(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】電子レンジ用調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20220803BHJP
A47J 36/06 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
A47J27/00 107
A47J36/06 E
(21)【出願番号】P 2018110746
(22)【出願日】2018-06-08
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000112288
【氏名又は名称】ピジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 秀紀
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-54943(JP,A)
【文献】特開2012-85846(JP,A)
【文献】登録実用新案第3214416(JP,U)
【文献】特開2016-27930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
A47J 36/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱される食材を収容するとともに設置面に設置された状態で上方が開口した収納容器と、
前記収納容器に着脱可能に取り付けられ、前記収納容器の上方を閉塞して食材を加熱するための加熱用空間を形成する蓋部と、を備え、
前記蓋部は、
該蓋部の長手方向の一端に配置され、前記加熱用空間と外部空間とを連通させる複数のスリットが形成された蒸気放出部と、
前記蒸気放出部を取り囲むとともに上端部が前記設置面に対して第1高さに配置される周壁面と、
前記蓋部の長手方向の他端から前記蒸気放出部に向けて下降する方向に傾斜する傾斜面と、を有し、
前記蓋部の長手方向の他端における前記傾斜面の第2高さが前記第1高さよりも低いことを特徴とする電子レンジ用調理器。
【請求項2】
前記複数のスリットは、前記蓋部の長手方向に沿って延びるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ用調理器。
【請求項3】
前記蓋部は、該蓋部の長手方向の一端における前記傾斜面と前記蒸気放出部の前記傾斜面側の端部とを接続するとともに前記傾斜面よりも前記設置面に対する傾斜角が大きい接続壁面を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子レンジ用調理器。
【請求項4】
前記設置面に対する前記傾斜面の傾斜角度は、1°以上かつ10°以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子レンジ用調理器。
【請求項5】
前記蒸気放出部を平面視した場合の領域面積に対する前記複数のスリットの開口面積の比は、40%以上かつ60%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子レンジ用調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ用調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子レンジでお粥やお米等を調理可能な調理容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示される調理容器は、お椀形の本体容器の開口部を、同じくお椀形の泡受用容器の底壁によって閉鎖するものである。米と水を入れた本体容器を加熱して水が沸騰すると、小径の泡が泡受用容器の底壁に設けられた小径の孔を通って泡受用容器に噴出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の調理容器は、円形の底壁から上方に向かって拡大するように側壁が形成されている。底壁に形成された小径の孔から側壁の上端までの距離は側壁のいずれの位置でも同じとなっている。そのため、小径の孔を通って噴出した泡が側壁のいずれかの位置で側壁の上端へ到達すると、その時点で泡受用容器から泡が吹きこぼれてしまう。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、収納容器を閉塞する蓋部の蒸気放出部から噴出した泡が蒸気放出部を取り囲む周壁面から吹きこぼれることを抑制することができる電子レンジ用調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明によれば、加熱される食材を収容するとともに設置面に設置された状態で上方が開口した収納容器と、前記収納容器に着脱可能に取り付けられ、前記収納容器の上方を閉塞して食材を加熱するための加熱用空間を形成する蓋部と、を備え、前記蓋部は、該蓋部の長手方向の一端に配置され、前記加熱用空間と外部空間とを連通させる複数のスリットが形成された蒸気放出部と、前記蒸気放出部を取り囲むとともに上端部が前記設置面に対して第1高さに配置される周壁面と、前記蓋部の長手方向の他端から前記蒸気放出部に向けて下降する方向に傾斜する傾斜面と、を有し、前記蓋部の長手方向の他端における前記傾斜面の第2高さが前記第1高さよりも低いことを特徴とする電子レンジ用調理器により解決される。
【0007】
前記構成に係る電子レンジ用調理器によれば、加熱用空間で水と食材(例えば、米)を加熱して水が沸騰した場合に、蓋部の長手方向の一端に配置される蒸気放出部から食材の成分を含む泡が噴出する。蒸気放出部に向けて下降する傾斜面の蓋部の長手方向の他端における第2高さは、蒸気放出部を取り囲む周壁面の上端部の第1高さよりも低い。そのため、蒸気放出部から噴出した泡は、周壁面の上端部に到達する前に傾斜面に到達し、蓋部の一端側から他端側へ向けて上昇しながら冷却されて縮小あるいは消滅する。蒸気放出部から傾斜面に到達した泡が吹きこぼれるのは、傾斜面の最も低い位置から最も高い位置まで到達し、更にその位置よりも上方の周壁面の上端部を超えた場合に限られる。したがって、前記構成に係る電子レンジ用調理器によれば、収納容器を閉塞する蓋部の蒸気放出部から噴出した泡が蒸気放出部を取り囲む周壁面から吹きこぼれることを抑制することができる。
【0008】
本発明に係る電子レンジ用調理器において、好ましくは、前記複数のスリットは、前記蓋部の長手方向に沿って延びるように形成されていることを特徴とする。
前記構成の電子レンジ用調理器によれば、複数のスリットが延びる方向と傾斜面が傾斜する方向が、蓋部の長手方向で一致している。そのため、蒸気放出部から噴出した泡は、周壁面へ直接導かれる蓋部の短手方向ではなく、傾斜面へ向けた長手方向に導かれる。よって、蒸気放出部から噴出した泡が周壁面へ直接導かれて周壁面の上端部から泡が吹きこぼれることを抑制することができる。
【0009】
本発明に係る電子レンジ用調理器において、好ましくは、前記蓋部は、該蓋部の長手方向の一端における前記傾斜面と前記蒸気放出部の前記傾斜面側の端部とを接続するとともに前記傾斜面よりも前記設置面に対する傾斜角が大きい接続壁面を有することを特徴とする。
前記構成の電子レンジ用調理器によれば、蒸気放出部から噴出した泡は、傾斜面よりも設置面に対する傾斜角が大きい接続壁面を超えない限り、蒸気放出部から加熱用空間へ導かれる。蒸気放出部から噴出した泡は、接続壁面を超えてから周壁面の上端部に到達する前に傾斜面に到達し、蓋部の一端側から他端側へ向けて上昇しながら冷却されて縮小あるいは消滅する。よって、蒸気放出部から噴出した泡が周壁面の上端部から泡が吹きこぼれることを抑制することができる。
【0010】
本発明に係る電子レンジ用調理器において、好ましくは、前記設置面に対する前記傾斜面の傾斜角度は、1°以上かつ10°以下であることを特徴とする。
前記構成の電子レンジ用調理器によれば、傾斜面の傾斜角を1°以上とすることにより、傾斜面に到達した泡が傾斜面の最も高い位置まで到達することを適切に抑制することができる。また、傾斜面の傾斜角を10°以下とすることにより、蓋部の高さを低くし、電子レンジ用調理器を小型化することができる。
【0011】
本発明に係る電子レンジ用調理器において、好ましくは、前記蒸気放出部を平面視した場合の領域面積に対する前記複数のスリットの開口面積の比は、40%以上かつ60%以下であることを特徴とする。
前記構成の電子レンジ用調理器によれば、領域面積に対する開口面積の比を40%以上かつ60%以下とすることにより、蒸気放出部を平面視した領域面積に対する複数のスリットの開口面積を適切な大きさで確保することができる。そのため、加熱用空間の内部圧力を適切に保ちつつ、蒸気放出部から過剰な泡を放出して吹きこぼれないように適切に冷却することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、収納容器を閉塞する蓋部の蒸気放出部から噴出した泡が蒸気放出部を取り囲む周壁面から吹きこぼれることを抑制することができる電子レンジ用調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子レンジ用調理器を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す電子レンジ用調理器の縦断面図である。
【
図4】
図3に示す収納容器のI-I矢視断面図である。
【
図5】
図4に示す収納容器のII-II矢視断面図である。
【
図8】電子レンジ用調理器で食材を加熱した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る電子レンジ用調理器300について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る電子レンジ用調理器300を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す電子レンジ用調理器300の縦断面図である。
【0016】
図1および
図2に示すように、本実施形態の電子レンジ用調理器300は、電子レンジにより加熱される食材を収納する収納容器100と、収納容器100に着脱可能に取り付けられる蓋部200と、を備える。ここで、食材とは、水とともに加熱されるものであり、例えば、米等の穀類である。本実施形態の電子レンジ用調理器300は、例えば、水とともに米を加熱してお粥を調理するために用いられる。
【0017】
図2に示すように、本実施形態の収納容器100は、設置面ISに設置された状態で上方が開口した状態となる。本実施形態の蓋部200は、収納容器100の上方を閉塞して食材を加熱するための加熱用空間HSを形成する。蓋部200は、蓋部200の長手方向の一端(
図2の左端)に配置され、加熱用空間HSと外部空間OSとを連通させる蒸気放出部270を有する。蓋部200は、長手方向の他端(
図2の右端)から蒸気放出部270に向けて下降する方向に傾斜する傾斜面260を有する。
【0018】
図2に示すように、蒸気放出部270を取り囲む壁面の上端部201は第1高さH1に配置されている。それに対して、蓋部200の長手方向の他端における傾斜面260は設置面ISに対して第2高さH2に配置されている。第2高さH2は、第1高さH1よりも低い。傾斜面260は、蒸気放出部270側の端部で最も高さが低く、設置面ISに対して第3高さH3となっている。蒸気放出部270は、設置面ISに対して第4高さに配置されている。第3高さH3は第2高さH2よりも低く、第4高さH4は第3高さH3よりも低い。
【0019】
次に、電子レンジ用調理器300が備える収納容器100について、図面を参照して説明する。
図3は、
図1に示す収納容器100の側面図である。
図4は、
図3に示す収納容器100のI-I矢視断面図である。
図5は、
図4に示す収納容器100のII-II矢視断面図である。
【0020】
図3から
図5に示すように、収納容器100は、容器本体120と、容器本体120の両端部の上面に設けられた一対の持ち手130と、容器本体120の下端に設けられた足部140と、を備える。
容器本体120は、
図3に示す一方向が長く
図4に示す他方向(
図3の方向と直交する方向)の長さが短い形状となっている。容器本体120の長手方向の長さはL1であり、容器本体120の短手方向の長さはL1よりも短いL2である。
【0021】
図3に示すように、容器本体120は、長手方向の一端部121および他端部122に、半球をさらに半分に分割した四半球状の内周面を有する。容器本体120は、一端部121と他端部122の間に本体部123を挟む形状で樹脂材料により一体に形成されている。
図4に示すように、容器本体120は、鉛直方向の下方に向けて凹んだ曲面形状を有する。
【0022】
図4および
図5に示すように、容器本体120の内周面には、一部の領域に溝部110が形成されており、その他の部分には溝部110が形成されていない。使用者は、溝部110に食材を載せて調理用スプーン(図示略)で食材を溝部110に押し付けることにより、食材をすり潰すことができる。また、使用者は、溝部110ですり潰した食材を、調理用スプーンで溝部110以外の領域に移動させることで、すり潰した食材を容易に調理用スプーンで掬うことができる。容器本体120の内周面の溝部110が形成されない領域には、計量線115が形成されている。計量線115は、収納容器100に収納する水等の液体の量の目安となる線である。
【0023】
図4および
図5に示すように、収納容器100の上端側の内周面には、収納容器100の上端側の全周に渡って、蓋部200の下端側の段部202を収納するための段部101が形成されている。段部101に蓋部200の下端側の段部202を収納することにより、蓋部200が収納容器100に取り付けられる。収納容器100が蓋部200に取り付けられると、段部101と段部202が接触する部分が、収納容器100の上端側の全周に渡って加熱用空間HSと外部空間OSとの連通を遮断した状態となる。
【0024】
次に、電子レンジ用調理器300が備える蓋部200について、図面を参照して説明する。
図6は、
図1に示す蓋部200の縦断面図である。
図7は、
図1に示す蓋部200の平面図である。
図6および
図7に示すように、蓋部200は、長手方向(
図6,
図7の左右方向)と短手方向(
図6,
図7の上下方向)を有し、下方が開口した箱型の構造体である。蓋部200は、樹脂材料により一体に形成されている。
【0025】
蓋部200は、収納容器100に取り付けられた状態でそれぞれ鉛直方向に延びる第1壁面210,第2壁面220,第3壁面230,第4壁面240と、接続壁面250と、傾斜面260と、蒸気放出部270と、を有する。
【0026】
図7に示すように、第1壁面210および第2壁面220は、それぞれ蓋部200の長手方向(
図7の左右方向)に沿って互いに平行となるように延びる壁面である。第3壁面230は、第1壁面210および第2壁面220を連結するとともに平面視した場合に半円状に形成される壁面である。第4壁面240は、第1壁面210および第2壁面220を連結するとともに平面視した場合に半円状に形成される壁面である。第1壁面210,第2壁面220,第3壁面230,第4壁面240は、蒸気放出部270を取り囲むように配置される周壁面を形成する。
【0027】
接続壁面250は、蓋部200の短手方向に延び、蓋部200の長手方向の一端における傾斜面260と蒸気放出部270の傾斜面260側の端部とを接続する壁面である。
傾斜面260は、蓋部200の長手方向の他端(
図7の右端)から蒸気放出部270に向けて下降する方向に傾斜する面である。
図6に示すように、接続壁面250の設置面ISに対する傾斜角θ2は、傾斜面260の設置面ISに対する傾斜角θ1よりも大きい。ここで、傾斜角θ1は、例えば、1°以上かつ10°以下とするのが望ましい。また、傾斜角θ2は、例えば、45°以上かつ80°以下とするのが望ましい。
【0028】
図6に示すように、蓋部200の長手方向の長さをL3とし、傾斜面260の長手方向の長さをL4とした場合、L4/L3を50%以上かつ80%以下とするのが望ましい。L3に対してL4を十分に確保することで、傾斜面260において食材の成分を含む泡を十分に冷却することができる。
【0029】
図7に示すように、蒸気放出部270には、蓋部200の長手方向に沿って延びるように形成される複数のスリット271が形成されている。ここで、第3壁面230と接続壁面250に囲まれる蒸気放出部270を平面視した場合の全領域の面積を領域面積S1とする。また、蒸気放出部270を平面視した場合に複数のスリット271により形成される開口の総面積を開口面積S2とする。本実施形態においては、S2/S1を40%以上かつ60%以下とするのが望ましい。
【0030】
図6に示すように、蓋部200の下端側の外周面には、蓋部200の下端側の全周に渡って、収納容器100の上端側の段部101に収納するための段部202が形成されている。蓋部200の下端側の段部202を収納容器100の段部101に収納することにより、蓋部200が収納容器100に取り付けられる。蓋部200が収納容器100に取り付けられると、段部202と段部101が接触する部分が、蓋部200の下端側の全周に渡って加熱用空間HSと外部空間OSとの連通を遮断した状態となる。
【0031】
次に、電子レンジ用調理器300で食材を加熱した場合の傾斜面260の作用について図面を参照して説明する。
図8は、電子レンジ用調理器300で食材を加熱した状態を示す縦断面図である。
図8は、電子レンジ用調理器300の収納容器100に水と米を収納し、蓋部200を収納容器100に取り付けた状態で電子レンジ(図示略)により加熱した状態を示す。
【0032】
図8に示すように、電子レンジ用調理器300を電子レンジで加熱すると、水Wが沸騰して米粒Rが矢印Aに示す方向に対流する。水Wの上方には、米粒Rの成分と水により形成される小径の泡B1を含む層が形成される。小径の泡B1の上方には、大径の泡B2を含む層が形成される。泡B2を含む層は、加熱時間が長くなるにつれて上方へ向けて領域を拡大し、蒸気放出部270に到達する。蒸気放出部270に到達した泡B2は、スリット271を通過する際に小径化され、加熱用空間HSの内部で泡B2が形成されるのに従って蒸気放出部270から更に上方に向けて領域を拡大する。
【0033】
蒸気放出部270の上方に領域を拡大した泡B2は、接続壁面250から傾斜面260の蒸気放出部270側の端部に到達する。傾斜面260へ到達した泡B2は、傾斜面260の一端(蒸気放出部270側の端部)から他端(第4壁面240側の端部)に向けて領域を拡大する。傾斜面260が外部空間OSに露出しているため、泡B2は、傾斜面260の一端から他端に到達するまでに冷却されて縮小あるいは消滅する。また、傾斜面260の他端よりも壁面の上端部201の位置が高いため、壁面の上端部201に到達しない泡B2は電子レンジ用調理器300の外部へ吹きこぼれることはない。
【0034】
以上説明した本実施形態の電子レンジ用調理器300が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態に係る電子レンジ用調理器300によれば、加熱用空間HSで水と食材(例えば、米)を加熱して水が沸騰した場合に、蓋部200の長手方向の一端に配置される蒸気放出部270から食材の成分を含む泡B2が噴出する。蒸気放出部270に向けて下降する傾斜面260の蓋部200の長手方向の他端における第2高さH2は、蒸気放出部270を取り囲む周壁面の上端部201の第1高さH1よりも低い。
【0035】
そのため、蒸気放出部270から噴出した泡B2は、周壁面の上端部201に到達する前に傾斜面260に到達し、蓋部200の一端側から他端側へ向けて上昇しながら冷却されて縮小あるいは消滅する。蒸気放出部270から傾斜面に到達した泡が吹きこぼれるのは、傾斜面260の最も低い位置から最も高い位置まで到達し、更にその位置よりも上方の周壁面の上端部201を超えた場合に限られる。したがって、本実施形態に係る電子レンジ用調理器300によれば、収納容器100を閉塞する蓋部200の蒸気放出部270から噴出した泡が蒸気放出部270を取り囲む周壁面から吹きこぼれることを抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態の電子レンジ用調理器300によれば、複数のスリット271が延びる方向と傾斜面260が傾斜する方向が、蓋部200の長手方向で一致している。そのため、蒸気放出部270から噴出した泡は、周壁面へ直接導かれる蓋部200の短手方向ではなく、傾斜面260へ向けた長手方向に導かれる。よって、蒸気放出部270から噴出した泡が周壁面へ直接導かれて周壁面の上端部201から泡が吹きこぼれることを抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態の電子レンジ用調理器300によれば、蒸気放出部270から噴出した泡B2は、傾斜面260よりも設置面ISに対する傾斜角が大きい接続壁面250を超えない限り、蒸気放出部270から加熱用空間HSへ導かれる。蒸気放出部270から噴出した泡は、接続壁面250を超えてから周壁面の上端部201に到達する前に傾斜面260に到達し、蓋部200の一端側から他端側へ向けて上昇しながら冷却されて縮小あるいは消滅する。よって、蒸気放出部270から噴出した泡が周壁面の上端部201から泡が吹きこぼれることを抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態の電子レンジ用調理器300によれば、傾斜面260の傾斜角θ1を1°以上とすることにより、傾斜面260に到達した泡が傾斜面260の最も高い位置まで到達することを適切に抑制することができる。また、傾斜面260の傾斜角θ1を10°以下とすることにより、蓋部200の高さを低くし、電子レンジ用調理器300を小型化することができる。
【0039】
また、本実施形態の電子レンジ用調理器300によれば、蒸気放出部270を平面視した場合の領域面積に対する複数のスリットの開口面積の比を40%以上かつ60%以下とすることにより、蒸気放出部270を平面視した領域面積に対する複数のスリット271の開口面積を適切な大きさで確保することができる。そのため、加熱用空間HSの内部圧力を適切に保ちつつ、蒸気放出部270から過剰な泡を放出して吹きこぼれないように適切に冷却することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0041】
100・・・収納容器、 101・・・段部、 110・・・溝部、 120・・・容器本体、 121・・・一端部、 122・・・他端部、 123・・・本体部、 130・・・持ち手、 140・・・足部、 200・・・蓋部、 201・・・上端部、 202・・・段部、 210・・・第1壁面、 220・・・第2壁面、 230・・・第3壁面、 240・・・第4壁面、 250・・・接続壁面、 260・・・傾斜面、 270・・・蒸気放出部、 271・・・スリット、 300・・・電子レンジ用調理器、 HS・・・加熱用空間