(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】バーリング締結方法
(51)【国際特許分類】
F16B 4/00 20060101AFI20220803BHJP
B21D 39/03 20060101ALI20220803BHJP
B21D 19/08 20060101ALI20220803BHJP
B21D 47/04 20060101ALI20220803BHJP
F16B 5/00 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
F16B4/00 G
B21D39/03 B
B21D19/08 D
B21D47/04
F16B5/00 B
(21)【出願番号】P 2018154391
(22)【出願日】2018-08-21
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148688
【氏名又は名称】中村 裕行
(72)【発明者】
【氏名】近藤 茂樹
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-215778(JP,A)
【文献】特開2009-279642(JP,A)
【文献】特開2004-330285(JP,A)
【文献】特開2010-099740(JP,A)
【文献】特開2007-214470(JP,A)
【文献】特開2001-212633(JP,A)
【文献】米国特許第06109086(US,A)
【文献】中国特許出願公開第110732591(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 11/00-26/14
F16B 3/00- 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大孔が形成された被締結材に、前記大孔より小径の小孔が形成された板状の締結材を、小孔と大孔との位置を合わせて重ね合わせ、
前記締結材の小孔にバーリングパンチを押し込み、前記締結材の小孔の周りの部分を、前記被締結材の大孔の縁部を起点に大孔の内方に隆起させ、前記締結材の小孔の内周面が押し込み方向前方に向くように変形させることで、前記締結材の小孔の大孔側の縁部を断面三角状の突起に変形させ、
前記バーリングパンチを更に押し込むことで、前記被締結材の大孔の内方に隆起した前記締結材の小孔の周りの部分を、前記被締結材の大孔の内周面に沿った筒状のバーリングフランジに変形させると共に、前記締結材の小孔の大孔側の縁部から変形した断面三角状の突起を前記被締結材の大孔の内周面に押し付けて食い込ませ
、
前記バーリングフランジに前記バーリングパンチが挿入された状態で、前記バーリングフランジの下端に対向するように受け座の円筒部を配置し、前記締結材の上面を板押さえで押さえながら前記受け座を上昇させることで前記バーリングフランジを軸方向に圧縮して厚肉化させ、前記バーリングフランジの外周面を前記被締結材の大孔の内周面に密着させた、ことを特徴とするバーリング締結方法。
【請求項2】
前記締結材の小孔にバーリングパンチを押し込むに先立って、前記締結材を前記被締結材に押し付けておくことで、前記バーリングパンチを押し込むバーリング加工時に、前記締結材が前記被締結材から浮き上がるように変形することを抑えた、ことを特徴とする請求項1に記載のバーリング締結方法。
【請求項3】
前記締結材の材質に前記被締結材の材質よりも硬いものを用いることで、前記締結材の小孔の大孔側の縁部に形成された断面三角状の突起を、前記被締結材の大孔の内周面に適切に食い込ませるようにした、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバーリング締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大孔が形成された被締結材に小孔が形成された板状の締結材を重ね合わせ、小孔を大孔の内方にバーリング加工することで締結材を被締結材に結合するようにしたバーリング締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の生産過程において、後工程での作業の円滑化を図るため、事前に被締結材に板状の締結材を重ねて仮固定し、締結材と被締結材とのズレを防ぐ対策が採られることがある。この種の仮固定方法として、板状の締結材に孔を穿孔しその締結材を被締結材に重ねて締結材の孔の部分を被締結材に栓溶接する、或いは、締結材の縁部の一部を被締結材に隅肉溶接することが行われている。
【0003】
しかし、このように溶接(栓溶接、隅肉溶接)を行うと、スパッタの飛散や溶接ヒュームによって作業環境が悪化する場合があり、ヒュームコレクタ等の設備投資が必要となる。また、溶接時に飛散したスパッタが、溶接箇所の近くに開けられた直ネジ孔や溶接箇所の近くに固定されたナットのネジ部に付着することがあり、リタップしなければならないケースもある。また、溶接のため、溶接ワイヤ、CO2ガス等が必要となり、これらによるコストアップが避けられない。
【0004】
溶接以外に、板状の締結材を被締結材に固定する手法として、特許文献1に開示されたバーリング・カシメ工法が知られている。この工法は、予め、板状の締結材に小孔を形成し、被締結材に下方に末広がりのテーパー大孔を形成しておき、下方に末広がりのテーパー大孔が形成された被締結材の上面に小孔が形成された板状の締結材を重ね、締結材の小孔に上方からバーリングパンチを押し込み、被締結材のテーパー大孔内に筒状のバーリングフランジを形成した後、下方から被締結材のテーパー大孔に円錐台状のカシメパンチを押し込み、バーリングフランジをテーパー大孔に沿った形状に変形させ、締結材を被締結材に固定するようにしたものである。
【0005】
別のバーリング・カシメ工法として特許文献2に開示されたものも知られている。この工法は、予め、板状の締結材にバーリング加工を施して円筒部および爪部からなるバーリングフランジを形成し、被締結材に締結孔を形成しておき、被締結材の締結孔に締結材のバーリングフランジを差し込んだ後、孔から飛び出たバーリングフランジに差し込み方向と反対側からカシメパンチを押し込み、カシメパンチによってバーリングフランジの爪部を締結孔の径方向外方に押し倒し、締結材を被締結材に固定するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-254209号公報
【文献】特開平11-179452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に開示されたバーリング・カシメ工法によれば、溶接を用いることなく板状の締結材を被締結材に締結しているので、溶接に伴うスパッタ対策やヒューム対策が不要となる。しかし、バーリング工程に加えてカシメ工程が必要なので、2工程分の作業時間が避けられない。また、バーリング加工用のバーリングパンチに加えてカシメ加工用のカシメパンチも必要となるので、生産コストが増大してしまう。
【0008】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、溶接を用いることなく板状の締結材を被締結材に締結する際し、必要な締結強度を確保しつつ、1工程で締結でき、作業時間の短縮化、生産コストの削減を推進できるバーリング締結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成すべく創案された本発明に係るバーリング締結方法によれば、大孔が形成された被締結材に、大孔より小径の小孔が形成された板状の締結材を、小孔と大孔との位置を合わせて重ね合わせ、締結材の小孔にバーリングパンチを押し込み、締結材の小孔の周りの部分を、被締結材の大孔の縁部を起点に大孔の内方に隆起させ、締結材の小孔の内周面が押し込み方向前方に向くように変形させることで、締結材の小孔の大孔側の縁部を断面三角状の突起に変形させ、バーリングパンチを更に押し込むことで、被締結材の大孔の内方に隆起した締結材の小孔の周りの部分を、被締結材の大孔の内周面に沿った筒状のバーリングフランジに変形させると共に、締結材の小孔の大孔側の縁部から変形した断面三角状の突起を被締結材の大孔の内周面に押し付けて食い込ませ、バーリングフランジにバーリングパンチが挿入された状態で、バーリングフランジの下端に対向するように受け座の円筒部を配置し、締結材の上面を前記板押さえで押さえながら受け座を上昇させることでバーリングフランジを軸方向に圧縮して厚肉化させ、バーリングフランジの外周面を被締結材の大孔の内周面に密着させた、ことを特徴とするバーリング締結方法が提供される。
【0010】
また、本発明に係るバーリング締結方法において、締結材の小孔にバーリングパンチを押し込むに先立って、締結材を被締結材に押し付けておくことで、バーリングパンチを押し込むバーリング加工時に、締結材が被締結材から浮き上がるように変形することを抑えてもよい。
【0011】
また、本発明に係るバーリング締結方法において、締結材の材質に被締結材の材質よりも硬いものを用いることで、締結材の小孔の大孔側の縁部に形成された断面三角状の突起を、被締結材の大孔の内周面に適切に食い込ませるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るバーリング締結方法によれば、締結材の小孔の縁部から変形した断面三角形状の突起が被締結材の大孔の内周面に押し付けられて食い込み、締結材の小孔の周りの部分から変形されたバーリングフランジが軸方向に圧縮されて厚肉化され、厚肉化されたバーリングフランジの外周面が被締結材の大孔の内周面に密着するので、締結強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバーリング締結方法を示す工程図であり、
図1(a)~
図1(i)は各工程における締結材、被締結材およびバーリングパンチを示す断面図である。
【
図2】
図1のバーリング締結方法によって得られるバーリング締結構造の説明図であり、
図2(a)は締結材および被締結材の断面図、
図2(b)は締結材および被締結材の断面斜視図である。
【
図3】バーリング締結構造の説明図であり、
図3(a)は被締結材の大孔がドリル孔の場合の断面図、
図3(b)は大孔がピアス孔(上部が剪断面、下部が破断面)の場合の断面図、
図3(c)は大孔がピアス孔(上部が破断面、下部が剪断面)の場合の断面図である。
【
図4】本発明の変形例に係るバーリング締結方法を示す工程図であり、
図4(a)は
図1(h)に続く工程を示す断面図、
図4(b)は
図4(a)に続く工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。係る実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
(バーリング締結方法)
図1(a)~
図1(i)に示すように、本発明の一実施形態に係るバーリング締結方法は、大孔1が形成された被締結材2に小孔3が形成された板状の締結材4を重ね、小孔3を大孔1の内方にバーリング加工することで締結材4を被締結材2にバーリング締結するものである。
【0016】
先ず、
図1(a)に示すように、大孔1が形成された被締結材2(金属)に、大孔1より小径の小孔3が形成された板状の締結材4(金属)を、小孔3と大孔1との位置(中心)を合わせて重ね合わせる。次に、
図1(b)、
図1(c)に示すように、締結材4の小孔3にバーリングパンチ5を押し込み、締結材4の小孔3の周りの部分6を、被締結材2の大孔1の縁部7を起点に大孔1の内方に隆起させ、締結材4の小孔3の内周面8が押し込み方向前方に向くように変形させることで、締結材4の小孔3の大孔1側の縁部9を断面三角状の突起10に変形させる。
【0017】
なお、被締結材2の下面は、バーリングパンチ5が下降する部分を除いて図示しない基盤によって広い面積で支持されており、安定したバーリング加工が行えるようになっている。また、締結材4の小孔3にバーリングパンチ5を押し込むに先立って、締結材4を図示しない板押さえによって被締結材2に押し付けるようにし、バーリング加工時に締結材4が被締結材2から浮き上がるように変形する事態を抑えるようにしてもよい。かかる板押さえは、例えば一般的なピアス成形の場合と異なり、バーリングパンチ5から少し離れた位置を押さえれば足りるため、バーリング加工の状況を適切に目視できる。
【0018】
続いて、
図1(d)、
図1(e)、
図1(f)に示すように、バーリングパンチ5を更に押し込むことで、被締結材2の大孔1の内方に隆起した締結材4の小孔3の周りの部分6を、被締結材2の大孔1の内面に沿った筒状のバーリングフランジ11に変形させると共に、締結材4の小孔3の大孔1側の縁部9から変形した断面三角状の突起10を被締結材2の大孔1の内周面に押し付ける。ここで、
図1(a)に示す小孔3の内径a、大孔1の内径bおよび大孔1の長さ(被締結材2の板厚)cの関係は、小孔3にバーリングパンチ5を押し込んでバーリング加工したとき、小孔3の周りの部分6から筒状に変形されるバーリングフランジ11の先端(下端)が大孔1の反対側から飛び出ない関係((b-a)/2<c)となっている。
【0019】
その後、
図1(g)、
図1(h)に示すように、バーリングパンチ5を更に押し込むことで、締結材4の小孔3の大孔1側の縁部9から変形した断面三角状の突起10を、被締結材2の大孔1の内周面に食い込ませる。ここで、締結材4の小孔3の大孔1側の縁部9から変形した断面三角状の突起10を被締結材2の大孔1の内周面に適切に食い込ませるためには、締結材4の材質を被締結材2の材質よりも硬いものを用いることが好ましい。例えば、締結材4の材質にハイテン材を用い、被締結材2に一般構造用鋼材を用いること等が考えられる。但し、同じ材質(鋼等)であっても構わない。最後に、
図1(i)に示すように、バーリングパンチ5を上方に引き抜いて、締結作業終了となる。
【0020】
(バーリング締結構造12)
図2(a)に、上述したバーリング締結方法によって得られるバーリング締結構造12の断面図を、
図2(b)にバーリング締結構造12の断面斜視図を示す。本発明の一実施形態に係るバーリング締結構造12は、既述のように、大孔1が形成された被締結材2に、大孔1より小径の小孔3が形成された板状の締結材4を、小孔3と大孔1との位置を合わせて重ね合わせ、締結材4の小孔3の周りの部分6を、被締結材2の大孔1の縁部7を起点に大孔1の内方にバーリングすることで、締結材4が被締結材2に締結されたバーリング締結構造である。なお、
図2(a)に示す一点鎖線は、板状の締結材4の小孔3の周りの部分6がバーリング加工される前の様子を仮想的に表したものである。
【0021】
図2(a)、
図2(b)に示すように、本実施形態に係るバーリング締結構造12は、締結材4の小孔3から被締結材2の大孔1の内周面に沿って筒状に形成されたバーリングフランジ11と、バーリングフランジ11の先端に形成され、締結材4の小孔3の大孔1側の縁部9から変形した断面三角状の突起10とを備えており、この断面三角状の突起10が、被締結材2の大孔1の内周面に押し付けられて食い込んだ状態となっている。これにより、必要な締結強度を得ている。
【0022】
このように、板状の締結材4を被締結材2にバーリング締結した後、後工程において、
図2(b)に示す締結材4の縁部4aをその長手方向に沿って被締結材2に隅肉溶接することで、締結材4を被締結材2に強固に固定するようにしてもよい。この場合、締結材4が被締結材2にバーリング締結されたワークを、バーリングパンチ5を下降させるためのプレス装置が設置された場所から、溶接設備が調った場所に移動させることになる。
【0023】
この際、締結材4の突起10が被締結材2の大孔1の内周面に食い込んだ状態となって必要な締結強度が確保されているので、移動時にワークが振動等しても、締結材4が被締結材2から外れたり、締結材4の被締結材2に対する相対的な位置関係がズレることはなく、適切な位置関係を保った状態で溶接できる。
【0024】
なお、
図1(a)~
図1(i)に示すバーリング締結方法を、締結材4および被締結材2の複数箇所に同時に施すようにしてもよい。複数箇所をバーリング締結することで、
図2(b)に示す締結材4がバーリングフランジ11を中心として被締結材2に対して回転してしまう事態を確実に防止できる。
【0025】
図3(a)に被締結材2の大孔1がドリル孔の場合の断面図を示し、
図3(b)に大孔1がピアス孔(上部が剪断面1x、下部が破断面1y)の場合の断面図を示し、
図3(c)に大孔1がピアス孔(上部が破断面1y、下部が剪断面1x)の場合の断面図を示す。
図3(a)に示すように、大孔1がドリル孔の場合、大孔1の内径が孔長方向に一定となるが、
図3(b)、
図3(c)に示すように、ピアス孔の場合、ピアス打ち抜き方向の前側が剪断面1x、後側が破断面1yとなり、破断面1yの方が剪断面1xよりも内径が不規則に大きくなる。
【0026】
本実施形態に係るバーリング締結構造12によれば、
図3(a)に示すように大孔1がドリル孔の場合は勿論、
図3(b)に示すように大孔1の上部が剪断面1x、下部が破断面1yとなっていても、
図3(c)に示すように大孔1の上部が破断面1y、下部が剪断面1xとなっていても、締結材2の小孔の大孔1側の縁部9から変形した断面三角状の突起10が、バーリングパンチ5の押し込みに伴って適切に被締結材2の大孔1の内周面に押し付けられて食い込まされた状態となるので、必要な締結強度を得ることができる。よって、大孔1がドリル孔の場合のみならず、ピアス孔の場合にもピアス打ち抜き方向に関わりなく対応できる。
【0027】
(バーリングパンチ5)
図1(a)~
図1(i)を用いて、上述したバーリング締結方法に用いるバーリングパンチ5について述べる。既述のように、本発明の一実施形態に係るバーリングパンチ5は、大孔1が形成された被締結材2に、大孔1より小径の小孔3が形成された板状の締結材4を、小孔3と大孔1との位置を合わせて重ね合わせた状態で、締結材4を被締結材2にバーリング締結すべく、締結材4の小孔3に押し込まれるものである。
【0028】
図1(a)~
図1(c)に示すように、本実施形態に係るバーリングパンチ5は、締結材4の小孔3の周りの部分6を、被締結材2の大孔1の縁部7を起点に大孔1の内方に押し込んで隆起させ、締結材4の小孔3の内周面8が押し込み方向前方に向くように変形させることで、締結材4の小孔3の大孔1側の縁部9を断面三角状の突起10に変形させる円錐台形状部13を備えている。
【0029】
このバーリングパンチ5は、
図1(d)、
図1(e)に示すように、円錐台形状部13の上部に繋げて一体的形成され、被締結材2の大孔1の内方に隆起した締結材4の小孔3の周りの部分6を、被締結材2の大孔1の内面に沿って筒状のバーリングフランジ11に変形させ、締結材4の小孔3の大孔1側の縁部9から変形された断面三角状の突起10を被締結材2の大孔1の内面に押し付けるアール形状部14を備えている。
【0030】
このバーリングパンチ5は、
図1(f)~
図1(h)に示すように、アール形状部14の上部に繋げて一体的形成され、バーリングフランジ11を被締結材2の大孔1の内周面に押し付けて、断面三角状の突起10を大孔1の内周面に食い込ませる円柱形状部15を備えている。円柱形状部15の直径Xは、大孔の内径をb、締結材の板厚をdとすると、断面三角状の突起10を大孔1の内周面に適切に食い込ませるために、b>X>b-2d の範囲で設定される。
【0031】
また、このバーリングパンチ5は、
図1(a)に示すように、円錐台形状部13の下部に繋げて一体的に形成された円錐形状部16を備えている。円錐形状部16は、バーリングパンチ5を締結材4の小孔3に向けて下降させた際、バーリングパンチ5の中心を小孔3の中心に合わせるガイド機能を発揮する。バーリングパンチ5の中心が小孔3の中心に一致することで、バーリングパンチ5によって押し広げられてバーリングされる締結材4の小孔3の周りの部分6の周方向の応力が均一化し、バーリングフランジ11に所謂ネッキングや割れが発生することを防止できる。なお、円錐形状部16の先端は、尖り形状ではなくアール形状としてもよい。
【0032】
(作用・効果)
本実施形態に係るバーリング締結方法、バーリング締結構造12およびバーリングパンチ5によれば、
図1(a)~
図1(i)に示すように、被締結材2の大孔の位置に合わせて重ねられた板状の締結材4の小孔3にバーリングパンチ5を押し込むという1工程のみで締結材4を被締結材2にバーリング締結でき、従来例(特許文献1、2参照)では必要であったカシメ工程が不要となるので、作業時間の短縮化、生産コストの削減を推進できる。
【0033】
図1(d)~
図1(h)に示すように、バーリングパンチ5の押し込みに伴って、締結材4の小孔3の縁部9から変形した断面三角形状の突起10を、被締結材2の大孔1の内周面に押し付けて食い込ませるようにしているので、従来例(特許文献1、2参照)のようにカシメ工程が無くても、締結材4の被締結材2に対する必要な締結強度を確保することができる。
【0034】
溶接を行わず、締結材4の一部をバーリング変形させて締結しているので、副材料費が生じない。溶接を行わないため、スパッタの飛散、溶接ヒュームが無く、作業環境が悪化することはなく、ヒュームコレクタ等の設備投資も不要である。また、スパッタの飛散が無いため、近くに直ネジ孔や固定されたナットが有る場合でも、スパッタ付着に因るリタップを行う必要がない。また、溶接ワイヤ、溶接用CO2ガス等は不要であり、これらによるコストアップを回避できる。
【0035】
(変形例)
図4(a)、
図4(b)に、本発明の変形例に係るバーリング締結方法の工程図を示す。
図4(a)は
図1(h)に続く工程を示す断面図、
図4(b)は
図4(a)に続く工程を示す断面図である。この変形例に係るバーリング締結方法は、
図1(a)~
図1(h)の工程に関しては、上述した前実施形態に係るバーリング締結方法と同様であるため、以下相違点のみについて説明する。
【0036】
この変形例に係るバーリング締結方法おいては、
図1(h)に示す工程によってバーリングフランジ11を成形した後、
図4(a)に示すように、バーリングフランジ11の先端(下端)に対向するように受け座17を配置し、板状の締結材4の上面に板押さえ18を配置する。受け座17は、バーリングパンチ5の円柱形状部15と被締結材2の大孔1との隙間に応じた肉厚を有していて隙間に差し入れられる円筒部17aと、円筒部17aに接続されたベース板部17bとから構成されている。板押さえ18は、バーリングパンチ5が挿通される孔18aを有する板材から構成されている。
【0037】
図4(a)に示すように、板押さえ18、受け座17を配置した後、締結材4の上面を板押さえ18で押さえながら受け座17を上昇させ、
図4(b)に示すように、バーリングフランジ11の先端に背圧を負荷することで、バーリングフランジ11を軸方向に圧縮して厚肉化させ、バーリングフランジ11の外周面と被締結材2の大穴1の内周面との密着性を高める。この場合においても、締結材4の小孔3の縁部9から変形した断面三角形状の突起10が、被締結材2の大孔1の内周面に押し付けられて食い込んだ状態となるので、これによる締結強度の向上効果を確保できる。
【0038】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0039】
例えば、上記実施形態においては、締結材4と被締結材2とを共に金属板(鉄等)としたが、締結材4を金属板(鉄等)とし被締結材2を硬質樹脂板としてもよい。また、
図1(i)に示すように、締結材4を被締結材2にバーリング締結した後、バーリングフランジ11の内方に形成された孔19をボルト孔として利用してもよい。すなわち、この孔19にボルトを挿通し、締結材4と被締結材2とを挟み込むようにボルトのネジ部にナットを締め付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、板状の締結材4を被締結材2に締結する際し、必要な締結強度を確保しつつ、1工程で締結でき、作業時間の短縮化、生産コストの削減を推進できるバーリング締結方法に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 大孔
2 被締結材
3 小孔
4 締結材
5 バーリングパンチ
6 締結材の小孔の周りの部分
7 被締結材の大孔の縁部
8 締結材の小孔の内周面
9 締結材の小孔の大孔側の縁部
10 断面三角状の突起
11 バーリングフランジ
12 バーリング締結構造
13 円錐台形状部
14 アール形状部
15 円柱形状部
16 円錐形状部
17 受け座
18 板押さえ
19 バーリングフランジ11の内方に形成された孔