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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/3225 20160101AFI20220803BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20220803BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220803BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
G09G3/3225
G09G3/20 611H
G09G3/20 642A
G09G3/20 624B
G09G3/20 622K
G09G3/20 612U
H01L27/32
H05B33/14 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017226859
(22)【出願日】2017-11-27
(65)【公開番号】P2019095692
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富谷 央
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-026256(JP,A)
【文献】特開2006-349986(JP,A)
【文献】特開2006-301159(JP,A)
【文献】特開2016-057359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
H01L 27/32
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が第1方向及び前記第1方向とは異なる第2方向に並ぶ表示部と、
前記画素に第1電位及び当該第1電位よりも高い第2電位を供給する電源回路と、
前記表示部の動作を制御する制御部と、
を有し、
前記画素は、電流を流すことにより発光する発光素子と、Nch型の駆動トランジスタと、保持容量と、を有し、
前記発光素子の一方の端子は、前記駆動トランジスタのソースに接続され、前記発光素子の他方の端子に前記第1電位が供給され、
前記駆動トランジスタのドレインに前記第2電位が供給され、
前記保持容量は、前記駆動トランジスタのソースとゲートとの間に接続され、
前記制御部は、
前記保持容量に保持された電圧をリセットするリセット期間と、
前記リセット期間の後に、前記駆動トランジスタのゲートに当該駆動トランジスタのゲート-ソース間電圧に対応する初期化電位を書き込むオフセットキャンセル期間と、
前記オフセットキャンセル期間の後に、前記駆動トランジスタのゲートに映像信号に基づく映像書き込み電位を書き込む映像信号セット期間と、
前記映像信号セット期間の後に、前記発光素子の発光と非発光とを繰り返す発光可能期間と、
を有し、
前記電源回路から相対的に遠い位置に設けられる第1の画素の駆動トランジスタのドレイン-ソース間電圧は、前記電源回路から相対的に近い位置に設けられる第2の画素の駆動トランジスタのドレイン-ソース間電圧よりも小さく、
前記オフセットキャンセル期間において、前記第1の画素の駆動トランジスタに書き込まれる第1の初期化電位は、前記第2の画素の駆動トランジスタに書き込まれる第2の初期化電位よりも小さい
表示装置。
【請求項2】
前記表示部は、
前記第2方向に並ぶ画素に少なくとも前記映像書き込み電位及び前記初期化電位のいずれか一方を供給する複数の信号線が前記第1方向に並び配列され、
前記第1電位及び前記第2電位は、前記表示部の前記第1方向の両端部から供給され、
前記第1方向に並ぶ画素のうち、前記第1方向の端部から遠い位置に設けられる画素に供給される初期化電位は、前記第1方向の端部に近い位置に設けられる画素に供給される初期化電位よりも小さい
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1電位及び前記第2電位は、前記表示部の前記第2方向の一方の端部から他方の端部に向けて供給され、
前記第2方向に並ぶ画素のうち、前記第2方向の一方の端部から遠い位置に設けられる画素に供給される初期化電位は、前記第2方向の一方の端部に近い位置に設けられる画素に供給される初期化電位よりも小さい
請求項2に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示パネルや有機エレクトロルミネッセンス発光を用いた有機ELディスプレイパネル(OLED:Organic Electro-Luminescence Display)を用いた表示装置の需要が高くなっている。
【0003】
OLEDの画素を構成する有機EL素子は容量性素子であり、OLEDを用いた表示装置では、次フレームの画像を表示するまで前フレームの表示データに基づく輝度を保持するため、動画を表示する場合に動画ぼやけ等が発生し表示品質が低下する場合がある。このため、例えば、次フレームの表示データを書き込む前に黒画面を挿入し、前フレームにおいて書き込まれた電位をリセットするようにしている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-57359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、OLEDの画素に供給する電源の電位が変動すると、表示画面に輝度ムラを生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、輝度ムラを抑制することができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る表示装置は、複数の画素が第1方向及び前記第1方向とは異なる第2方向に並ぶ表示部と、制御部と、を有し、前記画素は、電流を流すことにより発光する発光素子と、駆動トランジスタと、保持容量と、を有し、前記発光素子の一方の端子は、前記駆動トランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方に接続され、前記発光素子の他方の端子には、第1電位が供給され、前記駆動トランジスタのソースまたはドレインのいずれか他方には、前記第1電位よりも高い第2電位が供給され、前記保持容量は、前記駆動トランジスタのソースとゲートとの間に接続され、前記制御部は、前記駆動トランジスタのゲートに初期化電位を書き込んだ後、前記駆動トランジスタのゲートに映像信号に基づく映像書き込み電位の書き込みを行い、前記保持容量には、前記映像書き込み電位と前記初期化電位との差分に比例した電圧と前記駆動トランジスタのしきい値電圧とを加算した電圧が設定され、前記発光素子の発光期間において、前記前記映像書き込み電位と前記初期化電位との差分に比例した電圧に応じた電流が前記発光素子に流れ、前記画素毎に、前記初期化電位を設定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1に係る表示装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、実施形態1に係る表示装置の表示部及び制御部の概略構成を示す模式的な回路図である。
図3図3は、図2に示す表示部に配列される画素の概略の等価回路図の一例である。
図4図4は、実施形態1に係る表示装置の駆動方法を説明するための概略タイミングチャートである。
図5図5は、実施形態1の比較例に係る表示装置の概略構成を示す模式図である。
図6図6は、図5に示す比較例において単色ラスター表示を行った場合に、表示部の画面上に輝度ムラが生じた例を示す図である。
図7図7は、実施形態1に係る表示装置の初期化信号発生回路によって生成される初期化電圧信号の一例を示す図である。
図8図8は、実施形態1に係る表示装置の初期化信号発生回路の概略ブロック構成の一例を示す図である。
図9図9は、表示部における画素配置例を示す図である。
図10図10は、画素ごとの補正係数値を含む補正係数値情報の一例を示す図である。
図11図11は、実施形態2に係る表示装置の表示部及び制御部の概略構成を示す模式的な回路図である。
図12図12は、図11に示す表示部に配列される画素の概略の等価回路図の一例である。
図13図13は、実施形態2に係る表示装置の駆動方法を説明するための概略タイミングチャートである。
図14図14は、実施形態2に係る表示装置の初期化信号発生回路の概略ブロック構成の一例を示す図である。
図15図15は、実施形態2に係る表示装置の初期化信号発生回路によって生成される初期化電圧信号の一例を示す図である。
図16図16は、表示部における画素行配置例を示す図である。
図17図17は、画素行ごとの補正係数値を含む補正係数値情報の一例を示す図である。
図18図18は、実施形態3に係る表示装置の表示部及び制御部の概略構成を示す模式的な回路図である。
図19図19は、実施形態3に係る表示装置の初期化信号発生回路の概略ブロック構成の一例を示す図である。
図20図20は、表示部における画素群配置例を示す図である。
図21図21は、画素群ごとの補正係数値を含む補正係数値情報の一例を示す図である。
図22図22は、実施形態5に係る表示装置の初期化信号発生回路の概略ブロック構成の一例を示す図である。
図23図23は、実施形態5に係る初期化信号補正処理手順の一例を示すフローチャートである。
図24図24は、実施形態6に係る表示装置の初期化信号発生回路の概略ブロック構成の一例を示す図である。
図25図25は、複数の輝度範囲ごとの輝度補正係数値を含む輝度補正係数値情報の一例を示す図である。
図26図26は、実施形態6に係る初期化信号補正処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
(実施形態1)
図1は、実施形態に係る表示装置の概略構成を示す模式図である。表示装置30は、回路基板32、表示基板34及び接続基板36を有する。本実施形態において、表示装置30は、例えば有機EL素子(有機発光ダイオード)を発光素子として備えたアクティブマトリクス方式のOLED(Organic Electro-Luminescence Display)である。
【0011】
表示基板34には、表示画像の画素に対応する有機EL素子及び画素回路が配列された表示部38が設けられている。表示部38の動作を制御する制御部として、画素回路に各種信号を供給する駆動回路、及び駆動回路に供給するタイミング信号等を生成するコントローラが設けられる。制御部は、例えば、回路基板32又は表示基板34上に配置される。
【0012】
例えば、表示基板34上には表示部38の走査信号線や映像信号線に信号を供給する駆動回路40を配置することができる。駆動回路40は、その主要部を一又は複数の半導体チップに集積し、当該チップを表示基板34上に搭載される。また、駆動回路40として、低温ポリシリコンからなる半導体層を用いたTFT(Thin Film Transistor)等で構成された回路を表示基板34上に設けることもできる。表示基板34は、例えばガラス基板や、樹脂フィルムなどを用いたフレキシブルな材料で構成することができる。
【0013】
回路基板32には、制御部の他、例えば、各種の基準電位を発生する電源回路、映像信号を処理する信号処理回路及びフレームメモリなどを配置することができる。回路基板32は、例えば、ガラスエポキシ基板等のリジッド基板によって構成される。
【0014】
接続基板36は、回路基板32と表示基板34とを接続する。接続基板36は、フレキシブル配線基板で構成することができる。なお、駆動回路40の一部又は全部を、接続基板36上に配置することもできる。
【0015】
図2は、実施形態1に係る表示装置の表示部及び制御部の概略構成を示す模式的な回路図である。表示部38には、画素50が図1に示すX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)に並び、マトリクス状に配置される。また、図2では、制御部20として、走査線駆動回路52、映像線駆動回路54、コントローラ56、及び初期化信号発生回路81を例示し、電源回路として、基準電位VSSを出力する基準電源PVSSである電源回路58、駆動電位VDDを出力する駆動電源PVDDである電源回路60、及びリセット電位VRSを出力するリセット電源PVRSである電源回路62を例示している。
【0016】
走査線駆動回路52は、表示部38の画素50のX方向(第1方向)の並び(以下、「画素行」とも称する)ごとに制御信号を出力する。具体的に、本実施形態では、表示部38は、各画素50の画素回路に2つのスイッチ(点灯スイッチ94及び書き込みスイッチ96)を備え、各画素行にリセットスイッチ64を備える。これに対応して、各画素行にそれぞれ3本の制御信号線(点灯制御線66、書き込み制御線68及びリセット制御線70)が設けられ、走査線駆動回路52は、各画素行の制御線66,68,70に上述した各スイッチのオン/オフを切り替える制御信号を供給する。
【0017】
走査線駆動回路52は、シフトレジスタ(不図示)を備え、表示部38にて動作対象となる各画素行をY方向(第2方向)(例えば、図1に示す画面上側から下側への向き)に順番に選択し、当該選択した画素行に対する制御信号を生成し、制御線66,68,70へ出力する。
【0018】
映像線駆動回路54は、選択された画素行の各画素50の映像信号を表すデータ(画素値)が入力され、当該データをD/A変換器でアナログ電圧に変換して画素値に応じた電圧信号を生成する。映像線駆動回路54は、当該電圧信号を画素行ごとに生成する。表示部38の画素50のY方向(第2方向)の並び(以下、「画素列」とも称する)に対応して、それぞれ映像信号線(第1信号線)72が設けられている。映像線駆動回路54は、各画素50へのデータの書き込み動作時に、選択された画素行の各画素50の画素値を表す電圧信号(映像電圧信号)VSIGを、各画素行ごとに順次出力する。
【0019】
初期化信号発生回路81は、各画素50のデータ初期化時に各画素列の映像信号線(第1信号線)72に供給する初期化電圧信号VINIのデータ値を生成し、映像線駆動回路54に出力する。この初期化信号発生回路81の構成及び動作の詳細については後述する。
【0020】
電源回路58は、上述したように基準電位VSSを生成する。基準電位VSSは、電源線74を介して各画素50に供給される。
【0021】
電源回路60は、上述したように駆動電位VDDを生成する。駆動電位VDDは、電源線76を介して各画素50に供給される。
【0022】
電源回路62は、上述したようにリセット電位VRSを生成する。リセット電位VRSは、各画素行に設けられたリセットスイッチ64及びリセット線78を介して、各画素50に供給される。
【0023】
図3は、図2に示す表示部に配列される画素の概略の等価回路図の一例である。
【0024】
各画素50は、発光素子として、有機発光ダイオード(有機EL素子)90を有する。本実施形態において、有機発光ダイオード90は、アノード電極と、カソード電極と、それらの電極の間に発光層等の有機材料層を有する。カソード電極は、表示部38の複数の画素に亘って一体形成された共通電極とすることができる。なお、有機発光ダイオード90の発光色は、例えば赤、緑、青等であっても良い。また、表示装置30は、これら赤、緑、青等の各発光色を持つ有機発光ダイオード90を備える画素50が、表示部38においてX方向(第1方向)又はY方向(第2方向)に規則的に並び、カラー表示が可能な構成であっても良い。
【0025】
有機発光ダイオード90のカソード電極は、電源線74に接続される。また、有機発光ダイオード90のアノード電極は、駆動トランジスタ92と点灯スイッチ94とを介して電源線76に接続される。
【0026】
上述したように、電源線76は、駆動電源PVDD(電源回路60)から駆動電位VDDとして所定の高電位が印加され、電源線74は、基準電源PVSS(電源回路58)から基準電位VSSとして所定の低電位が印加される。
【0027】
有機発光ダイオード90は、これら駆動電位VDDと基準電位VSSとの電位差(VDD-VSS)により順方向電流が供給され発光する。つまり、駆動電位VDDは、基準電位VSSに対し、有機発光ダイオード90を発光させる電位差を有している。有機発光ダイオード90は、等価回路として、アノード電極-カソード電極間に容量91が並列接続されて構成される。なお、容量91はアノード電極とカソード電極以外の基準電位に接続されてもよい。
【0028】
本実施形態において、駆動トランジスタ92及び点灯スイッチ94は、それぞれn型TFT(Thin Film Transistor)で構成される。駆動トランジスタ92の2つの電流端子の一方(第1端子)であるソース電極は、有機発光ダイオード90のアノード電極に接続され、他方(第2端子)であるドレイン電極は、点灯スイッチ94のソース電極に接続される。点灯スイッチ94のドレイン電極は、電源線76に接続される。
【0029】
また、駆動トランジスタ92のドレイン電極は、リセットスイッチ64を介してリセット電源PVRS(電源回路62)にも接続される。既に述べたように、本実施形態では、画素行ごとにリセット線78とリセットスイッチ64とが設けられる。各リセット線78は画素行に沿って延在され、当該画素行の駆動トランジスタ92のドレイン電極に共通に接続される。リセットスイッチ64は、例えば、画素行の端部に配置され、リセット線78とリセット電源PVRS(電源回路62)との間の継断、つまりそれらの間を接続するか遮断するかを切り替える。本実施形態において、リセットスイッチ64は、駆動トランジスタ92及び点灯スイッチ94と同じくn型TFTで構成される。
【0030】
駆動トランジスタ92の制御端子であるゲート電極は、書き込みスイッチ96を介して映像信号線(第1信号線)72に接続され、駆動トランジスタ92のゲート電極とソース電極との間には、保持容量98が接続される。本実施形態において、書き込みスイッチ96は、駆動トランジスタ92、点灯スイッチ94、及びリセットスイッチ64と同じくn型TFTで構成される。
【0031】
なお、本実施形態では、駆動トランジスタ92、点灯スイッチ94、リセットスイッチ64、及び書き込みスイッチ96がn型TFTで構成される回路例を示したが、これに限らない。例えば、駆動トランジスタ92、点灯スイッチ94、リセットスイッチ64、及び書き込みスイッチ96は、p型TFTで構成された回路であっても良い。また、p型TFTとn型TFTを組み合わせた回路構成としてもよい。以下では、駆動トランジスタ92、点灯スイッチ94、リセットスイッチ64、及び書き込みスイッチ96がn型TFTである場合について例示する。
【0032】
上述したように、点灯スイッチ94、書き込みスイッチ96、リセットスイッチ64は、画素行ごとに設けられた点灯制御線66、書き込み制御線68、リセット制御線70を用いてオン/オフを制御される。ここで、点灯制御線66及び書き込み制御線68は画素行に沿って延在され、それぞれ当該画素行の点灯スイッチ94、書き込みスイッチ96のゲート電極に共通に接続される。
【0033】
図4は、実施形態1に係る表示装置の駆動方法を説明するための概略タイミングチャートである。図4では、表示部38の1つの画素行における画素値の書き込み動作及び発光動作での各種信号の変化を示している。
【0034】
図4において、横軸は時間軸を示し、図中右向きが時間の経過方向である。図4では、各種信号として、映像線駆動回路54から映像信号線(第1信号線)72に供給される映像電圧信号VPX、及び、書き込みスイッチ96、点灯スイッチ94、リセットスイッチ64それぞれに対する書き込み制御信号SG、点灯制御信号BG、及びリセット制御信号RGを示している。走査線駆動回路52は各制御信号をLレベルとHレベルとのいずれかに設定する。本実施形態では、n型TFTで構成される書き込みスイッチ96、点灯スイッチ94、リセットスイッチ64は、それぞれHレベルにてオンし、Lレベルにてオフする。
【0035】
本実施形態では、表示部38を構成する複数の画素行を、先頭行(例えば、図1中の表示部38において、最上部に位置する画素行)から順番に選択し、選択した画素行の画素に映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)を書き込み、有機発光ダイオード90を発光させる動作が1フレーム(1F)の画像ごとに繰り返される。
【0036】
本実施形態における書き込み動作は、詳細には、リセット動作、オフセットキャンセル動作、映像信号セット動作に分けられる。図4に示す例では、リセット期間PRSがリセット動作に対応する期間であり、オフセットキャンセル期間POCがオフセットキャンセル動作に対応する期間であり、映像信号セット期間PWTが映像信号セット動作に対応する期間である。
【0037】
リセット動作は、容量91及び保持容量98に保持された電圧をリセットする動作である。これにより、前フレームにて映像信号に応じて画素50に書き込まれたデータがリセットされる。
【0038】
具体的には、リセット動作では、点灯制御信号BGをLレベルとして点灯スイッチ94をオフとし、リセット制御信号RGをHレベルとしてリセットスイッチ64をオンとし、さらに各映像信号線(第1信号線)72に初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を印加した状態で、書き込み制御信号SGをHレベルとして書き込みスイッチ96をオンする。
【0039】
これにより、駆動トランジスタ92のゲート電位は、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)に対応する電位が印加され、有機発光ダイオード90のアノード電極側には、リセット電位VRSに対応する電圧が印加される。これにより、駆動トランジスタ92のソース電位は、リセット電位VRSに対応する電位にリセットされ、各画素50の保持容量98の端子間電圧は、(Vini-VRS)に応じた電圧に設定される。有機発光ダイオード90に印加される電圧は、(VRS-VSS)に応じた電圧となり、当該電圧が有機発光ダイオード90の発光しきい値電圧(発光開始電圧)以下となるように、リセット電位VRSが設定される。ちなみに、発光しきい値電圧は、有機発光ダイオード90に電流が流れ始める電圧、つまり順方向電圧降下VFである。初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)は、例えば、1Vに設定することができる。また、例えば、基準電位VSSを-1Vとしたとき、リセット電位VRSは、例えば、-3Vに設定することができる。すなわち、リセット電位VRSは、リセット動作時において有機発光ダイオード90に電流が流れないような電位に設定される。
【0040】
オフセットキャンセル動作は、駆動トランジスタ92のしきい値電圧Vthのばらつきを補償する動作である。
【0041】
具体的には、オフセットキャンセル動作では、リセット制御信号RGをLレベルとしてリセットスイッチ64をオフとし、書き込み制御信号SG及び点灯制御信号BGをHレベルとして書き込みスイッチ96及び点灯スイッチ94をオンとし、また各映像信号線(第1信号線)72には初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を印加する。
【0042】
これにより、駆動トランジスタ92のゲート電位は、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)に対応する電位に固定される。また、点灯スイッチ94がオン状態であるので、駆動電源PVDDから駆動トランジスタ92に電流が流れ込み、駆動トランジスタ92のソース電位は、リセット期間PRSに書き込まれたリセット電位VRSから上昇する。そして、ソース電位がゲート電位よりVthだけ低い電位(Vini-Vth)に達すると、駆動トランジスタ92が非導通状態となり、駆動トランジスタ92のソース電位は、(Vini-Vth)に固定され、保持容量98の端子間電圧は、駆動トランジスタ92のしきい値電圧Vthに応じた電圧に設定される。この状態を基準として、映像信号セット動作にて点灯制御信号BGをLレベルとして点灯スイッチ94をオフし、保持容量98に映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)に応じた電圧を書き込むことで、発光動作にて駆動トランジスタ92に流れる電流から画素50間における駆動トランジスタ92のしきい値電圧Vthのばらつきによる影響がキャンセルされる。
【0043】
映像信号セット動作は、映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)を画素50に書き込む動作である。
【0044】
映像信号セット期間PWTでは、オフセットキャンセル期間POCから引き続いて、リセット制御信号RGがLレベルに維持されている。また、点灯制御信号BGをLレベルとして点灯スイッチ94をオフし、駆動電源PVDD(電源回路60)から駆動トランジスタ92に流れ込む電流を阻止する。この状態で、各映像信号線(第1信号線)72に映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)を供給し、書き込み制御信号SGをHレベルとして書き込みスイッチ96をオンとすることで、容量91及び保持容量98が充電され、駆動トランジスタ92のゲート電位が初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)に応じた電位から映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)に応じた電位に上昇する。
【0045】
書き込みスイッチ96をオフして映像信号セット動作が終了すると、有機発光ダイオード90の発光が可能な発光可能期間PEM0に移行する。この発光可能期間PEM0において、点灯制御信号BGをHレベルとして点灯スイッチ94をオンすることで、有機発光ダイオード90が映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)に応じた強度で発光する(発光期間PEM)。すなわち、映像信号セット動作にて導通状態となった駆動トランジスタ92は、書き込みスイッチ96がオフしても保持容量98に保持された電圧により導通状態に保たれ、映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)に応じた駆動電流を有機発光ダイオード90に供給する。これにより、有機発光ダイオード90は、映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)に応じた輝度で発光する。
【0046】
上述した書き込み動作(リセット動作、オフセットキャンセル動作、映像信号セット動作)、及び発光動作は、表示部38を構成する画素行ごとに順次行われる。画素行は、例えば、映像信号の1水平走査期間(1H)を周期として順次選択され、画素行ごとの書き込み動作及び発光動作は、1フレーム(1F)周期で繰り返される。
【0047】
図4に示す例では、1水平走査期間(1H)ごとに、映像信号線(第1信号線)72に初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を印加する期間(VINI期間)と、映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)を印加する期間(VSIG期間)とが設けられている。
【0048】
映像線駆動回路54は、VSIG期間内に設定された映像信号セット期間PWTにおいて、映像電圧信号VSIGを出力する。この場合、オフセットキャンセル期間POCは、映像電圧信号VSIGが出力されるVSIG期間と同一の水平走査期間内のVINI期間に設定される。また、リセット期間PRSは、映像電圧信号VSIGが出力されるVSIG期間が設定される水平走査期間の1H前のVINI期間に設定される。
【0049】
各画素行の有機発光ダイオード90の発光期間PEMは、上述した映像信号セット動作の終了から次のフレームの画像の当該画素行の書き込み動作の開始までの期間(発光可能期間PEM0)内に設定される。本実施形態の表示装置30は、黒画面挿入動作として、発光可能期間PEM0の一部において、点灯スイッチ94を制御し、駆動電源PVDDと、導通状態に保持されている駆動トランジスタ92との間を遮断することで、有機発光ダイオード90に供給される駆動電流を強制的に停止する非発光期間PBLを設けている。これにより、上述した動画ぼやけによる表示品質の低下が抑制される。
【0050】
すなわち、発光期間PEMは、発光可能期間PEM0のうち非発光期間PBLを除いた期間となる。なお、黒画面挿入による動画表示品質の低下抑制の効果は、所定フレームの画像で生じた網膜残像をキャンセルすることによるものであることから、非発光期間PBLは、発光可能期間PEM0の先頭又はその近傍、若しくは末尾又はその近傍に設定することが好適である。例えば、図4では、通常、少なくとも数100以上の水平走査期間からなる1フレーム期間(1F)のうちの大半を占める発光可能期間PEM0内のほぼ先頭である3番目と4番目の水平走査期間を、非発光期間PBLとして設定した例を示している。なお、非発光期間PBLの長さは、基本的には発光可能期間PEM0に比べて極めて短く設定できるので、黒画面挿入によって画像の明るさに与える影響は小さい。
【0051】
上述のように、非発光期間PBLでは、点灯スイッチ94によって駆動電源PVDDと有機発光ダイオード90との間が遮断される。具体的には、走査線駆動回路52は、点灯制御信号BGをLレベルとし、点灯スイッチ94をオフする。さらに、この非発光期間PBLにおいて、走査線駆動回路52は、リセットスイッチ64を制御し、非発光期間PBLを通じてリセット線78をリセット電位VRSに設定する。すなわち、点灯スイッチ94がオフする非発光期間PBLにおいて、リセット制御信号RGがHレベルとされることで、リセットスイッチ64がオンし、リセット電源PVRS(電源回路62)がリセット線78に接続される。つまり、本実施形態では、リセットスイッチ64と点灯スイッチ94とが排他的にオンする。
【0052】
これにより、リセット線78と他の配線との間に高抵抗ショート等があった場合でも、駆動トランジスタ92のドレインは、リセット電位VRSに応じた電位に維持される。換言すれば、ショートによる電流はリセット線78からリセットスイッチ64を介してリセット電源PVRS(電源回路62)側に流れ、有機発光ダイオード90には流れないので、リセット線78に共通に接続された画素50が当該電流で発光して表示部38の画面上に横線欠け、横スジなどを生じる現象が防止される。
【0053】
図5は、実施形態1の比較例に係る表示装置の概略構成を示す模式図である。図6は、図5に示す比較例において単色ラスター表示を行った場合に、表示部の画面上に輝度ムラが生じた例を示す図である。図6では、表示部38の各画素50に対し、図中の上部両側から駆動電位VDD及び基準電位VSSを供給した例を示している。
【0054】
図5に示す比較例では、図2に示す実施形態1に係る表示装置30とは異なり、初期化信号発生回路81を有していない。すなわち、図5に示す比較例では、各画素50のデータ初期化時に映像線駆動回路54が初期化電圧信号VINIを生成し、各画素列の映像信号線(第1信号線)72に出力する構成である。
【0055】
図3に示した画素構成における各画素50の保持容量98の端子間電圧、すなわち、駆動トランジスタ92のゲート-ソース間電圧Vgsは、保持容量98の容量値をCs、容量91の容量値をCelとすると、下記の(1)式で表せる。
【0056】
Vgs=Vsig-(Vini-Vth+(Vsig-Vini)*Cs/(Cs+Cel))
=(Vsig-Vini)*(1-Cs/(Cs+Cel))+Vth
・・・・(1)
【0057】
上記(1)式で示されるように、駆動トランジスタ92のゲート-ソース間電圧Vgsは、映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)と初期化電圧信号の電位Vini(初期化電位)との電位差(Vsig-Vini)に比例した電圧と各駆動トランジスタ92固有のしきい値電圧Vthを加算した値となる。このとき、各駆動トランジスタ92には電位差(Vsig-Vini)に比例した電圧に応じた電流が流れ、各駆動トランジスタ92のしきい値電圧Vthのばらつきには依存しない。この駆動電流が駆動トランジスタ92を介して有機発光ダイオード90に供給され、有機発光ダイオード90が駆動電流に応じて発光することにより、各画素50における濃淡表示が実現される。
【0058】
一方、駆動電源PVDD(電源回路60)から画素50に駆動電位VDDを供給する電源線76、及び、基準電源PVSS(電源回路58)から画素50に基準電位VSSを供給する電源線74は、表示部38の画素50全てに電力を供給するため、他の配線よりも流れる電流量が大きくなる。このため、電源線76及び電源線74の配線抵抗の影響によって、駆動電位VDD及び基準電位VSSが変動する。なお、基準電源PVSS(電源回路58)から画素50に基準電位VSSを供給する電源線74は、一般に表示部38の全領域に亘るベタ配線であることが多い。この場合には、電源線74の配線抵抗によって基準電位VSSの変動に与える影響は、電源線76の配線抵抗によって駆動電位VDDの変動に与える影響よりも小さい。
【0059】
図5に示す比較例では、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)は、容量91及び保持容量96に電荷が蓄積された後は、当該配線には電流がほぼ流れなくなるため、全画素50において一定の電位が供給される。一方、駆動電位VDD及び基準電位VSSには大きな電流が流れるため配線抵抗により電圧降下が発生し、駆動電源PVDD(電源回路60)および基準電源PVSS(電源回路58)から離れた画素ほど駆動トランジスタ92のドレイン―ソース間電圧Vdsが小さくなり、チャネル長変調効果により駆動トランジスタ92に流れる電流は小さくなる。
【0060】
このため、図6中の表示部38の上部両側から駆動電位VDD及び基準電位VSSを供給した場合に、表示部38の画面上におけるX方向(第1方向)の中央部やY方向(第2方向)の図中下側では、駆動トランジスタ92のゲート-ドレイン間電圧Vdsが相対的に小さくなる。
【0061】
特に、表示部38に単色(例えば、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、白等)のラスター表示を行う場合には、駆動電位VDD及び基準電位VSSの変動に起因する輝度ムラが視認され易くなる。具体的には、駆動電位VDD及び基準電位VSSの給電位置に近い箇所の輝度に対し、駆動電位VDD及び基準電位VSSの給電位置から遠い箇所では、相対的に輝度が低下する(図6参照)。
【0062】
これに対し、本実施形態に係る表示装置30では、図2に示すように、制御部20として、初期化信号発生回路81を備える構成としている。図7は、実施形態1に係る表示装置の初期化信号発生回路によって生成される初期化信号の一例を示す図である。図7に示す例では、初期化電圧信号VINIのピーク値を結ぶ線を破線で示している。
【0063】
図7では、表示部38の画面上におけるX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)の輝度ムラを補正するための初期化電圧信号の一例を示している。すなわち、図7に示す例では、初期化電圧信号VINIを映像信号の1フレーム期間(1F)において徐々に低下させる信号と、映像信号の1水平走査期間(1H)の両端を高く、中央に向かうに従い低下させる信号とを重ね合わせた初期化電圧信号VINIを生成するようにしている。これにより、駆動電位VDD及び基準電位VSSの給電位置に起因する、駆動電位VDD及び基準電位VSSの電圧降下に伴う輝度ムラを抑制することができる。具体的には、駆動電源PVDD(電源回路60)及び基準電源PVSS(電源回路58)の給電部から遠い画素ほど初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を小さくする。これにより、駆動トランジスタ92のドレイン―ソース間電圧Vdsが低い画素ほど供給する初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を低くし、駆動トランジスタ92に供給される映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)と初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)との電位差(Vsig-Vini)を大きくし駆動トランジスタ92に流れる電流を補正するものである。
【0064】
図8は、実施形態1に係る表示装置の初期化信号発生回路の概略ブロック構成の一例を示す図である。
【0065】
図8に示すように、制御部20の初期化信号発生回路81には、コントローラ56から、映像信号の垂直同期信号Vsync及び水平同期信号Hsyncが入力される。初期化信号発生回路81は、処理部811、及び記憶部812を備えている。
【0066】
図9は、表示部における画素配置例を示す図である。図9では、X方向(第1方向)にp(pは、1以上の整数)の画素50が並び、Y方向(第2方向)にq(qは、1以上の整数)の画素50が並ぶ例を示している。図10は、画素ごとの補正係数値を含む補正係数値情報の一例を示す図である。
【0067】
記憶部812には、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfのデータ値と共に、図9に示す画素50ごとの補正係数値が、図10に示す補正係数値情報8121として記憶されている。
【0068】
補正係数値情報8121に記憶される画素50ごとの補正係数値としては、例えば、表示装置30の出荷検査時等において、画素50に書き込む映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)が同一となる単色ラスターを表示し、表示部38に表示される画像の輝度が略均一となるような値が予め設定されているものとする。なお、補正係数値情報8121に記憶される画素50ごとの補正係数値を求める手法は、これに限定されない。また、画素50ごとの各補正係数値は、数値データであっても良いし、デジタルデータ等の離散値であっても良い。
【0069】
処理部811は、画素50ごとの各補正係数値を記憶部812に記憶された補正係数値情報8121から読み出し、コントローラ56から入力された垂直同期信号Vsync及び水平同期信号Hsyncに基づき、画素50ごとに、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfのデータ値を補正して、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)のデータ値を生成する。なお、処理部811における画素50ごとの初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)の算出手法により、本開示は限定されない。例えば、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfに画素50ごとの各補正係数値を乗じて、画素50ごとの初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を算出する構成であっても良い。また、例えば、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfに画素50ごとの各補正係数値を加算して、画素50ごとの初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を算出する構成であっても良い。
【0070】
上述のようにして生成された初期化電圧信号VINIは、映像線駆動回路54に出力される。映像線駆動回路54は、リセット動作時及びオフセットキャンセル動作時において、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)のデータ値をD/A変換器でアナログ電圧に変換し、各画素行ごとに順次出力する。
【0071】
以上説明したように、実施形態1に係る表示装置30は、複数の画素50がX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)に並ぶ表示部38と、制御部20と、を有している。画素50は、電流を流すことにより発光する発光素子(有機発光ダイオード90)と、駆動トランジスタ92と、保持容量98と、を有している。発光素子(有機発光ダイオード90)の一方の端子(アノード)は、駆動トランジスタ92のソースまたはドレインのいずれか一方に接続されている。発光素子(有機発光ダイオード90)の他方の端子(カソード)には、第1電位(基準電位VSS)が供給されている。駆動トランジスタ92のソースまたはドレインのいずれか他方には、第1電位(基準電位VSS)よりも高い第2電位(駆動電位VDD)が供給されている。保持容量98は、駆動トランジスタ92のソースとゲートとの間に接続されている。制御部20は、駆動トランジスタ92のゲートに初期化電位(初期化電圧信号VINIの電位Vini)を書き込んだ後、駆動トランジスタ92のゲートに映像信号に基づく映像書き込み電位(映像電圧信号VSIGの電位Vsig)の書き込みを行う。これにより、保持容量98には、映像書き込み電位(映像電圧信号VSIGの電位Vsig)と初期化電位(初期化電圧信号VINIの電位Vini)との差分に比例した電圧と駆動トランジスタ92のしきい値電圧とを加算した電圧が設定される。発光素子(有機発光ダイオード90)の発光期間PEMにおいて、映像書き込み電位(映像電圧信号VSIGの電位Vsig)と初期化電位(初期化電圧信号VINIの電位Vini)との差分に比例した電圧に応じた電流が発光素子(有機発光ダイオード90)に流れる。このような構成において、制御部20は、画素50毎に、初期化電位(初期化電圧信号VINIの電位Vini)を設定する。
【0072】
具体的に、制御部20は、駆動トランジスタ92のドレインとソースとの間の電圧に応じて、初期化電位(初期化電圧信号VINIの電位Vini)を設定する。
【0073】
より具体的に、制御部20の初期化信号発生回路81は、複数の画素50に書き込む映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)が同一である場合に、映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)によって表示部38に表示される画像のX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)の輝度が略均一となるように、各画素50ごとに供給する電位Vini(初期化電位)を生成する。
【0074】
このとき、初期化信号発生回路81は、各画素50ごとに個別の電位Vini(初期化電位)を供給する。
【0075】
これにより、表示部38の画面上におけるX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)の輝度ムラを抑制することができる。
【0076】
(実施形態2)
以下、上述した実施形態1と同一の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態2の表示装置について実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0077】
図11は、実施形態2に係る表示装置の表示部及び制御部の概略構成を示す模式的な回路図である。図12は、図11に示す表示部に配列される画素の概略の等価回路図の一例である。
【0078】
図11に示す実施形態2に係る表示装置30aは、映像電圧信号VSIGと初期化電圧信号VINIとを別系統で供給する点で、図2に示す実施形態1とは異なっている。具体的には、各画素50aには、映像電圧信号VSIGを供給する映像信号線(第1信号線)72に加え、初期化電圧信号VINIを供給する初期化信号線110(第2信号線)が配線されている。
【0079】
なお、本実施形態では、各画素行に初期化電圧信号VINIを供給する初期化信号線(第2信号線)110が共通化されている。
【0080】
図12に示す画素回路には、初期化スイッチ112が設けられている。初期化スイッチ112の一方の電流端子は、駆動トランジスタ92のゲートに接続され、他方の電流端子は、初期化信号線(第2信号線)110に接続されている。初期化スイッチ112は、ゲート電極に走査線駆動回路52aから初期化制御信号IGを印加され、駆動トランジスタ92のゲート電極と初期化信号線(第2信号線)110との間の接続/切断を切り替える。なお、初期化制御信号IGを供給する初期化制御線114は、画素行ごとに設けられ、各画素行の初期化スイッチ112を共通に制御する。初期化スイッチ112は、駆動トランジスタ92、点灯スイッチ94、リセットスイッチ64、及び書き込みスイッチ96と同じくn型TFTで構成される。
【0081】
なお、本実施形態では、初期化スイッチ112がn型TFTで構成される例を示したが、これに限らない。例えば、初期化スイッチ112は、p型TFTであっても良い。以下では、初期化スイッチ112がn型TFTである場合について例示する。
【0082】
走査線駆動回路52aは、初期化制御線114に初期化制御信号IGを供給する。
【0083】
図13は、実施形態2に係る表示装置の駆動方法を説明するための概略タイミングチャートである。図13では、図4と同様に、表示部38aの1つの画素行における画素値の書き込み動作及び発光動作での各種信号の変化を示している。また、図13では、各種信号として、図4に示したもの以外に、初期化制御信号IGが示されている。
【0084】
実施形態1と同様に、各画素50aは、書き込み動作で映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)を書き込まれ、その後、当該映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)に応じた強度で有機発光ダイオード90を発光させる発光動作が行われる。
【0085】
具体的に、リセット動作では、点灯制御信号BGをLレベルとして点灯スイッチ94をオフとし、リセット制御信号RGをHレベルとしてリセットスイッチ64をオンとし、さらに各初期化信号線(第2信号線)110に初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を印加した状態で、初期化制御信号IGをHレベルとして初期化スイッチ112をオンする。
【0086】
これにより、駆動トランジスタ92のゲート電位は、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)に対応する電位が印加され、有機発光ダイオード90のアノード電極側には、リセット電位に対応する電圧が印加される。これにより、駆動トランジスタ92のソース電位は、リセット電位VRSに対応する電位にリセットされ、各画素50の保持容量98の端子間電圧は、(Vini-VRS)に応じた電圧に設定される。有機発光ダイオード90に印加される電圧は、(VRS-VSS)に応じた電圧となり、当該電圧が有機発光ダイオード90の発光しきい値電圧(発光開始電圧)以下となるように、リセット電位VRSが設定される。
【0087】
また、具体的に、オフセットキャンセル動作では、初期化スイッチ112のオン状態を維持した状態で、リセット制御信号RGをLレベルとしてリセットスイッチ64をオフとし、点灯制御信号BGをHレベルとして点灯スイッチ94をオンとする。
【0088】
これにより、駆動トランジスタ92のゲート電位は、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)に対応する電位に固定される。また、点灯スイッチ94がオン状態であるので、駆動電源PVDDから駆動トランジスタ92に電流が流れ込み、駆動トランジスタ92のソース電位は、リセット期間PRSに書き込まれたリセット電位VRSから上昇する。そして、ソース電位がゲート電位よりVthだけ低い電位(Vini-Vth)に達すると、駆動トランジスタ92が非導通状態となり、駆動トランジスタ92のソース電位は、(Vini-Vth)に固定され、保持容量98の端子間電圧は、駆動トランジスタ92のしきい値電圧Vthに応じた電圧に設定される。
【0089】
この状態を基準として、点灯制御信号BGをLレベルとして点灯スイッチ94をオフし、駆動電源PVDDから駆動トランジスタ92に流れ込む電流を阻止する。また、初期化制御信号IGをLレベルとして初期化スイッチ112をオフし、さらに、各映像信号線(第1信号線)72に映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)を印加した状態で、書き込み制御信号SGをHレベルとして書き込みスイッチ96をオンする。これにより、駆動トランジスタ92のゲート電位が初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)に応じた電位から映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)に応じた電位に上昇する。
【0090】
書き込みスイッチ96をオフして映像信号セット動作が終了すると、発光可能期間PEM0に移行する。表示装置30aは、発光期間PEMの他、発光可能期間PEM0の一部において、非発光期間PBLを設ける。これにより、黒画面挿入動作が行われる。また、実施形態1と同様に、発光期間PEMにおいては点灯スイッチ94がオンされ、リセットスイッチ64がオフされる。また非発光期間PBLにおいて、点灯スイッチ94がオフされ、リセットスイッチ64がオンされる。なお、映像信号セット期間PWTにてLレベルとされた初期化制御信号IGは、発光可能期間PEM0に入ってもLレベルに維持される。
【0091】
また、本実施形態においても、実施形態1と同様に、非発光期間PBLにおいてリセット制御信号RGがHレベルとされることで、リセットスイッチ64がオンし、リセット電源PVRS(電源回路62)がリセット線78に接続される。
【0092】
これにより、リセット線78と他の配線との間に高抵抗ショート等があった場合でも、駆動トランジスタ92のドレインは、リセット電位VRSに応じた電位に維持され、有機発光ダイオード90の発光が防止される。従って、リセット線78に共通に接続された画素50aが高抵抗ショートに起因して発光することによって表示部38aの画面上に横線欠け、横スジなどを生じる現象が防止される。
【0093】
図14は、実施形態2に係る表示装置の初期化信号発生回路の概略ブロック構成の一例を示す図である。
【0094】
図14に示すように、制御部20aの初期化信号発生回路81aには、実施形態1と同様に、コントローラ56から、映像信号の垂直同期信号Vsync及び水平同期信号Hsyncが入力される。初期化信号発生回路81aは、処理部811a、記憶部812a、及びD/A変換部813を備えている。
【0095】
上述したように、本実施形態では、各画素行に初期化電圧信号VINIを供給する初期化信号線(第2信号線)110が共通化されている。このため、本実施形態において、処理部811aは、各画素行に共通の初期化電圧信号VINIを生成する。
【0096】
図15は、実施形態2に係る表示装置の初期化信号発生回路によって生成される初期化電圧信号の一例を示す図である。図15に示す例では、図7に示した初期化電圧信号VINIのピーク値を結ぶ線を破線で示している。
【0097】
図15では、表示部38aの画面上におけるX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)の輝度ムラのうち、Y方向(第2方向)の輝度ムラを補正するための初期化電圧信号の一例を示している。すなわち、図15に示す例では、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を映像信号の1フレーム期間(1F)において徐々に低下させる初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)のデータ値を生成するようにしている。これにより、駆動電位VDD及び基準電位VSSの給電位置に起因する、駆動電位VDD及び基準電位VSSの電圧降下に伴うY方向(第2方向)の輝度ムラを抑制することができる。
【0098】
図16は、表示部における画素行配置例を示す図である。図16では、Y方向(第2方向)にq(qは、1以上の整数)の画素行51が並ぶ例を示している。図17は、画素行ごとの補正係数値を含む補正係数値情報の一例を示す図である。
【0099】
記憶部812aには、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfと共に、図16に示す画素行51ごとの補正係数値が、図17に示す補正係数値情報8121aとして記憶されている。
【0100】
補正係数値情報8121aに記憶される画素行51ごとの補正係数値としては、例えば、表示装置30の出荷検査時等において、画素50に書き込む映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)が同一となる単色ラスターを表示し、表示部38aに表示される画像のY方向(第2方向)の輝度が略均一となるような値が予め設定されているものとする。なお、補正係数値情報8121aに記憶される画素行51ごとの補正係数値を求める手法は、これに限定されない。また、画素行51ごとの各補正係数値は、数値データであっても良いし、デジタルデータ等の離散値であっても良い。
【0101】
処理部811aは、画素行51ごとの各補正係数値を記憶部812aに記憶された補正係数値情報8121aから読み出し、コントローラ56から入力された垂直同期信号Vsync及び水平同期信号Hsyncに基づき、画素行51ごとに、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfのデータ値を補正して、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)のデータ値を生成する。なお、処理部811aにおける画素行51ごとの初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)の算出手法により、本開示は限定されない。例えば、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfに画素行51ごとの各補正係数値を乗じて、画素行51ごとの初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を算出する構成であっても良い。また、例えば、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfに画素行51ごとの各補正係数値を加算して、画素行51ごとの初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を算出する構成であっても良い。
【0102】
D/A変換部813は、リセット動作時及びオフセットキャンセル動作時において、初期化電圧信号VINIのデータ値をアナログ電圧に変換し、初期化信号線(第2信号線)110に出力する。
【0103】
以上説明したように、実施形態2に係る制御部20aの初期化信号発生回路81aは、複数の画素50aに書き込む映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)が同一である場合に、映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)によって表示部38aに表示される画像のY方向(第2方向)の輝度が略均一となるように、各画素50aごとに供給する電位Vini(初期化電位)を生成する。
【0104】
このとき、初期化信号発生回路81aは、X方向(第1方向)に並ぶ画素50aに対し、同一の電位Vini(初期化電位)を供給する。
【0105】
これにより、表示部38aの画面上におけるX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)の輝度ムラのうち、Y方向(第2方向)の輝度ムラを抑制することができる。
【0106】
なお、本実施形態では、画素50ごとに補正係数値を設ける実施形態1よりも、補正係数値情報の情報量を減らすことができる。このため、実施形態1よりも記憶部812aの記憶容量を小さくすることができる。
【0107】
また、本実施形態では、画素50ごとに初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を算出する実施形態1よりも、処理部811aにおける処理を軽減することができる。
【0108】
なお、初期化スイッチ112を時分割でオンさせ、画素50ごとに初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を供給することも可能である。
【0109】
(実施形態3)
以下、上述した実施形態1又は実施形態2と同一の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態3の表示装置について実施形態1又は実施形態2との相違点を中心に説明する。
【0110】
図18は、実施形態3に係る表示装置の表示部及び制御部の概略構成を示す模式的な回路図である。実施形態2では、各画素行に初期化電圧信号VINIを供給する初期化信号線(第2信号線)110が共通化されている例を示したが、本実施形態では、各画素行に初期化電圧信号VINIを供給する初期化信号線(第2信号線)110がそれぞれ独立している点で、実施形態2とは異なっている。これにより、本実施形態では、実施形態1と同様に、画素50aごとの初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を算出する構成としている。
【0111】
図19は、実施形態3に係る表示装置の初期化信号発生回路の概略ブロック構成の一例を示す図である。
【0112】
図19に示すように、実施形態3に係る表示装置30bにおける制御部20bの初期化信号発生回路81bには、実施形態1及び実施形態2と同様に、コントローラ56から、映像信号の垂直同期信号Vsync及び水平同期信号Hsyncが入力される。初期化信号発生回路81bは、処理部811、記憶部812、及びD/A変換部813aを備えている。
【0113】
D/A変換部813aは、リセット動作時及びオフセットキャンセル動作時において、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)のデータ値をアナログ電圧に変換し、画素行ごとの初期化信号線(第2信号線)110にそれぞれ出力する。
【0114】
以上説明したように、実施形態3に係る制御部20bの初期化信号発生回路81bは、実施形態1と同様に、複数の画素50aに書き込む映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)が同一である場合に、映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)によって表示部38aに表示される画像のX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)の輝度が略均一となるように、各画素50aごとに供給する電位Vini(初期化電位)を生成する。
【0115】
このとき、初期化信号発生回路81bは、実施形態1と同様に、各画素50aごとに個別の電位Vini(初期化電位)を供給する。
【0116】
これにより、実施形態1と同様に、表示部38の画面上におけるX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)の輝度ムラを抑制することができる。
【0117】
(実施形態4)
以下、上述した実施形態1から実施形態3と同一の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態4の表示装置について実施形態1から実施形態3との相違点を中心に説明する。
【0118】
本実施形態では、図2に示す実施形態1に係る表示装置の表示部38及び制御部20の概略構成において、表示部38を複数の領域に分割し、複数の領域における画素群ごとに補正係数値を設定する例について説明する。本実施形態では、図8に示す初期化信号発生回路81において、処理部811における処理、及び、記憶部812に記憶される補正係数値情報が異なっている。
【0119】
図20は、表示部における画素群配置例を示す図である。図20では、X方向(第1方向)に複数の画素50からなるm(mは、1以上の整数)の画素群39が並び、Y方向(第2方向)に複数の画素50からなるn(nは、1以上の整数)の画素群39が並ぶ例を示している。なお、図20に示す例において、画素群39は、X方向(第1方向)及びY方向(第2方向)にそれぞれ4の画素50が並び構成されているが、画素群39においてX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)に並ぶ画素50の数は、これに限定されない。図21は、画素群ごとの補正係数値を含む補正係数値情報の一例を示す図である。
【0120】
記憶部812には、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfのデータ値と共に、図20に示す画素群39ごとの補正係数値が、図21に示す補正係数値情報8121bとして記憶されている。
【0121】
補正係数値情報8121bに記憶される画素群39ごとの補正係数値としては、例えば、表示装置30の出荷検査時等において、画素50に書き込む映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)が同一となる単色ラスターを表示し、表示部38に表示される画像の輝度が略均一となるような値を求め、画素群39ごとに、画素群39に含まれる画素50の補正係数値の平均値が予め設定されているものとする。なお、補正係数値情報8121bに記憶される画素群39ごとの補正係数値を求める手法は、これに限定されない。例えば、補正係数値情報8121bに記憶される画素群39ごとの補正係数値は、所定数の表示装置30においてそれぞれ対応する画素群39における補正係数値の平均値又は代表値であっても良い。また、画素群39ごとの各補正係数値は、数値データであっても良いし、デジタルデータ等の離散値であっても良い。
【0122】
処理部811は、画素群39ごとの各補正係数値を記憶部812に記憶された補正係数値情報8121bから読み出し、コントローラ56から入力された垂直同期信号Vsync及び水平同期信号Hsyncに基づき、画素群39ごとに、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfを補正して、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)のデータ値を生成する。なお、処理部811における画素群39ごとの初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)の算出手法により、本開示は限定されない。例えば、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfに画素群39ごとの各補正係数値を乗じて、画素群39ごとの初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を算出する構成であっても良い。また、例えば、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfに画素群39ごとの各補正係数値を加算して、画素群39ごとの初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を算出する構成であっても良い。
【0123】
上述のようにして生成された初期化電圧信号VINIは、映像線駆動回路54に出力される。映像線駆動回路54は、リセット動作時及びオフセットキャンセル動作時において、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)のデータ値をD/A変換器でアナログ電圧に変換し、各画素行ごとに順次出力する。
【0124】
なお、本実施形態では、画素50ごとに補正係数値を設ける実施形態1よりも、補正係数値情報の情報量を減らすことができる。このため、実施形態1よりも記憶部812の記憶容量を小さくすることができる。
【0125】
また、本実施形態では、画素50ごとに初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を算出する実施形態1よりも、処理部811における処理を軽減することができる。
【0126】
以上説明したように、実施形態4において、制御部20の初期化信号発生回路81は、複数の画素50に書き込む映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)が同一である場合に、映像電圧信号VSIGの電位Vsig(映像書き込み電位)によって表示部38に表示される画像のX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)の輝度が略均一となるように、各画素50ごとに供給する電位Vini(初期化電位)を生成する。
【0127】
このとき、初期化信号発生回路81は、表示部38を複数の領域に分割した画素群39ごとに含まれる画素50に対し、同一の電位Vini(初期化電位)を供給する。
【0128】
これにより、実施形態1よりも記憶部812の記憶容量を小さくしつつ、かつ処理部811における処理を軽減して、表示部38aの画面上におけるX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)の輝度ムラを抑制することができる。
【0129】
(実施形態5)
以下、上述した実施形態1から実施形態4と同一の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態5の表示装置について実施形態1から実施形態4との相違点を中心に説明する。
【0130】
本実施形態では、図2に示す実施形態1に係る表示装置の表示部38及び制御部20の概略構成において、初期化信号発生回路の構成が異なる例について説明する。
【0131】
図22は、実施形態5に係る表示装置の初期化信号発生回路の概略ブロック構成の一例を示す図である。
【0132】
図22に示すように、制御部20の初期化信号発生回路81cには、コントローラ56から入力される映像信号の垂直同期信号Vsync及び水平同期信号Hsyncに加え、コントローラ56から映像信号が入力される。初期化信号発生回路81cは、処理部811b、記憶部812、及び画像解析部814を備えている。
【0133】
画像解析部814は、入力された映像信号の画像解析を行う。画像解析部814における画像解析手法としては、例えば、ヒストグラム解析が例示される。画像解析部814における画像解析手法により本開示が限定されるものではない。
【0134】
図23は、実施形態5に係る初期化信号補正処理手順の一例を示すフローチャートである。以下、図23に示すフローチャートに従い、初期化信号発生回路81cの動作について説明する。
【0135】
まず、画像解析部814は、入力された1フレーム(1F)分の映像信号を解析する(ステップS101)。
【0136】
画像解析部814は、画像解析結果に基づき、映像信号が単色ラスターを表示することを示す信号であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0137】
映像信号が単色ラスターを表示することを示す信号ではない場合(ステップS102;No)、処理部811bは、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfを全画素50に対する電位Vini(初期化電位)として、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)のデータ値を生成する(ステップS103)。
【0138】
映像信号が単色ラスターを表示することを示す信号である場合(ステップS102;Yes)、処理部811bは、画素50ごとの各補正係数値を記憶部812に記憶された補正係数値情報8121から読み出し(ステップS104)、コントローラ56から入力された垂直同期信号Vsync及び水平同期信号Hsyncに基づき、画素50ごとに、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfを補正して、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)のデータ値を生成する(ステップS105)。
【0139】
映像信号が単色ラスターを表示することを示す信号ではない場合、例えば、映像信号が自然画を表示することを示す信号である場合には、表示部38の画面上における輝度ムラが視認され難い。本実施形態では、映像信号が単色ラスターを表示することを示す信号ではない場合には、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfを全画素50に対する電位Vini(初期化電位)として、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)のデータ値を生成する、すなわち、全画素50に対し、同一の電位Vini(初期化電位)を供給するようにしている。
【0140】
(実施形態6)
以下、上述した実施形態1から実施形態5と同一の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態6の表示装置について実施形態1から実施形態5との相違点を中心に説明する。
【0141】
本実施形態では、図2に示す実施形態1に係る表示装置の表示部38及び制御部20の概略構成において、初期化信号発生回路の構成が異なる例について説明する。
【0142】
図24は、実施形態6に係る表示装置の初期化信号発生回路の概略ブロック構成の一例を示す図である。
【0143】
図24に示すように、制御部20の初期化信号発生回路81dには、実施形態5と同様に、コントローラ56から、映像信号、映像信号の垂直同期信号Vsync、及び水平同期信号Hsyncが入力される。初期化信号発生回路81dは、処理部811c、記憶部812b、及び画像解析部814aを備えている。
【0144】
図25は、映像信号の階調範囲ごとの輝度補正係数値を含む輝度補正係数値情報の一例を示す図である。
【0145】
記憶部812bには、初期化電圧信号VINIにおける初期電位Vinfと、例えば図10に示す補正係数値情報8121と共に、映像信号の階調範囲ごとの輝度補正係数値が、図23に示す輝度補正係数値情報8122として記憶されている。
【0146】
図25に示す例では、例えば映像信号の256階調を「r(rは、1以上の整数)」の複数の階調範囲に分割し、各階調範囲における輝度補正係数値が予め設定されている例を示している。なお、輝度補正係数値情報8122に記憶される複数の階調範囲ごとの輝度補正係数値を求める手法については限定されない。また、複数の階調範囲ごとの輝度補正係数値は、数値データであっても良いし、デジタルデータ等の離散値であっても良い。
【0147】
図26は、実施形態6に係る初期化信号補正処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、本実施形態では、図23に示すフローチャートとは異なる処理について説明し、それ以外の処理については、説明を省略する。
【0148】
映像信号が単色ラスターを表示することを示す信号である場合(ステップS102;Yes)、画像解析部814aは、映像信号の階調を取得する(ステップS104a)。
【0149】
処理部811cは、画素50ごとの各補正係数値を記憶部812bに記憶された補正係数値情報8121から読み出すと共に、画像解析部814aによって取得された階調に応じた輝度補正係数を記憶部812bに記憶された輝度補正係数値情報8122から読み出し(ステップS104b)、コントローラ56から入力された垂直同期信号Vsync及び水平同期信号Hsyncに基づき、画素50ごとに、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfを補正して、初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)のデータ値を生成する(ステップS105)。
【0150】
なお、処理部811cにおける画素50ごとの初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)の算出手法により、本開示は限定されない。例えば、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfに画素50ごとの各補正係数値及び輝度補正係数を乗じて、画素50ごとの初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を算出する構成であっても良い。また、例えば、初期化電圧信号VINIの初期電位Vinfに画素50ごとの各補正係数値及び輝度補正係数を加算して、画素50ごとの初期化電圧信号VINIの電位Vini(初期化電位)を算出する構成であっても良い。
【0151】
映像信号の階調によって、表示部38の画面上において視認される輝度ムラの濃淡が異なることが考えられる。本実施形態では、映像信号が単色ラスターを表示することを示す信号である場合に、単色ラスターの階調に応じて、各画素50ごとに供給する電位Vini(初期化電位)を生成することで、単色ラスターの階調に依らず、表示部38の画面上におけるX方向(第1方向)及びY方向(第2方向)の輝度ムラを抑制することができる。
【0152】
なお、上述した各実施形態では、駆動電位VDD及び基準電位VSSの給電位置に起因する輝度ムラを抑制することについて説明したが、補正係数値情報8121,8121a,8121bに記憶される補正係数値を、上述したように、例えば表示装置30の出荷検査時等において単色ラスターを表示し、表示部38,38aに表示される画像の輝度が、Y方向(第2方向)、又は、X方向(第1方向)及びY方向(第2方向)の双方で略均一となるような値を求めることで、例えば、表示部38,38aの製造プロセスにおいて発生する、有機発光ダイオード90のしきい値電圧(順方向電圧降下VF)のバラツキや、光変換効率のバラツキ等による輝度ムラをも抑制可能である。
【0153】
また、上述した各実施形態では、画素行ごとにリセット線78とリセットスイッチ64とが設けられる構成を説明した。すなわち、当該画素行を構成する複数の画素がリセット線78とリセットスイッチ64を共有する。ここで、各画素行を複数区間に区切り、区間ごとにリセット線78とリセットスイッチ64を共有する構成とすることもできる。
【0154】
また、複数の画素行でリセットスイッチ64を共有する構成とすることもできる。当該構成では複数の画素行それぞれにリセット線78が設けられ、それら複数本のリセット線78とリセット電源PVRSとの接続を共通のリセットスイッチ64で切り替える。
【0155】
また、例えば、隣接する2つの画素行など、比較的少数の画素行であれば、1本のリセット線78を共用するレイアウトも可能である。具体的には、リセット線78を1本の行方向に延在する幹線部分と、当該幹線部分から各列位置にて列方向に延びる支線部分とで構成する。
【0156】
また、上述した各実施形態では、駆動トランジスタ92をn型TFTとした構成について説明したが、駆動トランジスタ92をp型TFTとした構成とすることもできる。また、点灯スイッチ94、リセットスイッチ64、書き込みスイッチ96、初期化スイッチ112についても、同様に、上述した各実施形態において説明したn型TFTとした構成に代えて、p型TFTとした構成とすることができる。すなわち、上述した各実施形態において説明した図3及び図12に示す回路構成は一例であり、p型TFTのみで構成された回路あるいはp型TFTとn型TFTとを混載した回路等、各種の回路で構成しても良い。
【0157】
上述した実施形態により、輝度ムラを抑制することができる表示装置を提供することができる。
【0158】
上述した実施形態は、各構成要素を適宜組み合わせることが可能である。また、本実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0159】
20,20a,20b 制御部
30,30a,30b 表示装置
32 回路基板
34 表示基板
36 接続基板
38,38a 表示部
39 画素群
40 駆動回路
50,50a 画素
51 画素列
52,52a 走査線駆動回路
54 映像線駆動回路
56 コントローラ
58,60,62 電源回路
64 リセットスイッチ
66 点灯制御線
68 書き込み制御線
70 リセット制御線
72 映像信号線(第1信号線)
74,76 電源線
78 リセット線
81,81a,81b,81c,81d 初期化信号発生回路
90 有機発光ダイオード(有機EL素子)
91 容量
92 駆動トランジスタ
94 点灯スイッチ
96 書き込みスイッチ
98 保持容量
110 初期化信号線(第2信号線)
112 初期化スイッチ
114 初期化制御線
811,811a,811b,811c 処理部
812,812a,812b 記憶部
813,813a D/A変換部
814,814a 画像解析部
8121,8121a,8121b 補正係数値情報
8122 輝度補正係数値情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図24
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図26