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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】可変容量形ベーンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 14/00 20060101AFI20220803BHJP
   F04C 14/22 20060101ALI20220803BHJP
   F04C 2/344 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
F04C14/00 D
F04C14/22 B
F04C2/344 331J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018152465
(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公開番号】P2020026780
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘中 剛史
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-043606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 14/00
F04C 14/22
F04C 2/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量形ベーンポンプであって、
回転駆動されるロータと、
前記ロータに対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーンと、
前記ロータの回転に伴って前記ベーンの先端部が摺動する内周面を有し、前記ロータに対して偏心可能に設けられるカムリングと、
隣り合う前記ベーンと前記カムリングとによって画定されるポンプ室から吐出される作動流体が導かれる吐出通路と、
前記吐出通路に設けられ、供給される電流に応じて流路断面積が変化すると共に前記流路断面積が最小の状態において前記吐出通路における作動流体の流れを許容する電磁弁と、
前記吐出通路における前記電磁弁の前後の圧力差に応じて前記カムリングの偏心量を制御する偏心量制御弁と、を備え、
前記電磁弁は、
前記吐出通路における上流及び下流にそれぞれ接続される上流ポート及び下流ポートを有するハウジングと、
前記ハウジングに収容され、コイルに供給される電流に応じて移動して前記流路断面積を減少させる弁体と、
前記ハウジングに設けられ、前記流路断面積を減少させる方向への前記弁体の移動を制限して前記流路断面積が最小となる状態を規定する制限部と、を備え、
前記制限部は、前記コイルに電流が供給されて前記弁体が前記流路断面積を減少させる方向へ移動したときに前記弁体に接することにより前記弁体の移動を制限する段部であ
ことを特徴とする可変容量形ベーンポンプ。
【請求項2】
可変容量形ベーンポンプであって、
回転駆動されるロータと、
前記ロータに対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーンと、
前記ロータの回転に伴って前記ベーンの先端部が摺動する内周面を有し、前記ロータに対して偏心可能に設けられるカムリングと、
隣り合う前記ベーンと前記カムリングとによって画定されるポンプ室から吐出される作動流体が導かれる吐出通路と、
前記吐出通路に設けられ、供給される電流に応じて流路断面積が変化すると共に前記流路断面積が最小の状態において前記吐出通路における作動流体の流れを許容する電磁弁と、
前記吐出通路における前記電磁弁の前後の圧力差に応じて前記カムリングの偏心量を制御する偏心量制御弁と、を備え、
前記電磁弁は、
前記吐出通路における上流及び下流にそれぞれ接続される上流ポート及び下流ポートを有するハウジングと、
前記ハウジングに収容され、コイルに供給される電流に応じて移動して前記流路断面積を変化させる弁体と、
前記ハウジングと前記弁体とによって形成される圧力室と、を備え
前記弁体は、軸方向に貫通し前記上流ポート及び下流ポートの一方と前記圧力室とを連通する第1貫通孔と、前記第1貫通孔の内周面と前記弁体の外周面との間を貫通し前記第1貫通孔と前記上流ポート及び下流ポートの他方と連通する第2貫通孔と、を有し、
前記第2貫通孔が、最小の前記流路断面積を規定する
ことを特徴とする可変容量形ベーンポンプ。
【請求項3】
可変容量形ベーンポンプであって、
回転駆動されるロータと、
前記ロータに対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーンと、
前記ロータの回転に伴って前記ベーンの先端部が摺動する内周面を有し、前記ロータに対して偏心可能に設けられるカムリングと、
隣り合う前記ベーンと前記カムリングとによって画定されるポンプ室から吐出される作動流体が導かれる吐出通路と、
前記吐出通路に設けられ、供給される電流に応じて流路断面積が変化すると共に前記流路断面積が最小の状態において前記吐出通路における作動流体の流れを許容する電磁弁と、
前記吐出通路における前記電磁弁の前後の圧力差に応じて前記カムリングの偏心量を制御する偏心量制御弁と、を備え、
前記電磁弁は、
前記吐出通路における上流及び下流にそれぞれ接続される上流ポート及び下流ポートを有するハウジングと、
前記ハウジングに収容され、コイルに供給される電流に応じて移動して前記流路断面積を変化させる弁体と、
前記ハウジングに設けられ、前記流路断面積を減少させる方向への前記弁体の移動を制限して前記流路断面積が最小となる状態を規定する制限部と、を備え、
前記弁体は、前記制限部により移動が制限された状態において前記上流ポートと前記下流ポートのうちの一方のポートに挿入されるシャフトを有し前記シャフトの外周面と前記一方のポートの内周面との間隔により最小の前記流路断面積を規定する
ことを特徴とする可変容量形ベーンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量形ベーンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される流体圧機器の流体圧供給源として、可変容量形ベーンポンプが知られている。
【0003】
特許文献1に開示されている可変容量形ベーンポンプは、カムリングの偏心量を制御する制御弁を備えている。制御弁は、吐出通路における絞り部の前後の圧力差が大きいほど偏心量を減少させるように構成されている。絞り部の前後の圧力差は、吐出通路における作動流体の流量、すなわち吐出流量が大きいほど大きくなるため、ロータの回転速度が増加して吐出流量が所定値に達した場合には、カムリングの偏心量が減少してポンプの押しのけ容積が減少する。そのため、吐出流量は、ロータの回転速度に関わらず略一定に保たれる。
【0004】
また、特許文献1における絞り部は、互いに並列に設けられる固定オリフィスと電磁開閉弁とを含む。電磁開閉弁がコントローラの指令を受けて開閉されると、絞り部の流路断面積が増減し、絞り部の前後の圧力差が増減する。これにより、可変容量形ベーンポンプの最小流量特性と最大流量特性が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-70541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される可変容量形ベーンポンプでは、固定オリフィスと電磁開閉弁とを設けるためのスペースが必要であり、可変容量形ベーンポンプが大型化する。
【0007】
本発明は、可変容量形ベーンポンプを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ロータと、複数のベーンと、カムリングと、吐出通路と、吐出通路に設けられ流路断面積が最小の状態において吐出通路における作動流体の流れを許容する電磁弁と、吐出通路における電磁弁の前後の圧力差に応じてカムリングの偏心量を制御する偏心量制御弁と、を備え、電磁弁は、ハウジングと、ハウジングに収容される弁体と、ハウジングに設けられ、流路断面積を減少させる方向への弁体の移動を制限して流路断面積が最小となる状態を規定する制限部と、を備え、制限部は、コイルに電流が供給されて弁体が流路断面積を減少させる方向へ移動したときに弁体に接することにより弁体の移動を制限する段部である。
【0009】
この発明では、電磁弁は、流路断面積が最小の状態において、所定の流路断面積を有する固定オリフィスとして機能する。したがって、固定オリフィスを電磁弁とは別に設けることなく可変容量形ベーンポンプにおける最小流量特性を設定することができる。また、流路断面積が最小となる状態が段部によって規定される。したがって、電流の供給量を高い精度で制御することなく、可変容量形ベーンポンプの最小流量特性を設定することができる。
【0012】
また、本発明は、電磁弁が、ハウジングと弁体とによって形成される圧力室を有し、弁体は、軸方向に貫通する第1貫通孔と、第1貫通孔の内周面と弁体の外周面との間を貫通する第2貫通孔と、を有し、第2貫通孔が、最小の流路断面積を規定する。
【0013】
この発明では、第1貫通孔の流路抵抗を小さくすることができる。したがって、電磁弁によって可変容量形ベーンポンプの最小流量特性を設定しつつ、上流ポート又は下流ポートと圧力室との圧力差に起因して弁体に作用する力を小さくすることができる。
【0014】
また、本発明は、弁体が、制限部により移動が制限された状態において上流ポートと下流ポートのうちの一方のポートに挿入されるシャフトを有しシャフトの外周面と一方のポートの内周面との間隔により最小の流路断面積を規定する。
【0015】
この発明では、電磁弁の製造時における弁体の精度や一方のポートに対する制限部の位置のずれを許容することができる。したがって、電磁弁の最小の流路断面積の精度よく設定することができ、ベーンポンプにおける最小流量特性のばらつきを低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、可変容量形ベーンポンプを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る可変容量形ベーンポンプの構成図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る可変容量形ベーンポンプの流量特性を示すグラフである。
図3図3は、図1に示す電磁弁の断面図であり、流路断面積が最大の状態を示す。
図4図4は、図1に示す電磁弁の断面図であり、流路断面積が最小の状態を示す。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係る可変容量形ベーンポンプの電磁弁の断面図である。
図6図6は、本発明の第3実施形態に係る可変容量形ベーンポンプの電磁弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
<第1実施形態>
まず、図1から図4を参照して、第1実施形態に係る可変容量形ベーンポンプ100(以下、単に「ベーンポンプ100」とも称する)について説明する。ベーンポンプ100は、車両や産業機械に搭載される流体圧機器1(例えばパワーステアリング装置や無段変速機等)に作動油を供給する供給源として用いられる。
【0020】
ベーンポンプ100は、回転駆動されるロータ10と、ロータ10に径方向に往復動自在に設けられる複数のベーン20と、ロータ10及びベーン20を収容するカムリング30と、を備えている。ロータ10は、不図示のエンジンの駆動シャフト2に連結されており、エンジンの駆動によって駆動シャフト2と共に回転する。
【0021】
ベーン20は、ロータ10の回転に伴って遠心力によって径方向外側に付勢され、ベーン20の先端部21がカムリング30の内周面31に沿って摺動する。ロータ10とカムリング30とは、不図示のポンプボディとポンプカバーとの間に設けられており、ロータ10とカムリング30との間には、各ベーン20によって仕切られたポンプ室30aが複数形成される。
【0022】
カムリング30は、ロータ10の中心に対して偏心している。そのため、ロータ10の回転に伴ってベーン20が往復動し、ポンプ室30aが拡縮する。ポンプ室30aの拡大に伴って、タンク3内の作動油が吸込通路3a及び不図示の吸込ポートを通じてポンプ室30aに吸い込まれる。ポンプ室30aの縮小に伴って、ポンプ室30aから作動油が不図示の吐出ポートを通じて吐出される。吐出された作動油は、吐出通路3bに導かれて流体圧機器1に供給される。
【0023】
ベーンポンプ100の押しのけ容積は、カムリング30の偏心量に応じて変化する。具体的には、偏心量が減少すると、押しのけ容積は減少する。偏心量が増加すると、押しのけ容積は増加する。なお、押しのけ容積は、ロータ10の1回転当たりの作動油の吐出量に相当する。図1は、カムリング30が最大限偏心しておりベーンポンプ100の押しのけ容積が最大となっている状態を示している。
【0024】
カムリング30の偏心量を変化させる構成について説明する。
【0025】
ベーンポンプ100は、カムリング30を取り囲む環状のアダプタリング40と、カムリング30とアダプタリング40との間の圧力を制御する制御弁50と、を備える。制御弁50は、ベーンポンプ100のポンプボディ又はポンプカバーに設けられる。
【0026】
アダプタリング40は、支持ピン41を介してカムリング30を揺動自在に支持している。カムリング30がアダプタリング40に対して揺動することにより、ロータ10の中心に対する偏心量が変化する。
【0027】
カムリング30とアダプタリング40との間の空間は、支持ピン41と、アダプタリング40の内周に設けられるシール部材42と、によって、第1流体圧室40aと第2流体圧室40bとに区画されている。第1流体圧室40aが拡大し第2流体圧室40bが縮小する方向(図1における右方向)にカムリング30が揺動すると、偏心量が減少する。第1流体圧室40aが縮小し第2流体圧室40bが拡大する方向(図1における左方向)にカムリング30が揺動すると、偏心量が増加する。
【0028】
カムリング30の揺動は、第1流体圧室40aと第2流体圧室40bとの圧力差に起因して生じる。第1流体圧室40aと第2流体圧室40bは、制御弁50を介してタンク3に接続されており、第1流体圧室40aと第2流体圧室40bの圧力は、制御弁50を用いて制御される。
【0029】
制御弁50は、吐出通路3bに設けられる電磁弁60の前後の圧力差に応じて、第1ポジション50a又は第2ポジション50bに選択的に切り換えられる。第1ポジション50aでは、制御弁50は、第1流体圧室40aとタンク3との連通を許容する一方で第2流体圧室40bとタンク3との連通を遮断する。第2ポジション50bでは、制御弁50は、第1流体圧室40aとタンク3との連通を遮断する一方で第2流体圧室40bとタンク3との連通を可変絞り51を通じて許容する。可変絞り51は、電磁弁60の前後の圧力差が大きいほど開口面積が大きくなるように形成されている。
【0030】
また、制御弁50は、吐出通路3bにおける電磁弁60の上流に接続されており、第2ポジション50bにおいて、吐出通路3bと第1流体圧室40aとの連通を許容する。第2流体圧室40bは、吐出通路3bにおける電磁弁60の上流に固定絞り3cを通じて接続されている。
【0031】
図1及び図2を参照して、ベーンポンプ100の動作及び流量特性について説明する。
【0032】
ロータ10の回転速度Nが低い場合(例えば、ベーンポンプ100の始動時等)には、吐出通路3bにおける作動油の流量は少なく、電磁弁60の前後の圧力差は小さい。そのため、制御弁50は、リターンスプリング52の付勢力により第1ポジション50aに保たれる。
【0033】
このとき、第1流体圧室40aは、制御弁50を通じてタンク3と連通し、第1流体圧室40a内の圧力はタンク圧となる。一方で、第2流体圧室40bとタンク3との連通は制御弁50によって遮断される。第2流体圧室40bには吐出通路3bにおける作動油が導かれるため、カムリング30は、第2流体圧室40b内の圧力によって図1における左方向に付勢され、最大限偏心した位置で保持される。その結果、ベーンポンプ100の押しのけ容積は最大となる。
【0034】
押しのけ容積が最大の状態では、吐出流量Qは、ロータ10の回転速度Nに略比例して増加する(図2におけるA-Bの特性)。吐出流量Qが増加すると、電磁弁60の前後の圧力差が大きくなる。電磁弁60の前後の圧力差が所定の値に達すると、制御弁50は、リターンスプリング52の付勢力に抗して第2ポジション50bに切り換えられる。
【0035】
電磁弁60の前後の圧力差が所定の値となるロータ10の回転速度Nは、電磁弁60の流路断面積の変化に伴って変化する。具体的には、電磁弁60の流路断面積が小さいほど、電磁弁60の前後の圧力差が所定の値となるロータ10の回転速度Nは小さくなる。
【0036】
なお、図2において、N1は、電磁弁60の流路断面積が最大の状態において、電磁弁60の前後の圧力差が所定の値となるロータ10の回転速度Nである。電磁弁60の流路断面積の縮小に伴って、電磁弁60の前後の圧力差が所定の値となるロータ10の回転速度Nは低下する(例えば、図2におけるN2)。
【0037】
電磁弁60の前後の圧力差が所定の値に達して制御弁50が第2ポジション50bに切り換えられると、制御弁50は、第1流体圧室40aとタンク3との連通を遮断する一方で、第1流体圧室40aと吐出通路3bとの連通を許容する。そのため、第1流体圧室40a内の圧力は上昇する。また、制御弁50は、第2流体圧室40bとタンク3との連通を可変絞り51を通じて許容する。そのため、第2流体圧室40b内の圧力は低下し、カムリング30は、第1流体圧室40a内の圧力によって図1における右方向に揺動する。その結果、偏心量は減少し、ベーンポンプ100の押しのけ容積が減少する。
【0038】
制御弁50の可変絞り51は、電磁弁60の前後の圧力差が大きいほど、開口面積が大きくなるように形成されている。そのため、ロータ10の回転速度Nが更に高くなると、可変絞り51の開口面積が大きくなり、第2流体圧室40b内の圧力が更に低下する。その結果、偏心量が更に減少し、ベーンポンプ100の押しのけ容積が更に減少する。
【0039】
このように、ベーンポンプ100では、ロータ10の回転速度Nの上昇に伴って、制御弁50偏心量を減少させてベーンポンプ100の押しのけ容積を減少させる。そのため、ベーンポンプ100の吐出流量は、ロータ10の回転速度Nが所定の値以上である場合には、ロータ10の回転速度Nに関わらず略一定となる(図2におけるB-Cの特性やD-E特性)。
【0040】
前述のように、電磁弁60の流路断面積が最大の状態では、ロータ10の回転速度NがN1以上のときに制御弁50は第2ポジション50bに切り換えられ、カムリング30の偏心量が変化する。したがって、ベーンポンプ100の流量特性は、B-Cの特性となる。なお、電磁弁60の流路断面積が最大の状態で得られる特性(A-B-Cの特性)がベーンポンプ100の最大流量特性である。
【0041】
電磁弁60のコイル61にコントローラ70から電流が供給されて弁体67(図3参照)がスプリング62の付勢力に抗して移動すると、電磁弁60の流路断面積が小さくなる。その結果、電磁弁60の前後の圧力差が所定の値となるロータ10の回転速度NはN2となり、ベーンポンプ100の流量特性は、D-Eの特性となる。
【0042】
このように、ベーンポンプ100では、コントローラ70からコイル61へ供給される電流の大きさを変化させて電磁弁60の流路断面積を変化させることにより、流量特性を変更することができる。したがって、車両の走行時に流体圧機器1に作動油を適切な流量で供給することができる。
【0043】
電磁弁60は、流路断面積が最小となる状態において、吐出通路3bにおける作動油の流れを許容するように形成されている。そのため、電磁弁60は、所定の流路断面積を有する固定オリフィスとして機能する。したがって、固定オリフィスを電磁弁60とは別に設けることなくベーンポンプ100の流量特性を、F-Gで示される最小流量特性とすることができ、ベーンポンプ100を小型化することができる。なお、N3は、電磁弁60の流路断面積が最小の状態において、電磁弁60の前後の圧力差が所定の値となるロータ10の回転速度Nである。
【0044】
仮に、電磁弁60に代えて、流路断面積が最小の状態において作動油の流れを遮断する電磁弁、すなわち流路断面積を0(零)にできる電磁弁を用いる場合には、電磁弁と並列に固定オリフィスを設ける必要がある。この場合には、固定オリフィスを設けるためのスペースが必要であり、ベーンポンプが大型化する。
【0045】
また、作動油の流れを遮断可能に形成された電磁弁では、閉弁直前及び開弁直後において作動油の流れが著しく変化する。そのため、閉弁時及び開弁時において弁体の前後の圧力差が大きくなり、作動油の圧力により弁体に作用する力が大きくなる。つまり、電磁弁の開閉に大きな力が必要となる。その結果、コイルが大型化する。
【0046】
加えて、最小の流路断面積が0(零)になるように設計された電磁弁であっても、弁体や弁座等の部品には製造時の寸法のばらつきがあるため、閉弁状態において作動油が漏れることがある。また、固定オリフィスにも製造時の寸法のばらつきがある。そのため、電磁弁と固定オリフィスを互いに並列に設けて電磁弁を閉弁することにより流路断面積を最小にする構成では、最小流量特性は、固定オリフィスのばらつきと電磁弁のばらつきとの両方の影響を受け、ばらつきが大きくなる。
【0047】
本実施形態に係るベーンポンプ100では、前述のように、固定オリフィスを電磁弁60とは別に設けることなくベーンポンプ100における最小流量特性を設定することができるので、ベーンポンプ100を小型化することができる。
【0048】
また、電磁弁60は、流路断面積が最小となる状態において作動油の流れを許容するので、作動油の流れを著しく絞る状態を防ぐことができる。したがって、電磁弁60の動作時において弁体67の前後の圧力差が大きくなるのを防止することができ、作動油の圧力により弁体67に作用する力を軽減することができる。これにより、弁体67を移動させるのに必要な力を小さくすることができ、コイル61を小型化することができる。
【0049】
また、ベーンポンプ100の最小流量特性は、電磁弁60の最小の流路断面積によって設定される。したがって、最小流量特性のばらつきに影響を与える要因は、電磁弁60の最小の流路断面積のばらつきのみであり、最小流量特性のばらつきを低減することができる。
【0050】
電磁弁60の構造を、図3及び図4を参照してより詳細に説明する。図3は、コイル61に電流が供給されておらず、電磁弁60の流路断面積が最大となっている状態を示す。図4は、コイル61に電流が供給され、電磁弁60の流路断面積が最小となっている状態を示す。
【0051】
図3及び図4に示すように、電磁弁60は、弁体67とスプリング62を収容するハウジング63を有する。スプリング62はコイルスプリングであり、弁体67は、スプリング62を挿通した状態でハウジング63に収容されている。また、ハウジング63は、樹脂材料からなるボビン61aを介してコイル61を保持している。
【0052】
ボビン61aは、コイル61の内周に設けられる筒状部と、筒状部の両端部に設けられ鍔部と、を有し、ボビン61aの筒状部の内周にハウジング63が嵌め込まれている。コイル61の外周及びボビン61aの一方の鍔部は、カバー部材61bによって覆われており、ボビン61aの他方の鍔部は、環状のプレート部材61cによって覆われている。
【0053】
弁体67は、磁性材からなるプランジャ68と、非磁性材からなるシャフト69と、を有する。シャフト69は、プランジャ68を貫通した状態でプランジャ68に固定されており、プランジャ68と共に移動する。プランジャ68及びシャフト69は、コイル61の中心軸とシャフト69の中心軸とが略一致するようにハウジング63に収容されている。
【0054】
ハウジング63は、不図示のブッシュを介してプランジャ68を摺動可能に保持する保持部材64と、シャフト69の軸方向に保持部材64と間隔を空けて設けられるベース部材65と、を有する。保持部材64とベース部材65とは、筒状の連結部材66を用いて互いに連結されている。
【0055】
保持部材64には、ベース部材65と対向する一方の端面64aに開口する穴部64bと、穴部64bの底面64cと他方の端面64dとの間を貫通するプラグ孔64eと、が形成されている。穴部64bの内周には不図示のブッシュが設けられており、穴部64bにプランジャ68が挿入されている。プランジャ68と保持部材64の穴部64bとによって、圧力室64gが画定されている。
【0056】
プラグ孔64eにはプラグ64fが螺合により固定されており、プラグ64fによってプラグ孔64eが閉塞されている。プラグ64fは、プラグ孔64eから穴部64b内に突出しており、シャフト69及びプランジャ68が穴部64bの底面64cへ近づく方向(図3における右方向)へ移動するのを制限する。なお、プラグ64fは、穴部64b内に突出していなくてもよく、この場合には、シャフト69及びプランジャ68の移動は、穴部64bの底面64cによって制限される。
【0057】
ベース部材65は、保持部材64と対向する一方の端面65aに開口する大径穴部65bと、大径穴部65bに連続して形成される中径穴部65cと、中径穴部65cに連続して形成される小径穴部65dと、を有する。大径穴部65b、中径穴部65c及び小径穴部65dは、同軸に設けられる。
【0058】
大径穴部65bの内径は、保持部材64の穴部64bと同様に、プランジャ68の外径と略同じであり、プランジャ68は大径穴部65bの内周に沿って移動可能である。中径穴部65cの内径は、大径穴部65bの内径よりも小さく、中径穴部65cと大径穴部65bとの間には、プランジャ68の摺動を制限する制限部としての段部65eが形成されている。
【0059】
ベース部材65は、磁性材からなり、コイル61の励磁によって形成される磁束を導く。ベース部材65の段部65eはプランジャ68と対向しており、コイル61が励磁されたときには、プランジャ68は段部65eに近づく方向(図3における左方向)に吸引される。つまり、プランジャ68は、コイル61に電流を供給することによって形成される磁界に応じて、段部65eに向かって移動する。
【0060】
ベース部材65の小径穴部65dの内径は、中径穴部65cの内径よりも小さく、小径穴部65dと中径穴部65cとの間には、段部65fが形成されている。段部65fとプランジャ68との間には、スプリング62が圧縮された状態で設けられており、プランジャ68及びシャフト69は、スプリング62によって段部65fから離れる方向(図3における右方向)に付勢されている。
【0061】
また、ベース部材65は、他方の端面65gに開口する第1ポート65hと、第1ポート65hと小径穴部65dとを接続する接続穴部65iと、接続穴部65iの内周面とベース部材65の外周面との間を貫通する第2ポート65jと、を有する。第1ポート65hは、吐出通路3bにおける上流に接続され、第2ポート65jは、吐出通路3bにおける下流に接続される。ポンプ室30a(図1参照)から吐出された作動油は、第1ポート65h、接続穴部65i及び第2ポート65jを通じて流体圧機器1に供給される。
【0062】
シャフト69は、中径穴部65cと小径穴部65dを挿通している。プランジャ68がスプリング62の付勢力に抗して図3における左方向に摺動すると、シャフト69の先端69aが第1ポート65hに挿入される。これにより、第1ポート65hと第2ポート65jとの間における流路の断面積が変化する。
【0063】
シャフト69には、先端69aと後端69bとの間を貫通する第1貫通孔69dが形成され、第1貫通孔69dを通じて、第1ポート65hと圧力室64gとが連通する。そのため、第1ポート65h内の圧力と圧力室64gとの圧力とが略同一になる。したがって、第1ポート65hと圧力室64gとの圧力差に起因してプランジャ68及びシャフト69に作用する力を小さくすることができ、プランジャ68及びシャフト69を移動させるのに必要な吸引力を小さくすることができる。これにより、コイル61を小型化することができ、ベーンポンプ100を小型化することができる。
【0064】
シャフト69には、先端69aに向かうにつれ外径が小さくなるようにテーパ部69cが形成されている。また、シャフト69には、第1貫通孔69dの内周面とシャフト69の外周面との間を貫通する第2貫通孔69eが形成される。
【0065】
図3に示すように、コイル61への電流の供給が停止しておりシャフト69がスプリング62によってプラグ64fに押し付けられている状態では、第1ポート65hの開口縁とテーパ部69cとの間には隙間が形成される。また、第2貫通孔69eは、接続穴部65iに位置する。そのため、第1ポート65hと第2ポート65jとは、第1ポート65hの開口縁とテーパ部69cとの間を通じて連通する(流れF1)と共に、第1貫通孔69d及び第2貫通孔69eを通じて連通する(流れF2)。
【0066】
コイル61へ電流が供給されてプランジャ68がスプリング62の付勢力に抗して図3における左方向に移動すると、第1ポート65hの開口縁とテーパ部69cとの隙間が縮小する。そのため、流れF1が絞られ、電磁弁60の流路断面積は小さくなる。
【0067】
図4に示すように、プランジャ68が段部65eに接するまで移動した状態では、テーパ部69cが第1ポート65hに挿入され、シャフト69の外周と第1ポート65hの内周との間が閉塞される。一方で、第2貫通孔69eは、接続穴部65i内に位置する。そのため、第1ポート65hと第2ポート65jとは、第1貫通孔69d及び第2貫通孔69eを通じてのみ連通する。換言すれば、電磁弁60の流路断面積を、第1貫通孔69d及び第2貫通孔69eによって規定することができる。
【0068】
ベース部材65に生じる吸引力は、コイル61により形成される磁界の強さ、すなわちコイル61に供給される電流の大きさに応じて変化する。そのため、所定値以上の大きさの電流をコイル61に供給することにより、スプリング62の付勢力に抗してプランジャ68を段部65eまで移動させることができ、電磁弁60の流路断面積を最小とすることができる。したがって、コイル61に供給される電流の大きさを高い精度で制御することなく、ベーンポンプ100の最小流量特性を設定することができる。
【0069】
また、第2貫通孔69eの断面積は、第1貫通孔69dの断面積よりも小さく、電磁弁60の最小の流路断面積は、第2貫通孔69eによって規定される。そのため、第1貫通孔69dの断面積を大きくして第1貫通孔69dの流路抵抗を小さくすることができる。したがって、第2貫通孔69eによってベーンポンプ100の最小の吐出流量を設定することができると共に、第1ポート65hと圧力室64gとの圧力差に起因してプランジャ68及びシャフト69に作用する力を小さくすることができる。
【0070】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0071】
ベーンポンプ100では、電磁弁60は、流路断面積が最小の状態において、吐出通路3bにおける作動油の流れを許容する。そのため、電磁弁60は、所定の流路断面積を有する固定オリフィスとして機能する。したがって、固定オリフィスを電磁弁60とは別に設けることなくベーンポンプ100の最小流量特性を設定することができ、ベーンポンプ100を小型化することができる。
【0072】
また、ベーンポンプ100では、ベース部材65の段部65eが、流路断面積を減少させる方向へのシャフト69の移動を制限して、流路断面積が最小となる状態を規定する。そのため、コイル61に供給される電流の大きさを高い精度で制御することなく、ベーンポンプ100の最小流量特性を設定することができる。
【0073】
また、ベーンポンプ100では、第2貫通孔69eが電磁弁60の最小の流路断面積を規定する。そのため、第1貫通孔69dの流路抵抗を小さくすることができる。したがって、電磁弁60によってベーンポンプ100の最小流量特性を設定しつつ、第1ポート65hと圧力室64gとの圧力差に起因してプランジャ68及びシャフト69に作用する力を小さくすることができる。
【0074】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る可変容量形ベーンポンプ200(以下、単に「ベーンポンプ200」とも称する)について、図5を参照して説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。また、ベーンポンプ200の構成図は、図1と略同じであるため、省略する。
【0075】
図5は、ベーンポンプ200の電磁弁260の断面図であり、流路断面積が最小の状態を示す。電磁弁260では、弁体267のシャフト269は、第1貫通孔69d及び第2貫通孔69e(図3及び図4参照)に代えて、第1ポート65hの内周面とシャフト269の外周面との間隔により、最小の流路断面積を規定する。
【0076】
具体的には、電磁弁260の流路断面積が最小となる状態において、シャフト269は、第1ポート65hの内周と間隔を空けて第1ポート65hに挿入されている。シャフト269には孔が形成されていないため、第1ポート65hと第2ポート65jとは、第1ポート65hの内周面とシャフト269との間を通じて連通し、第1ポート65hの内周面とシャフト269との間によって電磁弁260の最小の流路断面積が規定される。
【0077】
また、電磁弁260の流路断面積が最小となる状態において、テーパ部269cの基端269fが第1ポート65hの内周面と間隔を空けて第1ポート65h内に位置している。基端269fにおける外径は、シャフト269の最大外径であり、基端369fと第1ポート65hの内周面との間の面積が最小の流路断面積となる。そのため、電磁弁260の製造時にプランジャ68に対するシャフト269の位置や第1ポート65hに対する段部65eの位置が所望の位置からずれたとしても、テーパ部269cの基端269fが第1ポート65h内にある限り、そのずれを許容することができる。したがって、電磁弁260の最小の流路断面積の精度よく設定することができ、ベーンポンプ200の最小流量特性のばらつきを低減することができる。
【0078】
シャフト269の外周には、テーパ部269cと後端69bとに渡って溝269gが形成されており、溝269gを通じて、第1ポート65hと圧力室64gとが連通する。そのため、第1ポート65h内の圧力と圧力室64gとの圧力とが略同一になり、電磁弁60の弁体67を移動させるのに必要な吸引力を小さくすることができる。これにより、コイル61を小型化することができ、ベーンポンプ200を小型化することができる。
【0079】
以上の実施形態では、第1実施形態と同様に、以下の効果を奏する。
【0080】
ベーンポンプ200では、固定オリフィスを電磁弁260とは別に設けることなく最小流量特性を設定することができる。したがって、ベーンポンプ200を小型化することができる。
【0081】
また、コイル61に所定の値以上の大きさの電流を供給することにより電磁弁260の流路断面積が最小となる。したがって、コイル61に供給される電流の大きさを高い精度で制御することなく、ベーンポンプ200の最小流量特性を設定することができる。
【0082】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る可変容量形ベーンポンプ300(以下、単に「ベーンポンプ300」とも称する)について、図6を参照して説明する。以下では、第1及び第2実施形態と異なる点を主に説明し、第1及び第2実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1及び第2実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。また、ベーンポンプ300の構成図は、図1と略同じであるため、省略する。
【0083】
図6は、ベーンポンプ300の電磁弁360の断面図であり、流路断面積が最小の状態を示す。電磁弁360では、第1貫通孔69d及び第2貫通孔69e(図3及び図4参照)に代えて、第1ポート65hの開口縁とシャフト369のテーパ部369cとの間隔により、最小の流路断面積が規定される。
【0084】
また、弁体367のシャフト369の外周には、テーパ部369cと後端69bとに渡って溝369gが形成されており、溝369gを通じて、第1ポート65hと圧力室64gとが連通する。そのため、第1ポート65h内の圧力と圧力室64gとの圧力とが略同一になり、電磁弁60の弁体67を移動させるのに必要な吸引力を小さくすることができる。これにより、コイル61を小型化することができ、ベーンポンプ300を小型化することができる。
【0085】
以上の実施形態では、第1及び第2実施形態と同様に、以下の効果を奏する。
【0086】
ベーンポンプ300では、固定オリフィスを電磁弁360とは別に設けることなく最小流量特性を設定することができる。したがって、ベーンポンプ300を小型化することができる。
【0087】
また、コイル61に所定の値以上の大きさの電流を供給することにより電磁弁360の流路断面積が最小となる。したがって、コイル61に供給される電流の大きさを高い精度で制御することなく、ベーンポンプ300の最小流量特性を設定することができる。
【0088】
以下、本構成の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0089】
本実施形態では、可変容量形ベーンポンプ100,200,300は、回転駆動されるロータ10と、ロータ10に対して径方向に往復動自在に設けられる複数のベーン20と、ロータ10の回転に伴ってベーン20の先端部21が摺動する内周面31を有し、ロータ10に対して偏心可能に設けられるカムリング30と、隣り合うベーン20とカムリング30とによって画定されるポンプ室30aから吐出される作動油が導かれる吐出通路3bと、吐出通路3bに設けられ、供給される電流に応じて流路断面積が変化する電磁弁60,260,360と、吐出通路3bにおける電磁弁60,260,360の前後の圧力差に応じてカムリング30の偏心量を制御する制御弁50と、を備え、電磁弁60,260,360は、流路断面積が最小の状態において吐出通路3bにおける作動油の流れを許容する。
【0090】
この構成では、電磁弁60,260,360は、流路断面積が最小の状態において、所定の流路断面積を有する固定オリフィスとして機能する。したがって、固定オリフィスを電磁弁60,260,360とは別に設けることなく可変容量形ベーンポンプ100,200,300の最小流量特性を設定することができる。これにより、可変容量形ベーンポンプ100,200,300を小型化することができる。
【0091】
また、本実施形態では、電磁弁60,260,360は、吐出通路3bにおける上流及び下流にそれぞれ接続される第1ポート65h及び第2ポート65jを有するハウジング63と、ハウジング63に収容され、供給される電流に応じて移動して流路断面積を変化させる弁体67,267,367と、ハウジング63に設けられ、流路断面積を減少させる方向への弁体67,267,367の移動を制限して流路断面積が最小となる状態を規定する段部65eと、を備える。
【0092】
この構成では、流路断面積が最小となる状態が段部65eによって規定される。したがって、電流の供給量を高い精度で制御することなく、可変容量形ベーンポンプ100,200,300の最小流量特性を設定することができる。
【0093】
また、本実施形態では、電磁弁60は、ハウジング63と弁体67とによって形成される圧力室64gを有し、弁体67は、軸方向に貫通し第1ポート65hと圧力室64gとを連通する第1貫通孔69dと、第1貫通孔69dの内周面と弁体67の外周面との間を貫通し第1貫通孔69dと第2ポート65jと連通する第2貫通孔69eと、を有し、第2貫通孔69eが、最小の流路断面積を規定する。
【0094】
この構成では、第1貫通孔69dの流路抵抗を小さくすることができる。したがって、電磁弁60によって可変容量形ベーンポンプ100の最小流量特性を設定しつつ、第1ポート65hと圧力室64gとの圧力差に起因して弁体67に作用する力を小さくすることができる。
【0095】
また、本実施形態では、弁体267は、段部65eにより移動が制限された状態において、第1ポート65hに挿入され、第1ポート65hの内周面との間隔により最小の流路断面積を規定する。
【0096】
この構成では、電磁弁260の製造時におけるプランジャ68に対するシャフト269の位置や第1ポート65hに対する段部65eの位置のずれを許容することができる。したがって、電磁弁の最小の流路断面積の精度よく設定することができ、ベーンポンプ200の最小流量特性のばらつきを低減することができる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0098】
上記実施形態では、作動流体として作動油が用いられている。作動油に代えて、水やその他の液体が作動流体として用いられてもよい。
【0099】
上記実施形態では、第1ポート65hが吐出通路3bにおける上流に接続され、第2ポート65jが吐出通路3bにおける下流に接続される。第2ポート65jが吐出通路3bにおける上流に接続され、第1ポート65hが吐出通路3bにおける下流に接続されてもよい。
【0100】
上記実施形態では、電磁弁60,260,360は、最大吸着時に流路断面積が最小となるように構成されている。電磁弁60,260,360に代えて、吸着されていない状態において流路断面積が最小となる電磁弁であってもよい。
【符号の説明】
【0101】
3b・・・吐出通路、10・・・ロータ、20・・・ベーン、21・・・先端部、30a・・・ポンプ室、30・・・カムリング、31・・・内周面、50・・・制御弁(偏心量制御弁)、60,260,360・・・電磁弁、63・・・ハウジング、64g・・・圧力室、65e・・・段部(制限部)、65h・・・第1ポート(上流ポート)、65j・・・第2ポート(下流ポート)、67,267,367・・・弁体、69d・・・第1貫通孔、69e・・・第2貫通孔、100,200,300・・・可変容量形ベーンポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6