(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】締付トルク管理具及び締付トルク管理具と締結具との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
B25B 23/153 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
B25B23/153
(21)【出願番号】P 2018104334
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍太
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-113307(JP,A)
【文献】特開2018-008352(JP,A)
【文献】特開2018-008353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/153
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂から一体に形成されており、下端面が開放された収納穴を規定する内周面と締付具のトルク付加多角形外周面の相似形状である外周面とを有し、該収納穴を規定する内周面は締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した正多角形内周面に凹部を形成した形態であり、該凹部の底面と締付回転方向に見て上流側に位置する上流面とは鈍角を形成し、該収納穴に締結具を収納して該外周面に締付トルクを加えた時に、締付トルクが閾値を超えると該収納穴の該内周面が変形されて締結具に対して空転するようになる、ことを特徴とする締付トルク管理具。
【請求項2】
該内周面は、締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した正多角形内周面の各辺面の中央部に凹部を形成した形態である、請求項1記載の締付トルク管理具。
【請求項3】
該収納穴の該辺面の各々は該外周面の辺面の各々と平行である、請求項2に記載の締付トルク管理具。
【請求項4】
締付回転方向に見て該収納穴における該辺面の各々における該凹部の上流側に位置する部分には保持突出部が配設されている、請求項
2又は3に記載の締付トルク管理具。
【請求項5】
上端部には半径方向内方に延出する内側フランジ部が付設されている、請求項1から
4までのいずれかに記載の締付トルク管理具。
【請求項6】
該内側フランジ部の内周面は円筒形状である、請求項
5記載の締付トルク管理具。
【請求項7】
下端部には半径方向外方に延出する外側フランジ部が付設されている、請求項1から
6までのいずれかに記載の締付トルク管理具。
【請求項8】
該締付具の該トルク付加正多角形外周面は正六角形である、請求項1から
7までのいずれかに記載の締付トルク管理具。
【請求項9】
該凹部の該上流面は外方に向かって該締付回転方向に傾斜して延在している、請求項1から
8までのいずれかに記載の締付トルク管理具。
【請求項10】
合成樹脂から一体に形成されており、下端面が開放された収納穴を規定する内周面と締付具のトルク付加多角形外周面の相似形状である外周面とを有し、該収納穴を規定する内周面は締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した正多角形内周面の各辺面の中央部に凹部を形成した形態であり、締付回転方向に見て該収納穴における該辺面の各々における該凹部の上流側に位置する部分には保持突出部が配設されており、該収納穴に締結具を収納して該外周面に締付トルクを加えた時に、締付トルクが閾値を超えると該収納穴の該内周面が変形されて締結具に対して空転するようになる、ことを特徴とする締付トルク管理具。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれかに記載の締付トルク管理具と、該締付トルク管理具の該収納穴に少なくとも部分的に収納された締結具との組み合わせ。
【請求項12】
該締結具は該収納穴に圧入されている、請求項11記載の組み合わせ。
【請求項13】
該締結具が六角ナットである、請求項11又は12記載の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット又はボルトの如き締結具を所要トルクで締め付けるための締付トルク管理具及びかかる締付トルク管理具と締結具との組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高速道路における遮音壁の取り付け、トンネル等の天井壁の取り付け或いは各種建造物における種々の部品の取り付けにおいては、周知の如くボルトとナットとの締結が多数使用されている。そして、かような締結においてはボルトに対してナット(通常は緩み止めナット)を、例えば呼び径M10の六角ナットの場合には17乃至24Nm程度であり、呼び径M24の六角ナットの場合は250乃至360Nm程度である、比較的大きな所要トルクで締め付けることが重要である。下記特許文献1には、ボルトに対してナットを或いはナットに対してボルトを所要トルクで締め付ける際に使用することができる締付トルク管理具が開示されている。かかる締付トルク管理具は、合成樹脂から一体に形成されており、締結具収納部と締付トルク付加部とを含んでいる。締結具収納部には下端面は開口されている収納穴が形成されており、この収納穴の内周面は締結具のトルク付加正多角形外周面に対応する正多角形内周面に部分的に凹部を形成した形態である。締付トルク付加部の外周面は締結具のトルク付加正多角形外周面に対応している。締結具収納部の収納穴に少なくとも部分的に締結具を収納し、締付トルク付加部の外周面に適宜の手動乃至自動締付具を係合せしめて締付トルクを加え、これによって締付トルク付加部及び締結具収納部を介して締結具に締付トルクを伝達せしめる。締結具に加えられるトルクが所定閾値を超えると、収納穴の内周面が変形されて締結具に対して締結具収納部が空転されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、上述したとおりの従来の締付トルク管理具には、特に管理すべきトルクの閾値が大きい場合、締結具収納部の各部肉厚と共に締付トルク付加部の各部の肉厚を相当大きく設定することが必要であり、それ故に製造に多量の材料が必要であり製造コストが増大し、そしてまた成形の際に発生する傾向がある所謂ひけを回避するのが比較的困難であり且つ冷却に比較的長時間を要する、という問題が存在する。
【0005】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、管理すべきトルクの閾値が大きい場合でも必要材料量が多量になるのを回避することができ、そしてまた充分容易に製造することができる、合成樹脂から一体に成形された新規且つ改良された締付トルク管理具を提供すること、そしてまたかかる締付トルク管理具と締結具の組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、締結具収納部と締付トルク付加部とを別個に配設することに代えて、締結具を収納する収納穴を規定する部分自体の外周面を締付トルク付加部として利用する独特な形態に改良することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明の第一の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する締付トルク管理具として、合成樹脂から一体に形成されており、下端面が開放された収納穴を規定する内周面と締付具のトルク付加多角形外周面の相似形状である外周面とを有し、該収納穴を規定する内周面は締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した正多角形内周面に凹部を形成した形態であり、該凹部の底面と締付回転方向に見て上流側に位置する上流面とは鈍角を形成し、該収納穴に締結具を収納して該外周面に締付トルクを加えた時に、締付トルクが閾値を超えると該収納穴の該内周面が変形されて締結具に対して空転するようになる、ことを特徴とする締付トルク管理具が提供される。
上記主たる技術的課題を達成する締付トルク管理具として、本発明の第二の局面によれば、合成樹脂から一体に形成されており、下端面が開放された収納穴を規定する内周面と締付具のトルク付加多角形外周面の相似形状である外周面とを有し、該収納穴を規定する内周面は締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した正多角形内周面の各辺面の中央部に凹部を形成した形態であり、締付回転方向に見て該収納穴における該辺面の各々における該凹部の上流側に位置する部分には保持突出部が配設されており、該収納穴に締結具を収納して該外周面に締付トルクを加えた時に、締付トルクが閾値を超えると該収納穴の該内周面が変形されて締結具に対して空転するようになる、ことを特徴とする締付トルク管理具が提供される。
【0008】
好ましくは、該内周面は、締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した正多角形内周面の各辺面の中央部に凹部を形成した形態である。この場合には、該収納穴の該辺面の各々は該主部の該外周面の辺面の各々と平行であるのが望ましく、更に、該締付回転方向に見て該収納穴における該辺面の各々における該凹部の上流側に位置する部分には保持突出部が配設されているのが望ましい。上端部には半径方向内方に延出する内側フランジ部が付設されているのが望ましい。該内側フランジ部の内周面は円筒形状であるのが好都合である。下端部には半径方向外方に延出する外側フランジ部が付設されているのが望ましい。該締付具の該トルク付加正多角形外周面は正六角形でよい。該凹部の該上流面は外方に向かって該締付回転方向に傾斜して延在しているのが好適である。
【0009】
本発明によれば、更に、上述したとおりの締付トルク管理具と該締付トルク管理具の該収納穴に少なくとも部分的に収納された締結具との組み合わせが提供される。該締結具は該収納穴に圧入されているのが好適である。該締結具が六角ナットでよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の締付トルク管理具は、締結具を収納する収納穴を規定する部分自体の外周面を締付トルク付加部として利用する独特な形態である故に、管理すべきトルクの閾値が大きい場合でも必要材料量が多量になるのを回避することができ、そしてまた肉厚が相当大きい部分を別個に形成する必要がなく、それ故に充分容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従って構成された締付トルク管理具の好適実施形態を上方から見た斜面図。
【
図2】
図1に示す締付トルク管理具を下方から見た斜面図。
【
図3】
図1に示す締付トルク管理具の、一部を断面で示す正面図。
【
図6】
図1に示す締付トルク管理具と締結具の典型例であるナットとの組み合わせの、一部を断面で示す正面図。
【
図8】
図6に示す組み合わせにおいて、ナットの締付トルクが閾値を超えてナットに対して締付トルク管理具が空転した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された締付トルク管理具の好適実施形態及びかかる実施形態と締結具の典型例であるナットとの組み合わせを示す添付図面を参照して、更に詳述する。
【0013】
図1乃至
図3を参照して説明すると、全体を番号2で示す締付トルク管理具は、適宜の合成樹脂、好ましくはポリカーボネート或いはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)の如き比較的高強度の合成樹脂、から射出成形によって一体に形成されている。かかる締付トルク管理具2は全体として筒形状であり、下端面が開放された収納穴4を規定する内周面6と締付具のトルク付加正多角形外周面の相似形状である外周面8とを有する。
【0014】
図1乃至
図3と共に
図4及び
図5を参照して説明を続けると、収納穴4を規定する内周面6は、収納する締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した仮想正多角形内周面の各辺面10に
凹部12を形成した形態であることが重要である。図示の実施形態においては、後述するとおり締結具は六角ナットであり、従って締結具のトルク付加正多角形外周面は正六角形であり、仮想正多角形内周面(
図5に二点鎖線で示す内周面)も正六角形である。各辺面10の中央部に形成されている凹部12の各々は底面12aと共に両側面、即ち締付回転方向(
図4において時計方向、
図5において反時計方向)に見て上流側に位置する上流面12b及び下流側に位置する下流面12cを有する。底面12aと上流面12bとが形成する角度αは、鈍角であ
り、
100乃至160度程度である
のが好ましい。図示の実施形態においては、底面12aは収納穴4の中心を中心とする円の一部をなす円弧形状であり、上流面12bは辺面10に対して外方に向かって上記締付回転方向に傾斜して延在している。底面12aと上流面12bとは弧状境界面12dを介して滑らかに接続されているのが好適である。一方、下流面12cは辺面10に対して垂直に延在している。上記締付回転方向において凹部12よりも下流側の辺面10aの周方向長さL1は凹部12よりも上流の辺面10bの周方向長さL2よりも長いのが好都合である(この場合には、後の説明から明確に理解される如く、締付トルクの閾値は凹部12よりも下流側の辺面10aの変形によって規定される)。
【0015】
上記収納穴4の内周面を規定する上記辺面10における上記締付回転方向(
図4において時計方向、
図5において反時計方向)に見て上記凹部12の上流側に位置する部分10bには保持突出部が配設されているのが好適である。図示の実施形態においては、保持突出部は、収納穴4の軸線方向(
図3において上下方向、
図5において紙面に垂直な方向)に、好ましくは収納穴4の軸線に実質上平行に、延びるリブ14が形成されている。図示の実施形態においては、6個の辺面10の部分10bの各々において保持突出部即ちリブ14が形成されている。リブ14の各々は
図2及び
図3を参照することによって明確に理解される如く、収納穴4の上端から下端近傍まで収納穴4の軸線に実質上平行に延びている。リブ14の突出高さHは0.1乃至0.5mm程度であり、リブ14の各々の周方向幅Wは0.1乃至0.5mm程度であるのが好適である。リブ14の突出端部の横断面形状は、
図5に図示する如く半円形状であるのが好都合である。図示の実施形態においては、6個の辺面10の部分10bの全てにおいてリブ14を形成しているが、所望ならば、例えば1個置きに位置する3個の辺面10或いは直径方向に対向して位置する2個の辺面10のみにリブ14を形成することもできる。
【0016】
保持突出部を構成するリブ14は、辺面10における締付回転方向に見て凹部12の上流側に位置する部分10bのみではなく、辺面10における締付回転方向に見て凹部12の下流側に位置する部分10aにも形成することもできる。しかしながら、辺面10における締付回転方向に見て凹部12の下流側に位置する部分10aにも形成した場合、後述する如く締付トルクが閾値に達する際には辺面10における締付回転方向に見て凹部12の下流側に位置する部分10aが主として変形される故、辺面10の変形に先立ってリブ14がその全体に渡って変形され、これに起因して締付トルクが閾値に達する前に締付トルク管理具2が締結具から離脱してしまう傾向がある。従って、辺面10における締付回転方向に見て凹部12の下流側に位置する部分10aにはリブ14を配設しないことが望ましい。
【0017】
図3を参照することによって明確に理解される如く、図示の実施形態においては、収納穴4の上端には円形内周面を有する付加部16が付設されている。この付加部16の内周面は収納穴4の内周面よりも半径方向内側に位置する(後に更に言及するとおり、付加部16には、緩み止めナットの上面に形成されている円環形状部が収納される)。収納穴4の内周面下端部には面取加工が施されている。
【0018】
図1乃至
図5を参照して説明を続けると、上記外周面8は上述とおり締結具のトルク付加多角形の相似形状である。図示の実施形態においては、後述するとおり締結具は六角ナットであり、従って上記外周面8は正六角形であり、締結具の正六角形トルク付加正多角形の1.2乃至1.6倍程度であるのが好都合である。上記収納穴4における辺面10の各々と外周面8における辺面18の各々と
平行であるのが好都合である。後述するとおり収納穴4に締結具を収納した状態で外周面8に付加するトルクが閾値を超えた時に収納穴4を規定している内周面6は変形するが、内周面6から外周面8に渡って亀裂が生成されて締付トルク管理具2の全体が破損されてしまうことを確実に回避するために、内周面6における直径方向に対向する角(辺面10と辺面10の交差点)間の長さX1(
図5)は、外周面8における直径方向に対向する辺面18間の長さX2(
図4)よりも小さいことが望ましい。
【0019】
図示の実施形態においては、締付トルク管理具2の上端部には半径方向内方に延出する内側フランジ部20が形成されている。内側フランジ部20の内周面主部は円筒形状で下端部は円錐台形状であり、内側フランジ部20の内径は収納穴4の上記付加部16の内径よりも小さく、従って付加部16と内側フランジ20との境界領域には下方を向いた円環状肩面22が規定されている。一方、締付トルク管理具2の下端部には半径方向外方に延出した外側フランジ部24が形成されている。外側フランジ24の外周面は円筒形状である。締付トルク管理具2の上面(内側フランジ部20の上面を含む)は、実質上水平な平面でよく、同様に締付トルク管理具2の下面(外側フランジ部24の下面を含む)も実質上水平な平面でよい。
【0020】
上述したとおりの締付トルク管理具2はそれ単独で市場に流通させることもできるが、
図6及び
図7(
図7においては、締結具即ち六角ナット26を収納穴4内に圧入することによってリブ14が幾分弾性乃至塑性変形されるが、かような変形を図示することなくリブ14が変形しない状態で六角ナット26に重ねて図示している)に示すとおり、締結具と組み合わせて市場に流通させるのが好都合である。
図6及び
図7に示す実施形態においては、締結具の典型例として緩み止め六角ナット26が図示されている。かかる六角ナット26の外周面28は正六角形であり、六角ナット26の製作誤差が充分に小さい場合には締結具収納部4に形成されている収納穴8に関する上記仮想正六角形よりも若干大きい(換言すれば、締付トルク管理具2における収納穴4の仮想正六角形内周面は六角ナット26の正六角形である外周面28よりも小さく設定されている)。そして、六角ナット26の主部、即ち下端部を除く部分、が収納穴8内に圧入される。六角ナット26の上面に形成されている円環形状部30は付加部16内に収納され、その上端縁が肩面22に当接される。そして、六角ナット26は、上記締付回転方向(
図4において時計方向、
図5において反時計方向)に見て上記凹部12の下流側に位置する部分10aと共にリブ14が六角ナット26の外周面28に圧接することによって収納穴4内に保持される。而して、適宜の合成樹脂から射出成形される締付トルク管理具2の製作公差は比較的小さく、従って収納穴4の内周面の製作誤差は比較的小さいのに対して、六角ナット26の製作公差は比較的大きく、従って六角ナット26の外周面28の製作誤差は比較的大きいが、収納穴4の内周面に対する六角ナット26の外周面28の比較的大きな製作誤差が収納穴4の内周面の所要部分に形成されているリブ14の弾性乃至塑性変形によって補償される。それ故に、収納穴4内に六角ボルト26を圧入するのに必要な力が過大或いは過小になることが可及的に回避される。
【0021】
上述したとおりの締付トルク管理具2の使用様式について説明すると、締付トルク管理具2に六角ナット26が既に組み合わされている場合には、その六角ナット26を締結すべきボルトの軸部32(
図6)に被嵌する(締付トルク管理具2に六角ナット26が組み合わされていない場合には、ボルトに仮締結した六角ナット26を締付トルク管理具2の収納穴4に収納する)。次いで、
図6に二点鎖線で示す如く、自動又は手動締付具のソケット34(ソケット34の内周面は締付トルク管理具2の外周面に対応した六角筒形状である)を締付トルク管理具2の外周面8に嵌合する。この際には、ソケット34の下端を締付トルク管理具2の外側フランジ部24の上面に当接せしめることによって、ソケット34を締付トルク管理具2に対して充分容易に所要とおりに位置させることができる。しかる後に、締結具のソケット34を締結方向(
図4において時計方向、
図5において反時計方向)に回転する。ソケット34から締付トルク管理具2に加えられるトルクは六角ナット26に伝えられ、これによって六角ナット26がボルトの軸部32に締め付けられる。ボルトの軸部32に対して六角ナット26が軸線方向に相対的に比較的長い距離に渡って進行する場合には、
図6に二点鎖線で図示する如く、ボルトの軸部32が締付トルク管理具2の内側フランジ部20を貫通して上方に移動する。
【0022】
角ナット26に伝えられる締付トルクが所定閾値を超えると、
図8に図示する如く、収納穴4の内周面、特に締付回転方向に見て凹部12よりも下流側の部位(更に詳しくは締付回転方向に見て上流側の辺面10と下流側の辺面10との境界領域から上流側の辺面10の凹部12よりも下流側の部位)が締付回転方向とは反対側へ向かって押圧されて変形され、六角ナット26に対して締付トルク管理具2が空転するようになり、かくしてボルトに対して六角ナット26が所要締付トルクで締結される。六角ナット26に対して締付トルク管理具2が空転し始めた際には、六角ナット26の外周面角部が収納穴4の凹部12の上流面12bに激しく衝突することがあるが、
凹部12の底面12aと上流面12bとが鈍角を形成している故に、六角ナット26の外周面角部から凹部12の上流面12bに加えられる力が適宜に緩衝乃至消失される。加えて、締付トルク管理具2の外周面8に被嵌されたソケット34が締付トルク管理具2の補強部材として機能する。かくして、締付トルク管理具2に亀裂が生成され或いは締付トルク管理具2が破損されてしまうことが可及的に回避される。六角ナット26に対して締付トルク管理具2が空転し始めた後においては、ボルトの軸部32に所要締付トルクで締め付けられ六角ナット26から締付トルク管理具2を充分容易に離脱することができる。
【0023】
上述した実施形態においては、保持突出部は収納穴4の軸線方向に延びる1個のリブ14から構成されているが、所望ならば、収納穴4の軸線方向又は周方向に間隔おいて軸線方向に延びる複数個のリブ、収納穴4の周方向に延びる1個或いは収納穴4の軸線方向又は周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のリブ、或いは適宜に配設された複数個の突起(横断面形状は円形であるのが好都合である)から保持突出部を構成することもできる。
【符号の説明】
【0024】
2:締付トルク管理具
4:収納穴
6:内周面
8:外周面
10:辺面
12:凹部
12a:凹部の底面
12b:凹部の上流面
12c:凹部の下流面
14:リブ(保持突出部)
20:内側フランジ部
24:外側フランジ部
26:六角ナット
32:ボルトの軸部
34:締付具のソケット