル20の小型化・大電流化を実現することができる為である。
【0020】
また、当該銅線は自動巻線機を使用してエッジワイズにより巻線することが望ましい。
エッジワイズによって巻線することにより、銅線断面の短辺側がコアに接するので、巻くことのできる銅線の本数、すなわちコイルの巻数を増やすことができる。さらに巻線機を用いた自動巻きとすることにより優れた高周波特性を有し、かつ丸線をレイヤー上に積み上げながら巻く構造と異なりレイヤーショート不良の発生を抑制し高品質を実現することができる為である。
【0021】
〔実施例1〕
この実施例では、コモンモードチョークコイルとして実用的な磁気飽和特性に着目した。即ち、ナノ結晶磁性コアは、コアの有効断面積Aeが1/5程度でもフェライトコアと同等の性能が得られることを確認する為に実験を行った。
【0022】
B=μH、H=NI/Le、AL=μAe/Leの各式を L=AL・N2 に代入し式を整理すると以下の式が得られる。Nはコイルの巻数(ターン数)、Leはコアの磁路長である。
I=B・Ae・N/L
磁気飽和時の磁束密度Bm、そのときの電流をImとすると、上記式は以下のようになる。
Im=Bm・Ae・N/Lleak
ここでLleakは磁気飽和時のインダクタンス、即ち漏れインダクタンスである。
この式を変形して Ae=Im・Lleak/Bm・Nより、必要なコア断面積Aeを算出することができ、同じ磁気飽和電流Imを得ようとするとき、飽和磁束密度Bmが高いほどコアの有効断面積Aeは小さくできることが確認できる。
【0023】
そこでフェライトコア(透磁率:μ7000、外径:47mm、内径27mm、厚さ:15mm)とナノ結晶磁性コア(透磁率:μ36000、外径:40mm、内径28mm、厚さ:6mm)の飽和磁束密度Bmを実測したところ、以下のような結果が得られた。なお、飽和磁束密度Bmは100℃での値である。その結果を以下の表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
上記表1の結果から、同等の磁気飽和電流Imを得ようとしたとき、コイルの巻数Nと磁気飽和時のインダクタンスLleakが同じでならば、ナノ結晶磁性コアは、フェライトコアの約1/5の断面積で済むことになる。コアの直径が同じならば断面積が1/5となることで、コアの体積も1/5となり、コアのコストを下げることができ、フェライトコアとナノ結晶磁性コアの価格差を狭める、ないしは同等とすることができる。即ち、この例で考えれば、ナノ結晶磁性コアの単位体積当たりの単価が、フェライトコアの単位体積当たりの単価の約5倍であっても、その使用体積を削減することができる結果、同等の価格にすることができる。
〔実施例2〕
【0026】
この実施例では、フェライトコアとの比較において、コア体積を小さくでき、銅線使用量を少なくすることができ、そして飽和電流を流すことができるコアの形状について検討を行った。
以下において、Sは幾何学的な断面積(=縦a×横b)、Aeは実効断面積(=S×占積率δ)であり、フェライトコアの占積率δは0.97、ナノクリスタルコアの占積率δは0.79である。
そしてコア内径IDを求めるために、コア断面積Aeと内径窓面積Sidの関係について検討を行なった。
【0027】
コア内径の窓面積(空間部面積) Sid=π(ID/2)2 をN本の銅線が通過するとき、銅線1本あたりの断面積sは以下の通りである。
s=n・Sid/N = π・n・(ID/2)2/N
ただし、nは、コア内径の窓面積Sidの円を断面積sの円の銅線で埋めた時の面積充填率(巻数N=7以上の範囲でn≒0.75)である。
【0028】
銅線の許容電流密度J(一般的にはJ=10A/mm2とされる)を用いれば、1本の銅線に流すことのできる電流の上限Iは、以下の式で定めることができる。
I = J・s = π・J・n・(ID/2) 2/N
【0029】
一方、磁気飽和電流Imは上述したように Im=Bm・Ae・N/Lleak で与えられる。この磁気飽和電流を流すためには「Im≦I」である必要があるので、下式の関係を満たす必要がある。
Bm・Ae・N/Lleak ≦ πJn(ID/2) 2/N
{4・Bm・N2/(n・π・J・Lleak)}・Ae ≦ ID2
k√Ae ≦ ID
ただし、k = √{4・Bm・N2/(n・π・J・Lleak)}・・・・・・(式1)
【0030】
この式は飽和電流の観点からコア断面積Aeとコア内径IDの関係を示すもので、コア断面積Aeが大きいほど、磁気飽和電流Imが大きくなるため、その磁気飽和電流Imを流せるだけの銅線を巻くためコア内径IDも大きくなることを示している。
【0031】
そして「k√Ae = ID」であれば、磁気飽和電流Imをちょうど流せることを示している。仮に横軸√Ae、縦軸IDのグラフの傾きkが小さく、「k√Ae < ID」であれば、磁気飽和電流Imを流す余裕があることになるが、飽和電流以上の電流を流してもコアの特性は飽和しているので無駄になってしまう。仮に当該傾きkが大きく、「k√Ae > ID」であれば、コアが流すできる電流を流しきれないことになる。このため当該傾きkにはある程度の上限・下限が存在することになる。
そこで、当該傾きkの適切な範囲を確認するため、実際のコモンモ―ドチョークコイルを用いて実測値を元に計算した。
なお以下の表1及び2に示す各サンプルの名称は、「コア種類-巻数-銅線径(例:240→φ2.4)」を意味しており、各サンプルで使用している磁性コアは以下の通りである。
【0032】
〔ナノ結晶磁性コア〕
NCS40-12-240 :磁性コア(比透磁率:μ36000、外径:40mm、内径28mm、厚さ:6mm)
NCS40-19-150 :磁性コア(比透磁率:μ36000、外径:40mm、内径28mm、厚さ:6mm)
NCS32-07-200 :磁性コア(比透磁率:μ36000、外径:32mm、内径21mm、厚さ:5.5mm)
NCS32-13-150 :磁性コア(比透磁率:μ36000、外径:32mm、内径21mm、厚さ:5.5mm)
NC29-10-180 :磁性コア(比透磁率:μ36000、外径:29mm、内径20mm、厚さ:4.5mm)
Q26-10-150 :磁性コア(比透磁率:μ36000、外径:26mm、内径18mm、厚さ:4mm)
【0033】
〔フェライトコア〕
ADR47M-12-240:磁性コア(透磁率:μ7000、外径:47mm、内径27mm、厚さ:15mm)
ADR-47-12-240:磁性コア(透磁率:μ5500、外径:47mm、内径27mm、厚さ:15mm)
ADR38M-07-200:磁性コア(透磁率:μ7000、外径:38.1mm、内径19mm、厚さ:12.7mm)
ADR31M-11-180:磁性コア(透磁率:μ7000、外径:31mm、内径20mm、厚さ:15mm)
ADR25M-09-150:磁性コア(透磁率:μ7000、外径:25mm、内径15mm、厚さ:12mm)
【0034】
【表2】
表2中、Bm:飽和磁束密度(T)、N:銅線の巻数、J:銅線の最大電流密度(A/mm2)、Lleak:漏れインダクタンス(μH)、n:銅線の占積率、k:前記式1から得られるkの値、Ae:コア断面積(mm2)、ID:コア内径(mm)
【0035】
【表3】
表3中、Bm:飽和磁束密度(T)、N:銅線の巻数、J:銅線の最大電流密度(A/mm2)、Lleak:漏れインダクタンス(μH)、n:銅線の占積率、k:前記式1から得られるkの値、Ae:コア断面積(mm2)、ID:コア内径(mm)
【0036】
上記の表2及び表3に示す様に、何れの磁性コアも「k√Ae ≦ ID」の要件を満たしている。そして他のコアも含めて「ID-√Ae」のグラフを描き、前記傾きID/√Aeを求めてみると、フェライトコアの場合は、前記傾きID/√Ae=2.2、ナノ磁性コア(NCシリーズ)の場合は傾きID/√Ae=4.0~5.3であった(図3参照)。
【0037】
〔実施例3〕
次に、コアサイズやインダクタンスとコスト(銅線使用量)について検討した。その結果、コア断面の縦横比率が 1.0~1.3 の付近で銅線コストが最小になることを見出した。
【0038】
インダクタンスを高く取れるコアほど、おなじインダクタンスLを得るのに必要な巻数を減らすことができ、その結果、巻線となる銅線の使用量を減らすことができる。かかる必要な巻数Nは、コアのインダクション係数をALとして、下式で表すことができる。
L=AL・N2 = (μAe/Le)・N2
【0039】
また、コアの断面積Sとコア断面の縦横比b/aから、コア断面を一周する銅線の長さLsは下式で求めることができる。
Ls = 2(a+b)
そして、磁性コアに対する必要な銅線長Lは「L=Ls・N」によって求める事ができる。
実際に、この式を立てて微分して最小ポイントを求める、また数値計算によって必要な銅線長Lが最小となるコア断面の縦横比b/aを求めてみる。
【0040】
即ち、前記「L=Ls・N」の式から「断面積Sと内径IDを先に決めた場合、r=b/a =1.3のとき銅線長最小」という結果が得られ、また同じ式から「断面積Sと磁路長Leを先に決めた場合には、r=b/a =1.0のとき銅線長最小」が得られる。さらに自動巻き線を考慮した時にはr=1.0(正方形)が望ましいことから、r=b/a=1~1.3の範囲であった。その結果を図4に示す。
なお、上記式は銅線をケースに沿って巻線する場合であり、自動巻きで円形に巻く場合は、「Ls = √(a2+b2)・π」となるが、銅線長が最小となる縦横比b/aは、r=1.2のときである。
【0041】
以上の結果から、コア体積を小さくでき、銅線使用量を少なくすることができ、そして飽和電流を流すことができるコアの形状を検討すると以下の通りである。
コアの断面積Aeは同等の飽和特性を有するフェライトの1/5である。
ID/√Ae = 4.0~5.3。
断面の縦横比 r=b/a=1.0~1.3、S=abより、a=√(S/r)、b=√(Sr)、
よって、コア体積を小さくでき、銅線使用量を少なくすることができ、そしてフェライトコアと同じ飽和電流を流すことができるコアの形状は、コアの断面積が同等性能のフェライトコアの1/5、b/a=1.0~1.3、ID/√Ae=4.0~5.3を満たす必要があることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のナノ結晶磁性コアは、断面形状における幅をa、高さをb、コア内径をID、コアの有効断面積をAeとしたときに、b/a=1.0~1.3、ID/√Ae=4.0~5.3とすることで、コア体積を小さくでき、銅線使用量を少なくすることができ、そして飽和電流を流すことができるコアの形状の磁性コアとすることができる。
【0043】
その結果、コモンモ―ドチョークコイル用の磁性コアとしてナノ結晶磁性コアを使用しながらも低コストであり、更にフェライトコアを使用したコモンモ―ドチョークコイルと同じ性能でありながらも、小型化することができるコモンモ―ドチョークコイルと、これに使用する磁性コアを提供することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 磁性コア
20 コモンモ―ドチョークコイル
【要約】
【課題】 小型化を実現し、更に使用する銅線の量を減じながらも、十分な特性を確保することのできる磁性コアと、これを用いたトロイダルコイルを提供する。
【解決手段】 コモンモードチョークコイルに使用される磁性コアであって、ナノ結晶磁性材料を用いて形成されており、断面形状における幅をa、高さをb、コア内径をID、コアの有効断面積をAeとしたときに、b/a=1.0~1.3、ID/√Ae=4.0~5.3である、磁性コアとする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4