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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】机
(51)【国際特許分類】
   A47B 17/00 20060101AFI20220803BHJP
   A47B 96/02 20060101ALI20220803BHJP
   A47B 13/00 20060101ALN20220803BHJP
【FI】
A47B17/00 Z
A47B96/02 B
A47B17/00 C
A47B13/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017200543
(22)【出願日】2017-10-16
(65)【公開番号】P2019072187
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 有希
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊也
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-085938(JP,A)
【文献】登録実用新案第3144050(JP,U)
【文献】実開平04-071527(JP,U)
【文献】特開2005-323665(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0284075(US,A1)
【文献】特開2013-022137(JP,A)
【文献】特開2000-189264(JP,A)
【文献】特開平07-111916(JP,A)
【文献】特開2008-289554(JP,A)
【文献】登録実用新案第3181758(JP,U)
【文献】特開2006-087709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 17/00
A47B 96/00、96/02
A47B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の脚装置で支持された天板と、前記天板の下方に配置された主棚板とを有しており、前記天板と主棚板との間の空間を、人が物品を手前から出し入れできる前面開放式の収納空間と成している構成であって、
前記主棚板の後部でかつ前記主棚板の後端よりも手前の部位に、前記主棚板から起立した左右横長の仕切り板を設けることにより、前記仕切り板の後ろの部位を補助収納空間と成して、
前記主棚板の後端又は天板の下面に、前記補助収納空間に載置した物品が後ろに落ちることを阻止するストッパーが配置されており、
かつ、前記天板の後端は前記主棚板の後端よりも後ろに位置している、
机。
【請求項2】
天板とこれを支持する脚装置としての袖キャビネットとを備えた机であって、
前記袖キャビネットは、左右側板と底板と背面板とを有する角形の形態であり、前記背面板を前記左右側板の後端及び底板の後端よりも手前に位置させることにより、前記袖キャビネットの後部にサイド補助収納部を設け、
前記袖キャビネットにおける左右側板の後端に、前記サイド補助収納部に収納した物品が後ろに落ちることを阻止するストッパーを設けており、
かつ、前記天板の後端は前記左右側板の後端よりも後ろに位置している、
机。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、机に関するものである。
【背景技術】
【0002】
机には様々なタイプがあるが、その一つとして、特許文献1には、天板の左側部を袖キャビネットで支持してなる机において、天板のうち袖キャビネットで支持されていない部分の下方に棚板を配置して、天板と棚板との間の空間を手前に開口したオープン式の収納部と成したものが開示されている。特許文献1において、棚板の後端には、載置した物品が後ろに落ちないように背面板を設けている。
【0003】
他方、机の後部に配線用等の補助収納部を設けることも広く行われており、その例として特許文献2には、後ろ幕板の前面に配線受けを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】意匠登録第584848号公報
【文献】特許第4759035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
机においては、天板の下方に収納部を設ける場合、特許文献1のようなオープン式の他に引出し方式があるが、オープン式はいわば簡易構造であり、引出し式に比べてコストも抑制することができる利点や、物品の出し入れを迅速に行うことができる利点、或いは、物品の収納容積を引出し方式に比べて大きくできる利点等がある。
【0006】
他方、机上には、パソコンや灯具などの電子機器・電器製品を載置することが多いため、ケーブルやコンセント、ハブ、モデムなどの関連物品の収納場所が問題になる。しかるに、特許文献2のように後ろ幕板に配線受けを設けた構造では、後ろ幕板が必須の部材になるため、構造が複雑化してコストが大幅に嵩んでしまう。
【0007】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、構造の簡易性は保持しつつ天板の下方の空間を有効利用して、物品をその性質に応じて適切に収納できるようにした机を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その典型を各請求項で特定している。このうち請求項1の机は、
「左右の脚装置で支持された天板と、前記天板の下方に配置された主棚板とを有しており、前記天板と主棚板との間の空間を、人が物品を手前から出し入れできる前面開放式の収納空間と成している構成であって、
前記主棚板の後部でかつ前記主棚板の後端よりも手前の部位に、前記主棚板から起立した左右横長の仕切り板を設けることにより、前記仕切り板の後ろの部位を補助収納空間と成して、
前記主棚板の後端又は天板の下面に、前記補助収納空間に載置した物品が後ろに落ちることを阻止するストッパーが配置されており、
かつ、前記天板の後端は前記主棚板の後端よりも後ろに位置している
というものである。
【0010】
請求項の発明は、天板とこれを支持する脚装置として袖キャビネットとを備えた机に関するものであり、
「前記袖キャビネットは、左右側板と底板と背面板とを有する角形の形態であり、前記背面板を前記左右側板の後端及び底板の後端よりも手前に位置させることにより、前記袖キャビネットの後部にサイド補助収納部を設け、
前記袖キャビネットにおける左右側板の後端に、前記サイド補助収納部に収納した物品が後ろに落ちることを阻止するストッパーを設けており、
かつ、前記天板の後端は前記左右側板の後端よりも後ろに位置している」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、ケーブルの余長部分やコンセント、ハブ、モデムなどの機器類、或いは、保管義務がある過去の伝票類、大切に保管しておきたい物など、頻繁に取り出す必要がないレアアクセス物品は、補助収納空間に収納することにより、邪魔にならない状態に整理して保管することができる。そして、主収納空間と補助収納空間とは同一高さの主棚板を共用しているため、構造が複雑化することもない。
【0013】
さて、特許文献1では、主棚板の後端は天板の後端箇所に位置しており、天板の下方の収納空間は天板の後端まで延びている。しかるに、机はその機能からある程度の奥行きがあるため、特許文献1のように収納空間が天板の後端まで延びていると、収納空間の奥行きが大き過ぎてしまって、物品の整理機能が損なわれたり、奥に行き過ぎた物品の取り出しが面倒になったりするなど、却って使い勝手が悪くなることが懸念される。
【0014】
これに対して本願請求項1の構成では、主収納空間と補助収納空間とが前後に仕切られているため、主収納空間の奥行きが過度に大きくなることを防止しつつ、補助収納空間を形成することができる。すなわち、主収納空間としては適度の奥行きを確保しつ、その後ろの空間を補助収納空間として有効利用できるのである。従って、請求項では、天板の下方の空間を有効利用して、主収納空間での物品の整理機能や物品取り出しの容易性を確保しつつ、補助収納空間を形成することができる。
【0015】
また、請求項の発明では、補助収納空間に収納した物品の脱落がストッパーで阻止されるため安心であるが、ストッパーは着脱可能であるため、例えば、補助収納空間の高さと同じ程度の物品であっても容易に出し入れすることができる。従って、使用価値が高い。
【0016】
請求項の発明も請求項1と同様であり、頻繁に取り出す必要がないレアアクセス物品は、袖キャビネットの後部に形成されたサイド補助収納部に整理して収容することができる。そして、サイド補助収納部は、袖キャビネットの底板と側板を利用して形成されているため、構造が複雑化することもない。
【0017】
また、袖キャビネットはある程度の左右幅と高さがあるため、サイド補助収納部も相当の高さと横幅がある。従って、ファイル類や書籍のような広い面積の物品も収容可能である。この点は、請求項の大きな利点の一つである。請求項1はストッパーを備えているため、物品(或いは物品群)を安定した状態に収納できる。
本願請求項1における主棚板の後端及び請求項2における袖キャビネットの背面は、天板の背面よりも手前に位置している。このため、机を建物の壁に当てて設置した場合でも、主棚板及び袖キャビネットの背面と壁との間に、人が手を横から挿入できる程度の間隔を空けることができる。従って、机を手前にずらさなくても、物品をサイド補助収納部に出し入れすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態を示す図で、(A)は手前から見た全体斜視図、(B)は袖キャビネットの扉を開いた状態での部分斜視図である。
図2】(A)は後ろから見た一部破断全体斜視図、(B)は(A)のB-B視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1).基本構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は木製の机に適用しており、天板1は左右横長の長方形に形成されている。そして、天板1の左側端部は角形の前後棒脚2で支持されて、天板1の右側の部位は袖キャビネット3で支持されている。すなわち、袖キャビネット3が脚装置として機能している。前後の棒脚2は、板材からなる上部横桟4と下部横桟5とで連結されている。
【0020】
袖キャビネット3は、左右の側板6と底板7と背面板8とを備えており、側板6と背面板8とは天板1にダボ等で固定されている。左右側板の間の空間が収納部になっているが、上部には引出し9が前後動自在に配置されており、引出し9の下方には、袖棚板10が高さ変更可能に(又は固定的に)配置されている。図では袖棚板10は2枚表示しているが、1枚又は3枚以上配置してもよい。或いは、袖棚板10を備えていない1ボックスタイプとすることも可能である。
【0021】
従って、袖キャビネット3のうち引出し9の下方の空間は、前向きに開口したオープン式収納空間になっており、右側板6に、オープン式収納空間を覆う水平回動式の扉11が、蝶番12によって取り付けられている。
【0022】
袖キャビネット3の底板7には、板材より成る前接地足13と後ろ接地足14とが固定されている。前接地足13は底板7の左右中間部に位置しており、後ろ接地足14は底板7の左右両端部に位置している。接地足13,14は平面視で左右横長の長方形であり、左右の後ろ接地足14は左右長手の第1ビーム15で連結されて、前接地足13と第1ビーム15とが前後長手の第2ビーム16で連結されている。両ビーム15,16は、板材を使用している。なお、袖キャビネット3の下面にアジャスタを取付けてもよい。
【0023】
(2).主収納空間・補助収納空間・サイド補助収納部
棒脚2と袖キャビネット3との間の空間の上部に、天板1の下方に収納空間を形成するための主棚板18が配置されている。主棚板18は、棒脚2と袖キャビネット3の左側板6とに連結されている。また、天板1と主棚板18との間の空間のうち、主棚板18の後端よりもある程度手前に位置した部位に、左右長手の仕切り板19が配置されており、仕切り板19は、天板1と主棚板18とに固定されている。
【0024】
従って、天板1と主棚板18との間の収納空間は、仕切り板19の手前に位置した主収納空間20と、仕切り板19の後ろに位置した補助収納空間21とに区分されており、これら収納空間20,21は、棒脚2を繋ぐ上部横桟4と袖キャビネット3の左側板6とによって左右が塞がれている。
【0025】
主棚板18の後端上面には、左右横長のストッパー22を配置している。ストッパー22は、下向きに突出した複数本のピン(ダボ)23を有している一方、主棚板18の後端にはピン23が嵌まる係合穴(図示せず)が空いており、従って、ストッパー22は主棚板18に着脱自在である。なお、ストッパー22は天板1に取付けてもよいし、棒脚2と袖キャビネット3とに装架してもよい。
【0026】
袖キャビネット3を構成する背面板8を、側板6及び底板7の後端よりもある程度手前に配置することにより、袖キャビネット3の後部にサイド補助収納部24を形成している。左右側板6の後端間には、上下のストッパー25,26を装架している。上ストッパー25は、上下中間高さ位置よりも下に配置している。下ストッパー26は底板7に当接しているが、底板7から少し浮かした状態に配置してもよい。
【0027】
なお、下ストッパー26は底板7に固定することも可能である。サイド補助収納部24のストッパー25,26は固定式になっているが、少なくとも上ストッパー25を着脱方式にしてもよい。また、固定式にしても着脱式にしても、ストッパー25,26は線材製や板金製等とすることも可能である。
【0028】
袖キャビネット3の後端面と主棚板18の後端面とは同一面に揃っているが、両者の後端の位置を異ならせてもよい。また、袖キャビネット3の後端面及び主棚板18の後端面とも天板1の後端面よりも手前に位置している。
【0029】
(3).まとめ
以上の構成において、天板1と主棚板18との間の空間は主収納空間20と補助収納空間21とに前後に区分されているため、コンセントやコネクタ類、証書類など、通常は触れることがないレアアクセス物品は、補助収納空間21に収納したらよい。従って、レアアクセス物品を邪魔にならない状態で整理して収納できる。
【0030】
そして、主収納空間20と補助収納空間21とは同じ高さの主棚板18を共用しているため、構造は簡単でコストを抑制できる。なお、主棚板18は1枚板である必要はないのであり、複数枚の板材を突き合わせて1枚板の状態に形成してもよい。
【0031】
主収納空間20の奥行きは任意に設定できるが、奥行きがあり過ぎると、例えば書類が混ざり合ったり、先に載置した物品が後から入れた物品で押されて位置が不明確になったりするなど、却って使い勝手が悪くなることがある。これに対して本実施形態では、主収納空間20の奥行きは、例えばA4用ファイルが縦長の姿勢で余裕を持って収納できる程度の奥行きとすることにより、物品の出し入れの容易性を確保し、物品を整理して収容できるように配慮している。
【0032】
そして、主収納空間20と補助収納空間21とを含めた収納空間は、天板1の後端よりも手前に位置している。従って、補助収納空間21を設けたことによって主収納空間20の容積が低下するようなことはない。別の視点でみると、主収納空間20の後ろのデッドスペースが補助収納空間21として有効利用されている。
【0033】
袖キャビネット3に設けたサイド補助収納部24の機能も補助収納空間21と同様であるが、サイド補助収納部24は背面視での高さが大きいため、ファイル類やケース類のように表面積が大きい物品も収納できる利点がある。
【0034】
袖キャビネット3の背面は、天板1の背面よりもかなり手前に位置している。このため、机を建物の壁に当てて設置した場合でも、袖キャビネット3の背面と壁との間に、人が手を横から挿入できる程度の間隔を空けることができる。従って、机を手前にずらさなくても、物品をサイド補助収納部24に出し入れすることが可能である。
【0035】
本願発明は、他にも様々に具体化できる。例えば、実施形態では天板を支持する脚装置としては、板状の脚やL形脚など様々な形態のものを採用できる。天板の左右を袖キャビネットで支持することも可能である。袖キャビネットは、実施形態から扉を外した状態のものや、扉及び引出しを備えていないフルオープン式であってもよいし、或いは、引出しのみを装架したタイプであってもよい。なお、キャスタ付き等の移動式の袖キャビネット(ワゴン)の背面にサイド補助収納部を形成することも可能である。
【0036】
請求項2では、天板と主棚板との間の空間を前後長手の仕切り板で区画することにより、机の左側部又は右側部若しくは左右両側部に、横向きに開口した補助収納空間を形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明は、机に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 天板
2 脚装置としての棒脚
3 脚装置として機能する袖キャビネット
6 袖キャビネットの側板
7 袖キャビネットの底板
8 袖キャビネットの背面板
18 主棚板
19 仕切り板
20 主収納空間
21 補助収納空間
22 ストッパー
24 サイド補助収納部
25,26 ストッパー
図1
図2